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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105641
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】微粒子上の1分子の直接検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G01N33/543 575
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081524
(22)【出願日】2024-05-20
(62)【分割の表示】P 2021537775の分割
【原出願日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】62/785,798
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/785,796
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルワン,チャオチャオ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,パトリック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スウィフト,ケリー・エム
(72)【発明者】
【氏名】テチン,セルゲイ・ワイ
(72)【発明者】
【氏名】カルフィン,ブレンダ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ハーク,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ポープ,マーク・アール
(72)【発明者】
【氏名】プロスツコ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チウ,シャオシン
(72)【発明者】
【氏名】ボグダン,エム・フェリシア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、蛍光剤とマクロコンジュゲートを併用して生体試料中の対象分析成分を分析する方法を提供するものである。
【解決手段】前記マクロコンジュゲートは、架橋ポリマー又はタンパク質を含むコアと、タグと、特異的結合メンバー又はその断片と、任意に担体タンパク質を含む。種々の蛍光色素団ラベルを含む検出コンジュゲートと微粒子を併用して生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析し、前記微粒子の透過光画像と蛍光画像を取得し、取得した画像をカスタマイズされた画像解析法により解析する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の対象分析成分の分析方法であって、
a.表面に固定された、対象分析成分に結合する複数の特異的結合メンバーを含む結合表面に、前記分析成分を捕捉する工程と、
b.前記捕捉した分析成分と複数のマクロコンジュゲートを反応させる工程と、
ここで、各マクロコンジュゲートは、
i.多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと、
ii.複数の特異的結合メンバー、その断片、又はその組み合わせと、
iii.複数のタグ又は検出可能なラベルと、ここで、前記マクロコンジュゲートが複数のタグを含むとき、前記方法は複数の蛍光剤を前記タグと反応させる工程を含み、各蛍光剤は、前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルとを含み、
iv.任意選択的に、複数の担体タンパク質と
を含み、
c.前記結合表面を画像化し、前記画像を解析する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
生体試料中の対象分析成分の分析方法であって、
a.表面に固定された、対象分析成分に結合する複数の特異的結合メンバーを含む結合表面に、前記分析成分を捕捉する工程と、
b.前記捕捉した分析成分と複数のマクロコンジュゲートを反応させる工程と、
ここで、各マクロコンジュゲートは、
i.多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと、
ii.前記コアの周囲の位置に共有結合された複数の担体タンパク質と、
iii.前記担体タンパク質に共有結合された複数の特異的結合メンバー、その断片、又はその組み合わせと、
iv.前記複数の担体タンパク質又は前記複数の特異的結合メンバーに共有結合された複数のタグと
を含み、
c.複数の蛍光剤を前記マクロコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、各蛍光剤が、前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルとを含み、
d.前記結合表面を画像化し、前記画像を解析する工程と
を含む、方法。
【請求項3】
前記多糖が、デキストラン、アミノデキストラン又はその組み合わせである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記デンドリマーが、PAMAMデンドリマー又はDNAデンドリマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエーテル化合物がポリエチレングリコールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記担体タンパク質が血清アルブミンタンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記血清アルブミンタンパク質がウシ血清アルブミンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タグがビオチンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記特異的結合メンバーが抗体を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記特異的結合メンバーの断片が抗体断片を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光剤における前記分子がストレプトアビジンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光剤における前記検出可能なラベルが、フィコエリスリン又はアロフィコシアニンである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記蛍光剤が、ストレプトアビジン-フィコエリスリンコンジュゲート(SAPE)又はストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SAAPC)コンジュゲートを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記結合表面が、固体支持体の平坦・平滑表面において画像化される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記結合表面を画像化する工程が、前記結合表面の透過光画像と、前記蛍光剤に対応する1個以上の蛍光画像を取得する工程を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記画像を画像化する工程が、前記1個以上の蛍光画像において前記結合表面上の平均画素強度を計算する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
対象領域における平均画素強度が所定値未満である場合に、前記画像を解析する工程が、
(i)前記対象領域において蛍光強度の高いピークを計数する工程と、
(ii)前記1個以上の蛍光画像において前記対象領域の面積に対するピークの比を求める工程と
を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(ii)の後に換算係数を使用して複合シグナルを計算し、異なる分析成分濃度で得られたデータ点を組み合わせる工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記結合表面が1個以上の微粒子を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1個以上の微粒子の各々が1ミクロン超の粒子径である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法であって、
(a)第1の対象分析成分を第1の微粒子の表面に捕捉する工程と、ここで、前記第1の微粒子は、(i)その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(ii)第1の蛍光色素団で標識されている、
(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程と、ここで、(i)前記第1の分析成分は前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子は、その表面に固定化された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、
(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第1のコンジュゲートは、第2の蛍光色素団で標識されており且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、
(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第2のコンジュゲートは、第3の蛍光色素団で標識されており且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団は相互に異なる、
(e)前記第1及び第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と、
(f)前記第1、第2及び第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1及び第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と、
(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、抗原又は抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1、第2及び第3の蛍光色素団が、AlexaFluor405、AlexaFluor488、AlexaFluor546、Cy3、Cy5、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンから選択される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記微粒子が固体支持体の平坦・平滑表面において画像化される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記カスタマイズされた画像解析法が、
(i)前記透過光画像に基づいて全体画像マスクを作成する工程と、
(ii)前記第1の蛍光色素団に対応する蛍光画像に基づいて第1の画像マスクを作成する工程と、
(iii)前記全体画像マスクから前記第1の画像マスクを差し引いて、第2の画像マスクを作成する工程と、
(iv)前記第1の画像マスクを使用して前記第2の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第1の分析成分を検出する工程と、
(v)前記第2の画像マスクを使用して前記第3の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第2の分析成分を検出する工程と
を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程(iv)及び(v)において前記シグナルを計算する工程が、前記第2及び第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する蛍光画像において前記微粒子上の平均画素強度を計算する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法であって、
(a)第1の微粒子の表面に前記第1の分析成分を捕捉する工程と、ここで、前記第1の微粒子は、その表面に固定された、前記第1の対象分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、
(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程と、ここで、(i)前記第1の分析成分は前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子は、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(iii)前記第1の微粒子と前記第2の微粒子の粒子径及び/又は形状が異なる、
(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第1のコンジュゲートは、第1の蛍光色素団を含み且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、
(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第2のコンジュゲートが、第2の蛍光色素団を含み且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1及び第2の蛍光色素団が相互に異なる、前記工程と、
(e)前記第1及び第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と、
(f)前記第1及び第2の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1及び第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と、
(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程と
を含む、方法。
【請求項28】
3種以上の対象分析成分を分析する工程をさらに含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(a)第3、第4又は第5以降の対象分析成分を第3、第4又は第5以降の微粒子の表面に捕捉する工程と、ここで、(i)前記第3、第4及び第5以降の分析成分の各々は相互に異なると共に、前記第1及び第2の分析成分と異なり、(ii)前記第3、第4又は第5以降の微粒子は、その表面に固定された、前記第3、第4又は第5以降の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、
(b)前記捕捉した第3、第4又は第5以降の分析成分を第3、第4又は第5以降のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第3、第4又は第5以降のコンジュゲートは、第4、第5又は第6以降の蛍光色素団で標識されており且つ前記第3、第4又は第5以降の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第4、第5及び第6以降の蛍光色素団が相互に異なると共に、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団の各々と異なる、
(c)前記第3、第4及び第5以降の微粒子の透過光画像を取得する工程と、
(d)前記第4、第5及び第6以降の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第3、第4及び第5以降の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と、
(e)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程と
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第3、第4又は第5以降の微粒子の各々が、異なる蛍光色素団で標識されている、及び/又は、異なる粒子径若しくは形状である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、抗原又は抗体である、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記蛍光色素団が、AlexaFluor405、AlexaFluor488、AlexaFluor546、Cy3、Cy5、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンから選択される、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記微粒子が1ミクロン超の粒子径である、請求項21~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、同一生物により産生されたものである、請求項21~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、異なる生物により産生されたものである、請求項21~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の免疫診断アッセイは、累積シグナルを記録することにより対象分子を反応バイアル中で識別する集団測定を利用している。より最近では、1分子の分析成分を計数できるイムノアッセイが開発されており、当技術分野で「デジタルイムノアッセイ」と呼ばれている。このようなアプローチの1つは、検出抗体を酵素で標識し、個々の微粒子をナノウェルに閉じ込める方法である。試料濃度が低くても、分析成分1分子が抗体-酵素コンジュゲートと結合し、ナノウェルに閉じ込められた微粒子により捕捉されると、妥当な時間枠内で、検出可能となるために十分な基質を蛍光状態に変換できると予想される。空のナノウェルと、分析成分及び/又はコンジュゲートを捕捉しなかった微粒子を収容するナノウェルとは、暗色のままである。このアプローチの骨子は、1分子計数統計のルールに合わせるために、非蛍光性の微粒子を収容する多数のウェルを介在させる点にある。これらの高感度技術は当技術分野で1分子酵素免疫吸着測定法(Single-Molecule Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Analysiss:mELISA)と呼ばれることも多い。しかし、これらの技術は標準的なイムノアッセイに比較して余分な工程と試薬が必要であり、煩瑣な検出装置も必要であり、時間がかかる。また、計数(デジタル)モードと平均(アナログ)モードの切り替えに適応しにくいため、検出ダイナミックレンジが狭い。
【0002】
