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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105970
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】解凍室付き冷凍庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/02 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
F25D11/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009995
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 修治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰光
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA01
3L045BA01
3L045BA05
3L045CA03
3L045CA06
3L045DA02
3L045EA01
3L045HA02
3L045HA07
3L045LA10
3L045MA03
3L045NA03
3L045NA09
3L045NA21
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】解凍機能と冷凍機能とを両立可能で、かつ、省スペースでコストを抑えることが可能な解凍室付き冷凍庫を提供する。
【解決手段】断熱箱体14と、断熱箱体14の内部を2つの空間S1,S2に区画する断熱性の仕切壁24と、第1空間S1に設けられて対象物を収容可能な第1収容室R3と、第2空間S2に設けられて対象物を収容可能な第2収容室R5と、第1収容室R3に冷気を供給する冷凍サイクル式の第1冷却ユニット34と、第2空間S2内に設けられて第2収容室R5の空気を循環させる送風装置86と、送風装置86により送られる空気を冷却する冷凍サイクル式の第2冷却ユニット35と、送風装置86により送られる空気を加温する加温装置63,74と、を備え、断熱箱体14内のうち第2収容室R5のみを解凍室として機能させる構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱体と、
前記断熱箱体の内部に取り付けられる断熱壁であり、前記断熱箱体の内部を2つの空間に区画する仕切壁と、
前記2つの空間の一方である第1空間に設けられ、対象物を収容可能な第1収容室と、
前記2つの空間の他方である第2空間に設けられ、対象物を収容可能な第2収容室と、
前記第1収容室に冷気を供給する冷凍サイクル式の第1冷却ユニットと、
前記第2空間内に設けられ、前記第2収容室の空気を循環させる送風装置と、
前記送風装置により送られる空気を冷却する冷凍サイクル式の第2冷却ユニットと、
前記送風装置により送られる空気を加温する加温装置と、
を備え、
前記断熱箱体内のうち前記第2収容室のみを解凍室として機能させることが可能な解凍室付き冷凍庫。
【請求項2】
前記断熱箱体は、直方体形状のものとされ、
前記仕切壁は、断面L字形状のものとされ、
前記仕切壁の外側が前記第1空間とされ、前記仕切壁の内側が前記第2空間とされている請求項1に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項3】
前記断熱箱体は、直方体形状のものとされ、
前記第2空間を上下に区画して、前記第2収容室の上側に前記第2冷却ユニットを構成する第2冷却器を収容する冷却器室を形成する冷却器室区画部材と、
前記第2空間の側壁に対して設けられ、前記冷却器室から下方に延び出した側面ダクトと、
を備え、
前記送風装置は、ブロアファンであり、前記第2冷却器と前記側壁との間で、前記側面ダクトの上方に配されている請求項1に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項4】
前記第2空間の対向する一対の前記側壁の各々に対して、前記側面ダクトを複数備え、
前記送風装置は、複数の前記側面ダクトに対応して、複数の前記ブロアファンを備えている請求項3に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項5】
一対の前記側壁の各々には、前後に並んで2つずつの前記側面ダクトと、2つずつの前記ブロアファンとが設けられており、
前方側の2つの前記ブロアファンは、前記冷却器室における前記第2冷却器の前方側の空気を、前記側面ダクトを介して前記第2収容室に送るものとされ、
