(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105727
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】飲料調製用カプセルのための堆肥化可能頂部蓋構造
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20240730BHJP
A47J 31/40 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A47J31/06 320
A47J31/40 107
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024086260
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2022543474の分割
【原出願日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】20195814.7
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】ノルドクヴィスト, デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パヴァン, キアラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】調製飲料の品質及び持続性基準を維持し、カプセル全体に対して堆肥化可能な材料の使用を容易にするカプセルを提供する。
【解決手段】カプセル100は、チャンバ250を画定する側壁210、リム部211を有するカプセル本体200と、チャンバに流体を注入する注入壁220と、カプセル本体に接続されてチャンバを閉じる送出壁300を備え、送出壁は、カプセルに注入される流体の圧力上昇で開口要素との相互作用で開口する保持層320と、保持層に対してチャンバの反対側に設けられ送出壁を介して注出された飲料から粒子をろ過するフィルタ層310と、チャンバに出入りする液及びガスのバリア層と、少なくとも部分的に送出壁を覆い送出壁をカプセル本体に結合する第一接着剤層とを備え、フィルタ層、保持層、バリア層、及び、第一接着剤層のそれぞれは生分解性材料である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセル(100)であって、前記カプセル(100)は、
前記飲料の前記調製のための物質(500)を収容するためのチャンバ(250)を画定する側壁(210)及びリム部(211)を有するカプセル本体(200)と、
流体と前記物質(500)との相互作用で前記飲料を調製するために前記チャンバ(250)に流体を注入するための注入壁(220)と、
前記カプセル本体(200)に接続されて前記チャンバ(250)を閉じる送出壁(300)を備え、
前記送出壁(300)は、層状の様態で、
前記カプセル(100)に注入される前記流体の圧力上昇の影響下で、開口要素との相互作用で開口するように適合されている保持層(320)と、
前記送出壁(300)を介して注出された、調製された前記飲料から粒子をろ過するためのフィルタ層(310)であって、前記保持層(320)に対して前記チャンバ(250)の反対側に設けられた、フィルタ層(310)と、
前記チャンバ(250)に入る、並びに/又は前記チャンバ(250)を出る、液体及び/若しくはガス状物質に対してバリア機能を有する、水分及び/又は酸素バリア層と、
少なくとも部分的に前記送出壁(300)を、好ましくは前記送出壁(300)の前記保持層(320)側、好ましくは前記チャンバ(250)に向けられた保持層(320)を覆い、前記送出壁(300)を、前記カプセル本体(200)に、好ましくは前記リム部(211)に、結合するための、第一接着剤層と、を備え、
前記フィルタ層(310)、前記保持層(320)、前記バリア層、及び、前記第一接着剤層のそれぞれは、生分解性材料で形成されている、
カプセル(100)。
【請求項2】
前記送出壁は、前記保持層(320)と前記フィルタ層(310)との間に設けられ、前記保持層(320)と前記フィルタ層(310)とをそれらの対向する側で互いに少なくとも部分的に結合する第二接着剤層を備える、請求項1に記載のカプセル(100)。
【請求項3】
前記フィルタ層(310)及び前記保持層(320)の各々が、引張強度、延性、弾性、穿刺抵抗、密度、多孔性、並びに/又は、該当する場合に、繊維構造及び/若しくは繊維配向などの、それらのそれぞれの物理的特性のうちの少なくとも1つで区別される、異なる材料で作成された請求項1に記載のカプセル(100)。
【請求項4】
前記保持層(320)、好ましくは前記保持層(320)の前記材料が、1~20バール、より好ましくは10~20バール、最も好ましくは12~18バールの、前記チャンバ(250)内の上昇圧力に対して復元力があるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【請求項5】
前記保持層(320)が、堆肥化可能である材料、かつ/又は、規定の、好ましくは閉鎖繊維構造、例えば、重量の少なくとも50%が軟材パルプ、セルロース繊維、紙若しくはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)及びコポリマー、ポリブチレンサクシネート(PBS/PBS-A)、バイオポリエステル、セルロース酢酸、デンプン、ポリビニルアルコール(PVOH)、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマー、上述した材料の化合物及び/若しくは積層体に対応する繊維構造、を有する材料で作製され、並びに/又は
前記保持層(320)が、20~150g/m2、好ましくは30~100g/m2の坪量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【請求項6】
前記フィルタ層(310)が、木材若しくはサトウキビパルプ、セルロース繊維、レーヨン繊維、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-ブチレンアジペート)(PBS-A/PBSa)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、及び/若しくはポリ乳酸(PLA)などの、堆肥化可能及び/若しくは不織布材料で作製され、並びに/又は
前記フィルタ層(310)が、10~150g/m2、好ましくは20~100g/m2の坪量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【請求項7】
前記カプセル本体(200)、好ましくは前記側壁(210)、より好ましくは前記リム部(211)、及び/若しくは前記注入壁(220)が、水分及び/若しくは酸素に対して好ましくは双方向のバリアをもたらすため、並びに/又は前記カプセル本体(200)と前記注入壁(220)との間に封止界面を設けるための保護層(400)を備え、前記保護層(400)が、生分解性かつ好ましくは堆肥可能な材料、例えばバイオポリマー若しくはポリビニルアルコール(PVOH)、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマー、及び上述した材料の化合物若しくは積層体、で作製され、好ましくは前記保護層(400)が前記フィルタ層(310)及び/又は前記保持層(320)とは異なる材料で作製されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【請求項8】
前記カプセル本体(200)及び/又は前記注入壁(220)が、層状及び/又は積層構造を備え、好ましくは、前記カプセル本体(200)及び/又は前記注入壁(220)が、好ましくは積層成形パルプ繊維から作製され、かつ/又は前記カプセル本体(200)及び前記注入壁(220)が、別個の部品から構成されている、若しくは、例えば一つの部品として、一体的に形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【請求項9】
飲料生成マシンで飲料を調製するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のカプセル(100)の使用であって、
前記飲料生成マシンが、
カプセルホルダと、
前記カプセル(100)の前記チャンバ(250)内に流体を注入するための注入ノズルと
開口要素と、を備え、
前記カプセル(100)は、前記飲料生成マシン内に挿入され、前記送出壁の前記フィルタ層(310)が前記保持層(320)よりも前記開口要素に近くなるように配置され、
