(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105673
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】単一分子配列決定のための一本鎖環状DNA鋳型の作成
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240730BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C40B40/06
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083207
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2022128118の分割
【原出願日】2019-02-28
(31)【優先権主張番号】62/638,034
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/685,817
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】511109814
【氏名又は名称】カパ バイオシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ジェニー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイーズ,アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ラニク,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ゲットゥシェ,トゥーミー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】マルジュリドン,セベリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】バーデンホースト,ダリーン
(72)【発明者】
【氏名】ワディア,パーシス
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,アレクサンドラ・フイ
(72)【発明者】
【氏名】アーコット,アルナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鎖切断部位または鎖合成終結部位を含むアダプターの使用を含む、核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定する新規な方法を提供する。
【解決手段】標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定する方法であって、a)反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した標的核酸を形成するステップ;b)反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮するステップ;c)前記鎖合成終結部位がデオキシウリジンを含む場合に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)によってウラシルを切断するステップ;d)反応混合物をプライマー結合部位にハイブリダイズすることが可能なプライマーと接触させるステップ;ならびにe)プライマーを伸長し、それにより標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップ;を含む、前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定する方法であって、
a)反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した標的核酸を形成するステップであって、前記アダプターが二本鎖ステムおよび一本鎖ループを形成する一本鎖であり、前記ループがプライマー結合部位を含み、前記アダプターが前記プライマー結合部位の3’-側に鎖合成終結部位をさらに含むものであり、前記鎖合成終結部位が、脱塩基ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドリンカーから選択され、前記脱塩基ヌクレオチドがデオキシウリジンであり、前記非ヌクレオチドリンカーがヘキサエチレングリコール(HEG)である、前記ステップ;
b)反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮するステップ;
c)前記鎖合成終結部位がデオキシウリジンを含む場合に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)によってウラシルを切断するステップ;
d)反応混合物をプライマー結合部位にハイブリダイズすることが可能なプライマーと接触させるステップ;ならびに
e)プライマーを伸長し、それにより標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップであって、前記伸長が鎖合成終結部位で終結し、相補鎖には進まないものである、前記ステップ;
を含む、前記方法。
【請求項2】
標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するためのライブラリーを作成する方法であって、
a)反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した標的核酸を形成するステップであって、前記アダプターが二本鎖ステムおよび一本鎖ループを形成する一本鎖であり、前記ループがプライマー結合部位を含み、前記アダプターが前記プライマー結合部位の3’-側に鎖合成終結部位をさらに含むものであり、前記鎖合成終結部位が、脱塩基ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドリンカーからなる群から選択され、前記脱塩基ヌクレオチドがデオキシウリジンであり、前記非ヌクレオチドリンカーがヘキサエチレングリコール(HEG)である、前記ステップ;ならびに
b)反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮し、二重にアダプター連結した標的核酸のライブラリーを形成する、ステップ;
を含み、
ここで、前記鎖合成終結部位がデオキシウリジンを含む場合に、二本鎖標的核酸のライブラリーは、プライマー結合部位にハイブリダイズすることが可能なプライマーと接触させる前に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)によってデオキシウリジンの位置でウラシルが切断される、
前記方法。
【請求項3】
試料中の標的核酸のライブラリーの配列を決定する方法であって、
a)請求項2に記載の方法により標的核酸のライブラリーを形成するステップ;
