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  • 特開-フラックス及びソルダペースト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105652
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B23K35/363 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081956
(22)【出願日】2024-05-20
(62)【分割の表示】P 2020536441の分割
【原出願日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2018151648
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】矢作 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】内田 令芳
(72)【発明者】
【氏名】三角 友理
(57)【要約】      (修正有)
【課題】はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させることができるフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供する。
【解決手段】フラックスは、溶剤と、チキソ剤とを含み、前記溶剤が常温で液体のカルボン酸を含み、前記カルボン酸の含有量が、フラックス全体に対して、20.0~70.0質量%であり、さらに、フラックス全体に対して、20~99質量%のロジン系樹脂と、2.5質量%以下の有機酸系活性剤と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤と、チキソ剤とを含み、
前記溶剤が常温で液体のカルボン酸を含み、
前記カルボン酸の含有量が、フラックス全体に対して、20.0~70.0質量%であり、
さらに、フラックス全体に対して、20~99質量%のロジン系樹脂と、2.5質量%以下の有機酸系活性剤と、を含む、フラックス。
【請求項2】
前記カルボン酸の酸価が、300mg/KOH以上である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記カルボン酸が、炭素数6~10の鎖状アルキル脂肪酸である、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
さらに、合成樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一つに記載のフラックス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のフラックスを含む、ソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2018-151648号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0003】
プリント配線板等の電子回路基板に電子部品を接合するために用いられるはんだ組成物としては、例えば、はんだ合金粉末とフラックスとを混合したソルダペーストが挙げられる。ソルダペーストに含まれるフラックスとしては、ロジン等の天然樹脂又は合成樹脂、活性剤、溶剤、チキソ剤等が含まれる樹脂系のフラックスが広く用いられている。
【0004】
前記フラックスには、はんだ表面、部品電極、基板パッド等の酸化膜を除去するために、例えば、有機酸、ハロゲン化合物、アミン化合物等の活性剤が含まれる。このような活性剤を含むフラックスを使用することにより、はんだ接合部におけるボイドの発生が抑制され、かつ、はんだ濡れ性が向上することが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2007-136491号公報
【特許文献2】日本国特開2005-334895号公報
【特許文献3】日本国特開2018-024023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、はんだが付着しにくい材料からなる部品、厳しい温度条件で使用される部品(例えば、車載用電子部品)等に対してはんだ付けを行う場合においても、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させるために、より活性の高いフラックスが求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させることができるフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、溶剤としては、例えば、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、ジオール系溶剤等が知られている。これらの溶剤は酸価がないことから、通常、活性剤としての性能は有さない。そこで、本発明者らは、酸価が高い常温で液体のカルボン酸を溶剤として用いることにより、該カルボン酸が、溶剤でありながら活性剤としての性能も兼ね備え、その結果、溶剤として常温で液体のカルボン酸を含むフラックスが、従来よりも、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させることができることを見出した。本発明の要旨は、以下の通りである。
【0009】
本発明に係るフラックスは、溶剤と、チキソ剤とを含み、前記溶剤が常温で液体のカルボン酸を含み、前記カルボン酸の含有量が、フラックス全体に対して、20.0~70.0質量%であり、さらに、フラックス全体に対して、20~99質量%のロジン系樹脂と、2.5質量%以下の有機酸系活性剤と、を含む。
【0010】
本発明に係るフラックスは、前記カルボン酸の酸価が、300mg/KOH以上であることが好ましい。
【0011】
本発明に係るフラックスは、前記カルボン酸が、炭素数6~10の鎖状アルキル脂肪酸であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るフラックスは、さらに、合成樹脂を含んでいてもよい。
【0013】
本発明に係るソルダペーストは、上述のフラックスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例で作製した試験基板において部品を搭載した箇所を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストについて説明する。
【0016】
<フラックス>
(溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、溶剤として常温で液体のカルボン酸を含む。本明細書において、常温とは、35℃のことをいう。
【0017】