前記カプセル(100)の前記注入壁(220)が前記注入ノズルによって穿孔され、流体が前記チャンバ(250)内に注入され、前記流体が、前記カプセル(100)内に圧力の上昇を引き起こして前記送出壁(300)を前記飲料生成マシンの前記開口要素に対して押し付け、
前記調製された飲料は、前記保持層(320)内の開口部及び前記フィルタ層(310)の多孔質材料内の空洞を通過することによって前記カプセル(100)から排出される、使用。
【請求項10】
前記カプセルの抽出中に、前記保持層(320)が穿孔される一方、前記フィルタ層(310)は穿孔されない、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセル、カプセルを製造するための方法、及び飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセルの使用に関する。
【0002】
[技術背景]
飲料調製マシン用の使い捨て飲料カプセルは、当該技術分野において既知である。これらのカプセルは、コーヒー、茶、又はホットチョコレートのような飲料の一杯ごとの注出に一般的に使用され、それらの新鮮な味、フレーバーの可変性、及び飲料調製の利便性から人気を博している。
【0003】
通常、飲料成分を含有するカプセルは、飲料調製マシンのカプセルホルダに挿入されて、カプセルホルダを閉じると、飲料調製が開始される。水又はミルクなどの流体が、カプセル内に収容された飲料成分と相互作用するようにカプセルに送達されて、所望の飲料を生成する。十分な量の流体がカプセルを満たしたとき、カプセルは流体の圧力下で開口して、調製された飲料を放出する。例えば、カプセルの開口は、カプセル内での流体の圧力の上昇の影響を受けた力でカプセルの注出面をカプセルホルダ内に設けられた開口構造に押し当てて、注出面の破壊応力に達すると注出面が引き裂かれることによって、達成することができる。開口構造は、例えばピラミッド様要素といった多数の凸部や凹部の要素であり得て、その上に抽出面が延在して流体の内部圧力の影響下で破れる。そのような圧力制御された飲料調製には、高品質の飲料を生成することができるという利点がある。
【0004】
しかしながら、多くのパラメータ及び動的効果が、前述の開口構造を有する抽出面上のカプセルの開口プロセスに影響を与える可能性があり、したがって、開口プロセスにおける再現性及び一貫性は達成が困難であり、完成した飲料の結果に悪影響を及ぼし得る。
【0005】
特に、抽出面が、開口プロセス中にその崩壊を回避しながらカプセル内での圧力上昇を確実にするために、特定の量の強直さを示す必要があることが見出された。逆に、抽出面は、開口プロセスにおいて開口構造によって引き裂かれ得るように構成されるべきである。また、飲料成分からの粒子及び繊維が、調製された飲料の汚濁だけでなく、調製された飲料を飲料調製マシン外に注出するために提供されるカプセルの開口部及び/又は開口構造の妨害を回避するために、カプセルの内側に保持されることが望ましい。
【0006】
従来技術では、これらの技術的課題は、アルミニウムで作製された膜の注出面を、非常に正確に制御された厚さ、特に約30~40マイクロメートルで形成することによって対処している。アルミニウムは、高耐圧性、耐久性、柔軟性、軽量、長い保存可能期間の提供、及び調製された飲料の味が変化しないなどの多くの利点を提供する。残念ながら、多くの国でアルミニウムをリサイクルするためのシステムが存在しなかったり十分に進化していなかったり、又は実際に設置することが難しい消費者収集ステーションなどの追加の廃棄物廃棄システムの提供を必要とするため、アルミニウムカプセルはリサイクルすることが難しい。更に、カプセル用にアルミニウム地金を生成することは多量のエネルギーを必要とし、カプセルが首尾よくリサイクルされない場合には炭素排出量の増加につながる。
【0007】
したがって、最近、カプセルに使用する材料を代替材料に置き換えるための様々な試行がなされた。例えば、コーンスターチから作成されたバイオプラスチック、又はサトウキビ繊維から作製された乾燥パルプが、カプセル材料として使用するように提案された。しかしながら、そのような材料の欠点は、アルミニウムのような現在使用されている材料と同じ材料特性を有しないことである。例えば、代替材料から作製されたカプセルは、多くの場合、アルミニウムと同様の信頼性の高い酸素及び水分バリアをもたらさないため、保存可能期間が限られていることがよくある。
【0008】
特に、代替材料を用いた抽出面の設計が困難であると思われる。なぜなら、これらの新しい材料に、元のアルミニウム製抽出面に適用されている設計原理及び溶液を単純に転用することができないからである。例えば、既知のアルミニウムで形成された抽出面を紙ベースの材料に単に入れ替える試みは失敗したことが証明されている。調製された飲料の品質、風味の再現性及び飲料の品質一定化が既知のアルミニウムベースの抽出面によって設定された高標準と比べ物にならなかったためである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、比較用のアルミニウムカプセルによって設定された調製飲料の品質及び持続性基準を維持し、及び/又は超えながらも、カプセル全体に対して堆肥化可能な材料の使用を容易にする構成及び設計を有するカプセルを提供することである。
【0010】
これらの目的、及び説明を読むことで明らかとなる他の目的は、独立請求項の主題によって解決される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に言及する。
【0011】
[発明の概要]
本発明の第1の態様は、飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセルに関する。カプセルは、飲料の調製のための物質を収容するためのチャンバを画定する側壁を有するカプセル本体と、流体と物質との相互作用によって飲料を調製するためにチャンバに流体を注入するための注入壁と、を備える。カプセルは、カプセル本体に接続されてチャンバを閉じる送出壁を更に備える。送出壁は、層状様態で、カプセルに注入される流体の上昇圧力の影響下で、開口要素との相互作用で開口するように適合されている保持層と、送出壁を介して注出された、調製された飲料から粒子をろ過するためのフィルタ層と、を備える。フィルタ層及び保持層の各々は、生分解性材料で作製されている。ここで、フィルタ層は、保持層に対してチャンバの反対側に設けられている。
【0012】
ここで、「生分解性材料」という表現は、生物(微生物、例えば、細菌、真菌、又は藻類など)によって環境的に害のない製品に分解され得る任意の材料として理解され得る。このプロセスは、酸素の存在を伴う(好気性)、及び/又はその他の方法で酸素の存在を伴わず(嫌気性)に環境内にて起こり得る。これは、例えば、堆肥化が条件なく実行され得ることを意味するように理解され得る。特に、堆肥化プロセスの終了時には、環境にとって問題となり得る材料の残留物、又は任意の非生分解性成分はない。
【0013】
生分解性材料の例としては、木材、竹、竹繊維、セルロース、セルロースパルプ、木材パルプ、サトウキビパルプ、紙及び/又は厚紙などの異なる植物性材料であり得る。加えて、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)及びコポリマー、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-ブチレンアジペート)(PBS-A/PBSa)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、酢酸セルロース、デンプン、及び/又は上述の材料の化合物などのバイオプラスチックのファミリーが、他の例として挙げられる。
【0014】
国際規格、例えば欧州の13432(EU13432)又は米国のASTM D6400は、材料の堆肥化可能性を判定するための技術的要件及び手順を明示している。生分解は、ISO14855、ISO17556、又はISO14851などの規格に従って試験することができる。例えば、試験のうちの1つは、「工業的に堆肥化可能」であると見なされるには、対象とする材料の少なくとも90%が、6ヶ月間の制御された条件下で生物学的に分解されることを必要とする。同様の試験が、家庭での堆肥化の証明をも可能にするためにも存在する。
【0015】