b)鎖合成終結部位がデオキシウリジンを含む場合に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)によってウラシルを切断するステップ; c)ライブラリーを、プライマー結合部位にハイブリダイズすることが可能なプライマーと接触させるステップ;および
d)プライマーを伸長させ、それによりライブラリーの標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップであって、前記伸長が鎖合成終結部位で終結し、相補鎖には進まないものである、前記ステップ;
を含む、前記方法。
【請求項4】
アダプターへの連結がライゲーションによるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アダプターが少なくとも1つのバーコードを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アダプターがエキソヌクレアーゼ保護ヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アダプターが捕捉部分のリガンドを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
に記載の方法。
【請求項8】
配列決定の前に標的濃縮ステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
濃縮が標的特異的プローブを介した捕捉によるものである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核酸分析の分野に関し、より詳しくは、核酸配列決定のための鋳型の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
単一分子核酸の配列決定は、配列決定のステップに標的分子のライブラリーを準備するステップを含む。直鎖状核酸ライブラリーは、多くの場合、配列決定法のパフォーマンスを低下させる直鎖状核酸副産物と共に存在する。標的配列の両方の鎖を連続するポリメラーゼ読み取りで複数回読み取らせる環状二本鎖鋳型を生成するライブラリー準備方法がある。米国特許第7,302,146号および同第8,153,375号を参照されたい。いくつかの適用では、別々のシングルパス読み取りまたはそれぞれの鎖をより望ましいものにする、長い標的分子を読み取る必要がある。本発明は、ライブラリーを効率的に生成し、標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定する方法である。方法は、以下において詳細に記載される複数の利点を有する。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定する方法であって、反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した(doubly-adapted)標的核酸を形成するステップであって、アダプターが二本鎖ステムおよび一本鎖ループを形成する一本鎖であり、ステムが少なくとも1つの鎖切断部位を含む、ステップと;反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮するステップと;反応混合物を切断剤と接触させて二重にアダプター連結した標的核酸を切断部位で切断し、それぞれの鎖に伸長可能な末端を形成するステップと;伸長可能な末端を伸長し、それにより標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップであって、伸長が切断部位で終結し、相補鎖には進まない、ステップとを含む、方法である。連結は、例えば、標的核酸およびアダプターの粘着末端のライゲーションによるものであり得る。エキソヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼIIIおよびエキソヌクレアーゼVIIの一方または両方から選択され得る。アダプターは、少なくとも1つのバーコードを含み得る。いくつかの実施形態では、切断部位は1つまたは複数のデオキシウリジン(deoxyuracil)を含み、切断剤は、ウラシル-DNA-N-グリコシラーゼ(Uracil-DNA-N-glycosylase)(UNG)およびエンドヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、またはエンドヌクレアーゼVIIIを含む。いくつかの実施形態では、切断部位は1つまたは複数のリボヌクレオチドを含み、切断剤はRNaseHを含む。いくつかの実施形態では、切断部位は1つまたは複数の脱塩基部位を含み、切断剤はエンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、およびエンドヌクレアーゼVIIIから選択されるエンドヌクレアーゼを含む。アダプターは、エキソヌクレアーゼ保護ヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエート基を含有するものなどを含み得る。
【0004】
いくつかの実施形態では、アダプターは、捕捉部分のリガンドを含む。例えば、リガンドはビオチンまたは修飾ビオチンであることが可能であり、捕捉部分はアビジンまたはストレプトアビジンを含む。リガンドはアデノシン配列(オリゴ-dA)であってもよく、捕捉部分はチミジン配列(オリゴ-dT)を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、配列決定の前に、例えば標的特異的プローブを用いた標的濃縮ステップをさらに含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するための標的核酸のライブラリーを作成する方法であって、反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した標的核酸を形成するステップであって、アダプターが二本鎖ステムおよび一本鎖ループを形成する一本鎖であり、ステムが鎖切断部位を含む、ステップと;反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮するステップと;反応混合物を切断剤と接触させて二重にアダプター連結した標的核酸を切断部位で切断し、それぞれの鎖に伸長可能な末端を形成するステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、本発明は、試料中の標的核酸のライブラリーの配列を決定する方法であって、上述の標的核酸のライブラリーを形成するステップと;伸長可能な末端を伸長させ、それによりライブラリーの標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップであって、伸長が切断部位で終結し、相補鎖には進まない、ステップとを含む、方法である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定する方法であって、反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した標的核酸を形成するステップであって、アダプターが二本鎖ステムおよび一本鎖ループを形成する一本鎖であり、ループがプライマー結合部位を含み、アダプターが鎖合成終結部位をさらに含む、ステップと;反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮するステップと;反応混合物をプライマー結合部位にハイブリダイズすることが可能なプライマーと接触させるステップと;プライマーを伸長し、それにより標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップであって、伸長が鎖合成終結部位で終結し、相補鎖には進まない、ステップを含む、方法である。