(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010592
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】電線繰り出し装置
(51)【国際特許分類】
B65H 49/18 20060101AFI20240117BHJP
B65H 49/28 20060101ALI20240117BHJP
B65H 57/18 20060101ALI20240117BHJP
B65H 57/06 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B65H49/18
B65H49/28
B65H57/18
B65H57/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112021
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】322006319
【氏名又は名称】有限会社藤田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 由起夫
【テーマコード(参考)】
3F109
3F110
【Fターム(参考)】
3F109BA04
3F109CA03
3F109CA04
3F109CA07
3F109CA10
3F109CB07
3F110BA02
3F110CA03
3F110DA05
3F110DB05
3F110DB12
(57)【要約】
【課題】被覆電線を束で持ち上げてしまうことを防止できる電線繰り出し装置を提供する。
【解決手段】電源繰り出し装置1は、コイル状に巻回された被覆電線Wのロールを載置する載置トレイ2と、上方から見てロール内における被覆電線Wの最終引き出し位置の外側に位置する案内孔24aを有する線材ガイド24と、上方から見てロールの中央に位置し、かつ、案内孔24aの上方に位置する案内孔41aを有する線材ガイド40と、を有する。被覆電線Wは、ロールから案内孔24a及び案内孔41aをこの順で通り、被覆電線Wを吸引する電線送りユニットに至るよう電源繰り出し装置1にセットされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源繰り出し装置であって、
コイル状に巻回された被覆電線のロールを載置する載置トレイと、
上方から見て前記ロール内における前記被覆電線の最終引き出し位置の外側に位置する第1の案内孔を有する第1の線材ガイドと、
上方から見て前記ロールの中央に位置し、かつ、前記第1の案内孔の上方に位置する第2の案内孔を有する第2の線材ガイドと、
を有し、
前記被覆電線は、前記ロールから前記第1の案内孔及び前記第2の案内孔をこの順で通り、前記被覆電線を吸引する電線送りユニットに至るよう前記電源繰り出し装置にセットされる、
電線繰り出し装置。
【請求項2】
前記第1の案内孔と前記第2の案内孔との間に位置する第3の案内孔を有する第3の線材ガイド、をさらに有し、
前記被覆電線の一端は、前記第1の案内孔、前記第3の案内孔、及び前記第2の案内孔をこの順で通り、前記電線送りユニットに至るよう前記電源繰り出し装置にセットされる、
請求項1に記載の電線繰り出し装置。
【請求項3】
前記第1の線材ガイド及び前記第3の線材ガイドは、前記第1の案内孔と前記第3の案内孔の間の距離が4cm以上となるように配置される、
請求項2に記載の電線繰り出し装置。
【請求項4】
前記第1の線材ガイド及び前記第3の線材ガイドは、前記第1の案内孔と前記第3の案内孔の間の距離が10cm以上となるように配置される、
請求項3に記載の電線繰り出し装置。
【請求項5】
前記第1の線材ガイド及び前記第3の線材ガイドは、前記載置トレイの回転軸を構成する支持ポールを回転軸として回動可能に構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電線繰り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線繰り出し装置に関し、特に、コイル状に巻回された被覆電線を次工程に供給するための電線繰り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスの製造工程には、被覆電線を所定長で切断し、切断された被覆電線の一端に圧着端子を装着し、他端をセミストリップする工程(以下、この工程を「次工程」と称する)が含まれる。