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特開2024-10579インクジェット用硬化性樹脂組成物、硬化物、硬化物の製造方法、ソルダーレジスト、及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010579
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】インクジェット用硬化性樹脂組成物、硬化物、硬化物の製造方法、ソルダーレジスト、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240117BHJP
   C08G 59/16 20060101ALI20240117BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240117BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240117BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240117BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C09D11/30
C08G59/16
C08F2/44 C
B41M5/00 120
H05K3/28 D
C08F290/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111998
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村下 七海
(72)【発明者】
【氏名】竹下 快仁
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
【テーマコード(参考)】
2H186
4J011
4J036
4J039
4J127
5E314
【Fターム(参考)】
2H186AA17
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA07
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2H186FB11
2H186FB34
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2H186FB46
2H186FB54
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(57)【要約】
【課題】インクジェット法による吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】インクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法で成形される硬化性樹脂組成物である。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有する。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法で成形される硬化性樹脂組成物であり、
カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有し、
前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する、
インクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、前記重合性化合物(C)の存在下、又はカルボキシル基含有不飽和化合物(A)全量に対する溶剤の含有割合が5重量%未満の前記溶剤の存在下での反応により得られる生成物を含む、
請求項1に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、カルボン酸(a2)との反応生成物に、酸無水物(a3)を反応させることで得られる生成物を含む、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物(C)は、環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体を含有する、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合性化合物(C)は、環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体を含有する、
請求項3に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
25℃における粘度は、5mPa・s以上500mPa・s以下である、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の重量平均分子量は、5000以下である、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
溶剤(E)を含有しないか、又は溶剤(E)を含有し、かつ前記インクジェット用硬化性樹脂組成物全量に対する前記溶剤(E)の重量割合が5%未満である、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ化合物(D)は、25℃で液状であるエポキシ化合物(D1)を含有する、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
ソルダーレジストを作製するために用いられる、
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られる、
硬化物。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により塗布する工程と、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物に光を照射して光硬化する工程と、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程とを含み、
前記光硬化する工程の後に、前記加熱硬化する工程を行う、
硬化物の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化物を含む、
ソルダーレジスト。
【請求項14】
請求項11に記載の硬化物を含むソルダーレジスト層を備える、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット用硬化性樹脂組成物、硬化物、硬化物の製造方法、ソルダーレジスト、及びプリント配線板に関する。詳しくは、本開示は、インクジェット法により成形されるインクジェット用硬化性樹脂組成物、このインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物、硬化物の製造方法、硬化物を含むソルダーレジスト、及びソルダーレジスト層を含むプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン型エポキシ化合物より得られる化合物、光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤、エチレン性不飽和化合物、増感色素を含有する硬化性組成物が開示されている。この硬化性組成物は、プリント配線板等におけるソルダーレジスト膜等の絶縁被膜層を形成できること、レーザー光による直接描画に好適であることが記載されている(特許文献1の段落0013)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3912405号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、インクジェット法による成形が可能な硬化性の樹脂組成物の研究を重ねてきた。発明者らが研究開発を通じて独自に得た知見によると、光硬化及び熱硬化が可能な樹脂組成物であったとしても、インクジェット法による成形をすると吐出が困難となり、また硬化物とした場合の耐熱性及び耐湿熱性を確保できないといった問題があることがわかった。
【0005】
本開示の目的は、インクジェット法による吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物、硬化物、硬化物の製造方法、ソルダーレジスト、及びプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法で成形される硬化性樹脂組成物である。前記インクジェット用硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有する。前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【0007】
本開示の一態様に係る硬化物は、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られる。
【0008】
本開示の一態様に係る硬化物の製造方法は、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により塗布する工程と、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物に光を照射して光硬化する工程と、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程を含む。本方法は、前記光を照射して光硬化する工程の後に、前記加熱硬化する工程を行う。
【0009】
本開示の一態様に係るソルダーレジストは、前記硬化物を含む。
【0010】
本開示の一態様に係るプリント配線板は、前記硬化物を含むソルダーレジスト層を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、インクジェット法による吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物、硬化物、硬化物の製造方法、ソルダーレジスト、及びプリント配線板が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
1.概要
本実施形態に係るインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法により成形される硬化性樹脂組成物である。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有する。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【0014】
発明者らの調査によると、特許文献1の硬化性樹脂組成物では、インクジェット法による成形が困難となる場合があることがわかった。これに対し、本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有することで、光硬化性及び熱硬化性を有しうる。また、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、カルボキシル基、不飽和基(具体的には、例えばエチレン性不飽和基)、更にビスフェノールフルオレン骨格を有することにより、硬化物の物性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上できる。また、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)がビスフェノールフルオレン骨格を有することでインクジェット法による吐出性を向上させうる。これは、本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物におけるカルボキシル基含有不飽和化合物(A)がインクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を適度に調整しうるためである、と考えられる。なお、本開示において、「インクジェット法」とは、インクジェット装置における1又は複数のノズルから粘性を有する液滴を同時又は連続的(逐次的)に滴下して塗膜等の成形物を作製する方法である。また、インクジェット法により成形することには、塗膜を作製する以外に、インクジェット法により回路パターン、レジストパターン等のパターンを形成することも含まれる。
【0015】
このように、本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法で成形するために好適に用いることができる。これにより、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法でパターンを形成して、光及び熱により硬化させることができるため、硬化物を塗布してから現像する工程を省略することができる。このため、工程の簡略化や、樹脂組成物の現像、エッチングなどに伴うロスを低減することができ、硬化物を作製するためのコストを低減すること等にも寄与しうる。
【0016】
したがって、本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、硬化物、その硬化物を含むソルダーレジスト、及びソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を作製するために好適に用いることができる。
【0017】
2.詳細
[インクジェット用硬化性樹脂組成物]
インクジェット用硬化性樹脂組成物について、詳しく説明する。
【0018】
本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、上記のとおり、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有する。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、光硬化性及び熱硬化性を有する。このため、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、光を照射することにより硬化させることができ、かつ加熱することにより硬化させることができる。硬化の態様については後述する。
【0019】
インクジェット用硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、5mPa・s以上500mPa・s以下であることが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物を常温下でインクジェット法で容易に塗布して成形しやすく、高精細なパターンを形成しうる。この粘度が200mPa・s以下であればより好ましく、150mPa・s以下であれば更に好ましく、130mPa・s以下であればより更に好ましく、100mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が8mPa・s以上であればより好ましく、10mPa・s以上であれば更に好ましく、12mPa・s以上であればより更に好ましく、14mPa・s以上であれば特に好ましい。インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(株式会社トキメック製VISCOMETER、MODEL:BM)を使用し、回転数60rpm、温度25℃の条件で測定される。