鎖合成終結部位は、ニック、ギャップ、脱塩基ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドリンカーから選択することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するためのライブラリーを作成する方法であって、反応混合物において、二本鎖標的核酸の末端をアダプターに連結して、二重にアダプター連結した標的核酸を形成するステップであって、アダプターが二本鎖ステムおよび一本鎖ループを形成する一本鎖であり、ループがプライマー結合部位を含み、アダプターが鎖合成終結部位をさらに含む、ステップと;反応混合物をエキソヌクレアーゼと接触させ、それにより二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮し、二重にアダプター連結した標的核酸のライブラリーを形成する、ステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、本発明は、試料中の標的核酸のライブラリーの配列を決定する方法であって、上述の標的核酸のライブラリーを形成するステップと;ライブラリーを、プライマー結合部位にハイブリダイズすることが可能なプライマーと接触させるステップと;プライマーを伸長させ、それによりライブラリーの標的核酸のそれぞれの鎖を別々に配列決定するステップであって、伸長が鎖合成終結部位で終結し、相補鎖には進まない、ステップとを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】アダプター連結した(adapted)核酸を形成する既存の方法の図である。
【
図2】アダプターが二次構造を有し、切断部位を含有する本発明のワークフローである。
【
図3】ステム-ループアダプター構造を示す図である。
【
図4】
図3に示したアダプターの切断部位の異なる配置を示す図である。
【
図5】非ヌクレオチド(HEG)切断部位を有するアダプターを示す図である。
【
図6】ナノポアシークエンサーでライブラリーを配列決定した結果を示すグラフである。
【
図7】自己プライミングヘアピンアダプターの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
定義
以下の定義は、本開示の理解を助ける。
【0011】
用語の「試料」とは、標的核酸を含有するか、または含有すると推測される任意の組成物を意味する。これには、個体から単離された組織または液体の試料、例えば、皮膚、血漿、血清、髄液、リンパ液、滑液、尿、涙液、血球、臓器、および腫瘍など、ならびにまた、ホルマリン固定したパラフィン包埋組織(FFPET)およびそこから単離された核酸を含む、個体から採取した細胞から確立されたin vitro培養の試料が含まれる。また試料には、無細胞材料、例えば、無細胞DNA(cfDNA)または循環腫瘍DNA(ctDNA)を含有する無細胞血液画分も含まれる。
【0012】
用語の「核酸」とは、DNA、RNA、およびそれらのサブカテゴリー、例えばcDNA、mRNAなどを含む、ヌクレオチドのポリマー(例えば、天然および非天然の両方のリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド)を意味する。核酸は一本鎖または二本鎖であってよく、一般に、5’-3’ホスホジエステル結合を含むが、ある場合には、ヌクレオチド類似体は他の結合を有し得る。核酸は、天然起源の塩基(アデニン(adenosine)、グアニン(guanosine)、シトシン、ウラシルおよびチミン(thymidine))、ならびに非天然の塩基を含むことがある。非天然の塩基のいくつかの例としては、例えば、Seelaら、(1999) Helv. Chim. Acta 82:1640に記載されているものが挙げられる。非天然の塩基は、特定の機能、例えば、核酸二重鎖の安定性の増加、ヌクレアーゼ消化の阻害、またはプライマー伸長もしくは鎖重合の阻止、を有し得る。
【0013】
用語の「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は同義的に使用される。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の核酸である。オリゴヌクレオチドは、より短いポリヌクレオチドを説明するために時折使用される用語である。オリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって、例えば、Narangら (1979)
Meth. Enzymol. 68:90~99; Brownら (1979) Meth. Enzymol. 68:109~151; Beaucageら (1981) Tetrahedron Lett. 22:1859~1862; Matteucciら (1981) J. Am. Chem. Soc. 103:3185~3191に記載されているような直接的化学合成に関する方法によって調製される。
【0014】
用語の「修飾ヌクレオチド」とは、アデニン(adenosine)、グアニン(guanosine)、チミン(thymidine)、およびシトシンからなる4つの従来のDNA塩基以外の塩基を有するDNA中のヌクレオチドを説明するために本明細書で使用される。dA、dG、dCおよびdTは、従来のヌクレオシド(nucleotide)である。しかし、デオキシウリジン(deoxyuracil)(dU)およびデオキシイノシン(dI)は、DNAにおける修飾ヌクレオシドである。またDNAに挿入されたリボヌクレオシド(rA、rC、rUおよびrG)も、本発明の文脈において「修飾ヌクレオシド(nucleotide)」と考えられる。最後に、核酸鎖にヌクレオチドの代わりに挿入された非ヌクレオチド部分(例えばPEG)もまた、本発明の文脈では「修飾ヌクレオチド」と考えられる。
【0015】
用語の「プライマー」とは、標的核酸(「プライマー結合部位」)の配列とハイブリダイズし、そのような合成に適した条件下で核酸の相補鎖に沿って合成の開始点として作用
することが可能な一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0016】
用語の「アダプター」とは、別の配列に追加の特性を取り込むようにその配列に付加することができるヌクレオチド配列を意味する。アダプターは、典型的には、一本鎖もしくは二本鎖であり得るオリゴヌクレオチドであるか、または一本鎖部分および二本鎖部分の両方を有し得るオリゴヌクレオチドである。用語の「アダプター連結した標的核酸」とは、アダプターが一方または両方の末端でコンジュゲートされている核酸を意味する。
