(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105742
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】心疾患治療薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240731BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240731BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240731BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240731BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240731BHJP
【FI】
A61K31/7088 ZNA
A61P9/04
A61P43/00 111
A61K48/00
C12N15/11 Z
C12N15/13
C07K14/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088132
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520002748
【氏名又は名称】ルクサナバイオテク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203253
【弁理士】
【氏名又は名称】村岡 皓一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 由依
(72)【発明者】
【氏名】セレスタ アジャヤラム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA371
4C084ZA372
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA37
4C086ZC41
4H045AA50
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脂肪酸等の特定の物質を結合させることなく心臓において効果を発揮することのできる、製造およびコスト面において優れたASOなどの提供。
【解決手段】下記式(I)又は(II)で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドを含む、心疾患の治療薬。
(式中、BaseはOH、NH
2等から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基又は2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、R
1、
12、
13は、それぞれ独立して、H、C1~C7アルキル基等、R
14はHを表す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式IまたはII:
【化1】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R
1、R
12、およびR
13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR
14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドを含む、心疾患の治療薬。
【請求項2】
R12が、同一のまたは異なる分岐鎖を有する炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基である、請求項1に記載の治療薬。
【請求項3】
R1が、水素原子、または分岐もしくは環を形成していてもよい炭素数1から3のアルキル基であり、R13が、水素原子である、請求項1または2に記載の治療薬。
【請求項4】
R12が、tert-ブチル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項5】
前記心疾患が、心筋症である、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項6】
下記式IまたはII:
【化2】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R
1、R
12、およびR
13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR
14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドを含む、心臓におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの機能増強薬。
【請求項7】
R12が同一のまたは異なる分岐鎖を有する炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基である、請求項6に記載の増強薬。
【請求項8】
R1が、水素原子、または分岐もしくは環を形成していてもよい炭素数1から3のアルキル基であり、R13が、水素原子である、請求項6または7に記載の増強薬。
【請求項9】
R12が、tert-ブチル基である、請求項6~8のいずれか一項に記載の増強薬。
【請求項10】
心臓におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの機能増強薬が、心臓におけるジストロフィン産生促進薬である、請求項6~9のいずれか一項に記載の増強薬。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを合成する工程を含む、心疾患の治療薬の製造方法。
【請求項12】
機能の増強したアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計方法であって、オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオシドを、下記式IまたはII:
【化3】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R
1、R
12、およびR
13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR
14は、水素原子を表す)