後方側の2つの前記ブロアファンは、前記冷却器室における前記第2冷却器の後方側の空気を、前記側面ダクトを介して前記第2収容室に送るものとされている請求項4に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項6】
前記第2冷却器の左右両側で、前後に並ぶ2つの前記ブロアファンの間に設けられ、前記冷却器室における前後に並ぶ2つの前記ブロアファンの間の空気の流れを抑制する仕切板を備えている請求項5に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項7】
前記第2空間の背面壁に対して設けられ、前記冷却器室から下方に延び出した背面ダクトを備え、
前記背面ダクトの内側には、前記加温装置が設けられ、
前記背面ダクトから取り込まれた空気は、前記加温装置によって加温されつつ送られて、前記冷却器室に後方側から流入する構成とされた請求項5に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項8】
当該解凍室付き冷凍庫の制御を司る制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ブロアファンの各々の送風量を独立して制御する請求項5に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記第2収容室に収容された冷凍物を解凍すべく、前記加温装置および前記送風装置を制御する解凍運転を実行するとともに、前記解凍運転の前後において前記第2収容室の温度が所定範囲の保冷温度で維持されるように、前記第2冷却ユニットおよび前記送風装置を制御する保冷運転を実行するものとされ、
前記保冷運転において、前記第2収容室内の温度が均一となるように、前記ブロアファンの各々の送風量を調整する請求項8に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項10】
前記第2空間の背面壁に対して設けられ、前記冷却器室から下方に延び出した背面ダクトを備え、
前記背面ダクトから取り込まれた空気は、前記冷却器室に後方側から流入する構成とされ、
前記制御装置は、前記保冷運転において前記第2収容室の温度を低下させる場合には、後方側の2つの前記ブロアファンの送風量が、前方側の2つの前記ブロアファンの送風量より小さくなるように制御する請求項9に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項11】
前記制御装置は、前記解凍運転において、すべての前記ブロアファンの送風量が最大となるように制御する請求項9に記載の解凍室付き冷凍庫。
【請求項12】
前記仕切壁は、前記断熱箱体の少なくとも上側部分を、左右に区画するものとされ、
前記断熱箱体の上面側に、前記第1冷却ユニットおよび前記第2冷却ユニットの構成品の一部を収容する機械室が設けられた請求項2から請求項11のいずれか一項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解凍室付き冷凍庫に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、冷凍物を庫内で解凍する解凍庫が記載されている。下記特許文献1に記載の解凍庫は、庫内スペースを効率よく活用すべく、冷却ユニットと循環ユニットと解凍室とを本体の内部に横並びに設けた構成となっている。また、下記特許文献2に記載の解凍庫は、収納箱の外周に冷却された空気を送風し、収納箱の壁材を介して収容された物を間接的に冷却あるいは加温可能とされるとともに、収納箱内を隔壁によって小室に区画して、一方の小室(冷蔵室)の温度が冷蔵に不適な状態とならないようにしつつ、他方の小室内の冷凍物を解凍する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-133980号公報
【特許文献2】特許第3145184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、解凍庫は、冷凍庫とは別に製品化される場合が多い。例えば、調理場等において、それらの両者を設置するには、広いスペースを確保する必要がある。また、上記特許文献2に記載された構成は、解凍室と冷蔵室とを隣り合わせているものの、解凍中に冷蔵室の温度上昇を回避することは難しく、その冷蔵室を、冷凍物を保存できるような温度に保持することは難しい。つまり、上記特許文献2に記載された解凍庫を用意しても、この解凍庫とは別に、冷凍庫も必要となる場合が多い。以上のように、解凍庫と冷凍庫との2つの製品を設置するスペースを確保することが難しいこと、また、解凍庫が比較的高コストな製品であること等を理由に、解凍庫より冷凍庫が優先して導入されるのが現状となっている。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、解凍機能と冷凍機能とを両立可能で、かつ、省スペースでコストを抑えることが可能な解凍室付き冷凍庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本願に開示の解凍室付き冷凍庫は、以下の構成とされている。