【0020】
インクジェット用硬化性樹脂組成物の50℃における粘度は、3mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法で成形可能な硬化性樹脂組成物であるが、粘度が前記範囲内にあると、より容易に精度よくインクジェット法での成形をしやすい。50℃における粘度は、4mPa・s以上100mPa・s以下であればより好ましい。
【0021】
インクジェット用硬化性樹脂組成物に含まれうる好ましい成分について更に詳しく説明する。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、以下で説明する組成、成分の種類、割合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の合成方法等、適宜調整することにより、上記で説明した物性を実現しうる。
【0022】
[カルボキシル基含有不飽和化合物]
カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、カルボキシル基とエチレン性不飽和基との各々を分子内に少なくとも1つ有する。また、本実施形態のカルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)がビスフェノールフルオレン骨格を有することで、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物に耐熱性及び耐湿熱性を付与でき、かつ密着性を付与しうる。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、インクジェット用硬化性樹脂組成物の吐出性を適度に調整しうる。
【0023】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、例えば、ビスフェノールフルオレン骨格と、エチレン性不飽和基と、カルボキシル基と、を有する成分を含有することができる。
【0024】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、以下で説明するビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を含有することが好ましい。カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、例えば、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)との中間体である反応生成物(以下、単に「反応生成物」ともいう。)と、酸無水物(a3)との生成物を含む。式(1)において、R1~R8は各々独立に水素、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンである。カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、例えば下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格(S1)を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)とを反応させ、それにより得られた反応生成物と、酸無水物(a3)とを反応させることで合成される。
【0025】
【化1】
【0026】
式(1)中、R1からR8は各々独立に水素、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンである。すなわち、式(1)におけるR1からR8の各々は、水素でもよいが、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンでもよい。なぜなら、芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の物性に悪影響はなく、むしろカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を含むインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性、あるいは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0027】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)がエポキシ化合物(a1)に由来する上記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有すると、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物により高い耐熱性及び密着性を付与できる。さらに、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が、エポキシ基を有していると、インクジェット用硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。
【0028】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、例えば下記説明のようにして合成され得る。カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を合成するためには、まずエポキシ化合物(a1)のエポキシ基(式(2)参照)の少なくとも一部と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)とを反応させることで、中間体を合成する。中間体の合成は、第一反応と規定される。中間体は、エポキシ基とカルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた下記式(3)に示す構造(S3)を有する。すなわち、中間体は、構造(S3)中に、エポキシ基とカルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた二級の水酸基を有する。式(3)において、Aはカルボン酸残基である。このAは不飽和基含有カルボン酸残基を含む。
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
次に、中間体中の二級の水酸基と酸無水物(a3)とを反応させる。これにより、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を合成できる。中間体と酸無水物(a3)との反応は、第二反応と規定される。酸無水物(a3)は、酸一無水物(a3-1)及び酸二無水物(a3-2)を含み得る。酸一無水物とは、一分子内における二つのカルボキシル基が脱水縮合した、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸二無水物とは、一分子内における四つのカルボキシル基が脱水縮合した、酸無水物基を二つ有する化合物である。
【0032】
酸無水物(a3)は、酸一無水物(a3-1)と酸二無水物(a3-2)とのうち少なくとも一方の成分を含有しうる。酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)を含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格(S1)と、下記式(4)に示す構造(S4)とを有する。
【0033】
構造(S4)は、中間体の構造(S3)中の二級の水酸基と、酸一無水物(a3-1)における酸無水物基とが反応することで生じる。式(4)において、Aはカルボン酸残基であり、Bは酸一無水物残基である。このAは不飽和基含有カルボン酸残基を含む。
【0034】
【化4】
【0035】
酸無水物(a3)が酸二無水物(a3-2)を含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、式(1)に示すビスフェノールフルオレン骨格(S1)と、下記式(5)に示す構造(S5)とを有する。
【0036】
構造(S5)は、酸二無水物(a3-2)中の二つの酸無水物基と、中間体における二つの二級の水酸基とが、それぞれ反応することで生じる。すなわち、構造(S5)は、二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3-2)が架橋することで生成する。なお、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合とが、ありうる。中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋されると、分子量が増大する。式(5)において、Aはカルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。このAは不飽和基含有カルボン酸残基を含む。
【0037】
【化5】
【0038】
中間体中の二級の水酸基と酸無水物(a3)とを反応させてカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を得ることができる。酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)及び酸二無水物(a3-2)を含有する場合、中間体中の二級の水酸基のうちの一部と酸二無水物(a3-2)とを反応させ、中間体中の二級の水酸基のうちの別の一部と酸一無水物(a3-1)とを反応させる。これにより、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を合成できる。この場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、ビスフェノールフルオレン骨格(S1)と、構造(S4)と、構造(S5)とを有する。
【0039】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が、更に下記式(6)で示す構造(S6)を有することもありうる。構造(S6)は、酸二無水物(a3-2)中の二つの酸無水物基のうち、一つのみが、中間体における二級の水酸基と反応することで生じる。式(6)において、Aはカルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。このAは不飽和基含有カルボン酸残基を含む。
【0040】
【化6】
【0041】
中間体の合成時にエポキシ化合物(a1)中のエポキシ基の一部が未反応のまま残存する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、式(2)に示す構造(S2)、すなわちエポキシ基を有することがありうる。また、中間体における構造(S3)の一部が未反応のまま残存する場合に、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、構造(S3)を有することもありうる。
【0042】
酸無水物(a3)が酸二無水物(a3-2)を含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の合成時の反応条件を最適化することで、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)中の構造(S2)、及び構造(S6)の数を低減し、あるいは、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)から構造(S2)、及び構造(S6)をほとんどなくしている。
【0043】
上記のように、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、ビスフェノールフルオレン骨格(S1)を有し、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)を含有する場合は、構造(S4)を有し、酸無水物が酸二無水物(a3-2)を含有する場合は構造(S5)を有しうる。さらに、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)を含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、構造(S2)と構造(S3)とのうち少なくとも一種を有することがある。また、酸無水物(a3)が酸二無水物(a3-2)を含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、構造(S2)と、構造(S6)とのうち少なくとも一種を有することがある。また、更に、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)と酸二無水物(a3-2)とを含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、構造(S2)と、構造(S3)と、構造(S6)とのうち少なくとも一種を有することがある。
【0044】
また、エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合、すなわち例えば後述する式(7)においてn=1以上である場合には、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基と、酸無水物(a3)とが反応することで生じる構造を有することもある。
【0045】
なお、上述のカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の構造は、技術常識に基づいて合理的に類推されており、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の構造を分析によって特定することは現実にはできない。その理由は次の通りである。エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合(例えば式(7)においてnが1以上である場合)には、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基の数によってカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の構造が大きく変化してしまう。また、中間体と酸二無水物(a3-2)とが反応する際には、上述のとおり、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3-2)で架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3-2)で架橋される場合とが、ありうる。このため、最終的に得られるカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、互いに構造の異なる複数種の分子を含み、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を分析してもその構造を特定できない。