言い換えれば、飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセルが提供される。例えば、カプセルは、飲料を調製するための物質を収容するための容器として理解され得て、好ましくは、物質を取り囲むケース又は容器を形成し得る。カプセル本体は、例えば、カプセル内の区画、空洞、又は中空の空間であり得るチャンバ(の少なくとも一部)を、その側壁で画定する。カプセルは、チャンバ内に流体を注入するのに好適な注入壁を更に備える。流体の注入は流体と物質との相互作用をもたらし得て、相互作用は、湿潤、浸出、抽出、溶解、及び/又は飲料製品を生成するための任意の他の種類の対応する相互作用などの、物質と流体との間の任意の種類の化学的及び/又は物理的反応を含み得る。カプセルは、カプセル本体に接続されてチャンバを閉じる送出壁を更に備える。例えば、カプセル内の空間は、容器本体(側壁)、注入壁及び送出壁によって全ての面から(完全に)取り囲まれ得て、好ましくは、物質を受けるためのチャンバが形成(及び閉鎖)されることが考えられ得る。これにより、飲料を調製するための物質で充填されて、既知のカプセルマシンで使用することができる、カプセルを提供することができる。物質は、酸化又は水分のような劣化及び外部の影響から保護することができ、物質を長期間保管する場合でも、物質の風味をカプセル内に保持することができる。
【0016】
本発明の送出壁は、層状様態で、保持層とフィルタ層とを含む。したがって、送出壁は、プライ、薄板、段、又は層として構成された異なる部分を含み得る。これにより、送出壁には、それぞれが所望の機能性、例えば、封止するための層、(湿潤/酸素)バリアを形成するため(の更なる層)、並びに/又は、フィルタ層などを用いて、調製された飲料から特定の粒子もしくは内容物を、調製された飲料がカプセル(チャンバ)を出る前に精製及び/若しくはふるい分けするための、任意の数の層を送出壁に設けることができる。ここで、送出壁は、様々な(層)構成、形態、及び形状を有し得る。加えて、保持層は、例えば、それぞれの要素間の相対移動によって、流体がカプセルに注入される上昇圧力の影響下で、(例えば、飲料生成マシンの)開口要素によって開口され得るように設けられる。ここで、開口要素は、様々な構成、形態及び形状を有し得て、例えばピラミッド様要素といった複数の凸部や凹部の要素を備え得る。この設計は、送出壁の設計を技術的ニーズに適合させることを可能にする。
【0017】
フィルタ層及び保持層の各々は、生分解性材料で作製されている。これは、カプセル材料自体に加え、カプセル内の有機材料のより簡単な再生をもたらし得る。
【0018】
フィルタ層は、保持層に対してチャンバの反対側に設けられている。ここで、驚くべきことに、本発明で定義するようなカプセル本体に対する保持層及びフィルタ層を特定の順序で配向すると、いくつかの改善をもたらすことが見出された。例えば、飲料調製中の圧力プロファイルがより一貫していて再現可能であることが観察されている。更に、より良好なクレマ形成及び抽出、並びに焙煎して挽いたコーヒーなど、物質の粒子及び残留物のより低い濃度が、飲料内のこの構成で見出される。
【0019】
本発明の構成では、動作中、フィルタ層は、圧力下で材料を破壊するための局所圧力点を生成するために一般的に使用される開口要素と直接接触していてもよく、したがって、フィルタ層が材料の穿刺によってそのフィルタ能力を失うリスクの増加につながるため、当該技術分野ではこれは期待されない。この理由から、従来技術では、フィルタは、もし設けられる場合には、常にカプセルの中に設けられる。同様に、保持層がより効果的な方法で開口要素によって開かれることは驚くことである。本発明の構成では、送出壁の開口部は、既知のカプセルの構成よりも多く、均等に、かつ中央に分布している。注入された流体がカプセルの内側にかつ外に均一に分布するため、より良好かつ均一な抽出結果を得ることができる。この効果は、意図する対象物と直接接触して穿刺ツールを配置することによってより良い穿刺結果が得られるという技術的直観に反するものである。
【0020】
上記の効果は、例えば、カプセル内の圧力上昇中における保持層の変形に対するフィルタ層の減衰効果によってもたらされ得る。チャンバ内に注入された流体の圧力の上昇によってチャンバ内に発生するスラストは、両方の層、すなわちフィルタ層に加えて保持層の引張力に対しても作用する必要があり得る。これにより、開口要素に向けての送出壁の変形は、より速く到達することができるチャンバ内のより高い圧力に向けて遅延し得て、開口要素は送出壁と、異なるカプセル構成を有する場合よりも高い圧力レベルで相互作用する。圧力上昇が増大したことにより、送出壁はより効果的に穿孔される。
【0021】
上記より、本発明が、カプセルの外側との界面が完全に生分解性材料で作製され、それでも飲料調製に十分な圧力に上昇させる為に必要と成り得る十分な又は更に向上した耐圧性を提供するカプセルを提供することを容易にすると結論付けることができる。更に、本発明の設計は、アルミニウムベースのカプセルからの飲料において先行技術にてこれまでのところ見出される品質である、高品質の飲料を調製するために必要なカプセルの濾過能力及び抽出を促進する。
【0022】
好ましくは、保持層は、チャンバに面し得る。代替的又は追加的に、保持層は、フィルタ層よりもチャンバの近くに設けられ得る。ここで、例えば、「面する」という表現は、必ずしもそれぞれの参照対象物上に直接提供される必要なく、それぞれの参照対象物に向けられていると理解され得る。
【0023】
好ましい実施形態によれば、フィルタ層及び保持層の各々は、異なる生分解性及び好ましくは(家庭)堆肥化可能な材料で作製され得る。
【0024】
これにより、カプセルを使用後に堆肥の山に廃棄することが可能になり、堆肥の山は、風、日光、排水、及び他の要因に依存する特定の条件で指定された用地であり、それによって、材料が完全に分解されると土壌に栄養素が供給され得る。堆肥化は、工業的な堆肥用地及び/又は家庭用コンポスタで達成することができる。例えば、前述の国際的に受け入れられている法的規格によれば、堆肥化可能なプラスチック材料は、材料が堆肥化可能と定義されるためには以下の特徴を同時に有しなければならない。材料は、生分解可能かつ崩壊可能、すなわち最終堆肥において断片化及び不可視性でなければならず、堆肥化プロセス及び品質に悪影響を及ぼしてはならない。これにより、使い捨てカプセルを使用することによる生態学的影響を更に低減することが期待できる。
【0025】
異なる材料は、好ましくは、引張強度、延性、弾性、穿刺抵抗、密度、多孔性、並びに/又は、該当する場合に、繊維構造及び/若しくは繊維配向などの、それぞれの物理的特性のうちの少なくとも1つで区別され得る。
【0026】
少なくとも2つの前述の層を異なる材料から提供することによって、送出壁を複合構造として提供することができる。しかしながら、送出壁が、好ましくは異なる材料から作製され得る複数の異なる層を含み得ることも考えられる。これは、異なる物理的又は化学的特性を有する2つ以上の構成材料の組み合わせが、個々の成分の各々とは異なる特性を有する構造を生成するという有利な効果をもたらし得る。これにより、カプセルの外側への界面は、本出願の技術的ニーズに合わせて適合させることができる。例えば、層の各々を異なる引張強度で提供することによって、必要に応じてカプセル内に圧力の上昇を制御して定義することができる。これにより、例えば、カプセルは、そのレシピの仕様に従って飲料を生成するように設計することができる。更に、2つの層を異なる繊維構成を有する材料から提供することにより、送出壁の濾過能力を定義するなど、送出壁と調製された飲料との相互作用に関連する材料特性を個々の用途に適合させることができる。また、送出壁の個々の層の向きの違いは、層内の異なる応力をもたらし得て、これは、異なる材料を選択することによって上記の構成で考慮され得る。例えば、層のうちの1つの材料は、別の層の材料よりも低い圧力で破壊し得るが、構造は、圧力の影響下で互いに支持し得る各材料の組み合わせた抵抗によって一緒に保持され得る。
【0027】
更に好ましい実施形態によれば、保持層(好ましくは保持層の材料)は、チャンバに入る並びに/又はチャンバを出る液体及び/若しくはガス状物質に対して好ましくは双方向のバリアを提供するように構成され得る。この場合、保持層が、保持層に対してチャンバ又はフィルタ層のいずれかの反対側で(その上に設けられ得る)追加の層又はコーティングを含み得ることが考えられる。
【0028】
これにより、カプセルを出る又はカプセルに入る特定の物質に対するバリアをカプセルに提供することができる。これにより、カプセルの保存可能期間を増加させ、カプセルの内部に収容された物質を新鮮に保持することができる。保持層にそのような能力を与えることにより、カプセルの設計及び製造を簡略化することができ、カプセルを代替材料から完全に作製することができる。
【0029】
好ましい実施形態によれば、保持層(好ましくは保持層の材料)は、1~20バール、より好ましくは10~20バール、最も好ましくは12~18バールの、チャンバ内の上昇圧力に対して復元力があるように構成され得る。
【0030】