(1)断熱箱体と、
前記断熱箱体の内部に取り付けられる断熱壁であり、前記断熱箱体の内部を2つの空間に区画する仕切壁と、
前記2つの空間の一方である第1空間に設けられ、対象物を収容可能な第1収容室と、
前記2つの空間の他方である第2空間に設けられ、対象物を収容可能な第2収容室と、
前記第1収容室に冷気を供給する冷凍サイクル式の第1冷却ユニットと、
前記第2空間内に設けられ、前記第2収容室の空気を循環させる送風装置と、
前記送風装置により送られる空気を冷却する冷凍サイクル式の第2冷却ユニットと、
前記送風装置により送られる空気を加温する加温装置と、
を備え、
前記断熱箱体内のうち前記第2収容室のみを解凍室として機能させることが可能とされた解凍室付き冷凍庫。
【0007】
本願に開示の解凍室付き冷凍庫は、冷凍庫の断熱箱体内を仕切壁で分割し、その分割した一部である第2収容室のみに対して、解凍機能を設けた構成となっている。なお、第2収容室に対して解凍運転を行っている場合であっても、第1収容室は、第1冷却ユニットによって常時冷凍室として機能させることができる。換言すれば、第1収容室の冷凍性能に影響を与えることなく、第2収容室における解凍運転を実行することができ、冷凍機能と解凍機能とが両立されたものとなっている。また、本願に開示の解凍室付き冷凍庫は、第2収容室のみに解凍機能を持たせた構成であるため、第2収容室を比較的小さなスペースとしてその第2収容室内の空気を循環させ易い構成とすることが容易で、効率的に解凍を行うことができるとともに、比較的コストを抑えたものとすることができる。
【0008】
また、上記構成の解凍室付き冷凍庫において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。
(2)前記断熱箱体は、直方体形状のものとされ、
前記仕切壁は、断面L字形状のものとされ、
前記仕切壁の外側が前記第1空間とされ、前記仕切壁の内側が前記第2空間とされている(1)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0009】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、断熱箱体内における一つの角部に対して第2空間を形成し、解凍室を設けた構成とされている。つまり、この構成の解凍室付き冷凍庫は、第2収容室を比較的小さなスペースとして効率的に解凍を行うことが可能な構成となる。
【0010】
(3)前記断熱箱体は、直方体形状のものとされ、
前記第2空間を上下に区画して、前記第2収容室の上側に前記第2冷却ユニットを構成する第2冷却器を収容する冷却器室を形成する冷却器室区画部材と、
前記第2空間の側壁に対して設けられ、前記冷却器室から下方に延び出した側面ダクトと、
を備え、
前記送風装置は、ブロアファンであり、前記第2冷却器と前記側壁との間で、前記側面ダクトの上方に配されている(1)項または(2)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0011】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、側面ダクトを介して第2収容室内に空気を送る、あるいは、側面ダクトを介して第2収容室内の空気を吸気するためのブロアファンを、第2冷却器の側方のスペースに配置した構成となっている。この構成の解凍室付き冷凍庫は、ブロアファンを底面側に配置した構成に比較して、第2収容室の容積を広げることができる。また、この構成の解凍室付き冷凍庫は、ブロアファンを底面側に配置した構成に比較して、第2収容室の洗浄を行う際に、ブロアファンへ水が掛かるような事態を回避でき、第2収容室の洗浄が容易な構成となっている。
【0012】
(4)前記第2空間の対向する一対の前記側壁の各々に対して、前記側面ダクトを複数備え、
前記送風装置は、複数の前記側面ダクトに対応して、複数の前記ブロアファンを備えている(3)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0013】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、複数の側面ダクトと複数のブロアファンを利用して、第2収容室の空気を、ムラなく循環させることが可能である。
【0014】
(5)一対の前記側壁の各々には、前後に並んで2つずつの前記側面ダクトと、2つずつの前記ブロアファンとが設けられており、
前方側の2つの前記ブロアファンは、前記冷却器室における前記第2冷却器の前方側の空気を、前記側面ダクトを介して前記第2収容室に送るものとされ、
