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特開2024-105711DITRAの非ヒト動物モデルおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105711
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】DITRAの非ヒト動物モデルおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/0278 20240101AFI20240730BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/25 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/90 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240730BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A01K67/0278 ZNA
C12N15/12
C12N15/25
C12N15/90 104Z
C12N5/0735
C12N15/63 Z
A61P1/04
A61P17/00
A61P29/00
A61K31/7088
A61K48/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A01K67/0278
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024085012
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2020571589の分割
【原出願日】2019-07-16
(31)【優先権主張番号】62/698,459
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/867,477
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー オー. ムジカ
(72)【発明者】
【氏名】カ-マン ビーナス ライ
(72)【発明者】
【氏名】ソコル ハジナスト
(72)【発明者】
【氏名】ホヴァニシアン ザルヒ
(57)【要約】
【課題】DITRAの非ヒト動物モデルおよびその使用の提供。
【解決手段】本開示は、遺伝子改変齧歯類動物およびヒト疾患の齧歯類モデルに関する。より具体的には、本開示は、そのゲノムがヒト化Il1rl2遺伝子(IL-36Rタンパク質のIL1rl2サブユニットをコードする)、ならびにヒトIL-36、およびリガンド遺伝子に関する。本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、それぞれ乾癬およびIBDの前臨床モデルとして皮膚および腸の炎症における増強を呈し、ヒトDITRA疾患の齧歯類モデルとして役立つ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月16日出願の米国仮特許出願第62/698,459号、および2019年6月27日出願の米国仮特許出願第62/867,477号の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願の内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、遺伝子改変齧歯類動物およびヒト疾患の齧歯類モデルに関する。より具体的には、本開示は、そのゲノムがヒト化Il1rl2遺伝子(IL-36RのIL1rl2サブユニットをコードする)ならびにヒトIL-36α、β、およびγリガンド遺伝子を含む遺伝子改変齧歯類に関する。本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、それぞれ、乾癬および炎症性腸疾患(IBD)の前臨床モデルにおいて皮膚および腸の炎症の増強を示し、ヒトIL-36受容体阻害因子欠損症(DITRA)の齧歯類モデルとして役立ち得る。
【0003】
参照による配列表の援用
2019年7月9日に作成され、EFS-Webを介し米国特許商標庁に提出された、35950_10404US01_SequenceListing.txtという名称の65KBのASCIIテキストファイルの配列表が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン(IL)-36サブファミリーは、三つのアゴニスト(IL-36α、βおよびγ、以前はそれぞれIL1F6、IL1F8およびIL1F9と称されていた)、ならびに、ヘテロ二量体受容体(IL-36R)を介したシグナルにより、核内因子κB(NF-κB)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼの(MAPK)の活性化をもたらす、一つのアンタゴニスト(IL36Ra)からなる。古典的IL-1ファミリーメンバーと同様に、IL-36サイトカインは免疫応答の開始および調節に関与している。IL-36ファミリーのメンバーは、扁平上皮組織、特に乾癬性皮膚病変において主に発現することがまず実証された。IL-36Rと上皮介在性疾患との間の関連性は、IL-36Raの機能喪失突然変異に基づいてヒトで確認され、汎発性膿疱性乾癬(「GPP」と省略される)の診断につながったが、これは現在、ヒトIL-36受容体阻害因子欠損症(eficiency of the nterleukin- ntagonist)(「DITRA」と省略される)と呼ばれるGPPの種であると理
解されている。GPP、掌蹠膿疱症(PPPP)、炎症性腸疾患(IBD)、リウマチ性および乾癬性関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、ならびに魚鱗癬において、IL-36発現の増加が報告された。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、ヒトIL1RL2外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを有するIl1rl2タンパク質をコードするヒト化Il1rl2遺伝子、ならびにヒトIL1F6、IL1F8、およびIL1F9をそれぞれコードするヒトIl1f6、Il1f8およびIl1f9遺伝子を含むように遺伝子改変された齧歯類の一部の実施形態が開示される。Il1rl2はヘテロ二量体IL-36Rタンパク質のサブユニットであり、三つのアゴニスト:IL1F6、IL1F8およびIL1F9(それぞれIL-36α、βおよびγとしても知られる)に結合する。本明細書に開示される齧歯類は、ヒト化Il1rl2遺伝子を含み、三つのヒトアゴニストリガンド遺伝子を発現する一方、内因性IL-36Raアンタゴニストを保持し、内因性IL-36Raは、ヒトIL-36Rシグナル伝達の阻害における効力は約20分の1である。そのような四重ヒト化齧歯類(例えば、ヒト化Il1rl2およびヒトIL1F6、IL1F8およびIL1F9)は、IL-36Raの突然変異が強化されたIL-36Rシグナル伝達をもたらすDITRA患者の症状を示すことが本明細書に示されている。したがって、遺伝子改変齧歯類、かかる齧歯類を作製するための組成物および方法、ならびにかかる齧歯類を、治療薬をスクリーニングおよび開発するためのモデルとして使用する方法が、本明細書に提供される。
【0006】
一部の実施形態では、本明細書に、そのゲノムが、(1)内因性齧歯類Il1rl2座位におけるヒト化Il1rl2遺伝子であって、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、ヒト化Il1rl2遺伝子;(2)内因性齧歯類Il1f6座位におけるヒトIL1F6遺伝子;(3)内因性齧歯類Il1f8座位におけるヒトIL1F8遺伝子;および(4)内因性齧歯類Il1f9座位におけるヒトIL1F9遺伝子を含む、遺伝子改変齧歯類が開示される。
【0007】
一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一な膜貫通型細胞質配列を含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なシグナルペプチドを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。
【0008】
一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードし、ヒトIL1RL2タンパク質は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードし、外部ドメインは、配列番号7に記載されるアミノ酸22~337を含む。
【0010】
一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。
【0011】
一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2座位で内因性齧歯類Il1rl2プロモーターに動作可能に結合される。
【0012】
一部の実施形態では、齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2座位の内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列で置換することによって生じる。
【0013】
一部の実施形態では、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインを実質的にコードするヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含む。
【0014】
一部の実施形態では、ヒト化置換後に残存する内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流のエクソンを含む。一部の実施形態では、ヒト化置換後に残存する内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含む。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類中のヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8、および内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の残りのエクソンを含む。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類中のヒトIL1F6遺伝子は、内因性齧歯類Il1f6座位の内因性齧歯類Il1f6遺伝子を置換する。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類中のヒトIL1F8遺伝子は、内因性齧歯類Il1f8座位の内因性齧歯類Il1f8遺伝子を置換する。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類中のヒトIL1F9遺伝子は、内因性齧歯類Il1f9座位の内因性齧歯類Il1f9遺伝子を置換する。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、四つのヒト化遺伝子および/またはヒト遺伝子のうちの一つまたは複数に対してホモ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、四つのヒト化遺伝子および/またはヒト遺伝子のそれぞれに対してホモ接合性である。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、野生型齧歯類と比較して短縮した結腸を呈する。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、野生型齧歯類と比較して、実験的に誘発された炎症モデルにおいて、炎症の増強を呈する。一部の実施形態では、実験的に誘発された炎症モデルは、イミキモド(IMQ)によって誘発された皮膚炎症モデルである。一部の実施形態では、実験的に誘発された炎症モデルは、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)またはオキサゾロンによって誘発された腸炎症モデルである。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類はマウスまたはラットである。
【0022】
さらに、本明細書に記載される齧歯類からの単離された細胞または組織が本明細書に開示される。
【0023】
一部の実施形態のさらなる態様では、本明細書には遺伝子改変齧歯類を作製する方法が開示され、方法は、齧歯類のゲノムを、(1)内因性齧歯類Il1rl2座位におけるヒト化Il1rl2遺伝子であって、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、ヒト化Il1rl2遺伝子;(2)内因性齧歯類Il1f6座位におけるヒトIL1F6遺伝子;(3)内因性齧歯類Il1f8座位におけるヒトIL1F8遺伝子;および(4)内因性齧歯類Il1f9座位におけるヒトIL1F9遺伝子を含むように改変すること、ならびに改変されたゲノムを含む齧歯類を作製することを含む。
【0024】
一部の実施形態では、齧歯類ゲノムは、(i)内因性齧歯類Il1rl2座位にヒト化Il1rl2遺伝子を含む第一の齧歯類を作製すること、(ii)内因性齧歯類Il1f6座位にヒトIL1F6遺伝子を、内因性齧歯類Il1f8座位にヒトIL1F8遺伝子を、および内因性齧歯類Il1f9座位にヒトIL1F9遺伝子を含む第二の齧歯類を作製すること、ならびに(iii)第一の齧歯類を第二の齧歯類とクロスさせて、改変された齧歯類ゲノムを得ることを含むプロセスによって改変される。
【0025】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2座位にヒト化Il1rl2遺伝子を含む齧歯類は、齧歯類胚性幹(ES)細胞を提供すること、齧歯類ES細胞の齧歯類Il1rl2座位にヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を挿入して、齧歯類Il1rl2座位にヒト化Il1rl2遺伝子を形成すること、それによって、ヒト化Il1rl2遺伝子を含む齧歯類ES細胞を得ること、およびヒト化Il1rl2遺伝子を含む齧歯類ES細胞を使用して齧歯類を作製することによって作製される。
【0026】
一部の実施形態では、挿入されるヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Il1rl2座位において齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を置換する。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインを実質的にコードするヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含む。一部の実施形態では、置換後に残存する内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流のエクソンを含む。一部の実施形態では、ヒト化置換後に残存する内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含む。一部の実施形態では、ヒト化置換の結果として形成されたヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8、および内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の残りのエクソンを含む。
【0027】
一部の実施形態では、ヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子、およびヒトIL1F9遺伝子を含む齧歯類は、齧歯類胚性幹(ES)細胞を提供すること、ヒトIL1F6遺伝子を齧歯類ES細胞の齧歯類Il1f6座位に、ヒトIL1F8遺伝子を齧歯類ES細胞の齧歯類Il1f8座位に、およびヒトIL1F9遺伝子を齧歯類ES細胞の齧歯類Il1f9座位に挿入し、それによって、ヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子、およびヒトIL1F9遺伝子を含む齧歯類ES細胞を得ること、ならびにヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子、およびヒトIL1F9遺伝子を含む齧歯類ES細胞を使用して齧歯類を作製することによって作製される。
【0028】
一部の実施形態では、ヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子、およびヒトIL1F9遺伝子が、連続した核酸分子中に提供される。
【0029】
一部の実施形態では、ヒトIL1F6遺伝子は、内因性齧歯類Il1f6座位の内因性齧歯類Il1f6遺伝子を置換する。
【0030】
一部の実施形態では、ヒトIL1F8遺伝子は、内因性齧歯類Il1f8座位の内因性齧歯類Il1f8遺伝子を置換する。
【0031】
一部の実施形態では、ヒトIL1F9遺伝子は、内因性齧歯類Il1f9座位の内因性齧歯類Il1f9遺伝子を置換する。
【0032】
一部の実施形態の別の態様では、本明細書に、(1)内因性齧歯類Il1rl2座位におけるヒト化Il1rl2遺伝子であって、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、ヒト化Il1rl2遺伝子;(2)内因性齧歯類Il1f6座位におけるヒトIL1F6遺伝子;(3)内因性齧歯類Il1f8座位におけるヒトIL1F8遺伝子;および(4)内因性齧歯類Il1f9座位におけるヒトIL1F9遺伝子を含む、齧歯類胚性幹(ES)細胞が開示される。一部の実施形態では、かかるES細胞は、本明細書に開示される方法によって作製され得る。一部の実施形態では、齧歯類を作製するためのかかるES細胞の使用も開示される。
【0033】
一部の実施形態のさらに別の態様では、齧歯類ゲノム(例えば、齧歯類ES細胞)を改変して改変齧歯類を作製するのに有用な核酸構築物を標的化することが本明細書に開示される。
【0034】
一部の実施形態では、本明細書において、相同組み換えならびにヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を齧歯類Il1rl2座位に組み込んでヒト化Il1rl2遺伝子を形成することができる5’および3’齧歯類ヌクレオチド配列に隣接した、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を含む標的核酸構築物が開示され、ヒト化Il1rl2遺伝子が、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書において、ヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子、およびヒトIL1F9遺伝子を含む連続核酸配列を含む、標的化核酸構築物が開示され、連続核酸配列は、齧歯類Il1f6遺伝子、齧歯類Il1f8遺伝子、および齧歯類Il1f9を包含している齧歯類座位への連続核酸配列の相同組み換えおよび組み込みを媒介することができる5’および3’齧歯類ヌクレオチド配列に隣接している。
【0036】
一部の実施形態のさらなる態様では、IL-36シグナル伝達の脱制御に関連するヒト疾患の齧歯類モデルとして本明細書に開示される齧歯類の使用が本明細書に開示される。本明細書に開示される実施形態の非限定的な例として、齧歯類は、脱制御IL-36シグナル伝達(例えば、限定するものではないが、DITRAなど)に関連するヒト疾患の病態および分子的基盤を研究するために、またはそのような疾患の治療に有用な治療化合物をスクリーニング、試験および開発するために使用することができる。