【0017】
用語の「ライゲーション」とは、1分子の5’-リン酸基が別の分子の3’-ヒドロキシル基と反応する、2つの核酸鎖を連結する縮合反応を意味する。ライゲーションは、典型的には、リガーゼまたはトポイソメラーゼによって触媒される酵素反応である。ライゲーションは、2つの一本鎖を連結して1つの一本鎖分子を生成することができる。またライゲーションは、二本鎖分子にそれぞれ属する2つの鎖を連結させて、それにより2つの二本鎖分子を連結することができる。またライゲーションは、二本鎖分子の両方の鎖を別の二本鎖分子の両方の鎖に連結させて、それにより2つの二本鎖分子を連結することもできる。またライゲーションは、二本鎖分子内の鎖の2つの末端を連結させて、それにより二本鎖分子のニックを修復することもできる。
【0018】
用語の「バーコード」とは、検出および識別することができる核酸配列を意味する。バーコードは、様々な核酸に組み込むことができる。バーコードは十分に長く、例えば、2、5、20ヌクレオチドであり、その結果、試料中で、バーコードを組み込んだ核酸は、バーコードによって識別またはグループ化され得る。
【0019】
用語の「マルチプレックス識別子」または「MID」とは、標的核酸の供給源(例えば、核酸が由来する試料)を識別するバーコードを意味する。同一試料からのすべてのまたは実質的にすべての標的核酸は、同一MIDを共有する。異なる供給源または試料からの標的核酸を混合し、同時に配列決定することができる。MIDの使用により、配列の読み取りを、標的核酸の元となった個々の試料に割り当てることができる。
【0020】
用語の「ユニーク分子識別子」または「UID」という用語は、それが結合されている核酸を識別するバーコードを意味する。同一試料からのすべてのまたは実質的にすべての標的核酸は、異なるUIDを有する。同一の元の標的核酸に由来するすべてのまたは実質的にすべての後代(例えばアンプリコン)は、同一UIDを共有する。
【0021】
用語の「ユニバーサルプライマー」および「ユニバーサルプライミング結合部位」または「ユニバーサルプライミング部位」とは、異なる標的核酸中に(典型的には、in vitroでの付加を介して)存在するプライマーおよびプライマー結合部位を意味する。ユニバーサルプライミング部位は、アダプターを使用して、または5’部分にユニバーサルプライミング部位を有する標的特異的(非ユニバーサル)プライマーを使用して、複数の標的核酸に付加される。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライミング部位に結合し、そこからプライマー伸長を誘導することができる。
【0022】
より一般的には、用語の「ユニバーサル」とは、任意の標的核酸に付加させ、標的核酸配列とは無関係にその機能を実行することができる核酸分子(例えば、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチド)を意味する。ユニバーサル分子は、補体にハイブリダイズさせることによって、例えば、ユニバーサルプライマーをユニバーサルプライマー結合部位に、またはユニバーサル環状化オリゴヌクレオチドをユニバーサルプライマー配列にハイブリダイズさせることによって、その機能を実行することができる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語の「標的配列」、「標的核酸」または「標的」とは、試
料中の核酸配列の一部で、検出または分析されるものを意味する。用語の標的には、標的配列のすべてのバリアント、例えば、1つまたは複数の変異体バリアントおよび野生型バリアントが含まれる。
【0024】
用語の「増幅」とは、標的核酸の追加的複製を作成するプロセスを意味する。増幅は、2つ以上のサイクル、例えば、指数関数的増幅の複数のサイクルを有し得る。増幅は、1サイクルしか有していない場合もある(標的核酸の単一複製の作成)。複製は、追加的配列、例えば、増幅に使用されるプライマーに存在する配列を有していてもよい。また増幅は、1本のみの鎖(線形増幅)、優先的に1本の鎖(非対称PCR)の複製も産生し得る。
【0025】
用語の「配列決定」とは、標的核酸中のヌクレオチドの配列を決定する任意の方法を意味する。
【0026】
用語の「自己プライミングアダプター」とは、アダプター自体から鎖伸長(鎖の複製)を開始することが可能なアダプターを意味する。自己プライミングアダプターは、別々のプライマー分子がアダプターに結合してプライマーからの鎖伸長を開始するプライマー結合部位を含む従来のアダプターとは対比的である。
【0027】
単一分子配列決定法は、アダプター連結した標的核酸のライブラリーを生成するステップを含む。いくつかの方法では、ライブラリーは、直鎖状のアダプター連結した標的核酸から作成される。直鎖状のライブラリーを調製するワークフロー中に、配列決定アダプター(Yアダプターまたはhアダプター)が二本鎖DNAにライゲーションされ、その後シークエンサーにロードされる。残念なことに、ライゲーションステップは100%有効ではなく、部分的にライゲーションされた産物またはライゲーションされていない産物が生成される。これらの副産物は、例えば配列決定ポリメラーゼへの結合に対して競合することにより、有効な配列決定の収量および機器のパフォーマンスを低下させる。完全にライゲーションされた産物を濃縮するため、修飾アダプターが設計された。この新しいアダプターは、部分的にライゲーションされた産物またはライゲーションされていない産物を除去するエキソヌクレアーゼのステップを可能にする。
【0028】
本発明の方法は、多数の利点を有する。方法は、(エキソヌクレアーゼ介在性濃縮の効果により)高度に濃縮されたライブラリーの長い単一分子の配列決定を可能にする。さらに、自己プライミングアダプターの使用は、別のプライマーおよびプライマーのアニーリングステップの必要性を省くため、配列決定ワークフローを合理化する。またさらに、同一のアダプターがそれぞれの標的核酸の両末端にライゲーションされ、同一のプライミングメカニズムが使用されるので、鎖配向バイアスがない。またさらに、異なるタイプの標的核酸がこれらのアダプターと適合可能であり、例えばゲノムDNA(gDNA)または増幅産物である。標的核酸のサイズと最終的な読み取り長さは、使用される配列決定プラットフォームによってのみ限定され、ライブラリーの設計によっては限定されない。
【0029】
本発明は、試料中の標的核酸を検出するステップを含む。いくつかの実施形態では、試料は、対象または患者に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、例えば生検による、対象または患者に由来する固形組織または固形腫瘍の断片を含み得る。また試料は、体液(例えば、尿、痰、血清、血漿もしくはリンパ液、唾液、痰、汗、涙液、脳脊髄液、羊水、滑液、心膜液、腹膜液、胸膜液、嚢胞液、胆汁、胃液、腸液、および/または糞便試料)を含み得る。試料は、腫瘍細胞が存在し得る全血または血液画分を含み得る。いくつかの実施形態では、試料、特に液体試料は、無細胞材料、例えば、無細胞腫瘍DNAまたは腫瘍RNAを含む無細胞DNAまたはRNAを含み得る。本発明は、希少で少量の標的を分析するのに特に適している。いくつかの実施形態では、試料は、無細胞試料、例えば