【0046】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)に由来するエチレン性不飽和基を有しうるため、光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)は、インクジェット用硬化性樹脂組成物に、例えば紫外線硬化性を付与しうる。
【0047】
さらに、酸無水物(a3)が酸二無水物(a3-2)を含有する場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の分子量は、酸二無水物(a3-2)による架橋の数に依存する。このため、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を合成するにあたり、酸無水物(a3)が酸二無水物(a3-2)を含有すると、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含不飽和化合物(A1)が得られる。酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)及び酸二無水物(a3-2)を含有する場合、酸一無水物(a3-1)及び酸二無水物(a3-2)の量、並びに酸二無水物(a3-2)に対する酸一無水物(a3-1)の量を制御することで、所望の分子量及び酸価のカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が容易に得られる。
【0048】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の原料、及びカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の合成時の反応条件について、更に詳しく説明する。
【0049】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(7)に示す構造(S7)を有する。式(7)中のnは、例えば0以上20以下の数である。カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の分子量を適切な値にするためには、nの平均は0以上1以下であることが特に好ましい。nの平均が0以上1以下の範囲内であれば、特に酸無水物(a3)が酸二無水物(a3-2)を含有する場合、酸二無水物(a3-2)の付加による過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。
【0050】
【化7】
【0051】
カルボン酸(a2)は、例えば不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含む。カルボン酸(a2)は、例えば不飽和基含有カルボン酸(a2-1)のみを含んでいてもよく、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)以外のカルボン酸を含んでいてもよい。
【0052】
不飽和基含有カルボン酸(a2-1)は、例えば1分子中にエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。好ましくは、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)はアクリル酸を含有する。
【0053】
カルボン酸(a2)は、多塩基酸(a2-2)を含んでもよい。多塩基酸(a2-2)は、1分子内において2つ以上の水素原子が金属原子と置換可能な酸である。多塩基酸(a2-2)は、カルボキシル基を2つ以上有することが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)及び多塩基酸(a2-2)の両方と反応する。エポキシ化合物(a1)の2つの分子中に存在するエポキシ基を多塩基酸(a2-1)が架橋することで、分子量の増大が得られる。それにより、インクジェット用硬化性樹脂組成物から作製される塗膜のタック性を更に制御しうる。
【0054】
多塩基酸(a2-2)は、ジカルボン酸を含みうる。多塩基酸(a2-2)は、例えば、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、多塩基酸(a2-2)が4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸を含有する。
【0055】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させるに当たっては、適宜の方法が採用され得る。例えば、エポキシ化合物(a1)にカルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤、及び触媒を加えて攪拌混合することで、混合物を得る。この混合物を常法により、好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、中間体である反応生成物を得ることができる。混合物を得るにあたっては溶剤を配合してもよい。この場合の溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。しかし、本実施形態では、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)全量に対する溶剤の含有割合が5重量%未満の溶剤の存在下での反応により得られる生成物を含むことが好ましい。このため、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させるにあたっては、溶剤の割合は、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)と、酸無水物(a3)と、溶剤と、重合性化合物(C)との合計量に対して5重量%以下であることが好ましい。この場合、後続の、前記反応生成物と酸無水物(a3)との反応により得られるカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の重量平均分子量を過度に上昇させにくくでき、適度な粘度を維持しやすい。このため、このカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を含有するインクジェット用硬化性樹脂組成物のインクジェット法による吐出性をより良好に維持しやすい。ここでいう「溶剤」とは、後述するインクジェット用硬化性樹脂組成物における「溶剤(E)」と同様である。また、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、重合性化合物(C)の存在下での反応により得られる生成物を含むことも好ましい。この場合も、インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を良好に調整しやすく、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形するにあたっての吐出性をより高めうる。なお、重合性化合物(C)は、後述するように溶剤(E)には含まれない。また、重合性化合物(C)は、上記のカルボン酸(a2)には含まれない。また、この場合、重合性化合物(C)は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)を合成するための原料、例えばエポキシ化合物(a1)、カルボン酸(a2)、及び酸無水物(a3)、並びにこれらの反応により得られる生成物とはほとんど反応しない成分である。ここでいう、「反応しない」とは、カルボン酸(a2)と重合性化合物(C)の二重結合との反応を含まないことを意味する。
【0056】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)との反応において、触媒を用いる場合、触媒がトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と、カルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、97%以上、あるいは略100%の反応率(転化率)を達成できる。このため、構造(S3)を有する反応生成物が高い収率で得られる。
【0057】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対するカルボン酸(a2)の量は0.5モル以上1.2モル以下であることが好ましい。この場合、優れた感光性と安定性とを有するインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。同様の観点から、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2-1)の量が0.5モル以上1.2モル以下であることが好ましく、0.8モル以上1.2モル以下であることがより好ましい。あるいは、カルボン酸(a2)が、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)以外のカルボン酸を含む場合には、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2-1)の量は、0.5モル以上0.95モル以下であってもよい。また、カルボン酸(a2)が、多塩基酸(a2-2)を含む場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する多塩基酸(a2-2)の量は、0.025モル以上0.25モル以下であることが好ましい。この場合、優れた光硬化性と安定性とを有するインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0058】
このようにして得られる反応生成物は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基と、カルボン酸(a2)のカルボキシル基と、の反応で生成された水酸基を備える。
【0059】
酸一無水物(a3-1)は、上述のとおり、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a3-1)は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物(a3-1)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に酸一無水物(a3-1)が1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。すなわち、酸無水物(a3)が1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。言い換えれば、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が構造(S4)を有し、式(4)におけるBが1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸残基を含むことが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物から作製される塗膜のタック性を更に良好にしうる。酸一無水物(a3-1)全体に対する1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸の量は、20モル%以上100モル%以下であることが好ましく、40モル%以上100モル%以下であることがより好ましいが、これらの範囲に限られない。
【0060】
酸二無水物(a3-2)は、上述のとおり、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a3-2)は、例えばテトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物(a3-2)は、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト〔1,2-c〕フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。酸二無水物(a3-2)が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるDが3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基を含むことが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物から作製される塗膜のタック性を更に抑制し得、かつ硬化物の絶縁信頼性が更に向上しうる。酸二無水物(a3-2)全体に対する3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の量は20モル%以上100モル%以下であることが好ましく、40モル%以上100モル%以下であることがより好ましいが、これらの範囲に限られない。
【0061】
上述の中間体である反応生成物と、酸無水物(a3)とを反応させるにあたって、上記のとおり、酸無水物(a3)は、酸一無水物(a3-1)と酸二無水物(a3-2)とのうち少なくとも一方を含みうるが、本実施形態では、酸無水物(a3)は、酸一無水物(a3-1)のみを含有することがより好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の25℃における粘度を低く維持しやすい。また、この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の重量平均分子量を高くなり過ぎないようにしやすい。
【0062】
また、上述の中間体である反応生成物と、酸無水物(a3)とを反応させるにあたっては、適宜の方法が採用されうる。例えば、反応生成物に酸無水物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤、及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性混合物を得る。この反応性混合物を常法により好ましくは60℃以上150℃以下、更に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、生成物、すなわちカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が得られる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)全量に対して5重量%未満の溶剤の存在下での反応により得られる生成物を含むことが好ましい。この場合、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の重量平均分子量を過度に上昇させにくくでき、適度な粘度を維持しやすい。このため、このカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)を含有するインクジェット用硬化性樹脂組成物のインクジェット法による吐出性をより良好に維持しやすい。この場合における「溶剤」とは、上記で説明したとおりである。
【0063】