【0037】
さらに、一部の実施形態のさらなる態様では、脱制御IL-36シグナル伝達に関連する疾患を治療するための候補化合物の治療有効性を評価する方法が本明細書に開示され、本明細書に開示された齧歯類に薬剤を投与して炎症を誘発し、候補化合物を齧歯類に投与し、候補化合物が誘発された炎症を阻害および/または低減させるかどうかを判定することを含む。
【0038】
一部の実施形態では、炎症を誘発するために投与される薬剤は、DSSまたはオキサゾロンであり、これは齧歯類において腸炎症を誘発する。一部の実施形態では、炎症を誘発するために投与される薬剤は、IMQであり、これは齧歯類において皮膚炎症を誘発する。
【0039】
一部の実施形態では、候補化合物は、炎症を誘発する薬剤の投与前、投与中、または投与後に齧歯類に投与される。一部の実施形態では、候補化合物は、低分子化合物、核酸阻害剤、または抗体などの抗原結合タンパク質とし得る。一部の実施形態では、候補化合物は、ヒトIL-36Rに特異的に結合する抗体である。
特定の態様では例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
遺伝子改変齧歯類であって、そのゲノムが、
(1)内因性齧歯類Il1rl2座位のヒト化Il1rl2遺伝子であって、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、ヒト化Il1rl2遺伝子と、
(2)内因性齧歯類Il1f6座位のヒトIL1F6遺伝子と、
(3)内因性齧歯類Il1f8座位のヒトIL1F8遺伝子と、
(4)内因性齧歯類Il1f9座位のヒトIL1F9遺伝子と、を含む、遺伝子改変齧歯類。
(項目2)
前記ヒト化Il1rl2タンパク質が、前記内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一な膜貫通型細胞質配列を含む、項目1に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目3)
前記ヒト化Il1rl2タンパク質が、前記内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なシグナルペプチドを含む、項目1または2に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目4)
前記ヒトIL1RL2タンパク質が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目5)
前記ヒト化Il1rl2タンパク質の外部ドメインが、配列番号7に記載されるアミノ酸22~337を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目6)
前記ヒト化Il1rl2タンパク質が、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目7)
前記ヒト化Il1rl2遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1rl2座位で前記内因性齧歯類Il1rl2プロモーターに動作可能に結合する、項目1~6のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目8)
前記ヒト化Il1rl2遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1rl2座位の前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列と置換することから生じる、項目1~7のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目9)
前記ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列が、前記ヒトIL1RL2タンパク質の前記外部ドメインを実質的にコードする前記ヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片である、項目8に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目10)
前記ヒトIL1RL2遺伝子の前記ゲノム断片が、前記ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含む、項目9に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目11)
前記置換後に残っている前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子の前記ゲノム配列が、前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流にある前記エクソンを含む、項目8~10のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目12)
前記置換後に残っている前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子の前記ゲノム配列が、前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含む、項目8~11のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目13)
前記ヒト化Il1rl2遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2、前記ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8、および前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の残っているエクソンを含む、項目8に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目14)
前記ヒトIL1F6遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1f6座位で前記内因性齧歯類Il1f6遺伝子を置換する、項目1~13のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目15)
前記ヒトIL1F8遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1f8座位で前記内因性齧歯類Il1f8遺伝子を置換する、項目1~14のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目16)
前記ヒトIL1F9遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1f9座位で前記内因性齧歯類Il1f9遺伝子を置換する、項目1~15のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目17)
前記齧歯類が、前記ヒト化Il1rl2遺伝子、ヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子およびヒトIL1F9遺伝子の各々に対してホモ接合性である、項目1~16のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目18)
前記齧歯類が、野生型齧歯類と比較して短縮した結腸を呈する、項目20に記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目19)
前記齧歯類が、マウスまたはラットである、項目1~18のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類。
(項目20)
遺伝子改変齧歯類を作製する方法であって、
齧歯類ゲノムを、
(1)内因性齧歯類Il1rl2座位のヒト化Il1rl2遺伝子であって、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、ヒト化Il1rl2遺伝子と、
(2)内因性齧歯類Il1f6座位のヒトIL1F6遺伝子と、
(3)内因性齧歯類Il1f8座位のヒトIL1F8遺伝子と、
(4)内因性齧歯類Il1f9座位のヒトIL1F9遺伝子と、を含むように改変すること、および
前記改変ゲノムを含む齧歯類を作製すること、を含む、方法。
(項目21)
前記齧歯類ゲノムが、
(i)前記内因性齧歯類Il1rl2座位で前記ヒト化Il1rl2遺伝子を含む第一の齧歯類を作製することと、
(ii)前記内因性齧歯類Il1f6座位に前記ヒトIL1F6遺伝子、前記内因性齧歯類Il1f8座位に前記ヒトIL1F8遺伝子、および前記内因性齧歯類Il1f9座位に前記ヒトIL1F9遺伝子を含む、第二の齧歯類を作製することと、
(iii)前記第一の齧歯類を前記第二の齧歯類と交配させて前記改変齧歯類ゲノムを得ることと、を含むプロセスによって改変される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記内因性齧歯類Il1rl2座位に前記ヒト化Il1rl2遺伝子を含む前記齧歯類が、
齧歯類胚性幹(ES)細胞を提供することと、
ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を前記齧歯類ES細胞の前記齧歯類Il1rl2座位に挿入して、前記齧歯類Il1rl2座位に前記ヒト化Il1rl2遺伝子を形成し、それによって前記ヒト化Il1rl2遺伝子を含む齧歯類ES細胞を得ることと、
前記ヒト化Il1rl2遺伝子を含む前記齧歯類ES細胞を使用して齧歯類を作製することと、により作製される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列が、前記齧歯類Il1rl2座位で前記齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を置換する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列が、前記ヒトIL1RL2タンパク質の前記外部ドメインを実質的にコードする前記ヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記ヒトIL1RL2遺伝子の前記ゲノム断片が、前記ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記置換後に残っている前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子の前記ゲノム配列が、前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の前記エクソンを含む、項目23~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記置換後に残っている前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子の前記ゲノム配列が、前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含む、項目23~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記ヒト化Il1rl2遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2、前記ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8、および前記内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の前記残っているエクソンを含む、項目22に記載の方法。
(項目29)
前記ヒトIL1F6遺伝子、前記ヒトIL1F8遺伝子、および前記ヒトIL1F9遺伝子を含む前記第二の齧歯類が、
齧歯類胚性幹(ES)細胞を提供することと、
(i)前記ヒトIL1F6遺伝子を前記齧歯類ES細胞の前記齧歯類Il1f6座位に、
(ii)前記ヒトIL1F8遺伝子を前記齧歯類ES細胞の前記齧歯類Il1f8座位に、および
(iii)前記ヒトIL1F9遺伝子を前記齧歯類ES細胞の前記齧歯類Il1f9座位に挿入することと、
それによって、前記ヒトIL1F6遺伝子、前記ヒトIL1F8遺伝子、および前記ヒトIL1F9遺伝子を含む齧歯類ES細胞を得ることと、
前記ヒトIL1F6遺伝子、前記ヒトIL1F8遺伝子、および前記ヒトIL1F9遺伝子を含む前記齧歯類ES細胞を使用して前記第二の齧歯類を作製することと、によって作製される、項目21に記載の方法。
(項目30)
前記ヒトIL1F6遺伝子、前記ヒトIL1F8遺伝子、および前記ヒトIL1F9遺伝子が、連続核酸分子で提供される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記ヒトIL1F6遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1f6座位で前記内因性齧歯類Il1f6遺伝子を置換する、項目20~30のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記ヒトIL1F8遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1f8座位で前記内因性齧歯類Il1f8遺伝子を置換する、項目20~31のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記ヒトIL1F9遺伝子が、前記内因性齧歯類Il1f9座位で前記内因性齧歯類Il1f9遺伝子を置換する、項目20~32のいずれかに記載の方法。
(項目34)
項目1~19のいずれか一項に記載の齧歯類の、単離された細胞または組織。
(項目35)
齧歯類胚性幹(ES)細胞であって、
(1)内因性齧歯類Il1rl2座位のヒト化Il1rl2遺伝子であって、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、ヒト化Il1rl2遺伝子と、
(2)内因性齧歯類Il1f6座位のヒトIL1F6遺伝子と、
(3)内因性齧歯類Il1f8座位のヒトIL1F8遺伝子と、
(4)内因性齧歯類Il1f9座位のヒトIL1F9遺伝子と、を含む、齧歯類胚性幹(ES)細胞。
(項目36)
齧歯類を作製することにおける、項目35に記載の齧歯類ES細胞の使用。
(項目37)
脱制御IL-36シグナル伝達に関連する疾患の齧歯類モデルとしての、項目1~19のいずれか一項に記載の齧歯類の使用。
(項目38)
脱制御IL-36シグナル伝達に関連する疾患を治療するための候補化合物の治療有効性を評価する方法であって、
項目1~19のいずれか一項に記載の齧歯類を提供すること、
前記齧歯類に薬剤を投与して炎症を誘発すること、
候補化合物を前記齧歯類に投与すること、および
前記候補化合物が誘発された炎症を阻害するかどうかを判定すること、を含む、方法。(項目39)
前記薬剤がDSSまたはオキサゾロンであり、腸炎症が前記齧歯類で誘発される、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記薬剤がIMQであり、皮膚炎症が前記齧歯類で誘発される、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記候補化合物が、前記薬剤の投与前、間、または後に前記齧歯類に投与される、項目38~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記候補化合物が、小分子化合物、核酸阻害剤、または抗体である、項目38~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記候補化合物が抗体である、項目42に記載の方法。
(項目44)
標的核酸構築物であって、
相同組み換えを介在し、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を齧歯類Il1rl2座位に組み込んでヒト化Il1rl2遺伝子を形成することができる、5’および3’齧歯類ヌクレオチド配列と隣接する、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を含み、前記ヒト化Il1rl2遺伝子は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする、標的核酸構築物。
(項目45)
標的核酸構築物であって、
ヒトIL1F6遺伝子、ヒトIL1F8遺伝子、およびヒトIL1F9遺伝子を含む連続核酸配列を含み、
前記連続核酸配列は、相同組み換えを介在し、前記齧歯類Il1f6遺伝子、前記齧歯類Il1f8遺伝子、および前記齧歯類Il1f9遺伝子を包含する前記齧歯類座位に前記連続核酸配列を組み込むことができる、5’および3’齧歯類ヌクレオチド配列に隣接する、標的核酸構築物。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本特許のファイルは、カラーで制作された少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を含む本特許のコピーは、要請時及び必要料金の支払時に特許商標庁から提供されることになる。
【0041】
図1A図1A~1Dは、マウスIl1rl2のヒト化のための例示的戦略の実施形態を示す。図1Aは、マウスIl1rl2およびヒトIL1RL2遺伝子のゲノム構造の、正確な縮尺ではない図を示す。エクソンは、ゲノム配列にわたって配置された細いバーで表される。削除される約25,324bpのマウスゲノム断片と、挿入される約32,389bpのヒトゲノム断片が示される。実施例1に記述されるアッセイにおいて用いられたプローブの位置が示されている。図1Bは、正確な縮尺ではないが、底部(配列番号26~28)の接合部配列を伴う、内因性マウスIl1rl2遺伝子のヒト化のための例示的な改変BACベクターを示し、(i)マウスIl1rl2エクソン3~8と介在イントロン、および3’155bpのマウスイントロン2と5’642bpのマウスイントロン8を、ヒトIL1RL2エクソン3~8と介在イントロン、ならびに3’346bpのヒトイントロン2および5’1101bpのヒトイントロン8の置換、および(ii)イントロン8のヒトゲノム断片の挿入の下流のloxP-hUb1-em7-Neo-pA-mPrm1-Crei-loxPカセット(4996bp)の挿入を達成させる。図1Cは、正確な縮尺ではないが、ネオマイシンカセットが削除された後のヒト化Il1rl2アレルを、底部の接合部配列(配列番号26および29)とともに示す。図1Dは、マウスIl1rl2タンパク質(配列番号4)、ヒトIL1RL2タンパク質(配列番号2)、およびヒト化Il1rl2タンパク質(配列番号7)の配列アライメントを記載している。
図1B】同上。
図1C】同上。
図1D】同上。
【0042】