常温で液体のカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、無水ヘキサン酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6~10の鎖状アルキル脂肪酸であることが好ましい。鎖状アルキル脂肪酸は、直鎖アルキル脂肪酸であっても、分岐鎖アルキル脂肪酸であってもよい。炭素数6~10の鎖状アルキル脂肪酸としては、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサン酸、ヘプタン酸又はオクタン酸であることが好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記カルボン酸の酸価は、300mg/KOH以上であることが好ましく、350mg/KOH以上であることがより好ましい。また、前記酸価は、550mg/KOH以下であることが好ましく、500mg/KOH以下であることがより好ましい。ここで、酸価とは、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を表し、JIS-K0070に準拠して測定することができる。
【0019】
前記カルボン酸の含有量は、フラックス全体に対して、20.0~70.0質量%である。また、前記含有量は、フラックス全体に対して、50.0質量%以下であることが好ましい。なお、前記カルボン酸が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記カルボン酸の合計含有量である。
【0020】
本実施形態に係るフラックスは、溶剤として常温で液体のカルボン酸を含む。前記カルボン酸は、酸価が高いことから、溶剤でありながら活性剤としての性能も兼ね備える。そのため、前記フラックスは、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させることができる。
【0021】
また、本実施形態に係るフラックスは、前記カルボン酸の酸価が300mg/KOH以上であることにより、はんだ接合部におけるボイドの発生をより抑制し、かつ、はんだ濡れ性をさらに向上させることができる。
【0022】
さらに、本実施形態に係るフラックスは、前記カルボン酸が炭素数6~10の鎖状アルキル脂肪酸であることにより、はんだ接合部におけるボイドの発生をより抑制し、かつ、はんだ濡れ性をさらに向上させることができる。
【0023】
また、本実施形態に係るフラックスは、前記カルボン酸の含有量がフラックス全体に対して20.0~70.0質量%であることにより、はんだ接合部におけるボイドの発生をより抑制し、かつ、はんだ濡れ性をさらに向上させることができる。
【0024】
(チキソ剤)
本実施形態に係るフラックスは、チキソ剤を含有する。前記チキソ剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、硬化ひまし油、アミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記チキソ剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、前記チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記チキソ剤の合計含有量である。
【0026】
(樹脂)
本実施形態に係るフラックスは、はんだ濡れ性を向上させる観点から、さらに、ロジン系樹脂を含み、合成樹脂を含んでいてもよい。前記ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、アクリル化ロジン、ロジンエステル、酸変性ロジン等が挙げられる。また、前記合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の合成樹脂を用いることができる。これらの中でも、フラックスを活性化させる観点から、水添ロジン、酸変性ロジン及びロジンエステルから選択される1種以上であることが好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ロジン系樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、20~99質量%である。前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂の合計含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、フラックス全体に対して、20~99質量%であることが好ましく、30~99質量%であることがより好ましい。なお、前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂のうちいずれか一方が含まれる場合、前記含有量は前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂のうちいずれか一方の含有量である。
【0028】
(有機酸系活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、フラックス全体に対して、2.5質量%以下の有機酸系活性剤を含む。前記有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等のその他の有機酸が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記有機酸系活性剤の含有量は、フラックス残渣を低減する観点から、フラックス全体に対して、2.5質量%以下である。また、前記有機酸系活性剤の含有量は、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。なお、前記有機酸系活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記有機酸系活性剤の合計含有量である。
【0030】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加材として、例えば、常温で液体のカルボン酸以外のその他の溶剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、腐食防止剤等を含んでいてもよい。
【0031】
前記その他の溶剤としては、特に限定されるものではなく、公知の溶剤を用いることができる。前記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)等のグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、2-エチルヘキシルジグリコール、ヘキサン酸ヘキシル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記その他の溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、前記その他の溶剤の含有量は、フラックス全体に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。なお、前記その他の溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記その他の溶剤の合計含有量である。