また、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、重合性化合物(C)の存在下での反応により得られる生成物を含むことも好ましい。すなわち、中間体である反応生成物と、酸無水物(a3)とを反応させるに当たっては、重合性化合物(C)を配合することが好ましい。この場合も、インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を良好に調整しやすく、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形するにあたっての吐出性をより高めうる。また、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、重合性化合物(C)の存在下での反応により得られる生成物を得るにあたり、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)全量に対する溶剤の割合は、5重量%以下であることも好ましい。
【0064】
中間体である反応生成物と酸無水物(a3)とを反応させる場合における触媒は、トリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物(a3)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、あるいは略100%の反応率(転化率)を達成できる。このため、構造(S4)及び構造(S5)のうち少なくとも一方の構造を有するカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が高い収率で得られる。
【0065】
酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)と酸二無水物(a3-2)とを含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a3-1)の量は0.1モル以上0.9モル以下であることが好ましい。また、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a3-2)の量は、0.01モル以上0.24モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)が容易に得られる。
【0066】
また、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3-1)のみを含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a3-1)の量は0.1モル以上0.95モル以下であることが好ましく、0.15モル以上0.9モル以下であることがより好ましく、0.2モル以上0.85モル以下であることが更に好ましく、0.25モル以上0.8モル以下であることが特に好ましい。
【0067】
中間体と、酸無水物(a3)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)の過度な分子量の増大が抑制されうる。このため、インクジェット用硬化性樹脂組成物における粘度が過度に高くなることを抑えうることにより、インクジェット用硬化性樹脂組成物のインクジェット法で成形するにあたっての吐出性を向上させうる。
【0068】
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、本開示の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて、カルボキシル基含有不飽和化合物(A1)以外のカルボキシル基含有不飽和化合物((A2)成分ともいう)を含有してもよい。(A2)成分は、例えばビスフェノールフルオレン骨格、カルボキシル基、及びエチレン性不飽和基を有するが、上記で説明した製法以外で作製された化合物を含みうる。
【0069】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の重量平均分子量は、5000以下であることが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を良好に調整しうる。このため、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形する際の吐出性を更に向上しうる。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の重量平均分子量は、3000以下であればより好ましく、2000以下であれば更に好ましく、1500以下であれば特に好ましい。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の重量平均分子量の下限は、特に制限されないが、例えば600以上であってよい。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
【0070】
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001
の4本直列、
移動相:THF、
流量:1mL/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0071】
カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の酸価は、10mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の範囲内であることが好ましい。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の酸価がこの範囲内であることで、インクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させて電気絶縁層を作製する際に、インクジェット用硬化性樹脂組成物から作製される塗膜の深部までより充分に硬化させやすくできる。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の酸価は、15mgKOH/g以上115mgKOH/g以下の範囲内であることがより好ましく、20mgKOH/g以上90mgKOH/g以下の範囲内であることが更に好ましい。なお、本開示における酸価とは、固形分の酸価をいう。
【0072】
[光重合開始剤]
光重合開始剤(B)は、インクジェット用硬化性樹脂組成物の光硬化性を向上させうる成分である。光重合開始剤(B)は、紫外線を照射し、ラジカルを発生させるものが好ましい。光重合開始剤(B)は、例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含みうる。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物を、インクジェット法により成形してから、紫外線等の光を照射して硬化させる場合に、インクジェット用硬化性樹脂組成物に高い光硬化性を付与できる。
【0073】
光重合開始剤(B)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物に高い感光性を付与でき、またインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物の絶縁信頼性をより向上させやすい。
【0074】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0075】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0076】
オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(О-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア OXE03、及びイルガキュア OXE04からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0077】
光重合開始剤(B)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種と、水素引抜型光重合開始剤とを含むことが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物に更に高い光硬化性を付与しうる。
【0078】
水素引抜型光重合開始剤の例は、ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、p-クロルベンゾフェノン、テトラクロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、及びアセトフェノン等のアリールケトン系光重合開始剤;4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、及びp-ジメチルアミノアセトフェノン等のジアルキルアミノアリールケトン系開始剤;チオキサントン、キサントン系、及びそのハロゲン置換系の多環カルボニル系開始剤を含む。水素引抜型光重合開始剤は、アリールケトン系光重合開始剤を含むことが好ましく、2,4-ジエチルチオキサントンを含むことが特に好ましい。
【0079】
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、適宜の光重合促進剤、及び増感剤等を更に含有してもよい。例えばインクジェット用硬化性樹脂組成物は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のヒドロキシケトン類;ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン類;及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0080】
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(B)とともに、p-ジメチル安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系などの適宜の光重合促進剤、及び増感剤等を含有してもよい。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤と近赤外線露光用の光重合開始剤とのうちの少なくとも一種の光重合開始剤を含有してもよい。また、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、例えば光重合開始剤(B)とともに、レーザー露光法用増感剤である7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
【0081】
光重合開始剤(B)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(B1)に加えて、ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含んでもよい。この場合、ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有しない場合と比べて、インクジェット用硬化性樹脂組成物に更に高い光硬化性を付与できる。これにより、インクジェット用硬化性樹脂組成物から、インクジェット法により成形される塗膜に紫外線を照射して硬化させる場合、塗膜をその表面から深部に亘って十分に硬化させることが可能となる。ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0082】
光重合開始剤(B)は、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含んでもよい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物からインクジェット法により成形されることで作製される硬化物で非常に微細なパターンを形成することが可能となる。
【0083】
インクジェット用硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の百分比は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。本開示において、インクジェット用硬化性樹脂組成物の固形分全量とは、インクジェット用硬化性樹脂組成物に含有される成分から揮発性の成分(例えば溶剤(E)等)を除いた成分の合計量のことをいう。
【0084】
[重合性化合物]
重合性化合物(C)は、光重合開始剤(B)の存在により、インクジェット用硬化性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。また、重合性化合物(C)は、インクジェット用硬化性樹脂組成物に熱硬化性も付与しうる。
【0085】
重合性化合物(C)は、例えば1分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物を含有する。より具体的には、重合性化合物(C)は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール-(メタ)アクリル酸-安息香酸エステル、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG200♯ジ(メタ)アクリレート、PEG400♯ジ(メタ)アクリレート、PEG600♯ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有しうる。なお、既に述べたとおり、重合性化合物(C)からは、上述のカルボキシル基含有不飽和化合物(A)に含まれる化合物は除かれるが、重合性化合物(C)がカルボキシル基を有することを排除するものではない。また、重合性化合物(C)は、溶剤(E)からも除かれる。
【0086】
重合性化合物(C)は、環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体(C1)を含有することが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の、インクジェットで成形するにあたっての吐出性を特に高めうる。さらに、インクジェット用硬化性樹脂組成物が環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体(C1)を含有すると、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化性がより向上しうるため、硬化物の物性、特に耐熱性及び耐湿熱性を高めやすい。「環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体」とは、1分子内に少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有し、かつ反応により分子内環化することで環構造を形成してオリゴマー又はポリマーとなる単量体をいう。環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体から得られるオリゴマー又はポリマーは、環構造を有している。環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体(C1)は、例えば環化することで五員環を重合体主鎖に有するポリマー、プレポリマーを形成する構造を有することが好ましい。なお、環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体(C1)は、前記の例に限られず、官能基数も特に限定されない。
