(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105684
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】絆創膏及び絆創膏用ポリウレタン不織布
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20240101AFI20240730BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20240730BHJP
A61L 15/58 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
A61F13/02 310A
A61F13/02 310R
A61L15/26 100
A61L15/58 110
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083729
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2020503561の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2018036688
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 博充
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 智範
(72)【発明者】
【氏名】深野 兼司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 寛之
(57)【要約】
【課題】本発明は、通気性と伸縮性に優れた極細ウレタン不織布を支持体とする絆創膏において、支持体表面に適切にエンボス加工を施すことにより、自背面接着性、乾燥性、透気性、層間強度等の各種要求特性のバランスが高度に取られた救急絆創膏等の絆創膏を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、片側表面にエンボス加工が施されている極細ウレタン不織布に、エンボス加工面とは逆の表面に粘着剤層を積層した細長い形状の絆創膏において、前記絆創膏の短辺方向の30%引張荷重(x)と長辺方向の30%引張荷重(y)との比(y/x)が0.8~2.0であり、前記ウレタン不織布の重量当りの保水比率が0.8以下であり、前記絆創膏の対ベークライト板粘着力が5.0~8.0N/24mmであり、前記絆創膏のエンボス加工面に対する粘着力(自背面接着力)が1.2N/24mm以上であることを特徴とする、絆創膏である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側表面にエンボス加工が施されている極細ウレタン不織布に、エンボス加工面とは逆の表面に粘着剤層を積層した細長い形状の絆創膏において、
前記絆創膏の短辺方向の30%引張荷重(x)と長辺方向の30%引張荷重(y)との比(y/x)が0.8~2.0であり、
前記極細ウレタン不織布の重量当りの保水比率が0.8以下であり、
前記絆創膏の対ベークライト板粘着力が5.0~8.0N/24mmであり、
前記絆創膏のエンボス加工面に対する粘着力(自背面接着力)が1.2N/24mm以上であることを特徴とする、絆創膏。
【請求項2】
前記絆創膏の通気度が、10.0sec/100mL以下であることを特徴とする、請求項1に記載の絆創膏。
【請求項3】
前記絆創膏の前記短辺方向の30%引張荷重(x)が2.0~4.0N/24mm、前記長辺方向の30%引張荷重(y)が2.0~4.5N/24mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の絆創膏。
【請求項4】
ポリウレタン不織布において、
表面の少なくとも一方にエンボス加工が施されており、
重量当りの保水比率が0.8以下であり、
通気抵抗値が1.6kPa・s/m以下であり、
機械方向(MD)の30%引張荷重(X)と幅方向(CD)の30%引張荷重(Y)との比(Y/X)が1.0~2.0である、絆創膏用ポリウレタン不織布。
【請求項5】
上記Xは2.5~4.0N/24mmであり、
上記Yは2.5~4.5N/24mmである、請求項4に記載の絆創膏用ポリウレタン不織布。
【請求項6】
目付が50~100g/m2である、請求項4又は5に記載の絆創膏用ポリウレタン不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部や創傷部の保護、ガーゼや脱脂綿、カテーテル、チューブ、シップ剤等の皮膚面への固定等のために使用されている医療用粘着製品である絆創膏及び絆創膏用ポリウレタン不織布に関する。特に切り傷、すり傷、さし傷、かき傷、靴ずれ等の創傷の保護、治癒の促進、痛みの軽減等の目的で用いられる、傷部保護用パッドを有する救急絆創膏に関する。
【背景技術】
【0002】
絆創膏は、一般に、紙、布、プラスチックフィルム等を素材とする支持体の片面に粘着剤層を設けた構成を有している。例えば、軟質塩化ビニルフィルムは、強靭性、応力緩和性、印刷適性等に優れており、低価格であるため、救急絆創膏の支持体として汎用されている。しかし、このようなプラスチックフィルムは、皮膚面に対するフィット性が十分ではなく、柔軟性や通気性も不十分である。
【0003】