、無細胞腫瘍DNAまたは腫瘍RNAが存在する無細胞血液由来の試料である。他の実施形態では、試料は、培養された試料、例えば、感染因子または感染因子に由来する核酸を含有するか、またはそれらを含有することが疑われる培養物または培養上清である。いくつかの実施形態では、感染因子は、細菌、原生動物、ウイルスまたはマイコプラズマである。
【0030】
標的核酸は、試料に存在し得る目的の核酸である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、遺伝子または遺伝子断片である。他の実施形態では、標的核酸は、遺伝子バリアント、例えば一塩基多型もしくはバリアント(SNPもしくはSNV)を含む多型、または、例えば遺伝子融合において生じる遺伝子再配列を含有する。いくつかの実施形態では、標的核酸はバイオマーカーを含む。他の実施形態では、標的核酸は、特定の生物の特徴であり、例えば、病原性生物の識別において有用であるか、または病原生物の特徴、例えば、薬物感受性もしくは薬物耐性である。さらに他の実施形態では、標的核酸は、ヒト対象の特徴であり、例えば、対象に特有のHLAまたはKIR遺伝子型を定義するHLAまたはKIR配列である。さらに他の実施形態では、試料中のすべての配列は、例えば、ショットガンゲノム配列決定における標的核酸である。
【0031】
本発明の実施形態では、二本鎖標的核酸は、本発明の鋳型配置に変換される。いくつかの実施形態では、標的核酸は、一本鎖形態(例えば、mRNA、マイクロRNA、ウイルスRNAを含むRNA;または一本鎖ウイルスDNA)で天然に存在する。一本鎖標的核酸は、二本鎖形態に変換されて、特許請求される方法のさらなるステップを可能にする。
【0032】
長い標的核酸は断片化され得るが、いくつかの適用においては、長い読み取りを達成するために長い標的核酸が所望されることがある。いくつかの実施形態では、標的核酸は自然に断片化され、例えば、循環無細胞DNA(cfDNA)または化学的に分解されたDNA、例えば保存された試料で確認されるものなどである。他の実施形態では、標的核酸は、例えば、物理的手段、例えば超音波処理によって、またはエンドヌクレアーゼ消化、例えば制限消化によって、in vitroで断片化される。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的濃縮ステップを含む。濃縮は、1つまたは複数の標的特異的プローブを介して標的配列を捕捉することによるものであってもよい。試料中の核酸は、変性され、一本鎖の標的特異的プローブと接触させ得る。プローブは、親和性捕捉部分のリガンドを含んでいてもよく、それによりハイブリダイゼーション複合体が形成された後、それらが親和性捕捉部分を提供することによって捕捉される。いくつかの実施形態では、親和性捕捉部分はアビジンまたはストレプトアビジンであり、リガンドはビオチンまたはデスチオビオチンである。いくつかの実施形態では、この部分は固体支持体に結合される。以下でさらに詳細に説明するように、固体支持体は、超常磁性球状ポリマー粒子、例えばDYNABEADS(商標)磁性ビーズまたは磁性ガラス粒子などを含み得る。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、アダプター分子が標的核酸にライゲーションされる。ライゲーションは、平滑末端ライゲーション、またはより効率的な粘着末端ライゲーションであり得る。標的核酸またはアダプターは、鎖充填を含む「末端修復」により、すなわち、DNAポリメラーゼにより3’-末端を伸長して5’-オーバーハングを除去することにより、平滑末端にすることができる。いくつかの実施形態では、平滑末端アダプターおよび標的核酸は、例えば、DNAポリメラーゼまたはターミナルトランスフェラーゼによって、単一ヌクレオチドをアダプターの3’-末端に付加することにより、また単一相補的ヌクレオチドを標的核酸の3’-末端に付加することにより粘着性にすることができる。さらに他の実施形態では、アダプターおよび標的核酸は、制限エンドヌクレアーゼによる消化によって、粘着末端(オーバーハング)を得ることができる。後者のオプショ
ンは、制限酵素認識部位を含むことが知られている公知の標的配列にとってはより有利である。いくつかの実施形態では、他の酵素的ステップがライゲーションを達成するために必要となり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドキナーゼを使用して、5’-リン酸を標的核酸分子およびアダプター分子に付加することもある。
【0035】
いくつかの実施形態では、アダプターは、二本鎖部分(ステム)と、ステムから遠位の一本鎖部分(ループ)とを含む。ステムは、鎖切断部位を含む(
図3)。いくつかの実施形態では、ループは、プライマー結合部位を含む(
図4)。そのような実施形態では、アニールされたプライマーは、鎖の複製を開始することもある。いくつかの実施形態では、アダプターは、二本鎖部分(ステム)と、ステムから遠位に非常に小さいループを含む一本鎖部分(ループ)とを含む。そのようなアダプターは、ステムループアダプターまたはヘアピンアダプターであり得る(
図7)。ステムは、切断されたアダプターが自己プライミングすることを可能にする、すなわち、別々のプライマーなしで鎖の複製を開始することを可能にする、鎖切断部位を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、アダプター分子は、in vitroで合成された人工配列である。他の実施形態では、アダプター分子は、in vitroで合成された天然起源の配列である。さらに他の実施形態では、アダプター分子は、単離された天然起源の分子である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、バーコード含有アダプターのライゲーションによるバーコードの標的核酸への導入を含む。個々の分子の配列決定は、典型的には、例えば、米国特許第7,393,665号、同第8,168,385号、同第8,481,292号、同第8,685,678号および同第8,722,368号に記載されているような分子バーコードを必要とする。ユニーク分子バーコードは、試料中の、例えば、典型的にはin vitro操作の最初期ステップ中に患者試料などの試料中のそれぞれの分子に付加される短い人工配列である。バーコードは、分子とその後代をマークする。ユニーク分子バーコード(UID)は複数の用途を有する。バーコードは、試料中のそれぞれの個々の核酸分子を追跡して、例えば、患者の血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)分子の存在および量を評価し、生検することなくがんを検出およびモニターすることができる。米国特許出願第14/209,807号および同第14/774,518号を参照されたい。またユニーク分子バーコードは、配列決定エラーの修正に使用されることもある。単一標的分子の後代全体が同一のバーコードでマークされ、バーコード付けされたファミリーを形成する。バーコード付けされたファミリーのすべてのメンバーで共有されていない配列中のバリエーションは、人工産物であって真の変異ではないものとして廃棄される。ファミリー全体が元の試料中の単一分子を表すので、バーコードは位置の重複排除および標的定量化に使用することもある。同文献を参照されたい。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、アダプターは、1つまたは複数のバーコードを含む。バーコードは、試料が混合(多重化)されている試料の供給源を識別するために使用されるマルチプレックス試料ID(MID)であり得る。またバーコードは、それぞれの元の分子およびその後代を識別するために使用されるUIDとして機能することもある。またバーコードは、UIDとMIDの組合せであってもよい。いくつかの実施形態では、単一のバーコードがUIDおよびMIDの両方として使用される。