【0087】
重合性化合物(C)は、三官能の化合物、すなわち一分子中にエチレン性不飽和基を3つ有する化合物を含有することも好ましい。三官能の化合物は、例えばトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0088】
重合性化合物(C)は、六官能の化合物、すなわち一分子中にエチレン性不飽和基を6つ有する化合物を含有してもよい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物から形成される塗膜へ光照射するにあたって、塗膜を深部まで更に良好に硬化させやすくできる。六官能の化合物は、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0089】
重合性化合物(C)は、トリシクロデカン骨格を有する化合物を含有してもよい。トリシクロデカン骨格を有する化合物は、例えばトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを含有する。
【0090】
なお、前記三官能の化合物、前記六官能の化合物、及び前記トリシクロデカン骨格を有する化合物において、環構造を有する重合体主鎖を形成しうる化合物は、上記環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体(C1)に包含される。
【0091】
重合性化合物(C)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有してもよい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2-メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP-1M、及びライトエステルP-2M)、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP-1A)、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八化学工業株式会社製の品番MR-260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)との付加反応物である品番HFA-6003、及びHFA-6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)との付加反応物である品番HFA-3003、及びHFA-6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0092】
重合性化合物(C)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、及びオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0093】
インクジェット用硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する重合性化合物(C)の百分比は、35質量%以上95質量%以下であれば好ましい。この百分比は45質量%以上であればより好ましく、55質量%以上であれば更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、この百分比は、90質量%以下であればより好ましく、85質量%以下であれば更に好ましく、80質量%以下であれば特に好ましい。
【0094】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物(D)は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)におけるカルボキシル基と反応しうる。このため、エポキシ化合物(D)は、インクジェット用硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。
【0095】
エポキシ化合物(D)は、25℃で液状であるエポキシ化合物(D1)を含有することが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を低粘度に維持しやすく、インクジェット用硬化性樹脂組成物の吐出性をより損ないにくい。
【0096】
エポキシ化合物(D1)は、例えば25℃で液状であるビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び25℃で液状であるビスフェノールA型エポキシ樹脂等を含みうる。エポキシ化合物(D1)の具体的な市販品の例は、DIC株式会社製の、EPICON(登録商標)シリーズの、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である840、840-S、850、850-S、EXA-850CRP、850-LC;ビスフェノールF型エポキシ樹脂である830、830-S、EXA-830CRP、EXA-830LVP、835、及びEXA-835LV、株式会社ADEKA製の、アデカレジンシリーズの、EP-4100、EP-4100G、EP-4100E、EP-4100TX、EP-4300E、EP-4400、EP-4520S、EP-4530、EP-4901、EP-4901E、EP-4000、EP-4005、EP-7001、EP-4080E、EPU-6、EPU-7N、EPU-11F、EPU-15F、EPU-1395、EPU-73B、EPU-17、EPU-17T-6、EPR-1415-1、EPR-2000、EPR-2007、EPR-1630、EP-49-10N、EP-49-10P2、QR-9401-1、QR-9327-1、QR-9466、ED-502、ED-502S、ED-509E、ED-509S、ED-529、ED-503、ED-503G、ED-506、ED-523T、ED-505、ED-508、及びED-512X、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の、エポトートシリーズの、YD-115、YD-115CA、YD-127、YD-128、YD-128G、YD-128S、YD-128CA、YDF-170、YDF-170N、YD-8125、YDF-8170C、ZX-1059、YD-825GS、YDF-870GS、PG-207GS、ZX-1658GS、ネオトートS、及びYH-300、三菱ケミカル株式会社製の、jERシリーズの、825、827、828、828EL、828US、828XA、801N、811、813、816A、819、806、806H、807、152、630、871、890、1750、YX8000、YX8034、YL980、YL983U、YX7400N、及びYX7105、株式会社ダイセル製のセロキサイド2021P、セロキサイド2081、EHPE3150CE、エポリードPB3600、エポリードPB4700、及びエポリードGT401等を挙げることができる。ただし、エポキシ化合物(D1)の例は、前記に限られない。
【0097】
エポキシ化合物(D1)は、25℃で液状であれば、融点を有していなくてもよく、エポキシ化合物(D1)は、非晶性のエポキシ化合物を含みうる。なお、融点を有さないエポキシ化合物を「非晶性エポキシ化合物」、融点を有するエポキシ化合物を「結晶性エポキシ化合物」、ということもある。すなわち、エポキシ化合物(D)は、非晶性エポキシ化合物を含有してもよい。
【0098】
非晶性エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールノボラックA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含みうる。エポキシ化合物(D1)が非晶性エポキシ化合物としてビスフェノールノボラックA型エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方を含む場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化性がより向上し、かつ、インクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させて作製される電気絶縁層により優れたパターンを形成することができる。より具体的には、非晶性エポキシ化合物は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC-3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST-4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4700、EPICLON HP-4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP-7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATEX-E-201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175-500、及びYL7175-1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR-960、EPICLON TER-601、EPICLON TSR-250-80BX、EPICLON 1650-75MPX、EPICLON EXA-4850、EPICLON EXA-4816、EPICLON EXA-4822、及びEPICLON EXA-9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-156)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-136)、並びにゴム粒子含有ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番カネエースMX-130)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0099】
エポキシ化合物(D)はリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は結晶性エポキシ化合物(D1)に含有されてもよいし、あるいは非晶性エポキシ化合物(D2)に含有されてもよい。リン含有エポキシ樹脂は、例えば、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-9726、及びEPICLON EXA-9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX-305等である。
【0100】
エポキシ化合物(D)は、本開示の目的を逸脱しない範囲において、結晶性エポキシ化合物を含有してもよい。結晶性エポキシ化合物は、例えば、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ化合物(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC-1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ化合物(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX-4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ化合物(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ化合物(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV-70XY、YSLV-80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ化合物(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR-1800)、及びビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ化合物(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の成分を含みうる。
【0101】
インクジェット用硬化性樹脂組成物においてエポキシ化合物(D)は、エポキシ化合物(D)のエポキシ基の当量が、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)のカルボキシル基1当量に対して、0.1以上10以下であることが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の熱硬化性を維持しながら、インクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させて作製されるソルダーレジスト層等の電気絶縁層に良好にパターンを形成することができる。このエポキシ基の当量は、8.5以下であればより好ましく、7.0以下であれば更に好ましい。また、このエポキシ基の当量は、0.5以上であればより好ましく、0.7以上であれば更に好ましい。
【0102】
[溶剤]
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、溶剤(E)を含有しないことが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物のインクジェット法により成形するにあたっての吐出性を更に高めうる。そのため、インクジェット用硬化性樹脂組成物から作製されるパターンの精度を更に高めうる。
【0103】
本開示における溶剤(E)は、公知の溶媒として採用される、組成物等の濃度を調製するために用いられる液体であり、例えば有機溶剤である。有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含みうる。しかし、本実施形態のインクジェット用樹脂組成物は、前記有機溶剤を含有していなくてもインクジェット法により成形するにあたっての吐出性が高く維持される。なお、溶剤(E)から、上記で説明したカルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)に含まれる化合物は除かれる。
【0104】
インクジェット用硬化性樹脂組成物が溶剤(E)を含有する場合には、インクジェット用樹脂組成物は、インクジェット用硬化性樹脂組成物全量に対する溶剤(E)の重量割合が5%未満であることも好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を高くなり過ぎないように調整しやすく、インクジェット用樹脂組成物をインクジェット法により成形するにあたっての吐出性を更に高めうる。インクジェット用硬化性樹脂組成物全量に対する溶剤(E)の重量割合が4%以下であればより好ましく、3%以下であれば更に好ましい。なお、「インクジェット用硬化性樹脂組成物全量」とは、インクジェット用硬化性樹脂組成物における固形分成分の合計量に溶剤(E)等の揮発成分の量を加えた全体の合計量をいう。
