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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105747
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20240731BHJP
   F01L 1/356 20060101ALI20240731BHJP
   H02K 29/08 20060101ALI20240731BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20240731BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240731BHJP
   H02K 1/27 20220101ALI20240731BHJP
【FI】
H02K11/215
F01L1/356 Z
H02K29/08
H02K1/22 A
H02K7/116
H02K1/27 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098405
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】横山 渉
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 肇
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 省三
【テーマコード(参考)】
3G018
5H019
5H601
5H607
5H611
5H622
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018AB16
3G018CA13
3G018DA38
3G018DA42
3G018DA66
3G018DA70
3G018DA83
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA18
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB20
5H019BB29
5H019CC03
5H019CC08
5H601AA29
5H601BB16
5H601CC01
5H601CC20
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD25
5H601EE12
5H601EE18
5H601EE35
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA32
5H601JJ02
5H601JJ05
5H601KK08
5H601KK25
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB14
5H607DD03
5H607EE31
5H607GG01
5H607HH01
5H607HH09
5H607JJ01
5H607KK07
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB07
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
5H611UA04
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA14
5H622CB03
5H622PP10
5H622PP20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】磁気センサの高い検出精度を確保しつつコストの高騰を抑制できるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】ブラシレスモータは、モータハウジングの内周に固定され、ステータコア17aに巻装されたコイル17bを有するステータ17と、モータ出力軸18と、ステータの内側に配置されたロータコア23及びロータコアに配置された永久磁石25を有するロータ19と、永久磁石の磁気を検出する磁気センサ45a,45b,45cと、を備え、磁気センサは、永久磁石に対してロータの回転軸方向に離れた位置で、かつ径方向の外側の測定位置に配置され、永久磁石の軸方向の磁束成分を検出するようになっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、前記ステータコアに巻装された複数の巻線と、を有するステータと、
前記ステータの内側に配置されたロータコア及び前記ロータコアに配置された永久磁石を有するロータと、
前記永久磁石の磁気を検出する回転検出センサであって、前記永久磁石に対して前記ロータの回転軸方向に離れた位置で、かつ前記永久磁石に対して前記回転軸の径方向の外側もしくは内側の位置に少なくとも一部が配置され、前記永久磁石の前記回転軸方向の磁束成分を検出する回転検出センサと、
を備えたブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータであって、
前記回転検出センサは、その中心が前記ロータの径方向において前記永久磁石の位置よりも外側に位置していることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のブラシレスモータであって、
前記回転検出センサは、その中心が前記ロータの径方向において前記永久磁石と前記巻線との間に位置していることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のブラシレスモータであって、
前記回転検出センサは、前記ロータと前記ステータの間の径方向中央を跨ぐように取り付けられていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1に記載のブラシレスモータであって、
前記回転検出センサは、周方向の取り付け位置において前記隣接する巻線の間に一部が配置されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項6】
請求項1に記載のブラシレスモータであって、
前記永久磁石は、前記ロータコアの外周側の内部軸方向に沿って形成された貫通孔の内部に配置されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のブラシレスモータであって、