これに対して、不織布は、通気性に優れており、貼付時に蒸れ難いので、医療用粘着製品である絆創膏の支持体として好適である。しかも、近年では、ポリウレタンやポリエステルを素材とする伸縮性の不織布が開発されており、これらの伸縮性と通気性とを兼ね備えた不織布を絆創膏の支持体として用いることにより、かぶれやかゆみ、紅斑等の皮膚障害が発生し難く、しかも貼付した皮膚の動きに追従することができる絆創膏を得ることができる(例えば、特許文献1、2参照)。特に、通気性と伸縮性に優れたポリウレタン不織布を支持体とする絆創膏は、優れた諸特性を有している(例えば、特許文献3、4参照)。これまで本出願人らは、通気性と伸縮性を有する不織布基材の片面に粘着剤を塗布した粘着テープからなる略長方形の救急絆創膏において、(1)該不織布が、平均繊維径7~15μmの超極細ポリウレタンフィラメントより形成された、機械方向(MD)の50%引張荷重(x)と幅方向(CD)の50%引張荷重(y)との比(y/x)が1.10~2.00の範囲内にあるポリウレタン不織布であり、かつ、(2)前記略長方形の長辺を基材のCDに、短辺を基材のMDに一致させて打ち抜かれたものであることを特徴とする救急絆創膏を提案してきた。この救急絆創膏においては、フィット性が良好で違和感が少なく、特に、不織布の坪量を低く抑えることができるのでコスト的にも有利であり、指等に巻き付けた場合、巻き締まりがきつくもゆるくもなく、程よい程度であり、しかも従来品のように、温度が上がったり、繰り返しの伸縮を受けたりすると配向が緩和して、短辺方向に縮み、長辺方向には伸びることがないので、ゆるんですっぽ抜けが生じることが少なく、また、貼付時にエッジからの剥れが抑制され、通気性が良く、皮膚呼吸を妨げず、むれ等による不快感、雑菌の増殖等を抑制することができる、という優れた効果を奏する(特許文献3参照)。
【0004】
一方、不織布にエンボス加工を施す技術は、従来から行われており、特許文献3及び4において不織布を支持体とする絆創膏を始め医療用粘着テープにおいて、エンボス加工を施すことは記載されている。しかしエンボス処理の条件が絆創膏の諸特性に及ぼす効果について十分に検討が行われたことは無く、高度に諸特性のバランスをとった絆創膏は未だ達成されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-14059号公報
【特許文献2】特開平9-560号公報
【特許文献3】特開平10-33585号公報
【特許文献4】特開平11-9623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、通気性と伸縮性に優れた極細ウレタン不織布を支持体とする絆創膏において、支持体表面に適切にエンボス加工を施すことにより、自背面接着性、乾燥性、通気性、層間強度等の各種要求特性のバランスが高度に取られた救急絆創膏等の絆創膏を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特許文献3に係る発明の更なる改良を検討し、特に、エンボス加工の条件について検討した。その結果、特定の条件で製膜した極細ウレタン不織布表面に施すエンボス加工の強度に応じて、当該不織布を支持体とした絆創膏において求められる各種特性が、あるものは向上し、あるものは低下する傾向にあることを見出した。そして、この結果の詳細な解析と検討から、エンボス加工の条件を一定の範囲に制御することにより、それらの特性が全て実用上問題のない範囲に収まる優れた絆創膏が得られることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1]片側表面にエンボス加工が施されている極細ウレタン不織布に、エンボス加工面とは逆の表面に粘着剤層を積層した細長い形状の絆創膏において、前記絆創膏の短辺方向の30%引張荷重(x)と長辺方向の30%引張荷重(y)との比(y/x)が0.8~2.0であり、前記極細ウレタン不織布の重量当りの保水比率が0.8以下であり、前記絆創膏の対ベークライト板粘着力が5.0~8.0N/24mmであり、前記絆創膏のエンボス加工面に対する粘着力(自背面接着力)が1.2N/24mm以上であることを特徴とする、絆創膏。
[2]前記絆創膏の通気度が、10.0sec/100mL以下であることを特徴とする、[1]に記載の絆創膏。
[3]前記絆創膏の前記短辺方向の30%引張荷重(x)が2.0~4.0N/24mm、前記長辺方向の30%引張荷重(y)が2.0~4.5N/24mmであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の絆創膏。
[4]ポリウレタン不織布において、表面の少なくとも一方にエンボス加工が施されており、重量当りの保水比率が0.8以下であり、通気抵抗値が1.6kPa・s/m以下であり、機械方向(MD)の30%引張荷重(X)と幅方向(CD)の30%引張荷重(Y)との比(Y/X)が1.0~2.0である、絆創膏用ポリウレタン不織布。
[5]上記Xは2.5~4.0N/24mmであり、上記Yは2.5~4.5N/24mmである、[4]に記載の絆創膏用ポリウレタン不織布。
[6]目付が50~100g/m2である、[4]又は[5]に記載の絆創膏用ポリウレタン不織布。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、特定の条件で製膜した極細ウレタン不織布に、特定条件でエンボス加工を施すことにより、当該不織布を支持体とする絆創膏において、指等に巻き付けた場合、巻き締まりがきつくもゆるくもなく、程よい程度であり、繰り返しの伸縮を受けてもゆるんですっぽ抜けが生じることが少なく、貼付時にエッジからの剥れが抑制されることに加えて、不織布の自背面接着力、保水量(ドライ性)、通気度、層間強度等が実用上好適な範囲内に収められた、優れた絆創膏を得ることができる。すなわち、本発明に係る絆創膏は、極細ウレタン不織布由来の柔軟性及び伸縮性に優れていることに加えて、
1.指等に巻き付けて一方の端部が自背面上に接着する状態で貼付して、手作業等を行った場合でも、容易に端部が剥れたりすることがない。また、支持体の層間強度が強く、自背面から端部を剥離する際に支持体の層間剥離が生じ、結果粘着剤層が皮膚に残るという問題が生じ難い。