免疫診断アッセイの別の問題は、1回のアッセイで1個の試料から2種以上の分析成分を測定できること(「多重化」とも言う)が、インビトロ診断(IVD)分野内で、強く求められているという点である(Marquette et al.,Bioanalysis,4:927-936(2012))。多重イムノアッセイはシングルイムノアッセイに比較してスループットが高く、1個の結果に要する時間が短く、消耗品が少なく、コストが安い。しかし、試薬の複雑さ、非特異的結合及び試薬間干渉により、多重イムノアッセイでは不正確な結果及び感度低下を生じる可能性がある。これらの問題に対処するために、多色ビーズを使用して試料中の個々の分析成分を区別する多重イムノアッセイが開発されている(例えばLUMINEX(R)100/200(TM)(Luminex Corp.,Austin,TX))。しかし、多くのこのような多色ビーズフォーマットは、まだ最適な感度に至らず、複数の分析成分間のシグナル干渉の問題もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Marquette et al.,Bioanalysis,4:927-936(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、広いダイナミックレンジで高感度のデジタルイムノアッセイを実施するための代替方法及び装置が必要とされており、また、高感度で試薬間干渉の少ない多重イムノアッセイ方法及びシステムも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は生体試料中の対象分析成分の分析方法を提供するものであり、前記方法は以下の工程、即ち、(a)対象分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを固定された結合表面に前記分析成分を捕捉する工程と;(b)前記捕捉した分析成分と複数のマクロコンジュゲートを反応させる工程であり、各マクロコンジュゲートが、(i)多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと;(ii)複数の特異的結合メンバー、その断片又はその組み合わせと;(iii)複数のタグ又は検出可能なラベルを含み、前記マクロコンジュゲートが複数のタグを含むとき、前記方法は複数の蛍光剤を前記タグと反応させる工程を含み、各蛍光剤が、前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルを含み;各マクロコンジュゲートが更に任意に(iv)複数の担体タンパク質を含む、前記工程と;(c)前記結合表面を画像化し、前記画像を解析する工程を含む。
【0006】
生体試料中の対象分析成分の分析方法として、以下の工程、即ち、(a)対象分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを固定された結合表面に前記分析成分を捕捉する工程と;(b)前記捕捉した分析成分と複数のマクロコンジュゲートを反応させる工程であり、各マクロコンジュゲートが、(i)多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと;(ii)前記コアの周囲の位置と共有結合させた複数の担体タンパク質と;(iii)前記担体タンパク質と共有結合させた複数の特異的結合メンバー、その断片又はその組み合わせと;(iv)前記複数の担体タンパク質又は前記複数の特異的結合メンバーと共有結合させた複数のタグを含む、前記工程と;(c)複数の蛍光剤を前記マクロコンジュゲートと反応させる工程であり、各蛍光剤が、前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルを含む、前記工程と;(d)前記結合表面を画像化し、前記画像を解析する工程を含む方法も提供される。
【0007】
本開示は更に、生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法も提供する。前記方法は以下の工程、即ち、(a)第1の対象分析成分を第1の微粒子の表面に捕捉する工程であり、前記第1の微粒子が、(i)その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(ii)第1の蛍光色素団で標識されている、前記工程と;(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第1の分析成分が前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子が、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第1のコンジュゲートが、第2の蛍光色素団で標識されており且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第2のコンジュゲートが、第3の蛍光色素団で標識されており且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団が相互に異なる、前記工程と;(e)前記第1及び第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と;(f)前記第1、第2及び第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1及び第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と;(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程を含む。
【0008】
本開示は更に、生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法として、以下の工程、即ち、(a)第1の対象分析成分を第1の微粒子の表面に捕捉する工程であり、前記第1の微粒子が、その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第1の分析成分が前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子が、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(iii)前記第1の微粒子と前記第2の微粒子の粒子径及び/又は形状が異なる、前記工程と;(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第1のコンジュゲートが、第1の蛍光色素団を含み且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第2のコンジュゲートが、第2の蛍光色素団を含み且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1及び第2の蛍光色素団が相互に異なる、前記工程と;(e)前記第1及び第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と;(f)前記第1及び第2の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1及び第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と;(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】架橋ポリマーがデキストランであり、担体タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)であり、捕捉タグがビオチンであり、抗体断片が複数のFabであるマクロコンジュゲートの1例を示す模式図である。
図2】本願に記載するような結合表面(例えば微粒子)の透過光画像と蛍光画像の解析を示す模式図である。透過光画像を使用して対象領域を特定し、対象領域面積(又は総面積)を求める。蛍光画像を使用し、(i)対象領域からの総蛍光、及び/又は(ii)対象領域に位置する明ピーク数を求める。これらのデータからアナログモードとデジタルモードの結果を計算する。
図3A図3Aは実施例2に記載するHCVコア抗原検出アッセイ(HCV0~80fM)から取得された一連の透過光画像(上段)、蛍光画像(中段)、及び蛍光画像の強度プロファイル(下段)である。図3Bはアナログモード(左)とデジタルモード(右)での前記HCVアッセイの校正曲線のグラフである。
図3B図3Aは実施例2に記載するHCVコア抗原検出アッセイ(HCV0~80fM)から取得された一連の透過光画像(上段)、蛍光画像(中段)、及び蛍光画像の強度プロファイル(下段)である。図3Bはアナログモード(左)とデジタルモード(右)での前記HCVアッセイの校正曲線のグラフである。
図4A図4Aは実施例3に記載するHIV P24アッセイの校正曲線を示すグラフであり、図4Bは0pg/mlと6.5pg/mlにおけるHIV P24アッセイの一連の透過光画像(左図)、蛍光画像(中央図)、及び強度プロファイル(右図)である。
図4B図4Aは実施例3に記載するHIV P24アッセイの校正曲線を示すグラフであり、図4Bは0pg/mlと6.5pg/mlにおけるHIV P24アッセイの一連の透過光画像(左図)、蛍光画像(中央図)、及び強度プロファイル(右図)である。
図5】実施例3に記載するようにSA-APCを蛍光剤として使用したHIV P24アッセイの校正曲線を示す。
図6】HIV P24アッセイのアナログモードでの画像解析を示すグラフである。
図7】デジタルモードからのシグナルとアナログモードからのシグナルを単一の複合シグナルに統合するための基準を示す模式図である。
図8】実施例6に記載するエストラジオール検出アッセイの結果を示すグラフである。
図9】本開示に従う二重サンドイッチイムノアッセイの解析を示す模式図である。本アッセイは分析成分1用の試薬(即ち微粒子1「MP1」とコンジュゲート1)と、分析成分2用の試薬(MP2とコンジュゲート2)を含む。MP1は第1の蛍光色素団(色A)で染色されている。コンジュゲート1は第2の蛍光色素団(色B)で標識されており、コンジュゲート2は第3の蛍光色素団(色C)で標識されている。
図10】本願に記載するアッセイ方法により得られる試薬間干渉の低減を示す模式図である。
図11】実施例7に記載するような画像解析シーケンスを示す模式図である。
図12】HCV/HIV陰性試料について実施例7に記載するイムノアッセイを実施した結果を示す一連の画像である。左上図は全微粒子の透過光画像であり、右上図は色Aで染色された微粒子に対応する蛍光画像(HCV MP)であり、左下図はMP1からのシグナルに対応する蛍光画像(HCV MP、色B、陰性試料による暗部)であり、右下図はMP2からのシグナルに対応する蛍光画像(HIV MP、色C、陰性試料による暗部)である。
図13】HIV陽性試料について実施例7に記載するイムノアッセイを実施した結果を示す一連の画像である。左上図は全微粒子の透過光画像であり、右上図は色Aで染色された微粒子に対応する蛍光画像(HCV MP)であり、左下図はMP1からのシグナルに対応する蛍光画像(HCV MP、色B、陰性試料による暗部)であり、右下図はMP2からのシグナルに対応する蛍光画像(HIV MP、色C、陽性試料による明部)である。
図14】HCV陽性試料について実施例7に記載するイムノアッセイを実施した結果を示す一連の画像である。左上図は全微粒子の透過光画像であり、右上図は色Aで染色された微粒子に対応する蛍光画像(HCV MP)であり、左下図はMP1からのシグナルに対応する蛍光画像(HCV MP、色B、陽性試料による明部)であり、右下図はMP2からのシグナルに対応する蛍光画像(HIV MP、色C、陰性試料による暗部)である。
図15】実施例7に記載する二重アッセイフォーマットを使用してHCVチャネルで測定した140個の正常ヒト試料、陽性HCVキャリブレーター及び陽性HIVキャリブレーターの分布を示すグラフである。
図16】実施例7に記載する二重アッセイフォーマットを使用してHIVチャネルで測定した140個の正常ヒト試料、陽性HCVキャリブレーター及び陽性HIVキャリブレーターの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
イムノアッセイでマクロコンジュゲートと蛍光剤とを併用すると、酵素増幅及びナノウェルを必要とせずに免疫複合体1分子の直接可視化及び分析が可能になり、種々の蛍光色素団ラベルを含む検出コンジュゲートと微粒子を併用する1回の多重分析成分アッセイを透過光画像及び蛍光画像の解析と組み合わせると、分析成分及び試薬間の干渉が低減することが発見され、本開示は少なくとも部分的にこの発見を前提とする。更に本願に記載する画像解析では、フローサイトメトリーによる検出法を利用する他の公知方法に比較して多重アッセイの感度が向上する。
【0011】
定義
本願の技術を理解し易くするために、多数の用語及び語句を以下に定義する。その他の定義についても以下の詳細な説明の随所に記載する。
【0012】
本願で使用する「生体試料」、「試料」、及び「試験試料」なる用語は同義に使用され、対象分析成分を含むか又は含む疑いのある物質を意味する。生体試料は任意の適切な起源に由来することができる。例えば、生体試料の起源は合成(例えば実験室で生産されたもの)でもよいし、例えば環境(例えば大気、土壌、液体試料、例えば上水等)、動物(例えば哺乳動物)、植物又は他の生物から採取されるか又は由来する天然物質でもよい。1実施形態において、前記生体試料の起源はヒト体内物質(例えば体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、喀痰、精液、粘液、涙液、リンパ液、羊水、間質液、肺洗浄液、脳髄液、糞便、組織、臓器等)である。ヒト組織としては、限定されないが、骨格筋組織、肝組織、肺組織、腎組織、心筋組織、脳組織、骨髄、子宮頸部組織、皮膚等が挙げられる。所定の実施形態において、前記試料の起源は生検試料でもよく、組織崩壊/細胞溶解により安定化させてもよい。前記試料は液体試料、固体試料の抽出液、流動性粒状固体、又は固体粒子の懸濁液とすることができる。
【0013】
「分析成分」、「標的分析成分」、及び「対象分析成分」なる用語は本願では同義に使用され、本願に開示する方法で測定される物質を意味する。本開示の方法を使用すると、特異的結合メンバーと特異的に結合することができるあらゆる分析成分を検出することができ、任意に定量することができる。
【0014】
本願で使用する「結合表面」なる用語は、特異的結合メンバー(例えば本願に記載するような抗体)をその表面に固定させることができ、分析成分検出アッセイを実施することができる任意の表面を意味する。本開示の関連ではあらゆる適切な結合表面を使用することができる。所定の実施形態において、前記結合表面は複数(例えば2個以上、50個以上、100個以上、1,000個以上、又は5,000個以上)の微粒子を含む。
【0015】
本願で使用する「対象領域(ROI)」なる用語は、詳細な解析に選択される画像内の領域、例えば1組の画素を意味する。画像内において、領域は隣接していてもよいし、隣接していなくてもよい。「対象領域(ROI)面積」、「総面積」、又は「総結合面積」なる用語は本願では同義に使用され、選択された領域の面積を意味する。前記領域を画素により定義する場合、「対象領域面積」、「総面積」、又は「総結合面積」なる用語は、対象領域内の画素の総数又は総和を意味することもできる。
【0016】
本願で使用する「接触させる」なる用語は、結合メンバーに特異的な対象分析成分が試料中に存在する場合に結合相互作用が生じるように、前記結合メンバーを前記試料中の前記対象分析成分と十分密接に接近させる任意の型の会合作用を意味する。
【0017】
本願で使用する「マクロコンジュゲート」なる用語は、相互に特異的に結合させた2個以上の分子を含む複合体を意味する。例えば、マクロコンジュゲートは相互に特異的に結合させた3個以上(例えば4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上)の分子を含むことができる。
【0018】
「特異的結合パートナー」及び「特異的結合メンバー」なる用語は本願では同義に使用され、実質的に認識しにくい他の分子に比較して相互に特異的に認識する2個以上の異なる分子のうちの1個を意味する。2個の異なる分子の一方は、他方の分子の特定の空間的及び極性構造と特異的に結合する区域をその表面上又は空隙内に有しており、従って、前記区域は前記構造と相補的であると定義される。これらの分子は特異的結合対のメンバーとすることができる。例えば、特異的結合メンバーとしては、限定されないが、受容体、酵素及び抗体等のタンパク質が挙げられる。
【0019】
本願で使用する「検出可能なラベル」なる用語は、目視又は計器により検出可能なシグナルを発生することができる部分を意味する。検出可能なラベルは、例えば色原体(chromagen)、蛍光化合物、酵素、化学発光化合物、放射性化合物等のシグナル発生物質とすることができる。1実施形態において、検出可能なラベルは蛍光化合物とすることができる。
【0020】
本願で使用する「空間情報」なる用語は、シグナルの発生元の位置の識別を意味する。
【0021】
本願で使用する「画素」なる用語は、デジタル画像における個々の単位点、又はディスプレイ装置におけるアドレス指定可能な最小の画面要素を意味する。画素は画像の表示又は制御可能な最小単位である。各画素は固有のアドレスを有する。画素のアドレスはその空間座標に対応する。画素は通常では二次元格子状に配置されており、多くの場合にはドット又は正方形を使用して表示される。各画素は原画像のサンプルであり、一般にはサンプル数が多いほど正確に原画像が表示される。各画素の強度は一般には可変であり、画像における総画素数は変動し得る。デジタル画像における画素数の代表例は1024×1024である。
【0022】
本願で使用する「強度」なる用語は、単位面積又は体積当たりの電気、光、熱又は音の量又は強さの程度を意味する。より具体的には、本願に記載する方法に関して、「強度」なる用語は単位時間当たり単位面積当たりに計数されたフォトン数を意味する。例えば、単位面積当たり1000フォトンを1画素中500カウントとして記録することができ、単位面積当たり80フォトンを1画素中40カウントとして記録することができる。特定の換算倍率は使用されるカメラシステムにより異なる。強度はフォトン計数値に比例する。
【0023】
本願で使用する「フォトン」なる用語は、光又は他の電磁波の量子に相当する粒子を意味する。フォトンは電磁波周波数に比例するエネルギーをもつが、静止質量はゼロである。
【0024】
本願で使用する「デジタルモード」なる用語は、対象領域面積を識別し、1個以上の結合表面上の高強度ピーク(例えば高強度蛍光ピーク)の総数を計数する型の画像解析を意味する。所定の実施形態では、対象領域面積に対する高強度ピークの総数の比を求め、「面積当たりのピーク数」又は「PPA」として表すことができる。結合表面上で識別された各高強度ピークは免疫サンドイッチ複合体1分子に対応する。ピークは1画素でもよいし、所定の閾値を上回る強度の画素のクラスターでもよい。選択される所定の閾値は、特に対象分析成分と使用される検出可能なラベルによって異なる。
【0025】
本願で使用する「アナログモード」なる用語は、1個以上の蛍光画像において対象領域面積内の総画素強度を計算する型の画像解析を意味する。アナログモードで計算されたシグナル値がプリセット値を下回る場合には、蛍光画像をデジタルモードで解析することができる(即ち、解析をアナログモードからデジタルモードに切り替える)。デジタルモードとアナログモードの解析を図2に模式的に示す。
【0026】