特許文献1には、この次工程に対して被覆電線を供給するために用いられる電線繰り出し装置の一例が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される電線繰り出し装置は、コイル状に巻回された被覆電線(以下「電線ロール」という)を載置する載置トレイと、その上方中央に設置された案内リングと、さらにその上方中央に配置された線材ガイドとを有して構成される。この電線繰り出し装置を用いて被覆電線の供給を開始する場合、まず準備段階として、電線ロールを載置トレイ上に載置してその一端を上方に持ち上げ、案内リング及び線材ガイドの案内孔に順に通した後、電線繰り出し装置とは別に設けられる電線送りユニットにセットする作業が行われる。電線送りユニットは、所定長ずつ被覆電線を吸引し、次工程に供給する装置である。電線送りユニットを起動すると、その吸引力によって被覆電線が所定長ずつ電線ロールから繰り出され、電線送りユニットに吸い込まれる。吸い込まれた被覆電線は、電線送りユニットを介して、次工程に供給される。線材ガイドは、被覆電線の軌跡を垂直方向に規制する役割を果たす。案内リングは、被覆電線の外側への湾曲を防止する役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電線繰り出し装置には、被覆電線がもつれ、吸引が中断してしまう場合がある、という問題があった。この問題は、巻きに崩れが発生している使い残しの電線ロールを使う場合に特に顕著に発生するもので、一旦発生すると人力で被覆電線を解さねばならなくなってしまうので、改善が必要とされていた。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、被覆電線のもつれによる吸引の中断を防止できる電線繰り出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電線繰り出し装置は、電源繰り出し装置であって、コイル状に巻回された被覆電線のロールを載置する載置トレイと、上方から見て前記ロール内における前記被覆電線の最終引き出し位置の外側に位置する第1の案内孔を有する第1の線材ガイドと、上方から見て前記ロールの中央に位置し、かつ、前記第1の案内孔の上方に位置する第2の案内孔を有する第2の線材ガイドと、を有し、前記被覆電線は、前記ロールから前記第1の案内孔及び前記第2の案内孔をこの順で通り、前記被覆電線を吸引する電線送りユニットに至るよう前記電源繰り出し装置にセットされる、電線繰り出し装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の線材ガイドによって被覆電線が電線ロールの外周側に向かって強制的に振られることになり、その結果として電線ロールが適切に解されるので、被覆電線のもつれによる吸引の中断を防止可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態による電線繰り出し装置1の斜視図である。
【
図2】電線繰り出し装置1及び電線送りユニット100の全体構成を示す図である。
【
図3】作動中の状態を示す電線繰り出し装置1の斜視図である。
【
図4】裏側から見た電線繰り出し装置1の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態による電線繰り出し装置1の斜視図である。また、
図2は、電線繰り出し装置1及び電線送りユニット100の全体構成を示す図であり、
図3は、作動中の状態を示す電線繰り出し装置1の斜視図であり、
図4は、裏側から見た電線繰り出し装置1の斜視図である。以下、これらの図を参照しながら、電線繰り出し装置1の構成及び作用について説明する。
【0012】
初めに
図1を参照すると、電線繰り出し装置1は、載置トレイ2、支持ポール3、操作ボックス4、支持ロッド5、支持プレート6を有して構成される。
【0013】
電線繰り出し装置1は、
図3に示す被覆電線Wを次工程に対して供給するための装置であり、コイル状に巻回された被覆電線W(電線ロール)を搭載可能に構成される。電線ロールは円筒状の物体に巻き付けて作成されており、新品の状態では、最内周から最外周に向かって、所定周ずつ整然と巻回されている。電線ロールから被覆電線Wを引き出す際には、最内周から徐々に引き出していくことになる。このように被覆電線Wを引き出していくことから、使い残しの電線ロールは通常、内側の周が内側に向かって崩れた状態となっている。
【0014】
電線ロールの最内周から引き出された被覆電線Wの一端は、
図2に示すように、電線繰り出し装置1の上方で電線送りユニット100に接続される。電線送りユニット100は、電線ロール内の被覆電線Wを所定長ずつ断続的に吸引し、直線状にして次工程に供給する役割を果たす装置である。
【0015】
