(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105672
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20240730BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A41D1/00 101D
A41D13/12 136
A41D13/12 190
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083149
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2022054045の分割
【原出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021062431
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516312475
【氏名又は名称】ライナス有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】古川 眞理
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザが座ったままの状態で着用することができる衣服を提供する。
【解決手段】衣服1は、人体の腰部を覆う腰天部10と人体の腰部から下肢部に至る部位を覆う覆い部20を有する衣服1であって、覆い部20は、後部側であって腰部から下肢部の上部側を覆う部分が欠損する開口部を設ける。開口部は、上端部側が開口し下端部側が下方に向かって突出する湾曲状とすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰部を覆う腰天部と前記腰部から下方側を覆う覆い部を有する衣服であって、
前記覆い部は、後部側であって少なくとも臀部を覆う部分を所定に開放する開放部を有し、
前記開放部は、前記後部側であって少なくとも臀部を覆う部分を開閉可能に開放する開閉
部とすることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記開閉部は、前記後部側の右側を開閉する右側開閉部と前記後部側の左側を開閉する左
側開閉部とを有し、閉塞状態において前記右側開閉部の縁部側と前記左側開閉部の縁部側
が相互に重なるように交差させて閉塞させ少なくとも臀部を覆う部分が前記開閉部から露
出しないように構成されることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記右側開閉部の縁部側および前記左側開閉部の縁部側は、下方から上方に向かって外側
に湾曲しながら張り出すことを特徴とする請求項2に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部を覆う腰天部と腰部から下肢部に至る部位を覆う覆い部を有する衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、着物の需要が非常に多くなっているが、着物の着付けは一般に難しく、例えば特許文献1に開示されるように、簡単に着付けをすることができる和服が提案されている。また、着物は健常者のみならず障害者についても需要が多くなってきており、例えば特許文献2に開示されるように、後身頃のお尻部分を車椅子に座った形状にする車椅子専用和服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-16372号公報
【特許文献2】実用新案登録第3160728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車椅子を使う脚の不自由な障害者がトレイ等を利用する際には和服を一旦脱いてトイレ等の利用後に再度着用する等しているがこのような着脱が非常に煩雑であり、改善が求められていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも臀部を覆う部分を開放することができる衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る衣服は、腰部を覆う腰天部と腰部から下方側を覆う覆い部を有する衣服であって、覆い部は、後部側であって少なくとも臀部を覆う部分を所定に開放する開放部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、覆い部は、後部側であって少なくとも臀部を覆う部分を所定に開放する開放部を有することとしたので、少なくとも臀部を覆う部分を開放することができる。これにより、車椅子を使う脚の不自由な障害者がトレイ等を利用する際には衣服を一旦脱いてトイレ等の利用後に再度着用する等することなく、単に覆い部の後部側を開放すればよく、着脱の煩雑さを低減することができる。
【0008】
