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  • 特開-圧縮成型用金型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105968
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】圧縮成型用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20240731BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009993
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】岩野 慎也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AC03
4F202AF01
4F202AG01
4F202AG28
4F202AH13
4F202AH63
4F202AM32
4F202AR13
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK12
4F204AA45
4F204AC03
4F204AF01
4F204AG01
4F204AG05
4F204AR13
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】外観不良率を低減させること
【解決手段】
圧縮成型用金型10は、第1型11と、第1型11に対向する第2型12とを有している。第1型11は、窪んだキャビティ11aが形成されている。第2型12は、第1型11のキャビティ11aに対向する対向面12aを有している。第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを挟んで圧縮成型する金型であって、
第1型と、
前記第1型に対向する第2型と
を有し、
前記第1型は、窪んだキャビティが形成されており、
前記第2型は、前記第1型のキャビティに対向する対向面を有し、
前記第2型のうち少なくともキャビティに対向する部位の周縁部は、前記第1型の前記キャビティの周辺を形成している面よりも粗い、
圧縮成型用金型。
【請求項2】
前記第2型のうち前記キャビティに対向する部位の周縁部の算術平均粗さRa2と、前記第1型の前記キャビティの周辺を形成している面の算術平均粗さRa1との差(Ra2-Ra1)が、2.0μm以上である、請求項1に記載された圧縮成型用金型。
【請求項3】
前記差(Ra2-Ra1)が、4.0μm以下である、請求項2に記載された圧縮成型用金型。
【請求項4】
前記第2型のうち前記キャビティに対向する部位の周縁部の算術平均粗さRa2が、2.0μm以上である、請求項1に記載された圧縮成型用金型。
【請求項5】
前記第1型の前記キャビティの周辺を形成している面の算術平均粗さRa1が、1.5μm以下である、請求項1に記載された圧縮成型用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成型用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-82537号公報には、ゴムを圧縮成型するための圧縮成型用金型が開示されている。同公報に開示された金型は、上型と下型とを備えており、上型と下型との間に配置されたゴム組成物を、上型と下型とを閉状態にして圧縮することにより、シート状のゴムで繋がったゴム製品が成型される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-82537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧縮成型用金型は、外観不良が生じることがあり、その外観不良率を低減させたい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここでの開示は、ゴムを挟んで圧縮成型する金型であって、圧縮成型用金型は、第1型と、第1型に対向する第2型とを有している。第1型は、窪んだキャビティが形成されている。第2型は、第1型のキャビティに対向する対向面を有している。第2型のうち少なくともキャビティに対向する部位の周縁部は、第1型のキャビティの周辺を形成している面よりも粗い。
【発明の効果】
【0006】
かかる圧縮成型用金型によれば、外観不良率が低減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、圧縮成型用金型10の模式的な断面図である。
図2図2は、圧縮成型用金型10の使用状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される圧縮成型用金型を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〈圧縮成型用金型10〉
図1は、圧縮成型用金型10の模式的な断面図である。図1では、圧縮成型用金型10が開いた状態が模式的に示されている。ここで開示される圧縮成型用金型10は、ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなるゴム20を挟んで圧縮成型する金型である。圧縮成型用金型10は、第1型11と、第1型11に対向する第2型12とを有している。図1に示された圧縮成型用金型10は、医療用ガスケットやキャップなどの柱状ゴム製品を製造するために用いられる金型が例示されている。
【0010】
〈第1型11〉