【0039】
いくつかの実施形態では、それぞれのバーコードは、予め定義された配列を含む。他の実施形態では、バーコードは、ランダム配列を含む。バーコードは、1~40ヌクレオチド長であり得る。
【0040】
本発明の方法では、アダプターは、鎖切断部位を含む。切断部位は、特定のエンドヌク
レアーゼが利用可能な修飾ヌクレオチドから選択される。修飾ヌクレオチド-エンドヌクレアーゼ対の例の非限定的なリストとしては、デオキシウリジン(deoxyuracil) - ウラシル-DNA-N-グリコシラーゼ(Uracil-N-DNA glycosylase)(UNG)とエンドヌクレアーゼ;脱塩基部位 - APヌクレアーゼ;8-オキソグアニン - 8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ(Fpg(ホルムアミドピリミジン[fapy]-DNAグリコシラーゼ)としても知られている);デオキシイノシン - アルキルアデニングリコシラーゼ(AAG)とエンドヌクレアーゼ、およびリボヌクレオチド - RNaseHが挙げられる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、切断部位を使用して、伸長可能な3’-末端を生成する。そのような実施形態では、切断部位はアダプターのステム部分に位置されており、それにより相補鎖の複製が開始され得る。
【0042】
異なる切断剤は、異なる産物を生成する。いくつかの実施形態では、3’-Pを含む産物の混合物を生成するエンドヌクレアーゼVIII(エンドVIII)が使用される。他の実施形態では、3’-ホスホ-α、β-不飽和アルデヒドを生成するエンドヌクレアーゼIII(Endo III)が使用される。さらに他の実施形態では、3’-OH末端を生成するエンドヌクレアーゼIV(Endo IV)が使用される。伸長不可能な末端は、別々の配列決定プライマーが使用される実施形態において有利である。延長可能な3’-末端(3’-OH)は、別々の配列決定プライマーがなく、配列決定反応が延長可能な3’-末端によって自己プライミングされる場合において有利である。
【0043】
他の実施形態では、切断部位は、鎖合成(伸長)ターミネーターとして使用される。そのような実施形態では、切断部位は、プライマー結合部位の上流にあるアダプターのいかなる場所にも配置される。
【0044】
いくつかの実施形態では、この方法は、そのような切断が生じ得る条件下で、切断部位を切断することが可能なエンドヌクレアーゼと反応混合物とを接触させるステップを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、配列決定反応は、自己プライミングステップを含む。切断部位でのエンドヌクレアーゼ鎖切断は、別々の配列決定プライマーを使用することなく、合成反応による配列決定で伸長され得る遊離の3’-末端を生成する(
図7)。
【0046】
いくつかの実施形態では、切断部位は、鎖終結ステップとして作用する。アダプター連結した標的核酸中の2つのアダプターのうちの1つからの鎖(またはプライマー)を延長することにより、配列決定DNAポリメラーゼは、標的核酸中の第2のアダプターの切断部位に達する。鎖切断(break)は、鎖伸長ターミネーターとして作用する。他の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、非ヌクレオチドポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばヘキサエチレングリコール(HEG)である。これらの部分はエンドヌクレアーゼによって切断されないが、複製されている核酸鎖の鎖合成ターミネーターとして作用する。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、アダプター連結した標的核酸または任意の他の配列決定中間体(例えば、ナノポア配列決定で使用されるポアタンパク質、DNAポリメラーゼ、および鋳型の三元複合体)の親和性捕捉を含む。その目的のために、アダプターは、標的が親和性捕捉部分により(例えばストレプトアビジンを介して)捕捉されることを可能にする親和性リガンド(例えばビオチン)を組み込んでいてもよい。いくつかの実施形態では、デスチオビオチンが使用される。いくつかの実施形態では、親和性捕捉は、固体支持体に結合された親和性分子(例えばストレプトアビジン)を利用する。固体支持体は
、溶液中の浮遊物質(例えば、ガラスビーズ、磁気ビーズ、ポリマービーズもしくは他の同様の粒子)、または固相支持体(例えば、シリコンウエハー、ガラススライドなど)であり得る。液相支持体の例としては、超常磁性球状ポリマー粒子、例えばDYNABEADS(商標)磁気ビーズ、または米国特許第656568号、同第6274386号、同第7371830号、同第6870047号、同第6255477号、同第6746874号および同第6258531号に記載されているような磁性ガラス粒子が挙げられる。いくつかの実施形態では、親和性リガンドは核酸配列であり、その親和性分子は相補的配列である。いくつかの実施形態では、固体基質はポリ-Tオリゴヌクレオチドを含み、一方アダプターは少なくとも部分的に一本鎖ポリ-A部分を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、鎖単離は、一本鎖結合タンパク質、例えば、細菌SSB、低複雑性DNA C0t DNA(反復配列用に濃縮されたDNA)、または化学薬品、例えば、アルカリ、グリセロール、尿素、DMSO、もしくはホルムアミドなどから選択される様々な薬剤によって増強される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明は、アダプターライゲーションステップの後にエキソヌクレアーゼ消化ステップを含む。エキソヌクレアーゼは、反応混合物から遊離末端を含む任意の核酸を除去する。エキソヌクレアーゼ消化は、トポロジー的に環状である、すなわち、遊離末端を含まない、二重にアダプター連結した標的核酸を濃縮する。ライゲーションされていない標的核酸、1つのアダプターだけにライゲーションされた核酸、および過剰のアダプターは、反応混合物から除去される。
【0050】
