(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105726
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】溝付き化粧板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/04 20060101AFI20240730BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04F15/04 E
E04F15/02 A
E04F15/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086181
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2020196359の分割
【原出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】吉山 恭平
(57)【要約】
【課題】溝内においても塗膜の厚さが均一に形成される溝付き化粧板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】木質基材1の表面に化粧材2を貼着し、その上から化粧材の一部を切除して溝3を形成し、溝底面3bから木質基材の裏面に向けて該裏面に達しない深さまで延長する複数の微小孔6を形成した後、溝を含めた表面に塗料4を塗布して塗膜5を形成して、溝付き化粧板を製造する。溝側面3a,3aに塗布した塗料が溝底面に流れ落ちても、過剰分の塗料が微小孔に入り込むので、全体に略均一の厚さの塗膜が形成される。微小孔に入り込んだ塗料は硬化して孔内硬化部7となって塗膜と一体化するので、アンカー効果により塗膜が剥がれにくくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の表面に溝が形成されると共に溝を含めた表面に塗膜が形成されてなる溝付き化粧板であって、溝の少なくとも底部から木質基材の裏面に向けて該裏面に達しない深さまで延長する微小孔が複数形成され、微小孔に入り込んだ塗料が硬化して形成された孔内硬化部が溝内面を被覆する塗膜と連続していることを特徴とする溝付き化粧板。
【請求項2】
前記微小孔が木質基材の表面に対して略垂直方向に延長するものとして形成されることを特徴とする、請求項1記載の溝付き化粧板。
【請求項3】
木質基材の表面に、該表面に対して傾斜する一対の側面と、該表面と略平行な底面とを有して略逆台形の断面形状を有する溝が形成され、この溝の少なくとも底面に前記微小孔が形成されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の溝付き化粧板。
【請求項4】
前記微小孔が、溝の側面を含めた溝内面の全領域に形成されることを特徴とする、請求項3記載の溝付き化粧板。
【請求項5】
木質基材の表面に化粧材が設けられ、前記溝は、化粧材の表面から木質基材の内部に向けて形成されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか記載の溝付き化粧板。
【請求項6】
木質基材の表面に溝を形成し、溝の少なくとも底部から木質基材の裏面に向けて該裏面に達しない深さまで延長する複数の微小孔を形成した後、溝を含めた表面に塗料を塗布して塗膜を形成することを特徴とする、溝付き化粧板の製造方法。
【請求項7】
木質基材の表面に化粧材を貼着し、その上から化粧材の一部を切除して前記溝を形成し、溝内に露出する化粧材の切除された端部にも塗料を塗布して塗膜を形成することを特徴とする、請求項6記載の溝付き化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝を有する表面に塗膜が形成されてなる溝付き化粧板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外観の見栄えや表面性状を向上させるなどの目的で、木質基材の表面に、木質基材の長手方向に平行な縦溝、短手方向に平行な横溝(たとえば特許文献1の「横溝16」)、格子状の溝、長手方向および/または短手方向に互い違いに表れるブロック状の溝などが形成されると共に、溝を含めた表面に塗装が施されてなる溝付き化粧板は公知であり、建築物の床材などに広く使用されている。
【0003】
このような溝付き化粧板は、たとえば、
図5に記載されるように、MDFや合板などの木質基材1の表面1a(
図5(a))に、突板、単板、化粧紙、オレフィンなどの樹脂系シートなどの化粧材2を貼着した(
図5(b))後、その表面2aから所定箇所において化粧材2を切除して木質基材1の内部に入り込む溝3(この例では断面逆台形状の溝)を形成し(
図5(c))、フローコーターなどの塗布装置を用いて溝3を含めた全表面に、UV硬化型ウレタン塗料や水溶性塗料などの塗料4を塗布し(
