IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユニバーサル技研の特許一覧

<>
  • 特開-放射性薬剤投与装置 図1
  • 特開-放射性薬剤投与装置 図2
  • 特開-放射性薬剤投与装置 図3
  • 特開-放射性薬剤投与装置 図4
  • 特開-放射性薬剤投与装置 図5
  • 特開-放射性薬剤投与装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105965
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】放射性薬剤投与装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240731BHJP
   A61M 36/06 20060101ALI20240731BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20240731BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20240731BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20240731BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01T1/161 E
A61M36/06
A61M5/14 500
A61M5/14 510
A61M5/172
A61M5/145
A61J1/20 314C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009989
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】594118958
【氏名又は名称】株式会社ユニバーサル技研
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
4C188
【Fターム(参考)】
4C047CC04
4C047GG24
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE12
4C066EE14
4C066FF04
4C066FF07
4C066QQ22
4C066QQ23
4C066QQ32
4C188EE02
4C188EE13
4C188FF04
4C188FF07
4C188KK24
(57)【要約】
【課題】第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤を生体に対してより精度よく投与することが可能な放射性薬剤投与装置を提供する。
【解決手段】放射性薬剤投与装置100は、放射性薬剤を貯留している第1容器(第1バイアル瓶51)から放射性薬剤を第2容器(第2バイアル瓶58)に移送し、第2容器に移送した放射性薬剤の少なくとも一部分を生体に投与する放射性薬剤投与装置であって、チューブ63を介して第1容器から第2容器に放射性薬剤を移送する移送機構(例えば、第1シリンジ41等により構成されている)と、チューブ63の周囲に設けられて該チューブ63を通過する放射性薬剤の放射能強度を検出する放射線検出器700と、チューブ63を通過して第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤の放射線強度と通過時間とに基づいて、第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを演算する演算部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤を貯留している第1容器から放射性薬剤を第2容器に移送し、前記第2容器に移送した放射性薬剤の少なくとも一部分を生体に投与する放射性薬剤投与装置であって、
チューブを介して前記第1容器から前記第2容器に放射性薬剤を移送する移送機構と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続する前記チューブの周囲に設けられて該チューブを通過する放射性薬剤の放射能強度を検出する放射線検出器と、
前記チューブを通過して前記第1容器から前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射線強度と当該放射性薬剤が前記放射線検出器を通過した時間の長さである通過時間とに基づいて、前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを演算する演算部と、
を備えることを特徴とする放射性薬剤投与装置。
【請求項2】
前記移送機構が単位時間あたりに前記第1容器から前記第2容器に移送する放射性薬剤の量が一定であることを特徴とする請求項1に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項3】