図2A図2A~2Dは、マウスIl1f8、Il1f9、およびIl1f6をヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6で置換するための例示的戦略の実施形態を示す。図2Aは、正確な縮尺ではないが、マウスIl1f8、Il1f9、およびIl1f6遺伝子ならびにヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6遺伝子のゲノム構成の図を示す。エクソンは、ゲノム配列にわたって配置された細いバーで表される。削除される約76,548bpのマウスゲノム断片と、挿入される約88,868bpのヒトゲノム断片が示されている。実施例1に記述されるアッセイにおいて用いられたプローブの位置が示されている。図2Bは、正確な縮尺ではないが、底部の接合部配列(配列番号30~32)とともに、内因性マウスIl1f8、Il1f9、およびIl1f6遺伝子の置換のための例示的改変BACベクターを示し、(i)コード配列と非翻訳領域(UTR)、並びにマウスIl1f8、Il1f9、およびIl1f6と対応するヒト配列IL1F8、IL1F9、およびIL1F6の置換、並びに(ii)ヒトゲノム断片の挿入下流のloxP-hUb1-em7-Hygro-pA-mPrm1-Crei-loxPカセット』(5,218bp)の挿入を達成する。図2Cは、正確な縮尺ではないが、ネオマイシンカセットが削除された後のヒト化座位を、底部の接合部配列(配列番号30および33)とともに示す。図2Dは、マウスIl1f6(配列番号11)およびヒトIL1F6(配列番号9)タンパク質の配列アラインメント、マウスIl1f8(配列番号17)およびヒトIL1F8(配列番号15)タンパク質の配列アライメント、並びにマウスIl1f9(配列番号23)およびヒトIL1F9(配列番号21)タンパク質の配列アライメントを示す。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D-1】同上。
図2D-2】同上。
【0043】
図3A-C】図3A~3Eは、本発明の実施形態を示し、ヒト化DITRA様マウスにおける強化されたIMQ誘発性皮膚炎症を示す。DITRA様(本明細書の図では「DITRA」とも略される))および野生型(WT)マウスを、4日間連続で、IMQの局所適用により処置した。5日目に、次の病理組織学的評価およびqRT-PCRのために背部皮膚サンプルを採取した。(3A)ヴァセリン(「Vas」、対照)またはIMQ含有クリーム(アルダラ)で4日間連続で局所処置された5日目のDITRA様マウスおよびWTマウスの代表的な皮膚外観である。(3B)DITRA様およびWTマウスのヴァセリンおよびIMQで処置された皮膚の代表的なヘマトキシリンおよびエオシン(「H&E」)染色である。(3C)ヴァセリンまたはIMQ含有クリームで毎日処置したDITRAおよびWTマウスの皮膚における炎症促進性分子のmRNA発現である(各群n=10)。IMQを4日間連続局所適用した後、5日目に、その後の病理組織学的評価およびqRT-PCRのために、背部皮膚サンプルを、Il1rl2単一ヒト化マウス(「1H」)、DITRA様マウス、および野生型マウスから採取した。各バーの群は、左から右に:WT Vas、DITRA Vas、WT IMQ、およびDITRA IMQである。(3D)ヴァセリン(対照)またはIMQ含有クリーム(アルダラ)で4日間連続で局所処置された5日目の1H、DITRA様マウスおよびWTマウスの代表的な皮膚外観である。(3E)ヴァセリンまたはIMQ含有クリームで毎日処置した1H、DITRAおよびWTマウスの皮膚における炎症促進性分子のmRNA発現である(各群n=10)。各バーの群は、左から右に:WT Vas、1H Vas、DITRA様Vas、WT IMQ、1H IMQ、およびDITRA様IMQである。
図3D-E】同上。
【0044】
図4図4A~4B。一部の実施形態では、DITRA様マウスは、定常状態で短縮した結腸を呈する。(4A)DITRA様マウス並びにそれらと共に収容されたIL-36RおよびWT同腹仔の3ヶ月および10ヶ月の代表的写真である。(4B)その共に収容されたIL-36R KOおよびWT同腹仔と比較した、3ヶ月齢および10ヶ月齢のDITRA様マウスの定量化された大腸長である(各群n=6)。エラーバーは平均±SDを示す。
【0045】
図5A-C】図5A~5E。一部の実施形態では、DITRA様マウスは、DSS誘発性慢性大腸炎において粘膜治癒に欠陥を示す。DITRA様マウス(n=16)およびその共に収容されたWT同腹仔対照(n=14)は、2.5%DSSを7日間、次いで水を11日間、1.5%DSSを4日間、水を5日間、合計27日間の投与により、慢性DSS誘発大腸炎に供された。対照マウス(n=5)に通常の水を投与した。(5A)DITRA様マウスおよびそのWT共収容同腹仔対照における体重減少は、元の体重と任意の特定の日の実際の体重とのパーセント差として計算される。(5B)水およびDSS処理したDITRA様マウスおよびWTマウスにおける結腸長である。(5C)水およびDSS処理したDITRA様およびWTマウスの結腸のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色および病理スコアである。(5D)水およびDSS処理したDITRA様およびWTマウスの結腸ホモジネートにおけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性である。(5E)水およびDSS処理したDITRA様マウスおよびWTマウスの結腸ホモジネートにおける炎症促進性サイトカインのレベルである。データは、少なくとも三つの独立した実験の代表である。エラーバーは平均±SDを示す。各バーの群は、左から右に:WT/水、DITRA/水、WT/DSS、およびDITRA/DSSである。
図5D-E】同上。
【0046】
図6図6A~6B。一部の実施形態では、REGN抗ヒトIL-36R抗体を用いたヒトIL-36Rアンタゴニズムは、予防的投与時にDITRA様マウスにおけるIMQ誘発性皮膚炎症を改善する。DITRA様マウスの背部皮膚を、IMQ適用開始3日前に剃り、ヴァセリン(対照)またはIMQ含有クリーム(アルダラ)により4日間連続で局所処置した。PBS、αhIL-36R mAb、およびhIgG4アイソタイプ対照を、-3日目および1日目に10mg/mLで皮下注射した(各治療群につきn=9)。(6A)5日目にDITRA様マウスから単離した背部皮膚のH&E組織切片および病理スコアである。(6B)IMQの毎日適用および-3日目および1日目のPBS、αIL-36R mAbおよびアイソタイプ対照の注射で処置した5日目のDITRA様マウスの皮膚ホモジネートにおける炎症促進性サイトカインのレベルである。データは、三つの独立した実験のうちの代表を示す。エラーバーは平均±SDを示す。各バーの群は、左から右に:PBS、αhIL-36R mAb、およびhIgG4アイソタイプ対照である。
【0047】
図7図7A~7C。一部の実施形態では、抗ヒトIL-36R抗体の治療的投与は、DITRA様マウスにおける慢性IMQ誘発性皮膚炎症を改善する。DITRA様マウスの背部皮膚を投与開始3日前に剃り、ヴァセリン(対照)またはIMQ含有クリーム(アルダラ)で二回(第一回として5日間連続適用後、2日間適用せず、その後、第二回として4日間連続適用の合計11日間適用)局所処置した。PBS、抗ヒトIL-36R抗体、およびhIgG4アイソタイプ対照を、5日目および9日目に10mg/mLで皮下注射した(各治療群につきn=10)。(7A)皮膚の厚さを、DITRA様マウスにおいて12日目に測定した。厚さはμmで示す。(7B)12日目にDITRA様マウスからの背部皮膚のH&E組織切片および病理スコアである。(7C)炎症促進性サイトカインのレベルを、DITRA様マウスの皮膚ホモジネートで12日目に測定した。データは、二つの独立した実験のうちの代表を示す。エラーバーは平均±SDを示す。各バーの群は、左から右に:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、αhIL-36R mAb、およびhIgG4アイソタイプ対照である。
【0048】
図8A-B】図8A~8E。一部の実施形態では、抗ヒトIL-36R抗体の治療的投与は、IL-12p40遮断と同様に、DITRA様マウスにおけるDSS誘発性慢性炎症を改善し、DSS誘発性粘膜損傷からの治癒不能を救済する。DITRA様マウス(n=45)を、3%のDSSを7日間、2%のDSSを13日間、次いで水を投与すること、合計30日間により、慢性DSS誘発性大腸炎に供した。対照マウス(n=5)に通常の水を投与した。PBS(n=11)、αIL-36R mAb(n=11)、hIgG4アイソタイプ対照(n=6)、αmIL-12p40(BioxCell)(n=11)、およびラットIgG2aアイソタイプ対照(n=6)に、7、10、14、17、21、および24日目に、10mg/mLで腹腔内注射した。(8A)DITRA様マウスにおける体重減少は、元の体重と任意の特定の日の実際の体重とのパーセント差として計算される。(8B)DITRA様マウスにおける糞便リポカリン-2(Lcn2)のレベルは、慢性大腸炎を通して0、7、17、23、30日目に測定された。(8C)30日目のDITRA様マウスにおける結腸長である。(8D)DITRA様マウスの結腸ホモジネートにおける30日目のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性である。(8E)DITRA様マウスの結腸ホモジネートの30日目の炎症促進性サイトカインのレベルである。データは、二つの独立した実験のうちの代表を示す。エラーバーは平均±SDを示す。各バーの群は、左から右に:PBS/水、PBS/DSS、αhIL-36R/DSS、hIgG4アイソタイプ対照/DSS、αmIL-12p40/DSS、およびラットIgG2aアイソタイプ対照/DSSである。
図8C-E】同上。
【0049】
図9図9A~9C。ヒトIL-36Rアンタゴニズムは、DITRA様マウスにおけるオキサゾロン誘発性大腸炎を改善する。DITRA様マウスを、100%エタノールに溶解した3%オキサゾロン溶液で予め感作し、5、6および7日目に1.5%オキサゾロンおよびビヒクル(50%エタノール)を直腸内投与した。前感作後2、5および7日目にマウスにPBS、抗ヒトIL-36R mAbおよびhIgG4アイソタイプ対照を腹腔内注射した。(A)オキサゾロン投与中のPBS-、抗ヒトIL-36R mAb-およびhIgG4対照処置済みDITRA様マウスの体重である。*p<0.05 PBS処置群から。(B)8日目のDITRA様マウスで測定された結腸長である。(C)PBS、抗ヒトIL-36R mAb、およびhIgG4アイソタイプ対照を注射したオキサゾロン、およびビヒクル処置DITRA様マウスの結腸ホモジネートにおける炎症促進性サイトカインのレベルである。-PBS処置群からの有意差、#-アイソタイプ処置群からの有意差を表す。データは、各群5匹のマウスでの二つの独立した実験のうちの代表を示す。エラーバーは平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.00001。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ヒトIL-36Rシグナル伝達の阻害において20分の1と低い効力であるIL-36Raアンタゴニスト内因性を保持しながら、ヒト化Il1rl2遺伝子(ヒトIL1RL2外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを有するヒト化IL1RL2タンパク質をコードする)、およびヒトIL-36αリガンドをコードするヒト遺伝子を含むように遺伝子改変された齧歯類(マウスなどであるが、これに限定されない)が本明細書に開示される。本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、IL-36Raの突然変異がIL-36Rシグナル伝達の増強をもたらすDITRA患者の症状を呈することが示されている。したがって、本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、DITRAおよびその関連障害を治療するための候補治療剤を試験するのに好適なDITRAの新規な機能モデルとして役立ち得る。様々な実施形態が以下にさらに記載される。
【0051】
遺伝子改変齧歯類:四重ヒト化
一部の実施形態の一態様では、本開示は、そのゲノムに、ヒト化IL1RL2タンパク質(IL-36Rのサブユニット)をコードするヒト化Il1rl2遺伝子、およびヒトIL-36α、β、およびγリガンドをコードするヒト遺伝子を含む齧歯類動物を提供する。かかる齧歯類は、本明細書では四重ヒト化齧歯類(すなわち、4HまたはDITRA様)とも称される。
【0052】
用語「ヒト化(humanized)」は、核酸またはタンパク質の文脈において使用される場合、その構造(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列)が全体的または部分的に改変され、対応するヒトの核酸またはタンパク質に見られる構造を含む齧歯類の核酸またはタンパク質を含む。ヒト化遺伝子を含有する齧歯類またはヒト化タンパク質を発現する齧歯類は、「ヒト化」齧歯類である。
【0053】
一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、非限定的な例として、マウス、ラット、およびハムスターを含む。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、非限定的な例として、マウスおよびラットを含む。一部の実施形態では、齧歯類はネズミ上科から選択される。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、ヨルマウス科(例えば、マウス様のハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、New Worldラットおよびマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(純種のマウスおよびラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラットおよびマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、およびメクラネズミ科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、および高原モグラネズミ)から選択された科由来の動物である。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、純種のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、およびタテガミネズミから選択される。一部の実施形態では、本開示のマウスは、ネズミ科のメンバー由来のものである。
IL-1RL2ヒト化
【0054】
IL-36Rはインターロイキン1受容体ファミリーのメンバーであり、IL1RL2(IL-1Rrp2としても知られる)と名付けられた受容体サブユニットと、共受容体サブユニットインターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質IL-1RAcPからなる、ヘテロ二量体である(参照によりその全体が援用される、Garlanda C et al.,Immunity 39,1003-1018(2013);Towne
JE et al.,J.Biol.Chem.279,13677-13688(2004))。受容体(IL-36R)は、IL-36α、IL-36β、IL-36γ(IL1F6、IL1F8、およびIL1F9としても知られる)の三つの異なるアゴニストを認識して結合し、炎症性サイトカインの発現、ならびにIL-36Rに結合し、炎症性サイトカインの発現を低減させるアンタゴニストであるIL-36Raを誘導することができる。
【0055】
IL1RL2は、シグナルペプチド、細胞外ドメイン(「ECD」または「エクトドメイン」)、膜貫通ドメイン、および細胞内または細胞質ドメインを含有する。例えば、図1Dを参照のこと。ヒト、マウス、ラット、およびヒト化されたIl1rl2核酸ならびにタンパク質配列を含む例示的IL1RL2配列が、配列表に開示され、また以下の表に要約されている。
【表1】
【0056】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノムに、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のヌクレオチド配列およびヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を含む、ヒト化Il1rl2遺伝子を含む。本明細書において使用される場合、「遺伝子のヌクレオチド配列」は、ゲノム配列、mRNAまたはcDNA配列の、その遺伝子全体または一部を含む。非限定的な例として、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2遺伝子のすべてまたは一部のゲノム配列、mRNA配列またはcDNA配列を含む。内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のヌクレオチド配列およびヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類ゲノム中のヒト化Il1rl2遺伝子がIl1rl2タンパク質、すなわち、Il1rl2タンパク質構造(外部ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインからなる)を有する、およびIl1rl2機能(例えば、インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質(ntereukin- eceptor accessory rotein;1L-1RacP)とヘテロ二量体を形成し、三つのリガンド:IL-36α、IL-36β、およびIL-36γを認識する)を実施するタンパク質などの、タンパク質をコードするように、互いに動作可能に結合している。
【0057】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Il1rl2遺伝子を含有しており、ヒト化Il1rl2遺伝子は、ヒト化Il1rl2タンパク質をコードし、このヒト化Il1rl2タンパク質は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインを含有している。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一である外部ドメインは、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと同じ機能性(例えば、リガンド結合特性)を呈する。「ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一な」外部ドメインまたはポリペプチドとは、一部の実施形態では、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと少なくとも95%、98%、99%または100%の配列が同一であるポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個以下のアミノ酸が、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと異なるポリペプチドを意味する。また一部の実施形態では、例えば、アミノ酸の追加、欠失、または置換により、外部ドメインのNまたはC末端部分でのみ、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと異なるが、NまたはC末端部分のアミノ酸、5個、4個、3個、2個、1個以下であるポリペプチドを意味する。「外部ドメインのNまたはC末端部分」とは、外部ドメインのNまたはC末端から5~10個のアミノ酸を意味する。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2タンパク質は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列と実質的に同一(たとえば少なくとも95%、98%、99%または100%同一)なアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、ヒトIL1RL2タンパク質は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、その外部ドメインは、配列番号2のアミノ酸20~335から成る。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、配列番号2に記載されるヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメイン、すなわち、配列番号2のアミノ酸20~335と実質的に同一な外部ドメインを含むヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、配列番号7のアミノ酸22~337を含む外部ドメインを含有するヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。