前記永久磁石の軸方向の一端部が、前記貫通孔の一端側から前記ロータの回転軸方向に沿って突出して設けられ、
前記ロータとステータの軸方向一側に回路基板が設けられ、
前記回転検出センサは、前記回路基板の前記永久磁石の前記一端部と軸方向で対向する位置に設けられていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のブラシレスモータであって、
前記永久磁石の一端部と回路基板との間に非磁性材の仕切壁を有し、
前記仕切壁は、前記回転検出センサと軸方向で対向する部位に第1凹部を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のブラシレスモータであって、
前記仕切壁は、前記永久磁石の前記一端部と対向する部位に第2凹部を有していることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のブラシレスモータであって、
前記仕切壁は、前記第1凹部と第2凹部が径方向において一部が重なっていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項11】
請求項1に記載のブラシレスモータであって、
前記ブラシレスモータを内燃機関のバルブタイミング制御装置に適用したことを特徴とするブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブラシレスモータとしては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。このブラシレスモータは、モータ出力軸の外周に固定されたロータと、該ロータのロータコア外周に設けられた複数の永久磁石であるマグネットと、を有している。そして、マグネットの軸方向端面の軸方向に回転検出センサである磁気センサが配置されており、この磁気センサは、少なくともその一部がマグネットの軸方向端面の径方向の幅の範囲内に重なるような位置に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-207554号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のブラシレスモータは、マグネットの軸方向端面に対して磁気センサの一部をオーバーラップさせるように配設しているが、この配設位置ではマグネットの着磁方向が、径方向内側がN極(またはS極)で、外側がS極(またはN極)となることから、径方向の磁束成分が多くなり、軸方向の磁束成分が少なくなる。このため、軸方向の磁束成分を検出する磁気センサでは検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、径方向の磁束成分に対応した磁気センサを用いることも考えられるが、この場合は軸方向の磁束成分に対応した磁気センサよりもコストが増加する可能性がある。
【0006】
本発明は、前記従来の技術的課題に鑑みて案出されたもので、回転検出センサの高い検出精度を確保しつつコストを抑制できるブラシレスモータを提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
好ましい態様の一つとしては、とりわけ、永久磁石の磁気を検出する回転検出センサであって、この回転検出センサは、前記永久磁石に対して前記ロータの回転軸方向に離れた位置で、かつ前記永久磁石に対して前記回転軸の径方向の外側もしくは内側の位置に少なくとも一部が配置され、前記永久磁石の前記回転軸方向の磁束成分を検出するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、回転検出センサの高い検出精度を確保しつつコストの高騰を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に供される内燃機関のバルブタイミング制御装置を一部縦断面して示す側面図である。
図2】本実施形態に供される減速機構側の構成部材とブラシレスモータを示す分解斜視図である。
図3】本実施形態に供されるブラシレスモータの縦断面図である。
図4図3のA部拡大図である。
図5】本実施形態に供されるロータの斜視図である。
図6図5に示すロータの上側部分を断面して示す横断面図である。
図7】本実施形態に供される回路基板に設けられた3つの磁気センサの取り付け位置を示す概略図である。
図8】永久磁石に対して一つの磁気センサを径方向での9箇所の取り付け位置(測定位置)を示す拡大図である。
図9図8に示す9箇所の測定位置でのそれぞれの磁束密度(軸方向成分)を測定したグラフである。
図10】本実施形態に供される永久磁石の磁束密度の分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るブラシレスモータを内燃機関のバルブタイミング制御装置に適用した場合の実施形態を図面に基づいて詳述する。
〔第1実施形態〕
図1は本実施形態に供される内燃機関のバルブタイミング制御装置を一部縦断面して示す側面図、図2は本実施形態に供される減速機構側の構成部材とブラシレスモータを示す分解斜視図である。
【0011】
バルブタイミング制御装置は、内燃機関の吸気側に適用されたもので、図1及び図2に示すように、タイミングスプロケット1(以下、スプロケット1という。)と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持されたカムシャフト2と、スプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構と、を備えている。
【0012】
スプロケット1は、円環状のスプロケット本体1aと、このスプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、外側に巻回された図外のタイミングチェーンを介して内燃機関のクランクシャフトから回転力を受ける歯車部1bと、を備えている。
【0013】
なお、スプロケット1の外周には、内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッド01に結合された図外のチェーンケースが設けられている。
【0014】
スプロケット本体1aのカムシャフト2と軸方向で反対側に位置する前端には、後述する減速機13の一部を構成する円環状の内歯車5が一体に設けられている。この内歯車5は、スプロケット本体1aに一体に結合されていると共に、内周に波形状の複数の内歯5aを有している。