前記放射線検出器により検出される放射能強度と、前記チューブを通過する放射性薬剤の放射能濃度と、の対応関係を示すテーブルを記憶保持している記憶部を備え、
前記演算部は、前記テーブルを参照して、前記放射線検出器により検出された放射能強度と対応する放射能濃度を抽出し、当該放射能濃度と、前記チューブを通過して前記第1容器から前記第2容器に移送された放射性薬剤の液量と、の積算により、前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量を演算することを特徴とする請求項2に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項4】
前記第2容器から放射性薬剤を分取して生体に投与する投与機構と、
前記第2容器に対して第1針を穿刺可能な第1穿刺機構と、
を更に備え、
前記投与機構は、シリンジを含み、
前記第1針が前記第2容器の底部に穿刺されている状態で前記シリンジ内に投与量に相当する量の吸引を行い、引き続き前記第1針を前記第2容器の上部に上昇させた状態で前記シリンジへの吸引を行うことにより、前記第2容器と前記シリンジとの間のチューブ内の放射性薬剤の全量を前記シリンジに吸引し、
その後、前記シリンジから生体への放射性薬剤の投与を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項5】
前記第2容器に対して第2針を穿刺可能な第2穿刺機構を更に備え、
前記第1穿刺機構及び前記第2穿刺機構により、前記第1針と前記第2針とを個別に前記第2容器に対して穿刺可能であることを特徴とする請求項4に記載の放射性薬剤投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PET診断に使用される放射性核種で標識された半減期の短い放射性薬剤を生体に投与するに際し、従事者の被ばく低減や投与精度の向上のために、生体への投与量(指定投与量)を原液から自動で分取し、投与放射能量を計測して生体に投与するタイプの放射性薬剤投与装置が用いられる場合がある。
【0003】
そのような放射性薬剤投与装置は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1の放射性薬剤投与装置は、放射性薬剤を第1容器(原液バイアル)から第2容器(中間バイアル)に移送し、第2容器から放射性薬剤を生体に投与するように構成されている。特許文献1には、第2容器の放射線量を放射能量検出センサーにより検出する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-253356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では分注に使用する放射性薬剤の放射能量と液量を外部で測定して入力する必要があるが、外部から持ち込む放射性薬剤には放射能量や液量が不明なものがある。また、特許文献1の技術では、第2容器の放射線量だけを検出するため、得られる情報が必ずしも十分ではなく、それらの値を病院で測定するには作業者の被爆の問題が有り、装置の構成になお改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤について、分注に必要な放射能量と液量の両方を測定でき、生体に対してより精度よく投与することが可能な放射性薬剤投与装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、放射性薬剤を貯留している第1容器から放射性薬剤を第2容器に移送し、前記第2容器に移送した放射性薬剤の少なくとも一部分を生体に投与する放射性薬剤投与装置であって、
チューブを介して前記第1容器から前記第2容器に放射性薬剤を移送する移送機構と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続する前記チューブの周囲に設けられて該チューブを通過する放射性薬剤の放射能強度を検出する放射線検出器と、
前記チューブを通過して前記第1容器から前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射線強度と当該放射性薬剤が前記放射線検出器を通過した時間の長さである通過時間とに基づいて、前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを演算する演算部と、
を備えることを特徴とする放射性薬剤投与装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤を生体に対してより精度よく投与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る放射性薬剤投与装置の模式図である。