載置トレイ2は、電線ロールを載置するための円板状の部材である。載置トレイ2の中央には、支持ポール3を通すための開口部2aが設けられる。載置トレイ2は、この開口部2aの内面を通じて支持ポール3に固定される。支持ポール3は、垂直に立設された棒状の部材であり、載置トレイ2を操作ボックス4の上面から浮いた状態で保持するとともに、自身の軸周りの回転に伴って載置トレイ2を円周方向に回転させる載置トレイ2の回転軸としての役割を果たす。電線ロールは、支持ポール3を取り囲むように載置される。
【0016】
載置トレイ2の表面には、支持ポール3を中心として、放射状かつ等間隔に8つの細長い板状の金属部材10が配置される。これらの金属部材10の両端は載置トレイ2の表面に向かって屈曲しており、各金属部材10は、屈曲部の先端で載置トレイ2の表面にネジ止めされている。このような構成を採用したことで、各金属部材10の両端以外の部分の底面と、載置トレイ2の表面との間には1~2cm程度の間隙が生じており、載置トレイ2の上側から載置トレイ2上に電線ロールを載置した場合、電線ロール内の最下部に位置する被覆電線Wと載置トレイ2の表面との間に若干の間隙が生ずる。これにより電線繰り出し装置1においては、使用後に余った被覆電線Wの取り外しが容易になっている。
【0017】
各金属部材10の表面には、金属部材10の長手方向に沿ってスリット10aが設けられる。また、載置トレイ2の表面にも、各スリット10aに沿うように8つのスリット2bが設けられる。これらスリット10a,2bは、後述する規制杆23の一端を挿入するために設けられているものである。スリット10a,2bそれぞれの幅は、スリット10a,2bの延在方向における規制杆23の移動を妨げることのないよう、規制杆23の直径より若干長い値に設定される。
【0018】
各金属部材10の上面には、ストッパー11が取り付けられる。ストッパー11はスリット10aの任意の位置にネジ止めされる部材であり、金属部材10上に載置された電線ロールが外向きに散けてしまうことを防止する役割を果たす。ストッパー11の具体的な位置は、使用する電線ロールの大きさに応じて適宜決定される。各ストッパー11は、支持ポール3からの距離が等しくなるように設置することが好ましいが、多少のズレがあっても構わない。また、8つの金属部材10のすべてにストッパー11を設けることが最も好ましいが、最低2つ以上、好ましくは4つ以上の金属部材10にストッパー11を設ければよい。
【0019】
支持ポール3の上端近傍には、下から順に、各規制杆23の他端を固定するためのフランジ20、後述する線材ガイド24(第1の線材ガイド)を固定するためのフランジ21、後述する線材ガイド25(第3の線材ガイド)を固定するためのフランジ22が配置される。フランジ20は支持ポール3に固定されており、フランジ21,22は支持ポール3を回転軸として回動可能に構成される。この回動を滑らかに行うことができるよう、フランジ21,22の内面にベアリングを設けることとしてもよい。フランジ21,22は相互に固定されていてもよく、その場合、連動して回動することになる。
【0020】
フランジ20に固定される各規制杆23は、針金などの弾塑性を有する線状部材である。各規制杆23の他端は、フランジ20の側面から水平方向に突出するような形態で、フランジ20に固定される。一方、各規制杆23の一端が挿入されるスリット10a,2bは、垂直方向に開口している。したがって、各規制杆23を電線繰り出し装置1に取り付けるには、各規制杆23に力を加えて適宜湾曲させる必要があるが、湾曲後にも弾性は残ることから、各規制杆23の一端は載置トレイ2の外側に向かって付勢されている。これにより各規制杆23は、金属部材10上に載置されている被覆電線Wを外向きに付勢する役割を果たす。
【0021】
線材ガイド24,25はともに金属製の棒状部材であり、被覆電線Wのもつれを防止する役割を有している。線材ガイド24,25は、それぞれフランジ21,22の側面に、支持ポール3の周回方向の同じ位置に固定される。線材ガイド24の先端には案内孔24a(第1の案内孔)が設けられ、線材ガイド25の先端には案内孔25a(第3の案内孔)が設けられる。案内孔24a,25aはともに、被覆電線Wの外径よりも大径に形成される。一例では、外径1.6mmの被覆電線Wを用いる場合であれば、案内孔24a,25aの内径を8~10mmとすることが好ましく、10mmとすることがより好ましい。被覆電線Wは、電線ロールから案内孔24a,25aを通って後述する案内孔41aに至るよう、電線繰り出し装置1にセットされる。線材ガイド24,25の構成及び作用については、後ほどより詳しく説明する。
【0022】