【0015】
スプロケット本体1aは、カムシャフト2側の内周面と後述する従動部材9の外周面との間に滑り軸受機構6が設けられている。この滑り軸受機構6は、従動部材9(カムシャフト2)の外周でスプロケット1を相対回転可能に軸受けしている。
【0016】
さらに、スプロケット本体1aのカムシャフト2側の後端面には、鉄系金属の板材で円環状に形成された保持プレート8が固定されている。保持プレート8は、図2にも示すように、中央孔8aの内周面の所定位置に中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部8bが一体に設けられている。このストッパ凸部8bは、ほぼ逆台形状に形成されて、先端面が後述するアダプタ4のストッパ凹溝4bの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。
【0017】
アダプタ4は、図2にも示すように、金属板材によって形成され、保持プレート8の中央孔8aに嵌合している。また、アダプタ4は、中央に従動部材9の円筒部9cが挿入される挿入孔4aが貫通形成されていると共に、外周面の所定位置にストッパ凹溝4bが設けられている。このストッパ凹溝4bは、アダプタ4の外周に沿って所定範囲の円弧状に形成されており、周方向の両側縁のストッパ凸部8bが円周方向から当接して、スプロケット1に対する従動部材9(カムシャフト2)の最大進角側、あるいは最大遅角側の相対回転位置を機械的に規制するようになっている。
【0018】
スプロケット1の内歯車5側の前端面には、フロントプレート15が設けられている。このフロントプレート15は、図1及び図2に示すように、例えば鉄系金属板を円環状にプレス成形で打ち抜き形成されたもので、中央には後述する偏心軸30が挿入配置される挿入孔15aが貫通形成されている。
【0019】
内歯車5を含むスプロケット本体1aとフロントプレート15の各外周部には、複数(本実施形態では6本)のボルト7が挿通する6つのボルト挿通孔1c、15bが周方向のほぼ等間隔位置にそれぞれ貫通形成されている。また、保持プレート8は、各ボルト7の先端部の雄ねじ部7aが螺着する6つの雌ねじ孔8cが形成されている。
【0020】
カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有している。
【0021】
また、カムシャフト2は、一端部2aの先端面から内部軸心方向に沿って形成された挿入孔2bに、後述するカムボルト14の軸部14bが挿入される。また、挿入孔2bの先端側の内周面には、雌ねじ部2cが形成されている。
【0022】
従動部材9は、鉄系金属によって一体に形成され、図1及び図2に示すように、円盤状本体9aを有している。この円盤状本体9aは、中央位置にカムボルト14の軸部14bが挿入されるボルト挿入孔9bが貫通形成されている。また、このボルト挿入孔9bの孔縁には、カムシャフト2方向へ突出した円筒部9cが一体に設けられている。円盤状本体9aは、外周面に滑り軸受機構6の一部を構成するジャーナル部11が一体に設けられている。
【0023】
従動部材9は、円筒部9cの先端部がカムシャフト2の一端部2aの円筒溝に軸方向から嵌合した状態で、カムボルト14によってカムシャフト2に軸方向から締結固定されている。
【0024】
滑り軸受機構6は、図1及び図2に示すように、スプロケット本体1aの内周面に形成された円環状の軸受凹部10と、円盤状本体9aの外周面に設けられ、軸受凹部10の内部に配置されたジャーナル部11と、を有している。
【0025】
軸受凹部10は、円環状の底面に滑り軸受面を有し、カムシャフト2側の他端部が開口されて外部に解放され、この解放された他端開口が保持プレート8の内周部の内側面によって覆われている。
【0026】
ジャーナル部11は、円環状の外周面が軸受凹部10の滑り軸受面全体に摺動可能になっている。ジャーナル部11は、軸方向の保持プレート8側の他端面が保持プレート8の内周部の内側面に摺動可能になっている。
【0027】
カムボルト14は、図1及び図2に示すように、ほぼ円柱状の頭部14aと、頭部14aに一体に固定された軸部14bと、この軸部14bの外周面に形成されて、カムシャフト2の雌ねじ部2cに螺着する雄ねじ部14cと、を有している。
【0028】
頭部14aは、高周波焼き入れなどの熱処理が施された外周面にニードルベアリング34の各ニードルローラ34aが転動可能に支持されている。
【0029】
位相変更機構は、図1及び図2に示すように、フロントプレート15の前端側に配置されたブラシレスモータ12と、このブラシレスモータ12からオルダム継手を介して伝達された回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機13と、から主として構成されている。
【0030】
減速機13は、図1及び図2に示すように、ブラシレスモータ12とは軸方向から分離独立して設けられ、各構成部材が保持プレート8とフロントプレート15との間のスプロケット1の内部に収容配置されている。
【0031】
減速機13は、スプロケット本体1aの内部に一部が配置された円筒状の偏心軸30と、該偏心軸30の外周に設けられたボールベアリング31と、該ボールベアリング31の外周に設けられ、内歯車5の各内歯5a内に転動自在に保持された複数のローラ32と、従動部材9の円盤状本体9aの外周側に一体に設けられ、複数のローラ32を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する保持器33と、から主として構成されている。
【0032】
偏心軸30は、図1図2に示すように、カムボルト14の頭部14aの外周に設けられたニードルベアリング34の外周に配置された偏心軸部30aと、該偏心軸部30aのブラシレスモータ12側に一体に有する円筒状の連結部30bと、を有している。
【0033】
偏心軸部30aは、軸方向の長さがニードルベアリング34の軸方向の長さよりも長い円筒状に形成されている。また、偏心軸部30aは、図2に示すように、周方向全体の肉厚tが厚薄変化して軸心Xがカムボルト14の軸心Yに対して僅かに偏心している。
【0034】
連結部30bは、均一な肉厚でほぼ真円状に形成されていると共に、偏心軸部30aよりも僅かに肉厚に形成されている。この連結部30bは、スプロケット本体1aの内部からフロントプレート15の挿入孔15aを介してブラシレスモータ12方向へ突出している。
【0035】