で表されるオリゴヌクレオシドに置換することを含む、設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の修飾が付されたヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを含む心疾患の治療薬、該オリゴヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドの心臓における機能増強薬、およびそれらの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的となる核酸配列にハイブリダイズして遺伝子発現自体を抑制することで作用を発現する。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のヌクレアーゼ耐性の向上や、標的核酸への結合親和性、特異性などの改善を目的として様々な人工核酸が開発・導入され、様々な製剤が上市されるようになった(例えば、特許文献1)。しかしながらこれまで開発されてきたASOは、ASO自体の特性あるいは人工核酸の特性から、肝臓や腎臓などの特定の臓器に集積する傾向がありこれらの臓器においては効果を示すものの、例えば、心臓においては所望する効果を発揮することができないことが知られており、使用用途や対象疾患が限られていた。
【0003】
最近、筋ジストロフィー等の特定の遺伝子変異に起因する心疾患の治療目的で、例えば、ASOにリガンドとしての脂肪酸を結合させる等の方法により、心臓においてASOの効果を発揮させる試みが為されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res. 2019 Jul 9; 47(12): 6029-6044.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リガンドを結合させる該方法は、製造面において手間がかかり、またコスト面でも課題が残るものであった。したがって、本発明の課題は、脂肪酸等の特定の物質を結合させることなく心臓において効果を発揮することのできる、製造およびコスト面において優れたASOなどを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、驚くべきことにヌクレオチドの糖部の2’位と4’位との架橋にグアニジンを導入した修飾ヌクレオシドを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が、従来のASOでは効果が発揮し難い心臓でも効果を発揮し得ることを見出し、該修飾ヌクレオシドを有するASOを治療薬として用いることで心疾患の治療につながるとの着想を得た。かかる着想に基づき本発明者らはさらに鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]
下記式IまたはII:
【0009】
【0010】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドを含む、心疾患の治療薬。
[2]
R12が、同一のまたは異なる分岐鎖を有する炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基である、[1]に記載の治療薬。
[3]
R1が、水素原子、または分岐もしくは環を形成していてもよい炭素数1から3のアルキル基であり、R13が、水素原子である、[1]または[2]に記載の治療薬。
[4]
R12が、tert-ブチル基である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の治療薬。
[5]
前記心疾患が、心筋症である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の治療薬。
[6]
下記式IまたはII:
【0011】
【0012】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドを含む、心臓におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの機能増強薬。
[7]
R12が同一のまたは異なる分岐鎖を有する炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基である、[6]に記載の増強薬。
[8]
R1が、水素原子、または分岐もしくは環を形成していてもよい炭素数1から3のアルキル基であり、R13が、水素原子である、[6]または[7]に記載の増強薬。
[9]
R12が、tert-ブチル基である、[6]~[8]のいずれか一つに記載の増強薬。
[10]
心臓におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの機能増強薬が、心臓におけるジストロフィン産生促進薬である、[6]~[9]のいずれか一つに記載の増強薬。
[11]
[1]~[5]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチドを合成する工程を含む、心疾患の治療薬の製造方法。
[12]
機能の増強したアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計方法であって、オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオシドを、下記式IまたはII:
【0013】
【0014】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるオリゴヌクレオシドに置換することを含む、設計方法。
[13]
哺乳動物に対し、下記式IまたはII:
【0015】
【0016】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする、哺乳動物の心疾患の治療方法。
[14]
哺乳動物に対し、下記式IまたはII:
【0017】
【0018】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシドを1以上有するオリゴヌクレオチドを投与することを含む、哺乳動物の心臓におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの機能増強方法。
[15]