開放部は、後部側であって少なくとも臀部を覆う部分が開口する開口部とし、少なくとも臀部が開口部を介して露出する構成とすることとすれば、少なくとも臀部を覆うことなく露出したままの状態で着用することができ、臀部を浮かすことなくユーザが車椅子等に座ったままの状態で着用することが可能となる。
【0009】
開口部は、上端部側が上方に向かって開放するように開口し下端部側が下方に向かって突出するように開口する構成とすることができる。
【0010】
開口部が設けられる範囲は、腰部から下肢部の膝裏付近に至る範囲とすることとすれば、膝裏を覆うことなく露出したままの状態で着用することができ、ユーザが座ったままの状態で確実に着用することが可能となる。
【0011】
開口部の縁部に沿って伸縮性を有する部材を設けることとすれば、伸縮性を有する部材により開口部の下方側の覆い部を開口部側に引き寄せることが可能となる。
【0012】
伸縮性を有する部材は、開口部の下部側の縁部に沿って湾曲状に設けられることとすれば、伸縮性を有する部材により開口部の下方側の覆い部を開口部の湾曲状の形状に沿って引き寄せることができる。
【0013】
覆い部は、後部側であって開口部の下端部から覆い部の下端部に至る部分を開閉する開閉部を設けることとすれば、開口部の下端部から覆い部の下端部に至る部分を開放しながら着用することができる。
【0014】
覆い部は、後部側の下端部が前部側の下端部に対して上方側に位置することとすれば、見栄えを損ねることを少なくすることができる。
【0015】
覆い部は、前側にある前身頃部を有し、前身頃部は、表側にある表側前身頃部と表側前身頃部の裏側にある裏側前身頃部を有し、表側前身頃部と裏側前身頃部を重ね合わせるように連結し、連結は、表側前身頃部と裏側前身頃部において右側端部側および左側端部側を少なくとも上下方向の中間部の所定の位置で連結することにより行うとともに、右側端部側および左側端部側の上下方向の中間部から下端部にかけては非連結としてフリーな状態として行うこととすれば、左右の下肢部が外側に開くことを規制しつつ、下肢部の下部側はフリーな状態とすることができる。
【0016】
右側端部側の連結と左側端部側の連結の位置を上下方向において異なる位置とすることとすれば、下肢部の下部側が外側に開く状態を左右で異なる位置とすることができ、疲労感を一層低減させることができる。
【0017】
右側端部側の連結と左側端部側の連結のいずれか一方の位置は、開口部の下端部の位置に対し上下方向において±5cm以内の範囲とすることとすれば、更に左右の下肢部が外側に開くことを規制しつつ、疲労感を低減させることができるので好ましい。
【0018】
右側端部側の連結と左側端部側の連結のいずれか一方の位置は、開口部の下端部の位置と一致させることとすれば、更に一層左右の下肢部が外側に開くことを規制しつつ、疲労感を低減させることができるのでより好ましい。
【0019】
腰天部を前記腰部に固定するための固定部材を備え、固定部材を腰部に巻き回すようにして固定することとすれば、腰天部を腰部に固定し易くすることができる。
【0020】
固定部材は、巻き回し状に湾曲するとともに、相互に離間する両端部を有することとすれば、固定部材を離間する両端部から腰部に挿入することができる。
【0021】
固定部材は、腰部を締め付ける方向となる内側方向に付勢されることとすれば、固定部材により腰天部を腰部に確実に締め付けることができる。
【0022】
開放部は、後部側であって少なくとも臀部を覆う部分を開閉可能に開放する開閉部とすることとすれば、通常時は覆い部の後部側を閉塞するとともに、必要に応じて適宜覆い部の後部側を開放することができる等、少なくとも臀部が常時露出させることなく開放することが可能となる。
【0023】
開閉部は、後部側の右側を開閉する右側開閉部と後部側の左側を開閉する左側開閉部とを有し、閉塞状態において右側開閉部の縁部側と左側開閉部の縁部側が相互に重なるように交差させて閉塞させ少なくとも臀部が開閉部から露出しないように構成されることとすることができる。
右側開閉部の縁部側および左側開閉部の縁部側は、下方から上方に向かって外側に湾曲しながら張り出すことにより、閉塞状態において右側開閉部の縁部側と左側開閉部の縁部側を相互にクロスするように重ねることができる。これにより、閉塞状態において右側開閉部の縁部側と左側開閉部の縁部側の重なる部分を下方から上方に向かって漸次大きくすることができ、閉塞状態で誤って開放して臀部が露出することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも臀部を覆う部分を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る衣服の構成を示す正面図である。
【
図3】同覆い部の構成を示す別の正面図である(前部側が捲れた状態を示す正面図)。
【
図5】同覆い部の構成を示す別の背面図である(開閉部が開閉した状態を示す背面図)。
【
図6】同覆い部を展開した状態を示す展開図である。
【
図7】同覆い部の腰天部の両側端部を離間させた状態を示す斜視図である。
【