【0105】
[その他の成分]
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、本開示の効果を阻害しない限りにおいて、上記で説明した成分以外の成分を含有してもよい。例えば、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、硬化剤、硬化促進剤、フィラー(無機フィラー、有機フィラー);着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;密着性付与剤、レオロジーコントロール剤、並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0106】
具体的には、例えばインクジェット用硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン、メラミン、メラミン樹脂等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。これらの成分の市販品は、例えば、四国化成株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT3503N、UCAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)である。
【0107】
また、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよい。この場合、無機フィラーの平均粒径は、例えば0.001μm以上20μm以下であることが好ましい。無機フィラーの平均粒径は、動的光散乱法で測定された粒度分布から算出される体積基準の累積50%径(メジアン径%D50)である。また、無機フィラーを含有する場合には、インクジェット用樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合は、例えば60質量%以下である。インクジェット用硬化性樹脂組成物に配合されうる無機フィラーとしては、例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、セピオライト、酸化チタンなどが挙げられる。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、有機フィラーを含有してもよい。
【0108】
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;ブチル化尿素樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有してもよい。
【0109】
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、レオロジーコントロール剤を含有してもよい。レオロジーコントロール剤により、インクジェット用硬化性樹脂組成物の粘性が好適化しやすくなる。レオロジーコントロール剤としては、例えば、ウレア変性中極性ポリアマイド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-430、BYK-431)、ポリヒドロキシカルボン酸アミド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-405)、変性ウレア(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-410、BYK-411、BYK-420)、高分子ウレア誘導体(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-415)、ウレア変性ウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-425)、ポリウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-428)、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、ベントナイト、カオリン、クレーが挙げられる。
【0110】
インクジェット用硬化性樹脂組成物は、表面調整剤を含有してもよい。インクジェット用硬化性樹脂組成物が表面調整剤を含有すると、表面調整剤により、インクジェット用硬化性樹脂組成物の表面張力が好適化しやすくなる。表面調整剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-313、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-342、BYK-UV3510)、ポリエーテル変性シロキサン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-3455)、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-370、BYK-377、BYK-378)、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-UV3500、BYK-UV3530、BYK-UV3570)、アクリル系共重合物(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-361N、BYK-381、BYK-392、BYK-394、BYK-3441)、表面活性ポリマー(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-399)、アクリルコポリマー(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-3440)、シリコン変性アクリル(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-3550)、水酸基含有シリコン変性アクリル(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-SILCLEAN3700)、水酸基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-SILCLEAN3720)、アルコールアルコキシレート(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-DYNWET800)等が挙げられる。
【0111】
本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、適宜の方法で調製されうる。例えばインクジェット用硬化性樹脂組成物の原料を混合し、撹拌することによりインクジェット用硬化性樹脂組成物を調製できる。また、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することで、インクジェット用硬化性樹脂組成物を調製してもよい。原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し混合物を調製してから、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、インクジェット用硬化性樹脂組成物を調製してもよい。インクジェット用硬化性樹脂組成物が溶剤(E)を含む場合には、まず原料のうち、溶剤(E)の一部又は全部を混合してから、原料の残りと混合してもよい。なお、本実施形態では、インクジェット用樹脂組成物は、溶剤(E)を含有しないか、又は溶剤(E)を含有し、かつインクジェット用樹脂組成物全量に対する溶剤(E)の重量割合は、5%未満であることが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により成形するにあたっての吐出性をより向上させることができる。また、インクジェット用硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)を混合する場合には、上記で説明した方法で得られた生成物であるカルボキシル基含有不飽和化合物(A1)と、反応時に用いた重合性化合物(C)との混合物を用いてもよい。
【0112】
本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法で成形することが可能であり、更にソルダーレジストを作製するために用いることもできる。
【0113】
[インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物]
インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物は、インクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる。具体的には、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物を得るにあたっては、例えばインクジェット用硬化性樹脂組成物の塗膜を作製し、塗膜に光を照射し、必要により加熱することにより可能である。本実施形態では、インクジェット用硬化性樹脂組成物の塗膜は、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により成形することで作製可能である。インクジェット法により成形するには、例えばインクタンクとノズルヘッドとを備えるインクジェット装置を用意し、インクタンクに上記のインクジェット用硬化性樹脂組成物を注入してから、装置を適宜制御して、基板等の支持材上に、インクジェット用硬化性樹脂組成物をノズルヘッドから吐出することで塗膜を作製すればよい。本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法による吐出性に優れる。また、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、吐出性に優れることにより、インクジェット法で成形することで高精細な塗膜の作製もしやすい。インクジェット法による吐出の条件は、インクジェット用硬化性樹脂組成物の組成、物性、インクジェット装置の性能等に応じて適宜調製すればよい。また、インクジェット法に成形するにあたっては、既に述べたとおり、インクジェット用硬化性樹脂から適宜のパターンを有する塗膜を作製してもよい。このように得られるインクジェット用硬化性樹脂組成物から作製された塗膜は、乾燥工程等がなくても乾いた状態を有しうる。
【0114】
続いて、インクジェット法により成形した塗膜に対し、光を照射することによりインクジェット用硬化性樹脂組成物を光硬化させる。光を照射するにあたっては、適宜の光源、適宜の照射条件により行うことができる。光源としては、例えば、紫外線の光源、具体的にはケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、YAGレーザー、LED、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群より選択される。光源は、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、YAGレーザー、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される光源であってもよい。これにより、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物を作製しうる。光照射の条件は、例えば積算光量20mJ/cm以上2000mJ/cm2以下とすることができる。
【0115】
さらに、上記の光硬化後のインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物を更に加熱することにより硬化させることも好ましい。加熱することにより、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物の物性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させやすい。加熱するにあたっての加熱温度、加熱時間は適宜調製すればよいが、例えば加熱温度は、50℃以上200℃以下、加熱時間5分以上5時間以下とすることができる。
【0116】
このように、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物の製造方法は、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により塗布する工程と、インクジェット用硬化性樹脂組成物に光を照射して光硬化する工程と、インクジェット用硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程とを含む。光硬化する工程の後に、加熱硬化する工程を行うことが好ましい。この場合、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、光硬化性及び熱硬化性を有するため、インクジェット用硬化性樹脂組成物から作製された塗膜を容易に硬化しやすい。そして、このように得られたインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い耐熱性及び耐湿熱性を有しうる。なお、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物を作製する方法は、上記で説明した方法に制限されない。例えば、上記では、光硬化する工程の後に、加熱硬化する工程を行う場合について説明したが、加熱硬化する工程の後に光硬化する工程を行ってもよい。
【0117】
[ソルダーレジスト及びプリント配線板]
本実施形態のソルダーレジスト層、及びソルダーレジスト層を備えるプリント配線板について、詳しく説明する。
【0118】
本実施形態のソルダーレジストは、上記で説明したインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。このため、インクジェット用硬化性樹脂組成物からプリント配線板におけるソルダーレジスト層を作製可能である。特に、インクジェット用硬化性樹脂組成物によれば、上述のとおり、インクジェット法による成形が可能であるため、高精細なパターンを有するレジスト層等の電気絶縁層を作製可能である。また、インクジェット法による成形が可能であるため、インクジェット用硬化性樹脂組成物によれば、従来のフォトレジスト型の樹脂組成物とは異なり、塗布してから現像する工程が必要なく、すなわちパターン非形成部分(フォトレジストにおける非露光部分)にはインク(硬化性樹脂組成物)を塗布する必要がない。そのため、インクのロスを低減し、工程の簡略化を実現しうる。インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジストは、上記で説明した硬化物の作製方法と同様に作製すればよい。具体的には、例えば、インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により成形するにあたり、適宜のパターンを有するように基板上にインクジェット用硬化性樹脂組成物を吐出し、パターン状に成形された塗膜を光硬化、必要により加熱硬化させることで作製可能である。具体的には、後述のプリント配線板を作製する場合におけるソルダーレジスト層を作製する場合と同様である。