この連結部30bは、ブラシレスモータ12の後述する中間部材28と共にオルダム継手を構成している。連結部30bは、内部に中間部材28の筒状基部28aが軸方向から嵌合可能な二面幅状の嵌合孔が形成されている。
【0036】
連結部30bは、嵌合孔の内周面の円周方向のほぼ180°の位置に、二面幅を構成する三日月状の一対の凸部が設けられている。一対の凸部のほぼ中央位置には、筒状基部28aの2つの伝達キー28b、28cが回転軸方向から嵌合可能な一対のキー溝21d、21eが径方向の対称位置に形成されている。この各キー溝21d、21eは、各伝達キー28b、28cと相似形の矩形状に形成されて、その深さが各伝達キー28b、28cの幅とほぼ同じ長さに設定されている。
【0037】
一対の凸部は、後述する潤滑油供給機構から減速機13内に供給された潤滑油をオルダム継手に対する過剰な供給を抑制する抑制部として機能するようになっている。
【0038】
ニードルベアリング34は、カムボルト14の頭部14aの外周面を転動する複数のニードルローラと、偏心軸部21aの内周面に形成された段差面に固定されて、内周面にニードルローラを転動可能に保持する複数の溝部を有する円筒状のシェルと、を有している。
【0039】
ボールベアリング31は、図1及び図2に示すように、ニードルベアリング34の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置されている。また、ボールベアリング31は、内輪31aと、外輪31b、該両輪との間に介装されたボールと、該ボールを保持するケージと、から構成されている。内輪31aは、外輪31bよりも径方向の肉厚幅が大きく形成されて偏心軸部21aの外周面に圧入固定されている。
【0040】
これに対して、外輪31bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪31bは、軸方向のブラシレスモータ12側の一端面がフロントプレート15の内側面に微小クリアランスを介して対峙している。また、外輪31bの軸方向の他端面も、これに対向する従動部材9の円盤状本体9aの背面に微小なクリアランスを介して対峙している。
【0041】
外輪31bは、外周面に各ローラ32の外周面が転動可能に当接している。また、外輪31bの外周面と保持器33の内面との間には、円環状のクリアランスが形成されている。したがって、ボールベアリング31は、クリアランスを介して全体が偏心軸部21aの偏心回転に伴って径方向へ偏心動可能になっている。
【0042】
保持器33は、円筒状に形成されて、円盤状本体9aの外周部に一体に設けられている。つまり、この保持器33は、円盤状本体9aのジャーナル部11の基部側からフロントプレート15方向へ突出している。
【0043】
保持器33は、複数のローラ32をそれぞれ転動自在に保持する複数のローラ保持孔33aが軸方向に沿って形成されている。このそれぞれのローラ保持孔33aは、保持器33の円周方向の等間隔位置に設けられ、先端部側が閉塞されて前後方向に細長い長方形状に形成されている。また、ローラ保持孔33aは、その全体の数(ローラ32の数)が内歯車5の内歯5aの全体の歯数よりも少なくなっており、これによって、所定の減速比を得るようになっている。
【0044】
各ローラ32は、ボールベアリング31の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ内歯車5の内歯5aに嵌入し、各ローラ保持孔33aの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向へ揺動運動するようになっている。
【0045】
また、減速機13とオルダム継手は、潤滑油供給機構を介して内部に潤滑油が供給されるようになっている。潤滑油供給機構は、図1に示すように、カムシャフト2の内部軸方向に形成された油供給通路35と、アダプタ4の内周部に幅方向に貫通形成されて、一端が油供給通路35に連通した導入通路孔36と、円盤状本体9aに幅方向に貫通形成されて、一端が導入通路孔36に連通し、他端が減速機13のニードルベアリング34方向へ指向した供給孔37と、油供給通路35に潤滑油を供給するオイルポンプ38と、を有している。
【0046】
図3は本実施形態に供されるブラシレスモータの縦断面図、図4図3のA部拡大図である。
【0047】
ブラシレスモータ12は、直流型モータであって、図1図4に示すように、チェーンケースに固定される有底円筒状のモータハウジング16と、このモータハウジング16の内周面に固定されたステータ(固定子)17と、ステータ17の内周側に配置されたモータ出力軸18と、該モータ出力軸18の外周に固定されたロータ19と、モータハウジング16のスプロケット1と反対側に設けられた制御機構20と、を有している。
【0048】
モータハウジング16は、例えば鉄系金属板をカップ状に折曲形成されて、内部にステータ17などを収容するステータ収容空間Sが形成されている。モータハウジング16は、減速機13側の底壁16aのほぼ中央にモータ出力軸18が挿通する貫通孔16bが形成されている。この貫通孔16bは、底壁16aの中央を筒状に折曲された筒部16cの内側に形成されている。また、底壁16aの筒部16c近傍には、後述する第1軸受部である第1ボールベアリング29aを保持する円筒状のベアリング保持部16gが設けられている。
【0049】
また、モータハウジング16は、後端部の開口端の外周に径方向外側に突出したフランジ部16dが一体に設けられている。このフランジ部16dは、円周方向の約120°位置に3つのブラケット片16eが一体に設けられている。また、この3つのブラケット片16eには、3つのボルト21が挿入されるボルト挿入孔16fがそれぞれ貫通形成されている。なお、このブラケット片16eは、3つ以上であってもよい。
【0050】
各ボルト21は、モータハウジング16と制御機構20の後述するケーシング40とを共締め固定すると共に、これらを図外のチェーンケースに固定するようになっている。つまり、各ボルト21は、偏心軸部21a側の先端部外周に有する雄ねじ部21bがチェーンケースに有する雌ねじ部に締結して、モータハウジング16とケーシング40をチェーンケースに固定するようになっている。
【0051】
なお、ボルト挿入孔16fやボルト21などを、3つ以上に増やすことも可能である。
【0052】
ステータ17は、ステータコア(鉄心)17aと、該ステータコア17aの外周に巻き付けられた複数相(3相U,V,W)のコイル17bと、を備えている。ステータコア17aは、鋼板を多数積層して形成され、図外のリング状のヨーク部と、該ヨーク部から内側方向へ突設された複数のティースを有している。コイル17bは、複数のティースにインシュレータを介して巻き付けられている。