【0058】
一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一な、膜貫通型細胞質配列(すなわち、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの両方を含む配列)を含有するヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一な膜貫通型細胞質配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と同じ機能性(例えば、シグナル伝達および/または細胞内分子との相互作用)を呈する。「内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一な」膜貫通型細胞質配列またはペプチドとは、一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と、少なくとも95%、98%、99%または100%の配列が同一であるポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個以下のアミノ酸が、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と異なるポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、たとえばアミノ酸の追加、欠失、置換により、NまたはC末端でのみ内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と異なるが、膜貫通型細胞質配列のNまたはC末端で5個、4個、3個、2個、1個以下である、ポリペプチドを意味する。「膜貫通型細胞質配列のNまたはC末端部分」とは、膜貫通ドメインのN末端から5~10個のアミノ酸内、または細胞質ドメインのC末端から5~10個のアミノ酸内を意味する。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2タンパク質は、例えば、配列番号4と実質的に同一(少なくとも95%、98%、99%または100%同一)なマウスIl1rl2タンパク質などのマウスIl1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列、または例えば、配列番号6と実質的に同一(少なくとも95%、98%、99%または100%同一)なラットIl1rl2タンパク質などのラットIl1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一な、膜貫通型細胞質配列を含有する。
【0059】
一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なシグナルペプチドを含有するヒト化Il1rl2タンパク質をコードする。「内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一」であるシグナルペプチドとは、一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと少なくとも95%、98%、99%または100%配列が同一なポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと、3個、2個、または1個以下のアミノ酸が異なるポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、例えば、アミノ酸の追加、欠失または置換によって、NまたはC末端のみで内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと異なるが、シグナルペプチドのNまたはC末端部分の、3個、2個、または1個のアミノ酸に留まる、ポリペプチドを意味する。「シグナルペプチドのNまたはC末端部分」とは、シグナルペプチドのNまたはC末端から5個のアミノ酸内を意味する。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2タンパク質は、例えば、配列番号4と実質的に同一(少なくとも95%、98%、99%または100%同一)なマウスIl1rl2タンパク質などのマウスIl1rl2タンパク質のシグナルペプチド、または例えば、配列番号6と実質的に同一(少なくとも95%、98%、99%または100%同一)なラットIl1rl2タンパク質などのラットIl1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一な、シグナルペプチドを含む。
【0060】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Il1rl2遺伝子は、ヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列(または「ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列」)および内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のヌクレオチド配列(または「内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列」)を含み、ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2遺伝子によってコードされたヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと実質的に同一なポリペプチドをコードする。そのようなヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインを実質的にコードするとも称される。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8から構成される。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2遺伝子のイントロン2の3’部分、エクソン3~8、およびイントロン8の5’部分から構成される。一部の実施形態では、ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、cDNA配列である。
【0061】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列およびヒトIl1rl2ヌクレオチド配列を含み、内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一なポリペプチドをコードする。そのような齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列を実質的にコードするとも称される。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子中に存在する内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子中に存在する内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流に残存するエクソンを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子中に存在する内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流にイントロン8の3’部分と残存するエクソンを含む。
【0062】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Il1rl2遺伝子は、ヒトIL1RL2ヌクレオチド配列の上流(5’)に内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列を含み、内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なポリペプチドをコードする。そのような齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドを実質的にコードするとも称される。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なポリペプチドをコードする内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含み、一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2ヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2とイントロン2の5’部分を含む。
【0063】
一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2制御配列、例えばプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの5’転写制御配列に、例えばヒト化Il1rl2遺伝子の発現が齧歯類Il1rl2 5’制御配列の制御下におかれるなど、動作可能に連結される。
【0064】
一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2座位にある。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、例えば、ランダムな組み込みの結果として、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子座以外の座位にある。ヒト化Il1rl2遺伝子が内因性齧歯類Il1rl2座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)の結果として、齧歯類Il1rl2タンパク質を発現することができない。
【0065】
ヒト化Il1rl2遺伝子が内因性齧歯類Il1rl2座位にある一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子が内因性齧歯類Il1rl2座位でヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列に置換された結果生じる。
【0066】
一部の実施形態では、置換される内因性齧歯類Il1rl2座位の内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Il1rl2タンパク質の外部ドメインを実質的にコードする内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、置換される齧歯類ゲノム断片は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン3~8を含む。
【0067】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2座位で齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を置換するヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2座位で齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を置換するヒトIL1RL2ヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2座位で齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム断片を置換するヒトIL1RL2遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインを実質的にコードする、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン全部または一部を含む。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含む。
【0068】
一部の実施形態では、ヒト化置換後に内因性齧歯類Il1rl2座位に残り、挿入されたヒトIL1RL2ヌクレオチド配列に動作可能に結合する内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通型細胞質配列を実質的にコードする。一部の実施形態では、ヒト化置換後、内因性齧歯類Il1rl2座位に残る内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流のエクソンを含む。
【0069】
一部の実施形態では、ヒト化置換後に内因性齧歯類Il1rl2座位に残り、挿入されたヒトIL1RL2ヌクレオチド配列に動作可能に結合する内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質のシグナルペプチドを実質的にコードする。一部の実施形態では、ヒト化置換後、内因性齧歯類Il1rl2座位に残る内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列は、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含む。
【0070】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質とヒトIL1RL2タンパク質が、膜貫通ドメインと外部ドメインの間の接合部近辺に共通したアミノ酸を共有している場合において、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインを厳密にコードするヒトIL1RL2ヌクレオチド配列を挿入する必要はない場合がある。ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインを実質的にコードし、内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通ドメイン(および細胞質ドメイン)を実質的にコードする内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のゲノム配列に動作可能に結合された、若干長い、または短いヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列を挿入することが可能であり、それにより得られたヒト化Il1rl2遺伝子によってコードされるヒト化Il1rl2タンパク質は、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメインと同一な外部ドメイン、および内因性齧歯類Il1rl2タンパク質の膜貫通ドメインと同一な膜貫通ドメインを含む。
【0071】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il1rl2座位の内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン3~8を含むゲノム断片は、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含むゲノム断片で置換されている。結果として、ヒト化Il1rl2遺伝子が、内因性齧歯類Il1rl2座位で形成され、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8、および内因性齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の残りのエクソンを含む。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Il1rl2遺伝子に対しヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Il1rl2遺伝子に対しホモ接合性である。
【0073】
一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2遺伝子は、齧歯類においてコードされたヒト化Il1rl2タンパク質の発現を生じさせる。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2タンパク質は、対照齧歯類(たとえば、ヒト化Il1rl2遺伝子を有しない齧歯類)中の対応する齧歯類Il1rl2タンパク質と同等のパターンで、または実質的に同一なパターンで発現される。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2タンパク質は、対照齧歯類(たとえば、ヒト化Il1rl2遺伝子を有しない齧歯類)中の対応する齧歯類Il1rl2タンパク質と同等のレベルで、または実質的に同一なレベルで発現される。一部の実施形態では、ヒト化Il1rl2タンパク質は、細胞表面、例えば、限定するものではないが、特にケラチノサイト、単球、マクロファージ、好中球、気管支および腸管上皮細胞などの細胞表面などで発現および検出される。ヒト化齧歯類のヒト化遺伝子またはタンパク質を、対照齧歯類の内因性齧歯類遺伝子またはタンパク質と比較する文脈において、「比較可能(comparable)」という用語は、比較される分子またはレベルが互いに同一ではない場合があるが、観察される差異または類似性に基づいて合理的に結論を導き出すことができるように、それらの間の比較を可能にするのに十分な類似性があることを意味する。一部の実施形態では、「実質的に同じ」という用語は、発現レベルに関して、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%を超えて互いに異なることのない比較されるレベルを含む。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il1rl2遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)または置換(全体または部分的な)の結果として、齧歯類Il1rl2タンパク質を発現することができない。
【0075】
IL-36リガンドのヒト化
本明細書に開示される齧歯類は、ヒトIL-36α、βおよびγリガンドをコードする生殖系遺伝子を含む。
【表2】
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、ヒトIL-36αタンパク質をコードするヒトIL-36α遺伝子を含むゲノムを有する。「ヒトIL-36α遺伝子」への言及は、ヒトIL-36αタンパク質をコードするヒトゲノムDNAを含み、ヒトIL-36αプロモーターを含む。ヒトIL-36αタンパク質は、ヒトIL-36αタンパク質の成熟型または前駆体型であり得る。一部の実施形態では、ヒトIL-36αタンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0077】