【0119】
なお、インクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法により成形させることが可能であればよいものであるが、インクジェット法以外の方法で成形することを制限するものではない。インクジェット法以外の塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法等からなる群より選択される方法が挙げられる。
【0120】
ソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する場合、例えばまず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材上に、インクジェット用硬化性樹脂組成物を、インクジェット法で成形することにより、ソルダーレジスト層を作製する。すなわち、コア材の導体配線が設けられている面上に、インクジェット用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する。
【0121】
次に、塗膜に光を照射することで光硬化させる。本実施形態では、インクジェット法により適宜のパターン形状を有するように塗膜を作製することが可能であるため、基材上に塗布された部分のみを硬化させることで、ソルダーレジスト層を作製しうる。光照射の条件は、例えば積算光量20mJ/cm以上2000mJ/cm2以下とすることができる。
【0122】
続いて、加熱することで熱硬化させてもよい。この場合、ソルダーレジスト層の耐熱性及び耐湿熱性を特に高めうる。加熱の条件は、例えば加熱温度50℃以上200℃以下の範囲内、加熱時間5分以上5時間以下の範囲内である。このようにして塗膜を熱硬化させると、ソルダーレジスト層の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上しうる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、塗膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、塗膜の光硬化を更に進行させることができる。これにより、導体配線をインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物で作製されるソルダーレジストを作製しうる。
【0123】
ソルダーレジスト層の厚みは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であってよい。
【0124】
以上により、コア材上に、インクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。
【実施例0125】
以下、本実施形態の具体的な実施例を提示する。ただし、本実施形態は下記の実施例のみに制限されない。
【0126】
(1)カルボキシル基含有不飽和化合物の合成
(1-1)合成例A-1
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液A-1の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R1~R8がすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート236質量部、及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0127】
続いて、四つ口フラスコ内に更に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸30.4質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートを含む溶液A-1を得た。溶液A-1のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液A-1中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は920、溶液A-1の酸価は20mgKOH/gであった。なお、本開示の実施例における「酸価」は、調製した溶液に基づく酸価である。
【0128】
(1-2)合成例A-2
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液A-2の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R1~R8がすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート256質量部、及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0129】
続いて、四つ口フラスコ内に更に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートを含む溶液A-2を得た。溶液A-2のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液A-2中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は962、溶液A-2の酸価は36mgKOH/gであった。
【0130】
(1-3)合成例A-3
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液A-3の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R1~R8がすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート276質量部、及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0131】
続いて、四つ口フラスコ内に更に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸91.2質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートを含む溶液A-3を得た。溶液A-3のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液A-3中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は990、溶液A-3の酸価は49mgKOH/gであった。
【0132】
(1-4)合成例A-4
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液A-4の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R1~R8がすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート235質量部、及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0133】
続いて、四つ口フラスコ内に更に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートを含む溶液A-4を得た。溶液A-4のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液A-4中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は3466、溶液A-4の酸価は20mgKOH/gであった。
【0134】
(1-5)合成例A-5
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液A-5の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R1~R8がすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート256質量部、及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0135】
続いて、四つ口フラスコ内に更に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む溶液A-5を得た。溶液A-5のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液A-5中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は953であった。また、溶液A-5の酸価は36mgKOH/g(固形分酸価は60mgKOH/g)であった。
【0136】
(1-6)合成例A-6
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液A-6の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R~Rがすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート250質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6質量部及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0137】
続いて、四つ口フラスコ内に更に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを含む溶液A-6を得た。溶液A-6のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液A-6中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は958、溶液A-6の酸価は36mgKOH/gであった。
【0138】
(1-7)合成例B-1
[カルボキシル基非含有不飽和化合物の溶液B-1の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(7)で示され、式(7)中R1~R8がすべて水素である、エポキシ当量251g/eq.であるエポキシ化合物)251質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート215質量部、及びメチルハイドロキノン0.5質量部を加え、混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0139】
これにより、カルボキシル基非含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートを含む溶液B-1を得た。溶液B-1のカルボキシル基非含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液B-1中のカルボキシル基非含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は794であった。
【0140】
(1-8)合成例B-2
[カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液B-2の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN-700-10、エポキシ当量203)203質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート224質量部を投入して混合することで混合物を調製した。この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度100℃、加熱時間8時間の条件で攪拌しながら加熱して付加反応を進行させた。
【0141】
続いて、四つ口フラスコ内に更に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部を添加した。そして、この混合物を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら、加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で攪拌しながら加熱した。これによりカルボキシル基含有不飽和化合物の、ジプロピレングリコールジアクリレートを含む溶液B-2を得た。溶液B-2のカルボキシル基含有不飽和化合物の含有割合は60質量%であった。溶液B-2中のカルボキシル基含有不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)は5936、溶液B-2の酸価は41mgKOH/gであった。
【0142】
(2)インクジェット用硬化性樹脂組成物の調製
表に示す配合割合で、着色剤(着色剤A及び着色剤B)を、カルボキシル基含有不飽和化合物の溶液に分散させた後、表に示す配合割合で前記以外の原料を配合して混合した。この混合物を、60℃まで加熱し、加熱した状態で60分撹拌することで樹脂組成物を得た。なお、表に示される成分の詳細は以下の通りである。また、各表中、(A)成分において、括弧書きで示す数字は、A-1~A-4及びB-2においては、カルボキシル基含有不飽和化合物の質量部及びジプロピレングリコールジアクリレートの質量部、A-5においては、カルボキシル基含有不飽和化合物の質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの質量部、B-1においては、カルボキシル基非含有不飽和化合物の質量部及びジプロピレングリコールジアクリレートの質量部である。また、A-6においては、括弧書きで示す数字は、左から順に、カルボキシル基含有不飽和化合物の質量部ジプロピレングリコールジアクリレートの質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの質量部である。
-(B)成分:光重合開始剤
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resin B.V.社製、品番Omnirad TPO H)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)。
・光重合開始剤B:2EAQ(2-エチルアントラキノン)。
・光重合開始剤C:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 651)。
・光重合開始剤D:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、品番カヤキュアDETX-S)。
-(C)成分:重合性化合物
・重合性化合物A:ジプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製 品番 DPGDA)。