【0053】
モータ出力軸18は、例えば鉄系金属材によって形成され、回転軸方向の減速機13側の一端部18aが後述するオイルシール22を介して貫通孔16bから突出している。
【0054】
また、モータ出力軸18の一端部18aは、外面に接線方向に沿って形成された図外の二面幅部を有し、この二面幅部に対して直交する方向から切り欠かれた一対の嵌着溝が形成されている。この両嵌着溝には、図1に示すように、中間部材28のカムボルト14側への移動を規制するストッパ部材50が径方向から嵌着固定されている。また、一端部18aは、ベアリング保持部16g内に保持された第1ボールベアリング29aによってモータハウジング16に軸受されている。第1ボールベアリング29aは、一般的な構造であって、ベアリング保持部16gの内周面に固定された外輪と、モータ出力軸18の一端部18aの外周面に固定された内輪と、該両輪間にケージを介して設けられた複数のボールとを有している。
【0055】
一方、モータ出力軸18の他端部18bは、制御機構20のケーシング40に設けられた第2ボールベアリング29bによって回転可能に軸受けされている。第2ボールベアリング29bは、第1ボールベアリング29bと同じく一般的な構造で、後述する筒状部41のベアリング保持溝41aの内周面に圧入固定された外輪と、モータ出力軸18の他端部18bの外周面が圧入された内輪と、該両輪間にケージを介して設けられた複数のボールとを有している。
【0056】
オイルシール22は、一般的な構造であって、外周面が貫通孔16bの内周面に圧入されている一方、内周のシール片がバックアップスプリングによってモータ出力軸18の一端部18a外周面に摺動可能に当接している。これによって、オイルシール22が、減速機13からモータハウジング16内へのオイルの流入を規制している。
【0057】
モータ出力軸18は、図1にも示すように、一端部18aがカムボルト14の頭部14aに回転軸方向から僅かな隙間をもって近接配置されている。一端部18aは、ストッパ部材50を含めた全体が頭部14aの前端面に有する六角溝の内部に軸方向から挿入可能になっている。
【0058】
ストッパ部材50は、Cリング状に形成されて、自身の弾性力によって拡径方向及び縮径方向へ弾性変形可能になっている。
【0059】
モータ出力軸18の一端部18aには、中間部材28が設けられている。この中間部材28は、減速機13に接続される継手であるオルダム継手の一部を構成するものであって、図2に示すように、モータ出力軸18の一端部18aに固定される筒状基部28aを有している。この筒状基部28aは、円形状の外面の両側、つまり円周方向の180°位置に二面幅状の一対の平面部を有しており、これによって、外形がほぼ長円状に形成されている。
【0060】
筒状基部28aの中央位置には、モータ出力軸18の一端部18aの二面幅部が挿入される貫通孔28dが形成されている。
【0061】
この貫通孔28dは、円形状の内周面にモータ出力軸18の回転軸から径方向に沿った二面幅状の一対の対向面が形成されている。これによって、貫通孔28dは、筒状基部28aの外形と相似形の径方向に長い長円形状に形成されている。したがって、中間部材28は、長円状の貫通孔28dを介してモータ出力軸18の一端部18aに対して径方向(図1図2中、上下方向)へ移動可能になっている。
【0062】
筒状基部28aは、一対の平面部の長手方向(図1の上下方向)のほぼ中央位置に、前述した2つの伝達キー28b、28cが設けられている。各伝達キー28b、28cは、ほぼ矩形板状に形成されて、筒状基部28aの2つの平面部から径方向外側に向かって突出している。
【0063】
図5は本実施形態に供されるロータの斜視図、図6図5に示すロータの軸方向の上側部分を断面して示す横断面図である。
【0064】
ロータ19は、図3図6に示すように、ステータ17の内周側に配置されており、モータ出力軸18の外周に固定された円環状のロータコア23と、該ロータコア23の外周部23aに有する複数(本実施形態では8つ)の保持孔24と、該各保持孔24にそれぞれ挿入保持された8枚の永久磁石25と、を備えている。ロータコア23と永久磁石25は、モータ出力軸18に対して同軸状に設けられている。
【0065】
ロータコア23は、金属材によって一体に形成され、ほぼ円筒状の外周部23aと、モータ出力軸18に固定される円筒状の内周部23bと、を有している。この外周部23aと内周部23bとの間の中間部位が、ハニカム状に形成されている。
【0066】
外周部23aは、周方向に沿って円弧状の8つのブロックBが環状に連結された形になっていると共に、内周面23cが八角形状に形成されている。外周部23aは、各ブロックBの間の外側に後述する合成樹脂材の被覆部26によって埋められる断面ほぼ三角形状の隙間がそれぞれ形成されている。内周部23bは、中央の軸方向にモータ出力軸18が挿入固定される挿入孔23dが貫通形成されている。
【0067】
各保持孔24は、ロータコア外周部23aの各ブロックB部位の内部軸方向に沿って貫通形成されている。各保持孔24は、正面から視てほぼ円周方向に沿って長い長孔状に形成されて、径方向外側からの透過視でほぼ矩形状に形成されている。また、保持孔24は、軸方向の制御機構20側の一端開口縁24aから減速機13側の他端開口縁24bまで均一な断面積で貫通形成されている。
【0068】
各永久磁石25は、図4図6に示すように、一般的なネオジウムなどの複合合金材(希土類焼結磁石)で所定肉厚の平面視ほぼ正方形状の板状に形成されている。つまり、永久磁石25は、各辺の長さが同じ長さの板状にそれぞれ形成されている。
【0069】
なお、各辺の長さが同一であるとは、軸方向と周方向のそれぞれの長さの公差が±0.2mmの範囲内であることである。
【0070】
また、永久磁石25は、各辺の長さが保持孔24の幅方向長さよりも短く形成されて、保持孔24に挿入保持された際には、両側面と該両側面と対向する保持孔24の幅方向の対向内面との間に隙間が形成されている。
【0071】
そして、各永久磁石25は、ロータ19の回転軸線を軸方向としたとき、この軸方向の制御機構20側の各一端が各保持孔24の一端開口縁24aから突出した突出部25aとなっている。また、各永久磁石25は、軸方向の減速機13側の各他端が各保持孔24の他端開口縁24bよりも保持孔24の内部に後退した後退部25bとなっている。
【0072】