一部の実施形態では、ヒトIL-36α遺伝子は、内因性齧歯類Il-36α座位にある。一部の実施形態では、ヒトIL-36α遺伝子は、例えば、ランダム組み込みの結果として、内因性齧歯類Il-36α座位以外の座位にある。ヒトIL-36α遺伝子が内因性齧歯類Il-36α座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il-36α遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)の結果として、齧歯類Il-36αタンパク質を発現することができない。
【0078】
一部の実施形態では、ヒトIL-36α遺伝子は、内因性齧歯類Il-36α座位の内因性齧歯類Il-36α遺伝子を置換する。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒトIL-36α遺伝子に対しヘテロ接合性である。他の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒトIL-36α遺伝子に対しホモ接合性である。
【0080】
一部の実施形態では、ヒトIL-36α遺伝子は、血清、例えば皮膚、腸上皮、肺などの粘膜部位、および免疫系の様々なタイプの細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞)など、齧歯類おいて、コードされたヒトIL-36αタンパク質の発現をもたらす。一部の実施形態では、ヒトIL-36αタンパク質は、対照齧歯類(たとえば、ヒトIL-36α遺伝子を有しない齧歯類)中の対応する齧歯類Il-36αタンパク質と同等のパターンで、または実質的に同一なパターンで発現される。一部の実施形態では、ヒトIL-36αタンパク質は、例えば、血清中、粘膜部位(例えば、皮膚、腸上皮、肺など)、および/または免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞)において、対照齧歯類(例えば、ヒトIL-36α遺伝子を有しない齧歯類)の対応する齧歯類Il-36αタンパク質と同等の、または実質的に同じレベルで発現する。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il-36α遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)または置換(全体または部分的な)の結果として、齧歯類Il-36αタンパク質を発現することができない。
【表3】
【0082】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、ヒトIL-36βタンパク質をコードするヒトIL-36β遺伝子を含むゲノムを有する。「ヒトIL-36β遺伝子」への言及は、ヒトIL-36βタンパク質をコードするヒトゲノムDNAを含み、ヒトIL-36βプロモーターを含む。ヒトIL-36βタンパク質は、ヒトIL-36βタンパク質の成熟型または前駆体型であり得る。一部の実施形態では、ヒトIL-36βタンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、ヒトIL-36β遺伝子は、内因性齧歯類Il-36β座位にある。一部の実施形態では、ヒトIL-36β遺伝子は、例えば、ランダム組み込みの結果として、内因性齧歯類Il-36β座位以外の座位にある。ヒトIL-36β遺伝子が内因性齧歯類Il-36β座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il-36β遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)の結果として、齧歯類Il-36βタンパク質を発現することができない。
【0084】
一部の実施形態では、ヒトIL-36β遺伝子は、内因性齧歯類Il-36β座位の内因性齧歯類Il-36αβ遺伝子を置換する。
【0085】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒトIL-36β遺伝子に対しヘテロ接合性である。他の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒトIL-36β遺伝子に対しホモ接合性である。
【0086】
一部の実施形態では、ヒトIL-36β遺伝子は、血清、例えば皮膚、腸上皮、肺などの粘膜部位、および/または免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞)など、齧歯類おいて、コードされたヒトIL-36βタンパク質の発現をもたらす。一部の実施形態では、ヒトIL-36βタンパク質は、対照齧歯類(たとえば、ヒトIL-36β遺伝子を有しない齧歯類)中の対応する齧歯類IL-36βタンパク質と同等のパターンで、または実質的に同一なパターンで発現される。一部の実施形態では、ヒトIL-36βタンパク質は、例えば、血清中、粘膜部位、例えば、皮膚、腸上皮、肺など、および免疫系の様々なタイプの細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞など)において、対照齧歯類(例えば、ヒトIL-36β遺伝子を有しない齧歯類)の対応する齧歯類Il-36βタンパク質と同等の、または実質的に同じレベルで発現する。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il-36β遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)または置換(全体または部分的な)の結果として、齧歯類Il-36βタンパク質を発現することができない。
【表4】
【0088】
一部の実施形態では、本発明は、そのゲノムがヒトIL-36γタンパク質をコードするヒトIL-36γ遺伝子を含有する齧歯類を提供する。「ヒトIL-36γ遺伝子」への言及は、ヒトIL-36γタンパク質をコードするヒトゲノムDNAを含み、ヒトIL-36γプロモーターを含む。一部の実施形態では、ヒトIL-36γタンパク質は、ヒトIL-36γタンパク質の成熟型または前駆体型であり得る。一部の実施形態では、ヒトIL-36γタンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0089】
一部の実施形態では、ヒトIL-36γ遺伝子は、内因性齧歯類Il-36γ座位にある。一部の実施形態では、ヒトIL-36γ遺伝子は、例えば、ランダム組み込みの結果として、内因性齧歯類Il-36γ座位以外の座位にある。ヒトIL-36γ遺伝子が内因性齧歯類Il-36γ座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il-36γ遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)の結果として、齧歯類Il-36γタンパク質を発現することができない。
【0090】
一部の実施形態では、ヒトIL-36γ遺伝子は、内因性齧歯類Il-36γ座位の内因性齧歯類Il-36γ遺伝子を置換する。
【0091】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒトIL-36γ遺伝子に対しヘテロ接合性である。他の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒトIL-36γ遺伝子に対しホモ接合性である。
【0092】
一部の実施形態では、ヒトIL-36γ遺伝子は、血清、例えば皮膚、腸上皮、肺などの粘膜部位、および免疫系の様々なタイプの細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞)など、齧歯類おいて、コードされたヒトIL-36γタンパク質(ヒトIL-36γタンパク質と同一のタンパク質など)の発現をもたらす。一部の実施形態では、ヒトIL-36γタンパク質は、対照齧歯類(たとえば、ヒトIL-36γ遺伝子を有しない齧歯類)中の対応する齧歯類IL-36γタンパク質と同等のパターンで、または実質的に同一なパターンで発現される。一部の実施形態では、ヒトIL-36γタンパク質は、例えば、血清中、粘膜部位(例えば、皮膚、腸上皮、肺など)、および/または免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞)において、対照齧歯類(例えば、ヒトIL-36γ遺伝子を有しない齧歯類)の対応する齧歯類Il-36γタンパク質と同等の、または実質的に同じレベルで発現する。
【0093】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il-36γ遺伝子の不活性化(例えば、全体または部分的な欠失)または置換(全体または部分的な)の結果として、齧歯類Il-36γタンパク質を発現することができない。
【0094】
一部の実施形態では、そのゲノムが、内因性座位における、全ての三つのIl-36リガンドに対するコード配列を包含する連続ゲノム断片のそれぞれヒトIL-36α、β、およびγと実質的に同一である三つのリガンドに対するコード配列を含む連続核酸との置換を含む齧歯類が提供される。一部の実施形態では、結果として生じる座位は、5’から3’に、(i)ヒトIL-36γ遺伝子、(ii)ヒトIL-36γ遺伝子、および(iii)ヒトIL-36γ遺伝子の逆鎖を含む。
【0095】
四重ヒト化齧歯類の表現型
本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、定常状態ではいかなる自然発生的疾患も発生しないが、これらの齧歯類は、定常状態および疾患状態(例えば、DSSまたはIMQ処置後)の両方で、ヒト化なしの年齢一致の対照齧歯類と比較して、短縮した結腸および皮膚における炎症促進性メディエーターの発現の増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、定常状態または疾患状態において、対照齧歯類よりも少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%短い結腸長を呈する。
【0096】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、定常状態において、対照齧歯類よりも10%~15%(±5%)短い結腸長を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、定常状態において、対照齧歯類よりも15%~20%(±5%)短い結腸長を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、定常状態において、対照齧歯類よりも10%~20%(±5%)短い結腸長を呈する。
【0097】
他の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、疾患状態(例えば、DSSまたはオキサゾロン処置後)において、対照齧歯類よりも20%~40%(±5%)短い結腸長を呈する。他の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、疾患状態(例えば、DSSまたはオキサゾロン処置後)において、対照齧歯類よりも30%~40%(±5%)短い結腸長を呈する。他の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、疾患状態(例えば、DSSまたはオキサゾロン処置後)において、対照齧歯類よりも20%~30%(±5%)短い結腸長を呈する。他の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、疾患状態(例えば、DSSまたはオキサゾロン処置後)において、対照齧歯類よりも25%~35%(±5%)短い結腸長を呈する。
【0098】
本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、定常状態では自然発生的疾患を発症しないが、実験的に誘発された皮膚炎症および腸炎症モデル(例えば、それぞれ、乾癬およびIBDの前臨床モデル)において、皮膚炎症および腸炎症の増強を呈することが示されている。
【0099】
一部の実施形態では、DSSは、慢性大腸炎を誘発するために使用される。一部の実施形態では、DSSは、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2.5%の飲料水を通して齧歯類に投与される。一部の実施形態では、DSSは、10%、9%、8%、7%、6%、または5%以下の飲料水を通して齧歯類に投与される。一部の実施形態では、1.5%~3%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、0.5%~3%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、1%~3%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、2%~3%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、2.5%~3%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、0.5%~2.5%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、0.5%~2%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、0.5%~1.5%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、0.5%~1%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、1%~2.5%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。一部の実施形態では、1.5%~2%のDSSを含有する飲料水が齧歯類に与えられる。
【0100】
一部の実施形態では、DSSの投与は、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、またはそれ以上の期間にわたって実施することができ、連続であっても、DSSの投与なしの中断を挟むこともできる。一部の実施形態では、齧歯類に、2.5% DSSを含有する飲料水を7日間、次いで1.5% DSSを5日間、次いで分析の27~30日前まで蒸留水を与える。一部の実施形態では、齧歯類に、3%
DSSを含有する飲料水を7日間、次いで2% DSSを13日間、次いで分析の27~30日前まで蒸留水を与える。一部の実施形態では、DSS は全期間にわたって与えられない。一部の実施形態では、齧歯類に、2.5% DSSを含有する飲料水を7日間、次いで蒸留水を11日間、次いで1.5% DSSを4日間、次いで蒸留水を5日間、分析前の合計27日間、与える。一部の実施形態では、齧歯類に、3% DSSを含有する飲料水を7日間、次いで水を13日間、次いで2% DSSを4日間、次いで蒸留水を6日間、分析前30日まで与える。
【0101】
一部の実施形態では、オキサゾロンは、大腸炎を誘発するために使用される。一部の実施形態では、オキサゾロンは、大腸炎を誘発するために、齧歯類に直腸内投与される。一部の実施形態では、オキサゾロンは、大腸炎を誘発するために、齧歯類の直腸内に三回投与される。一部の実施形態では、オキサゾロンは、直腸内投与の前に、前感作のために齧歯類に局所適用される。一部の実施形態では、オキサゾロンは、剃いだ皮膚上にオキサゾロン溶液(例えば、100%エタノールに溶解したオキサゾロン3%溶液)を局所適用することによって前感作のために齧歯類に投与され、その後、オキサゾロンの溶液(例えば、50%エタノールに溶解した1.0~2.0% オキサゾロン)の直腸内投与を三回実施する。一部の実施形態では、前感作は、100%エタノールに溶解した1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、または4.0%のオキサゾロン溶液を用いる。一部の実施形態では、直腸内投与は、50%エタノールに溶解されたオキサゾロンの1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%または2.0%溶液を用いる。一部の実施形態では、直腸内投与は、前感作の3、4、5、6または7日後など、数日後に実施される。一部の実施形態では、オキサゾロンは、剃いだ皮膚上にオキサゾロン溶液(例えば、100%エタノールに溶解したオキサゾロン3.0%溶液で局所適用することによって齧歯類に投与され、その後、50%エタノールに溶解した1.0~2.0% オキサゾロン溶液の三回の直腸内投与を5日、6日、および7日目に実施する。
【0102】
一部の実施形態では、大腸炎の程度は、以下の特徴を採点することによって評価される:炎症(重症度および程度)、上皮変化(びらん/潰瘍)、陰窩の変化(陰窩欠損、陰窩炎/陰窩膿瘍、再生/過形成、杯細胞欠損)、粘膜下浮腫、およびスライド上の全組織面積に対する病理を有する組織面積の割合。0~4のスコアリングスケールが使用される:0~0-正常範囲内、1-最小限、2-軽度、3-中等度、4-重度。総病理スコアを、個々の病理組織学的特徴スコアを加算して、各齧歯類について計算する。一部の実施形態では、大腸炎は、糞便試料中のリポカリン-2(Lcn2)のレベルを測定することによって評価される。一部の実施形態では、大腸炎は、結腸ホモジネート中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性のレベルを測定することによって測定される。一部の実施形態では、大腸炎は、結腸ホモジネート中の炎症性サイトカインのレベルを測定することによって評価される。