「マスク」及び「画像マスク」なる用語は本願では同義に使用され、特定の特徴の詳細な試験を実施できる画像の部分を区別するために使用されるツールを意味する。マスクは対象領域の面積を空間的に区別することができ、解析を混乱させる可能性のある画像の他の領域を排除することができる。例えば、マスクは特定の免疫サンドイッチ及び/又は微粒子をバックグラウンド又は非特異的蛍光から区別することができる。対象特徴に数値「1」又は白色を割り当てることができ、対象外の特徴に数値「0」又は黒色を割り当てることができる。
【0027】
本願で使用する「換算係数」なる用語は、校正曲線のデジタル部分とアナログ部分を統合するために使用される係数を意味する。これは、デジタルシグナルとアナログシグナルの両方を明白に測定できるオーバーラップ区間を使用して計算される。これらの換算係数はアッセイ特異的であり、校正曲線の作成時に設定すべきである。
【0028】
生体試料
任意の適切な体積の前記試料を準備することができる。当然のことながら、希少な対象の高感度検出には100μL~約2mLの大きな試料体積が必要である。存在量の多い対象では、もっと少ない試料体積で1分子(SM)検出法を実施することができる。この点を踏まえ、生体試料の体積は約10μl~約50μl(例えば10μl、15μl、20μl、25μl、30μl、35μl、40μl又は50μl)とすることができる。別の実施形態において、生体試料の体積は約10μl~約30μl(例えば10μl、11μl、12μl、13μl、14μl、15μl、16μl、17μl、18μl、19μl、20μl、21μl、22μl、23μl、24μl、25μl、26μl、27μl、28μl、29μl、30μl、又は上記数値のいずれか2個により規定される範囲)とすることができる。
【0029】
所定の実施形態では、液体生体試料をアッセイで使用する前に希釈することができる。例えば、生体試料がヒト体液(例えば血液又は血清)である実施形態では、前記体液を適切な溶媒(例えばPBS緩衝液)で希釈することができる。液体試料を使用前に約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍、約100倍又はそれ以上に希釈することができる。
【0030】
他の実施形態では、試料を分析前処理に供することができる。分析前処理は、非特異的なタンパク質の除去、分析成分の高濃度化及び/又は有効且つ廉価で実施可能な混合機能等の付加機能を提供することができる。一般的な分析前処理方法としては、例えば動電トラッピング、交流動電現象、表面弾性波、等速電気泳動、誘電泳動、電気泳動及び当技術分野で公知の他の前濃縮技術の使用が挙げられる。場合により、液体試料をアッセイで使用する前に濃縮してもよい。例えば、生体試料がヒト体液(例えば血液、血清)である実施形態では、沈殿、蒸発、濾過、遠心又はその組み合わせにより前記体液を濃縮することができる。液体試料を使用前に約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍、約100倍又はそれ以上に濃縮することができる。
【0031】
分析成分
所定の実施形態において、前記分析成分は生体分子とすることができる。適切な生体分子の例としては、限定されないが、タンパク質、脂質及び糖質等の高分子が挙げられる。他の生体分子としては、例えばホルモン、抗体、成長因子、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ハプテン、サイトカイン、酵素、受容体(例えば神経細胞受容体、ホルモン受容体、栄養素受容体及び細胞表面受容体)又はそれらのリガンド、がんマーカー(例えばPSA、TNFα)、心筋梗塞のマーカー(例えばBNP、トロポニン、クレアチンキナーゼ等)、毒素、代謝剤(例えばビタミン類)等が挙げられる。適切なタンパク質分析成分としては、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質断片、タンパク質複合体、融合タンパク質、組換えタンパク質、リンタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質等が挙げられる。
【0032】
ある種の実施形態において、前記分析成分は翻訳後修飾タンパク質(例えばリン酸化、メチル化、グリコシル化タンパク質)とすることができ、前記特異的結合メンバーは前記翻訳後修飾に特異的な抗体とすることができる。固体支持体に固定された特異的結合メンバーと修飾タンパク質を結合させることができ、前記支持体上で前記特異的結合メンバーは前記修飾タンパク質と結合するが、未修飾タンパク質とは結合しない。
【0033】
本願に開示する方法により分析することができる分析成分の非限定的な例を挙げると、Aβ42アミロイドβタンパク質、フェチュインA、タウ、セクレトグラニンII、プリオンタンパク質、αシヌクレイン、タウタンパク質、NSE、S100B、NF-L、ApoA1、BDNF、MBP、ナトリウムクレアチニン、BUN、AMPAR、プリオンタンパク質、ニューロフィラメント軽鎖、パーキン、PTEN誘導推定キナーゼ1、DJ-1、ロイシンリッチリピートキナーゼ2、突然変異型ATP13A2、ApoH、セルロプラスミン、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ共活性化因子1α(PGC-1α)、トランスサイレチン、ビタミンD結合タンパク質、プロアポトーティックキナーゼR(PKR)とそのリン酸化PKR(pPKR)、CXCL13、IL-12p40、CXCL13、IL-8、Dkk-3(精液中)、p14エンドカン断片、血清タンパク、ACE2、抗CD25自己抗体、hTERT、CAI25(MUC16)、VEGF、sIL-2、オステオポンチン、ヒト精巣上体タンパク4(HE4)、αフェトプロテイン、アルブミン、尿中アルブミン、尿中微量アルブミン、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、インターロイキン18(IL-18)、腎障害分子1(KIM-1)、肝脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)、LMP1、BARF1、IL-8、癌胎児性抗原(CEA)、BRAF、CCNI、EGRF、FGF19、FRS2、GREB1、LZTS1、α-アミラーゼ、癌胎児性抗原、CA125、IL8、チオレドキシン、β2マイクログロブリン、腫瘍壊死因子α受容体、CA15-3、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、T細胞リンパ腫浸潤・転移誘発タンパク質1(TIAM1)、N-カドヘリン、EC39、アンフィレグリン、dUTPase、分泌型ゲルソリン(pGSN)、前立腺特異抗原(PSA)、チモシンβ15、インスリン、血漿中Cペプチド、グリコシル化ヘモグロビン(HBA1c)、C反応性タンパク(CRP)、インターロイキン6(IL-6)、Rho GDP解離抑制因子2(ARHGDIB)、コフィリン1(CFL1)、プロフィリン1(PFN1)、グルタチオンS-トランスフェラーゼP(GSTP1)、S100タンパク質A11(S100A11)、ペルオキシレドキシン6(PRDX6)、ミトコンドリア局在10kDa熱ショックタンパク質(HSPE1)、C型リゾチーム前駆体(LYZ)、グルコース6-リン酸イソメラーゼ(GPI)、ヒストンH2Aタイプ2-A(HIST2H2AA)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質前駆体(HSPG2)、ガレクチン-3結合タンパク質前駆体(LGALS3BP)、カテプシンD前駆体(CTSD)、アポリポタンパク質E前駆体(APOE)、Ras GTPase活性化様タンパク質(IQGAP1)、セルロプラスミン前駆体(CP)、IGLC2、PCDGF/GP88、EGFR、HER2、MUC4、IGF-IR、p27(kip1)、Akt、HER3、HER4、PTEN、PIK3CA、SHIP、Grb2、Gab2、3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)、TSC1、TSC2、mTOR、ERBB受容体フィードバック阻害剤1(MIG6)、S6K、src、KRAS、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ1(MEK)、cMYC、トポイソメラーゼ(DNA)IIα(170kDa)、FRAP1、NRG1、ESR1、ESR2、PGR、CDKN1B、MAP2K1、NEDD4-1、FOXO3A、PPP1R1B、PXN、ELA2、CTNNB1、AR、EPHB2、KLF6、ANXA7、NKX3-1、PITX2、MKI67、PHLPP、アディポネクチン(ADIPOQ)、フィブリノーゲンα鎖(FGA)、レプチン(LEP)、終末糖化産物特異的受容体(AGER又はRAGE)、α2-HS糖タンパク質(AHSG)、アンギオゲニン(ANG)、CD14、フェリチン(FTH1)、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、インターロイキン2受容体α(IL2RA)、血管細胞接着分子1(VCAM1)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、IL1α、TNFα、核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)、ラクトフェリン、カルプロテクチン、ウィルムス腫瘍1タンパク質、アクアポリン1、MLL3、AMBP、VDAC1、大腸菌エンテロトキシン(易熱性外毒素、耐熱性エンテロトキシン)、インフルエンザHA抗原、破傷風毒素、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、志賀毒素、I型志賀様毒素、II型志賀様毒素、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素A及びB、乱用薬物(例えばコカイン)、タンパク質バイオマーカー(限定されないが、ヌクレオリン、核内因子kB必須モジュレーター(NEMO)、CD-30、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、MUC1グリコフォーム、免疫グロブリンμ重鎖(IGHM)、免疫グロブリンE、αvβ3インテグリン、α-トロンビン、HIVgp120、HIVp24、NF-κB、E2F転写因子、プラスミノーゲン活性化抑制因子、テネイシンC、CXCL12/SDF-1、及び前立腺特異的膜抗原(PSMA)が挙げられる。)が挙げられる。
【0034】
前記分析成分は、例えば胃がん細胞(例えばHGC-27細胞)、非小細胞肺がん(NSCLC)細胞、直腸がん細胞(例えばDLD-1細胞)、H23肺腺がん細胞、Ramos細胞、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)細胞、CCRF-CEM細胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞(例えばHL60細胞)、小細胞肺がん(SCLC)細胞(例えばNCI-H69細胞)、ヒト膠芽腫細胞(例えばU118-MG細胞)、前立腺がん細胞(例えばPC-3細胞)、HER-2を過剰発現するヒト乳がん細胞(例えばSK-BR-3細胞)、膵臓がん細胞(例えばMia-PaCa-2)等の細胞でもよい。他の実施形態において、前記分析成分は、細菌(例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、大腸菌(Escherichia coli)O157:H7、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ属菌O8群(Salmonella O8)及びサルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis))、ウイルス(例えばレトロウイルス(例えばHIV)、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、フィロウイルス(例えばウエストナイルウイルス、エボラウイルス及びジカウイルス)、肝炎ウイルス(例えばA型、B型、C型、D型及びE型)、HPV、パルボウイルス等)、寄生虫又は真菌胞子等の感染性物質でもよい。
【0035】
結合表面
所定の実施形態において、本願に開示する方法は、対象分析成分を1個以上の結合表面に捕捉する工程を含む。他の実施形態において、本開示は、第1及び第2の対象分析成分(並びに、任意に第3、第4、第5及び第6以降の分析成分)を第1及び第2(並びに、任意に第3、第4、第5及び第6以降)の微粒子の表面に捕捉する工程を含む方法を提供する。1実施形態において、前記第1の微粒子は、(i)その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(ii)第1の蛍光色素団で標識されており、前記第2の微粒子は、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む。別の実施形態において、前記第1の微粒子と前記第2の微粒子は粒子径及び/又は形状が異なる(例えば円形微粒子と楕円形微粒子)。
【0036】
所定の実施形態において、前記微粒子は約0.1nm~約10ミクロン、約50nm~約5ミクロン、約100nm~約1ミクロン、約0.1nm~約700nm、約500nm~約10ミクロン、約500nm~約5ミクロン、約500nm~約3ミクロン、約100nm~700nm、又は約500nm~700nmとすることができる。例えば、前記微粒子は約4~6ミクロン、約2~3ミクロン、約0.5~1.5ミクロン、又は約1ミクロンとすることができる。約500nm未満の粒子をナノ粒子とみなすことがある。従って、前記微粒子は任意に約0.1nm~約500nm、約10nm~約500nm、約50nm~約500nm、約100nm~約500nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、又は約500nmのナノ粒子とすることができる。
【0037】
所定の実施形態において、前記結合表面(例えば微粒子)は強磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性又は磁性流体とすることができる。強磁性材料の例としては、Fe、Co、Ni、Gd、Dy、CrO2、MnAs、MnBi、EuO、NiO/Feが挙げられる。フェリ磁性材料の例としては、NiFe2O4、CoFe2O4、Fe3O4(又はFeO-Fe2O3)が挙げられる。前記結合表面は、磁性体である固体コア部分の周囲に1層以上の非磁性体層を配置したものとすることができる。あるいは、非磁性体コアの周囲の層として磁性体部分を配置してもよい。微粒子等の磁性結合表面は乾燥状態で保存してもよいし、液体中に保存してもよい。分析成分を含む試料と接触させる前又は後に、磁性結合表面に磁場を印加してもよい。
【0038】
ある種の実施形態において、結合表面(例えば微粒子)は更に、非捕捉成分(例えば分析成分分子、結合メンバー)がアッセイ中に前記結合表面と非特異的に結合して検出中の偽陽性シグナル又はシグナル低下に繋がるのを阻止すること又は最小限にすることができる保護皮膜、遮断皮膜又は不動態皮膜を含むことができる。ある種の実施形態において不動態皮膜を形成するために利用することができる材料の例としては、限定されないが、タンパク質の非特異的結合を阻止するポリ(エチレングリコール)等のポリマー;この特性をもつ天然タンパク質(例えば血清アルブミン及びカゼイン);界面活性剤(例えばスルホベタイン等の両性イオン界面活性剤);天然長鎖脂質;ポリマーブラシ及び核酸(例えばサケ精子DNA)が挙げられる。
【0039】
当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して前記結合表面(例えば1個以上の微粒子)を一定体積の前記試料と接触させることができる。接触は種々の方法で実施することができ、試料を結合メンバーと混合する方法や、結合メンバーを標的分析成分と接近させることにより前記分析成分を前記結合メンバーに曝露する方法等が挙げられる。接触は必要に応じて多数回繰返してもよい。
【0040】
どのような方法を使用する場合であっても、試料中に存在する分析成分が微粒子の表面等の結合表面に固定された特異的結合メンバーと結合するような条件下で前記結合表面(例えば前記第1及び第2の微粒子)を一定体積の試料と接触させればよい。1実施形態では、前記特異的結合メンバーと分析成分の結合相互作用が生じるために十分な時間にわたって前記結合表面と前記体積の試料の接触を維持する(即ちインキュベートする)。1実施形態では、前記体積の試料を前記結合表面上で少なくとも30秒間~最大10分間インキュベートする。例えば、前記試料を前記微粒子と共に約1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間又は9分間インキュベートすることができる。1実施形態では、前記試料を前記結合表面と共に約2分間インキュベートすることができる。更に、例えばアルブミン(例えばBSA)、非イオン界面活性剤(Tween-20、Triton X-100)、及び/又はプロテアーゼ阻害剤(例えばPMSF)のように特異的結合相互作用を助長する結合緩衝液中でインキュベートしてもよい。結合緩衝液を変動させることにより、アッセイにおいて特異的結合メンバーの結合親和性及び/又は特異性を操作又は改変することができる。所定の実施形態では、結合緩衝液を変動させることにより、結合親和性及び/又は特異性を高めることができる。所定の実施形態では、結合緩衝液を変動させることにより、結合親和性及び/又は特異性を低下させることができる。例えば温度及び塩濃度等の結合相互作用の他の条件も経験的に決定されても、又は製造業者の指示に基づいてもよい。例えば、室温(21℃~28℃、例えば23℃~25℃)、37℃、又は4℃で接触を行うことができる。
【0041】
上述したように、本願に開示する方法には3種以上の異なる分析成分を検出するのに適したものもある。従って、所定の実施形態において、前記方法は、第3、第4又は第5以降の微粒子の表面に第3、第4又は第5以降の対象分析成分を捕捉する工程を含むことができ、(i)前記第3、第4及び第5以降の分析成分の各々は相互に異なると共に、前記第1及び第2の分析成分と異なり、(ii)前記第3、第4又は第5以降の微粒子は、その表面に固定された、前記第3、第4又は第5以降の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む。前記方法は更に、前記捕捉した第3、第4又は第5以降の分析成分を第3、第4又は第5以降のコンジュゲートと反応させる工程を含むことができ、前記第3、第4又は第5以降のコンジュゲートは、第4、第5又は第6以降の蛍光色素団で標識されており且つ前記第3、第4又は第5以降の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第4、第5及び第6以降の蛍光色素団は相互に異なると共に、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団の各々と異なる。
【0042】
特異的結合メンバー
上述したように、前記結合表面(例えば第1の微粒子)には、その表面に固定された、各々前記分析成分と特異的に結合する複数(例えば2個以上、50個以上、100個以上、1,000個以上、又は5,000個以上)の特異的結合メンバーを有してもよい。
【0043】