操作ボックス4は、支持ポール3を軸周りに回転可能な状態で垂直に支持する装置である。操作ボックス4内に電動モータを内蔵し、この電動モータによって支持ポール3を強制的に回転させることとしてもよい。
図1に示した操作ボックス4は電動モータを内蔵する例によるものであり、電動モータの電源をオンオフするための電源スイッチ30と、電動モータの回転スピードを調節するためのスピード調節ダイヤル31と、電動モータの回転方向を指定するための反転スイッチ32とを有して構成される。
【0023】
支持ロッド5は、支持ポール3の上方に支持プレート6を保持するための棒状の部材である。支持ロッド5の下端は、操作ボックス4に固定される。
【0024】
支持プレート6は板状の部材であり、支持プレート6の上端に固定される。
図1及び
図4に示すように、支持プレート6には、回転腕40、線材ガイド41(第2の線材ガイド)、動作停止スイッチ42、支持スプリング43、回転体44、回動杆45、圧接ローラ46、スプリング取付ロッド47、圧接スプリング48、板状部材50~52、ヒンジ53、スプリング54、回転体55が取り付けられる。
【0025】
回転腕40、線材ガイド41、動作停止スイッチ42、及び支持スプリング43は、被覆電線Wにもつれが生じた場合に、電線送りユニット100に動作を停止させるための動作停止手段である。具体的に説明すると、回転腕40は棒状の金属製部材であり、一端寄りの中ほどで、ピン40aを回転軸として回動可能な状態で支持プレート6の裏面に取り付けられる。
【0026】
線材ガイド41は、一端に雄ネジが形成された棒状の金属製部材であり、回転腕40の他端に形成された雌ネジとの螺合により回転腕40に固定される。線材ガイド41の他端には、被覆電線Wの外径よりも大径に形成された案内孔41a(第2の案内孔)が設けられる。案内孔41aの内径の具体的な値は、案内孔24a,25aの内径と同じ値でよい。回転腕40及び線材ガイド41は、案内孔41aが上方から見て電線ロールの中央に位置し、かつ、線材ガイド24,25の上方に位置するように、支持プレート6に取り付けられる。
【0027】
ここで、案内孔41aには、球面内輪を有するロッドエンド(球面すべり軸受)を用いることが好ましい。こうすることで、案内孔41aから被覆電線Wに加わるストレスを軽減できる他、被覆電線Wの表面に傷がつくことも防止できる。この点は、案内孔24a,25aについても同様である。
【0028】
動作停止スイッチ42は、電線送りユニット100の動作電源をオンオフするためのスイッチであり、支持プレート6の裏面のうち、回転腕40の一端によりオンオフ可能な位置に取り付けられる。支持スプリング43は、一端で回転腕40の中ほどに固定され、他端で支持プレート6の裏面に固定された弾性部材である。初期状態では、支持スプリング43の弾性により回転腕40の他端は下方に偏位した状態で保持されるが、被覆電線Wにもつれが生ずると、案内孔41aを介して回転腕40の他端が持ち上げられる。その結果、回転腕40の一端により動作停止スイッチ42が押下され、電線送りユニット100の動作が停止することになる。
【0029】
回転体44、回動杆45、圧接ローラ46、スプリング取付ロッド47、圧接スプリング48、板状部材50~52、ヒンジ53、スプリング54、回転体55は、電線ロールから引き出された被覆電線Wを電線送りユニット100に導くための案内手段である。具体的に説明すると、回転体44は、円筒形状の基部と、その両端に設けられたフランジとを有するボビン状の部材であり、ピン44aを回転軸として回動可能となるように支持プレート6の表面に取り付けられる。
【0030】
回動杆45は板状の金属製部材であり、ピン45aを回転軸として回動可能となるように支持プレート6の表面に取り付けられる。圧接ローラ46は円盤状の樹脂製部材であり、ピン46aを回転軸として回動可能となるように回動杆45の一端に取り付けられる。スプリング取付ロッド47は棒状の金属製部材であり、回動杆45と直角をなすように、一端で回動杆45の他端に固定される。圧接スプリング48は、一端でスプリング取付ロッド47の他端に固定され、他端で支持プレート6の先端に固定された弾性部材である。圧接スプリング48は、スプリング取付ロッド47及び回動杆45を介し、圧接ローラ46を回転体44の側面に向かって付勢する役割を果たす。
【0031】
板状部材50は、突出部50aを有する略L字形の金属製部材であり、L字を構成する2本の腕の一方において支持プレート6の裏面に固定される。板状部材50のL字を構成する2本の腕の他方は、支持プレート6の上面から表側に露出している。突出部50aは、板状部材50のL字の2本の腕の他方の支持ロッド5側の辺から、支持プレートの表面側に向かって突出するように設けられる。