2.水仕事をしたり入浴したりした場合でも、その後すぐの水切り性(ドライ感)が良く貼付部皮膚が強くふやけることがない。
3.一方、エンボス加工により、支持体の通気性は低下する傾向があるが、絆創膏とした場合、実用上特に問題の無い範囲に収めることができ、絆創膏としての諸特性のバランスが高度に取れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ウレタン不織布の各エンボス深さ水準における、重量当りの保水比率を示す図である。
【
図2】ウレタン不織布の各エンボス深さ水準における、入浴後の絆創膏の乾き易さの実用評価結果を示す図である。
【
図3】ウレタン不織布の各エンボス深さ水準における、自背面接着力を示す図である。
【
図4】ウレタン不織布の各エンボス深さ水準における、絆創膏を剥がす直前の絆創膏の重なり部分の付着性の実用評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の絆創膏、絆創膏用ポリウレタン不織布について詳細に説明する。
【0012】
<絆創膏>
本発明の絆創膏の一実施形態は、片面にエンボス加工を施した、極細ウレタンフィラメントから形成された不織布を含む支持体層(a1)と、エンボス加工面とは逆の表面に積層された通気性を有する粘着剤層(a2)とを有する細長い形状の絆創膏(粘着テープ)である。また、別の一実施形態は、前記絆創膏の一定の長さ切片において粘着剤層略中央に、更にパッド層(b)を備える所謂、救急絆創膏である。この救急絆創膏は、さらに剥離シート(c)を備えていてもよい。以下に、本発明の絆創膏を構成する支持体層(a1)、粘着剤層(a2)、パッド層(b)、剥離シート(c)について詳細に説明する。
【0013】
1.支持体層(a1)
支持体層は、極細ウレタンフィラメントを特定の条件で製膜した不織布に、特定条件の下でエンボス加工を施したものを含む。本明細書において、「極細ウレタンフィラメントを特定の条件で製膜した不織布」、「極細ウレタンフィラメントから形成された不織布」を単に「極細ウレタン不織布」ともいう。本発明における極細ウレタン不織布の製膜に用いられる極細ウレタンフィラメントの繊維径は、好ましくは7~25μm、より好ましくは10~18μmの範囲内にある。このような極細ウレタン不織布を支持体層として用いると、強度、伸縮性、外観が良好で、貼付時に違和感が少なく、通気性等のその他の要求品質を高度に満足する絆創膏を得ることができる。
【0014】
本発明における極細ウレタン不織布は、溶融紡糸が可能な熱可塑性ポリウレタン弾性体を用いて、メルトブロー法により不織布とする方法により好適に得ることができる。上記熱可塑性ポリウレタン弾性体は、ポリオール(例えば、ポリヘキサメチレンジオール)、ジイソシアネート(例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、及びハードセグメントとなる低分子ジオール(例えば、1,4-ブタンジオール)を原料とした溶融重合により得られる。
【0015】
上記熱可塑性ポリウレタン弾性体の原料のポリオール系ソフトセグメントとしては、数平均分子量が500~6,000の低融点ポリオール、例えば、ジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等が挙げられる。ポリエーテル系ソフトセグメントとしては、通常、ポリテトラメチレングリコールが用いられる。ジイソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。鎖延長剤(ハードセグメント)としては、低分子ジオール、アミノアルコール、トリオール等が用いられる。
【0016】
メルトブロー法では、熱可塑性エラストマーの如き合成樹脂を溶融し、溶融液を多数の細孔を有するノズル状のダイスから吐出し、これを高速の加熱気体で吹き飛ばし、ネットコンベアで捕集して極細ウレタン不織布としている。無端状ネットコンベアは、極細ウレタン不織布の流れ方向(MD)に移動させる。ネットコンベア上に捕集されたウェブは、必要に応じてローラーでプレスし、極細ウレタン不織布として巻き取られる。このような製造方法により得られた極細ウレタン不織布は、一般に、製品の流れ方向(MD)に少なからず配向している。
【0017】
本発明においては、製品の流れ方向(MD)に対して垂直方向(幅方向:CD)に配向を持たせるために、メルトブロー法による極細ウレタン不織布の製造時に、ダイスを幅方向(CD)に往復移動させ、かつ、ネットコンベアの流れ方向(MD)への移動速度をダイスの幅方向での往復移動速度よりも遅い速度に調整する方法を採用することが好ましい。ネットコンベアの流れ方向(MD)への移動速度は、ダイスの幅方向(CD)での往復移動速度の好ましくは1/3以下、より好ましくは1/25~1/3、特に好ましくは1/20~1/5とする。このような製造方法を採用すると、極細フィラメントで不織布を形成しても、必要な強度を有し、厚みムラが少なく、幅方向に配向した極細ウレタン不織布を得ることができる。このように製造することにより極細ウレタン不織布に手切れ性を付与することもできる。
【0018】
極細ウレタン不織布へのエンボス加工処理には、公知の装置及び方法を採用することができる。エンボス加工法としては、例えば、ポイント加熱圧着法を採用することができる。エンボス加工により、1cm2当り10個以上の熱融着点を形成させると、極細ウレタン不織布の内部強度を補うこともできる。本発明では、エンボス加工により、支持体となる極細ウレタン不織布の少なくとも片面に多数の微細な凹凸を形成する。このような微細な凹凸を形成するには、例えば、表面に凹凸模様を形成したエンボスロールとアンビルロールとを対向させ、両ロール間に極細ウレタン不織布を通し、加熱下に押圧処理する方法を採用することが好ましい。