当然のことながら、特異的結合メンバー(例えば第1、第2、第3、第4又は第5以降の結合メンバー)の選択は、分析対象となる1種以上の分析成分により異なる。多様な標的分子の結合メンバーが知られており、あるいは公知技術を使用して容易に確認又は開発することができる。例えば、標的分析成分がタンパク質である場合には、前記結合メンバーとしては、ペプチド、タンパク質、特に抗体又はその断片(例えば抗原結合性断片(Fab)、Fab’断片及びF(ab’)断片)、全長モノクローナル又はポリクローナル抗体、抗体様断片、組換え抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(「scFv」)、一本鎖抗体、ラクダ科動物に由来する重鎖可変領域ドメイン(「VHH」別称「VHH断片」)(例えばGottlin et al.,Journal of Biomolecular Screening,14:77-85(2009)参照)等のシングルドメイン抗体、組換えVHHシングルドメイン抗体、VNAR断片、ジスルフィド結合Fv(「sdFv」)、抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体、及び上記抗体のいずれかの機能的に活性なエピトープ結合性断片が挙げられる。前記結合メンバーは受容体タンパク質、プロテインA、プロテインC等の他のタンパク質とすることもできる。前記分析成分がステロイド、ビリン、レチノイド又は脂質等の低分子であるとき、前記第1及び/又は第2の特異的結合メンバーは足場タンパク質(例えばリポカリン)又は受容体とすることができる。所定の実施形態において、タンパク質分析成分の特異的結合メンバーはペプチドとすることができる。別の実施形態において、前記標的分析成分が酵素であるとき、適切な結合メンバーとしては、ペプチド、低分子等の酵素基質及び/又は酵素阻害剤が挙げられる。場合により、前記標的分析成分がリン酸化種であるとき、前記結合メンバーはリン酸結合剤を含むことができる。例えば、前記リン酸結合剤は、米国特許第7,070,921号及び米国特許出願公開第2006/0121544号に記載されているもの等の金属イオンアフィニティー担体を含むことができる。
【0044】
前記分析成分が糖質であるとき、潜在的に適切な(本願の定義による)特異的結合メンバーとしては、例えば抗体、レクチン及びセレクチンが挙げられる。当技術分野における通常の知識を有する者に自明の通り、対象標的分析成分と特異的に結合することが可能なあらゆる分子を結合メンバーとして潜在的に使用することができる。
【0045】
ある種の実施形態において、適切な標的分析成分/結合メンバー複合体としては、限定されないが、抗体/抗原、抗原/抗体、受容体/リガンド、リガンド/受容体、タンパク質/核酸、酵素/基質及び/又は阻害剤、(糖タンパク質と糖脂質を含む)糖質/レクチン及び/又はセレクチン、タンパク質/タンパク質、タンパク質/低分子等を挙げることができる。
【0046】
ある種の実施形態はタンパク質又はポリペプチドである結合メンバーを利用する。当技術分野で公知の通り、ポリペプチドを微粒子等の固体表面又は支持体に結合させるためには多数の技術を使用することができる。反応性部分をタンパク質に付加する技術としては、例えば米国特許第5,620,850号に記載されている方法等の多様な技術が知られている。タンパク質を表面に結合させる方法も例えばHeller,Acc.Chem.Res.,23:128(1990)に記載されている。
【0047】
本願に記載するように、例えば、前記特異的結合メンバーと前記分析成分が結合対の相補的部分である場合のように、前記結合メンバーと前記分析成分の結合は特異的である。例えば、1実施形態において、前記結合メンバーは分析成分上のエピトープと特異的に結合する抗体とすることができる。前記抗体は、1実施形態によると、対象分析成分と特異的に結合することが可能な任意の抗体とすることができる。例えば、適切な抗体としては、限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、(例えばHolt et al.,Trends in Biotechnology,21:484-490(2014)に記載されているような)ドメイン抗体(dAb)、例えば軟骨魚類及びラクダ科動物に天然に存在するもの又は合成によるもの(例えばナノボディ、VHH又は他のドメイン構造)であるシングルドメイン抗体(sdAb)、合成抗体(抗体ミメティクスとも言う)、キメラ抗体、ヒト化抗体、融合抗体(「抗体コンジュゲート」とも言う)、及びその断片が挙げられる。別の実施形態において、前記分析成分分子は抗体とすることができ、前記結合メンバーは前記抗体と特異的に結合するペプチドとすることができる。
【0048】
所定の実施形態において、前記特異的結合メンバーは化学的にプログラムされた抗体(cpAb)(Rader,Trends in Biotechnology,32:186-197(2014))、二重特異性cpAb、抗体動員分子(ARM)(McEnaney et al.,ACS Chem.Biol.,7:1139-1151(2012))、トリリガンド捕捉剤(Millward et al.,J.Am.Chem.Soc.,133:18280-18288(2011))等の分岐型捕捉剤、(ヒトフィブロネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型ドメインに由来する)モノボディ等の非抗体足場に由来する人工結合タンパク質、(免疫グロブリン結合性プロテインAに由来する)アフィボディ、(アンキリンリピートモジュールに基づく)DARPins、(リポカリンであるビリン結合タンパク質及びヒトリポカリン2に由来する)アンチカリン、システインノットペプチド(ノッティン:knottins)(Gilbreth and Koide,Current Opinion in Structural Biology,22:1-8(2012);Banta et al.,Annu.Rev.Biomed.Eng.,15:93-113(2013))、WWドメイン(Patel et al.,Protein Engineering,Design & Selection,26(4):307-314(2013))、受容体リガンドの転用、アフィチン(Behar et al.,Protein Engineering,Design & Selection,26:267-275(2013))、及び/又はアドヒロン(Adhirons)(Tiede et al.,Protein Engineering,Design & Selection,27:145-155(2014))とすることができる。
【0049】
前記分析成分が細胞(例えば哺乳動物、鳥類、爬虫類、他の脊椎動物、昆虫、酵母、細菌細胞等)である実施形態において、前記特異的結合メンバーは細胞表面抗原(例えば細胞表面受容体)に対して特異的親和性を有するリガンドとすることができる。1実施形態において、前記特異的結合メンバーは標的細胞種の表面で発現される細胞接着分子に対して結合特異性を有する接着分子受容体又はその部分とすることができる。前記接着分子受容体は前記標的細胞の細胞外表面上の接着分子と結合することにより、前記細胞を固定又は捕捉する。その後、第1の結合メンバーと同一でもよいし、前記細胞の表面で発現される別の分子と結合するものでもよい第2の結合メンバーを使用することにより、前記結合した細胞を検出することができる。
【0050】
所定の実施形態において、分析成分分子と特異的結合メンバーの結合親和性は、非特異的に結合している分子又は粒子を除去するための洗浄工程を含むアッセイの諸条件下で結合を維持するために十分でなければならない。所定の実施形態において、例えば、ある種の生体分子の検出では、分析成分分子とその相補的結合メンバーの結合定数を少なくとも約10~約10-1、少なくとも約10~約10-1、少なくとも約10~約10-1、約10-1超とすることができる。
【0051】
任意の適切な方法を使用して特異的結合メンバーを結合表面(例えば微粒子)に結合させることができ、種々の方法が当技術分野で公知である。例えば、特異的結合メンバーを結合表面に結合させるには、任意の部分を介することができる連結、官能基導入、あるいは前記結合メンバーと前記微粒子の結合を助長するように前記微粒子及び/又は結合メンバーを修飾する方法を利用できる。前記結合メンバーと前記結合表面の連結としては、1個以上の化学的若しくは物理的結合を形成する方法及び/又は化学的スペーサーを介してこのような結合を形成する方法(例えば、ファンデルワールス力、水素結合、静電相互作用、疎水性/親水性相互作用等による非特異的結合)が挙げられる。例えば米国特許第5,620,850号及びHeller,Acc.Chem.Res.,23:128(1990)に記載されているもの等の多数の技術を使用して多様な固体支持体にポリペプチドを結合させることができる。
【0052】
前記結合表面(例えば第1及び第2の微粒子)と前記試料の十分なインキュベーション時間後に、前記微粒子表面に固定された前記特異的結合メンバーを介して前記試料中に存在する対象分析成分を前記結合表面に捕捉することが望ましい。
【0053】
マクロコンジュゲート
対象分析成分を複数の微粒子等の結合表面に捕捉した後、本願に開示する方法は、前記捕捉した分析成分と複数(例えば2個以上、50個以上、100個以上、1,000個以上、又は5,000個以上)のマクロコンジュゲートを反応させる工程を含むことができる。1実施形態において、前記マクロコンジュゲートの各々は、(i)多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと;(ii)複数の特異的結合メンバー(例えば抗体)、その断片又はその組み合わせと;(iii)複数のタグ又は検出可能なラベルと、任意に(iv)複数の担体タンパク質を含む。前記マクロコンジュゲートが複数のタグを含むとき、本願に記載する方法は複数の蛍光剤を前記タグと反応させる工程を含み、各蛍光剤は前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルを含む。
【0054】
他の実施形態において、前記マクロコンジュゲートの各々は、(i)多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと;(ii)前記コアの周囲の位置と(例えばランダムに)共有結合させた複数の担体タンパク質と;(iii)前記担体タンパク質と共有結合させた複数の特異的結合メンバー(例えば抗体)、その断片又はその組み合わせと;(iv)前記複数の担体タンパク質又は前記複数の抗体と共有結合させた複数のタグを含む。1種以上の蛍光剤を前記マクロコンジュゲートと反応させ、前記蛍光剤が直接又は上記タグを介して前記マクロコンジュゲートコアと結合するようにしてもよい。
【0055】
当然のことながら、あるタンパク質又はポリマー鎖を別のタンパク質又はポリマー鎖と共有結合又はイオン結合等により連結させると、「架橋された」タンパク質又はポリマーが形成される。架橋ポリマーは、合成ポリマー鎖又は天然ポリマー鎖(例えばタンパク質又は多糖)を含むことができる。前記多糖は、グリコシド結合により相互に結合した単糖単位の長い連鎖から構成される任意の適切なポリマー糖質分子とすることができる。適切な多糖としては、限定されないが、セルロース、デンプン、グリコーゲン、グルカン、アルギン酸塩、カードラン、デキストラン、ゲラン、ヒアルロナン、レバン、キサンタン及びプルランが挙げられる。1実施形態において、前記多糖はデキストラン、アミノデキストラン又はその組み合わせである。本願で使用する「デンドリマー」なる用語は、樹状アーム又は枝から構成される明確で均一な単分散構造を有する放射状に対称性のナノサイズの分子を意味する(Abassi et al.,Nanoscale Res Lett.,9(1):247(2014))。多種多様なデンドリマーが当技術分野で公知であり、多価性、自己集合性、静電相互作用、化学的安定性、低細胞毒性及び溶解性等の生物学的性質を示す。本願に開示する方法で使用することができる適切なデンドリマーの例としては、限定されないが、DNAデンドリマー(例えばFu et al.,J Gene Med.,9(12):1334-1342(2008);及びFu et al.,J Gene Med.,9(3):181-188(2007)参照)、及びポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(Esfand et al.,Drug Discovery Today,6(8):427-436(2001))が挙げられる。本願で使用する「ポリエーテル」なる用語は、反復単位が特にアルデヒド又はエポキシドに由来する炭素-酸素結合を含むポリマー群のいずれかを意味する。1実施形態において、前記ポリエーテルはポリエチレングリコール(PEG)とすることができる。本願で使用する「ナノ粒子」なる用語は、その輸送と性質に関して1単位として機能する1~100ナノメートル(nm)のサイズの無機粒子を意味する。使用するポリマー又はタンパク質の種類に関係なく、当然のことながら、前記架橋ポリマー又はタンパク質は本願に記載する複合体の他の要素を結合させる足場として機能する。
【0056】
前記マクロコンジュゲートは更に、前記コアの周囲の位置に(例えばランダムに)共有結合させた複数(例えば2個以上、50個以上、100個以上、1,000個以上、又は5,000個以上)の担体タンパク質を含むことができる。本願で使用する「担体タンパク質」なる用語は、前記マクロコンジュゲートの溶解度、安定性、反応性、及び/又は特異性を改善するタンパク質を意味する。コアと共有結合させることができる任意の適切なタンパク質を担体タンパク質として使用することができる。1実施形態において、前記担体タンパク質は血清アルブミンタンパク質である。血清アルブミンタンパク質は肝臓で産生される球状タンパク質であり、哺乳動物に最も多量に存在する血中タンパク質である。前記血清アルブミンタンパク質はヒト血清アルブミン又はウシ血清アルブミンとすることができる。他の実施形態において、前記担体タンパク質は抗原又は抗体とすることができる。コアの周囲の担体タンパク質の結合は、特異性又はパターンなしに行われるという意味で「ランダム」とすることができる。前記複数の担体タンパク質とコアとの共有結合は、例えばMattson et al.,Molecular Biology Reports,17:167-183(1993);及びHermanson,G.T.(ed.),Bioconjugate Techniques,3rd Edition,Academic Press(2013)に記載されている方法等の当技術分野で公知の任意の適切な方法により行うことができる。
【0057】
前記マクロコンジュゲートは更に、前記担体タンパク質に共有結合させた複数(例えば2個以上、50個以上、100個以上、1,000個以上、又は5,000個以上)の特異的結合メンバー(例えば抗体)、その断片又はその組み合わせを含むことができる。前記複数の特異的結合メンバー又はその断片(例えば抗体又は抗体断片)は前記分析成分と特異的に結合し、その結果、前記捕捉した分析成分と前記マクロコンジュゲートが結合し、免疫サンドイッチ(本願では「免疫サンドイッチ複合体」とも言う)が形成される。前記特異的結合メンバー及び/又はその断片は、当技術分野で公知の上記のもの等の全長抗体又は任意の適切な抗体断片とすることができる。1実施形態において、前記標識免疫サンドイッチ複合体は抗原結合断片(Fab)等の抗体断片を含む。
【0058】
前記マクロコンジュゲートは更に、前記マクロコンジュゲートコア、前記複数の担体タンパク質、及び/又は前記複数の特異的結合メンバーと共有結合させた複数(例えば2個以上、50個以上、100個以上、1,000個以上、又は5,000個以上)のタグを含むことができる。本願で使用する「タグ」なる用語は、蛍光剤を前記マクロコンジュゲートに結合(即ち連結)させることができる分子又は化合物を意味する。前記タグはポリマー(例えばアニオン性又はカチオン性ポリマー)、アッセイに干渉しないタンパク質(例えば球状タンパク質)、ポリヌクレオチド(例えばDNA又はRNA)、又はナノ粒子とすることができる。所定の実施形態において、前記タグはアフィニティータグとすることができる。本願で使用する「アフィニティータグ」なる用語は、タンパク質のN末端又はC末端と組換え融合され、一般には前記タンパク質のアフィニティー精製を容易にする型のエピトープタグを意味する。アフィニティータグは、前記タンパク質又は培養培地中に存在する可能性のある他のタンパク質との潜在的相互作用を制限するように、一般に小寸法で不活性である。アフィニティータグの例としては、限定されないが、ビオチン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリ(His)タグ、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、及びFLAGタグが挙げられる。1実施形態において、前記タグはビオチンを含む。別の実施形態において、前記タグは前記蛍光剤と結合する分子又は化合物を含む。例えば、前記タグは、蛍光色素団又はアプタマーと特異的に結合する抗体(例えば抗フルオレセイン抗体)を含むことができる。本願で使用する「アプタマー」なる用語は、特に低分子、タンパク質及びペプチド等の予め選択された標的と高い親和性及び特異性で結合することができるオリゴヌクレオチド又はペプチド分子を意味する。蛍光色素団及び/又はアプタマーと結合する抗体は当技術分野で公知であり、種々の製造業者(例えば、ThermoFisher Scientific及びBio-Rad Laboratories,Inc.)から市販されている。本願に記載する当技術分野で公知の架橋法の使用や、例えば国際特許出願公開WO2017/004463A1に記載されているもの等の切断可能なリンカー分子の使用により、前記複数のタグを前記マクロコンジュゲートコア、前記複数の担体タンパク質、及び/又は前記複数の抗体と共有結合させることができる。
【0059】
マクロコンジュゲートの1例を図1に模式的に示す。前記分析成分と抗体又は抗体断片の結合相互作用を生じるために十分な条件下で免疫サンドイッチ形成を実施することができる。(例えば前記マクロコンジュゲートを介して)前記分析成分を前記抗体又は抗体断片と反応させた後、前記分析成分に結合していない抗体、抗体断片又は前記マクロコンジュゲートのコンポーネントを除去することができ、その後、任意に洗浄工程を実施することができる。例えば、液滴駆動、電気泳動、エレクトロウェッティング、誘電泳動、静電駆動、電場介在、電極介在、毛管力、クロマトグラフィー、遠心、吸引、又は表面弾性波(SAW)による洗浄法等の任意の適切な手段により、結合していない抗体、抗体断片又は前記マクロコンジュゲートのコンポーネントを免疫サンドイッチから分離することができる。
【0060】
前記方法が生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する工程を含む場合には、前記第1及び第2の対象分析成分をそれぞれ前記第1及び第2の微粒子の表面に捕捉した後に、前記方法は、前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程と、前記第2の対象分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程を含み、前記第1のコンジュゲートは、第2の蛍光色素団で標識されており且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第2のコンジュゲートは、第3の蛍光色素団で標識されており且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含む。本願で使用する「コンジュゲート」なる用語は、特異的結合対メンバーと検出可能なラベルを含む複合体を意味する。前記特異的結合対メンバーは、本願に記載するような抗体又は抗体断片とすることができる。従って、前記コンジュゲートの前記結合対メンバーは前記分析成分と特異的に結合し、その結果、前記捕捉した分析成分と前記コンジュゲートが連結され、免疫サンドイッチが形成される。