第1型11は、図1に示されているように、窪んだキャビティ11aが形成されている。ここで、窪んだキャビティ11aは、医療用ガスケットやキャップなど、成型対象となる柱状ゴム製品の外形形状に対応した空間を有しているとよい。図1に示された形態では、窪んだキャビティ11aは、略円筒状の空間を有しており、その中心部に突出した突起11bが設けられている。突起11bは、入れ子で設けられているとよい。一度の成型で複数の製品が成型できるように、第1型11には、複数のキャビティ11aが設けられていてもよい。
【0011】
第1型11のキャビティ11aは、例えば、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1の算術平均粗さRa1が、1.5μm以下となるように、仕上げられているとよい。また、入れ子を含む第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1は、表面処理が施されていてもよい。例えば、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1は、所要の硬度が得られるように、クロムメッキが施されていてもよい。クロムメッキが施されていることで、所要の硬度が得られ、耐久性が向上する。ここでは、クロムメッキが例示されているが、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面は、無電解ニッケルメッキ、セラミックコートが施されていてもよい。セラミックコートに用いられるセラミック材料は、SiC、SiN、TiN、DLC(ダイアモンドライクカーボン)などでもよい。
【0012】
〈第2型12〉
第2型12は、第1型11のキャビティ11aに対向する対向面12aを有している。対向面12aのうち少なくともキャビティ11aに対向する部位12a2の周縁部12a1は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い。この実施形態では、第2型12の対向面12aは、キャビティ11aに対向する部位12a2の周縁部12a1だけでなく全体として、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い。第2型12の対向面12aは、例えば、ショットブラスト処理などで、予め定められた粗さに加工されているとよい。なお、この際、この圧縮成型用金型10では、第2型12の対向面12aのうち、キャビティ11aに対向する部位12a2は、成型される製品の外形形状を定める。第2型12の対向面12aのうちキャビティ11aに対向する部位12a2は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗いことが必須ではない。また、第2型12の対向面12aのうちキャビティ11aに対向する部位12a2は、凹みや突起など、成型される製品の意匠に応じて形状が定められているとよい。
【0013】
〈ゴム20〉
成型対象となるゴム20は、ゴムまたは熱可塑性エラストマーである。ゴム20は、シート状やブロック状で用意されうる。
【0014】
成型対象となるゴムには、例えば、ニトリルゴム,水素化ニトリルゴム,フッ素ゴム,アクリルゴム,シリコーンゴム,ウレタンゴム,クロロプレンゴム,エチレンプロピレンゴム,クロロスルフォン化ポリエチレン,ブタジエンゴム,エピクロルヒドリンゴム,天然ゴム,イソプレンゴム,スチレンブタジエンゴム,ブチルゴム,塩素化ブチルゴム,ブタジエンゴム,多硫化ゴム,ノルボルネンゴムなどが挙げられる。ゴムは、添加剤が含まれていてもよく、成型後に加硫されてもよい。このうち、医療用ガスケットやキャップなどの柱状ゴム製品には、ブチルゴムやイソプレンゴムがよく用いられうる。
【0015】
熱可塑性エラストマーには、スチレンブロック共重合体や熱可塑性ポリオレフィンなどがある。スチレンブロック共重合体には、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体,スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体,スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体,スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体,スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体,スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。
【0016】
〈成型工程〉
図2は、圧縮成型用金型10の使用状態を示す模式的な断面図である。圧縮成型用金型10は、図1に示されているように、第1型11と第2型12との間に未加硫のゴム20が配置される。そして、未加硫のゴム20は、図2に示されているように、第1型11と第2型12とによって挟まれて加圧される。ゴム20は加圧されると流動し、キャビティ11a内に入っていく。
【0017】
かかる成型工程において、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い。これに対して、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1は、第2型12の周縁部12a1よりも滑らかである。このため、成型される際に、ゴム20は、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1に対しては、流動性が低い。これに対して、ゴム20は、第1型11のキャビティ11aに対して流動しやすく、成型工程において、キャビティ11aの外にゴム20が逃げにくく、キャビティ11a内に入りやすくなる。このように、圧縮成型用金型10は、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1が、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い。このため、第1型11のキャビティ11aにゴム20が入りやすく、成型性が向上する。これにより、成型された製品の外観不良など成型不良が低減され歩留まりが向上する。