後方側の2つの前記ブロアファンは、前記冷却器室における前記第2冷却器の後方側の空気を、前記側面ダクトを介して前記第2収容室に送るものとされている(4)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0015】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、冷却器室内の空気を、効果的に第2収容室に送ることが可能な構成となっている。なお、4つのブロアファンの各々の風量を独立して制御可能とすることで、例えば、第2収容室内の温度の均一化を図ることができる。
【0016】
(6)前記第2冷却器の左右両側で、前後に並ぶ2つの前記ブロアファンの間に設けられ、前記冷却器室における前後に並ぶ2つの前記ブロアファンの間の空気の流れを抑制する仕切板を備えている(5)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0017】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、仕切板によって、前後に隣り合うブロアファン同士が干渉して吸い込み力が低下するような事態を回避することができる。なお、この構成の解凍室付き冷凍庫は、第2冷却器によって冷却した空気を、前方側の2つのブロアファンによって第2収容室に送る構成となっている。
【0018】
(7)前記第2空間の背面壁に対して設けられ、前記冷却器室から下方に延び出した背面ダクトを備え、
前記背面ダクトの内側には、前記加温装置が設けられ、
前記背面ダクトから取り込まれた空気は、前記加温装置によって加温されつつ送られて、前記冷却器室に後方側から流入する構成とされた(5)項または(6)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0019】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、加温装置によって温められた空気を、4つのブロアファンによって、効率的に第2収容室に送ることができるため、第2収容室の解凍物を効果的に解凍することができる。
【0020】
(8)当該解凍室付き冷凍庫の制御を司る制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ブロアファンの各々の送風量を独立して制御する(5)項から(7)項のいずれか1つに記載の解凍室付き冷凍庫。
【0021】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、4つのブロアファンの各々の送風量を、互いに異ならせることができる。
【0022】
(9)前記制御装置は、
前記第2収容室に収容された冷凍物を解凍すべく、前記加温装置および前記送風装置を制御する解凍運転を実行するとともに、前記解凍運転の前後において前記第2収容室の温度が所定範囲の保冷温度で維持されるように、前記第2冷却ユニットおよび前記送風装置を制御する保冷運転を実行するものとされ、
前記保冷運転において、前記第2収容室内の温度が均一となるように、前記ブロアファンの各々の送風量を調整する(8)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0023】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、第2収容室を、冷凍室として使用する場合、あるいは、解凍前に保冷する場合や解凍後に保冷する場合において、第2収容室内の温度を、常時、均一化させることができる。
【0024】
(10)前記第2空間の背面壁に対して設けられ、前記冷却器室から下方に延び出した背面ダクトを備え、
前記背面ダクトから取り込まれた空気は、前記冷却器室に後方側から流入する構成とされ、
前記制御装置は、前記保冷運転において前記第2収容室の温度を低下させる場合には、後方側の2つの前記ブロアファンの送風量が、前方側の2つの前記ブロアファンの送風量より小さくなるように制御する(9)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0025】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、第2冷却器の上流側にある空気は、第2収容室に送らないようにして、第2冷却器を通過させた空気を、第2収容室に効率的に送ることができ、第2収容室の温度を効率的に低下させることができる。
【0026】
(11)前記制御装置は、前記解凍運転において、すべての前記ブロアファンの送風量が最大となるように制御する(9)項または(10)項に記載の解凍室付き冷凍庫。
【0027】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、第2収容室の空気を、効率的に循環させることができ、第2収容室の温度を効率的に上昇させることができる。
【0028】