図5(d))、スポンジロールなどで余分な塗料4を掻き取った上で乾燥硬化させて、化粧材2の表面2aから溝3の側面3a,3aおよび底面3bにかけて連続して塗膜5を形成する(
図5(e))ことによって製造されている。このような製造方法は、下記特許文献2(段落0018,0021)などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-186180号公報
【特許文献2】特開2003-286768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法によると、溝3内における塗膜5の厚さが、溝側面3a,3aでは薄く、溝底面3bでは厚くなって均一にならないという問題があった。この現象は、溝側面3a,3aの傾斜が強い場合や、塗料4の粘性が比較的小さい場合により顕著に表れやすい。
【0006】
この状態が
図5(e)に示されており、溝側面3a,3aに塗布した塗料4の一部が溝側面3a,3aを伝って流れ落ちて溝底面3b上に溜まってしまうため、溝底面3b上の塗膜5が他の箇所よりも厚く形成される。このように、塗膜5の厚さが溝3内の各所で異なると、溝3内において幅方向や長さ方向で色の濃淡差(色むら)が生じて見栄えを低下させる。また、特に、溝3によって分断された化粧材2の切断面を含む溝3の上端付近において塗料4の付着量が不十分になって、化粧材2の切断面が露出したり、塗膜5が剥離しやすくなって浮き上がりや破れが生じることがあった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、溝内においても塗膜の厚さが均一に形成される溝付き化粧板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、木質基材の表面に溝が形成されると共に溝を含めた表面に塗膜が形成されてなる溝付き化粧板であって、溝の少なくとも底部から木質基材の裏面に向けて該裏面に達しない深さまで延長する微小孔が複数形成され、微小孔に入り込んだ塗料が硬化して形成された孔内硬化部が溝内面を被覆する塗膜と連続していることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載の溝付き化粧板において、前記微小孔が木質基材の表面に対して略垂直方向に延長するものとして形成されることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の溝付き化粧板において、木質基材の表面に、該表面に対して傾斜する一対の側面と、該表面と略平行な底面とを有して略逆台形の断面形状を有する溝が形成され、この溝の少なくとも底面に前記微小孔が形成されることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、請求項3記載の溝付き化粧板において、前記微小孔が、溝の側面を含めた溝内面の全領域に形成されることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか記載の溝付き化粧板において、木質基材の表面に化粧材が設けられ、前記溝は、化粧材の表面から木質基材の内部に向けて形成されることを特徴とする。
【0013】
本願の請求項6に係る発明は、木質基材の表面に溝を形成し、溝の少なくとも底部から木質基材の裏面に向けて該裏面に達しない深さまで延長する複数の微小孔を形成した後、溝を含めた表面に塗料を塗布して塗膜を形成することを特徴とする、溝付き化粧板の製造方法である。
【0014】
本願の請求項7に係る発明は、請求項6記載の溝付き化粧板の製造方法において、木質基材の表面に化粧材を貼着し、その上から化粧材の一部を切除して前記溝を形成し、溝内に露出する化粧材の切除された端部にも塗料を塗布して塗膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溝の少なくとも底部から木質基材の裏面に向けて該裏面に達しない深さまで延長する微小孔が複数形成されるので、溝底部に塗布された塗料の一部が微小孔に入って塗料だまりになることを防止する。これにより塗膜の厚さが均一化されるので、溝内の色むらが防止ないし軽減される。また、微小孔に入り込んだ塗料が硬化して形成された孔内硬化部が、溝内面を被覆する塗膜に連続して形成されるので、アンカー効果によって塗膜の剥離強度が増大し、塗膜の剥離を防止することができる。
【0016】
また、木質基材の表面に化粧材が設けられ、化粧材の表面から木質基材の内部に向けて溝が形成される溝付き化粧板においても、溝の開口端近くで露出する化粧材の切断面にも略均一な塗膜が連続して形成されるので、該切断面が露出することによる見栄えの低下や塗膜の剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による溝付き化粧板の製造方法を示す工程図である。
【