これにより、調製が成功するための規定圧力を必要とする飲料の調製を達成することができる。更に、圧力がその所定のレベルに達するまでの時間が材料の圧力限界に依存するため、調製プロセス中にカプセルを長期間閉じたままで維持することができる。これにより、飲料の調製時間は、材料を選択することによって制御することができる。
【0031】
好ましい実施形態によれば、フィルタ層は、堆肥化可能な材料で作製され得る。代替的又は追加的に、フィルタ層は、不織布材料で作製され得る。例としては、木材パルプ、サトウキビパルプ、セルロース繊維、レーヨン繊維、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-ブチレンアジペート)(PBS-A/PBSa)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、及び/又はポリ乳酸(PLA)であり得る。
【0032】
一般に、不織布材料は、短い繊維と長い繊維とを機械的、化学的、熱処理によって一緒に結合することによって作製され得る。不織布材料は、それらの特定の使用のために操作することができ、使用後にリサイクルすることができ、弾力さ及び引裂抵抗、引張強度、軽量、ろ過、並びに/又は無菌性及び細菌バリアを提供するなどの材料の機能性を与えることができるため、有利である。例えば、不織布材料中の繊維の長さ及びそれらのそれぞれの結合は、用途の要件に従って適合され得て、それによって、用途が改善される。
【0033】
代替的又は追加的に、フィルタ層は、10~150g/m2、好ましくは20~100g/m2の坪量を有し得る。
【0034】
これにより、フィルタ層の特性は、材料の面密度、すなわち面積の単位当たりの質量を定義することによって、設定することができる。例えば、フィルタ層の引張強度は、その材料の坪量を増加させること、並びに/又は規定の長さの繊維を含む及び/若しくは規定の繊維結合を有する(不織布)材料を使用することによって、向上し得る。更に、フィルタ層のろ過能力及び/又は多孔性は、フィルタ層の材料特性をそれに応じて設定することによって調整され得る、例えば、より小さい粒子直径に低減され得る。これにより、フィルタ層を飲料調製の特定の要件に適合させることができる。
【0035】
好ましい実施形態によれば、保持層は、堆肥化可能な材料で作製され得る。代替的又は追加的に、保持層は、定義された、好ましくは閉鎖繊維構造を有する材料で作製され得る。例えば、保持層の材料は、少なくとも50%の重量が軟材パルプに対応する繊維構造であってもよく、セルロース繊維、紙、ビオポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)及びコポリマー、並びに/又はポリブチレンサクシネート(PBS)若しくはポリ(ブチレンサクシネート-co-ブチレンアジペート)(PBS-A/PBSa)であってもよい。更に、保持層の材料は、酢酸セルロース、デンプン、ポリビニルアルコール(PVOH)であり得て、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマーを含み得る。代替的又は追加的に、保持層の材料は、前述の材料の化合物又は積層体であり得る。
【0036】
高度に精製された、すなわち機械的及び/又は化学的に処置された紙などの閉鎖繊維構造を有する材料から保持層を提供することにより、材料の強直さを増大させながら液体を吸収する傾向が低い材料で保持層を提供することが可能であり得る。特に、低い吸水率及び低伸張度を有する材料は、カプセルの特性に有益な影響を及ぼす。そのような材料から保持層を提供することにより、本発明の有利な効果を増幅することができる。
【0037】
代替的又は追加的に、保持層は、20~150g/m2、好ましくは30~100g/m2の坪量を有し得る。
【0038】
これにより、保持層の特性は、材料の面密度を定義することによって設定することができる。例えば、保持層の引張強度は、その材料の坪量を増加させることによって改善され得る。
【0039】
好ましい実施形態によれば、少なくとも部分的に、保持層及びフィルタ層は、互いに反対の側で、好ましくは接着結合、超音波溶着又は熱溶着を介して互いに接合され得る。好ましくは、保持層とフィルタ層との間に、生分解性及び好ましくは堆肥化可能な材料である接着層が設けられ得る。例えば、植物性デンプン又はアクリル系接着剤を、接着層の材料として使用し得る。
【0040】
送出壁の2つの層を接合することにより、それぞれの材料の延伸及び変形プロセスが相互関連することを可能にする。2つの層を互いに接続するために、(好ましくは何かしらの接着剤を使用することによって)接着結合又は熱溶着を使用することによって、2つの層の間に滑らかで均一に効果的な結合が生成される。したがって、保持層に加えられる圧力もまた、フィルタ層上に均一に分割される。これにより、本発明の有利な効果は、そのような構成で増幅され得る。
【0041】
好ましい実施形態によれば、送出壁は、カプセル本体の側壁における開口部を画定するリム部に接続され得る。例えば、送出壁は、接着結合、超音波溶着又は熱溶着によって、カプセル本体に接続され得る。代替的又は追加的に、接着層は、送出壁(好ましくは保持層)とカプセル本体との間に設けられ得て、カプセル本体と送出壁とを互いに接着する。好ましくは、接着層は、少なくとも部分的に(又は完全に)、開口部及び/又はリム部をカバーしてもよい。代替的又は追加的に、接着層は、チャンバに向けられた側面又は表面上で、保持層を(完全に)カバーしてもよい。例えば、植物性デンプン又はアクリル接着剤を、接着層の材料として使用し得る。また、接着層は、例えば、送出壁の層状構造の一部を形成し得ることも考えられる。
【0042】
送出壁をカプセル本体に接合することにより、2つの要素は互いにしっかりと接続され、細菌によるカプセル内容物の汚濁を回避することができる。カプセルの内容物は、送出壁とカプセル本体との間に形成された封止結合を介して、外部の水分又は酸素から保護され得る。
【0043】
好ましくは、前述の接合方法を使用することによって、2つの層間の接着層は、酸素/水分バリア及び/又はシーラントを形成し得ることが考えられ得る。好ましくは、接着層は、飲料調製の通常の動作温度、例えば100~150℃で使用されても食品として安全かつ/又は好適であり得る。
【0044】
更に好ましい実施形態によれば、カプセル本体(好ましくは、少なくとも側壁及び/又はリム部)は、水分及び/又は酸素に対するバリアを提供するための保護層を備え得る。代替的又は追加的に、注入壁は、水分及び/又は酸素に対するバリアを提供するための保護層を含み得る。好ましくは、保護層は、カプセル本体と注入壁との間に封止界面を提供するように構成され得る。保護層は、バイオポリマー又はポリビニルアルコール(PVOH)などの生分解性かつ好ましくは堆肥化可能な材料で作製され得て、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマーを含み得る。代替的又は追加的に、保護層は、上述した材料の化合物又は積層体で作製され得る。好ましくは、保護層は、フィルタ層及び/又は保持層とは異なる材料で作製され得る。
【0045】
これにより、カプセルの内容物を外部の水分又は酸素から保護することができ、カプセルに広範囲の異なる材料を使用することができる。
【0046】
好ましい実施形態によれば、カプセル本体及び/又は注入壁は、層状及び/又は積層構造を含み得る。好ましくは、カプセル本体及び/又は注入壁は、好ましくは積層成形パルプ繊維で作製され得る。
【0047】
これにより、それぞれの要素の剛性及び/又は強直さなどの機械的特性は、個々の用途に合わせて適合させることができる。例えば、カプセル本体は、堅くするための追加の(一体型)構造要素、例えば、フィン又は隆起を備え得る。
【0048】
好ましい実施形態によれば、カプセル本体及び注入壁は、別個の部品で構成されてもよく、又は、例えば一つの部品として、一体的に形成されてもよい。
【0049】
これにより、カプセルを、異なる部分として、又は単一の部品若しくは一体で提供することができる。これらの構成の各々は、カプセルを用いた飲料の企画、製造、及び調製において利点を提供する。
【0050】
本発明の更なる態様は、上記のようなカプセルを製造するための方法に関する。
【0051】
方法はステップを含み、カプセル本体は、セルロースパルプ、竹パルプ、木材パルプ、バガス、非木材パルプ、又はセルロース系パルプなどの生分解性(及び/又は堆肥化可能)パルプ材料から任意の形態で形成される。好ましくは、注入壁は、カプセル本体と共に(一緒に)(同時に/同一ステップで)形成され得る。注入壁は、飲料の調製のために物質を受容するためのチャンバの少なくとも一部が形成されるように形成される。送出壁はカプセル本体に、例えば熱溶着によって、設けられて取り付けられる。ここで、送出壁は、フィルタ層が保持層に対してチャンバの反対側に設けられるように、カプセル本体上に設けられる。好ましくは、保持層は、チャンバに面し得る。代替的又は追加的に、保持層は、フィルタ層よりもチャンバの近くに設けられ得る。