【0019】
極細ウレタン不織布へのエンボス加工の条件は、エンボスローラー温度80~150℃、圧力(線圧)20~200N/mm、加工速度5~20m/分が好適である。
【0020】
極細ウレタン不織布に施すエンボス模様(エンボスパターン)としては、少なくとも極細ウレタン不織布の片面に多数の微細な凹凸が生じる形状のものであれば特に限定されず、例えば、格子状パターン、多数の短線を千鳥状に配置したパターン、多数の短線を縦横に組み合わせたパターン、小さな円形を多数配置したパターン等がある。これらのエンボスパターンの中でも、交差する稜線(凸条)により画定された多数の凹部を有する格子状パターンが好ましい。稜線の線幅は50~600μm、稜線の間隔(凹部の幅)は0.5~1.5mm、凹部の深さは50~600μmが好ましい。支持体となる極細ウレタン不織布の背面に浮き出した凸部(稜線等)の総面積は、極細ウレタン不織布の全面積の通常50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。凹部の総面積は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上程度である。
【0021】
前記極細ウレタン不織布は、目付が通常40~120g/m2であり、50~100g/m2であることが好ましく、60~100g/m2の範囲内にあることがより好ましい。また、極細ウレタン不織布の厚みは、通常100~500μm程度である。さらに、前記極細ウレタン不織布は、重量当りの保水比率が0.8以下であり、0.75以下であることが好ましい。ここで、重量当りの保水比率は、一定のサイズに裁断した極細ウレタン不織布を30分間水中に漬けた後、ピンセットで掴んで取出し、2,3回振って水切りを行う(水滴が垂れていない状態とする)。そして次の式から重量当りの保水比率を求める。
(水切り後の重量―水浸漬前の重量)/水浸漬前の重量
【0022】
前記極細ウレタン不織布の重量当りの保水比率が、0.8を上回ると、入浴や水作業後の絆創膏の乾燥性が劣り、貼付部皮膚がふやけて不快感に繋がる。一方、下限については特に制限は無く、保水量が小さい場合は、乾燥性が良くより好ましい。
【0023】
本発明では、前記支持体(エンボス加工後の極細ウレタン不織布)の通気抵抗値が、1.6kPa・s/m以下であり、1.3kPa・s/m以下であることが好ましい。更には、目付40~120g/m2の時に0.1~1.6kPa・s/m、目付50~100g/m2の時に0.25~1.3kPa・s/m、目付60~100g/m2の時に0.4~1.3kPa・s/mの範囲内にあることが好ましい。また、通気抵抗値を目付で除した値(通気抵抗値/目付)が、目付40g/m2以上60g/m2未満の場合、0.0040~0.0160の範囲内であり、目付60g/m2以上100g/m2以下の場合、0.0075~0.0170の範囲内となることが好ましい。前記支持体の通気抵抗値が上記範囲を下回ると支持体の層間強度が不十分となり層間剥離を生じやすくなる。一方、上記範囲を上回ると絆創膏とした際に、人肌への貼付時に蒸れが生じ易いものとなってしまう。
【0024】
本発明における支持体は、極細ウレタン不織布製膜時に幅方向(CD)に配向を持たせていることにより、MDの30%引張荷重(X)とCDの30%引張荷重(Y)との比(Y/X)が0.5~3.0であり、1.0~2.0の範囲であることが好ましい。また、Xは1.0~5.0N/24mmであり、2.5~4.0N/24mmの範囲であることが好ましく、Yは1.0~5.0N/24mmであり、2.5~4.5N/24mmの範囲であることが好ましい。
【0025】
なお、極細ウレタン不織布を肌色等に着色するための顔料や染料、帯電防止剤、滑剤等を、本発明の効果を損なわない範囲でポリウレタン溶融液中に添加し製膜することができる。
【0026】
2.粘着剤層(a2)
本発明の絆創膏は、前記支持体層(a1)のエンボス加工面とは逆の表面に粘着剤層を積層した構造をしている。この粘着剤層(a2)における粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が用いられるが、皮膚刺激性の少ないものが好ましい。
【0027】
アクリル系粘着剤としては、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等の炭素数4~12程度の長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体または共重合体、あるいは(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分とし、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等の共重合可能な他のモノマーの1種以上を2~50重量%の範囲内で共重合してなる共重合体等が挙げられる。アクリル系粘着剤は、前記モノマーを、トルエン、へキサン、酢酸エチル等の有機溶剤中で、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等を開始剤として、窒素雰囲気下で重合して得られる溶剤型でもよいし、モノマーを水中で乳化剤にて乳化分散後、重合して得られるエマルジョン型のものでもよい。重合後、エポキシ樹脂等の多官能樹脂をシート又はフィルム基材への塗工前に適量加えることにより、重合体を架橋することが好ましい。
【0028】
ゴム系粘着剤としては、例えば、合成ポリイソプレンゴム、スチレン-イソプレンースチレンブロック共重合体等のゴム基剤に、粘着付与樹脂、軟化剤等を配合した組成物等が挙げられる。
【0029】