【0018】
このように、圧縮成型用金型10では、成型工程において、キャビティ11aの外にゴム20が逃げにくく、キャビティ11a内にゴム20が入りやすくなるように、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の粗さが定められているとよい。
【0019】
第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1は、成型される製品の意匠により制約がありうる。特段、制約がなければ、キャビティ11a内にゴム20が入りやすくするため、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1は、滑らかであればある程よい。研磨剤を使用しない研磨方法としては、例えば、高出力超音波研磨機による研磨、金型表面の微細な凸部を優先的に溶解する電解研磨、処理液で凹凸部を溶解して平滑化する化学研磨などがある。また、研磨剤を使用しない研磨方法としては、手作業研磨、機械研磨が挙げられる。
【0020】
例えば、研磨工具として、柔らかい木材及びフェルト、合成繊維、アクリル繊維等のバフを用い、これに研磨砥粒を付けて、順に硬いものから柔らかい研磨工具に、粗いペーストから細かい等級のペーストに変えていくとよい。
【0021】
金型の研磨に使用する研磨剤としては、ダイヤモンド、アルミナ、炭化珪素、立法晶チッ化ホウ素、炭化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、コロイダルシリカ等の砥粒が挙げられる。アルミナとしては、白色電融アルミナ、褐色電融アルミナ、アルミナージルコニア、解砕型アルミナ、焼結アルミナ等のコランダム質研磨剤が挙げられる。砥粒としては、粒度♯600~♯15000のものが好適で(より好ましくは♯8000以上)、微粒子又はペースト状として使用できる。具体的には、ダイヤモンド、アルミナ、炭化珪素等の研磨剤を植物油で砥粒ペーストとし、柔らかい柳、バルサ等の木材や、バフに砥粒を目の粗いものから順に細かくしてもよい。
【0022】
また、切削加工した金型表面をダイヤモンドバニシングバイトにより、通常のバイト加工と同じ操作で金型表面に押し付けることにより切削粉を出さずに凸部を平滑化し面粗度を向上させ、寸法変化を直径で0.01mm以下に加工してもよい。成型金型には、成型時の金型汚れを改善し、金型洗浄回数を減らすためにメッキが施される場合がある。メッキの厚さは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、例えば、0.5~1.5μmで調整されうる。メッキにはクロムメッキなどが用いられうる。
【0023】
第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1との関係で相対的に粗さが定められているとよい。また、キャビティ11a内の形状が複雑であればあるほど、ゴム20を細部まで行き届かせる必要がある。このため、キャビティ11a内の形状や、使用されるゴム20の粘土や成型環境(温度)などに応じて、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の粗さが定められるとよい。
【0024】
第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、例えば、ショットブラスト処理によって、粗さが調整されうる。粗さは、例えば、ショットブラスト処理におけるブラスト処理メディアの選択で調整されうる。ここで、ブラスト処理メディアには、アルミナ粒子やステンレス系投射材などが用いられうる。これら、ブラスト処理メディアの粒子径や形状が調整されることで、粗さが調整されうる。第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、メッキされていてもよい。メッキの厚さは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、例えば、0.5~1.5μmで調整されうる。ただし、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1では、所要の粗さが残るように、メッキの厚さが調整されるとよい。メッキにはクロムメッキなどが用いられうる。
【0025】
本発明者の知見によれば、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の算術平均粗さRa2と、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1面の算術平均粗さRa1との差(Ra2-Ra1)は、例えば、2.0μm以上であるとよい。ここで、成型対象としては、例えば、医療用ガスケットなどの柱状ゴム製品に用いられる。
【0026】
【表1】
【0027】