【0052】
好ましい実施形態によれば、カプセル本体は、湿式パルプ成形によって形成され得る。ここで、カプセル本体を形成する方法は、型にパルプスラリーを、例えば、型をスラリーで充填することによって、又はスラリー中に型を沈めることによって、配置するステップを含み得る。パルプスラリーは、型内で押し込まれ得て、そのように形成されたカプセル本体は乾燥され得る。
【0053】
あるいは、カプセル本体は、乾式パルプ成形によって形成され得る。ここで、カプセル本体を形成する方法は、好ましくは乾燥セルロース繊維のブランクを用意するステップを含み得る。次いで、ブランクは、好ましくは熱及び/又は水の適用下で、ツールを用いてカプセル本体の形状に形成され得る。
【0054】
好ましい実施形態によれば、カプセル本体は、飲料の調製に必要な物質で充填され得る。注入壁は、(湿式又は乾式)パルプ成形によって形成され得る。好ましくは、注入壁は、パルプ成形によって、カプセル本体と共に形成され得る。代替的又は追加的に、注入壁は、注入壁として膜又はフィルムをカプセル本体に、カプセルの乾燥後に、例えば、生分解性(及び/又は堆肥化可能な)接着剤を用いて、取り付けることによって、形成され得る。好ましくは、本方法は、好ましくは生分解性及び/又は堆肥化可能な材料から作製され得る保護層を追加するステップを更に含み得る。保護層は、チャンバを画定するカプセル本体の少なくとも一部、の内面又は外面(好ましくは側壁の少なくとも一部)上に追加され得る。代替的又は追加的に、保護層は、チャンバを画定する注入壁の少なくとも一部、の内面又は外面上に追加され得る。保護層は、リム部の(チャンバとは反対側を向いている)少なくとも一部の表面に追加され得ることも考えられる。これは、例えば、熱成形によって達成され得る。好ましくは、保護層は、ライナとして設けられる。
【0055】
これにより、上記の利点及び利益を全て有するカプセルを得ることができる。更に、(湿式/乾式)パルプ成形は、異なる材料の使用を容易にしながら、カプセルの形状及びその構成要素をより自由に設計するという利点を提供し、それによって、カプセルの少なくとも一部を複合構造として提供する。したがって、既存のカプセル設計を構造的に改善すること、並びにそれらを代替材料から提供することができ、これは、生態学的に有益であり得る。
【0056】
本発明の更なる態様は、カプセルホルダを有する飲料生成マシンで飲料を調製するための上記のカプセルの使用に関する。したがって、飲料を、有利かつ環境学的に有益な方法で調製することができる。
【0057】
本発明の更なる特徴、利点、及び目的は、添付の図面と併せて本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むと、当業者には明らかになるであろう。例えば明瞭さを理由に図面から数字が省略されている場合、対応する特徴は依然として図面に存在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の実施形態によるカプセルの概略拡大図である。
【
図2】
図1のカプセル内の圧力の経時的な圧力プロファイルを示す折れ線グラフである。
【
図3】2つの異なるカプセル構成の比較グラフを示し、一方の構成は、
図1の本発明のカプセルの圧力プロファイル(
図2に示すように)を示し、他方の構成は、送出壁を有する比較用カプセルの圧力プロファイルを示し、それぞれの送出壁層の順序は、
図1のカプセルの送出壁と反転している、比較グラフである。
【
図4】典型的な紙材料の圧力プロファイルを示す折れ線グラフである。
【
図5】典型的な不織布材料の圧力プロファイルを示す折れ線グラフである。
【0059】
[発明を実施するための形態]
図面は、本発明による飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセル100の実施形態の異なる図及び態様を示す。カプセル100は複合構造を有してもよく、かつ/又は複合材料から作製されてもよく、これは、好ましくは、その全体が生分解性及び/又は堆肥化可能な材料からなり得る。
【0060】
カプセル100は、側壁210を有するカプセル本体200を備える。カプセル本体200は、任意の形状又は形態を有し得る。例えば、カプセル本体200は、カプセル100が(既知の)飲料生成マシンのカプセルホルダに挿入されるのに好適な形態を有し得る。カプセル本体200は、切頭形状、カップ形状又はボウル形状の形態を有し得る。カプセル本体200は、円形の断面を有し得る。これにより、例えば、カプセル本体200にかかる圧力関連の力を吸収することができる。
【0061】
カプセル本体200は、側壁210を備える。側壁210は、カプセル100内のチャンバ250を画定する。側壁210は、カプセル本体100の内部に連続空間を囲むように設けられてもよい。これは、
図1に例示的に示されている。
【0062】
チャンバ250は、飲料の調製のための物質500を受容して保管するように構成されている。ここで、物質500は、特定の又は規定の化学構成の、任意のタイプの(固体、液体、少なくとも部分的に可溶性及び/又は滲出可能な)物質であり得る。物質の例としては、焙煎されて挽かれたコーヒー、インスタントコーヒー、茶葉、シロップ濃縮物、果実抽出物濃縮物、チョコレート製品、乾燥食用物質、及び/又はそれらの組み合わせであり得る。したがって、調製され得る飲料の例は、コーヒーベース若しくはチョコレートベースの飲料、又は他の同様のタイプの食品であり得る。しかしながら、物質500及び飲料の上記の例は、完全な列挙としては見られない。代わりに、様々な他の例が考えられ得る。
【0063】
カプセル本体200は、チャンバ250への開口部230を有し得る。開口部230は、カプセル本体200の互いに反対側にある端部のうちの少なくとも1つにあってもよい。例えば、物質500は、開口部230を通ってカプセル100の内部に充填され得る。物質500で、チャンバ250を完全に充填してもよい。しかしながら、開口部230と物質500の充填高さとの間に自由空間を有し得て、自由空間は物質500を新鮮に保つために不活性ガスで充填され得る。好ましくは、側壁210のリム部211は、開口部230を画定し得る。リム部211は、フランジの形態を有し、側壁210から、好ましくはチャンバ250から離れるように延在し得る。動作中、カプセル100は、飲料生成マシンのカプセルホルダ内のリム部211上に配置され得る。
【0064】
側壁210は、カプセル本体200の連続するマントル表面を形成するように設けられ得る。例えば、側壁210は、チャンバ250に面する内面と、チャンバ250とは反対側に面する外面とを有し得る。
【0065】
物質500に対して、水分及び/又は酸素に対する好ましくは双方向バリアを提供するための保護層400は、カプセル本体200及び/又は側壁210上に設けられ得る。
図1では、保護層400は、側壁210の内面上のライナとして設けられるように例示的に示されており、これは、リム部211まで、かつその上方に延在し得る。保護層400は、側壁210の外面上に追加的又は代替的に設けられ得る。ここで、保護層400は、PHB及びコポリマー、PBS、PBS-A、PLA、PBAT、酢酸セルロース、デンプン、PVOHなどのバイオポリマー又はバイオプラスチックのファミリーなどの生分解性及び好ましくは堆肥化可能な材料で作製され得て、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマー、並びに上述の材料のうちの任意の化合物又は積層体を含み得る。好ましくは、保護層400は、食品安全材料(FCS、FCM)で作製され得る。
【0066】
例えば、カプセル本体200は、(積層)(湿式/乾式)成形パルプ繊維で作製され得る。好ましくは、カプセル本体200は、生分解性及び/又は堆肥化可能な材料で作製され得る。カプセル本体200は、食品安全材料(FCS、FCM)で作製され得る。カプセル本体200は、層状及び/又は積層構造を備え得る。例えば、カプセル本体200は、飲料生成マシンにて動作中、又は保管中に崩壊しないように、比較的強直又は剛性であり得る。層状及び/又は積層設計は、他の設計と比較して、追加の剛性及び/又は強直性をカプセル本体200をもたらすことができる。ここで、成形パルプ繊維は、カプセル本体200上に積層された、生分解性樹脂などの追加の基質を有する複合材であり得る。例えば、カプセル本体200の積層構造体は、保護層400をその上に設けることによって作製され得る。しかしながら、カプセル本体200が、例えば、保護層400に加えて更なるラミネート層を含み得ることも考えられる。
【0067】