【0033】
本実施形態に係るフラックスの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、溶剤として常温で液体のカルボン酸、及び、チキソ剤、並びに、必要に応じてその他の添加材を加熱容器に投入した後、160~180℃まで加熱することにより全原料を溶解させる。最後に、室温まで冷却することにより、本実施形態に係るフラックスを得ることができる。
【0034】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスを含む。より具体的には、前記ソルダペーストは、はんだ合金粉末と、前記フラックスとを混合することにより得られる。前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5~20質量%であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80~95質量%であることが好ましい。
【0035】
前記はんだ合金粉末におけるはんだ合金としては、特に限定されるものではなく、例えば、無鉛のはんだ合金、有鉛のはんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、無鉛のはんだ合金であることが好ましい。前記無鉛のはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスを含むことにより、従来よりも、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させることができる。
【実施例0037】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[ソルダペーストの作製]
表1及び2に示す配合量の各原料を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、全原料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散されたフラックスを得た。なお、表1及び2に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。次に、各フラックスを11質量%、はんだ粉(Sn-3.0wt%Ag-0.5wt%Cu)を89質量%となるように混合して、各実施例及び比較例のソルダペーストを得た。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1及び2に示す各原料の詳細を以下に示す。
KE-604:酸変性ロジン、荒川化学工業(株)製、商品名「KE-604」
S-145:テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製、商品名「YSポリスターS145」
スリパックスZHH:ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成(株)製
VA-79:高級脂肪酸アマイド、共栄社化学(株)製、商品名「ターレンVA-79」
ゲルオールMD:新日本理化(株)製
アゼライン酸:東京化成工業(株)製
DBBD:トランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、東京化成工業(株)製
ヘキサン酸:東京化成工業(株)製
ヘプタン酸:東京化成工業(株)製
オクタン酸:東京化成工業(株)製
ノナン酸:東京化成工業(株)製
デカン酸:東京化成工業(株)製
2-エチルヘキサン酸:東京化成工業(株)製
3,5,5-トリメチルヘキサン酸:東京化成工業(株)製
無水ヘキサン酸:東京化成工業(株)製
酢酸:東京化成工業(株)製
EHDG:2-エチルヘキシルジグリコール、日本乳化剤(株)製
ヘキサン酸ヘキシル:東京化成工業(株)製
【0042】
[ボイド特性の評価]
<試験基板の作製>
銅張積層板(大きさ:100mm×100mm、厚み:1.6mm)の基板表面を耐熱プリフラックス(商品名:タフエースF2、四国化成工業社製)で処理した後、各実施例及び比較例のソルダペーストを前記基板表面上に塗布した。塗布されたソルダペーストのサイズは7.1mm×5.6mmであり、厚さは120μmであった。次に、前記ソルダペーストを塗布した箇所に、部品(パワートランジスタ、TO-252、Snメッキ処理)を搭載した。その後、以下の温度条件で加熱することにより、各実施例及び比較例の試験基板を作製した。
(温度条件)
昇温速度:3.0℃/秒
ピーク温度:220℃以上で30秒
【0043】
<ボイド率の算出>
各試験基板の部品搭載箇所におけるX線透過写真を撮影した。撮影装置はTUX-3100(マース東研社製)を用い、撮影条件は管電圧:75.0V、管電流:100.0μA、フィラメント電流:3.130A、倍率:10.9倍とした。次に、撮影した写真を二値化処理することにより、接合部のボイド率を算出した。なお、ボイド率は、20%未満の場合を合格と判定した。結果を表1及び2に示す。
【0044】
[濡れ性評価]
<試験基板の作製>
銅張積層板(大きさ:100mm×100mm、厚み:1.6mm)の基板表面を耐熱プリフラックス(商品名:タフエースF2、四国化成工業社製)で処理した後、各実施例及び比較例のソルダペーストを前記基板表面上の異なる2つの位置に塗布した。塗布された各ソルダペーストはいずれも、サイズが3.2mm×2.0mmの長方形状であり、厚さが120μmであった。また、異なる2つの位置に塗布されたソルダペーストは、該ソルダペーストの長手方向に垂直な方向における間隔が4.0mmであった。次に、異なる2つの位置に塗布されたソルダペーストを跨ぐように、部品を(6330チップ抵抗、Snメッキ処理)搭載した。その後、ボイド特性の評価と同様の温度条件で加熱することにより、各実施例及び比較例の試験基板を作製した。図1に、作製した試験基板において部品を搭載した箇所を模式的に示す。
【0045】
<はんだ濡れ性の評価>
各試験基板の部品搭載箇所におけるX線透過写真を撮影した。撮影装置及び撮影条件は、ボイド特性の評価と同様である。次に、撮影した写真を二値化処理することにより、ソルダペーストと部品とが重なる箇所(図1に示す斜線部分)におけるソルダペーストの濡れ広がり率を算出した。なお、濡れ広がり率は、80%以上の場合を合格と判定した。結果を表1及び2に示す。
【0046】
表1及び2の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例の試験基板は、はんだ接合部におけるボイドの発生を抑制し、かつ、はんだ濡れ性を向上させることができる。
【0047】
一方、常温で液体のカルボン酸を含まない比較例1及び2の試験基板は、はんだ接合部におけるボイド率が高く、かつ、はんだ濡れ性に劣ることが分かる。



図1