突出部25aは、その突出量、つまり、保持孔24の一端開口縁24aから先端面までの長さLが、本実施形態では約2mmになっている。一方、後退部25bは、その後退量、つまり保持孔24の他端開口縁24bから後退部25bの後端面までの長さL1が、本実施形態では約1mmになっている。
【0073】
また、ロータコア23の外周部23aは、各突出部25a側と各後退部25b側の全体が非磁性材である合成樹脂材からなる被覆部26によって覆われている。この被覆部26は、各突出部25aを内部に埋めるように各突出部25aの外周面全体を被覆するように円環状にされている。また、被覆部26は、各後退部25bを塞ぐように保持孔24の他端開口縁24bから保持孔24内に充填されて全体が円環状にされている。また、被覆部26は、その一部26aが外周部23aの各ブロックB間の三角隙間にも充填されていると共に、永久磁石25の周方向両側面と保持孔24の幅方向の対向面との間の隙間にも充填されている。
【0074】
被覆部26は、図3図5に示すように、保持孔24の後端開口内に後退部25bを塞ぐように充填されているが、この充填箇所には後退部25bの後端面と外部とを連通する孔部27がそれぞれ設けられている。この各孔部27は、例えば射出成形によってロータコア23の外周部23aに合成樹脂材を成形する際に、成形型内に予め配置されていて各後退部25bの後端面を下側から支持する支持ピンを成形後に抜いた後の跡に形成されたものである。
【0075】
制御機構20は、例えば合成樹脂材(非磁性材)によってボックス状に形成されたケーシング40を有している。このケーシング40は、図3に示すように、モータハウジング16側に配置された四角形状の仕切壁40aと、該仕切壁40aの外周縁から立ち上がった四角形枠状の周壁40bと、を有している。また、仕切壁40aと周壁40bで囲まれた内側には、基板収容空間S1が形成されている。
【0076】
仕切壁40aは、中央に円筒状の筒状部41が一体に設けられていると共に、内面の四隅部に4つの小径な円柱ボス部40eが一体に設けられている。この各円柱ボス部40eは、先端部に四角形の回路基板42を固定する図外の4本のビスが螺着する図外の雌ねじ孔がそれぞれ形成されている。
【0077】
仕切壁40aは、図3及び図4に示すように、後述する磁気センサ45と軸方向で対向する部位に第1凹部43aが設けられていると共に、永久磁石25の突出部25aと対向する部位に第2凹部43bが設けられている。この第1凹部43aと第2凹部43bは、径方向において一部が重なっており、つまり、一部が径方向でオーバーラップしている。
【0078】
第1凹部43aは、円環溝状に形成されて、その径方向の幅長さが磁気センサ45の径方向長さよりも大きく形成されて、磁気センサ45が入り込み可能になっている。一方、第2凹部43bは、同じく円環溝状に形成されて、その径方向の幅長さが突出部25aの厚さ幅よりも十分に大きく形成されて、該突出部25aが入り込み可能になっている。
【0079】
回路基板42は、図3に示すように、基板収容空間S1内に収容配置されて、内部にはブラシレスモータ12へ給電するバスバーなどの図外の導電回路が配設されている。また、回路基板42の一側部には、後述するコネクタ44の複数の端子片と半田付けによって結合されるホール端子が設けられている。また、回路基板42は、中央に筒状部41が挿通可能な挿通孔42aが貫通形成されていると共に、四隅には図外の各ビスが挿入される小径な4つのビス挿入孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0080】
また、基板収容空間S1は、内部に回路基板42の他に、この回路基板42と導通してブラシレスモータ12の駆動を制御する回転検出センサである3つの磁気センサ45a、45b、45cやアルミ電解コンデンサ及びノーマルコイル、コモンコイル、複数のセラミックコンデンサなどの複数の電子部品(図外)が収容配置されている。
【0081】
図7は本実施形態に供される回路基板に設けられた磁気センサの取り付け位置を示す概略図である。
【0082】
各磁気センサ45a~45cは、図7に示すように、回路基板42上に3つ設けられており、つまり、W相とU相の間に設けられたU相用の磁気センサ45aと、U相とV相の間に設けられたV相用の磁気センサ45bと、V相とW相の間に設けられたW相用の磁気センサ45cの3つ設けられている。また、各磁気センサ45a~45cは、永久磁石25の径方向の磁束成分ではなく、軸方向の磁束成分(磁束密度)を検出するものであって、磁束密度のプラス、マイナスを判定するようになっている。
【0083】
各磁気センサ45a~45cは、図3及び図4に示すように、回路基板42上で、永久磁石25の配設位置に対して、ロータ19の回転軸方向に離れた位置で、かつ径方向の外側(矢印側)にずれた位置に設けられている。つまり、各永久磁石25の周方向の中央位置よりも径方向の外側にずれた位置に配置されている。これは、後述するように、磁気センサ45a~45cの軸方向の磁束成分(磁束密度)を検出する特性から、永久磁石25に対する前記特異な配置構成によって検出精度を高めるためである。また、この各磁気センサ45a~45cは、ステータ17の内周面とロータ19の外周面との間に有する環状隙間Cを跨ぐように配置され、径方向のセンサ中心P1が環状隙間Cに位置している。
【0084】
また、各磁気センサ45a~45cは、ステータ17の周方向の取り付け位置において各コイル17bの間に一部が配置されていると共に、永久磁石25の突出した突出部25aと軸方向でほぼ対向する位置に設けられている。
【0085】
筒状部41は、ほぼ有底円筒状に形成されて、軸方向の一端部と他端部が仕切壁40aを中心としてステータ収容空間Sと基板収容空間S1にそれぞれ臨んでいる。つまり、一端部が、ステータ収容空間Sに配置され、他端部が、基板収容空間S1に配置されている。また、筒状部41は、内部に第2ボールベアリング29bを収容保持するベアリング保持溝41aを有している。
【0086】
周壁40bは、外周部に信号と給電を兼ねたコネクタ44が一体に設けられている。このコネクタ44は、ボックス状に形成され、内部に端子片の一対の一端部44aが配置されている。この端子片は、基板収容空間S1内に位置する図外の他端部が回路基板42の導通回路のホール端子と半田付けによって結合されている。端子片のコネクタ44に位置する一対の一端部44aは、一部が図外のエンジンコントロールユニット(ECU)に雌端子を介して電源であるバッテリーに接続されている。また、他の一部が、各磁気センサ45a~45cで検出された回転角信号などの情報信号をECUに出力するようになっている。