図8】同覆い部の腰天部に挿入された固定部材を示す斜視図である。
【
図9】同覆い部を分解した状態を示す分解図である。
【
図10】同覆い部を分解した状態を示す
図9に続く分解図である。
【
図11】同覆い部を分解した状態を示す
図10に続く分解図である。
【
図15】本発明の変形例に係る衣服の覆い部の構成を示す正面図である。
【
図17】同覆い部を展開した状態を示す展開図である。
【
図18】同覆い部の開閉部を開放した状態を示す背面図である。
【
図19】同覆い部の開閉部を閉塞した状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る衣服の構成を示す正面図、
図2は、同衣服の覆い部の構成を示す正面図、
図3は、同覆い部の構成を示す別の正面図、
図4は、同覆い部の構成を示す背面図、
図5は、同覆い部の構成を示す別の背面図、
図6は、同覆い部を展開した状態を示す展開図、
図7は、同覆い部の腰天部の両側端部を離間させた状態を示す斜視図、
図8は、同覆い部の腰天部に挿入された固定部材を示す斜視図である。なお、以下の説明においては、人体Aの上側を上方、下側を下方、右側を右方(側方)、左側を左方(側方)、前側を前方、後側を後方として、各方向を図において明示するものとする。
【0027】
図1~
図8に示すように、衣服1は、人体Aの腰部A1を覆う腰天部10と人体Aの腰部A1から下方側を覆う覆い部20より詳しくは腰部A1から下肢部A2に至る部位を覆う覆い部20を有しており、主に車椅子を利用する下肢部A2の不自由な障害者用の衣服1とすることができる。衣服1は、着物(和服)とすることができ、覆い部20は、着物(和服)の下肢部A2側とすることができる。すなわち、着物(和服)は上衣2と帯3と下衣20を有する二部式の着物(和服)とすることができ、覆い部20は、二部式の着物(和服)の下衣20(二部式の着物(和服)の下肢部A2側)とすることができる。覆い部20は、下肢部A2の下端部つまり下肢部A2の甲付近まで覆うことができる。
【0028】
腰天部10は、覆い部20の上端部側の縁部20aに設けられており、細長い長尺な袋状体となっている。すなわち、腰天部10は、袋状体の両側端部10a,10bの一方が開放し、他方が閉塞しており、腰天部10を腰部A1に固定するための固定部材11(
図8)を袋状体の内部空間に挿入して備えることができる。
【0029】
腰天部10は、固定部材11を袋状体の内部空間に挿入しつつ腰部A1に巻き回すようにして固定することができる。すなわち、固定部材11は、巻き回し状に湾曲するとともに、相互に離間する両端部11a,11bを有し、腰天部10に沿うように設けられている。固定部材11は、細長い板状または棒状で腰部A1を締め付ける方向となる内側方向に板バネの如く付勢されている。
【0030】
つまり、腰天部10は、袋状体の両側端部10a,10bの一方から挿入した固定部材11の端部11a,11bをユーザUが手で持って端部11a,11bの間隔が広がる方向(外側方向)に湾曲させて袋状体の両側端部10a,10bとともに離間させることができる(
図7)。すなわち、腰天部10は、後部側に所定に離間する離間部12を有している。そして、離間した両側端部10a,10bを介して腰部A1に挿入するように装着し、この装着した状態でユーザUが手を放すことによって、所定の付勢力をもって腰天部10を腰部A1に巻き付けるように固定することができる。
【0031】
覆い部20には、開放部21が設けられている。すなわち、覆い部20は、後部側であって少なくとも臀部A3を覆う部分を所定に開放する開放部21を有している。より詳しくは、覆い部20は、後部側であって腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分を所定に開放する開放部21を有している。更に詳しくは、開放部21は、覆い部20の後部側であって覆い部20の少なくとも臀部A3を覆う部分が開口する開口部21´より詳しくは覆い部20の腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分が欠損するように開口する開口部21´となっている。すなわち、覆い部20は、少なくとも臀部A3より詳しくは腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側が開口部21´を介してから露出する構成となっている。
【0032】
開口部21´は、上端部21a側が腰天部10の離間部12を介して上方に向かって開放するように開口し下端部21b側が下方に向かって湾曲状に突出するように開口する構成となっており、湾曲状は、より詳しくは略U字状となっている。開口部21´が設けられる腰部A1から下肢部A2の上部側の範囲は、より詳しくは、腰部A1から下肢部A2の膝裏A4付近に至る範囲とすることができる(開口部21´が欠損させる覆い部20の後部側の部分は、より詳しくは下肢部A2の膝裏A4付近から上部側の部分とすることができる)。
【0033】