哺乳動物の心臓におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの機能増強が、哺乳動物の心臓におけるジストロフィン産生促進である、[14]に記載の増強方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、心臓でも効果を発揮し得るASOの製造が可能となる。また、該ASOは、心疾患、特に遺伝子の変異に起因する心疾患の治療薬として適しており、製造およびコスト面からも優れている。さらに、該ASOは、心臓でも効果を発揮し得るため、心臓においてASOの機能を増強し得うる。また、該ASOは、上記のような理由から、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者において、エクソンスキッピングにより、(短縮型)ジストロフィンの産生を促進し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、正常マウスにアンチセンスオリゴヌクレオチドを単回静脈内投与した時の各臓器におけるmRNA(MALAT1)の量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.心疾患の治療薬
本発明は、ヌクレオチドの糖部の2’位と4’位との架橋にグアニジンを導入した修飾ヌクレオシド(以下、「グアニジン架橋型ヌクレオシド」ともいう。)を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が、心臓でも効果を発揮し得ることを見出したことに基づいて完成した発明である。一態様において、本発明のASO従来の肝臓や筋肉における該ヌクレオチドの効果は維持され得る。
【0022】
具体的には、本発明により、下記式IまたはII:
【0023】
【0024】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるヌクレオシド(すなわち、グアニジン架橋型ヌクレオシド)を1以上(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)有するオリゴヌクレオチド(以下、「本発明のASO」と称することがある。)を含む、心疾患の治療薬(以下、「本発明の治療薬」と称することがある。)が提供される。
【0025】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキル基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基をいい、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、またはn-ヘキシル基をいう。
【0026】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基などが挙げられる。
【0027】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基などが挙げられる。
【0028】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を1つあるいは炭素数1から6の同一のまたは異なる任意の直鎖アルキル基を2つ有するアミノ基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
【0029】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基」は、炭素数1から7の任意の直鎖アルキル基、同一のまたは異なる分岐鎖を有する炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基、炭素数3から7の任意の環状アルキル基および炭素数4から7のこれらの組み合わせを包含する。例えば、炭素数1から7の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、およびn-ヘプチル基が挙げられ、同一のまたは異なる分岐鎖を有する炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0030】
本明細書において、用語「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0031】
本明細書において、「核酸合成のアミノ基の保護基」、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」、「核酸合成の保護基で保護されたアミノ基」内に記載される用語「保護基」とは、核酸合成の際に安定してアミノ基、水酸基、またはメルカプト基を保護し得るものであれば、特に制限されない。具体的には、酸性または中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、および光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基のことをいう。このような保護基としては、例えば、炭素数1から6のアルキル基;炭素数1から6のアルケニル基;アシル基;テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基;テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基;シリル基;炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたメチル基;炭素数1から6のアルコキシ基で置換された炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたメチル基;ハロゲン原子で置換された炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたメチル基;炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたエチル基;ハロゲン原子で置換されたエチル基;1から3個のアリール基で置換されたメチル基;炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン原子および/またはシアノ基で置換された1から3個のアリール基で置換されたメチル基;炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたカルボニル基;ハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基および/またはニトロ基で置換されたアリール基;ハロゲン原子、シアノ基および/または炭素数1から6の3個のアルキル基で置換されたシリル基で置換された炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたカルボニル基;アルケニルオキシカルボニル基;炭素数1から6のアルコキシ基および/またはニトロ基で置換されたアリール基で置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基;などが挙げられる。