カプセル100は、流体と物質500との相互作用後に飲料を調製するためにチャンバ250内に流体を注入するための注入壁220を備える。これは、
図1に例示的に示されている。
【0068】
注入壁220は、カプセル本体200の、開口部230とは反対側の端部に設けられ得る。注入壁220は、カプセル本体200と一体的又は別個に設けられ得る。したがって、カプセル本体200及び注入壁220は、別個の部品で構成されてもよく、又は一つの部品として一体的に形成されてもよい。注入壁220は、カプセル本体200の先細の端部を形成し得る。注入壁220は、コーヒー生成マシンのブレードによって穿孔されて、ブレードで流体注入用の開口部が設けられるように構成され得る。好ましくは、流体は、水又は牛乳などの、液体又は液体/ガス混合物であり得る。カプセル本体200として、注入壁220は、上述の保護層400をも含み得る。注入壁220はまた、コーヒー生成マシンのブレードが入って保護層400を貫通することができる(小さな)開口部を含み得ることも考えられる。カプセル本体200と同様に、注入壁220は、層状及び/又は積層構造を含み得て、(積層)成形パルプ繊維及び/又は食品安全材料(FCS、FCM)で作製され得る。
【0069】
カプセル本体200及び注入壁220は、チャンバ250が、好ましくは
図1に示すように少なくとも3つの面から閉じられている(封止されている)ように設けられ得る。カプセル本体200及び注入壁220は、注入された流体が側壁210に沿ってチャンバ250内に均一に分散されるように設けられ得る。
【0070】
カプセル100は、カプセル本体200に接続されてチャンバ250を閉じる送出壁300を備える。これは、
図1に例示的に示されている。
【0071】
例えば、送出壁300は、リム部211に接続され得る。これは、例えば、熱溶着又は接着結合によって達成され得る。したがって、接着層又は封止可能なコーティングが、送出壁300とカプセル本体200との間に設けられてもよく、それ(接着層)で、カプセル本体200及び送出壁300が互いに取り付けられ(接合され)得る。言及された封止可能/接着層は、カプセル本体200に最も近い側の保持層320の全面積をカバーし得る。接着層は、送出壁300の一部を形成してもよく、又はカプセル本体200及び送出壁300とは別個の要素であってもよい。例えば、接着層は、保護層400の一部を形成してもよく、又はそれに加えて設けられてもよい。送出壁300は、リム分211を介してカプセル本体200に取り付けられ得る。例えば、接着層は、開口部230をカバーし、開口部230の上に延在してリム部211と重なり得る。また、接着層は、送出壁300のチャンバ250に向いている(すなわち、面している)表面全体をカバーしてもよい。送出壁300は、チャンバ250に対して注入壁220の反対側に設けられ得る。送出壁300及び注入壁220は、動作中に、注入された流体が、注入壁220、チャンバ250(及び、利用可能な場合、その中に収容される物質500)、並びに送出壁300の順序でカプセル100を横断するように、互いに対して設けられ得る。チャンバ250は、送出壁300(の一方の端部)、注入壁220(のその反対側の端部)、及び側壁210(の2つの互いに反対側にある端部間の面に沿って/を囲んで)によって、完全に囲まれ得る。送出壁300は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、開口部230の上に延在し得る。好ましくは、送出壁300は、リム部211と(少なくとも部分的に)重なり合ってもよい。
【0072】
送出壁300は、
図1に例示的に示すように、層状の様態で設けられる。送出壁300が有し得る(異なる)層の数に制限はない。
【0073】
送出壁300の層のうちの1つは、保持層320である。これは、
図1を例示的に示す。保持層320は、カプセル100内に注入される流体の圧力の上昇の影響下で、飲料生成マシンの開口要素との相互作用で開口するように適合されている。保持層320は、規定の厚さを有し、好ましくは実質的に平面状の表面を有する、フィルム、膜又はプライであり得る。
【0074】
保持層320は、生分解性材料から作製されている。好ましくは、保持層320はまた、堆肥化可能及び/又は食品安全材料(FCS、FCM)である材料で作製され得る。追加的又は代替的に、保持層320(の材料)は、閉鎖繊維構造などの規定の繊維構造を有し得る。例えば、保持層320の材料は、重量の少なくとも50%が軟材パルプに対応する繊維構造であり得る。保持層320の材料の更なる例は、セルロース繊維、紙、バイオポリエステル、PHA、PHB及びコポリマー、PBS、PBS-A、PVOH、並びに/又はモノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマーの群のうちの1つ又は任意の組み合わせであり得る。
【0075】
保持層320は、好ましくは1~20バール、より好ましくは10~20バール、最も好ましくは12~18バールの、チャンバ250内の上昇圧力に対して、復元力があるように設けられ得る。特に、保持層320の材料は、そのような圧力範囲内のチャンバ250内の上昇圧力に対して復元力があるように構成され得る。ここで、材料の厚さ及び密度は、保持層320の強直さ、すなわち曲げに対する抵抗に影響を及ぼし得る。保持層320は、10~150マイクロメートル、好ましくは30~70マイクロメートルの材料の厚さを有し得る。代替的又は追加的に、保持層320は、20~150g/m2、好ましくは40~100g/m2の坪量を有し得る。好ましくは、保持層320は、好ましくは熱溶着又は接着結合によって、(リム部211)カプセル本体200に取り付けられ得る。
【0076】
図4は、保持層320に使用されるのに好適であり得る紙ベースの材料の例示的な圧力曲線を示す。
図4から、紙ベースの材料が、少なくとも約15秒の時間間隔で、最大17バールの圧力に対する抵抗を与え、それによって圧力下で流体を遮断し、したがって、飲料調製のための送出壁300の層として好適であることが分かる。
【0077】
送出壁300の別の層は、
図1が例示的に示すように、フィルタ層310である。フィルタ層310は、調製された飲料から粒子をろ過してから、その粒子を送出壁300を介して(から)注出するように構成され得る。フィルタ層310は、規定の厚さの(及び/又は(主に)平面状の表面を有する)フィルム、膜、若しくはプライであってもよい。
【0078】
フィルタ層310は、生分解性材料から作製されている。好ましくは、フィルタ層310はまた、堆肥化可能及び/又は食品安全材料(FCS、FCM)である材料で作製され得る。例えば、フィルタ層310は、セルロース繊維又はPLAなどの不織布材料であり得る。更なる例としては、セルロース繊維、木材パルプ、サトウキビパルプ、レーヨン繊維、PBS、PBS-A、PHB、及び/又はPLAであり得る。
【0079】
フィルタ層310の機械特性及びろ過特性は、材料の厚さ、その密度、並びに粒子の透過性に影響され得る。フィルタ層310は、10~300マイクロメートル、好ましくは30~250マイクロメートルの材料の厚さを有し得る。追加的又は代替的に、フィルタ層310は、10~200g/m2、好ましくは20~150g/m2の坪量を有し得る。
【0080】
図5は、フィルタ層320に使用され得る様々な不織布材料の例示的な圧力曲線を示す。
図5から、不織布材料が、10秒未満の時間にわたって最大2.5バールの圧力抵抗を示すことが理解できる。飲料調製プロセスの典型的な条件を考慮すると、この耐圧性は比較的限定的かつ短いように思われる。
【0081】
しかしながら、本発明は解決策を提供しており、前述の
図4及び
図5に例示的に示すような、異なるタイプの材料の特定の構成及び組み合わせが、有利な効果をもたらす。
【0082】
ここで、保持層320及びフィルタ層310は、フィルタ層310が保持層320に対してチャンバ250の反対側に設けられるように、カプセル本体200上に設けられている。
【0083】
好ましくは、保持層320は、チャンバ250に面し得る。代替的又は追加的に、保持層320は、フィルタ層310よりもチャンバ250の近くに設けられ得る。これは、
図1に例示的に示されている。
【0084】