本発明の絆創膏における粘着剤層(a2)は、通気性を有する粘着剤層(a2)とすることが好ましい。該通気性を有する粘着剤層(a2)は、JIS-P8117に準拠して、ガーレー式デンソメーター(テスター産業株式会社)を使用して測定した通気度が20秒/100mL以下の粘着剤である。粘着剤層(a2)の通気度は、好ましくは10秒/100mL以下、より好ましくは5秒/100mL以下、更に好ましくは1秒/100mL以下である。なお、粘着剤層(a2)自体の通気度を測定することはできないため、不織布や織布等、粘着剤層(a2)以上の通気性がある材料と積層した状態で測定を行った値を、粘着剤層(a2)の通気度とする。粘着剤層(a2)の通気度の測定は、具体的には、以下のとおりである。すなわち、50mm×50mmの大きさに裁断した絆創膏(A)〔支持体層(a1)及び粘着剤層(a2)とからなる。〕を、締付板(土台)に貼付する。締付板を透過する面積は645.16mm2とする。ガーレー式デンソメーターの内側シリンダーを引き出し、ストッパーにセットした後、締付板の間に試験片を締め付ける。内側シリンダーを静かに下降させ、100mLの空気量が通過する秒数を測定して得た絆創膏(a)の通気度を、粘着剤層(a2)の通気度(秒/100mL)とする。したがって、特に好ましい絆創膏(A)の通気度は、0.2~10.0秒/100mLである。
【0030】
本発明の絆創膏における粘着剤層として、通気性を有する粘着剤層(a2)を用いることにより、該粘着剤層及び絆創膏の通気性やクッション性が良好となり、また、皮膚に対する追従性が向上して、皮膚への密着性が良好となる。
【0031】
通気性を有する粘着剤層(a2)の発泡倍率は、通常1.1~10倍、好ましくは1.2~8倍、より好ましくは1.5~6倍、更に好ましくは2~5倍の範囲である。また、通気性を有する粘着剤層(a2)の密度は、通常0.1~0.9g/cm3、好ましくは0.12~0.8g/cm3、より好ましくは0.15~0.6g/cm3、更に好ましくは0.2~0.5g/cm3の範囲である。
【0032】
通気性を有する粘着剤層(a2)は、通常支持体層(a1)の一方の面の全面に設けられるが、所望により、支持体層(a1)の全面に設けず、粘着力に悪影響を与えない範囲内で一部分に設けることもできる。
【0033】
通気性を有する粘着剤層(a2)の厚みは、特に限定されないが、通常10~200μm、好ましくは15~150μm、より好ましくは20~100μmの範囲である。
【0034】
通気性を有する粘着剤層(a2)の粘着力は、対ベークライト板粘着力(剥離力)で好ましくは1.0~10N/24mm、より好ましくは5.0~8.0N/24mmの範囲内となるように調整する。
【0035】
本発明における通気性を有する粘着剤層(a2)は、通常の方法で得ることができる。具体的には、粘着剤と、空気、窒素ガス、炭酸ガス等の物理的発泡剤や分解型の化学発泡剤、水溶液や有機溶剤とを混合した後に、剥離紙に塗工し、あるいは、粘着剤を、あらかじめ水溶液や有機溶剤を塗布または散布した剥離紙に塗工し、次いで、加熱を行って、発泡または気化作用を利用する発泡方法のほか、塗工後の未乾燥の粘着剤表面に霧状の水分を塗布して、微細な孔を形成する方法、粘着剤を糸状・繊維状に剥離紙上に吐出する方法等が挙げられ、これらの方法により、多数の微細な孔を有する粘着剤層が形成される。これらの方法のうち、微細かつ均一な孔を形成することができる観点から、発泡による方法が好ましい。
【0036】
3.パッド層(b)
本発明の絆創膏は、パッド層(b)を備えていてもよい。本発明においてパッド層(b)とは、絆創膏を患部に貼付した際に、患部の止血・保護等の機能を有するために設けられる層である。通常、ガーゼ、不織布、織布、編布、圧縮繊維、ハイドロコロイドその他の吸収性を有する材料を使用するとよいが、使用部位によっては上記材料の上面にポリエチレンその他のプラスチックによる薄膜加工を行って、患部から出る体液等により患部に付着するのを防止するようにすることもある。また、パッド層(b)には、必要により、消毒薬、治療薬その他の薬剤を保持させることができる。パッド層(b)のサイズとしては、絆創膏全体の面積を100%とした場合に、通常5%~70%の範囲であり、10%~50%であることが好ましく、15%~40%であることがより好ましい。
【0037】
4.剥離シート(c)
本発明の絆創膏は、通常さらに、剥離シート(c)を備える。剥離シート(c)は、通気性を有する粘着剤層(a2)の前記極細ウレタン不織布を含む支持体層(a1)とは反対側の面に積層される。剥離シート(c)は、絆創膏の分野で慣用されているものを用いることができ、例えば、剥離剤を塗布して剥離処理した上質紙、グラシン紙等の紙基材やポリエステルフィルム等を用いることができる。剥離シート(c)は、絆創膏の全体を1枚で覆う寸法及び形状のものでもよく、絆創膏の面積より大きいものでもよい。また、剥離シート(c)は、2枚以上に区分されたものでもよく、該2枚以上の区分された剥離シート(c)の少なくとも1つに折り返し部を設けてもよい。さらに、前記パッド層(b)の一部以上を覆う1枚の剥離シート(c)、及び該パッド層周辺の絆創膏及び通気性を有する粘着剤層(a2)上に2枚以上の剥離シート(c)を配置して、合計3枚以上に区分された剥離シート(c)とすることもできる。
【0038】
5.絆創膏(A)の特性
本発明に係る絆創膏は、片面にエンボス加工が施されている極細ウレタン不織布からなる支持体層(a1)に、エンボス加工面とは逆の面に通気性を有する粘着剤層(a2)を積層した細長い形状の積層体を含む。
【0039】