【0032】
より具体的には、テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基としては、テトラヒドロピラン-2-イル基、3-ブロモテトラヒドロピラン-2-イル基、4-メトキシテトラヒドロピラン-4-イル基、テトラヒドロチオピラン-4-イル基、4-メトキシテトラヒドロチオピラン-4-イル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基としては、テトラヒドロフラン-2-イル基、テトラヒドロチオフラン-2-イル基が挙げられる。炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたメチル基としては、メトキシメチル基、1,1-ジメチル-1-メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基などが挙げられる。炭素数1から6のアルコキシ基で置換された炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたメチル基としては、2-メトキシエトキシメチル基などが挙げられる。ハロゲン原子で置換された炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたメチル基としては、2,2,2-トリクロロエトキシメチル基、ビス(2-クロロエトキシ)メチル基などが挙げられる。炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたエチル基としては、1-エトキシエチル基、1-(イソプロポキシ)エチル基などが挙げられる。ハロゲン原子で置換されたエチル基としては、2,2,2-トリクロロエチル基などが挙げられる。1から3個のアリール基で置換されたメチル基としては、ベンジル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、9-アンスリルメチル基などが挙げられる。「炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン原子および/またはシアノ基で置換された1から3個のアリール基で置換されたメチル基」としては、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,4,5-トリメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’-ジメトキシトリフェニルメチル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、4-クロロベンジル基、4-ブロモベンジル基、4-シアノベンジル基などが挙げられる。炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基および/またはニトロ基で置換されたアリール基」としては、4-クロロフェニル基、2-フロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、シアノ基および/または3個の炭素数1から6のアルキル基で置換されたシリル基で置換された炭素数1から6のアルコキシ基で置換されたカルボニル基」としては、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2-シアノエトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基などが挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。「炭素数1から6のアルコキシ基および/またはニトロ基で置換されたアリール基で置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、4-メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2-ニトロベンジルオキシカルボニル基、4-ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0033】
「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、例えば、脂肪族アシル基;芳香族アシル基;1から3個のアリール基で置換されたメチル基;ハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基および/またはニトロ基で置換されたアリール基;炭素数1から6のアルキル基;または炭素数1から6のアルケニル基;が挙げられる。「核酸合成のアミノ基の保護基」としては、例えば、アシル基、ベンゾイル基が挙げられる。「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」としては、例えば、脂肪族アシル基または芳香族アシル基、ベンゾイル基が挙げられる。
【0034】
本明細書において、オリゴヌクレオチドには、薬理学上許容されるオリゴヌクレオチドの塩も含まれるものとする。該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような炭素数1から6のアルカンで置換されたスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げられる。
【0035】
上述のグアニジン架橋型ヌクレオシドは、本発明の治療薬に含まれるオリゴヌクレオチドのいずれの位置にあってもよく、例えば、5’末端、あるいは3’末端でもよい。
【0036】
本発明の治療薬に含まれるオリゴヌクレオチドを構成するグアニジン架橋型ヌクレオシド以外のヌクレオシドとしては、例えば、下記式IVで表されるヌクレオシドなどが挙げられる。
【0037】
【0038】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、そして
R8は水素原子でありかつR9は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1から6の直鎖アルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から6の直鎖アルコキシ基である。)
【0039】
また、R8およびR9は一緒になって以下の式:
【0040】
【0041】