開口部21´の縁部21cには、該縁部21cに沿って伸縮性を有する部材22が設けられている。伸縮性を有する部材22は、開口部21´の下部側の縁部21cにのみ設けられている。すなわち、伸縮性を有する部材22は、開口部21´の下部側の縁部21cに沿って下端部21b側が突出するように湾曲状に設けられており、湾曲状は、より詳しくは略U字状となっている。このため伸縮性を有する部材22は、開口部21´の下部側の縁部21cの周囲における覆い部20の部分をその伸縮力により引き寄せるように保持することができる。
【0034】
開口部21´の下部側の縁部21cの周囲における覆い部20の部分は、伸縮性を有する部材22により引き寄せられることによって皺22aが形成されている。伸縮性を有する部材22は、例えばゴム材料とすることができる。
【0035】
また、覆い部20は、後部側に開閉部23を設けている。すなわち、開閉部23は、後部側であって開口部21´のU字状に突出する下端部21b側の縁部21cから覆い部20の下端部側の縁部20b2に至る部分を開閉することができる。
【0036】
開閉部23は、複数の所定の係合部材24を有しており、係合部材24を係合または係合の解除を行うことにより、覆い部20の後部側の下部側の開閉を行うことができる。複数の所定の係合部材24は、例えば、雌雄のスナップ釦とすることができる。
【0037】
覆い部20は、上記した伸縮性を有する部材22の作用により後部の下端部側の縁部20b2が引き寄せられるように保持される。このため、後部の下端部側の縁部20b2が引っ張り上げられて前部の下端部側の縁部20b1に対して上方側に位置するように構成することができる。
【0038】
また、覆い部20は、同じく上記した伸縮性を有する部材22の作用により下部側や側方側が全体的に引き寄せられるように保持される。このため、覆い部20の下部側や側方側が内側に引っ張られる。これにより、覆い部20は、下部側が窄まるように、上部側から下部側にかけて幅寸法が漸次減少するように構成することができる。
【0039】
ここで、覆い部20は、より詳しくは、
図9に示すように、前部側にある前身頃部20Aと後部側にある後身頃部20Bを有している。また、前身頃部20Aは、表側にある表側前身頃部20A1と表側前身頃部20A1の裏側にある裏側前身頃部20A2を有している。
【0040】
表側前身頃部20A1は、長方形状の左側端部側の縁部20A1´´側の上下方向の中間部から下部側にかけて三角形状に切除した形状となっており、上下方向の中間部から下部側にかけて幅寸法が漸次減少するように構成されている。表側前身頃部20A1において右側端部側の縁部20A1´側の下部側の裏地側は、模様および/または着色が帯状に施された領域25を有している。このため、右側端部側の縁部20A1´側の下部側の裏地側が捲れる場合にあっても美観を損ねることを少なくすることができる。なお、模様および/または着色が帯状に施される領域25の上端部側の辺縁25´は湾曲状とすることができ、湾曲状は、上方に突出する円弧状とすることができる。
【0041】
裏側前身頃部20A2は、長方形状の右側端部側の縁部20A2´側の上下方向の中間部から下部側にかけておよび長方形状の左側端部側の縁部20A2´´側の上下方向の中間部から下部側にかけて三角形状に切除した形状となっており、左右対称な形状となっている。裏側前身頃部20A2は、上下方向の中間部から下部側にかけて幅寸法が漸次減少するように構成されている。
【0042】
裏側前身頃部20A2は、左側端部側の縁部20A2´´側は表側前身頃部20A1の左側端部側の縁部20A1´´側と同等の形状となっている。また、裏側前身頃部20A2は、表側前身頃部20A1に対し幅寸法が大きく設定されている。
【0043】
したがって、表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2を左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側を一致させつつ重ね合わせたときに裏側前身頃部20A2の右側端部側の縁部20A2´側が表側前身頃部20A1の右側端部側の縁部20A1´側から所定にはみ出して露出した構成とすることができる。
【0044】
後身頃部20Bは、右側にある右側後身頃部20B1と左側にある左側後身頃部20B2を有している。右側後身頃部20B1と左側後身頃部20B2は、左右対称な形状となっており、いずれも表側前身頃部20A1と対応する形状となっている。
【0045】
すなわち、右側後身頃部20B1と左側後身頃部20B2は、長方形状の右側端部側の縁部20B1´側の上下方向の中間部から下部側にかけて若しくは長方形状の左側端部側の縁部20B2´´側の上下方向の中間部から下部側にかけて三角形状に切除された形状となっている。右側後身頃部20B1と左側後身頃部20B2は、更に、長方形状の三角形状に切除された側と反対側つまり左側端部側の縁部20B1´´側の上部側から上下方向の中間部側にかけて若しくは右側端部側の縁部20B2´側の上部側から上下方向の中間部側にかけてJ字状に切除された形状となっている。
【0046】