【0061】
蛍光剤
所定の実施形態において、前記マクロコンジュゲートは、前記マクロコンジュゲートコア又は前記複数の特異的結合メンバーと共有結合させた複数の蛍光剤を含む。他の実施形態において、本願に記載する方法は、複数の蛍光剤を前記マクロコンジュゲートと反応させる工程を含む。各蛍光剤は、(1)前記マクロコンジュゲートコア又はタグと結合することが可能な分子と、(2)検出可能なラベルを含む。所定の実施形態では、複数の蛍光剤が同時に単一のマクロコンジュゲートと結合し、微粒子上で免疫サンドイッチ1分子の直接検出が可能になる。蛍光剤で使用される分子の選択はマクロコンジュゲートで使用されるタグにより異なる。ある種の実施形態において、前記分子はタンパク質である。前記タグがビオチンである実施形態において、前記マクロコンジュゲートコア又は前記タグと結合することが可能な前記蛍光剤における前記タンパク質は、ストレプトアビジンとすることができる。前記タグが抗体である実施形態において、前記蛍光剤における前記分子は、前記抗体と特異的に結合する蛍光色素団、アプタマー又は抗原とすることができる。
【0062】
所定の実施形態において、上記のような第1の微粒子は第1の蛍光色素団を含み、前記第1及び第2のコンジュゲートの前記特異的結合メンバーは、それぞれ第2及び第3の蛍光色素団で標識されている。この実施形態において、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団は相互に異なる。前記第1及び第2の捕捉した分析成分を前記第1及び第2のコンジュゲートと反応させた後、前記捕捉した分析成分と結合していない特異的結合メンバー(例えば抗体又は抗体断片)又は前記コンジュゲートのコンポーネントを除去し、その後、任意に洗浄工程を実施することができる。例えば、液滴駆動、電気泳動、エレクトロウェッティング、誘電泳動、静電駆動、電場介在、電極介在、毛管力、クロマトグラフィー、遠心、吸引、又は表面弾性波(SAW)による洗浄法等の任意の適切な手段により、結合していない抗体、抗体断片又は前記コンジュゲートのコンポーネントを免疫サンドイッチから分離することができる。
【0063】
当技術分野で公知の任意の適切な蛍光化合物を検出可能なラベルとして使用することができる。適切な蛍光化合物の例としては、限定されないが、5-フルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、3’6-カルボキシフルオレセイン、5(6)-カルボキシフルオレセイン、6-ヘキサクロロフルオレセイン、6-テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコビリタンパク質(フィコエリスリン、R-フィコエリスリン及びアロフィコシアニン)、量子ドット(例えばセレン化カドミウムを硫化亜鉛で被覆したもの)、示温ラベル、又はイムノポリメラーゼ連鎖反応ラベルが挙げられる。特に、蛍光剤に含むことができる高蛍光性化合物の例はフィコエリスリン(PE)とアロフィコシアニン(APC)である。R-フィコエリスリン又はPEは、抗体又は他の分子を標識するための蛍光指示薬として当技術分野で種々の用途に使用されている。R-フィコエリスリンは約566nmに強い吸収を示し、496nmと545nmに二次ピークがあり、575nmに強い発光を示す。R-フィコエリスリンはこれまでに確認されている最も明るい蛍光色素団の1つである。PEと同様に、APCは高蛍光性タンパク質であるが、680nmに発光を示す。1実施形態において、前記タグはビオチンを含み、前記複数の蛍光剤はストレプトアビジン-フィコエリスリンコンジュゲート(SAPE)又はストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SAAPC)コンジュゲートを含む。SAPEはビオチン結合タンパク質であるストレプトアビジンをR-フィコエリスリンと共有結合させたものであり、SAAPCはストレプトアビジンをアロフィコシアニンと共有結合させたものである。SAPEとSAAPCはいずれも、例えばThermoFisher Scientific(Waltham,MA)及びProZyme(Hayward,CA)等の種々の製造業者から市販されている。
【0064】
検出可能なラベル、標識手順及びラベルの検出については、Polak and Van Noorden,Introduction to Immunocytochemistry,2nd ed.,Springer Verlag,N.Y.(1997)と、Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1996),Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oregonに記載されている。
【0065】
当然のことながら、上記分析成分捕捉・免疫サンドイッチ形成方法の種々の構成が本開示の範囲に含まれる。実際に、上記マクロコンジュゲート及び蛍光剤の各種コンポーネントは任意の適切な組合せ、構成又はフォーマットで配置又は利用することができる。
【0066】
当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して試料中に存在する対象分析成分の有無又は量を判定(例えば定量)することができる。このような方法としては、限定されないが、イムノアッセイが挙げられる。例えばサンドイッチイムノアッセイ(例えばモノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)、競合阻害イムノアッセイ(例えばフォワード及びリバース)、競合結合アッセイ、不均一系アッセイ、及びオンザフライ捕捉アッセイ等の任意の適切なイムノアッセイを利用することができる。所定の実施形態では、1個のタグを捕捉抗体と検出抗体に結合させる。本願に開示する方法で使用することができるイムノアッセイコンポーネント及び技術については、例えば国際特許出願公開第WO2016/161402号及びWO2016/161400号に詳細に記載されている。
【0067】
本願に開示する方法は品質管理コンポーネントを含むことができる。本願に記載するイムノアッセイ及びキットの文脈における「品質管理コンポーネント」としては、限定されないが、キャリブレーター、対照及び感度パネルが挙げられる。抗体等の分析成分の濃度の内挿用の校正(標準)曲線を作成するためには、(例えば1個以上、例えば複数の)「キャリブレーター」又は「標準」を使用することができる。あるいは、参照レベル又は対照レベル(例えば「低」、「中」、又は「高」レベル)の付近の1個のキャリブレーターを使用することができる。複数のキャリブレーター(即ち、2個以上のキャリブレーター又は変動量のキャリブレーター)を併用して「感度パネル」を構成することができる。前記キャリブレーターは任意に1系列のキャリブレーターの一部であり、また、そうであることが好ましく、前記系列においてキャリブレーターの各々は、例えば濃度又は検出法(例えば比色検出又は蛍光検出)等が前記系列における他のキャリブレーターと相互に異なる。
【0068】
多重化
本願に開示する方法は、試料中の2種以上(例えば2種、3種、4種、5種又は6種以上)の標的分析成分を検出するために2個以上(例えば2個、3個、4個、5個又は6個以上)の微粒子と特異的結合メンバーを含むことができ、この方法を本願では「多重イムノアッセイ」又は「多重アッセイ」と言う。前記特異的結合メンバーの各々は異なる分析成分と結合し、各特異的結合メンバー及び/又は微粒子は異なる検出可能なラベルを含むことができる。実際に、1実施形態において、本開示は以下の工程、即ち、(a)第1の対象分析成分を第1の微粒子の表面に捕捉する工程であり、前記第1の微粒子が、(i)その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(ii)第1の蛍光色素団で標識されている、前記工程と;(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第1の分析成分が前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子が、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む、前記工程を含む方法を提供する。別の実施形態において、前記方法は以下の工程、即ち、(a)第1の対象分析成分を第1の微粒子の表面に捕捉する工程であり、前記第1の微粒子が、その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第1の分析成分が前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子が、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(iii)前記第1の微粒子と前記第2の微粒子の粒子径及び/又は形状が異なる、前記工程を含む。
【0069】
撮像及び解析
イムノアッセイは従来では蛍光、化学発光、又は分析成分に応答してシグナルを発生する他の手段を使用して実施されている。多くのイムノアッセイは反応混合物の総体積内で発生された光シグナルの強度を測定することにより実施されている。発生された光シグナルは光学手段により測定することができ、発生された光シグナルは多数の分子により放出される。一般には、本願に記載するように、イムノアッセイは、固体支持体、例えば平板表面(例えばフラットプレート又はバイオチップ)、ビーズ又は微粒子に結合させた第1の抗体を含む試薬と、抗原を含む疑いのある試料とを混合し、反応混合物を形成することにより実施することができる。試料中に抗原が存在する場合には、第1の抗体と特異的に結合する。第2の抗体にラベルを結合させたコンジュゲートを反応混合物に導入すると、上述したように固体支持体に結合させた第1の抗体と特異的に結合している抗原と特異的に結合する。一般には洗浄工程を実施することにより未結合のコンジュゲートを反応混合物から除去した後に、ラベルに帰属するシグナルを測定する。反応混合物の総体積に由来するシグナルを測定した後に校正曲線と比較し、前記試料中に存在する抗原の濃度を求める。
【0070】
光強度は発光ダイオード(LED)及び/又はレーザーと検出器を使用して測定することができ、色、体積及び試料層分離等の試料特性の定性的評価が得られる。例えば電荷結合素子(CCD)カメラ等の二次元検出システムも試料の蛍光又は化学発光を検出するために使用される。市販システムは、結合表面に化学発光マーカー又は蛍光マーカーを添付し、レンズ光学系を使用することによりCCDセンサーに投影する光学撮像システムであるか、あるいはイメージインテンシファイアとCCDカメラの組合せから構成される。平板表面(例えばバイオチップ)に固定された物質の空間分解蛍光光学検出には、「スキャナー」を使用することができ、集光レーザービームを使用してチップの表面をスキャンし、放出された蛍光を検出することができる。蛍光スキャナーの例は、例えば米国特許第5,837,475号及び5,945,679号に記載されている。落射型蛍光顕微鏡に共焦点励起・検出システムを搭載したスキャナーも知られている。放出された蛍光を検出するためにスキャナーで使用されるシステムは通常では「シングルチャネルシステム」であり、即ち、例えば個々のフォトセル又は二次電子倍増管(光電子倍増管)である。
【0071】
本願に記載する方法では、空間情報及び/又は試料からの分析成分を含む個々の免疫サンドイッチ複合体に関連する情報により、従来の方法よりもアッセイの感度が改善される。従来のリガンド-受容体結合アッセイに含まれていない空間情報を取り込むことにより、発生されたシグナルから例えば試薬の凝集と非特異的結合を取り除くことができ、試料中の分析成分の適格性を確認することができ、それと同時又はその後に定量することができる。例えば、適格性確認については、例えば微粒子等の固相に関連する望ましくないバックグラウンドシグナルを試験し、強度情報の使用前に除去することができる。
【0072】
この点に鑑み、本願に記載する方法は更に、上述したように免疫サンドイッチが形成された結合表面(例えば1個以上の微粒子)を撮像する工程と、得られた画像を解析する工程を含む。所定の実施形態では、免疫サンドイッチが形成された表面を任意の固体支持体(例えば任意の平板(平坦)表面、例えば検出スライド上のマイクロ流体チャネル)上で撮像する。本願に記載する方法で使用するのに適した撮像システムは、個々の結合表面(例えば微粒子)及び/又は個々の免疫サンドイッチ複合体に関連する情報を分解できるように画像を取得することが可能な任意のシステムとすることができる。本願に記載する方法で使用するのに適した撮像装置としては、限定されないが、光学顕微鏡、走査型顕微鏡,蛍光イメージングスキャナー等が挙げられる。
【0073】
本発明の原理を使用する1実施形態では、1個以上の結合表面の1個以上の蛍光画像を捕捉し、前記蛍光画像の強度を計算する。
【0074】
別の実施形態において、微粒子の表面等の前記結合表面を撮像する工程は、前記微粒子の透過光画像と、前記蛍光剤に対応する1個以上の蛍光画像を取得する工程を含む。透過光画像は、結合表面(例えば微粒子表面)を含む全画像区域を特定するために利用することができる。次に、前記結合表面に直接結合した蛍光剤の位置及び/又は強度を求めるために蛍光画像を取得する。蛍光画像は色(例えば赤、緑、青)を使用し、所定の実施形態において、これらの色は第1、第2及び第3の蛍光色素団に対応する。次に、得られた透過光画像と蛍光画像を任意の適切な方法により解析することができ、所定の実施形態において、このような方法としては、画像マスクの作成が挙げられる(図2参照)。
【0075】
マスクは一般に対象領域と、解析を実施する際に考慮しない区域を規定する。図2に示す1実施形態では、結合表面を含む全画像区域が解析対象領域として規定され(即ち明部(図2の白点線矢印参照))、その他の区域は考慮されない(即ち暗部(図2の白実線矢印参照))。対象領域について、対象領域面積を計算する。次に前記1個以上の蛍光画像にマスクを掛け、対象領域からの総蛍光強度を求める。1実施形態では、強度の総「カウント数」として総蛍光強度を測定することができ、対象領域を画素数で測定することができる。つまり、アナログモードで1画素当たりのカウント数(「CPP」)を計算することができる。所定の実施形態では、前記1個以上の取得された蛍光画像をデジタルモード及び/又はアナログモードで解析することができる。アナログモードで計算されたCPP等のシグナル値が所定値を下回る場合には、画像解析をアナログモードからデジタルモードに切り替えることができる。アナログモード及び/又はデジタルモードを決定する方法として当技術分野で公知の他の方法も使用できる。上述したように、デジタルモードでは対象領域を使用し、前記結合表面上の高強度ピークの総数を計数する。次に対象領域面積に対する高強度ピークの総数の比を求め、「面積当たりのピーク数」又は「PPA」として表すことができる。前記結合表面で識別される各高強度ピークは免疫サンドイッチ複合体1分子に対応する。高強度ピークは1画素でもよいし、所定の閾値を上回る強度の画素のクラスターでもよい。選択される所定の閾値(本願では「プリセット値」とも言う)は特に、対象分析成分と使用される検出可能なラベルにより異なる。この解析を図2に模式的に示すと共に、実施例2に記載する(使用するプリセット値が1000の場合について記載するが、代替実施形態では、プリセット値を1000未満又は1000超としてもよい)。所定の実施形態において、対象領域における平均画素強度が所定値未満である場合には、前記画像を解析する工程は、(i)前記対象領域において蛍光強度の高いピークを計数する工程と;(ii)前記1個以上の蛍光画像において前記対象領域の面積に対するピーク数の比を求める工程と;(iii)換算係数を使用して複合シグナルを計算し、種々の分析成分濃度で得られたデータ点を統合する工程を含む。
【0076】
多重化方法では、画像差分を含むカスタマイズされた画像解析法を使用して画像を解析することができる。この画像解析法は、本願に開示する方法で利用される特定の分析成分、試料及びアッセイ条件に応じて設定又は変更できるという意味で「カスタマイズ」されている。1実施形態において、前記カスタマイズされた画像解析法は、上記のように取得した透過光画像と蛍光画像を使用して一連の画像「マスク」を作成する工程を含む。例えば、(i)透過光画像に基づいて全体画像マスクを作成し;(ii)第1の蛍光色素団に対応する蛍光画像に基づいて第1の画像マスクを作成し;(iii)全体画像マスクから第1の画像マスクを差し引いて、第2の画像マスクを作成することにより、画像を解析する。例えば、1個の透過光画像と第1、第2及び第3の蛍光色素団に対応する3個の蛍光画像(合計4個の画像)を取得する場合には、全体画像マスクはコントラストに基づいて作成され、1回のアッセイで利用される全微粒子を含む。第1の蛍光色素団の色の蛍光画像を使用し、第1の分析成分を捕捉しているか又は捕捉していない第1の微粒子のみを含む第1の画像マスク(「マスク1」)を作成することができる。次に全体画像マスクから第1の画像マスクを差し引くことにより、第2の分析成分を捕捉した第2の微粒子のみを含む第2の画像マスク(「マスク2」)を作成することができる。画像マスクの作成後、前記方法は更に、前記第1の画像マスクを使用して前記第2の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第1の分析成分を検出する工程と、前記第2の画像マスクを使用して前記第3の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第2の分析成分を検出する工程を含むことができる。第1及び第2の対象分析成分を検出するための多重イムノアッセイにおける画像マスクの作成と解析を図9及び図10に模式的に示す。当然のことながら、特定の多重イムノアッセイにより評価される標的分析成分の総数に応じて更に多くの画像マスクを上記のように作成・解析することができる。試料(例えば陰性試料)中に対象分析成分が存在しない実施形態では、第1の蛍光色素団で標識した第1の微粒子のシグナルが唯一の検出可能なシグナルとなるが、実施形態によっては、非特異的結合が生じ、その結果、微弱ながらも検出可能なシグナルを発生する場合もある。
【0077】
強度の関数として分析成分の濃度を表示する校正曲線と強度を比較するためには、分析した結合表面の1画素当たりの平均強度値を測定することができる。例えば、光強度を測定することが可能なCCDカメラ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラを使用し、適格性を確認された微粒子の1画素当たりの平均強度値を求めることができる。強度測定値は、カウント単位で表されるパラメーターに換算することができる。各画素はその画素で測定された光強度に対応する数値を有する。蛍光剤のラベルから測定されたシグナル量に基づき、分析成分の濃度を求める。
【0078】