(12)前記仕切壁は、前記断熱箱体の少なくとも上側部分を、左右に区画するものとされ、
前記断熱箱体の上面側に、前記第1冷却ユニットおよび前記第2冷却ユニットの構成品の一部を収容する機械室が設けられた(2)項から(11)項のいずれか1つに記載の解凍室付き冷凍庫。
【0029】
この構成の解凍室付き冷凍庫は、断熱箱体の外側に機械室が設けられているため、断熱箱体内における第1収容室および第2収容室を大きく確保することができる。また、この構成の解凍室付き冷凍庫は、第1収容室と第2収容室との両者が、機械室に隣接しているため、冷却ユニットの配置が比較的単純な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、解凍機能と冷凍機能とを両立可能で、かつ、省スペースでコストを抑えることが可能な解凍室付き冷凍庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態である解凍室付き冷凍庫の斜視図
図2】解凍室付き冷凍庫の正面図(扉を外した状態)
図3】解凍室付き冷凍庫の正面断面図
図4】解凍室付き冷凍庫の第2空間を拡大して示す正面断面図
図5】第2空間周辺の側面断面図(図4におけるV-V断面)
図6】第2空間の平面断面図(図4におけるVI-VI断面)
図7】第2空間の平面断面図(図4におけるVII-VII断面)
図8】第2空間の背面断面図(図6,7におけるVIII-VIII断面)
図9】制御装置の機能ブロック図
図10】制御装置において実行される送風装置制御プログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
<解凍室付き冷凍庫の構成>
本発明の実施形態である解凍室付き冷凍庫10を例示する。この解凍室付き冷凍庫10(以下、単に「冷凍庫10」と呼ぶ場合がある)は、食材(例えば、肉、魚、野菜等)等を冷凍する冷凍機能を主体とするものであるが、その冷凍物を、例えば、調理に適した温度にまで品質を保ちながら解凍する解凍機能も有する。具体的には、本実施形態の冷凍庫10は、例えば、-15℃以下(-25℃~-20℃)に冷凍された冷凍物を、いわゆる、パーシャルフリージング温度(-3℃付近)や、チルド温度(0℃付近)にまで解凍し、そして得られた解凍物を、引き続き例えば、0℃~3℃程度で保冷する機能も有している。以下に、本実施形態の冷凍庫10について、図1から図10を参照しつつ説明する。なお、図面には、符号F,B,L,R,U,Dを用いて方向を示しており、それぞれ、本冷凍庫10を正面から視たときの手前側(前側),奥側(後側),左側,右側,上側,下側を表している。
【0033】
本実施形態の冷凍庫10は、図1図3に示すように、上下方向に長い概して略直方体形状の冷凍庫本体12を主体として構成されており、この冷凍庫本体12が脚部13によって下方から支持される構成のものである。冷凍庫本体12は、前方の一面が開口された断熱箱体14と、断熱箱体14の開口を開閉する複数(本実施形態においては4つ)の扉16A,16B,16C,16Dと、を備えている。
【0034】
断熱箱体14は、図3に示すように、主として、外箱20,内箱21,断熱材22により構成される。外箱20は、前方に開口した箱状をなしており、ステンレス鋼板が箱状に加工されたものからなる。内箱21は、外箱20の内側に収容される前方に開口した小型の箱であり、外箱20と同様、ステンレス鋼板により構成される。外箱20と、その外箱20内に収容された内箱21との間には隙間があり、その隙間に、発泡樹脂(発泡ウレタン等)からなる断熱材22が充填されている。このような断熱箱体14は、天井壁14A,左側壁14B,右側壁14C,背面壁14Dおよび底壁14Eを有する。
【0035】
また、冷凍庫本体12は、図3に示すように、断熱箱体14の内部に取り付けられて断熱箱体14内を分割する仕切壁24を備えている。仕切壁24は、断面L字形状で、内部に断熱材が充填されており、上端が、断熱箱体14の天井壁14Aの左右方向中央に、右側の端部が、断熱箱体14の右側壁14Cの上下方向中央に、背面側の端面が、断熱箱体14の背面壁14Dに、それぞれ連結されている。つまり、断熱箱体14内は、仕切壁24によって、2つの第1空間S1と第2空間S2とに区画される。詳しく言えば、第1空間S1は、仕切壁24の外側の空間であり、その仕切壁24の外側面と、天井壁14A,左側壁14B,背面壁14D,底壁14Eによって、前方からの視点において概してL字形状に区画された空間である。一方、第2空間S2は、仕切壁24の内側で断熱箱体14内の右上部分に形成された空間であり、仕切壁24の内側面24Aと、断熱箱体14の天井壁14A,右側壁14C,背面壁14Dによって、前方からの視点において概して断面矩形状に区画された空間である。
【0036】