(式中、
R21は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から6のアルケニル基、前記α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基であり;
R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
R22およびR23は一緒になって、-(CH2)q-[式中、qは2から5の整数である]を表し;
R24およびR25は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは、
R24およびR25は一緒になって、=C(R36)R37[式中、R36およびR37は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]を表し;
R26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり;
R28は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり;
R29は、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルコキシ基、アミノ基、あるいは核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり;
R31、R32、およびR33は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基、あるいは核酸合成のアミノ基の保護基であり;
R34およびR35は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から6のアルコキシ基、アミノ基、または核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり;
mは0から2の整数であり;
nは0から1の整数であり;
pは0から1の整数であり;
X1は、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
X2は酸素原子または硫黄原子である]
で表される二価の基を表す。)を構成してもよく、かかる構成を有するヌクレオシドを架橋型ヌクレオシドと称することがある。
【0042】
より具体的には、上記架橋型ヌクレオシドとして、例えば、下記構造式を有するヌクレオシドなどが挙げられる。
【0043】
【0044】
(式中、Rは、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表す。好ましくは、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基であり、より好ましくは、Rは、水素原子またはメチル基である。Baseの定義は、上記式IVにおける定義と同一である。)
【0045】
本発明の治療薬に含まれるオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオシドは、天然型のヌクレオシドであってもよく、かかる天然型のヌクレオシドとしては、アデノシン、N6-メチルアデノシン、グアノシン、ウリジン、5-メチルウリジン、シチジン、デオキシアデノシン、N6-メチル-2’-デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシウリジン、デオキシシチジン、5-メチル-2’-デオキシシチジンなどが挙げられる。
【0046】
本発明の治療薬に含まれるオリゴヌクレオチドの長さは、アンチセンス活性を有する限り特に限定されないが、典型的には10~50ヌクレオチド長であり、好ましくは10~30ヌクレオチド長であり、より好ましくは13~30ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは15~20ヌクレオチド長である。
【0047】
本発明の治療薬に含まれるオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオシドにおいて、2’位と4’位との架橋以外の修飾を、さらに施してもよい。かかる修飾としては、例えば、ホスホロチオエート修飾、糖部の2’-O-メトキシエチル修飾、糖部の2’-O-メチル修飾、糖部の2’フルオロ修飾、Base(塩基部)のメチル化またはアセチル化、Baseの置換などが挙げられるが、これらに限定されない。Baseを置換する場合には、置換する前のBaseの標的の(すなわち、該Baseと塩基対を形成する)塩基と、塩基対を形成できるものに置換することが好ましい。前記塩基対は、ワトソンクリック型塩基対だけでなく、フーグスティーン型塩基対やゆらぎ塩基対(Wobble base pair)であってもよい。
【0048】
本発明の治療薬に含まれるオリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドの配列と相補的な配列を含む標的mRNA(本明細書において、mRNAには、pre-mRNAも含まれるものとする。)の機能(転写後修飾、翻訳など)を抑制するもの(以下、「抑制型ASO」と称することがある。)であってもよく、該機能を亢進するもの(以下、「亢進型ASO」と称することがある。)であってもよい。抑制型ASOは、典型的には、標的mRNAと二本鎖領域を形成し、該二本鎖領域がリボヌクレアーゼH(RNase H)により切断されることで、標的mRNAの機能を抑制することができる(このようなASOの機能を抑制型ASOの機能とも称する)。一方で亢進型ASOは、典型的には、pre-mRNAのスプライシング促進配列と二本鎖領域を形成して該配列をマスクし、スプライシングをスキップさせることで、mRNAの機能を亢進(回復)することができる(これにより、機能的なタンパク質の細胞中での存在量が上昇することとなる)(このようなASOの機能を亢進型ASOの機能とも称する)。あるいは、標的mRNAに含まれる、該mRNAを分解する酵素の結合配列と二本鎖領域を形成して該配列をマスクし、該mRNAの分解を抑制することで、mRNAの機能を亢進することができる(このようなASOの機能も亢進型ASOの機能とも称する)。本明細書において、抑制型ASOの機能と、亢進型ASOの機能を総称して、「ASOの機能」または「アンチセンス活性」とも称する。
【0049】