他の実施形態では、分析成分を1分子レベルで分析(例えば検出及び/又は定量)するための手法と、本願に記載する方法を併用することができる。本開示の関連では1分子及び1分子相互作用を分析するのに適した任意の技術を使用することができ、種々の技術が当技術分野で公知である。このような1分子(SM)検出技術としては、限定されないが、1分子蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)(例えばKeller et al.,J.Am.Chem.Soc.,136:4534-4543(2014);及びKobitski et al.,Nucleic Acids Res.,35:2047-2059,(2007)参照)、リアルタイム1分子共免疫沈降法(例えばLee et al.,Nat.Protoc.,8:2045-2060(2013)参照)、1分子電子移動法(例えばYang et al.,Science,302:262-266(2003);及びMin et al.,Phys.Rev.Lett.,94:198302(2005)参照);1分子の分子間力分光法(例えばCapitanio,M.& Pavone,F.S.,Biophys.J.,105:1293-1303(2013);及びLang et al.,Biophys.J.,83:491-501(2009)参照)、細胞抽出液プルダウンアッセイ(例えばJain et al.,Nature,473:484-488,(2011);及びJain et al.,Nat.Protoc.,7:445-452(2012)参照)、分子モーターの使用(例えばYildiz et al.,Science,300(5628):2061-2065(2003)参照)、生細胞における1分子イメージング(例えばSako et al.,Nat.Cell.Biol.,2(3):168-172(2000)参照)、ナノポアテクノロジー(例えば国際特許出願公開WO2016/161402参照)、ナノウェルテクノロジー(例えば例えば国際特許出願公開WO2016/161400参照)、及び1分子全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡(例えばReck-Peterson et al.,Cold Spring Harb.Protoc.,2010(3):pdb.top73.doi:10.1101/pdb.top73(March 2010);及びKukalkar et al.,Cold Spring Harb.Protoc.,2016(5):pdb.top077800.doi:10.1101/pdb.top077800(May 2016)参照)が挙げられる。
【0079】
変法
本願には、試料中に存在する2種以上の対象分析成分の有無又は量を判定する方法を開示するが、このような方法は本願に記載する通りとすることができる。前記方法は、分析成分の他の分析方法を考慮して改変してもよい。周知の変法の例としては、限定されないが、酵素検出法(酵素免疫測定法(EIA)又は酵素免疫吸着測定法(ELISA))を含めたサンドイッチイムノアッセイ(例えばモノクローナル-モノクローナルサンドイッチイムノアッセイ、モノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)、競合阻害イムノアッセイ(例えばフォワード及びリバース)、競合結合アッセイである多元酵素免疫測定法(EMIT)等のイムノアッセイに加え、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、ワンステップ抗体検出アッセイ、均一系アッセイ、不均一系アッセイ、オンザフライ捕捉アッセイ、1分子検出アッセイ等が挙げられる。このような方法は、例えば、米国特許第6,143,576号、6,113,855号、6,019,944号、5,985,579号、5,947,124号、5,939,272号、5,922,615号、5,885,527号、5,851,776号、5,824,799号、5,679,526号、5,525,524号及び5,480,792号;国際特許出願公開WO2016/161402及びWO2016/161400;並びにAdamczyk et al.,Anal.Chim.Acta,579(1):61-67(2006)に開示されている。
【0080】
分析成分分析装置
本願に記載する方法は分析成分分析に適した任意の装置を使用して実施することができ、種々の装置が当技術分野で公知であり、例えば、蠕動ポンプシステム(例えばThermoFisher Scientific,Waltham,MAから市販されている可変流量蠕動ポンプであるFISHERBRAND(TM);及びMilliporeSigma,Burlington,MAから市販されている蠕動ポンプシステム)、自動/ロボット試料分配システム(例えばHamilton Robotics,Reno,NV及びThermoFisher Scientific,Waltham,MAから市販されているもの)、マイクロ流体デバイス、液滴ベースマイクロ流体デバイス、デジタルマイクロ流体デバイス(DMF)、表面弾性波マイクロ流体(SAW)デバイス、又は誘電膜上エレクトロウェッティング(EWOD)デジタルマイクロ流体デバイス(例えばPeng et al.,Lab Chip,14(6):1117-1122(2014);及びHuang et al.,PLoS ONE,10(5):e0124196(2015)参照)、並びにKingfisher(TM)機器(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)、ARCHITECT(TM)アナライザー(Abbott,Abbott Park,IL)、及び当技術分野で公知の他の自動機器等の他の自動システムが挙げられる。
【0081】
1実施形態において、本願に記載する方法はデジタルマイクロ流体(DMF)デバイス等のマイクロ流体デバイスを使用して実施することができる。本願に記載する方法を実施するためには当技術分野で公知の任意の適切なマイクロ流体デバイスを使用することができる。本方法で使用することができるマイクロ流体デバイスの例としては、例えば、国際特許出願公開第WO2007/136386号、WO2009/111431号、WO2010/040227号、WO2011/137533号、WO2013/066441号、WO2014/062551号及びWO2014/066704号、並びに米国特許第8,287,808号に記載されているものが挙げられる。場合により、前記デバイスはラボオンチップデバイスとすることができ、分析成分を含有しているか又は含有していることが疑われる試料の液滴内で分析成分分析を実施することができる。
【0082】
1実施形態では、本願に記載する方法の少なくとも2工程(例えば2工程、3工程、又は全工程)をデジタルマイクロ流体デバイスで実施する。「デジタルマイクロフルイディクス(DMF)」、「デジタルマイクロ流体モジュール(DMFモジュール)」、又は「デジタルマイクロ流体デバイス(DMFデバイス)」なる用語は本願では同義に使用され、不連続な小体積の液体を液滴として操作できるようにデジタル又は液滴ベースマイクロ流体技術を利用するモジュール又はデバイスを意味する。デジタルマイクロフルイディクスは流路内に流体-流体分散を生じるために乳化科学(主に油中水滴型乳化)の原理を使用し、多分散性を非常に低く抑えて単分散液滴/気泡の生成を可能にする。デジタルマイクロフルイディクスは再構成可能なネットワーク内での不連続液滴の微量操作を基礎とする。液滴形成、輸送、分割及び融合の基本操作を組み合わせることにより、複合命令をプログラムすることができる。
【0083】
デジタルマイクロフルイディクスはバイナリー電気信号により操作することができる不連続な体積の流体で機能する。不連続な単位体積の液滴を使用することにより、マイクロ流体作用を1組の反復基本作用、即ち、1単位の流体の1単位の距離の移動として定義することができる。液体の表面張力の性質を使用して液滴を形成することができる。液滴が位置する底面の下に配置した電極により発生される静電力により液滴を駆動する。液滴の形状と運動を制御するために種々の型の静電力を使用することができる。上記静電力を生じるために使用することができる技術の1例は誘電泳動による方法であり、液滴と周囲の媒体の誘電率の差を利用し、高周波数交流電場を利用することができる。上記静電力を生じるために使用することができる別の技術はエレクトロウェッティングによる方法であり、表面上に存在する液滴とこの表面の間の表面張力がこの表面に印加される電場に依存することを利用する方法である。
【0084】
別の実施形態において、本願に記載する方法はフロントエンドアッセイ処理方法として表面弾性波(SAW)によるマイクロ流体デバイスと併用して実施することができる。本願で使用する「表面弾性波(SAW)」なる用語は一般に、表面の方向に伝播する弾性波を意味する。「進行表面弾性波(TSAWs)」により液体への表面弾性波のカップリングが可能になる。所定の実施形態において、前記カップリングは前記液体への表面弾性波の浸透又は漏洩とすることができる。他の実施形態において、表面弾性波はレイリー波である(例えばOliner,A.A.(ed),Acoustic Surface Waves.Springer(1978)参照)。表面弾性波の伝播は種々の材料を使用して種々の異なる方法で実施することができ、一連又は複数の電極等のトランスデューサーにより電位を生成する方法又は表面弾性波を液体中にストリーミングさせる方法が挙げられる。
【0085】
所定の実施形態において、前記DMFデバイス又は前記SAWデバイスはロール・ツー・ロールプリンテッドエレクトロニクス法により製造される。このようなデバイスの例は、国際特許出願公開第2016/161402号及びWO2016/161400号に記載されている。
【0086】
上記装置の多くは対象分析成分の1分子検出が可能である。1種以上の対象分析成分の1分子検出を可能にする他の装置及びシステムも当技術分野で公知であり、本願に記載する方法で同様に使用することができる。このような装置及びシステムとしては、例えばQuanterix社のSIMOA(TM)(Lexington,MA)テクノロジー、Singulex社の1分子計数(SMC(TM))テクノロジー(Alameda,CA,例えば米国特許第9,239,284号参照)、並びに例えば米国特許出願公開第2017/0153248号及び2018/0017552号に記載されている装置が挙げられる。
【0087】
キット及びカートリッジ
本願では上記方法を実施するのに使用するキットも提供する。前記キットは本願に開示する装置と共に使用することができる。前記キットに含まれる説明書は包装材料に添付してもよいし、添付文書として同梱してもよい。前記説明書は書面又は印刷物とすることができるが、これらに限定するものではない。このような説明書を格納し、エンドユーザーに伝達することが可能な任意の媒体も本開示に含まれる。このような媒体としては、限定されないが、電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCDROM)等が挙げられる。本願で使用する「説明書」なる用語は、前記説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0088】
前記キットはマイクロ流体モジュールを含むカートリッジを含むことができる。所定の実施形態では、前記マイクロ流体モジュールをカートリッジに組み込むことができる。前記カートリッジは使い捨て式とすることができる。前記カートリッジは上記に開示した方法を実施するために有用な1種以上の試薬を含むことができる。前記カートリッジは、前記試薬を1種以上の別々の組成物として、又は任意に前記試薬間の相溶性が許容される場合には混合物として収容する1個以上の容器を含むことができる。前記カートリッジは更に、使用者の観点から望ましいと思われる他の材料を含むことができ、例えば、緩衝液、希釈剤、標準(例えばキャリブレーター及び対照)、及び/又は試料処理、洗浄若しくはアッセイの任意の他の工程を実施するのに有用な任意の他の材料が挙げられる。前記カートリッジは上記のような1個以上の特異的結合メンバーを含むことができる。
【0089】
前記キットは更に対象分析成分を定量するための参照標準を含むことができる。前記参照標準は、対象分析成分濃度の内挿及び/又は外挿用の標準曲線を作成するために利用することができる。前記キットは濃度レベルが変動する参照標準を含むことができる。例えば、前記キットは高濃度レベル、中濃度レベル、又は低濃度レベルの1個以上の参照標準を含むことができる。参照標準の濃度範囲については、アッセイ毎に最適化させることができる。参照標準の濃度範囲の例としては、限定されないが、例えば約10fg/mL、約20fg/mL、約50fg/mL、約75fg/mL、約100fg/mL、約150fg/mL、約200fg/mL、約250fg/mL、約500fg/mL、約750fg/mL、約1000fg/mL、約10pg/mL、約20pg/mL、約50pg/mL、約75pg/mL、約100pg/mL、約150pg/mL、約200pg/mL、約250pg/mL、約500pg/mL、約750pg/mL、約1ng/mL、約5ng/mL、約10ng/mL、約12.5ng/mL、約15ng/mL、約20ng/mL、約25ng/mL、約40ng/mL、約45ng/mL、約50ng/mL、約55ng/mL、約60ng/mL、約75ng/mL、約80ng/mL、約85ng/mL、約90ng/mL、約95ng/mL、約100ng/mL、約125ng/mL、約150ng/mL、約165ng/mL、約175ng/mL、約200ng/mL、約225ng/mL、約250ng/mL、約275ng/mL、約300ng/mL、約400ng/mL、約425ng/mL、約450ng/mL、約465ng/mL、約475ng/mL、約500ng/mL、約525ng/mL、約550ng/mL、約575ng/mL、約600ng/mL、約700ng/mL、約725ng/mL、約750ng/mL、約765ng/mL、約775ng/mL、約800ng/mL、約825ng/mL、約850ng/mL、約875ng/mL、約900ng/mL、約925ng/mL、約950ng/mL、約975ng/mL、約1000ng/mL、約2μg/mL、約3μg/mL、約4μg/mL、約5μg/mL、約6μg/mL、約7μg/mL、約8μg/mL、約9μg/mL、約10μg/mL、約20μg/mL、約30μg/mL、約40μg/mL、約50μg/mL、約60μg/mL、約70μg/mL、約80μg/mL、約90μg/mL、約100μg/mL、約200μg/mL、約300μg/mL、約400μg/mL、約500μg/mL、約600μg/mL、約700μg/mL、約800μg/mL、約900μg/mL、約1000μg/mL、約2000μg/mL、約3000μg/mL、約4000μg/mL、約5000μg/mL、約6000μg/mL、約7000μg/mL、約8000μg/mL、約9000μg/mL又は約10000μg/mLが挙げられる。
【0090】
前記キットは前記特異的結合メンバーを標識するための試薬、前記特異的結合メンバーを検出するための試薬、及び/又は前記分析成分を標識するための試薬、及び/又は前記分析成分を検出するための試薬を含むことができる。前記キットは更に、タグの切断を誘導するためのコンポーネント(例えば切断試薬)を含むことができる。例えば、切断試薬としては、ジチオトレイトール(DTT)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)等の還元剤が挙げられる。前記特異的結合メンバー、キャリブレーター及び/又は対照は別々の容器で提供することもできるし、適当なアッセイフォーマット又はカートリッジに予め分配しておくこともできる。
【0091】
前記キットは更に、品質管理コンポーネント(例えば感度パネル、キャリブレーター及び陽性対照)を含むことができる。品質管理試薬の調製については当技術分野で周知であり、種々の免疫診断製品の添付シートに記載されている。感度パネルメンバーはアッセイ性能特性を判定するために任意に使用され、前記キット試薬の完全性とアッセイの標準化の有用な指標である。
【0092】
前記キットは更に、診断アッセイを実施するため又は品質管理評価を助長するために必要な他の試薬(例えば緩衝液、塩類、酵素、酵素補因子、基質、検出試薬等)を任意に含むことができる。試験試料の単離及び/又は処理用の緩衝液及び溶液(例えば前処理試薬)等の他のコンポーネントも前記キットに含むことができる。前記キットは更に、1種以上の他の対照を含むことができる。前記キットの前記コンポーネントの1種以上を凍結乾燥することができ、その場合には、前記キットは更に、凍結乾燥したコンポーネントの解凍に適した試薬を含むことができる。前記コンポーネントの1種以上は液体状とすることができる。
【0093】
前記キットの各種コンポーネントは任意に必要に応じて適切な容器に収容して提供される。前記キットは更に、試料を収容又は保存するための容器(例えば尿、唾液、血漿、脳髄液若しくは血清試料の容器若しくはカートリッジ、又は組織吸引物を作製するために組織を保存、輸送若しくは処理するのに適した容器)を含むことができる。必要に応じて前記キットは反応容器、混合容器、及び試薬又は試験試料の調製を助長する他のコンポーネントを任意に含むことができる。前記キットは更に試験試料の採取を補助するための1種以上の試料採取/取得機器を含むことができ、例えば、種々の血液採取/分注デバイス(例えばマイクロサンプリングデバイス、マイクロニードル又は他の低侵襲無痛採血法;採血管;ランセット;毛細管採血管;他の単回手指穿刺採血法);頬スワブ、鼻/喉スワブ;16ゲージ又は他のサイズの針、(例えば1~8mm又は他の適当な寸法の)パンチ生検用円形ブレード、(例えば特にハンドヘルド型の)外科用メス又はレーザー、組織試料を採取、保存又は吸引するためのシリンジ、滅菌容器又はカニューレ等が挙げられる。前記キットは、関節液吸引、コーン生検、パンチ生検、細針穿刺吸引生検、画像ガイド下経皮的針吸引生検、気管支肺胞洗浄、内視鏡下生検及び腹腔鏡下生検を補助するための1種以上の機器を含むことができる。
【0094】
以下、実施例により本発明を更に例証するが、当然のことながら、以下の実施例が本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【実施例0095】
[実施例1]
本実施例は、本願に開示するような生体試料中の対象分析成分の分析方法を実証する。
【0096】
全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡を使用して低バックグラウンド表面(例えば特殊処理ガラス又は所定のポリマー)上で1分子の従来の蛍光色素団(例えばフルオレセイン、ローダミン等)を検出できることが示されている(Skinner,J.P.and S.Y.Tetin,Microsc Res Tech.,78(4):309-16(2015))。しかし、従来の蛍光顕微鏡を使用して従来の蛍光色素団1分子を微粒子上で検出することは、感度の問題と微粒子の蛍光バックグラウンドにより困難である。因みに、微粒子により捕捉された分析成分1分子を蛍光コンジュゲートで検出するには、明度の高いシグナル発生分子(例えばバックグラウンド蛍光の少なくとも5倍の明度)が必要である。ナノスフェアの代用としてストレプトアビジン-フィコエリスリン(SAPE)を試験した。フィコエリスリン(PE)は最高明度の蛍光タンパク質として知られている(例えばPE1分子はCy3色素分子20個分の明度を有する)。しかし、PEの明度が微粒子のバックグラウンド蛍光と同程度である限り、捕捉された分析成分1分子を検出することは困難であった。そこで、微粒子上の分析成分1分子検出にSAPEクラスター(ProZyme,CA(PJRS34))を使用した。各SAPEクラスターに複数のストレプトアビジン分子とPE分子が含まれている。デキストラン-SAPEクラスターを自社内で作製した。簡易システムで試験したところ、ビオチンをコートした微粒子はSAPEクラスターと反応し、個々のSAPEクラスターが微粒子上で検出され、表1に示すように、デジタルモードで150aMという低いLODにて分析された(Biophysical Journal,Vol.112,Issue 3,p295a(2017))。