細長い形状の前記絆創膏の短辺を原反の機械方向(MD)に取り、その30%引張荷重(x)と、細長い形状の前記絆創膏の長辺を原反の幅方向(CD)に取り、その30%引張荷重(y)との比(y/x)が0.5~3.0の範囲内であり、0.8~2.0の範囲内であることが好ましい。xは1.0~5.0N/24mmであり、2.0~4.0N/24mmであることが好ましい。yは1.0~5.0N/24mmであり、2.0~4.5N/24mmであることが好ましい。各数値をこの範囲とすることにより、指等に巻き付けた場合、巻き締まりがきつくもゆるくもなく、程よい程度であり、繰り返しの伸縮を受けても緩んですっぽ抜けが生じることが少なく、貼付時にエッジからの剥れが抑制されるという効果が得られる。
【0040】
絆創膏(A)の対ベークライト板粘着力は、5.0~8.0N/24mmであり、6.5~8.0N/24mmであることが好ましい。また、前記絆創膏(A)の支持体エンボス加工面に対する粘着力(自背面接着力)は、1.2N/24mm以上であり、1.3N/24mm以上であることが好ましい。ここで、絆創膏の対ベークライト板粘着力測定は、JIS-Z0237に準拠して行う。また、絆創膏の支持体エンボス加工面に対する粘着力(自背面接着力)は、幅24mm、長さ100mmの絆創膏切断片をベークライト板に貼り合わせ、その背面に幅24mm、長さ240mmの切断片の粘着剤面をそれぞれの両端をそろえて重なるようにして貼り合わせ、50gの荷重で一回の加圧をした後、引張試験機にて180度方向への切断片背面からの剥離力を引張速度300mm/分で測定する。
【0041】
絆創膏(A)の対ベークライト板粘着力が5.0を下回ると貼付時の皮膚に対する粘着力が弱くなり、衣服との擦れにより剥れたり、関節部等の屈伸部に貼付した場合は貼付中に皮膚からの浮きが生じたりする。一方、8.0を上回ると、貼付時の剥離は生じ難いものの、剥す際に貼付部の角質を引き剥がして痛みを感じる傾向にある。また、自背面接着力は、1.2を下回ると、指等に巻き付けて一方の端部が自背面に貼り付く状態で貼付した場合、貼付中に衣類等に擦れて剥れが生じる傾向がある。一方、上限は特に限定されないが、2.0N/24mmが好ましい。2.0を上回ると使用後等に剥離する際に剥し難くなったり、不織布表層を剥してしまったりする傾向がある。
【0042】
絆創膏(A)は、通気度が10.0秒/100mL以下であることが好ましい。通気度が10.0秒/100mLを上回ると夏場等に貼付時に蒸れ易い傾向がある。
【0043】
各特性について上記数値範囲を全て満たす本発明に係る絆創膏(A)は、主に支持体層(a1)が有するエンボス模様(エンボスパターン)の種類、サイズ、形状等、エンボス加工の際の熱や圧着力(圧力)等を制御し、更に粘着層(a2)の粘着力を制御することにより、得ることができる。
【0044】
各特性について上記の数値範囲を全て満たす本発明の絆創膏(A)は、支持体層(a1)における極細ウレタン不織布由来の柔軟性、伸縮性に優れていることに加えて、以下の特徴を備える。1.指等に巻き付けて一方の端部が自背面上に接着する状態で貼付して、手作業を行った場合でも、容易に端部が剥れたりすることがない。また、支持体の層間強度が強く、自背面から端部を剥離する際に支持体の層間剥離が生じ、結果粘着剤層が皮膚に残るという問題が生じ難い。
2.水仕事をしたり入浴したりした場合にでも、その後すぐに水切り性(ドライ感)が良く貼付部が強くふやけることがない。
3.一方、エンボス加工により、支持体の通気性は低下する傾向があるが、絆創膏とした場合、実用上特に問題の無い範囲に収めることができ、絆創膏としての諸特性のバランスが高度に取れている。
【0045】
6.絆創膏(A)の製造方法
本発明の絆創膏(A)の製造方法は、特に限定されないが、極細ウレタンファイバーから形成した不織布からなる支持体層(a1)の上に、片面にエンボス加工を施し、次にエンボス加工面とは逆の面に粘着剤成分の有機溶剤溶液またはエマルションを直接塗工し、該粘着剤を発泡させることによって、発泡した粘着剤層(a2)を形成してもよい。また、シリコーン系剥離剤等を塗布した工程紙上に、粘着剤の有機溶剤溶液またはエマルションを塗工し、該粘着剤を発泡させることによって、発泡した粘着剤層(a2)を形成した後に、極細ウレタンファイバーから形成した不織布からなる支持体層(a1)と積層する方法を採用することもできる。粘着剤層(a2)が、支持体層(a1)の全面に設けられない場合、その他所望により、粘着剤となる合成樹脂の溶液またはエマルションの塗工を、点状、縞状その他のパターンによって行えばよい。絆創膏(A)の最終の製品形態としては、支持体層(a1)、粘着剤層(a2)、剥離シート(c)をこの順に積層した積層体を、塗工時の幅方向に一定の幅(5mm~100mm程度の範囲で任意)で裁断し、適当な長さに巻き取ったロール状か、適当な長さ(数cm~1m程度の範囲で任意)に裁断した切片となる。
【0046】
本発明の絆創膏が救急絆創膏(B)である場合の製造方法は、パッド層(b)を適切な大きさに裁断し、前記の絆創膏(A)で数センチメートルから10cm程度の範囲で任意の長さの切片において粘着剤面上の略中央に配置し、通常は、更に剥離紙(c)を配置して、救急絆創膏の形状(通常、四隅を円周状とした長方形)に、長辺方向を塗工時の幅方向に合せて裁断して、絆創膏を得る。通常は、後の工程で、紙、プラスチックフィルム、またはそれらの複合材で形成された包装紙中に救急絆創膏を封入して製品となる。
【0047】
<絆創膏用ポリウレタン不織布>
本発明は、上述の本発明の絆創膏において支持体層用に好適に用いられるポリウレタン不織布も含む。なお、本発明の絆創膏用ポリウレタン不織布は、絆創膏の項において「極細ウレタン不織布」として説明しているものであり、詳細な内容については絆創膏の項の「極細ウレタン不織布」の説明を適用できる。
【0048】