本発明のASOは、標的mRNAの機能を抑制または亢進することができ、それにより遺伝子の発現を制御することができる。本明細書において「遺伝子の発現」とは、特にことわらない限り、少なくとも「標的mRNAにコードされた機能的なタンパク質の産生」を含む意味で用いられるが、さらに「標的mRNAの産生」をも含む意味で用いられる。したがって、遺伝子の発現抑制とは、本発明のASOの投与により、該遺伝子にコードされる機能的なタンパク質の細胞中での存在量が減少することだけでなく、該遺伝子から転写されるmRNAの細胞中での存在量が減少することも含んでいてもよい。同様に、遺伝子の発現亢進とは、本発明のASOの投与により、該遺伝子にコードされる機能的なタンパク質の細胞中での存在量が増加することだけでなく、該遺伝子から転写されるmRNAの細胞中での存在量が増加することも含んでいてもよい。
【0050】
抑制型ASOは、生体内での安定性および効率的なmRNAの切断の観点から、ギャップマー(Gapmer)型オリゴヌクレオチドであることが好ましい。本発明において「ギャップマー型オリゴヌクレオチド」とは、RNase Hにより認識される複数(例:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上)のヌクレオチドを有する内部領域(本明細書において、「ギャップ領域」と称することがある。)が、リボヌクレアーゼに対する耐性を付与するように修飾された少なくとも一つ(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)のヌクレオチドを有する外部領域(本明細書において、3’側の外部領域を「3’ウイング領域」と、5’側の外部領域を「5’ウイング領域」と称することがある。)間に配置されるキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドを意味する。3’ウイング領域と5’ウイング領域の各領域を構成する少なくとも一つのヌクレオシドは、架橋型ヌクレオシドであることが好ましい。
【0051】
亢進型ASOは、生体内での安定性の観点から、RNaseに対する耐性を付与するように修飾されたヌクレオシドを少なくとも一つ有するものがよい。かかるASOは、すべてのヌクレオシド残基が修飾されたものであってもよく、一部のヌクレオシド残基が修飾されたもの(すなわち、ミックスマー(Mixmer)型オリゴヌクレオチド)であってもよい。かかる修飾されたヌクレオシドとしては、架橋型ヌクレオシドが好ましい。
【0052】
本明細書において、「心臓でも効果を発揮し得る」とは、グアニジン架橋型ヌクレオシドを有さないオリゴヌクレオチドと比較して、少なくとも心臓における標的mRNAの機能を抑制または亢進できることを意味する。また、「ヌクレオチドの効果が維持され得る」とは、グアニジン架橋型ヌクレオシドを有さないオリゴヌクレオチドと比較して、ASOの機能が維持されるか、向上されることを意味する。
【0053】
本発明において、「治療」には、症状の軽減や改善、病気や症状の進行、あるいは症状の顕在化の予防、遅延や停止も包含される。本発明の治療薬の対象疾患として、例えば、本発明のASOの標的mRNAにコードされるタンパク質の過剰発現または過剰蓄積、あるいは本発明のASOの標的mRNAにコードされるタンパク質の欠失または減少に起因する心疾患が挙げられる。また、本発明のASOの標的がエクソン内のスプライシング促進配列であり、スプライシング反応時に該ASOを導入することでスプライシング促進配列の機能が阻害されエクソンのスキッピングが誘導され、エクソンの配列が消失した新たなmRNAが産生されることで病態が改善するような心疾患も挙げられる。具体的には、例えば、心筋症(特発性心筋症、特定心筋症)等が挙げられる。特定心筋症としては、例えば、虚血性心筋疾患、炎症性心筋疾患、代謝性心筋疾患、全身性心筋疾患が挙げられ、全身性心筋疾患としては、例えば、ジストロフィン異常症(デュシェンヌ型(DMD)/ベッカー型(BMD)筋ジストロフィー)が挙げられる。例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであれば、ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)から転写されたmRNA前駆体のスプライシング促進配列が本発明のASOの標的となる。
【0054】
本発明の治療薬として、有効量の本発明のASOを単独で用いてもよいし、任意の担体、例えば医薬上許容される担体とともに、医薬組成物として製剤化してもよい(製剤化したものを治療剤とも称する)。
【0055】
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリド等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0056】
本発明のASOの標的細胞内への導入を促進するために、本発明の治療薬は更に核酸導入用試薬を含んでいてもよい。該核酸導入用試薬としては、塩化カルシウム、Calcium enrichment試薬、アテロコラーゲン;リポソーム;ナノパーティクル;リポフェクチン、リプフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を用いることができる。
【0057】
また、本発明の治療薬は、本発明のASOがリポソームに封入されてなる医薬組成物であってもよい。リポソームは、1以上の脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞であり、通常は水溶性物質を内相に、脂溶性物質を脂質二重層内に保持することができる。本明細書において「封入」という場合には、本発明のASOはリポソーム内相に保持されてもよいし、脂質二重層内に保持されてもよい。本発明に用いられるリポソームは単層膜であっても多層膜であってもよく、また、粒子径は、例えば10~1000nm、好ましくは50~300nmの範囲で適宜選択できる。標的組織への送達性を考慮すると、粒子径は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0058】
オリゴヌクレオチドのような水溶性化合物のリポソームへの封入法としては、リピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法、リモートローディング法等が挙げられるが、これらに限定されず、任意の公知の方法を適宜選択することができる。
【0059】
本発明の医薬は、経口的に又は非経口的に、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル)に対して投与することが可能であるが、非経口的に投与するのが望ましい。よって、哺乳動物に対し、本発明のASOの有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における心疾患の治療方法も提供される。