図2】実施形態に係る放射性薬剤投与装置が備える放射線検出器等の構成を示す模式図である。
図3】放射線検出器が備える検出部のブロック構成を示す図である。
図4】実施形態に係る放射性薬剤投与装置のブロック構成を示す図である。
図5】放射線検出器による放射能量の検出動作を説明するための模式図である。
図6】放射能薬剤の吸引時間(移送時間)と吸引液量(移送された放射性薬剤の液量)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る放射性薬剤投与装置100は、放射性薬剤を貯留している第1容器(第1バイアル瓶51)から放射性薬剤を第2容器(第2バイアル瓶58)に分取し、第2容器に分取した放射性薬剤の少なくとも一部分を生体(被験者)に投与する放射性薬剤投与装置100である。
放射性薬剤投与装置100は、チューブ63を介して第1容器から第2容器に放射性薬剤を移送する移送機構(例えば、第1シリンジ41等により構成されている)と、第1容器と第2容器とを接続するチューブ63の周囲に設けられて該チューブ63を通過する放射性薬剤の放射能強度を検出する放射線検出器700と、チューブ63を通過して第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤の放射線強度と当該放射性薬剤が放射線検出器700を通過した時間の長さである通過時間(以下、検出器通過時間と称する場合がある)とに基づいて、第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを演算する演算部81(図2)と、を備える。
ここで、第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤の放射線強度としては、放射線検出器700による検出結果が用いられる。また、通過時間(検出器通過時間)は、第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤が放射線検出器700を通過した時間の長さであり、放射線検出器700によって後述する閾値を超える放射能強度が検出される状態が継続する継続時間として求められる。
【0012】
本実施形態によれば、放射性薬剤投与装置100は放射線検出器700と演算部81とを備えているので、第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを求めることができる。すなわち、第1容器から第2容器に放射性薬剤を移送することで分注情報を自動的に入手することができる。このため、第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤を、第2容器から生体に対してより精度よく投与することが可能となる。
また、放射性薬剤の放射能量を計測するために、オペレータがトング等で容器を持ち上げて電離箱で計測したり、液量を計測するために重量計で計測したりする必要が無いため、オペレータの被曝を抑制することができる。
【0013】
以下、放射性薬剤投与装置100について、より詳細に説明する。
【0014】
放射性薬剤投与装置100は、複数の三方活栓30を備えている。本実施形態の場合、三方活栓30の数は5であり、右側から、第1三方活栓31、第2三方活栓32、第3三方活栓33、第4三方活栓34及び第5三方活栓35の順に配置されている。
放射性薬剤投与装置100は、複数の三方活栓30を個別に回転させて各三方活栓30による流路の切り換えを行わせる三方活栓駆動機構を備えている。図4に示すように、三方活栓駆動機構は、第1三方活栓31を回転駆動させる第1三方活栓駆動モータ131と、第2三方活栓32を回転駆動させる第2三方活栓駆動モータ132と、第3三方活栓33を回転駆動させる第3三方活栓駆動モータ133と、第4三方活栓34を回転駆動させる第4三方活栓駆動モータ134と、第5三方活栓35を回転駆動させる第5三方活栓駆動モータ135と、を備えている。
【0015】
放射性薬剤投与装置100は、更に、第1三方活栓31の上側に接続されているベントフィルタ23と、第2三方活栓32の上側に接続されている第1シリンジ41と、チューブ66を介して第5三方活栓35の上側に接続されている第2シリンジ42と、を備えている。
第1シリンジ41は、生理食塩水貯留バッグ22から生理食塩水を吸引したり、放射性薬剤を第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に移送したりする際に用いられる。
なお、第2シリンジ42は、第1シリンジ41よりも小容量である。例えば、第1シリンジ41は20mLシリンジであり、第2シリンジ42は10mLシリンジである。
【0016】
放射性薬剤投与装置100は、第1シリンジ41のプランジャを駆動する第1シリンジ駆動機構と、第2シリンジ42のプランジャを駆動する第2シリンジ駆動機構と、を備えている。