つまり、右側後身頃部20B1の左側端部側の縁部20B1´´側の上部側から上下方向の中間部にかけては、開口部21´の一方の片側となる右側開口部21Aが設けられ、左側後身頃部20B2の左側端部側の縁部20B2´´側の上部側から上下方向の中間部にかけては、開口部21Aの他方の片側となる左側開口部21Bが設けられている。また、右側後身頃部20B1の左側端部側の縁部20B1´´側の下部側には、開閉部23の右側となる右側開閉部23Aが設けられ、左側後身頃部20B2の左側端部側の縁部20B2´´側の下部側には、開閉部23の左側となる左側開閉部23Bが設けられている。右側開閉部23Aおよび左側開閉部23Bには上記した係合部材24が設けられており、例えば、右側開閉部23Aおよび左側開閉部23Bのいずれか一方には、雌スナップ釦が設け、右側開閉部23Aおよび左側開閉部23Bのいずれか他方には、雄スナップ釦が設けられている。
【0047】
覆い部20は、以上のように構成された表側前身頃部20A1、裏側前身頃部20A2、右側後身頃部20B1、および左側後身頃部20B2を連結することにより以下のように形成することができる。
【0048】
すなわち、
図10に示すように、まず裏側前身頃部20A2の右側端部側の縁部20A2´側と右側後身頃部20B1の右側端部側の縁部20B1´側を縫合する等により連結してこれらを右側身頃部20αとする。次いで、同じく
図10に示すように、表側前身頃部20A1の左側端部側の縁部20A1´´側と左側後身頃部20B2の左側端部側の縁部20B2´´側を縫合する等により連結して左側身頃部20βとする。続いて、
図11に示すように、右側身頃部20αと左側身頃部20βを表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2を左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側を一致させつつ重ね合わせるように縫合する等により連結する。これにより覆い部20は一枚の身頃部となる。
【0049】
つまり、このように形成した覆い部20を有する衣服1を、
図7および
図12に示すように、腰天部10の両端部10a,10bを離間させつつ、
図13および
図14に示すように、人体Aの腰部A1から下肢部A2に至る部位を覆うように側方から巻き回し、かつ、
図4および
図5に示すように、右側開閉部23Aと左側開閉部23Bを係合部材24を介して係合して閉塞することにより人体Aに装着することができる。これにより、
図13および
図14に示すように、後部側において腰部A1から下肢部A2の膝裏A4付近に至る範囲を覆うことなく露出したままの状態で着用することができる。
【0050】
ここで、覆い部20における右側身頃部20αと左側身頃部20βの連結は、表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2において右側端部側の縁部20A1´,20A2´側および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側を少なくとも上下方向の中間部の所定の位置X1,X2で連結することにより行う(「少なくとも上下方向の中間部の所定の位置X1,X2で連結」には、位置X1,X2のみで連結し、位置X1,X2から右側端部側の縁部20A1´,20A2´側および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側の上部側は非連結としてフリーな状態とする場合、下記に詳述するように、右側端部側の縁部20A1´,20A2´側および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側を上部側から中間部にかけて連結する場合のいずれも含む)。そして、この連結は、表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2において右側端部側の縁部20A1´,20A2´側および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側の上下方向の中間部から下端部にかけては非連結としてフリーな状態として行う。
【0051】
より詳しくは、覆い部20における右側身頃部20αと左側身頃部20βの連結は、表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2において右側端部側の縁部20A1´,20A2´側および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側を上部側から上下方向の中間部にかけて縫合して固着することにより行われており、右側端部側の縁部20A1´,20A2´側および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側の上下方向の中間部から下端部にかけては非連結としてフリーな状態となっている。これら右側端部側の縁部20A1´,20A2´側の下部側の連結端部の位置X1と左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側の下部側の連結端部の位置X2は上下方向において異なる位置となっている。より詳しくは、