好ましくは、保持層320は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、開口部230を覆ってもよい。保持層320とカプセル本体200(又はリム部211)との間に接着層を設けてもよく、接着層は、容器本体200に向けられた保持層320の表面を完全に覆ってもよい。フィルタ層310は、保持層320を少なくとも部分的に覆ってもよい。好ましくは、フィルタ層310は、円周方向にて(及び/又は好ましくはカプセル本体200の外周とともに)、保持層320と同一平面に設けられ得る。保持層320及びフィルタ層310は、互いに対向する面上にて少なくとも部分的に、好ましくは接着結合又は熱溶着によって、互いに接合され得る。ここで、接着層は、好ましくは保持層320とフィルタ層310との間に設けられ得て、その接着層は、植物性デンプン又はアクリル系接着剤などの生分解性及び好ましくは堆肥化可能な材料である。好ましくは、保持層320及びフィルタ層310は、カプセル100の一端に実質的に均一な表面を形成し得る。例えば、保持層320及びフィルタ層310は、例えば熱溶着によって互いに接合されて、接着層は、これら2つの層310、320の各々の表面の一部のみをカバーする縞として設けられる。例えば、縞は、これらの2つの層310、320の外周に沿って設けられ得る。しかしながら、これは単に一例であり、完全な列挙として見なされるべきではない。代わりに、例えば、接着層はまた、これらの2つの層310、320の間の重なりの中心に設けられてもよい。
【0085】
好ましくは、フィルタ層310及び保持層320の各々は、生分解性かつ好ましくは堆肥化可能な異なる材料で作製され得る。2つの層の異なる材料は、引張強度、延性、弾性、穿刺抵抗、密度、多孔性、並びに/又は、該当する場合、繊維構造及び/若しくは繊維配向などのそれぞれの物理的特性のうちの少なくとも1つより区別し得る。例えば、層状構造では典型的であるように、基部層から更に離れている層は、基部層に近い層と比較して、曲げている間により大きなひずみを受けるように、フィルタ層310の弾性は、保持層320の弾性よりも高くてもよいことが好ましい場合がある。
【0086】
そのような構成では、
図2に例示的に示すような圧力曲線を達成することができる。
図2から直ちに明らかになるように、カプセル100の対応する圧力曲線は、飲料を調製するのに非常に有利である。
【0087】
図3は、同一の成分及び同一の材料からなる2つのカプセルの圧力曲線間の比較を示す。しかし、第1のカプセルはその送出壁を形成するのに本発明の構成を使用せず、第2のカプセルは本発明のカプセル100の構成を有する。見られるように、カプセル100(第2のカプセル)の耐圧性及び抽出時の圧力安定性は、飲料調製用途のための他のカプセル(第1のカプセル)の耐圧性及び圧力安定性よりも著しく安定しており、向上している。
【0088】
好ましくは、フィルタ層310及び/又は保持層320は、保護層400とは異なる材料で作製され得る。酸素又は水分に対するバリアを送出壁300にも設けるために、保持層320(及び/又は保持層320の材料)は、チャンバ250に入る又はチャンバ250を出る液体及び/若しくはガス状物質に対して双方向のバリアを提供するように構成され得ることが考えられる。送出壁300は、フィルタ層310及び保持層320とは別の追加の層を備え得る。保護層400は、送出壁300の一部を形成し得る。
【0089】
本発明の更なる態様は、上記のカプセル100を製造するための方法に関する。
【0090】
ここで、カプセル本体200は、セルロースパルプ、竹パルプ、バガスパルプ又は木材パルプなどの生分解性パルプ材料から形成される。注入壁220は、飲料の調製のための物質500を受容するためのチャンバ250の少なくとも一部が形成されるように、(好ましくはカプセル本体200と共に)形成される。送出壁300は、例えば熱溶着によって、カプセル本体200に設けられて取り付けられている。ここで、送出壁300は、フィルタ層310が保持層320に対してチャンバ250の反対側に設けられるように、カプセル本体200上に設けられる。
【0091】
好ましくは、カプセル本体200は、湿式パルプ成形によって形成され得る。ここで、任意の形態での、木材パルプ、バガスパルプ、非木材パルプ、及び/又はセルロース系パルプなどの生分解性パルプ材料のスラリーを型に押し込んで、カプセル本体200を形成することができる。その後、そのように形成されたカプセル本体200を乾燥させる。内面(充填前)の少なくとも一部又はカプセル本体200の外面の少なくとも一部には、例えば熱成形によって、保護層400が設けられ得る。
【0092】
あるいは、カプセル本体200は、乾式パルプ成形によって形成され得る。したがって、好ましくは乾燥セルロース繊維のブランクが設けられ得て、それより、カプセル本体200が、ツールを用いて、好ましくは熱及び/又は水の適用下で形成される。保護層400は、カプセル本体200の内側にライナとして(例えば、熱を印加する及び/又は真空にすることによって)適用されてもよく、カプセル本体200の両端の間で側壁210の内側に面する表面上に延在してカバーし、リム部211のチャンバ250とは反対方向に面する表面に延在させてカバーしてもよい。
【0093】
前述の2つの方法の両方において、注入壁220は、例えば、同一ステップで、カプセル本体200と共に形成され得る。好ましくは、注入壁220は、(湿式/乾式)パルプ成形によって、又は、注入壁220として膜若しくはフィルムをカプセル本体200に、例えば生分解性接着剤を用いて、カプセル本体200の形成後に取り付けることによって、形成され得る。例えば、(湿式/乾式)パルプ成形によって、注入壁220は、同一の方法ステップ内でカプセル本体200と一緒に形成され得るが、注入壁220を接着剤で取り付けるためには、第2の別個の方法ステップが必要とされ得る。カプセル本体200は、飲料の調製のための物質500で充填され得る。送出壁300がカプセル本体200に、保持層320がチャンバ250に面し(向けられ)得るように設けられて取り付けられ得る。保護層400は、カプセル100の(円周方向の)表面に追加され得て、好ましくは生分解性及び/又は堆肥化可能な材料から作製される。注入壁220の内向き表面又は外向き表面(加えてチャンバ250を画定し得る表面)の少なくとも一部に、保護層400が設けられ得る。
【0094】
本発明の更なる態様は、カプセルホルダを有する飲料生成マシンで飲料を調製するための上記のカプセル100の使用に関する。
【0095】
例えば、上記のようなカプセル100を、飲料生成マシンに設けて挿入することができる。好ましくは、カプセル100は、フィルタ層310が保持層320よりもマシンの開口要素に近い(そして最終的に接触する)ように、飲料生成マシンに配置される。カプセル100の注入壁220は、チャンバ250内に流体を注入するために、飲料生成マシンの注入ノズルによって穿孔され得る。液体又は液体/ガス混合物などの流体をチャンバ250に注入して、それによってカプセル100内の圧力を上昇させて、送出壁300が、例えば飲料生成マシンの開口要素に対して押しつけられる。送出壁300の少なくとも一部が、注入された流体の圧力がチャンバ250内で所定のレベルに達すると、開口要素によって穿孔され得る。好ましくは、保持層320は、穿孔され得る。代替的又は追加的に、送出壁300は(例えば、その材料構成/選択に関して)、保持層320が穿孔される一方、フィルタ層310が穿孔されないように設けられ得る。調製された飲料はカプセル100から排出され得て、飲料は、保持層320の開口部及びフィルタ層310(の多孔質材料における空洞)を通過し得て、保持層320は、フィルタ層310よりもチャンバ250に近くにあり得て、フィルタ層310は、保持層320に対してチャンバ250の反対側に設けられている。
【0096】
本発明は、添付の特許請求の範囲によって網羅される限り、上記の実施形態によって限定されない。上記の実施形態の全ての特徴は、任意の可能な方法で組み合わせることができ、互換的に提供することができる。例えば、カプセル100の製造方法のステップの上記の順序は、任意に変更され得る。
【0097】
[発明1]
飲料生成マシンで飲料を調製するためのカプセル(100)であって、前記カプセル(100)は、
前記飲料の前記調製のための物質(500)を収容するためのチャンバ(250)を画定する側壁(210)を有するカプセル本体(200)と、
流体と前記物質(500)との相互作用で前記飲料を調製するために前記チャンバ(250)に流体を注入するための注入壁(220)と、
前記カプセル本体(200)に接続されて前記チャンバ(250)を閉じる送出壁(300)であって、層状の様態で、
前記カプセル(100)に注入される前記流体の圧力上昇の影響下で、開口要素との相互作用で開口するように適合されている保持層(320)と、
前記送出壁(300)を介して注出された、調製された前記飲料から粒子をろ過するためのフィルタ層(310)と、
を備える、送出壁(300)と、を備え、
前記フィルタ層(310)及び前記保持層(320)の各々が、生分解性材料で作製され、
前記フィルタ層(310)が、前記保持層(320)に対して前記チャンバ(250)の反対側に設けられている、カプセル(100)。
【0098】
[発明2]