また、冷凍庫本体12には、図2に示すように、断熱箱体14の前方側の開口に、十字形状のフレーム26が固定されている。つまり、フレーム26の上方に延びる部分および下方に延びる部分は、それぞれ、天井壁14Aと底壁14Eとの左右方向中央に固定されるとともに、左方に延びる部分および右方に延びる部分は、左側壁14Bと右側壁14Cとの上下方向中央に固定されている。なお、フレーム26の上方に延びる部分と右方に延びる部分は、その背面が仕切壁24の前面に固定されている。そのような構成により、断熱箱体14の前方側の開口が4つに仕切られている。第1空間S1は、開口が3つに仕切られているものの、内部は連通した構成となっている。
【0037】
4枚の扉16A,16B,16C,16Dは、第2空間S2への開口と、第1空間S1への3つの開口との各々に対応して設けられている。各扉16A,16B,16C,16Dは、右方向における一端において上下方向に延びる軸線まわりに回動可能とされており、開口を閉じる閉位置と開口を開放する開位置との間で回動可能となっている。なお、扉16A,16B,16C,16Dは、例えば、ステンレス鋼板製の外形材の内部に断熱材が充填されることで構成される。
【0038】
冷凍庫本体12は、図1に示すように、断熱箱体14の上面における左右の端部の各々に固定された一対のサイドパネル30と、それら一対のサイドパネル30の前面に着脱可能なフロントパネル32と、を備えている。つまり、冷凍庫本体12は、それら一対のサイドパネル30とフロントパネル32とによって形成される機械室R1を有するものとなっている。なお、機械室R1は、上方と後方に開口するものとなっている。この機械室R1には、後に詳しく説明する2つの冷凍サイクル式の冷却ユニット34,35の一部や、制御装置36が配されている。制御装置36は、外部電源に対して、電気的に接続可能である。この制御装置36を介して、本実施形態の冷凍庫10の各部に、電力が供給される。
【0039】
フロントパネル32には開口が設けられており、その開口から外部に露出するように表示部37および操作部38が設けられている。表示部37および操作部38は、それぞれ制御装置36に対して電気的に接続されている。表示部37は、冷凍庫10における各種情報が表示される表示画面(表示パネル)を含む。表示部37には、例えば、庫内の温度や、本冷凍庫10の運転状態を示す情報等が表示される。操作部38は、使用者が本冷凍庫10の運転状態を指示するための装置であり、使用者が操作部38を操作することにより、本冷凍庫10の運転モードの切り替え等が行われる。
【0040】
また、図3に示すように、断熱箱体14には、上壁11Aに、機械室R1と、断熱箱体14内の第1空間S1および第2空間S2の各々と、を連通する第1開口14F,第2開口14Gが設けられている。そして、断熱箱体14には、第1開口14Fを下方から覆うように、ダクト40が設けられるとともに、第2開口14Gを下方から覆うように、ダクト41が設けられる。一方、第1開口14Fには、断熱性を有する第1断熱仕切板42が、機械室R1側(上側)から嵌め込まれており、機械室R1と第1空間S1との間の気密性が保たれる。また、同様に、第2開口14Gには、第2断熱仕切版43が、機械室R1側(上側)から嵌め込まれており、機械室R1と第2空間S2との気密性が保たれる。
【0041】
ダクト40は、第1断熱仕切板42に対して、上下方向において離間した状態で設けられており、第1空間S1を上下に区画するものとなっている。詳しく言えば、ダクト40の上側で第1断熱仕切板42との間に、第1冷却ユニット34を構成する第1冷却器44を収容する第1冷却器室R2を形成するとともに、ダクト40の下側に対象物を収容する第1収容室R3を形成する。以下、ダクト40を、第1冷却器室ダクト40と呼ぶこととする。なお、この第1冷却器室ダクト40は、後方に向かうにつれて下降傾斜する形で配されており、第1冷却器44からの除霜水等を受けるドレンパンとしても機能する。
【0042】
また、ダクト41も、第1冷却器室ダクト40と同様の構成のものであり、第2断熱仕切板43に対して、上下方向において離間した状態で設けられており、第2空間S2を上下に区画するものとなっている。詳しく言えば、図4に示すように、ダクト41の上側で第2断熱仕切板43との間に、第2冷却ユニット35を構成する第2冷却器45を収容する第2冷却器室R4を形成するとともに、ダクト41の下側に対象物を収容する第2収容室R5を形成する。以下、ダクト41は、第2空間S2を上下に区画して第2冷却器室R4を形成する冷却器室区画部材に相当し、第2冷却器室ダクト41と呼ぶこととする。なお、この第2冷却器室ダクト41は、図5に示すように、後方に向かうにつれて下降傾斜する形で配されており、第2冷却器45からの除霜水等を受けるドレンパンとしても機能する。
【0043】