図4に示すように、第1シリンジ駆動機構は、第1シリンジ41を上昇又は下降させる第1シリンジ駆動モータ141を備えている。第2シリンジ駆動機構は、第2シリンジ42を上昇又は下降させる第2シリンジ駆動モータ142を備えている。
【0017】
第2シリンジ42は、放射性薬剤投与用のシリンジである。第2バイアル瓶58内の放射性薬剤を第2シリンジ42によって分取し、第2シリンジ42から放射性薬剤を生体に投与することができるようになっている。
より詳細には、第1針60が第2バイアル瓶58の底部に穿刺されている状態で、チューブ65、第4三方活栓34、第5三方活栓35及びチューブ66を介して、第2シリンジ42内に、投与量に相当する量の吸引を行い、引き続き第1針60を第2バイアル瓶58の上部に上昇させた状態で第2シリンジ42への吸引を行うことにより、第2バイアル瓶58と第2シリンジ42との間のチューブ65内の放射性薬剤の全量を第2シリンジ42に吸引し、その後、第1シリンジ41からセーフタッチプラグ27側に向けて生理食塩水を押し出して投与ラインを生理食塩水で満たして、第2シリンジ42から、第5三方活栓35、チューブ68、エアベントフィルタ25、チューブ69及びセーフタッチプラグ27を介して、生体への放射性薬剤の投与を行う。
このように、放射性薬剤投与装置100は、第2容器(第2バイアル瓶58)から放射性薬剤を分取して生体に投与する投与機構(第2シリンジ42及び第2シリンジ駆動機構等)を備え、投与機構は、シリンジ(第2シリンジ42)を含んでいる。
【0018】
なお、放射性薬剤投与装置100は、第1シリンジ41及び第1シリンジ駆動機構の代わりに、ポンプ等を備えていてもよい。同様に、第2シリンジ42及び第2シリンジ駆動機構の代わりに、ポンプ等を備えていてもよい。
【0019】
放射性薬剤投与装置100は、図示しない懸架柱を備えており、この懸架柱に生理食塩水貯留バッグ22を吊り下げ可能となっている。第3三方活栓33は、チューブ67を介して、懸架柱に吊り下げられた生理食塩水貯留バッグ22と接続される。
【0020】
後述する第4針53は、チューブ64を介して、第1三方活栓31の右側に接続される。
第4三方活栓34は、チューブ65を介して、第1針60と接続される。より詳細には、第4三方活栓34には、チューブ65及び第1針60を介して第2バイアル瓶58が接続される。
エアベントフィルタ25は、チューブ68を介して、第5三方活栓35の左側に接続される。
エアベントフィルタ25は、チューブ69を介して、セーフタッチプラグ27に接続される。
【0021】
第1遮蔽容器50は、放射線遮蔽性の容器であり、第1バイアル瓶51を収容する。
第1バイアル瓶51に対して、第3針52及び第4針53を穿刺可能となっている。
第2遮蔽容器57は、放射線遮蔽性の容器であり、第2バイアル瓶58を収容する。
放射性薬剤投与装置100は、第2バイアル瓶58に対して第1針60を穿刺するための第1針駆動機構61と、第2バイアル瓶58に対して第2針59を穿刺するための第2針駆動機構62と、を備えている。
図4に示すように、第1針駆動機構61は、第1針60を上昇又は下降させる第1針駆動モータ161を備えており、第2針駆動機構62は、第2針59を上昇又は下降させる第2針駆動モータ162を備えている。
第1針駆動機構61による第1針60の昇降動作と、第2針駆動機構62による第2針59の昇降動作は、互いに独立して行うことができるようになっている。
このように、放射性薬剤投与装置100は、第2容器(第2バイアル瓶58)に対して第1針60を穿刺可能な第1穿刺機構(第1針駆動機構61)と、第2容器に対して第2針59を穿刺可能な第2穿刺機構(第2針駆動機構62)と、を備え、第1穿刺機構及び第2穿刺機構により、第1針60と第2針59とを個別に第2容器に対して穿刺可能である。
【0022】
第3針52は、チューブ63を介して第2針59と接続される。すなわち、第1バイアル瓶51と第2バイアル瓶58とは、チューブ63を介して接続される。
【0023】
図2に示すように、放射線検出器700は、例えば、それぞれチューブ63の周囲に配置されている複数の検出器70を備えている。本実施形態の場合、放射線検出器700は、第1検出器71、第2検出器72、第3検出器73、第4検出器74、第5検出器75、第6検出器76、第7検出器77及び第8検出器78の8つの検出器70を備えている。
図3に示すように、各検出器70は、例えば、シリコンフォトダイオード70aと、シリコンフォトダイオード70aによる検出信号を増幅するプリアンプ70bと、プリアンプ70bからの出力信号を増幅するアンプ70cと、アンプ70cからの出力信号が所定の閾値を上回るときにパルス信号を出力するディスクリミネータ70dと、を備えて構成されている。すなわち、各検出器70からの出力信号は、例えば、ディスクリミネータ70dからの出力信号である。
【0024】
ここで、チューブ63において、第1バイアル瓶51に近い側を上流側、第2バイアル瓶58に近い側を下流側と称する。図2に示す一端側63aが上流側に位置しており、他端側63bが下流側に位置している。