【0103】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じDSS投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%以上の腸病理スコアの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じDSS投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、50%~400%、50%~300%、50%~200%、50%~100%、100%~400%、100%~300%、100%~200%、または200%~400%、腸病理スコアの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じDSS投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%以上、結腸ホモジネートにおけるミエロペルオキシダーゼ(「MPO」)レベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じDSS投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、50%~400%、50%~300%、50%~200%、50%~100%、100%~400%、100%~300%、100%~200%、または200%~400%、結腸ホモジネートにおけるMPOレベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じDSS投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%以上、糞便Lcnのレベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じDSS投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%以上、結腸ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーター(例えば、KC-GRO、IL-6、IL-1β、TNFα、IL-21、IL-12p40、IL-17f、IL-17a、およびIL-17c)のmRNA発現の増加および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、例えば、20%~900%、20%~800%、20%~700%、20%~600%、20%~500%、20%~400%、20%~300%、20%~200%、または20%~100%など、結腸ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーターのmRNA発現および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、例えば、30%~900%、30%~800%、30%~700%、30%~600%、30%~500%、30%~400%、30%~300%、30%~200%、または30%~100%など、結腸ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーターのmRNA発現および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、例えば、40%~900%、40%~800%、40%~700%、40%~600%、40%~500%、40%~400%、40%~300%、40%~200%、または40%~100%など、結腸ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーターのmRNA発現および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、例えば、50%~900%、50%~800%、50%~700%、50%~600%、50%~500%、50%~400%、50%~300%、50%~200%、または50%~100%など、結腸ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーターのmRNA発現および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。
【0104】
一部の実施形態では、IMQは、皮膚炎症を誘発するために齧歯類の皮膚に局所的に適用される。一部の実施形態では、IMQは、局所適用に適した担体、例えば、クリーム、ゲル、市販のIMQクリーム(例えば、アルダラからのもの)などで提供される。一部の実施形態では、皮膚炎症を誘発するために、IMQは、1~5mg、2~4mg、または3~3.5mgの1日用量で、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日以上、齧歯類の皮膚に毎日適用される。一部の実施形態では、約3.125mgの1日用量による4日間の毎日の局所適用は、急性皮膚炎症を誘発するのに好適であり、約3.125mgの1日用量による9日間の毎日の局所適用は、慢性皮膚炎症を誘発するのに好適である。一部の実施形態では、IMQは、分析またはアッセイが実施される前、4~5日連続のIMQ適用、その後各回につき2日間のIMQ不適用により、複数回(例えば、2、3または4回)にわたって局所的に適用される。特定の実施形態では、IMQは、分析前、5日連続のIMQ適用、次いで第一回について2日間のIMQ不適用、その後第二回について4日連続のIMQ適用により、二回局所的に適用される(図7A~7Cを参照)。一部の実施形態では、炎症の重症度は、(i)紅斑、落屑および皮膚の肥厚の測定に基づいて臨床Psoriasis Area and Severity Index(PASI)の適合版を用いること;(ii)例えば、錯角化症、正常角化、マンロー微小膿瘍、アカントーシス、皮膚潰瘍形成、真皮および皮下組織の炎症、真皮と皮下組織における血管うっ血、毛包角化症および上皮過形成を評価するため、ならびに総病理スコアを判定するための皮膚組織の病理組織学的分析;(iii)例えば、特にCxcl1、IL-17f、IL-17a、IL-23a、S100A8およびDefb4のmRNA発現および/またはタンパク質レベルを含む、皮膚ホモジネートにおける炎症促進性メディエーターのmRNA発現および/またはタンパク質レベルを測定すること;ならびに(iv)(i)~(iii)の組み合わせにより、評価され得る。
【0105】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じIMQ投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%以上など、皮膚病理スコアの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、同じIMQ投与を受けた野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%以上など、皮膚ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーター(例えば、限定するものではないが、Cxcl1、IL-17f、IL-17a、IL-23a、S100A8およびDefb4)のmRNA発現および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は定常状態で、定常状態の野生型対照齧歯類と比較して、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%以上など、皮膚ホモジネートにおける一つ以上の炎症促進性メディエーター(例えば、限定するものではないが、Cxcl1、IL-17f、IL-17a、IL-23a、S100A8およびDefb4)のmRNA発現および/またはタンパク質レベルの増加を呈する。
【0106】
IMQ誘発性皮膚炎症については、一匹のIl1rl2ヒト化マウスは、皮膚における炎症促進性分子の組織病理およびRNA発現に反映されるように、野生型齧歯類と同様の表現型を呈した(図3Dおよび3E)。一方、DITRA様マウス(すなわち、ヒト化Il1rl2およびヒトIL1F6、IL1F8、およびIL1F9を含む四重ヒト化マウス)は、IMQ適用後、WTマウスおよび1Hマウスの両方と比較して、皮膚炎症が増加した(図3Dおよび3E)。
【0107】
遺伝子改変齧歯類の組織および細胞
一部の実施形態では、本明細書に記載される齧歯類動物からの単離された細胞または組織が本明細書に開示される。一部の実施形態では、細胞は、樹状細胞、リンパ球(例えば、B細胞またはT細胞)、マクロファージ、および単球から選択される。一部の実施形態では、組織は、脂肪、膀胱、脳、乳房、骨髄、目、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、膵臓、血漿、血清、皮膚、脾臓、胃、胸腺、精巣、卵子、およびこれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、単離された細胞または組織は、そのゲノムに、本明細書に記載の四重ヒト化特徴を含む。
【0108】
四重ヒト化齧歯類を作製するための組成物および方法
本開示のさらなる態様は、上述の遺伝子改変齧歯類を作製するための方法、ならびに遺伝子改変齧歯類の作製における使用に適した核酸ベクターおよび齧歯類胚性幹細胞を目的としている。
【0109】
四重ヒト化齧歯類、すなわちヒト化Il1rl2およびヒトIL1F6、IL1F8、およびIL1F9遺伝子を含む齧歯類は、単一のIl1rl2ヒト化齧歯類系統、およびIl1f6、Il1f8、およびIl1f9の三重ヒト齧歯類系統を作製し、次いで、単一ヒト化齧歯類系統と三重ヒト齧歯類系統を繁殖させて、四重ヒト化齧歯類を得ることによって作製することができる。「繁殖する(breeding)」または「交配する(crossing)」という用語は、本明細書で齧歯類に関連して使用される場合、齧歯類を交尾させて子孫を作ることを指す。当業者であれば、ホモ接合性を達成するために、複数の交配が必要な場合があることを理解するであろう。
【0110】
一部の実施形態では、齧歯類座位に組み込まれることが望ましいヒトヌクレオチド配列を含む標的ベクターが本明細書に開示される。一部の実施形態では、ヒトヌクレオチド配列は、ヒトIL1RL2の外部ドメインと実質的に同一な外部ドメインをコードするヒトIL1RL2遺伝子のヌクレオチド配列、例えば、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8を含むヌクレオチド配列であり得る。一部の実施形態では、ヒトヌクレオチド配列は、ヒトIL-36αのコード配列、ヒトIl-36βのコード配列、およびヒトIL-36γのコード配列の相補鎖を包含するヌクレオチド配列であり得る。標的化ベクターはまた、相同アームとしても知られる、組み込まれるヒトヌクレオチド配列に隣接する5’および3’齧歯類配列を含み、相同アームは、相同組み換えならびにヒトヌクレオチド配列の標的齧歯類座位(例えば、Il1rl2座位、または齧歯類Il1f6、Il1f8、およびIl1f9遺伝子が位置する座位)への組み込みを介在する。一部の実施形態では、5’および3’の隣接齧歯類配列は、ヒトヌクレオチド配列によって置換される標的齧歯類座位において、対応する齧歯類ヌクレオチド配列に隣接するヌクレオチド配列である。例えば、齧歯類の外部ドメインをコードするヌクレオチド配列(例えば、齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン3~8)が、ヒト外部ドメインをコードする配列(例えば、ヒトIL1RL2遺伝子のエクソン3~8)で置換される実施形態では、5’隣接配列は、齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン1~2を含むことができ、3’隣接配列は、齧歯類Il1rl2遺伝子のエクソン8の下流の残りのエクソンを含むことができる。三つ全てのIL-36リガンドをコードする齧歯類ヌクレオチド配列がヒトヌクレオチド配列で置換される一部の実施形態では、5’隣接配列は、Il1f6遺伝子のコード配列の上流の齧歯類ヌクレオチド配列を含むことができ、3’隣接配列は、Il1f9遺伝子のコード配列の上流の齧歯類ヌクレオチド配列を含むことができる。
【0111】
一部の実施形態では、標的化ベクターは選択マーカー遺伝子を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは一つ以上の部位特異的組み換え部位を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは、部位特異的組み換え部位に隣接した選択マーカー遺伝子を含み、その結果、選択マーカー遺伝子は、部位間の組み換えの結果として削除され得る。
【0112】
例示的な実施形態では、齧歯類ゲノム断片を担持する細菌人工染色体(BAC)クローンは、細菌相同組み換えおよびVELOCIGENE(登録商標)技術(例えば、参照により本明細書にその全体が援用される、米国特許第6,586,251号およびValenzuela et al.(2003)Nature Biotech.21(6):652-659を参照)を使用して改変され得る。結果として、齧歯類ゲノム配列は、元のBACクローンから削除され、ヒトヌクレオチド配列が挿入され、5’および3’齧歯類相同アームに隣接したヒトヌクレオチド配列を担持する改変BACクローンが得られる。一部の実施形態では、ヒトヌクレオチド配列は、cDNA配列または(i)ヒトIL1RL2の全部または一部(例えば、ヒトIL1RL2タンパク質の外部ドメイン)、または(ii)ヒトIL1F6、IL1F8、およびIL1F9の三つすべてをコードするヒトゲノムDNAであり得る。改変BACクローンは、直線化されると、齧歯類胚性幹(ES)細胞に導入することができる。
【0113】
一部の実施形態では、本発明は、改変齧歯類胚性幹(ES)細胞を作るための本明細書に記述された標的化ベクターの利用法を提供する。例えば、標的化ベクターは、例えばエレクトロポレーションによって齧歯類ES細胞に導入することができる。マウスES細胞及びラットES細胞は共に当技術分野で説明されている。例えば、マウスES細胞および遺伝子改変マウスを作製するVELOCIMOUSE(登録商標)法について記載する、US7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、及びUS2008-0078000A1(これらの全てが参照により本明細書に援用される);ラットES細胞および遺伝子改変ラットを作製するための方法を記載し、これを改変齧歯類胚作製に使用することができ、齧歯類動物を作製するのに使用することができる、US2014/0235933A1(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.),US2014/0310828A1(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.),Tong et al.(2010)Nature 467:211-215およびTong et al.(2011)Nat Protoc.6(6):doi:10.1038/nprot.2011.338(その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0114】
一部の実施形態において、ゲノムに組み込まれたヒトヌクレオチド配列を有するES細胞を選択することができる。一部の実施形態では、ES細胞は、齧歯類アレルの喪失および/またはヒトアレルの獲得アッセイに基づいて選択される。一部の実施形態では、次いで選択されたES細胞を、ドナーES細胞として、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、それら全体が参照により援用される、US7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、およびUS2008-0078000A1を参照)、または、両方のそれら全体が参照により援用される、US2014/0235933A1およびUS2014/0310828A1に記載の方法を使用することにより、桑実期以前の胚(例えば、8細胞期胚)への注入に使用する。一部の実施形態では、ドナーES細胞を含む胚は胚盤胞期までインキュベートし、次に代理母に移植して、完全にドナーES細胞に由来するF0齧歯類を産生する。ヒトヌクレオチド配列を保有する齧歯類の仔は、齧歯類アレルの消失および/またはヒトアレルの獲得のアッセイを使用した、尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型決定により特定することができる。
【0115】
一部の実施形態では、ヒト化遺伝子に対してヘテロ接合性の齧歯類を交配させ、ホモ接合性齧歯類を作製することができる。
【0116】
四重ヒト化齧歯類を用いる方法
本明細書に開示される齧歯類は、脱制御IL-36シグナル伝達に関連する疾患または状態の治療に有用な化合物を特定および試験するための有用なin vivoシステムおよび生体材料の供給源を提供する。
【0117】
「脱制御IL-36シグナル伝達に関連する疾患」とは、IL-36シグナル伝達の異常が発現する疾患を意味し、疾患を直接的または間接的に引き起こすか、疾患の症状を悪化させる可能性がある。脱制御IL-36シグナル伝達に関連する疾患の非限定的な例としては、汎発性膿疱性乾癬(GPPまたはDITRA)(それらの全体が参照により本明細書に援用される、Marrakchi S.et al.,N Engl J.Med.365:620-628(2011)およびOnoufriadis A.et al.,Am J.Hum Genet 89:432-437(2011))、掌蹠膿疱症(PPPP)(その全体が参照により本明細書に援用される、Bissonnette R.et al.,PLoS One 11:e0155215(2016))、炎症性腸疾患(IBD)(それらの全体が参照により本明細書に援用される、Medina-Contreras et al.,J Immunol 196:34-38(2016;Nishida A.et al.,Inflamm Bowel Dis 22:303-314(2016)およびRussell SE et al.,Mucosal
Immunol.9:1193-1204(2016))、関節リウマチおよび乾癬性関節炎(その全体が参照により本明細書に援用される、Frey S.et al.,Ann Rheum Dis 72:1569-1574(2013))、喘息、慢性閉塞性肺疾患(その全体が参照により本明細書に援用される、Chen H.et al.,J.Proteomics 75:2835-2843(2012))、慢性腎臓病(その全体が参照により本明細書に援用される、Shaik Y.et al.,Int J
Immunopathol Pharmacol 26:27-36(2013))、および魚鱗癬(その全体が参照により本明細書に援用される、Paller AS et
al.,J Allergy Clin Immunol 139:152-165(2017))を含む。
【0118】
一部の実施形態では、開示された齧歯類を使用して評価され得る化合物は、たとえば、限定するものではないが、小分子阻害剤、核酸系阻害物質(たとえば、siNRA、リボザイム、アンチセンス構築物など)、抗原結合タンパク質(たとえば、抗体またはその抗原結合断片)、またはブロッキングペプチド/ペプチド阻害剤などのIL-36シグナル伝達の候補阻害剤を含む。
【0119】
一部の実施形態では、候補阻害剤は、抗体またはその抗体結合断片である。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方が、本明細書に開示される齧歯類で試験されるのに好適である。一部の実施形態では、抗体は、ヒトIL-36Rタンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトIL-36Rタンパク質のIL1RL2サブユニットに特異的に結合する。
【0120】
候補化合物は、本明細書に開示される齧歯類において、例えば、IMQ誘発性皮膚炎症またはDSS誘発性腸炎症などの炎症を誘発し、候補化合物が誘発性炎症を治療または阻害することができるかどうかを判定することによって評価することができる。「治療する」または「阻害する」という用語は、重症度の改善、進行の緩和、誘発された炎症および症状の発生の排除、遅延または防止、またはそれらの組み合わせを含む。
【0121】
一部の実施形態では、齧歯類は、炎症を誘発する薬剤の投与前、投与時、または投与後に、候補化合物を投与される。候補化合物は、非経口および非経口でない投与経路を含む任意の所望の投与経路を介して投与することができる。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路は、例えば、経口、経鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、および/または静脈内注射による場合もある。
【0122】
一部の実施形態では、適切な対照齧歯類は、例えば、誘発された炎症に供されていないヒト化齧歯類、化合物または治療有効性を有するとは予想されない対照化合物(例えば、アイソタイプ対照抗体など)なしに誘発された炎症に供されたヒト化齧歯類、ならびに誘発された炎症および治療有効性があると知られている化合物に供されたヒト化齧歯類を含み得る。
【0123】