【0097】
【表1】
【0098】
しかし、他のアッセイシステムで試験したところ、結合した分析成分からの特異的シグナルよりもSAPEクラスターの非特異的結合(NSB)のほうが多かった。表2は分析成分及び/又は検出抗体の不在下で種々のSAPEクラスター濃度における微粒子上の平均画素強度を示す。平均画素強度は1画素当たりのカウント数(CPP)として表す。
【0099】
【表2】
【0100】
他方、クラスター化させずにSAPE(1:1架橋PJR39S,Prozyme Inc)を使用したところ、表3に示すようにNSBは低かった。
【0101】
【表3】
【0102】
要約すると、微粒子上でSAPEクラスター(PJRS34)1分子を検出することはできるが、多くの非特異的結合を生じたため、イムノアッセイで使用することはできなかった。他方、クラスター化させていないSAPE(PJR39S)はNSBを生じなかったが、その明度は微粒子バックグラウンドと同等であった。
【0103】
本願に記載する方法は、分析成分1分子を微粒子上で直接検出するための解決手段を提供する。具体的には、デキストランを複数のBSA分子、複数のFab及び複数のビオチン分子と架橋させてマクロコンジュゲートを構成すると、NSBが低下するため、1分子分析成分イメージングに使用することができる。平均で各マクロコンジュゲートにデキストラン(150kDa)1分子、BSA15分子、Fab15分子、及びビオチン50~100分子を含み(図1に模式的に示す)、クラスター化させていない複数のSAPE分子と複合化させることができる。以下に具体的に説明するように、これらのマクロコンジュゲートはNSBが低く、結合効率が高く、超高感度の1分子分析成分検出が可能であった。
【0104】
[実施例2]
本実施例は、本願に記載する方法に従ってHCV抗原を検出するためのイムノアッセイについて記載する。
【0105】
市販キット(それぞれAbbott Laboratories,Abbott Park,ILの製品であるHCVコアAgキット,Ref6L47-29及びHCVキャリブレーターセット,Ref6L47-02)からの微粒子とHCVキャリブレーターを陰性ヒト血漿(NHP)で希釈した。図1に示すようにデキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスターを調製した。ストレプトアビジン-フィコエリスリン(SAPE,PJR39S)はProzyme社(Hayward,CA)から購入した。
【0106】
本アッセイは3工程で実施した。
工程1:先ず、0~20000fMのHCVキャリブレーター100μLを微粒子と混合した。微粒子を37℃でインキュベートした後、洗浄した。
工程2:デキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスター100μLを微粒子に加えた。微粒子をインキュベートした後、洗浄した。
工程3:SA-PE100μLを加えた。微粒子をインキュベートし、洗浄した後、顕微鏡で撮像した。
【0107】
撮像及び解析:倒立型オリンパスIX83蛍光顕微鏡に搭載されているEM-CCDカメラで試料毎に4~9組画像化した。各組の画像は、透過光画像と、蛍光色素団の色に対応する蛍光画像から構成される。画像解析を図2に模式的に示す。プリセット値を使用して各試料からの画像を同時にデジタルモードとアナログモードで解析した(表4参照)。本実施例では、(機器/カメラに合わせて)プリセット(又は「所定」)値を1000とした。従って、キャリブレーターが40fM未満(即ちシグナル値<1000)の場合には、「PPA」値を使用すべきであるため、デジタルモードで測定し、キャリブレーターが40fM超の場合には、「平均画素強度」値を使用すべきであるため、アナログモードで測定する。本実施例のプリセット値は1000としたが、当業者に自明の通り、機器/カメラ及び反応条件に応じてプリセット値を1000より低くしてもよいし、高くしてもよい。
【0108】
【表4】
【0109】
図3AはHCVが0、1fM、10fM及び80fMであるときのアッセイ画像の例と、蛍光画像の強度プロファイルを示す。分析成分濃度が低いとき(例えば<40fM)には、各微粒子上に形成される免疫サンドイッチ複合体はゼロ又は1個となることが最も多く、固定強度閾値を使用して個々の蛍光強度ピークを直接計数することができる。その結果によると、分析成分濃度が低いとき(<40fM)には、CPPは陰性対照の標準偏差(SD)の3倍以内であった。他方、デジタルモードでは、1fMを陰性対照から容易に識別可能であった。このアッセイの校正曲線(デジタルモードとアナログモードの両方)を図3Bに示す。
【0110】
更に、工程2と工程3を統合できる代替コンジュゲートとしてデキストラン-BSA-PE-Fabを使用して上記アッセイを実施し、その結果を表5に示す。
【0111】
【表5】
【0112】
[実施例3]
本実施例は、本願に記載する方法に従ってHIVを検出するためのイムノアッセイについて記載する。
【0113】
本アッセイで使用した微粒子は、Abbott自社内で作製した抗体を使用してEDAC化学反応によりコートし、キャリブレーターは市販キット(HIVキット、25258L100,65pg/ml,Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)から調製し、更に陰性ヒト血漿(NHP)で希釈した。デキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスターを調製した。ストレプトアビジン-フィコエリスリン(SAPE)はProzyme社(Hayward,CA)から購入した。
【0114】
本アッセイは2工程で実施した。
工程1:先ず、0~6.5pg/mlのHIV試料100μLを微粒子、アッセイに特異的な希釈剤及びデキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスターと混合し、37℃で10分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した。
工程2:SAPE100μLを加え、インキュベーション後に微粒子を洗浄した後、EM-CCDカメラを搭載した顕微鏡で撮像した。
【0115】
実施例2に記載したように撮像と解析を行った。表6及び図4A~4Bに示すように、デジタルモードで画像を解析すると、アッセイS/N比は著しく改善された。
【0116】
【表6】
【0117】
代替蛍光剤としてSA-APC(Prozyme,Hayward,CA)を使用した。実施例2に記載したようにイムノアッセイと画像解析を実施した。結果を表7及び図5に示す。
【0118】
【表7】
【0119】
[実施例4]
本実施例は、実施例3に記載した方法によると、HIV抗原の濃度が高いときには、アナログモードのみで画像を解析した場合でも検出できることを実証する。
【0120】
本アッセイで使用した微粒子は、Abbott自社内で作製した抗体を使用してEDAC化学反応によりコートした。P24値の高い患者試料から分析成分パネル(2000pg/ml~4.7pg/ml)を調製し、陰性ヒト血漿(NHP)で系列希釈した。デキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスターを調製した。ストレプトアビジン-フィコエリスリン(SAPE)はProzyme社(Hayward,CA)から購入した。
【0121】
本アッセイは2工程で実施した。
工程1:先ず、各HIV試料100μLを微粒子、アッセイに特異的な希釈剤及びデキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスターと混合した。37℃で10分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した。
工程2:SAPE100μLを加え、5分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した後、PCO sCMOSカメラを搭載した顕微鏡で撮像した。
【0122】
分析成分濃度が比較的高いため、解析にアナログモードを使用した以外は、実施例2に記載したように撮像と解析を行った(図6及び表8参照)。
【0123】
【表8】
【0124】
[実施例5]
本実施例は、広い濃度範囲で甲状腺刺激ホルモン(TSH)を検出し、デジタルモードとアナログモードからのシグナルを単一の複合シグナルに統合することが可能なイムノアッセイ法について記載する。
【0125】
本アッセイで使用した微粒子は、Abbott自社内で作製した抗体を使用してEDAC化学反応によりコートし、TSH値の高い患者試料から分析成分パネル(100mIU/L~0.0001mIU/L、又は715pM~0.0007pM)を調製し、アッセイに特異的な希釈剤で系列希釈した。デキストラン-BSA-ビオチン-Fabクラスターを調製した。ストレプトアビジン-フィコエリスリン(SAPE)はProzyme社(Hayward,CA)から購入した。
【0126】
本アッセイは3工程で実施した。
工程1:先ず、各TSH試料150μLを微粒子と混合し、37℃で10分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した。
工程2:デキストラン-BSA-ビオチン-Fabマクロコンジュゲート80μLを加え、5分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した。
工程3:SAPE80μLを加え、5分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した後、PCO sCMOSカメラを搭載した顕微鏡で撮像した。2種類の異なる露光時間(10ms及び100ms)を蛍光画像に使用し、ダイナミックレンジを拡張した。
【0127】
表8はイメージング解析ソフトウェアにより生成された初期データと、プロセシング後の最終複合シグナルを示す。初期データからのシグナル値は各試料に3個ずつ(PPA、CPP(100ms)、CPP(10ms))である。このうち、各試料濃度を最良に反映するシグナル値を1個のみ選択する。選択基準は図7に示す通りである。
【0128】
適切なシグナル値を選択したら、対応する換算係数を使用して複合シグナルを計算する。換算係数は、CPP(100ms)値が5000又は20のどちらかに近い試料濃度を使用することにより計算する。これらの換算係数はアッセイに特異的であり、校正曲線の作成時に設定すべきである。本実施例では、TSHが0.781mIU/Lのとき、CPP(100ms)は「5880」であり、CPP(10ms)は「694」であるため、換算係数は8.47となる。別の例では、0.003mIU/Lのとき、PPAは「0.1886」であり、CPPは「19」であるため、換算係数は100.74となる。
複合校正曲線の作成例:
・25mIU/Lのとき、CPP(100ms)シグナルは「15064」であり、5000よりも大きいため、CPP(10ms)からのシグナル値である「9000」を使用し、最終複合シグナルは9000×8.47=76230となる。
・0.195mIU/Lのとき、CPP(100ms)は「1413」であり、20と5000の間であるため、CPP(100ms)からのシグナル値である「1413」を使用し、最終複合シグナルは1413×1=1413となる。
・0.00076mIU/Lのとき、CPP(100ms)は「10」であり、20よりも小さいため、PPAからのシグナル値である「0.0504」を使用し、最終複合シグナルは0.0504×100=5となる。
【0129】
【表9】
【0130】
本実施例の結果から実証されるように、本モデルTSHアッセイは、直線性のある100pM~1fM(5桁)のダイナミックレンジに対応する0.00019mIU/L~12mIU/Lの範囲で直線性のあるTSH検出が可能である。
【0131】
[実施例6]
本実施例は、本願に記載する方法に従ってエストラジオールを検出するためのイムノアッセイについて記載する。
【0132】
本アッセイで使用した微粒子は、Abbott自社内で作製した抗体を使用してEDAC化学反応によりコートした。本アッセイは3工程で実施した。
工程1:各エストラジオールキャリブレーター100μLを微粒子と混合し、37℃で10分間インキュベートした。インキュベーション後に微粒子を洗浄した。
工程2:エストラジオール-ビオチン80μLを加え、5分間インキュベーション後に微粒子を洗浄した。
工程3:SAPE100μLを加え、5分間インキュベートし、インキュベーション後に微粒子を洗浄した後、sCMOSカメラを搭載した顕微鏡で撮像した。
【0133】
アナログモードのみを使用して図2に示すように撮像と解析を行った。アッセイの結果を図8に示す。
【0134】
[実施例7]
本実施例は、試料中のHCV抗体とHIV抗体を検出するための多重イムノアッセイについて記載する。
【0135】
本アッセイでは、ストレプトアビジンをコートした微粒子と、gp41をコートした微粒子の2種類の微粒子を使用した。微粒子をHCV試薬とHIV試薬とに反応させた。HCV試薬は、ビオチンで標識したHCV NS3抗原と、Cy3で標識したNS3抗原の混合物を含むものとした。HIV試薬は、Cy5で標識したHIVペプチドと、AlexaFluro405-ビオチンの混合物を含むものとした。
【0136】
表10に記載する工程に従い、自動機器(KINGFISHER(TM))でアッセイを行った。
【0137】
【表10】
【0138】
反応後、試料毎に9組の画像を取得し、図11に記載する模式図に従って解析した。各組の画像は、透過光画像1個と蛍光画像3個から構成した。HCV/HIV陰性試料、HIV陽性試料及びHCV陽性試料のアッセイ結果をそれぞれ図12、13及び14に示す。表11は1回のアッセイからのHIVとHCVの同時検出のシグナルを示す。感度はARCHITECT(R)アッセイと同等であった。
【0139】
【表11】
【0140】
上記二重アッセイフォーマットを使用して測定した140個の正常ヒト試料、陽性HCVキャリブレーター、及び陽性HIVキャリブレーターの分布を図15及び16に示す。
【0141】
刊行物、特許出願及び特許を含めて本願中に引用する全ての参考文献は、各参考文献を本願に援用すると個々に具体的に明記し、その内容全体が本願に記載されている場合と同程度まで本願に援用するものとする。
【0142】
本願中で特に指定している場合、又はそうでないことが分脈から明白である場合を除き、本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)不定冠詞と定冠詞及び「少なくとも1」並びに同様の語句が使用されているときには、単数と複数の両方に対応するものと解釈すべきである。本願中で特に指定している場合、又はそうでないことが分脈から明白である場合を除き、1以上の事項の列挙と共に「少なくとも1」なる用語が使用されているとき(例えば「AとBの少なくとも一方」)には、列挙された事項から選択される1つの事項(A又はB)又は列挙された事項の2つ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味するものと解釈すべきである。特に指定しない限り、「含む」、「有する」、「包含する」、及び「含有する」なる用語は非限定的な用語として解釈すべきである(即ち、「~を含むが、これらに限定されない」と言う意味である)。特に指定しない限り、本願中に数値範囲を明記しているときには、その範囲内の個別の数値を個々に列挙するのを省略する方法として利用しているに過ぎず、個別の数値が本願中に個々に明記されている場合と同様に本明細書に組み込まれる。本願中で特に指定している場合、又はそうでないことが分脈から明白である場合を除き、本願中に記載する全ての方法は任意の適切な順序で実施することができる。本願中に例示又は例示的文言(例えば「~等の」)が使用されているときには、いずれも本発明を分かり易くする目的に過ぎず、特許請求の範囲に特に記載しない限り、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中の如何なる文言も、特許請求の範囲に記載されていない構成要素が本発明の実施に必須であることを示すものと解釈すべきではない。
【0143】
本発明を実施するために最良であることが本発明者に分かっている実施形態を含め、本願には本発明の好ましい実施形態について記載する。当技術分野における通常の知識を有する者であれば、以上の記載に鑑み、これらの好ましい実施形態の変形にも想到できよう。本発明者は当業者が必要に応じてこのような変形を利用することを予想しており、本発明者は本発明が本願に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを予期している。従って、本発明は適用法に許容される限りにおいて以下の特許請求の範囲に明記する保護対象の全ての変形と等価物を包含する。更に、本願中で特に指定している場合、又はそうでないことが分脈から明白である場合を除き、全ての可能な変形における上記構成要素のあらゆる組合せも本発明に含まれる。
【0144】
完全を期し、本発明の種々の態様を以下に箇条書きする。
【0145】
[1]生体試料中の対象分析成分の分析方法であって、前記方法が以下の工程、即ち、(a)対象分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを固定化させた結合表面に前記分析成分を捕捉する工程と;(b)前記捕捉した分析成分と複数のマクロコンジュゲートを反応させる工程であり、各マクロコンジュゲートが、(i)多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと;(ii)複数の特異的結合メンバー、その断片又はその組み合わせと;(iii)複数のタグ又は検出可能なラベルを含み、前記マクロコンジュゲートが複数のタグを含むとき、前記方法は複数の蛍光剤を前記タグと反応させる工程を含み、各蛍光剤が、前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルを含み;各マクロコンジュゲートが更に任意に(iv)複数の担体タンパク質を含む、前記工程と;(c)前記結合表面を画像化し、前記画像を解析する工程を含む、前記方法。
【0146】
[2]生体試料中の対象分析成分の分析方法であって、前記方法が以下の工程、即ち、(a)対象分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを固定化させた結合表面に前記分析成分を捕捉する工程と;(b)前記捕捉した分析成分と複数のマクロコンジュゲートを反応させる工程であり、各マクロコンジュゲートが、(i)多糖、デンドリマー、ポリエーテル化合物又はナノ粒子を含む架橋されたタンパク質又はポリマーを含むコアと;(ii)前記コアの周囲の位置と共有結合させた複数の担体タンパク質と;(iii)前記担体タンパク質と共有結合させた複数の特異的結合メンバー、その断片又はその組み合わせと;(iv)前記複数の担体タンパク質又は前記複数の特異的結合メンバーと共有結合させた複数のタグを含む、前記工程と;(c)複数の蛍光剤を前記マクロコンジュゲートと反応させる工程であり、各蛍光剤が、前記タグと結合することが可能な分子と、検出可能なラベルを含む、前記工程と;(d)前記結合表面を画像化し、前記画像を解析する工程を含む、前記方法。
【0147】
[3]前記マクロコンジュゲートを複数の蛍光剤と反応させる結果として、前記マクロコンジュゲートがバックグラウンド蛍光の少なくとも5倍(例えば、バックグラウンド蛍光の6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍又はそれ以上)の蛍光シグナルを発生する、第1項又は第2項に記載の方法。