チューブ63は、例えば、図2に示すように、半円状に延在する折り返し部633を境として折り曲げられてU字状に配置されており、折り返し部633よりも上流側(第1バイアル瓶51側)に位置する上流側部分631と、折り返し部633よりも下流側(第2バイアル瓶58側)に位置する下流側部分632と、を有する。
上流側部分631と下流側部分632とは、それぞれ直線状に延在しており、互いに平行に配置されている。
そして、上流側部分631の周囲には、上流側から順に、第1検出器71、第2検出器72、第3検出器73及び第4検出器74が等間隔で配置されている。
同様に、下流側部分632の周囲には、上流側から順に、第5検出器75、第6検出器76、第7検出器77及び第8検出器78が等間隔で配置されている。
第1検出器71と第8検出器78とは、互いに対応する位置に配置されている。
第2検出器72と第7検出器77とは、互いに対応する位置に配置されている。
第3検出器73と第6検出器76とは、互いに対応する位置に配置されている。
第4検出器74と第5検出器75とは、互いに対応する位置に配置されている。
【0025】
第1検出器71~第4検出器74からの出力信号は、例えば図示しない加算器により合算されて後述する制御部80に入力され、第5検出器75~第8検出器78からの出力信号は、例えば加算器により合算されて制御部80に入力され、制御部80では、これらすべての出力信号を合算し、放射能強度の計測値として扱う。
なお、放射性薬剤投与装置100は加算器を備えていなくてもよく、この場合、第1検出器71~第8検出器78からの出力信号は直に制御部80に入力され、制御部80にて合算されて、放射能強度の計測値として扱われる。
【0026】
上述のように、制御部80は、チューブ63を通過して第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤の放射能強度と検出器通過時間とに基づいて、第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを演算する。すなわち、制御部80は、演算部81としての機能を担う。
ここで、第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58への放射性薬剤の移送は、第1シリンジ41により第2バイアル瓶58の内部を吸引することにより行われる。第1シリンジ41のプランジャを一定速度で引き抜くことにより、単位時間あたりに第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に移送される放射性薬剤の量が一定となる。すなわち、移送機構が単位時間あたりに第1容器から第2容器に移送する放射性薬剤の量を一定とすることができる。あるいは、第1シリンジ41のプランジャを一定速度で引き抜く際の移送時間(一定速度で引き抜く動作の継続時間)と液量(移送量)との関係を予めテーブルに格納しておくことで、移送時間から移送量を得ることができる。すなわち、移送時間を計測することで第1容器から第2容器に移送する放射性薬剤の液量を求めることができる。
【0027】
図5は放射能量の演算を説明するための模式的なグラフを示す図である。図5の横軸は時間、縦軸は放射能強度である。第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に放射性薬剤を移送する際には、単位時間あたりにチューブ63を通過する放射性薬剤の放射能強度が一定であるため、放射能量は、放射性薬剤がチューブ63を通過した時間の長さ(図5の通過時間T(移送時間))と測定された放射能強度(図5の放射能強度H)との積により求められる。
ここで、放射能強度は放射能カウント値CPS(Count Per Sec)で計測される。予め、放射能濃度が既知の溶液が示す放射能濃度Cと、放射能カウント値CPSとの関係(1次関数)をテーブルに保存しておく。このテーブルを参照することによって、測定される放射能カウント値CPSから、当該放射能カウント値CPSと対応する放射能濃度Cを取得することによって、当該取得した放射能濃度Cを放射能強度(MBq/mL)として求めることができる。
また、図5から、通過時間T(放射性薬剤がチューブ63を通過した時間の長さ)を求めることができる。
更に、第1シリンジ41のプランジャの引き抜き速度(吸引速度)をパラメータにすると、通過時間T(移送時間T)と吸引液量(吸引された原液液量)との関係は、例えば図6のような関係となる。図6において縦軸(y軸)の値として示される原液液量(mL)は、吸引速度をパラメータとした通過時間T(図6において横軸(x軸)の値として示される)の関数(2次関数)で表される。
したがって、放射能量は、上記のように求められる放射能強度(MBq/mL)と原液液量(mL)との積算により求めることができる。
【0028】