エキソヌクレアーゼは、一本鎖特異的エキソヌクレアーゼ、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼ、またはそれらの組合せであってもよい。エキソヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIIIおよびエキソヌクレアーゼVIIのうちの1つまたは複数であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の配列決定にすぐに使えるアダプター連結した標的核酸のライブラリーを作成する方法、ならびにその方法によって生成されるライブラリーを含む。詳細には、ライブラリーは、試料中に存在する核酸に由来するアダプター連結した標的核酸のコレクションを含む。ライブラリーのアダプター連結した標的核酸分子は、それぞれの末端でアダプター配列と連結した標的配列を含み、切断部位、および任意選択によりプライマー結合部位を含むトポロジー的に環状の分子である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明は、核酸配列決定により試料中の標的核酸を検出するステップを含む。試料中のすべての核酸を含む複数の核酸は、本発明のライブラリーに変換され、配列決定され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法は、配列決定読み込みの質および長さを改善するために、ライブラリーから損傷した標的または分解した標的を除去するステップをさらに含む。このステップは、そのような損傷した標的核酸を分解するために、ウラシル-DNA-N-グリコシラーゼ(uracil DNA N-glycosylase)(UNGもしくはUDG)、APヌクレアーゼ、および8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼとしても知られているFpg(ホルムアミドピリミジン[fapy]-DNAグリコシラーゼ)のうちの1つまたは複数とライブラリーを接触させるステップをさらに含む。
【0054】
配列決定は、当技術分野で公知の任意の方法により実施することができる。特に有利であるのは、長い標的核酸を読み取ることが可能なハイスループット単一分子配列決定である。そのような技術の例としては、SMRTを利用するPacific Biosciencesプラットフォーム(Pacific Biosciences, Menlo
Park, Cal.)、またはナノポア技術を利用するプラットフォーム、例えば、Oxford Nanopore Technologies (Oxford, UK)、もしくはRoche Sequencing Solutions (Roche Genia, Santa Clara, Cal.)によって製造されるものなど、および合成による配列決定の関与の有無を問わない、他の既存のもしくは将来的なDNA塩基配列決定技術が挙げられる。配列決定ステップは、プラットフォームに特異的な配列決定プライマーを利用することができる。
【0055】
分析およびエラー修正
いくつかの実施形態では、配列決定ステップは、配列アライニング(aligning)ステップを含む配列分析を含む。いくつかの実施形態では、アライニングは、複数の配列、例えば、同じバーコード(UID)を有する複数のものからコンセンサス配列を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、バーコード(UID)を使用して、すべてが同一のバーコード(UID)を有する複数の配列からコンセンサスを決定する。他の実施形態では、バーコード(UID)を使用して、人工産物、すなわち、同一のバーコード(UID)を有する一部の配列には存在するがすべての配列には存在しないバリエーションを除去する。試料前処理または配列決定エラーから生じるそのような人工産物は除去することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、試料中のそれぞれの配列の数は、試料中のそれぞれのバーコード(UID)を備えた配列の相対数を定量化することにより定量化することができる。それぞれのUIDは、元の試料中の単一分子を表し、それぞれの配列バリアントに関連した異なるUIDをカウントすることにより、元の試料中のそれぞれの配列の割合を決定することができる。当業者は、コンセンサス配列を決定するために必要な配列読み取り数を決定することができる。いくつかの実施形態では、相対数は、正確な定量的結果に必要なUID当たりの読み取り(「配列深度」)である。いくつかの実施形態では、所望の深度は、UID当たり5~50の読み取りである。
【0057】
例えば、増幅および配列決定のためのアダプター連結した標的核酸のライブラリーを形成する先行技術の方法を
図1に示す。ライブラリーは、直鎖状のアダプター連結した標的核酸を含む。対照的に、本発明の方法(
図2に示す)は、エキソヌクレアーゼ消化に耐性であり、エキソヌクレアーゼを使用して濃縮され得るトポロジー的に閉じた核酸を形成する。1つのデオキシウリジン(deoxyuracil)(dU)を有するアダプターの一実施形態を
図3に示す。複数のdUを有するアダプターの他の実施形態を
図4および
図7に説明する。アダプターのさらに別の実施形態は、dUの代わりに、非ヌクレオシド(
nucleotide)のポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、例えば
ヘキサエチレングリコール(HEG)を有する(
図5)。
【0058】
方法は、反応混合物中の二本鎖核酸の末端にステムループアダプターをライゲーションすることから始まる(
図2)。得られる構造は、遊離5’末端および3’末端を欠いているトポロジー的に環状の(閉じた)核酸である。任意のライゲーションされていない標的核酸および使用されていないアダプター分子は反応混合物から除去することができ、それによりアダプター連結した標的核酸が濃縮される(
図2)。アダプターは、鎖切断部位となるステム部分に少なくとも1つのデオキシウリジン(deoxyuracil)(dU)を含む(
図3)。次に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(uracil-DNA glycosylase)(例えばUNG)を使用してウラシルを切断し、DNA中の脱塩基部位を露出させる。さらに、鎖切断(break)は、APリアーゼ、エンドヌクレアーゼ(例えばエンドヌクレアーゼIV)または非酵素系試薬または一本鎖切断(break)(ニック)を生成する条件を使用して生成される。
【0059】
次に、反応混合物を、アダプターの一本鎖部分のプライマー結合部位に結合し、配列決定プライマー伸長反応を開始することが可能な配列決定プライマーと接触させる。一本鎖部分のプライマー結合部位は、ループ部分にあってもよい(
図4)。また一本鎖部分のプライマー結合部位は、エンドヌクレアーゼ切断後に露出したギャップの反対領域にあってもよい(
図4)。プライマー伸長は、アダプター連結した標的核酸の反対側アダプターの切断部位(ニック)まで進み、そこで終結する。
【0060】
別の実施形態では、