第1冷却ユニット34は、第1収容室R3に供給する空気を冷却する冷凍サイクル式のものである。第1冷却ユニット34は、主として、圧縮機50,凝縮器51A,凝縮器ファン51B,第1冷却器44を含んで構成される。圧縮機50,凝縮器51A,第1冷却器44は、冷媒管52を介して互いに繋がっており、冷媒を循環させることで、第1冷却ユニット34における冷凍サイクルが構成される。第1冷却ユニット34のうち、圧縮機50、凝縮器51Aおよび凝縮器ファン51Bは、第1断熱仕切板42上に載せられた状態で、外気に晒されつつ機械室R1内に収容されている。また、第1冷却器44は、前述したように、第1断熱仕切板42の下方にある第1冷却器室R2内に収容されている。
【0044】
図2および図3に示すように、第1冷却器室ダクト40の前側には、モータで駆動される庫内ファン53が設けられている。また、第1冷却器室ダクト40の後側には、冷気の吹出口が形成されている。冷却運転時には、庫内ファン53の駆動により、空気が第1収容室R3から第1冷却器室R2内に吸引され、その後、第1冷却器44を通過する間に熱交換されて生成された冷気が、吹出口から吹き出される。これにより、第1空間S1内の空気が循環され、第1収容室R3内が冷却される構成となっている。なお、断熱箱体14の背面壁14Dにおける上方側(第1冷却器室ダクト40の吹出口の下方)には、背面ダクト54が取り付けられており、第1収容室R3における下方側の空間にも、効果的に冷気が送られるようになっている。ちなみに、第1収容室R3内には、棚網を上下方向に並んで取り付けることができるようになっており、その棚網上に冷凍する対象物を載置可能とされている。
【0045】
上述のように、第1収容室R3は、冷凍室として機能するものとされていたが、第2収容室R5は、冷凍室だけでなく、解凍室としても機能するものとなっている。以下に、この第2収容室R5に対する本実施形態の冷凍庫10の構造について詳しく説明する。
【0046】
第2収容室R5に対して、前述の第2冷却ユニット35が設けられている。第2冷却ユニット35は、第1冷却ユニット34と同様に、冷凍サイクル式のものであり、第2収容室R5に供給する空気を冷却するためのものである。第2冷却ユニット35は、主として、圧縮機60,凝縮器61A,凝縮器ファン61B,第2冷却器45を含んで構成される。圧縮機60,凝縮器61A,第2冷却器45は、冷媒管62を介して互いに繋がっており、冷媒を循環させることで、第2冷却ユニット35における冷凍サイクルが構成される。第2冷却ユニット35のうち、圧縮機60、凝縮器61Aおよび凝縮器ファン61Bは、第2断熱仕切板43上に載せられた状態で、外気に晒されつつ機械室R1内に収容されている。また、第2冷却器45は、前述したように、第2断熱仕切板43の下方にある第2冷却器室R4内に収容されている。
【0047】
また、第2冷却器45を保持する冷却器ボックス45Aには、除霜用ヒータ63が設けられている。この除霜用ヒータ63は、通電されると発熱し、例えば、除霜運転時に、第2冷却器45に付着した霜を加熱融解する。
【0048】
第2空間S2内には、第2冷却器室R4と第2収容室R5とを循環接続するための循環路が形成されている。具体的には、まず、第2空間S2の背面側の壁(背面壁14D)には、図5図8に示すように、比較的左右方向の幅が広く上下方向に沿って延びた背面ダクト70が設けられている。背面ダクト70は、ステンレスやアルミニウム合金等の熱伝導性金属材料からなる板材が所定形状に折り曲げ加工されたものからなり、断面コの字形状のダクト本体部71と、そのダクト本体部71の左右方向両端に突出形成された一対のフランジ部72とからなる。背面ダクト70は、図4に示すように、第2収容室R5内において左右方向中央に配され、一対のフランジ部72において背面壁14Dに固定されるとともに、上端において、第2冷却器室ダクト41の後端に連結される。なお、背面ダクト70の下端は、開口しており、第2収容室R5内の空気を吸気する吸気口70Aとして機能する。そして、この背面ダクト70と背面壁14Dとによって、上下方向に延びる空気の通路(流路)が形成され、その通路が第2冷却器室R4と連通した構成となっている。
【0049】
図8に示すように、背面ダクト70内には、背面ヒータ74が設けられている。背面ヒータ74は、ダクト本体71における裏面(背面壁14Dに対向する面)に設けられている。背面ヒータ74は、リード線(銅線)をシリコーンゴムによって被覆した、いわゆるシリコーンコードヒータであり、アルミ箔テープによってダクト本体部71の裏面に固定されている。背面ヒータ74は、それぞれ上下方向で往復するように蛇行しつつ、左右方向に複数列に並ぶように配策されている。背面ヒータ74は、通電されると発熱し、背面ダクト70内を流れる空気を加熱(加温)する。背面ヒータ74の発熱量は、例えば、通電時間を制御(オンオフ制御)することで調整することができる。
【0050】
また、第2空間S2の左右両側の側壁、つまり、仕切壁24の内面24Aと、断熱箱体14の右側壁14Cには、図5図8に示すように、上下方向に延びる中空の側面ダクト80が、2本ずつ前後に並んで設けられている。各側面ダクト80は、図6および図7に示すように、前後方向における配置が重ならないように互い違いに配されている。これら4つの側面ダクト80は、同一の構造を備えている。