【0032】
板状部材51はL字形の金属製部材であり、L字を構成する2本の腕の一方の先端において、1本のピン51aにより、板状部材50のL字を構成する2本の腕の他方の先端に取り付けられる。この構成により、板状部材51はピン51aを回転軸として回動可能となっているが、板状部材50の突出部50aが存在していることにより、その可動範囲は僅かな量に規制されている。
【0033】
板状部材52は略長方形の金属製部材であり、ヒンジ53を介して、板状部材51のL字を構成する2本の腕の他方の先端に取り付けられる。ヒンジ53は、板状部材52が板状部材51のL字を構成する2本の腕の他方の先端を構成する辺を回転軸として回動可能となるように配置される。スプリング54は、一端で板状部材52の下辺に固定され、他端で板状部材50に固定された弾性部材であり、板状部材51,52の可動範囲を規制する役割を果たす。
【0034】
回転体55は、円筒形状の基部と、その両端に設けられたフランジとを有するボビン状の部材であり、ピン55aを回転軸として回動可能となるように、板状部材51のL字の屈曲部分に取り付けられる。回転体55は、ピン55aを回転軸とする回動の他、ここまでで説明した板状部材50~52、ヒンジ53、及びスプリング54の構成により、水平方向に僅かに揺動も可能とされている。
【0035】
被覆電線Wは、上述したように電線ロールから案内孔24a,25aを通って案内孔41aに至った後、案内孔41aを通って圧接ローラ46と回転体44の間を抜け、回転体55の側面に触れつつ電線送りユニット100に至るよう、電線繰り出し装置1にセットされる。このとき被覆電線Wは、上述したように圧接ローラ46が圧接スプリング48によって回転体44の側面に向かって付勢されていることから、圧接ローラ46と回転体44の間を抜けている間に直線状に矯正される。回転体55は、揺動によって応力を逃がしつつ、被覆電線Wを電線送りユニット100に向かって案内する役割を果たす。
【0036】
図5は、電線繰り出し装置1の側面図である。以下、同図を参照しながら、線材ガイド24,25の構成について、より詳しく説明する。
【0037】
線材ガイド24,25はそれぞれ、被覆電線Wの繰り出し中に曲がってしまうことのない程度の強度を有する一方で、ペンチなどの工具を用いることにより、人力により任意の角度で折り曲げ可能に構成される。電線繰り出し装置1のユーザは、このような線材ガイド24,25の性質を利用し、電線繰り出し装置1の使用を開始する前に、線材ガイド24,25の形状調整を行う。
【0038】
具体的に説明すると、まず前提として、上述したように、被覆電線Wは、電線ロールの最内周から徐々に引き出されることとなるように、電線繰り出し装置1にセットされる。この場合、電線ロールの径方向における被覆電線Wの引き出し位置は、引き出しが進むにつれ、最外周に向かって移動することになる。したがって、予定される被覆電線Wの引き出し長が長いほど、電線ロール内における被覆電線Wの最終引き出し位置(径方向の位置。以下、単に「最終引き出し位置」という)は、電線ロールの最外周寄りの位置となる。線材ガイド24についてユーザは、案内孔24aが上方から見てこの最終引き出し位置の外側に位置するように、その形状を調整する。電線ロールを最後まで使用する場合であれば、最終引き出し位置は最外周に等しくなるので、ユーザは、案内孔24aが上方から見て電線ロールの最外周の外側に位置するように、線材ガイド24の形状を調整すればよい。
図5には、この場合の例を示している。電線ロールの最外周の位置はストッパー11によって規定されるので、ユーザは、図示した距離R1(支持ポール3から案内孔24aまでの距離)が距離R2(支持ポール3からストッパー11までの距離)よりも長くなるように、線材ガイド24の形状を調整すればよい。
【0039】
次に線材ガイド25についてユーザは、案内孔25aが案内孔24aと案内孔41aとの間に位置するように、その形状を調整する。なお、案内孔24b、案内孔25a、案内孔41aを一直線に並ばせる必要はないが、線材ガイド24への被覆電線Wの巻き付き防止の観点から、案内孔24aと案内孔25aの間の距離Dは4cm以上とすることが好ましい。また、被覆電線Wのもつれによる吸引の中断を防止する観点から、距離Dは10cm以上とすることがより好ましく、14cm以上とすることがさらに好ましい。これらの点については、後ほど実験結果を示して詳述する。
【0040】