【0060】
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、静脈内注入、局所注入(局所外用、局所塗布)、髄腔内投与、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性及び非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性及び非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分及び医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解又は懸濁すればよい状態で保存することもできる。非経口的な投与に好適な別の製剤としては、噴霧剤等を挙げることができる。
【0061】
医薬組成物中の本発明のASOの含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.1ないし100重量%である。
【0062】
本発明の治療薬の投与量は、投与の目的、投与方法、対象疾患の種類、重篤度、投与対象の状況(性別、年齢、体重など)によって異なるが、例えば、成人に全身投与する場合、通常、本発明のASOの一回投与量として0.01mg/kg以上1000mg/kg以下、局所投与する場合、0.001mg/body以上100mg/body以下が望ましい。かかる投与量を1~10回、より好ましくは5~10回投与することが望ましい。
【0063】
本発明の治療薬は、例えば既に上市されている心疾患に対する治療薬と組み合わせて用いることもできる。これらの併用薬剤(組み合わせ医薬)は、本発明の医薬とともに製剤化して単一の製剤として投与することもできるし、あるいは、本発明の医薬とは別個に製剤化して、本発明の医薬と同一もしくは別ルートで、同時もしくは時間差をおいて投与することもできる。また、これらの併用薬剤の投与量は、該薬剤を単独投与する場合に通常用いられる量であってよく、あるいは通常用いられる量より減量することもできる。
【0064】
2.ASOの機能増強薬
別の態様において、本発明により、本発明のグアニジン架橋型ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを1以上(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)含む、ASOの機能増強薬が提供される。
【0065】
本明細書において、ASOの機能の増強とは、本発明のASOの機能が、本発明で用いるヌクレオチドの糖部の2’位と4’位との架橋にグアニジンを導入した修飾ヌクレオシド(以下、「グアニジン架橋型ヌクレオシド」ともいう。)を有さないASOのものと比して、向上していることを意味する。
【0066】
本発明のASOの機能増強薬としては、例えば、本発明のグアニジン架橋型ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを1以上(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)含む、ジストロフィンの産生促進薬が挙げられる。
【0067】
本発明のジストロフィンの産生促進薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者において、ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体におけるスプライシング促進配列を標的とするASOを含む。該ASOにより、スプライシング反応時に、スプライシング促進配列の機能が阻害されエクソンのスキッピングが誘導され、エクソンの配列が消失した新たなmRNAが産生され、その結果として、心臓において短縮型ジストロフィンの産生が促進される。
【0068】
本発明のASOの機能増強薬(例:ジストロフィンの産生促進薬)は、ASOを単独で用いてもよいし、任意の担体、例えば、医薬上許容される担体とともに、医薬組成物として製剤化してもよい。また、該機能増強薬は、経口的に又は非経口的に、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル)に対して投与することが可能であるが、非経口的に投与するのが望ましい。よって、哺乳動物に対し、本発明のASOを投与することを含む、該哺乳動物の心臓におけるASOの機能増強方法(例:ジストロフィンの産生促進方法)も提供される。
【0069】
本発明のASOの機能増強薬(例:ジストロフィンの産生促進薬)に含まれるASOの具体的な構造等の内容は、「1.心疾患の治療薬」の内容が全て援用される。
【0070】
3.グアニジン架橋型ヌクレオシドを有するASOの製造方法
別の態様において、本発明により、本発明のグアニジン架橋型ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを合成する工程を含む、本発明の治療薬の製造方法(以下、「本発明の製法」と称することがある。)が提供される。
【0071】
本発明の製法におけるオリゴヌクレオチドの合成方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。かかる公知の方法として、例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法などの化学合成法が挙げられる。前記化学合成法において、市販の自動核酸合成機を使用することができる。また、前記化学合成法は、一般に、アミダイト法が使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、公知の方法(例えば、国際公開第2014/046212号に記載の方法)により作製してもよく、市販のアミダイトを用いてもよい。
【0072】
4.機能の増強したアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計方法
別の態様において、本発明により、以下:
機能の増強したアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計方法であって、オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオシドを、下記式IまたはII:
【0073】
【0074】
(式IまたはII中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