【0087】
また、周壁40bは、モータハウジング16と反対側の外周にカバー部材46が取り付けられている。カバー部材46は、例えばアルミニウム合金材で板状の四角形状に形成されており、ケーシング40方向へクランク状に折曲された外周部46aが、所定の固定手段によってケーシング40の周壁40bに固定されるようになっている。
【0088】
ECUは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類からの情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、これに基づいて機関制御を行っている。また、ECUは、前記各情報信号や磁気センサ45などからの信号に基づいて、ブラシレスモータ12のコイル17bに通電してモータ出力軸18の回転制御を行う。これによって、減速機13によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
〔バルブタイミング制御装置の作用効果〕
以下、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の作用及び効果を簡単に説明する。
【0089】
機関始動後の所定の機関運転時には、コントロールユニットからの制御電流がブラシレスモータ12の各コイル17bに通電されてモータ出力軸18が正逆回転駆動される。このモータ出力軸18の回転力が、オルダム継手を介して偏心軸30に伝達されて減速機13の作動によりカムシャフト2に対し減速された回転力が伝達される。
【0090】
これによって、カムシャフト2が、タイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換される。したがって、各吸気弁は、開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御されるのである。
【0091】
このように、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ連続的に変換されることによって、機関の燃費や出力などの機関性能の向上が図れる。
〔ブラシレスモータの作用効果〕
本実施形態のブラシレスモータ12の特に磁気センサの作用効果について以下に説明する。
【0092】
すなわち、本実施形態によれば、各磁気センサ45a~45cは、それぞれが径方向の磁束成分を検出するものよりも安価な軸方向の磁束成分を検出するものを使用している。このため、磁気センサ45a~45c自体のコストを削減することができる。磁気センサ45a~45cは、ホールICであって、前記ホールICのセンサコアは板状である。その板状のセンサコアを厚みの方向に通過する磁束を検出するようになっている。
【0093】
しかも、前記各磁気センサ45a~45cを、永久磁石25に対してロータ19の回転軸方向に離れた位置で、かつロータ19の径方向の外側の位置に配置してある。つまり、各磁気センサ45a~45cは、永久磁石25を中心としてロータ19の径方向の外側へずらした位置に設けられている。これによって、永久磁石25の磁束密度のピーク値に入り易くなるので、検出性能が高くなると共に、各磁気センサ45a~45cの軸方向位置のバラツキの影響を受けにくくなる。
【0094】
図8は永久磁石に対して一つの磁気センサの径方向の9箇所の取り付け位置(測定位置)を示す拡大図、図9図8に示す9箇所の測定位置でのそれぞれの磁束密度(軸方向成分)を測定したグラフである。
【0095】
本願の発明者は、図8に示すように、回路基板42に設けられた磁気センサ45(45a~45c)の永久磁石25に対する取り付け位置を、該永久磁石25の中心位置からロータ19の径方向の所定の内側と所定の外側の間で黒点で示す9つの取り付け位置(測定位置)に分けて磁束密度(軸方向の磁束成分)のプラス、マイナスの判定をした。
【0096】
磁気センサ45の9箇所の測定位置でそれぞれ得られた磁束密度(T)の判定結果は、図8及び図9に示すように、永久磁石25の中心位置(測定位置CN)では、磁束密度Tのピーク値が小さくなって、不要なところで0クロスしている。したがって、この位置では、磁気センサ45による誤検出の可能性が高くなるおそれがある。
【0097】
そして、内側の測定位置I1~I4と、外側の測定位置O1~O4を視ると、永久磁石25に最も離れた内側と外側の測定位置I4、O4では、離れすぎることによって軸方向の磁束成分が弱く(ピーク値が小さく)なることが分かった。また、外側の測定位置O4のように、磁気センサ45がコイル17bに近づき過ぎるとコイル17bへの通電時にコイル17bから発生する磁束成分に影響されやすく、波形が乱れて誤検出の可能性が高くなるおそれがある。
【0098】
これに対して、内側の測定位置I2、I3と外側の測定位置O2,O3では、磁束密度Tのピーク値が高く、波形としても安定していることが分かる。特に、内外側の測定位置I2、O2では最もピーク値が高くなっている。
【0099】
図10は永久磁石の磁束密度の分布図である。
【0100】
また、本願発明者により永久磁石25の磁束密度分布を調べた結果、永久磁石25は、図10の磁束密度分布図に示すように、その特性上、磁束密度Tが永久磁石25の中央軸線方向Pの領域よりも、この中央軸線Pから径方向の外側のQ領域か径方向の内側のR領域が十分に高くなっていることが分かる。
【0101】
また、磁気センサ45を、永久磁石25を中心とした径方向の内側よりも外側に位置させた方が、磁気センサ45の取り付けのバラツキによる角度誤差が小さくなって、検出精度を高くすることができる。つまり、径方向の内側に取り付け場合は、3つの磁気センサ45a~45cの取り付け角度誤差が生じ易くなるが、径方向の外側に取り付ければ取り付け角度誤差が発生し難くなる
そこで、本実施形態では、各磁気センサ45a~45cを、径方向の外側の測定位置O2に取り付けると共に、図7に示すように、センサ中心P1をロータ19とステータ17との間の環状隙間Cに位置させて永久磁石25とコイル17bの間に跨って取り付けた。これによって、永久磁石25の軸方向の磁束成分のピーク値が高く、かつコイル17bから発生する磁束成分に影響されにくくなる。この結果、各磁気センサ45a~45cのそれぞれの検出精度が高くなるとと共に、安定した検出性能を得ることができる。
【0102】