皮膚炎症に対する候補化合物の有効性を評価するために、化合物は、IMQ処置の前、間、または後に齧歯類に投与し得る。特定の実施形態では、候補化合物は、IMQが適用される皮膚領域またはその近くで皮下投与される。化合物は、その化合物を投与されない対照齧歯類と比較して、皮膚炎症を阻害する場合、有効であると考えられる。たとえば、化合物は、総病理スコアが10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少した場合(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%減少);または一つ以上の炎症促進性メディエーターの濃度が10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少した場合(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%減少)、有効と考えられる。
【0124】
大腸炎症に対する候補化合物の有効性を評価するために、化合物を、オキサゾロン処置の前、間、または後に齧歯類に投与し得る。一部の実施形態では、候補化合物は、DSS処置の開始後、数日間(例えば、5、6、7、8、または9日間)腹腔内投与される。一部の実施形態では、候補化合物は、オキサゾロン処置の間に複数回、例えば、オキサゾロンの局所適用の2~3日後、オキサゾロンの一回以上の直腸内投与時(例えば、オキサゾロンの初回直腸内投与時、およびオキサゾロンの三回目の直腸内投与時)に、腹腔内投与される。化合物は、その化合物を投与されない対照DITRA齧歯類と比較して、大腸炎を阻害する場合、有効であると考えられる。たとえば、化合物は、総病理スコアが10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少したとき(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%減少);一つ以上の炎症促進性メディエーターの濃度が15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少したとき(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%減少);糞便中Lcn2が10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少したとき(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%減少);結腸ホモジネートにおけるMPO活性が10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少したとき(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%減少);結腸長が10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上延長したとき(例えば、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、または30%~40%短縮);またはそれらの組み合わせのとき、有効であると考えられる。
【0125】
本明細書は、限定するものとして解釈すべきではない以下の実施例により、さらに例示される。全ての引用参考文献(本出願全体で引用される文献参照、発行特許、及び公表された特許出願を含む)は、それらの全体が参照により本明細書に明確に援用される。
【実施例0126】
実施例1.四重ヒト化マウス系統の作製
二つの遺伝子操作されたマウス系統:Il1rl2単一ヒト化マウス系統、およびIl1f6、Il1f8、Il1f9三重ヒト化マウス系統が、VelociGene(登録商標)技術(それらの全体が参照により本明細書に援用される、Poueymirou et al.,Nat Biotechnol.2007 Jan;25(1):91-9;Valenzuela et al.,Nat Biotechnol 2003 Jun;21:652-59)を用いて作製された。単一ヒト化系統および三重ヒト化系統を交配することによって、「四重ヒト化」系統が作製された。
単一ヒト化Il1rl2マウス系統の作製
【0127】
「単一ヒト化」系統は、マウスIl1rl2の細胞外ドメインをコードするマウスIl1rl2遺伝子(インターロイキン-1受容体様2タンパク質)の一部分を、ヒトIL1RL2の対応する細胞外ドメインをコードするヒトIL1RL2遺伝子の断片(それぞれ、介在イントロンおよび隣接イントロンの部分を有する、Il1rl2/IL1RL2エクソン3~8)で置換した(図1A)。得られたヒト化遺伝子は、マウスの細胞内シグナル伝達特異性を維持するキメラ受容体をコードし、一方で細胞外ドメインをヒト化させ、それぞれ、IL1F6、IL1F8、およびIL1F9(IL36A、B、およびGとも呼ばれる)に結合することができるようにする。ホモ接合性のヒト化Il1rl2マウスは、Il1rl2hu/huと称される。
【0128】
さらに具体的には、マウスIl1rl2遺伝子を含有するマウス細菌人工染色体(BAC)クローンRP23-235L22を使用して、以下のように改変し、標的ベクターを提供した。DNA断片は、5’マウス相同ヌクレオチド配列、約32,389bpのヒトIL1RL2ゲノムDNA(イントロン2の3’346bp、全ての介在イントロンを有するエクソン3~8、およびイントロン8の5’ 1101bpを含有する)、約4,996bpの自動削除ネオマイシンカセット、および3’マウス相同配列を含むよう作製された(図1B)。このDNA断片を使用し、細菌細胞中での相同組み換えを介してBACクローンRP23-235L22を改変した。結果として、BACクローン中の外部ドメインをコードするマウスIl1rl2ゲノム断片(約25,324bp、マウスイントロン2の3’ 155bp、すべての介在イントロンを有するエクソン3~8、およびマウスイントロン8の5’642bpを含む)が、その後自己削除ネオマイシンカセットに続く、ヒトIL1RL2ゲノムDNAにより置換された(図1B)。得られた改変BACクローンは、5’から3’に、(i)マウスゲノムDNA約112.2kb、マウスIl1rl2エクソン1~2およびイントロン2の5’部分を含有する5’マウス相同アーム;(ii)イントロン2の3’部分、エクソン3~8、およびイントロン8の5’部分を含むヒトIL1RL2ゲノム断片;(iii)約4,996bpの自己削除ネオマイシンカセット、次いで(iv)エクソン8の下流の残っているマウスIl1rl2エクソン、全ての介在イントロンおよび3’UTRを含む31.3kbの3’マウス相同アームを含んでいた。図1Bを参照。接合部配列もまた図1Bの下部に記載される。
【0129】
上述のヒト化Il1rl2遺伝子を含有する改変BACクローンを標的ベクターとして使用して、マウスF1H4胚性幹細胞をエレクトロポレーションし(50% C57BL/6NTac/50%129S6/SvEvTac)、ヒト化Il1rl2遺伝子を含む改変ES細胞を作製した。ヒト化Il1rl2遺伝子を含む明確に標的化されたES細胞が、ヒトIL1RL2配列の存在を検出するアッセイ(Valenzuela et al.,上記参照)によって特定され、マウスIl1rl2配列の喪失および/または保持を確認した。上述のヒト化を確認するために使用されたプライマーおよびプローブは図5に記載された。正しく標的化されたES細胞クローンが選択されると、ネオマイシン選択カセットは削除することができる。カセット削除後のヒト化Il1rl2座位を図1Cに示し、接合部配列もまた図1Cに示す。
【表5】
【0130】
選択したES細胞クローンを、Charles River Laboratories Swiss Websterアルビノマウス由来の8細胞胚に顕微注入し、100%標的細胞由来のF0 VelociMice(登録商標)を得た(Poueymirou
et al.2007、上記参照)。ヒト化座位を保有するマウスを、ヒト遺伝子配列の存在を検出するアレルアッセイ(Valenzuela et al.,上記参照)の改良法を使用した、尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型同定によって再度確認し、同定した。ヒト化座位に対してホモ接合性の動物が、ヘテロ接合性動物の交配により作製された。
【0131】
結果として生じるヒト化/キメラIl1rl2受容体(配列番号7)、マウスIl1rl2タンパク質(配列番号4)、およびヒトIL1RL2タンパク質(配列番号2)のアミノ酸配列のアライメントが図1Dに提供される。
【0132】
三重ヒト化マウス系統の作製
マウスIl1f6、Il1f8、およびIl1f9遺伝子のそれぞれの完全なコード配列を、それぞれ、ヒトIL1F6、IL1F8、およびIL1F9遺伝子の完全なコード配列と置換した「三重ヒト化」系統を作製した。この戦略は、キメラIl1rl2受容体のヒト細胞外ドメインに結合することができるヒトリガンドをコードするヒト化遺伝子をもたらした。ホモ接合性ヒト化Il1f6、Il1f8、Il1f9マウスは、Il1f6hu/hu、Il1f8hu/hu、Il1f9hu/huと称される。
【0133】
さらに具体的には、マウスIl1f8、Il1f9、およびIl1f6遺伝子を含有するマウス細菌人工染色体(BAC)クローンRP23-90G23および遺伝子間配列を使用して、以下のように改変し、標的ベクターを提供した。DNA断片は、5’マウス相同ヌクレオチド配列、約88,868bpのヒトゲノムDNA(プロモーター、非翻訳領域、およびヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6のコード配列を含有)、約5,218bpの自己削除ハイグロマイシンカセット、および3’マウス相同配列を含むように作製された(図2B)。このDNA断片を使用し、細菌細胞中での相同組み換えを介してBACクローンRP23-90G23を改変した。結果として、BACクローン中の約76,548bpのゲノム断片が、ヒトゲノムDNAで置換され、自己削除カセットがその後に続いた(図2A~2B)。得られた改変BACクローンは、5’から3’の方向に、(i)約5.7kbのマウスゲノムDNAを含有する5’マウス相同アーム、(ii)約88,868bpのヒトゲノム断片(プロモーター、非翻訳領域、およびヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6のコード配列を含有する)、(iii)約5,218bpの自己削除ハイグロマイシンカセット、および約29.7bpの3’マウス相同配列を含んでいた。図2Bを参照。接合部配列もまた図2Bの下部に記載される。
【0134】
上述のヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6遺伝子配列を含有する改変BACクローンを標的ベクターとして使用して、マウスF1H4胚性幹細胞をエレクトロポレーションし(50% C57BL/6NTac/50%129S6/SvEvTac)、ヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6遺伝子配列を含む改変ES細胞を作製した。ヒトIL1F8、IL1F9、およびIL1F6遺伝子配列を含む明確に標的化されたES細胞が、ヒト配列の存在を検出するアッセイ(Valenzuela et al.,上記参照)によって特定され、マウス配列の喪失および/または保持を確認した。上述のヒト化を確認するために使用されたプライマーおよびプローブは図6に記載された。正しく標的化されたES細胞クローンが選択されると、ハイドロマイシン(hydromycin)選択カセットは削除することができる。カセット削除後のヒト化座位を図2Cに示し、接合部配列もまた図2Cに示す。
【表6】
【0135】
選択したES細胞クローンを、Charles River Laboratories Swiss Websterアルビノマウス由来の8細胞胚に顕微注入し、100%標的細胞由来のF0 VelociMice(登録商標)を得た(Poueymirou
et al.2007、上記参照)。ヒト化座位を保有するマウスを、ヒト遺伝子配列の存在を検出するアレルアッセイ(Valenzuela et al.,上記参照)の改良法を使用した、尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型同定によって再度確認し、同定した。ヒト化座位に対してホモ接合性の動物が、ヘテロ接合性動物の交配により作製された。
三重ヒト化マウス系統の作製
【0136】
「三重ヒト化」系統を、100% C57BL/6NTacバックグラウンドで両座位に対するホモ接合性に繁殖された、単一ヒト化系統と三重ヒト化系統を交配させることによって作製した。ホモ接合性三重ヒト化系統は、Il1rl2hu/hu Il1f6hu/hu Il1f8hu/hu Il1f9hu/hu、または「DITRA様」マウスと称される。F0生殖細胞系において、自己削除技術により、Neoカセットおよびhygroカセットが削除された。
【0137】
実施例2.DITRAマウスの特徴解析
材料および方法
DITRA様マウスにおける急性および慢性IMQ誘発性皮膚炎症誘発および抗体治療-皮膚炎症を誘発するために、8~10週齢のヒト化DITRA様メスマウスは、IMQクリーム適用の三日前に、マウスヘアトリマー(Oster、MiniMax、Cat#
78049-100)を使用して背部毛を剃り、0.5gのVeet毛髪除去ゲルで皮膚を脱毛した。市販のIMQクリーム(5%)(アルダラ、GM Health Care Limited、NDC 99207-206-12、ロット# QJ044A)またはヴァセリン(CVS Pharmacy、NDC 59779-902-88)一日の局所用量62.5gを、マウスの剃った背部皮膚に、急性疾患誘発には四日間連続で、慢性疾患誘発には九日間適用した。アルダラ62.5mgの一日局所用量は、活性化合物3.125mgの一日用量に換算される。急性IMQ誘発性皮膚炎症では、抗ヒトIL-36R抗体を、IMQ適用開始の3日前および1日後に10mg/kgで背部皮膚に皮下投与した。対照群は、PBSおよび10mg/kgのhIgG4アイソタイプ対照注射を受けた。急性IMQ誘発性皮膚炎症では、同じ抗ヒトIL-36R抗体を、IMQ適用開始の4日前および8日後に10mg/kgで背部皮膚に治療的に皮下投与した。処置から二または三日後に、マウスの背部皮膚は紅斑、落屑及び肥厚の徴候を呈した。炎症の重症度を、臨床Psoriasis Area and Severity Index(PASI)の適合版を用いて毎日測定した。紅斑、落屑および肥厚を独立して0~4のスケール:0,なし、1,軽度、2,中等度、3,高度、および4,極めて高度、で採点した(参照によりその全体が本明細書に援用される、van der Fits et al.,J Immunol 2009,182:5836-5845)。急性IMQ誘発性皮膚炎症の4日目および慢性IMQ誘発性皮膚炎症の11日目に、キャリパー(Kaefer)を使用して皮膚の厚さを測定した。
【0138】
組織病理学-マウスの背部からの直径6mmの皮膚組織を10%緩衝ホルマリンで固定し、4~5μmのパラフィン包埋された切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。皮膚切片について、錯角化症、正常角化、マンロー微小膿瘍、アカントーシス、皮膚潰瘍形成、真皮および皮下組織の炎症、真皮および皮下組織の血管うっ血、毛孔性角化症および上皮過形成の有無について盲検的に評価した。0~4のスコアリングスケールを使用した:0-正常範囲内、1-最小限、2-軽度、3-中等度、および4-重度(その全体が参照により本明細書に援用される、van der Fits et al.,J Immunol 2009,182:5836-5845)。個々の病理組織学的特徴スコアを加算することにより、総病理スコアをマウスごとに計算した。データ解析をGraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用いて実施した。
【0139】
皮膚ホモジネートにおけるサイトカインの測定-マウスの背部から直径6mmの全層皮膚組織を採取し、T-per緩衝液(Thermo Scientific、Cat#378510、ロット#RF236217)、1×Halt Protease Inhibitor Cocktail(Thermo Scientific、Cat#87786、ロット#QG221763)および5M EDTA溶液(Thermo Scientific、Cat3 78429)を含む15mLの試験管に入れた。皮膚組織を、ポリトロン(PT10-35 GT-D、Cat#9158158)を使用して1分間、28000rpmで破壊し、氷上に置いた。作製された皮膚ホモジネートを、4℃で8分間、1500rpmで遠心分離し、上清を96ウェルプレートに回収した。皮膚ホモジネートを、タンパク質アッセイ色素ダイ(BioRad,Cat# 500-0006,ロット# 210008149)を使用してBradfordタンパク質アッセイに供し、総タンパク質含有量を定量した。皮膚ホモジネートにおけるサイトカイン濃度を、Proinflammatory Panel 1(マウス)マルチプレックスイムノアッセイキット(MesoScale Discovery,Cat# K15048D)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。簡潔に述べると、50μL/ウェルのキャリブレータおよび試料(Diluent 41で希釈)を、捕捉抗体で予めコーティングされたプレートに加え、700rpmで2時間振とうしながら室温でインキュベートした。次いで、プレートを0.05%(w/v)Tween-20を含有する1×PBSで3回洗浄し、続いてDiluent 45で希釈した25μLの検出抗体溶液を加えた。振とうしながら室温で2時間インキュベーションした後、プレートを3回洗浄し、各ウェルに150μLの2×Read Bufferを加えた。電気化学発光は、MSD Spector(登録商標)機器で直ちに読み取られた。データ解析をGraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用いて実施した。サイトカインレベルは、総タンパク質含有量に対して正規化された。
【0140】
DITRA様マウスにおける慢性大腸炎のDSS誘発性モデルの誘導と抗体処置-DSS媒介性大腸炎を誘発するために、12~20週齢で平均体重23g超の雌のDITRA様マウスに、飲料水中1.5~3%のDSS(Sigma-Aldrich Cat# 87786,ロット# PJ203966B)を7日間与え、次いで11~13日間蒸留水を与えた。第二サイクルのDSS処置(4日間)、続いて水(5~6日間)を27~30日目まで実施した。対照群は、試験期間中、蒸留水を与えられた。抗ヒトIL-36R抗体およびmIL-12p40(Bioxcell Cat#BE0051、クローンC17.8)抗体を、7日目から週一回、10mg/kgの用量で腹腔内投与した。対照群は、PBSならびにそれぞれのhIgG4およびratIgG2a(Bioxcell Cat#BE0089、クローン2A3)アイソタイプ対照注射を10mg/kgで投与した。マウスは毎日計量し、大腸炎の臨床徴候(例えば、便の硬さおよび便血)を監視した。27~30日目にマウスを安楽死させ、結腸長を測定した。DSS大腸炎を評価するため、以下の特徴を採点した:炎症(重症度および程度)、上皮変化(びらん/潰瘍)、陰窩の変化(陰窩欠損、陰窩炎/陰窩膿瘍、再生/過形成、杯細胞欠損)、粘膜下浮腫、およびスライド上の全組織面積に対する病理を有する組織面積の割合。0~4のスコアリングスケールが使用された:0~0-正常範囲内、1-最小限、2-軽度、3-中等度、4-重度。個々の病理組織学的特徴スコアを加算することにより、総病理スコアをマウスごとに計算した。
【0141】