ここで、表1は、本発明者の試験例を挙げる。本発明者は、図1,2に示されるような断面形状の柱状ゴム製品医療用ガスケットに対して、それぞれ第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1と、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の粗さを変えた金型を用意した。第1型11と第2型12は、所定の形状に切削加工した後で、アルミナをブラスト処理メディアとするショットブラスト処理と、クロムメッキ処理を施した。このうち、表面粗さは、ブラスト処理メディアの粒径と、クロムメッキ処理の厚さとによって調整した。表面粗さの測定は、株式会社ミツトヨ製の表面粗さ測定機SJ-210を用い、金型の測定部位を走査し、ISO1997、λc=0.8に基づいて、算術平均表面粗さRaを算出した。
【0028】
表1では、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1の算術平均表面粗さを、Ra1とした。また、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の算術平均表面粗さをRa2とした。また、第2型12の周縁部12a1と、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1との粗さの差は、算術平均粗さRa2と算術平均粗さRa1との差(Ra2-Ra1)で評価した。表1の例では、それぞれ用意された金型で、塩素化ブチルゴム製未加硫ゴムシートを成型金型上に置き、真空プレスによって160℃で15分間成型し、加硫させた。ここでは、塩素化ブチルゴム製未加硫ゴムシートとして、JIS A 硬さ60度の塩素化ブチルゴムが用いられた。成型後金型から脱型し、得られた成型シートに打抜き加工を施し、各製品を取り出した。外観不良率は、所定数のゴム製品を成型し、外観不良が生じる割合を得たものである。表1に示した例では、各金型でそれぞれ各1000個のゴム製品を成型した。そして、成型されたゴム製品を外観カメラ検査機にて撮影した画像を基に、長さ0.5mm以上の充填不足を不良とした。例えば、ゴム製品を外観カメラ検査機にて撮影した画像を基に、長さ0.5mm以上の欠損が確認できたものを不良とした。
【0029】
ここで表1では、サンプル1は、キャビティ11aを有する第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1の算術平均粗さRa1を、1.5μmとし、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の算術平均粗さRa2を、2.0μmとし、差(Ra2-Ra1)を0.5μmとしたものである。この場合、成型された1000個のゴム製品の外観不良率は、大凡3%であった。
【0030】
サンプル2は、算術平均粗さRa1を3.5μmとし、算術平均粗さRa2を、1.5μmとし、差(Ra2-Ra1)を-2.0μmとしたものである。この場合、成型された1000個のゴム製品の外観不良率は、大凡4%であった。つまり、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1が、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1に対して粗いと、外観不良率が高くなる傾向がある。これに比べて、サンプル1のように、第2型12のうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1が、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗いと、ゴム製品の外観不良率の低減が期待できる。
【0031】
サンプル3は、算術平均粗さRa1を1.5μmとし、算術平均粗さRa2を、3.5μmとし、差(Ra2-Ra1)を2.0μmとしたものである。この場合、成型された1000個のゴム製品の外観不良率は、0%であった。
【0032】
サンプル4は、算術平均粗さRa1を1.5μmとし、算術平均粗さRa2を、4.5μmとし、差(Ra2-Ra1)を3.0μmとしたものである。この場合、成型された1000個のゴム製品の外観不良率は、0%であった。
【0033】
サンプル5は、算術平均粗さRa1を1.5μmとし、算術平均粗さRa2を、5.5μmとし、差(Ra2-Ra1)を4.0μmとしたものである。この場合、成型された1000個のゴム製品の外観不良率は、0%であった。サンプル3~4で示されているように、差(Ra2-Ra1)を2.0μm以上であれば、外観不良率が各段に低減することが期待できる。
【0034】
表1に示されているように、図1,2に示されるような断面形状の柱状ゴム製品医療用ガスケットに対して、例えば、差(Ra2-Ra1)が2.0μm以上であることによって、外観不良を低減させることができた。
【0035】
ここでは、外観カメラ検査機にて長さ0.5mm以上の充填不足を不良とした。なお、ここでは、JIS A 硬さ60度の塩素化ブチルゴムが用いられているが、第2型12のキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1が、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗いことによって、外観不良率が下がる傾向が示されている。かかる外観不良率が下がる傾向は、JIS A 硬さ60度の塩素化ブチルゴムに限定されることなく、同様に圧縮成型が可能なゴムまたは熱可塑性エラストマーであれば、同様の傾向が示される。表1に示された例では、特に、差(Ra2-Ra1)が2.0μm以上であることによって、外観不良が0%となり、各段に低減される効果が示されている。この点について、ゴムまたは熱可塑性エラストマーによらず同様の傾向が示されるものと期待される。また、圧縮成型用金型10のキャビティ11aの断面形状についても種々の形態があるが、上記のように、第2型12のキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1が、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗いことによって、外観不良率が下がる傾向は、キャビティの形状によらず発現するものと期待される。