線材ガイド24,25の形状を以上のように調整し、さらに、上述した態様で被覆電線Wを電線繰り出し装置1にセットした後、電線送りユニット100の電源をオンにすると、電線繰り出し装置1から次工程への被覆電線Wの供給が開始される。このとき線材ガイド24,25は、電線ロール内における被覆電線Wの位置に応じて支持ポール3の周りを激しく回転しつつ、引き出された被覆電線Wを電線ロールの外周側に向かって強制的に振る役割を果たす。その結果、電線ロールが適切に解されることになるので、本実施の形態による電線繰り出し装置1によれば、巻きに崩れが発生している使い残しの電線ロールを使う場合においても、被覆電線Wがもつれ、吸引が中断してしまうことを防止できるようになる。
【0041】
また、もし線材ガイド24,25のうち線材ガイド25を用いず線材ガイド24のみを用いたとすると、被覆電線Wが線材ガイド24に巻き付いてしまう場合があるが、本実施の形態による電線繰り出し装置1によれば、十分に離隔した2つの線材ガイド24,25を用いているので、このような巻き付きを防止することも可能になる。
【0042】
以下、本実施の形態による電線繰り出し装置1を用いて実験を行った結果を説明する。以下に示す実験では、被覆電線Wとして、電線外径1.6mmの自動車用薄肉低圧電線SVSS0.5Fを用いた。また、外径340mm、内径200mm、高さ45mm、総重量2.3kgの新品の電線ロールを載置トレイ2にセットした後、取り外して棚に戻すという作業を数度にわたって繰り返すことにより、内側に向かって巻きに崩れが発生している使い残しの電線ロールを再現し、実験用の電線ロールとして利用した。距離R1,R2については、それぞれ128mm、170mmとした。距離R1の128mmという数値は、案内孔24aが上方から見て上述した最終引き出し位置の外側に位置するように決定された数値である。また、案内孔24a,25aの内径を各8mm、電線送りユニット100による被覆電線Wの吸引速度を4m/s、加工線長(=一度に吸引する被覆電線Wの長さ)を1500mm、操作ボックス4内の電源モータの回転速度を36rpmとした。
【0043】
表1は、今回行った実験の結果を示している。表1には、線材ガイド25の位置を固定し、線材ガイド24の位置を変化させることによって距離Dの値を変化させつつ、距離Dの各値についてn1回の試行を繰り返した場合における、被覆電線Wのもつれ等により吸引が中断した回数(n2)と、そのうち線材ガイド24,25への巻き付きが発生した回数(n3)とを示している。表1には、比較例として、線材ガイド24,25を用いなかった場合、及び、線材ガイド25を用いず線材ガイド24のみを用いた場合についても示している。後者の場合、線材ガイド24はD=14cmに相当する位置に配置した。
【0044】
【0045】
表1の結果から、少なくとも線材ガイド24を用いることにより、より好ましくは線材ガイド24,25の両方を用いることにより、線材ガイド24,25を用いない場合に比べ、被覆電線Wのもつれによる吸引の中断を防止できるようになることが理解される。また、中断の回数は、距離Dが大きくなるほど減少することが理解される。特に、距離Dを10cm以上にすると中断回数が顕著に減少し、距離Dを14cm以上にすれば、中断を完全に防止できると言える。また、線材ガイド25を用いず線材ガイド24のみを用いる場合、及び、線材ガイド24,25の両方を用いても距離Dが2cm以下の場合には線材ガイド24,25への巻き付きが発生するが、線材ガイド24,25の両方を用い、かつ、距離Dを4cm以上とすれば、線材ガイド24,25への巻き付きも完全に防止できることが理解される。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、線材ガイド24,25を金属製の棒状部材によって構成する例を説明したが、入れ子式の構造を採用することなどにより、線材ガイド24,25を伸縮自在に構成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電線繰り出し装置
2 載置トレイ
2a 開口部
2b スリット
3 支持ポール
4 操作ボックス
5 支持ロッド
6 支持プレート
10 金属部材
10a スリット
11 ストッパー
20~22 フランジ
23 規制杆
24,25 線材ガイド
24a,25a 案内孔
30 電源スイッチ
31 スピード調節ダイヤル
32 反転スイッチ
40 回転腕
40a,44a,45a,46a,51a,55a ピン
41 線材ガイド
41a 案内孔
42 動作停止スイッチ
43 支持スプリング
44,55 回転体
45 回動杆
46 圧接ローラ
47 スプリング取付ロッド
48 圧接スプリング
50~52 板状部材
50a 突出部
53 ヒンジ
54 スプリング
100 電線送りユニット
W 被覆電線