糞便試料中のLcn-2の測定-試験を通して腸炎症を監視するために、個々のDITRA様マウスからの糞便を2mLのディープウェルプレートに毎週採取し、-80℃で保存した。試験終了時、異なる日に採取した糞便をホモジナイズした。簡潔に述べると、糞便試料を、0.1% Tween-20を含有する1mLのPBS、1×Halt Protease Inhibitor Cocktail(Thermo Scientific,Cat# 87786,ロット# QG221763)、および5MのEDTA溶液(Thermo Scientific,Cat3 78429)を用いて再構成した。2つのタングステン3mmカーバイドビーズをウェル(Qiagen,Cat# 69997)に追加した後、プレートを、4℃で一晩、最高速度でシェーカー上に置いた。均質な糞便懸濁液を、4℃で10分間にわたり1200rpmで遠心分離し、上清を96ウェルプレートに回収した。糞便リポカリン‐2(Lcn2)レベルを、マウスDuosetリポカリン-2/NGAL ELISAキット(R&D Systems,Cat#
DY1857,ロット# P116359)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。データ解析をGraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用いて実施した。
【0142】
結腸ホモジネートにおけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の測定-結腸の遠位部の断片を、T-per緩衝液(Thermo Scientific,Cat# 378510,ロット# RF236217)、1× Halt Protease Inhibitor Cocktail(Thermo Scientific,Cat# 87786,ロット# QG221763)および5M EDTA溶液(Thermo Scientific,Cat# 78429)を含有する2つのタングステン3mmカーバイドビーズ(Qiagen,Cat# 69997)を含む2mL微小遠心管に取り込んだ。Qiagen Tissue Lyser IIを用いて、27.5s-1の頻度で10分間、結腸組織を破壊した。管を、4℃で8分間にわたり1500rpmで遠心分離し、上清を96ウェルプレートに回収した。結腸ホモジネートを、タンパク質アッセイダイ(BioRad,Cat# 500-0006,ロット# 210008149)を使用してBradfordタンパク質アッセイに供し、総タンパク質含有量を定量した。結腸ホモジネート中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を、マウスMPO ELISAキット(HHycult Biotech,Cat# HK210-02,ロット#
21022KO617-Y)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。データ解析をGraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用いて実施した。MPOレベルは、総タンパク質含有量量に対して正規化された。
【0143】
結腸ホモジネートにおけるサイトカインの測定-結腸ホモジネート中のサイトカイン濃度を、Proinflammatory Panel 1(マウス)マルチプレックスイムノアッセイキット(MesoScale Discovery,Cat# K15048D)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。簡潔に述べると、50μL/ウェルのキャリブレータおよび試料(Diluent 41で希釈)を、捕捉抗体で予めコーティングされたプレートに加え、700rpmで2時間振とうしながら室温でインキュベートした。次いで、プレートを0.05%(w/v)Tween-20を含有する1×PBSで3回洗浄し、続いてDiluent 45で希釈した25μLの検出抗体溶液を加えた。振とうしながら室温で2時間インキュベーションした後、プレートを3回洗浄し、各ウェルに150μLの2×Read Bufferを加えた。電気化学発光は、MSD Spector(登録商標)機器で直ちに読み取られた。データ解析をGraphPad
Prism(商標)ソフトウェアを用いて実施した。サイトカインレベルは、総タンパク質含有量に対して正規化された。
【0144】
統計解析-テューキーの多重比較事後検定(*p<0.05,**p<0.005,***p<0.0005,****p<0.0001)を用いて、一方向ANOVA法により群内の統計的有意差を判定した(*-PBS処置群からの統計的有意差、および#-対応するアイソタイプ処置群からの統計的有意差の両方について同じ)。
【0145】
結果
ヒト化DITRA様マウスは、乾癬のIMQ誘発性モデルにおいて皮膚炎症の増強を呈する
【0146】
GPPまたはDITRA(「インターロイキン 36 受容体拮抗因子欠乏症」)患者に類似した脱制御IL-36Rシグナル伝達の役割を調べるために、実施例1に記載されるように、マウスはヒト化IL-36R(例えば、Il1rl2)およびヒトIL-36α、β、γリガンドを有すが、IL-36Raアンタゴニストは有さないように作製された。得られたhIL-36R/hIL-36α、β、γマウスは、DITRA患者に似た増強されたIL-36Rシグナル伝達をもたらす、ヒトIL-36Rに対するマウスIL36Raの親和性が20分の1に減少したことにより、DITRA様マウスと称された(DITRA患者のより詳細な検討については、例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される、Marrakchi et al.,N Engl J Med 2011,365:620-628を参照のこと)。
【0147】
無負荷状態では、DITRA様マウスは何の自然発生性疾患も発症しなかった。対照的に、表現型および組織学的特徴の点でヒト乾癬病変に非常に類似したIMQ誘発性乾癬様皮膚炎の前臨床モデルにおいて(乾癬様皮膚炎の特性に関するより詳細な考察については、それらの全体が参照により本明細書に援用される、van der Fits et al.,J Immunol 2009,182:5836-5845;Swindell et al.,PLoS One 2011,6:e18266を参照のこと)、DITRA様マウスは、そのWT同腹仔と比較して皮膚炎症の増強を呈した(図3A~3B)。簡潔に述べると、DITRA様マウスおよびWTマウスの剃った背部皮膚に、IMQを四日間連続で毎日適用した。5日目に、後の病理組織学的評価、タンパク質およびRNA単離のために皮膚を採取した。IMQ処置済みDITRA様マウスは、WT同腹仔と比較して、落屑、紅斑および皮膚肥厚などのより重度の乾癬病変を発症した(図3A)。臨床的特徴と一致して、皮膚の病理組織学的評価により、DITRA様マウスにおいて、より増強されたアカントーシス、錯角化症、およびケラチノサイト分化の乱れが明らかになった(図3B)。IMQ処置済みDITRA様マウスもまた、GPP患者と同様に、マンロー膿瘍または膿疱の数の顕著な増加を呈した。さらに、IMQの適用は、WT同腹仔と比較して、DITRA様マウスの皮膚における乾癬(例えば、IL-17a、IL-17f、IL-23a、S100A8、Defb4を含む炎症促進性分子)において脱制御された炎症促進性分子レベルの増加をもたらした(図3C)。さらに、IL-36α、IL-36β、およびIL-36γmRNAの発現は、IMQ処置済DITRA様マウスおよびIMQ処置済野生型マウスにおいて、ヴァセリン処置済DITRA様マウスおよびヴァセリン済処置野生型マウスと比較して等しく増加したが、IL-36αおよびIL-36βサイトカインのタンパク質レベルは、DITRA様マウスの炎症皮膚において、野生型マウスの炎症皮膚におけるレベルと比較して、2倍高い濃度で検出された。
【0148】
ヒト化DITRA様マウスは、DSS誘発性の慢性大腸炎モデルにおいて粘膜治癒に欠陥を示す-近年、患者のサブセットにおけるいくつかの研究において、IBDにおけるIL-36軸の脱制御発現とその腸炎症への寄与の可能性が示された。IL-36αおよびIL-36βの発現は、潰瘍性大腸炎患者の炎症粘膜において上昇することが示された(それらの全てが参照により本明細書に援用される、Medina-Contreras et al.,J Immunol 2016,196:34-38;Nishida et al.,Inflamm Bowel Dis 2016,22:303-314,およびRussell,Mucosal Immunol 2016,9:1193-1204を参照のこと)。前臨床モデルでは、IL-36R欠損症はDSS誘発性大腸炎およびオキサゾロン誘発性大腸炎から保護される(それらの全体が参照により本明細書に援用される、Medina-Contreras et al.,J Immunol 2016,196:34-38;Harusato et al.,Mucosal Immunol 2017,10:1455-1467を参照のこと)。定常状態で、DITRA様マウスは、自発性回腸炎/大腸炎を発症しなかったが、幼齢(3ヶ月および10ヶ月齢)で有意に短縮した結腸を呈した(図4Aおよび4B)。また、定常状態および野生型マウスと比較して、DITRA様マウスはIL-36サイトカインのレベルの上昇を示し、ならびにIL-17FおよびIL-17Aのレベルの上昇傾向、および結腸におけるIL-21レベルの低下を示した。
【0149】
腸炎症におけるIL-36軸の役割を評価するため、結腸上皮を損傷し(それらの全体が参照により本明細書に援用される、Okayasu et al.,Gastroenterology 1990,98:694-702,herein incorporated by reference in its entirety)および強力な炎症反応をトリガーする(Rakoff-Nahoum et al.,Cell 2004,118:229-241)DSSの経口投与により、化学的に誘発された腸管損傷モデルを用い、特に潰瘍性大腸炎においてIBDの主要な特徴を示している。DITRA様マウスおよびその共収容されたWT同腹仔を、2.5% DSSの7日間投与、その後の11日間の水(一回目)投与および1.5% DSSの4日間投与、その後の5日間の水(二回目)投与により、DSS誘発性慢性大腸炎レジメンに供した。疾患の急性期において、DITRA様マウスは、共収容されたWT同腹仔と類似した腸炎症を発症した(図5A)。興味深いことに、疾患の回復期において、DITRA様マウスは、持続的な体重減少(図5A)、結腸長の有意な短縮(図5B)、より重度の病理スコア(より重度の潰瘍形成、広範な上皮びらんおよび好中球浸潤に関連)(図5C)、糞便リポカリン-2(Lcn2)レベルおよびミエロペルオキシダーゼ活性の有意な上昇(図5D)、KC-GRO、TNF-αおよびIL-6などの炎症促進性サイトカインのアップレギュレーション、および結腸におけるIL-22レベルの低下(図5E)に反映されたDSS誘発性粘膜損傷からの回復不能を示した。さらに、DITRA様マウスは、約62.5%の死亡率を示した(データは示さず)。対照的に、WTマウスは大腸炎の回復期に回復し、死亡率は25%であった。また、腸上皮の完全性を、DITRA様マウスおよび野生型マウスをフルオレセインイソチオシアナート(FITC)-デキストランを用いて経口的に強制投与することによって調査した。FITC-デキトランレベルの有意な増加が、DSS処置の14日目にDITRA様マウスの血清中で観察され、腸損傷中の腸透過性の制御にIL-36経路が関与していることが示唆された。したがって、DITRA様マウスにおけるIL-36シグナル伝達の亢進は、腸炎症の増悪および粘膜修復の欠陥をもたらし、腸組織リモデリングに関与する機構の制御におけるIL-36の役割を示唆する。
【0150】
抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体は、予防的投与時にDITRA様マウスの急性皮膚炎症を阻害する-皮膚炎症におけるIL-36Rの役割を調べるために、乾癬様皮膚炎のIMQ誘発性モデルにおいて抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体を試験した。DITRA様マウスの剃った背部皮膚に、IMQを四日間連続で毎日適用した。抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体を、IMQ適用を開始する3日前(-3d)および1日後(d1)に10mg/kgで投与した。対照群は、PBSおよび10mg/kgでhIgG4アイソタイプ対照注射を受けた。5日目に、後の病理組織学的評価およびタンパク質単離のために皮膚を採取した。抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体は、PBS処置群およびアイソタイプ対照処置群と比較して、錯角化症およびマンロー微小膿瘍を含むIMQ誘発性総病理スコアを有意に減少させた(図6A)。また、ヒトIL-36R遮断は、KC-GRO、IL-6、およびTNFαにおける66~93%の減少をもたらした(図6B)。重要なことに、抗ヒトIL-36R抗体処置は、乾癬(例えば、IL-12p40、IL-17f、およびIL-17a)において脱制御された炎症促進性サイトカインのレベルを大幅に減少させ(図6B)、これらのサイトカイン経路間で厳密に制御された相互作用を示唆している。急性IMQ誘発性皮膚炎症の抑制における抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体の観察された有効性は用量依存的であり、10mg/kgの用量では、1mg/kgの用量と比較して、皮膚ホモジネートの病理スコア、皮膚の厚さ、および炎症促進性サイトカインのレベルに基づいて決定される皮膚炎症のより強力な阻害をもたらした(データは示していない)。
【0151】
抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体は、治療的投与で慢性皮膚炎症を阻害する-in vivoでのヒトIL-36Rアンタゴニズムの治療有効性をさらに検討するために、同じ抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体を慢性IMQ誘発性皮膚炎症モデルで試験した。二週間にわたり、DITRA様マウスの剃った背部皮膚に、九日間を二回、間に無処置の二日間を挟んでIMQを適用した。抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体を、IMQ適用の開始5日目および9日後に10mg/kgで皮下投与した。対照群は、PBSおよび10mg/kgでhIgG4アイソタイプ対照注射を受けた。12日目に、皮膚の厚さを測り、後続の病理組織学的評価およびタンパク質単離のために組織を採取した。急性IMQ誘発性炎症と同様、長期のIMQ適用は、DITRA様マウスの皮膚における炎症促進性メディエーターのアップレギュレーションをもたらした(データは示さず)。抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体は、DITRA様マウスにおけるIMQ誘発性皮膚厚および病理病変スコアの低下において有意な有効性を示した(それぞれ図7Aおよび7B)。さらに、抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体の投与は、DITRA様マウスの皮膚における炎症促進性サイトカインのIMQ誘発性産生の有意な阻害をもたらした(図7C)。
【0152】
全体として、データは、インビボでの急性および慢性IMQ誘発性皮膚炎症の改善における抗ヒトIL-36R抗体の予防的および治療的有効性を示した。
【0153】
抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体は、治療的投与において、DITRA様マウスのDSS誘発性慢性大腸炎を改善する-DITRA様マウスにおいて、IL-36シグナル伝達の増強の結果として粘膜治癒の欠陥を示し、IL-36遮断が観察された表現型を救済するかどうかをさらに調査した。DITRA様マウスを、3% DSSを7日間、次いで水を13日間、二サイクル投与することにより、慢性DSS誘発性大腸炎に供した。同じ抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体および抗mIL-12p40モノクローナル抗体(クローン病の治療に承認されているウステキヌマブのマウスサロゲート)を、10mg/kgでの隔週投与を7日目から開始した。対照群は、PBSおよび対応するhIgG4およびラットIgG2aアイソタイプ対照注射を10mg/kgで受けた。抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体を用いた処置は、DITRA様マウスがDSS誘発性粘膜損傷から回復できるように救済し、DITRA様マウスにおけるPBSおよびアイソタイプ対照処置と比較して疾患重症度を低下させた(図8A)。疾患の異なるステージの腸炎症を監視するために、個々のマウスの糞便を毎週収集し、腸損傷における炎症の非侵襲的バイオマーカーである糞便リポカリン-2(Lcn2)タンパク質を測定した(例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Thorsvik et al.,J Gastroenterol Hepatol 2017,32:128-135)。図8Bに示す通り、PBS処置群、hIgG4処置群、およびラットIgG2a処置群は、水のみの群と比較して17、23、および30日目に糞便Lcn2レベルの有意なアップレギュレーションを呈した。驚くべきことに、抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体の投与は、PBS処置群およびアイソタイプ処置群と比較して、Lcn2レベルの有意な低下をもたらした。糞便Lcn2レベルの持続的な低下が、抗ヒトIL-36抗体処置群において、17、23、および30日目に観察された(図8B)。
【0154】
さらに、抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体を用いたhIL-36R遮断は、DSS処置済DITRA様マウスの結腸において、結腸長の延長(図8C)およびミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の低下(図8D)および炎症促進性サイトカインの61~95%の減少(図8E)をもたらした。抗ヒトIL-36Rモノクローナルは、DSS誘発性慢性大腸炎の改善においてIL-12p40遮断と同程度の有効性を示し、同様に、DITRA様マウスの結腸における、糞便Lcn2、MPO活性および炎症促進性サイトカインの減少にも反映された(図8A-8E)。
【0155】
オキサゾロン誘発性大腸炎におけるIL-36R遮断-IL-36R遮断の有効性は、ヒト潰瘍性大腸炎と組織学的に類似したIBDの別の前臨床モデルであるオキサゾロン誘発性大腸炎で試験された(その全体が参照により援用される、Heller et al.,Immunity 17,629-638(2002))。抗ヒトIL-36R抗体の予防的投与は、平均体重および平均結腸長の減少に反映されるように、DITRA様マウスにおけるオキサゾロン誘発性疾患重症度を、PBSおよびアイソタイプ対照処置群と比較して有意に低下させた(図9A~9B)。さらに、IL-36Rアンタゴニズムは、オキサゾロン処置済DITRA様マウスの結腸におけるIL-4およびTNF-αのレベルの有意な低下をもたらした(図9C)。
【0156】
特許、特許出願、公開特許出願、アクセッション番号、技術論文および学術論文を含む様々な公表文献が、本明細書に引用される。これら引用された各公表文献は、本明細書においてその全体で、すべての目的に対し、参照により援用される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D-1】
図2D-2】
図3A-C】
図3D-E】
図4
図5A-C】
図5D-E】
図6
図7
図8A-B】
図8C-E】
図9
【配列表】
2024105711000001.app
【外国語明細書】