図2】本発明の他実施形態(実施例2)による溝付き化粧板の製造方法を示す工程図である。
【
図3】本発明の他実施形態(実施例3)による溝付き化粧板の製造方法を示す工程図である。
【
図4】本発明の他実施形態(実施例4)による溝付き化粧板の製造方法を示す工程図である。
【
図5】従来技術による溝付き化粧板の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明について詳述する。
【実施例0019】
本発明の一実施形態による溝付き化粧板の製造方法について、その工程図である
図1を参照して説明する。従来技術(
図5)との対比を明確にするため、同一または対応する部材・要素には
図5と同一の符号が付されている。
【0020】
MDFや合板などの木質基材1の表面1a(
図1(a))に、突板、単板、化粧紙、オレフィンなどの樹脂系シートなどの化粧材2を貼着した(
図1(b))後、その表面2aから所定箇所において化粧材2を切除して木質基材1の内部に向けて溝3(この例では断面逆台形状の溝)を形成する(
図1(c))。
図1(a)から
図1(c)までの工程は、従来技術による
図5(a)から
図5(c)までの工程と実質的に同じである。
【0021】
次いで、溝側面3a,3aおよび溝底面3bから木質基材1の内部に向けて微小孔6を複数形成する(
図1(d))。微小孔6の孔径、深さ、数などは、後述する効果が得られるように適宜決定されるが、一般に、孔径は30~80μm、好ましくは40~70μmであり、深さは0.1~1.5mm、好ましくは0.2~0.8mmであり、数は50~1000個/cm
2とすることができる。微小孔6の断面形状は特に限定されないが、円形が好ましい。また、微小孔6を形成する手段は特に限定されないが、たとえば、UVレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザーなどのレーザー光を照射するレーザー光照射装置を用いることができる。この実施例では、UVレーザー光照射装置から垂直にレーザー光を照射して、深さ0.7mm、孔径50μmの微小孔6を500個/cm
2の密度になるように形成した。この実施例では、溝側面3a,3aおよび溝底面3bにおいてそれぞれ溝幅方向に等間隔に複数の微小孔6を形成し、さらに同じ溝幅方向位置において溝長さ方向に等間隔で多数の微小孔6を形成して、上記密度になるようにした。
【0022】
このようにして溝3の内面に多数の微小孔6を形成した後、フローコーターなどの塗布装置を用いて、溝3を含めた全表面に、UV硬化型ウレタン塗料や水溶性塗料などの塗料4を塗布する(
図1(e))。この塗料塗布工程自体は、従来技術による塗料塗布工程(
図5(d))と実質的に同じであるが、溝3の内面から木質基材1に向けて微小孔6が形成されているので、溝側面3a,3aおよび溝底面3bにおける塗料4の塗布状態ないし付着状態が異なる。
【0023】
より詳しく説明すると、
図1(e)は、塗料4を塗布した直後の状態を示し、溝側面3a,3aおよび溝底面3bに塗布された塗料4は、まだ微小孔6に入り込んでいないが、溝3の回りの化粧シート表面2aに塗布された塗料4の一部が溝3内に流れ込むので、この時点では、化粧シート表面2a上では比較的薄く塗料4が付着し、溝3の内面(溝側面3a,3aおよび溝底面3b)では比較的厚く塗料4が付着している。
【0024】
その後若干の時間が経過するにつれて、溝側面3a,3aおよび溝底面3bに付着した塗料4の一部が徐々に微小孔6に入り込んでいくので、これらの上に付着する塗料4の量(厚さ)が徐々に減っていく。溝側面3a,3aに塗布された塗料4の一部は、溝側面3a,3aを伝って溝底面3bに流れ落ちるが、溝底面3bには多数の微小孔6が形成されているので、溝側面3a,3aを伝って溝底面3bに流れ落ちてきた塗料4の分も溝底面3bから微小孔6に入り込み、溝底面3b上に残存する塗料4の量が過度に増大することはない。これらの相乗効果によって、溝側面3a,3aと溝底面3bの上に付着する塗料4の量が平準化されて略同一の厚さとなる(
図1(f))。
【0025】
さらに、その後、スポンジロールなどで、化粧シート表面2aおよび溝3内面上の余分な塗料4が掻き取られるが、このときに、溝3の内部においては塗料4が溝側面3a,3aおよび溝底面3bに押し付けられることになるので、余分な量の塗料が微小孔6に入り込んでいく。これにより、塗料4を乾燥硬化させたときに、化粧材2の表面2aから溝3の内面(溝側面3a,3aおよび溝底面3b)にかけて連続して略均等の厚さを有する薄い塗膜5が形成される(
図1(g))。このようにして製造した溝付き化粧板においては、略均一の厚さの塗膜5が形成されているので、溝3内での色むらが防止ないし軽減され、見栄えが良好である。また、微小孔6に入り込んだ塗料4が硬化して形成された孔内硬化部7が、溝3の内面(溝側面3a,3aおよび溝底面3b)を被覆する塗膜5に連続して形成されているので、アンカー効果によって塗膜5が剥離しにくいものとなる。