前記フィルタ層(310)及び前記保持層(320)の各々が、生分解性かつ好ましくは堆肥化可能な異なる材料で作製され、好ましくは前記異なる材料が、引張強度、延性、弾性、穿刺抵抗、密度、多孔性、並びに/又は、該当する場合に、繊維構造及び/若しくは繊維配向などの、それらのそれぞれの物理的特性のうちの少なくとも1つで区別される、発明1に記載のカプセル(100)。
【0099】
[発明3]
前記保持層(320)、好ましくは前記保持層(320)の前記材料が、前記チャンバ(250)に入る、並びに/又は前記チャンバ(250)を出る、液体及び/若しくはガス状物質に対して好ましくは双方向のバリアを設けるように構成されている、請求項1又は発明2に記載のカプセル(100)。
【0100】
[発明4]
前記保持層(320)、好ましくは前記保持層(320)の前記材料が、1~20バール、より好ましくは10~20バール、最も好ましくは12~18バールの、前記チャンバ(250)内の上昇圧力に対して復元力があるように構成されている、発明1~3のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0101】
[発明5]
前記フィルタ層(310)が、木材若しくはサトウキビパルプ、セルロース繊維、レーヨン繊維、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-ブチレンアジペート)(PBS-A/PBSa)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、及び/若しくはポリ乳酸(PLA)などの、堆肥化可能及び/若しくは不織布材料で作製され、並びに/又は
前記フィルタ層(310)が、10~150g/m2、好ましくは20~100g/m2の坪量を有する、発明1~4のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0102】
[発明6]
前記保持層(320)が、堆肥化可能である材料、かつ/又は、規定の、好ましくは閉鎖繊維構造、例えば、重量の少なくとも50%が軟材パルプ、セルロース繊維、紙若しくはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)及びコポリマー、ポリブチレンサクシネート(PBS/PBS-A)、バイオポリエステル、セルロース酢酸、デンプン、ポリビニルアルコール(PVOH)、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマー、上述した材料の化合物及び/若しくは積層体に対応する繊維構造、を有する材料で作製され、並びに/又は
前記保持層(320)が、20~150g/m2、好ましくは30~100g/m2の坪量を有する、発明1~5のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0103】
[発明7]
前記保持層(320)及び前記フィルタ層(310)が、互いに反対の側で、好ましくは接着結合又は熱溶着を介して少なくとも部分的に互いに接合され、好ましくは、前記保持層(320)と前記フィルタ層(310)との間に、植物性デンプン又はアクリル系接着剤などの生分解性及び好ましくは堆肥化可能な材料である接着層が設けられている、発明1~6のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0104】
[発明8]
前記送出壁(300)が前記カプセル本体(200)に、好ましくは前記カプセル本体(200)の前記側壁(210)における開口部(230)を画定するリム部(211)に、好ましくは接着結合又は熱溶着によって接続され、好ましくは接着層が、前記送出壁(300)、好ましくは前記保持層(320)と、前記カプセル本体(200)との間に設けられ、前記カプセル本体(200)と前記送出壁(300)とを互いに接着し、好ましくは前記接着層が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記開口部(230)、前記リム部(211)及び/又は前記保持層(320)を、好ましくは前記保持層(320)の前記チャンバ(250)に向けられた表面上でカバーする、発明1~7のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0105】
[発明9]
前記カプセル本体(200)、好ましくは前記側壁(210)、より好ましくは前記リム部(211)、及び/若しくは前記注入壁(220)が、水分及び/若しくは酸素に対して好ましくは双方向のバリアをもたらすため、並びに/又は前記カプセル本体(200)と前記注入壁(220)との間に封止界面を設けるための保護層(400)を備え、前記保護層(400)が、生分解性かつ好ましくは堆肥可能な材料、例えばバイオポリマー若しくはポリビニルアルコール(PVOH)、モノマー単位のうちの少なくとも1つがビニルアルコールであるポリマー、及び上述した材料の化合物若しくは積層体、で作製され、好ましくは前記保護層(400)が前記フィルタ層(310)及び/又は前記保持層(320)とは異なる材料で作製されている、発明1~8のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0106】
[発明10]
前記カプセル本体(200)及び/又は前記注入壁(220)が、層状及び/又は積層構造を備え、好ましくは、前記カプセル本体(200)及び/又は前記注入壁(220)が、好ましくは積層成形パルプ繊維から作製され、かつ/又は前記カプセル本体(200)及び前記注入壁(220)が、別個の部品から構成されている、若しくは、例えば一つの部品として、一体的に形成されている、発明1~9のいずれか一項に記載のカプセル(100)。
【0107】
[発明11]
請求項1~10のいずれか一項に記載のカプセル(100)を製造するための方法であって、
前記カプセル本体(200)を、セルロースパルプ、竹パルプ、バガスパルプ又は木材パルプなどの、生分解性パルプ材料から形成するステップと、
前記注入壁(220)を好ましくは前記カプセル本体(200)と共に形成して、前記飲料の前記調製のための前記物質(500)を受容するための前記チャンバ(250)の少なくとも一部が形成される、ステップと、
好ましくは、前記カプセル本体(200)を前記飲料の前記調製に必要な前記物質(500)で充填するステップと、
前記送出壁(300)を、例えば熱溶着によって、前記カプセル本体(200)に設けて取り付けるステップと、を含み、
前記送出壁(300)が、前記フィルタ層(310)が前記保持層(320)に対して前記チャンバ(250)の反対側に設けられるように、前記カプセル本体(200)上に設けられている、方法。
【0108】
[発明12]
発明11に記載の前記カプセル(100)を製造するための方法であって、前記カプセル本体(200)が、
湿式パルプ成形であって、前記カプセル本体(200)を形成する方法が、
型にパルプスラリーを、例えば、前記型を前記スラリーで充填することによって、又は前記スラリー中に前記型を沈めることによって、配置するステップと、
前記型内に前記パルプスラリーを押し込むステップと、
そのようにして形成された前記カプセル本体(200)を乾燥させるステップと、を含む、湿式パルプ成形によって、
又は、乾式パルプ成形であって、前記カプセル本体(200)を形成する方法が、
好ましくは乾燥したセルロース繊維の、ブランクを用意するステップと、
好ましくは熱及び/又は水の適用下で、前記ブランクを、ツールを用いて前記カプセル本体(200)の形状に形成するステップと、を含む、乾式パルプ成形によって、
形成される、方法。
【0109】
[発明13]
前記注入壁(220)が、パルプ成形、好ましくは湿式又は乾式パルプ成形によって、より好ましくは前記カプセル本体(200)と共に、及び/又は、前記注入壁(220)として膜若しくはフィルムを前記カプセル本体(200)に、前記カプセル本体(200)を乾燥させた後に、例えば生分解性接着剤を用いて、取り付けることによって、形成される、発明11又は12に記載の前記カプセル(100)を製造するための方法。
【0110】
[発明14]
生分解性及び/又は堆肥化可能材料から作製される保護層(400)を、前記カプセル本体(200)の少なくとも一部、好ましくは前記側壁(210)及び/又は前記注入壁(220)、より好ましくは前記リム部(211)の少なくとも一部、最も好ましくは前記チャンバ(250)を画定する前記カプセル本体(200)の少なくとも一部、の内面又は外面上に、例えば熱成形によって追加するステップを更に含み、前記保護層(400)が好ましくはライナである、発明11~13のいずれか一項に記載の前記カプセル(100)を製造するための方法。
【0111】
[発明15]
カプセルホルダを有する飲料生成マシンで飲料を調製するための、発明1~10のいずれか一項に記載のカプセル(100)の使用。
【外国語明細書】