図7に示したアダプターが使用される。方法のこの実施形態はまた、反応混合物中の二本鎖核酸の末端にステム-ループアダプターをライゲーションすることから始まる。この実施形態では、別々の配列決定プライマーは必要なく、アダプターのループ領域は、配列決定ステップのための配列決定プライマー結合部位を含有する必要はない。アダプターは、鎖切断部位となるステム部分に1つまたは複数のデオキシウリジン(deoxyuracil)(dU)を含む。得られるアダプター連結した標的核酸は、遊離の5’末端および3’末端を欠いているトポロジー的に環状の(閉じた)核酸である。任意のライゲーションされていない標的核酸および使用されていないアダプター分子を反応混合物から除去し、それによりアダプター連結した標的核酸を濃縮することができる。例えば、遊離の5’末端または3’末端を標的とするエキソヌクレアーゼによる処理を使用することができる。
【0061】
次に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(例えばUNG)を使用して、1つまたは複数のウラシルを切断し、DNAの脱塩基部位を露出させる。さらに、鎖切断(break)は、APリアーゼ、エンドヌクレアーゼ(例えばエンドヌクレアーゼIVもしくはエキソヌクレアーゼVIII)または非酵素系試薬または一本鎖切断(break)(ニック)を生成する条件を使用して行われる。複数のデオキシウラシルが存在する場合、ギャップが生成される。次に、ニック(またはギャップ)中の鎖の遊離3’末端は、配列決定鎖伸長反応において伸長される。いくつかの実施形態では、アダプターは、エキソヌクレアーゼ切断に耐性のヌクレオチドを含む。これらのヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド)は、切断部位の近くに位置しており、エキソヌクレアーゼ分解から伸長可能な3’-末端を保護する。伸長は、アダプター連結した標的核酸の反対側のアダプターの切断部位(ニックまたはギャップ)まで進み、そこで終結する。
【実施例0062】
実施例1.dU含有ステム-ループアダプターによるライブラリーの形成および配列決定。
この実施例では、
図3に図示したステム-ループアダプターを使用した。SMRTベースの配列決定システム(配列番号3および4)ならびにナノポアベースのシステム(配列番号1および2)のアダプターを作成した。それぞれのアダプターは、ステム領域にデオキシウリジン(deoxyuracil)ヌクレオシド(nucleotide)がある場合とない場合で作成した。アダプター配列領域を表1に示した。
【0063】
【0064】
HIVゲノムの断片(HIV Genewiz野生型DNA(10
6個の複製)アンプリコンサイズ1.1kb)を標的核酸として使用した。2ugの精製PCR産物を、市販のライブラリー調製試薬(Kapa Biosystems, Wilmington,
Mass.)を使用してアダプターにライゲーションした。ライゲーション後、反応混合物をエキソヌクレアーゼで処理し、残っているあらゆる直鎖状分子を除去した。直鎖状アダプター(配列番号5)の場合、エキソヌクレアーゼは使用されなかった。Qubitを使用して、ssDNAおよびdsDNAの最終ライブラリー濃度を決定した。次のステップでは、アダプター連結した標的核酸をウラシル-DNAグリコシラーゼ(Uracil DNA glycosylase)(UDG)およびDNAグリコシラーゼ-リアーゼ、エンドヌクレアーゼVIII(USER(商標), New England Biolabs, Waltham, Mass.)で消化した。ウラシルを含まないアダプターの場合(配列番号1、3、および5)、USER(商標)は使用されなかった。USER(商標)処理の後、配列決定プライマーを付加した。配列決定プライマー結合部位は、ループ領域にある(
図4)。得られたライブラリーは、Pacific BioSciences RSII プラットフォーム(Pacific Biosciences,
Menlo Park, Cal.)およびナノポアプラットフォーム(Roche Sequencing Solutions, Santa Clara, Cal.)で配列決定された。RSIIプラットフォームでの配列決定読み取りの質および長さを表2にまとめる。
【0065】
【0066】
ナノポアプラットフォームでの配列決定読み取りの質および長さを
図6に示す。
【0067】
実施例2(予測的).自己プライミングdU含有ヘアピンアダプターによるライブラリーの形成および配列決定。
この実施例では、
図7に図示したヘアピンアダプターを使用する。アダプターは、配列番号6である。
【0068】
配列番号6:
/5phos/ATCTCTCTCAAATCCTCCTCCTCCGTTGGAGGAACGGAGGAGGA*G*G*AUUUGAGAGAGATT
U-デオキシウリジン(deoxyuracil);*-ホスホロチオエートヌクレオチド
【0069】
アダプターは、標準のライブラリー調製試薬(例えば、Kapa Biosystems)を使用して、標的核酸にライゲーションする。アダプター連結した標的核酸を含有する反応混合物を、エキソヌクレアーゼExo VIIおよびExo IIIで処理し、アダプター連結した標的核酸を濃縮する。濃縮されたアダプター連結した標的核酸をUDGおよびエンドヌクレアーゼEndo IVで処理する。UDGはUを切断して脱塩基部位を残し、EndolVは脱塩基部位を切断してオープン3’-OHを残す。このステップは、ヘアピンアダプターを自己プライミングアダプターに変換する。自己プライミングアダプターを備えたアダプター連結した核酸は、読み取りの長いプラットフォーム、例えばナノポアプラットフォームでの直鎖状配列決定に直接適用される。配列決定ポリメラーゼは、自己プライミングアダプターの3’-OHに結合し、直鎖状シングルパス配列決定で鎖を前方に置き換えることにより鎖を伸長する。
【0070】
実施例3(予測的).自己プライミングリボヌクレオチド含有ヘアピンアダプターによるライブラリーの形成および配列決定。
この実施例では、
図7に図示したヘアピンアダプターが使用される。アダプターは、配列番号7である:
【0071】
配列番号7:
/5phos/ATCTCTCTCTTTTCCTCCTCCTCCGTTGGAGGAACGGAGGAGGA*G*G*ArArArAGAGAGAGATT
rA-リボヌクレオチド;*-ホスホロチオエートヌクレオチド
【0072】
アダプターは、標準のライブラリー調製試薬(例えばKapa Biosystems)を使用して、標的核酸にライゲーションされる。アダプター連結した標的核酸を含有する反応混合物をエキソヌクレアーゼExo VIIおよびExo IIIで処理し、アダプター連結した標的核酸を濃縮する。濃縮されたアダプター連結した標的核酸を、リボヌクレオチドを切断し、オープン3’-OHは残すRNaseH2などのRNaseHで処理する。このステップは、ヘアピンアダプターを自己プライミングアダプターに変換する。自己プライミングアダプターを備えたアダプター連結した核酸は、実施例2のように、読み取りの長いプラットフォームでの直鎖状配列決定に直接適用される。
【0073】
特定の例を参照して本発明を詳細に説明してきたが、様々な変更をこの発明の範囲内で行うことができることは、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載されている例によって限定されるものではなく、以下に示した特許請求の範囲によって限定されるものとする。