すなわち、放射線検出器700により検出される放射能強度a(つまり測定値)と、チューブ63を通過する放射性薬剤の実際の放射能濃度Cと、の関係(C=f(a))を示すテーブル91を予め作成しておき、このテーブル91を記憶部90に記憶保持させておく。
また、第1容器から第2溶液に移送される液が放射線検出器700を通過し、放射線検出器700による検出値が所定の閾値を超えた時間(タイミング)から当該閾値以下になる時間(タイミング)までの経過時間x(上記の移送時間T)を計測する。また、プランジャを一定速度で引いたときの単位時間あたりに吸引される液量と、通過時間と、の積算により、移送された放射性薬剤の液量Q(図6においてy軸の値として示される)を演算し(Q=f(x))、記憶部90に記憶保持させておく。
そして、演算部81は、テーブル91を参照して、放射線検出器700により検出された放射能強度と対応する液量を抽出し、当該放射能量(R)を求めることができる。この時、R=C×Qで求めることができる。
このように、制御部80は、テーブル91を参照して、放射線検出器700により検出された放射能強度と対応する放射能濃度を抽出し、当該放射能濃度と、チューブ63を通過して第1容器から第2容器に移送された放射性薬剤の液量と、の積算により、第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量を演算する。
【0029】
放射性薬剤投与装置100は、第2シリンジ42の周囲に配置された放射線検出器800を更に備えていてもよい。
放射線検出器800は、複数の検出器70を備えている。放射線検出器800の各検出器70による検出結果は、制御部80に入力される。
【0030】
放射性薬剤投与装置100は、更に、当該放射性薬剤投与装置100の各種の構成要素を収容する筐体10を備えている。例えば、放射性薬剤投与装置100の上述した構成のうち、セーフタッチプラグ27以外については、筐体10内に配置されている。
【0031】
放射性薬剤投与装置100は、更に、オペレータによる操作を受け付ける操作部110を備えている。一例として、操作部110はタッチパネルである。
制御部80は、第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤の放射能量の演算を行う他、放射性薬剤投与装置100の各構成要素の動作制御も行う。すなわち、制御部80は、第1シリンジ駆動モータ141及び第2シリンジ駆動モータ142を個別に動作させることによって、第1シリンジ41及び第2シリンジ42を個別に動作させる。また、制御部80は、第1三方活栓駆動モータ131、第2三方活栓駆動モータ132、第3三方活栓駆動モータ133、第4三方活栓駆動モータ134及び第5三方活栓駆動モータ135を個別に動作させることによって、各三方活栓30を個別に回転駆動させて、流路の切り換えを行う。更に、制御部80は、第1針駆動モータ161及び第2針駆動モータ162を個別に動作させることによって、第2針59及び第1針60を個別に昇降させる。
【0032】
次に、放射性薬剤投与装置100の動作を説明する。
先ず、放射性薬剤投与装置100に消耗品を取り付ける。すなわち、複数の三方活栓30、第1シリンジ41、第2シリンジ42、生理食塩水貯留バッグ22、チューブ63~69、ベントフィルタ23、エアベントフィルタ25、セーフタッチプラグ27を取り付ける。
更に、第1遮蔽容器50に収容された第1バイアル瓶51と、第2遮蔽容器57に収容された第2バイアル瓶58と、を設置し、第1バイアル瓶51には第3針52及び第4針53を穿刺し、第2バイアル瓶58には第2針59及び第1針60を穿刺する。
【0033】
次に、第1シリンジ駆動機構により第1シリンジ41のプランジャをゆっくりと上昇させることによって、第1バイアル瓶51の放射性薬剤をチューブ63を介して第2バイアル瓶58へとゆっくりと(例えば、0.1mL/秒程度で)移送する。
すなわち、第1シリンジ41が負圧となることにより、第2三方活栓32、第3三方活栓33、第4三方活栓34、チューブ65及び第1針60を介して、第2バイアル瓶58内の空気が吸引される。これにより、第1バイアル瓶51内の放射性薬剤は、第3針52、チューブ63及び第2針59を介して、第2バイアル瓶58に移送される。
このとき、第1シリンジ41のプランジャを一定速度で上昇させ第2バイアル瓶58から放射性薬剤を吸引することにより、単位時間あたりにチューブ63を通過する放射性薬剤の液量が一定となり、あるいは一定にならなくてもプランジャを一定速度で引いたときの液量と通過時間との関係を示すテーブル(関係式)があれば検出器通過時間から液量が演算できる。
尚、プランジャの吸引によって負圧で移送するのは、第1バイアル瓶51内には放射性薬剤が含まれており、放射能汚染を抑制するため、第1バイアル瓶51を加圧することができないからであり、また、このとき、ベントフィルタ23から第1三方活栓31、チューブ64及び第4針53を介して第1バイアル瓶51に空気が導入されることによって、第1バイアル瓶51が過度に負圧となることが抑制される。