・重合性化合物B:環化重合性モノマー(株式会社日本触媒製 品番 AOMA)
・重合性化合物C:メトキシジプロピレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製 品番 ライトアクリレート DPM-A)。
・重合性化合物D:トリメチロールエタントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製 品番 NKエステル A-TMET)。
-(D)成分:エポキシ化合物
・エポキシ化合物A:液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製 品番 EPICLON 830。エポキシ当量172g/eq.。)。
・エポキシ化合物B:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製 品番 EPICLON 840。エポキシ当量185g/eq.。)。
・エポキシ化合物C:固形状クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製 品番 EPICLON N-695。エポキシ当量214g/eq.。)を固形分75%でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した溶液。各表中、括弧書きで示す数字は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの質量部である。
-添加剤
・添加剤A:4-メトキシフェノール。
・添加剤B:レベリング剤(ビックケミー・ジャパン製 品番 BYK-315N)。
-着色剤
・着色剤A:フタロシアニンブルー。
・着色剤B:1,1’-[(6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10-アントラセンジオン)。
【0143】
(3)テストピースの作製
以下の方法により、テストピースを作製した。まず、厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にエッチングを施して導体配線を形成することで、プリント配線基板を得た。続いて、上記(2)で調製した樹脂組成物を、プリント配線基板上へ塗布した。樹脂組成物の塗布は、インクジェット塗布装置(マイクロクラフト社製 MJP2013KI-DU)を用いて行った。インクジェットタンクに樹脂組成物を投入し、インクジェット装置のヘッド温度を50℃に設定してから、プリント配線基板の銅箔上に、膜厚約20μmになるようにインクジェット装置のノズルヘッドより吐出させ塗布した。これにより、プリント配線基板上に、樹脂組成物の塗膜を作製した。
【0144】
続いて、塗膜に対し、波長385nmのLED光源で、積算光量300mJ/cmの条件で光を照射することにより、塗膜を光硬化させた。
【0145】
続いて、光硬化後の塗膜に対し、更に加熱温度150℃、加熱時間30分の条件で、塗膜を熱硬化させた。
【0146】
なお、実施例6においては、上述の熱硬化の工程に代えて、メタルハライド光源により、積算光量1000mJ/cmの条件でUV光を照射することにより更に光硬化させた。
【0147】
これにより、各実施例及び比較例の樹脂組成物をインクジェット法により成形した後の硬化物のテストピースを得た(ソルダーレジスト膜厚20μm)。
【0148】
4.評価試験
(4-1)粘度
上記(2)で調製したインクジェット用硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。粘度は、B型粘度計(株式会社トキメック製VISCOMETER、MODEL:BM)を使用し、回転数60rpm、温度25℃の条件で測定した。測定により得られた値を表1~2に示す。
【0149】
(4-2)吐出性
各実施例及び比較例のテストピース(硬化膜)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:基板表面に均一に塗布されており、硬化膜の表面が滑らかである。
B:基板表面全体に塗布されているが、一部にノズルヘッドの操作方向に対して筋状の模様が見られる。
C:塗膜の一部に抜けが発生しているか、又は硬化膜の一部にクラックが発生している。
【0150】
(4-3)低タック性
各実施例及び比較例について、UV照射後のテストピースを手で指を押し当てることにより、その硬化膜の表面のべたつきを、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に指を押し当てても、べたつきを感じない。
B:硬化膜に指を押し当てると、僅かにべたつきを感じる。
C:硬化膜に指を押し当てると、かなりのべたつきを感じる。
【0151】
(4-4)密着性
各実施例及び比較例のテストピースに対し、JIS D0202に準拠して、碁盤目状にクロスカット(10本×10本:1mm間隔)を入れ、これにセロハン粘着テープを貼り付けてピーリングテストを行った。ピーリングテスト後の、テストピースにおける剥がれの状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:碁盤目状のクロスカットにおいて100個中100個に剥がれが見られなかった。
B:碁盤目状のクロスカットにおいて100個中1個以上50個未満の剥がれが見られた。
C:碁盤目状のクロスカットにおいて100個中50個以上の剥がれが見られた。
【0152】
(4-5)耐酸性
各実施例及び比較例のテストピースを20℃の条件下、10容量%の塩酸水溶液中に1時間浸漬した後、各硬化膜の外観を目視により観察し、硬化膜の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の多くの部分に変化が見られ、膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0153】
(4-6)耐アルカリ性
各実施例及び比較例のテストピースを20℃の条件下、10容量%の水酸化ナトリウム水溶液中に1時間浸漬した後、各硬化膜の外観を目視により観察し、硬化膜の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の多くの部分に変化が見られ、膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0154】
(4-7)耐溶剤性
各実施例及び比較例のテストピースを20℃の条件下、イソプロピルアルコール中に1時間浸漬した後、各硬化膜の外観を目視により観察し、硬化膜の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の多くの部分に変化が見られ、膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0155】
(4-8)はんだ耐熱性
JIS C 6481に準拠し、各実施例及び比較例のテストピースにフラックスを塗布してから、260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬してから水洗する操作を3回繰り返し、3回終了後の塗膜の外観を観察し、以下の基準で評価した。
A:硬化物層の外観に変化が認められなかった。
B:硬化物層における硬化膜に変色が僅かに認められた。
C:硬化物層における硬化膜に浮き、剥がれ、はんだ潜り等の変化が認められた。
【0156】
(4-9)PCT耐性(PCT:プレッシャクッカ試験)
各実施例及び比較例のテストピースを121℃、100%R.H.の環境下で8時間放置した後、硬化物からなる層の外観を観察し、PCT耐性(耐湿熱性)について次の基準で評価した。
A:硬化物層に膨れ、剥離、変色等の異常は認められない。
B:硬化物層に膨れ、剥離等の異常は認められないが、変色が僅かに認められる。
C:硬化物層に膨れ、剥離、変色等の異常が認められる。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
(まとめ)
上記実施形態及び実施例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0160】
第1の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、インクジェット法で成形される硬化性樹脂組成物である。インクジェット用硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)を含有する。カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【0161】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0162】
第2の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1の態様において、前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、前記重合性化合物(C)の存在下、又はカルボキシル基含有不飽和化合物(A)全量に対する溶剤の含有割合が5重量%未満の前記溶剤の存在下での反応により得られる生成物を含む。
【0163】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性がより向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0164】
第3の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1又は第2の態様において、前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、カルボン酸(a2)との反応生成物に、酸無水物(a3)を反応させることで得られる生成物を含む。
【0165】
この態様によれば、硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が更に向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0166】
第4の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1又は第2の態様において、前記重合性化合物(C)は、環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体を含有する。
【0167】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性に更に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が更に向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0168】
第5の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第3の態様において、前記重合性化合物(C)は、環構造を有する重合体主鎖を形成する単量体を含有する。
【0169】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性に更に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が更に向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0170】
第6の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1から第5のいずれか1つの態様において、25℃における粘度は、5mPa・s以上500mPa・s以下である。
【0171】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性により優れる。
【0172】
第7の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1から第6のいずれか1つの態様において、前記カルボキシル基含有不飽和化合物(A)の重量平均分子量は、5000以下である。
【0173】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性が更に向上しうるインクジェット用硬化性樹脂組成物が得られる。
【0174】
第8の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1から第7のいずれか1つの態様において、溶剤(E)を含有しないか、又は溶剤(E)を含有し、かつ前記インクジェット用硬化性樹脂組成物全量に対する前記溶剤(E)の重量割合が5%未満である。
【0175】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性により優れる。
【0176】
第9の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1から第8のいずれか1つの態様において、前記エポキシ化合物(D)は、25℃で液状であるエポキシ化合物(D1)を含有する。
【0177】
この態様によれば、インクジェット法による吐出性に更に優れる。
【0178】
第10の態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、第1から第9のいずれか1つの態様において、ソルダーレジストを作製するために用いられる。
【0179】
この態様によれば、耐熱性及び耐湿熱性に優れるソルダーレジスト、ソルダーレジスト層を作製できる。
【0180】
第11の態様の硬化物は、第1から第10のいずれか1つの態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られる。
【0181】
この態様によれば、耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0182】
第12の態様の硬化物の製造方法は、第1から第10のいずれか1つの態様のインクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェット法により塗布する工程と、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物に光を照射して光硬化する工程と、前記インクジェット用硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程とを含み、前記光硬化する工程の後に、前記加熱硬化する工程を行う。
【0183】
この態様によれば、インクジェット法による塗布時の吐出性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0184】
第13の態様のソルダーレジストは、第11の態様の硬化物を含む。
【0185】
この態様によれば、耐熱性及び耐湿熱性に優れるソルダーレジスト層が得られる。
【0186】
第14の態様のプリント配線板は、第11の態様の硬化物を含むソルダーレジスト層を備える。
【0187】
この態様によれば、耐熱性及び耐湿熱性に優れるソルダーレジスト層を備えるプリント配線板が得られる。