図1、
図2、
図3,
図6、
図9、
図10、
図11、
図14に示すように、左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´側の下部側の連結端部の位置X2は右側端部側の縁部20A1´,20A2´側の下部側の連結端部の位置X1よりも下方側に位置している。
【0052】
そして、右側端部側の縁部20A1´,20A2´側の下部側の連結端部の位置X1は、開口部21´の下端部21bの位置に対し上下方向において±5cm以内の範囲となっており、より詳しくは、右側端側の縁部20A1´,20A2´側の下部側の連結端部の位置X1は、開口部21´の下端部21bの位置と一致させることとしている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にあっては、覆い部20は、後部側であって少なくとも臀部A3を覆う部分を所定に開放する開放部21を有することとしたので、より詳しくは、後部側であって腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分を所定に開放する開放部21を有することとしたので、少なくとも臀部A3を覆う部分を開放することができる、より詳しくは、腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分を開放することができる。これにより、車椅子を使う脚の不自由な障害者がトレイ等を利用する際には衣服を一旦脱いてトイレ等の利用後に再度着用する等することなく、単に覆い部20の後部側を開放すればよく、着脱の煩雑さを低減することができる。
【0054】
開放部20は、後部側であって少なくとも臀部A3を覆う部分が開口する開口部21´とし、少なくとも臀部A3が開口部21´を介して露出する構成とすることとしたので、より詳しくは、後部側であって腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分が開口部21´を介して露出する構成とすることとしたので、少なくとも臀部A3を覆うことなく露出したままの状態で着用することができ、より詳しくは、腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側の部分を覆うことなく露出したままの状態で着用することができ、臀部A3を浮かすことなくユーザが車椅子等に座ったままの状態で着用することが可能となる。また、ユーザUがトイレを使用する際にも着用したままの状態で使用することが可能となる。
【0055】
開口部21´が設けられる範囲は、腰部A1から下肢部A2の膝裏A4付近に至る範囲とすることとしたので、膝裏A4を覆うことなく露出したままの状態で着用することができ、ユーザが座ったままの状態で確実に着用することが可能となる。
【0056】
開口部21´の縁部21cに沿って伸縮性を有する部材22を設けることとしたので、伸縮性を有する部材22により開口部21´の下方側の覆い部20を開口部21´側に引き寄せることが可能となり、例えば開口部21´の下方側の覆い部20が下方側に垂れ下がり見栄えを損ねることを少なくすることができる。本実施形態にあって、開口部21´の下方側の開閉部23に複数の係合部材24を設けることとしたので、伸縮性を有する部材22を設けることによる上記の垂れ下がりの防止効果は大きい。
【0057】
伸縮性を有する部材22は、開口部21´の下部側の縁部21cに沿って湾曲状に設けられることとしたので、伸縮性を有する部材22により開口部21´の下方側の覆い部20を開口部21´の湾曲状の形状に沿って引き寄せることができる。これにより、開口部21´の下方側の覆い部20が下方側に垂れ下がることを少なくすることができるとともに、覆い部20を下部側が窄まるように構成させることができる。
【0058】
覆い部20は、後部側であって開口部21´の下端部21bから覆い部20の下端部20bに至る部分を開閉する開閉部23を設けることとしたので、開口部21´の下端部21bから覆い部20の下端部20bに至る部分を開放しながら着用することができ、足が床や地面に着いたままの状態で側方から覆うように着用することができ利便性を向上させることができる。
【0059】
覆い部20は、後部側の下端部20b2が前部側の下端部20b1に対して上方側に位置することとすれば、見栄えを損ねることを少なくすることができる。
【0060】