【0036】
本発明者の知見としては、差(Ra2-Ra1)について、圧縮成型を阻害しない範囲において、特に上限は無いと思われる。本発明者の知見としては、差(Ra2-Ra1)っは、例えば、4.0μm以下であるとよい。なお、差(Ra2-Ra1)の上限としては、4.0μm以下であることに限らず、5.0μm以下としてもよい。さらに大型のキャビティを有する圧縮成型用金型では、10μm以下、さらには、15μm以下などとしてもよい。本発明者の知見によれば、粗さに差がありすぎると製品の表と裏で加硫時のゴム流れのバランスが取れず、シートのヨレが生じる場合があり、シートのヨレが生じない程度に、差(Ra2-Ra1)の上限が設定されるとよい。
【0037】
また、本発明者の知見によれば、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い、という前提において、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1の算術平均粗さRa2は、例えば、2.0μm以上であるとよい。周縁部12a1の算術平均粗さRa2が、2.0μm以上であると、成型対象となるゴム20が、第2型12の周縁部12a1に対して滑りにくく、第2型12の周縁部12a1に対する流動性が低く抑えられる。このため、圧縮成型用金型10の成形性が向上し、外観不良率が低減できる。
【0038】
さらに、本発明者の知見によれば、第2型12のうち少なくともキャビティ11aに対向する部位の周縁部12a1は、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1よりも粗い、という前提において、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1の算術平均粗さRa1は、1.5μm以下であるとよい。第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1の算術平均粗さRa1が、1.5μm以下であると、成型対象となるゴム20が、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1に対して、滑りやすく流動性が向上する。このため、ゴム20が第1型11のキャビティ11aに入りやすくなる。これにより、圧縮成型用金型10の成形性が向上し、外観不良率が低減できる。
【0039】
なお、本発明者の知見によれば、より好ましい形態として、周縁部12a1の算術平均粗さRa2が、2.0μm以上であり、かつ、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1の算術平均粗さRa1が、1.5μm以下であるとよい。かかる形態では、成型対象となるゴム20は、第2型12の周縁部12a1に対して流動性が低く抑えられ、さらに、第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面11a1に対して、滑りやすく流動性が向上する。このため、ゴム20が、キャビティ11aの外に逃げにくく、さらに第1型11のキャビティ11aに入りやすくなる。これにより、圧縮成型用金型10の成形性が各段に向上し、外観不良率が低減できるようになる。
【0040】
以上、ここでの開示について、種々説明したが、ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0041】
本発明(1)は、圧縮成型用金型に関する。
ここで、本発明(1)における圧縮成型用金型は、
ゴムを挟んで圧縮成型する金型であって、
第1型と、
前記第1型に対向する第2型と
を有し、
前記第1型は、窪んだキャビティが形成されており、
前記第2型は、前記第1型のキャビティに対向する対向面を有し、
前記第2型のうち少なくともキャビティに対向する部位の周縁部は、前記第1型の前記キャビティの周辺を形成している面よりも粗い。
【0042】
本発明(2)は、本発明(1)における圧縮成型用金型において、
前記第2型のうち前記キャビティに対向する部位の周縁部の算術平均粗さRa2と、前記第1型の前記キャビティの周辺を形成している面の算術平均粗さRa1との差(Ra2-Ra1)が、2.0μm以上である。
【0043】
本発明(3)は、本発明(2)における圧縮成型用金型において、
前記差(Ra2-Ra1)が、4.0μm以下である。
【0044】
本発明(4)は、本発明(1)から(3)までの何れかにおける圧縮成型用金型において、
前記第2型のうち前記キャビティに対向する部位の周縁部の算術平均粗さRa2が、2.0μm以上である。
【0045】
本発明(5)は、本発明(1)から(4)までの何れかにおける圧縮成型用金型において、
前記第1型の前記キャビティの周辺を形成している面の算術平均粗さRa1が、1.5μm以下である。
【符号の説明】
【0046】
10 圧縮成型用金型
11 第1型
11a キャビティ
11a1 第1型11のキャビティ11aの周辺を形成している面
11b 突起
12 第2型
12a 第2型12のうち第1型11のキャビティ11aに対向する対向面
12a1 対向面12aのうちキャビティ11aに対向する部位の周縁部
12a2 対向面12aのうちキャビティ11aに対向する部位
20 ゴム
図1
図2