【0034】
また、このとき、チューブ63の周囲に配置されている放射線検出器700によって、チューブ63を通過する放射性薬剤の放射能強度が計測され、上記のように演算部81はテーブル91を用いて放射能量を演算する。よって、第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58への放射性薬剤の移送が完了した段階で、放射能量のデータが得られる。
上記のように、第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に放射性薬剤を移送する際には、単位時間あたりにチューブ63を通過する放射性薬剤の放射能強度が一定であるため、放射能量は、放射性薬剤がチューブ63を通過した時間の長さ(図5の時間T)と測定された放射能強度(図5の放射能強度H)との積により求められる。
ただし、放射線検出器700により計測される放射能強度は、実際の放射能濃度とは異なるため、実際の演算では、上記のテーブル91としてあらかじめ用意されている装置固有の放射能強度と放射能濃度との関係式を用いて、放射線検出器700により検出された放射能強度と対応する放射能濃度を抽出し、当該放射能濃度と、チューブ63を通過して第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤の液量と、の積算により、第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤の放射能量を演算する。
チューブ63を通過して第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤の液量は、図5に示す時間Tと、単位時間あたりにチューブ63を通過する放射性薬剤の液量と、の積により演算部81が演算する。図5に示す時間Tは、一定以上の放射能強度が計測される時間の始点から終点までの時間の長さである。
こうして、第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58への放射性薬剤の移送が完了した段階では、演算部81による演算によって、移送された放射性薬剤の放射能量と、移送された放射性薬剤の液量と、が得られる。
よって、第1バイアル瓶51内に貯留されている放射性薬剤の原液の放射能量及び液量が不明であっても、放射性薬剤が第2バイアル瓶58に移送された段階で、当該移送された放射性薬剤の放射能量及び液量が分かるようになる。
【0035】
ここで、第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に一度に移送される放射性薬剤は、通常、放射性薬剤の全量であるが、第1バイアル瓶51に貯留されている放射性薬剤の一部分であってもよい。
【0036】
生体(被験者)に放射性薬剤を投与する前に、予め、操作部110に対する操作によって、被験者の情報を入力しておく。この情報から、投与量が決まる。
すなわち、第1バイアル瓶51から第2バイアル瓶58に移送された放射性薬剤については、放射能量と液量とが分かっているので、被験者に投与すべき放射能量と、投与予定時刻と、に基づいて、第2バイアル瓶58から分取すべき放射性薬剤の液量を演算する。なお、第2バイアル瓶58から分取すべき放射性薬剤の液量は、投与予定時刻までの間の減衰を考慮した値とする。
そして、演算された液量の放射性薬剤を第2バイアル瓶58から第2シリンジ42に分取する。すなわち、先ず、第1針60の先端を第2バイアル瓶58の底部に穿刺した状態で、第2シリンジ42内に投与量に相当する量の吸引を行う。引き続き、第1針60の先端を第2バイアル瓶58の上部に上昇させた状態で、第2シリンジ42への吸引を行う。これにより、第2バイアル瓶58と第2シリンジ42との間のチューブ65、66内の放射性薬剤の全量を第2シリンジ42に吸引する。
第2シリンジ42に吸引された放射性薬剤の液量が少ない場合(例えば、0.5mL以下の場合)は、第2シリンジ42内に生理食塩水等を加えて、十分な液量とする。
次に、放射線検出器800によって第2シリンジ42内の放射能量を測定する。この測定結果に基づいて、制御部80は、実際に測定されている放射能量と、投与予定時刻の放射能量と、を表示部92に表示させる。
次に、第1シリンジ41に生理食塩水を吸引する。
投与予定時刻が到来すると、表示部92に表示されている放射能量(時間経過に伴い減衰した放射能量)に問題が無いことをオペレータが確認した後、被験者への投与を開始する。投与の際には、先ず、第1シリンジ41に吸引しておいた生理食塩水を第2三方活栓32、第3三方活栓33、第4三方活栓34、第5三方活栓35、チューブ68、エアベントフィルタ25、チューブ69及びセーフタッチプラグ27を介して被験者側に流し始めた後、第2シリンジ42の放射性薬剤をチューブ66、第5三方活栓35、チューブ68、エアベントフィルタ25、チューブ69及びセーフタッチプラグ27を介して被験者側に流し、更に、生理食塩水で流路をリンスする。こうして、被験者への投与が完了する。