覆い部20は、前側にある前身頃部20Aを有し、前身頃部20Aは、表側にある表側前身頃部20A1と表側前身頃部20A1の裏側にある裏側前身頃部20A2を有し、表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2を重ね合わせるように連結し、連結は、表側前身頃部20A1と裏側前身頃部20A2において右側端部側の縁部20A1´,20A2´および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´を少なくとも上下方向の中間部の所定の位置X1,X2で連結することにより行うとともに、右側端部側の縁部20A1´,20A2´および左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´の上下方向の中間部から下端部20bにかけては非連結としてフリーな状態として行うこととしたので、左右の下肢部A2が外側に開くことを規制しつつ、下肢部A2の下部側はフリーな状態とすることができ、特に足の不自由な障害者においては長時間座ったままの状態において疲労感を低減させることができる。
【0061】
右側端部側の縁部20A1´,20A2´の連結と左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´の連結の位置を上下方向において異なる位置とすることとしたので、下肢部A2の下部側が外側に開く状態を左右で異なる位置とすることができ、疲労感を一層低減させることができる。
右側端部側の縁部20A1´,20A2´の連結と左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´の連結のいずれか一方の位置は、開口部21´の下端部21bの位置に対し上下方向において±5cm以内の範囲とすることとしたので、更に左右の下肢部A2が外側に開くことを規制しつつ、疲労感を低減させることができる。
【0062】
右側端部側の縁部20A1´,20A2´の連結と左側端部側の縁部20A1´´,20A2´´の連結のいずれか一方の位置は、開口部21´の下端部21bの位置と一致させることとしたので、更に一層左右の下肢部A2が外側に開くことを規制しつつ、疲労感を低減させることができる。
【0063】
また更に、腰天部10を腰部A1に固定するための固定部材11を挿入して備え、固定部材11を腰天部10に挿入しつつ腰部A1に巻き回すように固定することとしたので、腰天部10を腰部A1に固定し易くすることができる。
【0064】
また、固定部材11は、巻き回し状に湾曲するとともに、相互に離間する両端部11a,11bを有し、腰天部10に沿うように設けられることとしたので、固定部材11を離間する両端部11a,11bから腰部A1に挿入することができる。
【0065】
更に、固定部材11は、腰部を締め付ける方向となる内側方向に付勢されることとしたので、固定部材11により腰天部10を腰部A1に確実に締め付けることができる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0067】
例えば、上述した実施形態にあっては、衣服1は、二部式の着物とし、覆い部20は、二部式の着物の下衣側(下肢部A2側)とすることとしているが、このような着物に限定されず例えば一部式の長襦袢やスカート等人体Aの腰部A1から下肢部A2に至る部位を覆う覆い部20(覆う部分)を有する衣服1が含まれるものとする。ただし、機能性等を考慮すると、衣服1を二部式の着物とし、覆い部20を二部式の着物の下衣側(下肢部A2側)とすることがより好ましい実施形態となる。
【0068】
また、上述した実施形態にあっては、開閉部23は、係合または係合の解除を行うことにより開閉を行うものとして、スナップ釦とすることとしているが、このような係合部材24に限定されず開閉部23を開閉することができるものであれば他の釦や面ファスナー、チャック等その他の部材を含むものとする。ただし、開閉の容易さや確実性等を考慮すると、開閉部材23をスナップ釦とすることがより好ましい実施形態となる。
【0069】
更に、
図15乃至
図19に示す変形例の衣服1´のように開放部20を上記した開口部21と異なる構成とすることとしてもよい(以下の説明において、上記で説明された構成であって、下記で説明されていない構成については、上記と同様であるとしてその説明を省略することがあるものとする)。
【0070】
すなわち、変形例の衣服1´においては、上記した開閉部23を第1の開閉部23、右側開閉部23Aを第1の右側開閉部23A、左側開閉部23Bを第1の左側開閉部23Bとするとともに、開放部20は、後部側であって少なくとも臀部A3を覆う部分を開閉可能に開放する第2の開閉部21´´とすることができる。より詳しくは、開放部20は、後部側の中央部であって腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分を開閉可能に開放する第2の開閉部21´´とすることができる。本変形例にあっては、第1の開閉部23は、後部側であって第2の開閉部21´´の下端部21b側の縁部21cから覆い部20の下端部側の縁部20b2に至る部分を開閉することができる。
【0071】