【0148】
[4]前記多糖がデキストラン、アミノデキストラン又はその組み合わせである、第1項又は第2項に記載の方法。
【0149】
[5]前記デンドリマーがPAMAMデンドリマー又はDNAデンドリマーである、第1項又は第2項に記載の方法。
【0150】
[6]前記ポリエーテル化合物がポリエチレングリコールである、第1項又は第2項に記載の方法。
【0151】
[7]前記担体タンパク質が血清アルブミンタンパク質である、第1項~第6項のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
[8]前記血清アルブミンタンパク質がウシ血清アルブミンである、第7項に記載の方法。
【0153】
[9]前記タグがビオチンを含む、第1項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
[10]前記特異的結合メンバーが複数の抗体を含む、第1項~第9項のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
[11]前記特異的結合メンバーの断片が複数の抗体断片を含む、第1項~第9項のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
[12]前記蛍光剤における前記分子がストレプトアビジンである、第1項~第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
[13]前記蛍光剤における前記検出可能なラベルが、フィコエリスリン又はアロフィコシアニンである、第1項~第12項のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
[14]前記蛍光剤が、ストレプトアビジン-フィコエリスリンコンジュゲート(SAPE)又はストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SAAPC)コンジュゲートを含む、第13項に記載の方法。
【0159】
[15]前記結合表面を固体支持体の平坦・平滑表面で撮像する、第1項~第14項のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
[16]前記結合表面を撮像する工程が、前記結合表面の透過光画像と、前記蛍光剤に対応する1個以上の蛍光画像を取得する工程を含む、第1項~第15項のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
[17]前記画像を解析する工程が更に、前記1個以上の蛍光画像において前記結合表面上の平均画素強度を計算する工程を含み、所定の実施形態において、対象領域における平均画素強度が所定値未満である場合には、前記画像を解析する工程が、(i)前記対象領域において蛍光強度の高いピークを計数する工程と;(ii)前記1個以上の蛍光画像において前記対象領域の面積に対するピーク数の比を求める工程を含む、第16項に記載の方法。
【0162】
[18]前記結合表面上の前記平均画素強度を所定値と比較する、第17項に記載の方法。
【0163】
[19]前記結合表面上の前記平均画素強度が所定値未満である場合に、前記画像を解析する工程が、(i)前記結合表面上の前記対象領域の面積を識別する工程と;(ii)前記結合表面上の蛍光強度の高いピークを計数する工程と;(iii)前記1個以上の蛍光画像において前記対象領域の面積に対するピーク数の比を求める工程と;(iv)換算係数を使用して複合シグナルを計算し、異なる分析成分濃度で得られたデータ点を統合する工程を含む、第1項~第18項のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
[20]前記結合表面上の前記平均画素強度が前記所定値未満である場合に、前記画像を解析する工程が、前記結合表面上の前記対象領域の面積を識別する工程と、前記結合表面上の前記高強度ピークを計数する工程と、前記1個以上の蛍光画像において前記対象領域の面積に対するピーク数の比を求める工程を含む、第19項に記載の方法。
【0165】
[21]前記結合表面が1個以上の微粒子を含む、第1項~第20項のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
[22]前記1個以上の微粒子の各々が1ミクロン超の粒子径である、第21項に記載の方法。
【0167】
[23]生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法であって、前記方法が以下の工程、即ち、(a)第1の対象分析成分を第1の微粒子の表面に捕捉する工程であり、前記第1の微粒子が、(i)その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(ii)第1の蛍光色素団で標識されている、前記工程と;(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第1の分析成分が前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子が、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第1のコンジュゲートが、第2の蛍光色素団で標識されており且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第2のコンジュゲートが、第3の蛍光色素団で標識されており且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団が相互に異なる、前記工程と;(e)前記第1及び第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と;(f)前記第1、第2及び第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1及び第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と;(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程を含む、前記方法。
【0168】
[24]前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、抗原又は抗体である、第23項に記載の方法。
【0169】
[25]前記第1、第2及び第3の蛍光色素団が、AlexaFluor405、AlexaFluor488、AlexaFluor546、Cy3、Cy5、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンから選択される、第23項又は第24項に記載の方法。
【0170】
[26]前記微粒子を固体支持体の平坦・平滑表面で撮像する、第23項~第25項のいずれか一項に記載の方法。
【0171】
[27]前記カスタマイズされた画像解析法が以下の工程、即ち、(i)前記透過光画像に基づいて全体画像マスクを作成する工程と;(ii)前記第1の蛍光色素団に対応する蛍光画像に基づいて第1の画像マスクを作成する工程と;(iii)前記全体画像マスクから前記第1の画像マスクを差し引いて、第2の画像マスクを作成する工程と;(iv)前記第1の画像マスクを使用して前記第2の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第1の分析成分を検出する工程と;(v)前記第2の画像マスクを使用して前記第3の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第2の分析成分を検出する工程を含む、第23項~第26項のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
[28]工程(iv)及び(v)において前記シグナルを計算する工程が、前記第2及び第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する蛍光画像において前記微粒子上の平均画素強度を計算する工程を含む、第26項に記載の方法。
【0173】
[29]生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法であって、前記方法が以下の工程、即ち、(a)第1の対象分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーをその表面に固定化させた第1の微粒子の表面に前記第1の分析成分を捕捉する工程と;(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第1の分析成分が前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子が、その表面に固定された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(iii)前記第1の微粒子と前記第2の微粒子の粒子径及び/又は形状が異なる、前記工程と;(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第1のコンジュゲートが、第1の蛍光色素団を含み且つ前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第2のコンジュゲートが、第2の蛍光色素団を含み且つ前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1及び第2の蛍光色素団が相互に異なる、前記工程と;(e)前記第1及び第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と;(f)前記第1及び第2の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1及び第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と;(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程を含む、前記方法。
【0174】
[30]更に、3種以上の対象分析成分を分析する工程を含む、第23項~第29項のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
[31]以下の工程、即ち、(a)第3、第4又は第5以降の対象分析成分を第3、第4又は第5以降の微粒子の表面に捕捉する工程であり、(i)前記第3、第4及び第5以降の分析成分の各々が相互に異なると共に、前記第1及び第2の分析成分と異なり、(ii)前記第3、第4又は第5以降の微粒子が、その表面に固定された、前記第3、第4又は第5以降の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含む、前記工程と;(b)前記捕捉した第3、第4又は第5以降の分析成分を第3、第4又は第5以降のコンジュゲートと反応させる工程であり、前記第3、第4又は第5以降のコンジュゲートが、第4、第5又は第6以降の蛍光色素団で標識されており且つ前記第3、第4又は第5以降の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第4、第5及び第6以降の蛍光色素団が相互に異なると共に、前記第1、第2及び第3の蛍光色素団の各々と異なる、前記工程と;(c)前記第3、第4及び第5以降の微粒子の透過光画像を取得する工程と;(d)前記第4、第5及び第6以降の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第3、第4及び第5以降の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と;(e)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程を含む、第30項に記載の方法。
【0176】
[32]前記第3、第4又は第5以降の微粒子の各々が、異なる蛍光色素団で標識されており、及び/又は異なる粒子径若しくは形状である、第31項に記載の方法。
【0177】
[33]前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、抗原又は抗体である、第23項~第32項のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
[34]前記蛍光色素団が、AlexaFluor405、AlexaFluor488、AlexaFluor546、Cy3、Cy5、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンから選択される、第29項~第33項のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
[35]前記微粒子が1ミクロン超の粒子径である、第23項~第34項のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
[36]前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、同一生物により産生されたものである、第23項~第35項のいずれか一項に記載の方法。
【0181】
[37]前記第1の分析成分及び前記第2の分析成分の各々が、異なる生物により産生されたものである、第23項~第35項のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の2種以上の対象分析成分を1回のアッセイで分析する方法であって、
(a)第1の対象分析成分を第1の微小粒子の表面上の捕捉する工程と、ここで、前記第1の微粒子は、(i)その表面に固定された、前記第1の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、(ii)第1の蛍光色素団で標識される、
(b)第2の対象分析成分を第2の微粒子の表面に捕捉する工程と、ここで、(i)前記第1の分析成分は前記第2の分析成分と異なり、(ii)前記第2の微粒子は、その表面上に固定化された、前記第2の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、
(c)前記捕捉した第1の対象分析成分を第1のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第1のコンジュゲートは、第2の蛍光色素団で標識されており、かつ、前記第1の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、
(d)前記捕捉した第2の分析成分を第2のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第2のコンジュゲートは、第3の蛍光色素団で標識されており、かつ、前記第2の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、前記第1の蛍光色素団、前記第2の蛍光色素団、及び前記第3の蛍光色素団とは相互に異なる、
(e)前記第1及び前記第2の微粒子の透過光画像を取得する工程と、
(f)前記第1の蛍光色素団、前記第2の蛍光色素団、及び前記第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第1の微粒子及び前記第2の微粒子の別個の蛍光画像を取得する工程と、
(g)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程と
を含み、
前記カスタマイズされた画像解析法は、
(i)前記透過光画像に基づいて全体画像マスクを作成する工程と、
(ii)前記第1の蛍光色素団に対応する蛍光画像に基づいて第1の画像マスクを生成するステップと、
(iii)前記全体画像マスクから前記第1の画像マスクを差し引いて、第2の画像マスクを作成する工程と、
(iv)前記第1の画像マスクを使用して前記第2の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算するにより、前記第1の分析成分を検出する工程と、
(v)前記第2の画像マスクを使用して前記第3の蛍光色素団から発生されたシグナルを計算することにより、前記第2の分析成分を検出する工程と、
任意選択により、工程(iv)及び(v)における前記シグナルを計算する工程が、前記第2及び第3の蛍光色素団にそれぞれ対応する蛍光画像において前記微小粒子上の平均画素強度を計算する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
a.第1の分析成分及び第2の分析成分の各々は、抗原又は抗体である、及び/又は、
b.第1、第2、及び第3の蛍光色素団は、AlexaFluor405、AlexaFluor488、AlexaFluor546、Cy3、Cy5、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンから選択される、及び/又は、
c.微粒子は、固体支持体の平坦・平滑表面において画像化される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3種以上の対象分析成分を分析するステップをさらに含み、任意選択により、
(a)第3、第4、又は第5以降の対象分析成分を、第3、第4、又は第5以降の微粒子の表面上に捕捉する工程と、ここで、(i)前記第3、第4、及び第5以降の分析成分の各々は互いに異なると共に、前記第1及び第2の分析成分と異なり、(ii)前記第3、第4、又は第5以降の微粒子は、その表面上に固定化された、前記第3、第4、又は第5以降の分析成分と結合する複数の特異的結合メンバーを含み、
(b)前記捕捉した第3、第4、又は第5以降の分析成分を、第3、第4、又は第5以降のコンジュゲートと反応させる工程と、ここで、前記第3、第4、又は第5以降のコンジュゲートは、第4、第5、又は第6以降の蛍光色素団で標識されており、かつ、前記第3、第4、又は第5以降の分析成分と結合する特異的結合メンバーを含み、かつ、前記第4、第5、及び第6以降の蛍光色素団が相互に異なると共に、前記第1、第2、及び第3の蛍光色素団の各々とは異なる、
(c)前記第3、第4、及び第5以降の微粒子の透過光画像を取得する工程と、
(d)前記第4、第5、及び第6以降の蛍光色素団にそれぞれ対応する前記第3、第4、及び第5以降の微粒子の別個の蛍光画像を得る工程と、
(e)カスタマイズされた画像解析法を使用して前記画像を解析する工程と
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
a.第3、第4、又は第5以降の微粒子の各々が、異なる蛍光色素団で標識されている、及び/又は、異なる粒子径若しくは形状である、及び/又は、
b.第1の分析成分及び第2の分析成分の各々が、抗原又は抗体である、及び/又は、
c.蛍光色素団が、AlexaFluor405、AlexaFluor488、AlexaFluor546、Cy3、Cy5、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
微粒子が1ミクロン超の粒子径である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1及び第2の分析成分の各々は、同じ生物又は異なる生物によって産生されたものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。