さらに、各磁気センサ45a~45cを、ロータ19とステータ17の間の環状隙間Cを径方向から跨ぐような取り付け位置(前記測定位置O2)としたが、この位置は前述のように、永久磁石25の最も磁束密度のピーク値が高くなる位置であることから、各磁気センサ45a~45cの検出性能が高くなる。
【0103】
また、各磁気センサ45a~45cは、ステータ17の周方向の取り付け位置において各コイル17bの間に一部が配置されていることから、コイル17bの磁束の影響を十分に回避できるため、モータの制御精度が高くなる。
【0104】
各磁気センサ45a~45cは、各永久磁石25の突出した突出部25aと軸方向でほぼ対向する位置に設けられていることから、この突出部25aの磁気を検出できるので検出精度が高くなる。
【0105】
さらに本実施形態では、仕切壁40aに設けられた第1凹部43aを、逃げ部として機能させて、各磁気センサ45a~45cを第1凹部43aの内部方向へ移動させることが可能になる。このため、各磁気センサ45a~45cと軸方向に対向している永久磁石25の突出部25aとの距離を短くすることができる。この結果、各磁気センサ45a~45cによる永久磁石25の磁気の検出精度が高くなる。
【0106】
また仕切壁40aに設けられた第2凹部43bを、永久磁石25の突出部25aの逃げ部として機能させて、突出部25aを第2凹部43bの内部に移動させることができる。これによって、永久磁石25の突出部25aを各磁気センサ45a~45cに近づけることができることから、各磁気センサ45a~45cによる永久磁石25の磁気の検出精度がさらに高くなる。
【0107】
しかも、第1凹部43aと第2凹部43bによって、永久磁石25と各磁気センサ45a~45cの軸方向の距離を近づけることができるので、ブラシレスモータ全体の軸方向の短尺化が図れる。
【0108】
さらに本実施形態では、各永久磁石25の一端を各保持孔24の一端開口縁24aから突出させ、この各突出部25aのほぼ軸方向の位置に各磁気センサ45a~45cを配置した。これによって、いわゆるダイレクトセンシングが可能になり、センサマグネットが不要になることから、部品点数の削減と装置の小型化、コストの削減などが図れる。
【0109】
しかも、永久磁石25の他端の後退部25bを保持孔24内に位置させたため、永久磁石25の前記突出部25aで増加したトルク特性を、コイル巻き回数で調整するなどして低減化するよりも、容易に低減化させることが可能になる。
【0110】
突出部25aの突出量Lと後退部25bの後退量L1は、誘起電圧増減率に合わせて相対的に決定され、突出部25aの突出量Lによる誘起電圧の増加率に応じて後退部25bの後退量L1を設定すれば良いのである。
【0111】
換言すれば、突出部25aの突出量Lによる誘起電圧増加率を考慮しながら後退部25bの後退量L1を適宜決定することによって、誘起電圧の増加を抑制できる。これによって、モータのトルク特性の変化を低減できるのである。
【0112】
この結果、突出部25aによる誘起電圧増加率を、単に後退部25bを設けることで容易に低減させることができるので、モータの設計が容易になると共に、製造作業能率の向上が図れる。
【0113】
また、前述のように、突出部25aによるモータ出力のトルク特性の増加を後退部25bによって低減させることができるが、突出部25aの突出量Lよりも、後退部25bの後退量L1の方が短くなっていることから、トルク特性のバランスを取りやすくなる。
【0114】
さらに、永久磁石25は、合成樹脂材の被覆部26によって突出部25aや後退部25bの軸方向の前後が被覆され、保持孔24内にも被覆部26が充填されて被覆されている。このため、永久磁石25の位置ずれなどが抑制されるので、磁界の安定化が図れると共に、衝撃による永久磁石25の割れや飛散を抑制できる。
【0115】
また、後退部25bの後端面と外部とを連通する孔部27を設けたことから、永久磁石25に対する放熱効果が得られる。
【0116】
前記ロータコア23は、ハニカム構造になっていることから軽量化が図れると共に、ロータ19の回転に伴って周囲の空気の攪拌効果がさらに高くなるので、各永久磁石25に対する放熱効果が一層高くなる。この結果、熱による各永久磁石25の磁力の低下を抑制できるので、モータの回転の安定化が図れる。
【0117】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば磁気センサ45a~45cの取り付け位置を、前述のように、永久磁石25に対する径方向の外側の測定位置O2だけでなく、磁束密度Tが比較的高くなる外側の測定位置O3の位置でも良く、また、内側の測定位置I3の位置であってもよい。
【0118】
また、仕切壁40aの第1凹部43aを円環溝状ではなく、3つの磁気センサ45a~45cが形成された部位のみに円弧溝状に形成することも可能である。このようにすれば、仕切壁40aの剛性を高くすることができる。
【0119】
また、実施形態では、各永久磁石25の突出部25aの突出量や後退部25bの後退量を、ブラシレスモータ12の仕様や磁力の大きさなどによって、それぞれの長さを相対的に決定することが可能である。
【0120】
前記実施形態では、ロータコア23内に永久磁石25を埋設したいわゆるIPM構造になっているが、ロータコア23の外周に永久磁石25を配置するいわゆるSPM構造であっても良い。
【0121】
ブラシレスモータ12の適用対象機器としては、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置ばかりか、パワーステアリングのモータやパワーウインドウ用モータ、サンルーフ用モータ、パワーシート用モータなど各種車載モータ、さらにはエアコン等の家電製品などに使用されるモータにも適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
12…ブラシレスモータ、13…減速機構、17…ステータ、17a…ステータコア、17b…コイル(巻線)、18…モータ出力軸、19…ロータ、20…制御機構、23…ロータコア、23a…外周部、23b…内周部、24…保持孔、24a…前端開口縁、24b…後端開口縁、25…永久磁石、25a…突出部(一端部)、25b…後退部、26…合成樹脂材の被覆部、40…ケーシング、40a…仕切壁、43a…第1凹部、44b…第2凹部、45(45a~45c)…磁気センサ(回転検出センサ)、CN…永久磁石の中央の測定位置、O1~O4…径方向外側の測定位置、I1~O4…径方向内側の測定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10