本発明の絆創膏用ポリウレタン不織布として好ましい形態は、表面の少なくとも一方にエンボス加工が施されており、重量当りの保水比率が0.8以下であり、通気抵抗値が1.6kPa・s/m以下であり、機械方向(MD)の30%引張荷重(X)と幅方向(CD)の30%引張荷重(Y)との比(Y/X)が1.0~2.0であるポリウレタン不織布である。上記Xは2.5~4.0N/24mmであり、上記Yは2.5~4.5N/24mmであることが好ましい。また、目付は50~100g/m2であることが好ましい。このようなポリウレタン不織布(極細ウレタン不織布)を絆創膏の支持体層に用いると、強度、伸縮性、外観が良好で、貼付時に違和感が少なく、通気性等のその他の要求品質を高度に満足する絆創膏を得ることができる。
【実施例0049】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
【0050】
<絆創膏の作製>
数平均分子量が2,000のポリヘキサメチレンジオールと4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートと1,4-ブタンジオールとを2軸重合機で溶融重合して、ショアA硬度90のポリエーテルポリウレタン弾性体を得た。このポリウレタン弾性体を溶融ブロー紡糸し、得られた溶融繊維群をネットコンベヤ上に落として、目付65g/m2(原反1)及び90g/m2(原反2)のメルトブロー不織布(極細ウレタンファイバー不織布)を得た。このメルトブロー不織布を形成するポリウレタンファイバーの平均繊維径は、10.6μmであった。得られた極細ウレタンファイバー不織布に、ポイント加熱圧着法により加熱エンボス加工を施して、絆創膏の支持体層(a1)とした。
【0051】
前記エンボスの条件は、エンボス模様(エンボスパターン)としては、交差する稜線(凸条)により画定された多数の凹部を有する斜格子状パターンで、稜線の線幅は70μm、稜線の間隔(凹部の幅)は0.99mm、凹部の深さは470μmである。支持体となる不織布の背面に浮き出した凸部(稜線等)の総面積は不織布全面積の7%、凹部の総面積は25%である。また、加熱圧着スポットは、MD(機械方向)及びCD(幅方向)とも1.98mmピッチとした。
【0052】
加熱エンボス加工の際に、原反1、2とも、圧力は45kN(線圧30N/mm)で一定とし、その温度を4段階に変動させて、温度の低いものから、1-1、1-2、1-3、1-4(以上、原反1)、2-1、2-2、2-3、2-4(以上、原反2)とした。なお、加工温度とエンボスの深さは相関し、加工温度が高いほどエンボスの深さは深くなった。なお、原反1の場合は、通気抵抗値0.5~1.1、原反2の場合は、同0.75~1.3のとき、エンボスの深さを良好と判断した。
【0053】
一方、アクリル系粘着剤溶液〔アクリル酸2-エチルヘキシル/酢酸ビニル/アクリル酸(87/10/3)100質量部に、エポキシ系架橋剤(テトラッドX;三菱ガス化学株式会社製)0.03質量部を添加〕を、乾燥後の厚みが40μmとなるように、シリコーン処理した工程紙に塗工し、通気性処理として、未乾燥の塗布面に蒸留水を噴霧した後、130℃で加熱して微細な孔を形成させ、通気性を有するアクリル系樹脂からなる粘着剤層(a2)を形成した。その後、上記極細ウレタンファイバー不織布に貼り合わせて絆創膏(A)を製造した。
【0054】
ガーゼからなるパッド層(b)を、あらかじめ幅13mm、長さ22mmにカッティングし、前記絆創膏(A)から工程紙を剥離して露出させた通気性を有するアクリル系粘着剤層(a2)と対向するようにして、原反表面上に、MDに12mm、CDに50mmの間隔を開けながら該粘着剤層(a2)の上に載置した。続いて、シリコーン系樹脂で剥離処理したグラシン紙からなる剥離紙(c)で、絆創膏(A)及びパッド層(b)を覆い、長辺方向を原反の幅方向に合せて幅25mm、長さ72mmの角にRをとった略矩形に、パッド層(b)が略中心に位置するようにしながら打ち抜いて、救急絆創膏(B)を得た。絆創膏(A)の面積に対するパッド層(b)の面積の比は、約16%であった。この救急絆創膏の各種特性を測定した結果と、実用評価の結果を表1及び
図1~4に示す。なお、30%引張荷重の数値を、不織布と絆創膏において比較すると、MDでは絆創膏の方が、CDでは不織布の方がやや高い傾向となっている。これは粘着加工時にMDに張力が掛かり、極細ウレタンフィラメントの配向に変化が生じた結果である。
【0055】
<特性評価>
不織布及び絆創膏の各特性を、以下の方法により評価した。
【0056】
(1)試験雰囲気
温度23±2℃、相対湿度50±5%で測定した。試料は、予め同雰囲気中で24時間コンディショニングし、試験片は、被着体に貼り合せた30分後に試験に供した。
【0057】
(2)目付量
JIS-L1913「一般不織布試験方法」に準拠し、250mm×250mmの試験片の重量を測定して1m2あたりに換算した。
【0058】
(3)通気抵抗値
カトーテック(株)の通気性試験機(KES-F8-AP1)を使用して、試料2枚重ねで装置に固定し、排気3秒・吸気3秒の計6秒間の通気抵抗を測定した。
【0059】
(4)保水量
一定のサイズ(100mm×100mm)に裁断し重量を測定した不織布を30分間水中に漬けた後、ピンセットで掴んで取出し、2、3回振って水切りを行った(水滴が垂れていない状態とする)。その後速やかに秤量し、次の式により重量当りの保水比率を求めた。
(水切り後の重量―水浸漬前の重量)/水浸漬前の重量
【0060】
(5)30%引張荷重
JIS-K7115に準拠して、MD又はCDを長辺として幅24mm、長さ150mm不織布原反切断片の両端をまっすぐに、引張試験機にて間隔100mmでつかみ、引張速度300mm/分で引っ張り、30mm引っ張ったときの応力を読み取った。
【0061】
(6)絆創膏の厚さ
試料をダイヤルゲージ(1/100、プローブ径:5mmφ)にて5点測定し、その平均値を求めた。
【0062】
(7)絆創膏の坪量
縦横各100mmの正方形に裁断した試料を秤量して坪量を求めた。