すなわち、第2の開閉部21´´は、覆い部20の後部側の右側を開閉する第2の右側開閉部21A´´と覆い部20の後部側の左側を開閉する第2の左側開閉部21B´´とを有し、閉塞状態において第2の右側開閉部21A´´の中央部側の縁部21A1´´側と第2の左側開閉部21B´´の中央部側の縁部21B1´´側が相互に重なるように交差させて閉塞させ少なくとも臀部A3がより詳しくは腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側が第2の開閉部21´から露出しないように構成されることとすることができる。第2の右側開閉部21A´´の中央部側の縁部21A1´´側および第2の左側開閉部21B´´の中央部側の縁部21B´´側は、下方から上方に向かって外側に湾曲しながら張り出すこととすることができる。
【0072】
そして、衣服1´は、腰天部10を腰部A1に固定するための固定部材11´を備え、固定部材11´を腰部A1に巻き回すようにして固定し、第2の右側開閉部21A´´の中央部側の縁部21A1´´側と第2の左側開閉部21B´´の中央部側の縁部21B1´´側が相互に重なるように交差させて閉塞させることができる。
【0073】
この固定部材11´は、腰天部10の両端部10a,10bから延びる紐状の第1の固定部材11A´と第2の固定部材11B´を有するとともに、第1の固定部材11A´および第2の固定部材11B´は、相互に係合する係合部12´を端部側に有し、係合部12´を相互に係合することにより、第1の固定部材11A´および第2の固定部材11B´を係合させて腰天部10を腰部A1に固定し、第2の右側開閉部21A´´の中央部側の縁部21A1´´側と第2の左側開閉部21B´´の中央部側の縁部21B1´´側が相互に重なるように交差させて閉塞させることができる。第1の固定部材11A´は、後方側において腰天部10の右側の端部10aから左方に延びており、第2の固定部材11B´は、後方側において腰天部10の左側の端部10bから右方に延びている。第1の固定部材11A´は、端部側が人体Aの腰部A1に沿って後方側の左方から前方に回るように至り、第2の固定部材11B´は、端部側が人体Aの腰部A1に沿って後方側の右方から前方に回るように至る。第1の固定部材11A´および第2の固定部材11B´は、係合部12´を介して前方で係合する。係合部12´は、面ファスナーで構成することができる。
【0074】
変形例に係る衣服1´においては、開放部21は、後部側であって少なくとも臀部A3を覆う部分を開閉可能に開放する第2の開閉部21´´より詳しくは後部側であって腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側を覆う部分を開閉可能に開放する第2の開閉部21´´とすることとしたので、通常時は覆い部20の後部側を閉塞するとともに、必要に応じて適宜覆い部20の後部側を開放することができる等、少なくとも臀部A3がより詳しくは腰部A1から臀部A3および下肢部A2の上部側が常時露出させることなく開放することが可能となる。
【0075】
また、第2の右側開閉部21A´´の縁部21A1´´側および第2の左側開閉部21B´´の縁部21B1´´側は、下方から上方に向かって外側に湾曲しながら張り出すことにより、閉塞状態において第2の右側開閉部21A´´の縁部21A1´´側と第2の左側開閉部21B´´の縁部21B1´´側を相互にクロスするように重ねることができる。これにより、閉塞状態において第2の右側開閉部21A´´の縁部21A1´´側と第2の左側開閉部21B´´の縁部21B1´´側の重なる部分Y(
図19の斜線部分)を下方から上方に向かって漸次大きくすることができ、閉塞状態で誤って開放して臀部A3が露出することを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0076】
A:人体
A1:腰部
A2:下肢部
A3:臀部
A4:膝裏
U:ユーザ
X1,X2:下部側の連結端部の位置
Y:重なる部分
1:衣服
1´:衣服
2:上衣
3:帯
10:腰天部
10a,10b:端部
11:固定部材
11a,11b:端部
11´:固定部材
11A´:第1の固定部材
11B´:第2の固定部材
12:離間部
12´:係合部
20:覆い部(下衣)
20α:右側身頃部
20β:左側身頃部
20A:前身頃部
20A1:表側前身頃部
20A1´:右側端部側の縁部
20A1´´:左側端部側の縁部
20A2:裏側前身頃部
20A2´:右側端部側の縁部
20A2´´:左側端部側の縁部
20B:後身頃部
20B1:右側後身頃部
20B1´:右側端部側の縁部
20B1´´:左側端部側の縁部
20B2:左側後身頃部
20B2´:右側端部側の縁部
20B2´´:左側端部側の縁部
20a:上端部側の縁部
20b:下端部側の縁部
20b1:前部の下端部側の縁部
20b2:後部の下端部側の縁部
21:開放部
21´:開口部
21a:上端部
21b:下端部
21c:縁部
21´´:第2の開閉部
21A´´:第2の右側開閉部
21A1´´:縁部
21B´´:第2の左側開閉部
21B1´´:縁部
22:伸縮性を有する部材
22a:皺
23:開閉部
23A:右側開閉部
23B:左側開閉部
24:係合部材
25:領域
25´:上端部の辺縁