R1、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基を表し、そしてR14は、水素原子を表す)
で表されるオリゴヌクレオシドに置換することを含む、設計方法
が提供される。
【0075】
本発明において「置換」とは、本発明の設計方法の対象(設計元)となるヌクレオチドを構成するオリゴヌクレオシドを、上記式IまたはIIで表されるオリゴヌクレオシドへと置換することを意味する。また、置換後のオリゴヌクレオシドが上記式IまたはIIで表されるオリゴヌクレオシドと同じ構造になる限り、上記式IまたはIIで表されるオリゴヌクレオシドの一部の置換であってもよい。
【0076】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0077】
実施例1:評価用のアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計と合成
GuNA(t-Bu)修飾の効果を検討するために、下記の表1に示すアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計した。5は5-メチルシトシン、LnはLNA、AmはAmNA、ScはscpBNA、GuはGuNA(t-Bu)、^はホスホロチオエート結合を示す。
【0078】
【0079】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、核酸自動合成機(nS-8型、株式会社ジーンデザイン製)を用いて合成した。鎖長の伸長は標準的なホスホロアミダイト法を用いた。ホスホロチオエート化のための硫化はDDTT(((dimethylamino-methylidene)amino)-3H-1,2,4-dithiazaoline-3- thione)等を使用し、アクチベーターは0.25 M Activator 42(登録商標)(カタログ番号L031100、シグマ-アルドリッチ)を用いて、カップリング時間を30分に延長して行った。塩基処理により固相担体からの切り出し及び脱保護を行ない、逆相HPLCおよび陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行った。得られたアンチセンスオリゴヌクレオチドの純度及び構造をLC-MSによって確認した。
【0080】
実施例2:正常マウスにアンチセンスオリゴヌクレオチドを単回静脈内投与した時の全身動態の変化
アンチセンスオリゴヌクレオチドによる正常マウスへの単回静脈内投与試験には、BALB/cCrSlc(メス、8週齢、日本エスエルシー株式会社)を用いた。動物は、温度:22~26℃、湿度:40~65%、照明時間:7:00~19:00(12時間)の環境下のオープンラックにて飼育し、すべての動物は飼料及び水分を自由摂取させた。
【0081】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのマウスへの投与は、全身動態の評価をすべく、静脈内投与とした。G注射針を用いて、尾静脈より単回投与した。アンチセンスオリゴヌクレオチドは表1に示してある4配列を用いた。コントロール群としてPBSを投与した。
【0082】
各アンチセンス及び、PBSを単回静脈内投与後、72時間後に剖検を実施した。イソフルランの吸入麻酔 (麻酔の濃度:1.5-3.0%)にて麻酔した。全身麻酔下のマウスを開腹し、腹部後大静脈よりEDTA-2Kを加えたシリンジ及び23G注射針を用いて0.15 mLを目安に採血し、氷温下にて一時保管した。その後、開胸し、心臓より1万単位/10 mLヘパリンナトリウム注を加えたシリンジ及び23G注射針を用いて0.4 mLを目安に採血し、氷温下にて一時保管した。各採血液は、血液学検査及び血液生化学検査を実施した。その後、腹部大動脈を切開し、放血死させた。肝臓、心臓、筋肉、大腿部骨格筋を摘出した。摘出した臓器は、臓器重量を測定後、液体窒素にて凍結し、-60℃以下で保管した。
【0083】
摘出した臓器は、RNA抽出試薬(シグマアルドリッチジャパン、Tripure Isolation Reagent)を用いて、total RNAを抽出した。当該RNAを鋳型として、逆転写反応試薬(TOYOBO、ReverTra Ace qPCR RT kit)を用いて、逆転写反応を行った。反応条件は、37℃ 15分→98℃ 5分で行った。さらに当該cDNAを鋳型として、核酸増幅反応試薬(TOYOBO、THUNDERBIRD(登録商標) Probe qPCR Mix)を用いて、PCR増幅反応を行った。核酸増幅反応は、92℃ 60秒→[(95℃ 15秒→60℃ 60秒)×45サイクル]の温度サイクリングで行った。リアルタイムPCRでは、ハウスキーピング遺伝子のマウスグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)のmRNA量も同時に測定し、GAPDHのmRNA量に対するMALAT1のRNA量を評価した。各アンチセンスオリゴヌクレオチドによるmRNA量は、PBS投与群(図面中、CTと示す)のmRNA量を1とした場合の相対値にて示した。
【0084】
用いるプライマーセットは下記の通りである:
(MALAT1検出用プライマーセット)
TaqMan Gene Expression Assay Mm01227912_s1_4351370(ThermoFisher Scientific社)
(GAPDH検出用プライマーセット)
TaqMan Gene Expression Assay Mm99999915_g1_4448490(ThermoFisher Scientific社)
【0085】
その結果を
図1に示す。LNA修飾を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した場合、肝臓におけるmRNA発現量はPBS投与群の約15%、筋肉におけるmRNA発現量はPBS投与群の約40%まで抑制されているのに対し、心臓におけるmRNA発現量は約60%までしか抑制されていなかった。それに対し、GuNA(t-Bu)修飾を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した場合、肝臓や筋肉におけるmRNA発現量は同程度であったのに対し、心臓におけるmRNA発現量は約40%以下にまで抑制されていた。
本発明により、心臓でも効果を発揮し得るASOの製造が可能となる。また、該ASOは、心疾患、特に遺伝子の変異に起因する心疾患の治療薬として適しており、製造およびコスト面からも優れている。さらに、該ASOは、心臓でも効果を発揮し得るため、心臓におけるASOの機能増強薬としても有用である。