【0063】
(8)対ベークライト板粘着力
絆創膏の粘着力は、幅24mm×長さ250mmに裁断した絆創膏(A)を試験片とした。予め表面を清浄に処理したベークライト製の試験パネルに試験片の粘着剤面を押しつけて貼着させた後、2kgのローラーで圧着速さ300mm/分、圧着回数1往復で貼着させて試験片を調製した。貼着してから20分間経過した後、JIS-Z0237に準拠し、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で、対ベークライト板粘着力を測定した。
【0064】
(9)粘着剤の支持体エンボス加工面に対する粘着力(自背面接着力)
幅24mm(原反MD)、長さ100mm(原反CD)の絆創膏切断片をベークライト板に貼り合わせ、その背面に幅24mm、長さ240mmの切断片の粘着剤面をそれぞれの両端をそろえて重なるようにして貼り合わせ、50gの荷重で一回の加圧をした後、引張試験機にて180度方向への切断片背面からの剥離力を引張速度300mm/分で測定した。
【0065】
(10)絆創膏(A)の通気度
絆創膏(A)の通気度は、JIS-P8117に準拠して、ガーレー式デンソメーター(テスター産業株式会社)を使用して測定した。具体的には、50mm×50mmの大きさに裁断した絆創膏(A)を、剥離シートがある場合は該剥離シートを剥がして、締付板(土台)に貼付した。締付板を透過する面積は645.16mm2とした。ガーレー式デンソメーターの内側シリンダーを引き出し、ストッパーにセットした後、締付板の間に試験片を締め付け、内側シリンダーを静かに下降させ、100mLの空気量が通過する秒数を測定して、通気度(秒/100mL)とした。
【0066】
<実用評価>
健常な男女各5名ずつ計10名のボランティアが、救急絆創膏試料(B)を人差し指第1関節部にパッド層が手の甲側として巻き付けて一方の端部粘着剤面が救急絆創膏の表面上に重なるように貼付し、貼付日夜間の入浴を含めて24時間が過ぎた後、剥離し、その間に以下の各種状態について4乃至6段階の自己評価を行って、その平均値を求めた。
【0067】
(1)違和感(貼付直後、貼付中)
5:違和感がない
4:多少違和感がある
3:多少違和感があるが問題なし
2:違和感があり問題あり
1:違和感が大いにある
0:過度の違和感で剥した
【0068】
(2)貼付中のかゆみ
5:かゆみ無し
4:多少かゆい程度
3:かゆいが問題なし
2:かゆくて問題あり
1:かゆくて大いに問題あり
0:過度のかゆみで剥した
【0069】
(3)入浴後の絆創膏の乾き易さ
5:気にならない
4:やや遅いが、気にならない
3:どちらとも言えない
2:やや遅くて、気になる
1:遅くて気になる
【0070】
(4)剥す直前の皮膚への付着性、剥す直前の絆創膏の重なり部分の付着性
5:全面よく付いている
4:エッジ部がわずかに剥れた
3:1/3程度剥れた
2:半分程度剥れた
1:パッドがめくれるほど剥れた
0:剥れて脱落していた
【0071】
(5)剥した際の絆創膏の重なり部分の剥離状態(層間強度の評価)
5:層間剥離無く、きれいに絆創膏表面で剥れた
4:一部絆創膏表面層の層間剥離が生じた
3:半分以上の面積で絆創膏表面層の層間剥離が生じた
2:全面で絆創膏表面層の層間剥離が生じた
【0072】
(6)剥した直後の皮膚のふやけ
5:ふやけ無し
4:多少ふやけた
3:ふやけたが問題なし
2:ふやけてひりひり痛む
1:過度のふやけで皮膚が剥れた
【0073】
【0074】
表1及び
図1~4(図の横軸数字は原反の末番号、縦軸数字は各評価項目の数値を表し、グラフは各原反での評価結果平均値を直線で結んだものである)に示された結果から、次のことが導かれる。すなわち、目付65でも90でも、不織布表面のエンボスが深くなるにつれて、実用評価では、(i)入浴後の絆創膏の乾き易さは向上する傾向があり、この傾向は重量あたりの保水量と相関関係が認められた。一方、(ii)剥す直前の絆創膏の重なり部分の付着性は低下する傾向があり、この傾向は自背面接着力と相関関係が認められた。
【0075】
各実験例の結果を確認すると、原反1-2、1-3、2-2、2-3を支持体として用いた実施例1~4では、入浴後の絆創膏の乾き易さが実用試験の10名の平均値が4.0以上で優れ、かつ剥す直前の絆創膏の重なり部分の付着性が、同実用試験結果が1.7以上と優れ、それ以外の、貼付直後の違和感、貼付中の違和感、貼付中のかゆみ、剥す直前の皮膚への付着性、剥した際の絆創膏の重なり部分の剥離状態、剥した直後の皮膚のふやけも問題のない範囲で、実用上高度にバランスの取れた絆創膏であった。
【0076】
一方、原反1-1、1-4、2-1、2-4を支持体として用いた比較例1~4は全て、貼付直後の違和感、貼付中の違和感、貼付中のかゆみ、剥す直前の皮膚への付着性、剥した際の絆創膏の重なり部分の剥離状態、剥した直後の皮膚のふやけも問題のない範囲ではあるものの、比較例1及び3は、エンボスの程度(深さ)が相対的に浅く、剥す直前の絆創膏の重なり部分の付着性は優れるものの、入浴後の絆創膏の乾き易さがやや劣った。また、比較例2及び4は、エンボスの程度(深さ)が相対的に深く、入浴後の絆創膏の乾き易さは優れるものの、剥す直前の絆創膏の重なり部分の付着性がやや劣り、いずれも発明に係る絆創膏に比較すると実用上の特性のバランスに劣るものであった。
本発明によると、特定の条件で製膜した極細ウレタン不織布に、特定条件でエンボス加工を施すことにより、当該不織布を支持体とする絆創膏において、指等に巻き付けた場合、巻き締まりがきつくもゆるくもなく、程よい程度であり、繰り返しの伸縮を受けてもゆるんですっぽ抜けが生じることが少なく、貼付時にエッジからの剥れが抑制されることに加えて、不織布の自背面接着力、保水量(ドライ性)、通気度、層間強度等が実用上好適な範囲内に収められた、優れた絆創膏を得ることができる。