なお、流路内の空気は、エアベントフィルタ25を通過する際に除去できるため、被験者には実質的に空気を含まない放射性薬剤を投与することができる。
【0037】
以上、図面を参照して実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0038】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)放射性薬剤を貯留している第1容器から放射性薬剤を第2容器に移送し、前記第2容器に移送した放射性薬剤の少なくとも一部分を生体に投与する放射性薬剤投与装置であって、
チューブを介して前記第1容器から前記第2容器に放射性薬剤を移送する移送機構と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続する前記チューブの周囲に設けられて該チューブを通過する放射性薬剤の放射能強度を検出する放射線検出器と、
前記チューブを通過して前記第1容器から前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射線強度と当該放射性薬剤が前記放射線検出器を通過した時間の長さである通過時間とに基づいて、前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量と液量とを演算する演算部と、
を備えることを特徴とする放射性薬剤投与装置。
(2)前記移送機構が単位時間あたりに前記第1容器から前記第2容器に移送する放射性薬剤の量が一定であることを特徴とする(1)に記載の放射性薬剤投与装置。
(3)前記放射線検出器により検出される放射能強度と、前記チューブを通過する放射性薬剤の放射能濃度と、の対応関係を示すテーブルを記憶保持している記憶部を備え、
前記演算部は、前記テーブルを参照して、前記放射線検出器により検出された放射能強度と対応する放射能濃度を抽出し、当該放射能濃度と、前記チューブを通過して前記第1容器から前記第2容器に移送された放射性薬剤の液量と、の積算により、前記第2容器に移送された放射性薬剤の放射能量を演算することを特徴とする(2)に記載の放射性薬剤投与装置。
(4)前記第2容器から放射性薬剤を分取して生体に投与する投与機構と、
前記第2容器に対して第1針を穿刺可能な第1穿刺機構と、
を更に備え、
前記投与機構は、シリンジを含み、
前記第1針が前記第2容器の底部に穿刺されている状態で前記シリンジ内に投与量に相当する量の吸引を行い、引き続き前記第1針を前記第2容器の上部に上昇させた状態で前記シリンジへの吸引を行うことにより、前記第2容器と前記シリンジとの間のチューブ内の放射性薬剤の全量を前記シリンジに吸引し、
その後、前記シリンジから生体への放射性薬剤の投与を行うことを特徴とする(1)から(3)のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
(5)前記第2容器に対して第2針を穿刺可能な第2穿刺機構を更に備え、
前記第1穿刺機構及び前記第2穿刺機構により、前記第1針と前記第2針とを個別に前記第2容器に対して穿刺可能であることを特徴とする(4)に記載の放射性薬剤投与装置。
【符号の説明】
【0039】
10 筐体
22 生理食塩水貯留バッグ
23 ベントフィルタ
25 エアベントフィルタ
27 セーフタッチプラグ
30 三方活栓
31 第1三方活栓
32 第2三方活栓
33 第3三方活栓
34 第4三方活栓
35 第5三方活栓
41 第1シリンジ
42 第2シリンジ
50 第1遮蔽容器
51 第1バイアル瓶
52 第3針
53 第4針
57 第2遮蔽容器
58 第2バイアル瓶
59 第2針
60 第1針
61 第1針駆動機構
62 第2針駆動機構
63、64、65、66、67、68、69 チューブ
63a 一端側
63b 他端側
70 検出器
70a シリコンフォトダイオード
70b プリアンプ
70c アンプ
70d ディスクリミネータ
71 第1検出器
72 第2検出器
73 第3検出器
74 第4検出器
75 第5検出器
76 第6検出器
77 第7検出器
78 第8検出器
80 制御部
81 演算部
90 記憶部
91 テーブル
92 表示部
100 放射性薬剤投与装置
110 操作部
131 第1三方活栓駆動モータ
132 第2三方活栓駆動モータ
133 第3三方活栓駆動モータ
134 第4三方活栓駆動モータ
135 第5三方活栓駆動モータ
141 第1シリンジ駆動モータ
142 第2シリンジ駆動モータ
161 第1針駆動モータ
162 第2針駆動モータ
631 上流側部分
632 下流側部分
633 折り返し部
700、800 放射線検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6