【0051】
側面ダクト80は、ステンレスの金属材料からなる板材が所定形状に折り曲げ加工されたものからなり、断面コの字形状で概ね上下方向に延びたダクト本体部81と、そのダクト本体部81の左右方向両端に突出形成された一対のフランジ部82とからなる。なお、側面ダクト80は、ステンレス等の金属材料に限定されるものではなく、樹脂素材を用いた成形品を用いたものであってもよい。各側面ダクト80は、仕切壁24の内面24Aあるいは断熱箱体14の右側壁14Cに対して、一対のフランジ部82において固定され、この側面ダクト80と側壁とによって、上下方向に延びる空気の通路(流路)が形成されている。ダクト本体部81には、上下方向において所定の間隔で、複数の吹出孔83が設けられている。吹出孔83は、前後方向に長い矩形状をなしている。吹出孔83は、側面ダクト80内を流れる空気が、第2収容室R5内に吹き出される際に使用される開口部である。また、各吹出孔83には、風向板84が取り付けられており、側面ダクト80内の空気は、風向板84の板面に沿いつつ、左右方向に広がるように吹出孔83から吹き出される。
【0052】
本実施形態の冷凍庫10は、第2収容室R5の空気を循環させる送風装置として、上述した4本の側面ダクト80の上方に設けられた4つのブロアファン86を備えている。各ブロアファン86は、第2冷却器室R4の空気を対応する側面ダクト80を介して第2収容室R5に送るものとされている。ブロアファン86が備えるモータは、例えば、ブラシレスDCモータからなる。モータに供給する電流量を適宜、変更することによって、モータの回転速度を連続的に変更することができる。つまり、各ブロアファン86の送風量は、制御装置36により容易に調整することができる。なお、以下の説明において、4つのブロアファン86および側面ダクト80を区別する必要がある場合には、それらの符号に、図6図7の前後方向および左右方向を基準として、左前側の物にFLを、左後側の物にBLを、右前側の物にFRを、右後側の物にBRを、それぞれ付すこととする。
【0053】
第2空間S2内における天井側の左右の両端には、前後方向に並んだ2つのブロアファン86を下方から覆うように収容する一対のブロアファンカバー87L,87Rが取り付けられている。このブロアファンカバー87L,87Rは、その上方側の空間を、第2収容室R5と区画する。それらブロアファンカバー87L,87Rの各々には、底面に、前後方向に間隔をおいて2つの開口が形成されており、前述の側面ダクト80の上端が連結されている。そして、その開口を覆うように、4つのブロアファン86が設けられて、各ブロアファン86は、自身の周囲の空気を対応する側面ダクト80に送るようになっている。
【0054】
また、ブロアファンカバー87L,87Rの上方側の空間は、第2冷却器室R4と連通している。詳しく言えば、ブロアファンカバー87L,87Rの各々には、第2冷却器45の側方でかつ前後に並んだ2つのブロアファン86の間に、仕切プレート(仕切板)88L,88Rが立設している。これら仕切プレート88L,88Rは、それぞれ、左前側のブロアファン86FLと左後側のブロアファン86BLとの間、右前側のブロアファン86FRと右後側のブロアファン86BRとの間の隙間を小さくし、それらの間で空気が流れることを抑制するためのものである。このような構成により、ブロアファンカバー87L,87R上における前側のブロアファン86FL,86FR周りの空間は、第2冷却器室R4における第2冷却器45の前方側の空間S3FL,S3FRと連通し、後側のブロアファン86BL,86BR周りの空間S3BL,S3BRは、第2冷却器室R4における第2冷却器45の後方側の空間と連通している。
【0055】
以上のような構成から、4つのブロアファン86は、第2収容室R5の空気を、背面ダクト70,第2冷却器室R4を介して吸い込み、その吸い込んだ空気を、側面ダクト80を介して第2収容室R5に送るように構成されている。詳しく言えば、前側のブロアファン86FL,86FRは、第2冷却器室R4における第2冷却器45の前方側の空気を吸い込むものとされ、後側のブロアファン86BL,86BRは、第2冷却器室R4における第2冷却器45の後方側の空気を吸い込むものとされている。なお、これら4つのブロアファン86からなる送風装置の制御については、後に詳しく説明することとする。
【0056】
第2収容室R5には、収容物を載せる複数の棚網90を上下方向に並んで取り付けることができるようになっている。具体的には、左右の側壁の前端側、つまり、仕切壁24の内面24Aおよび断熱箱体14の右側壁14Cにおける前端側に、上下方向に延びる棚柱91が設けられており、その棚柱91に上下方向に間隔をおいて複数の棚受部材92が取り付けられている。また、背面ダクト70の表面(前方を向く面)にも、棚受部材92と同じ高さとなるように、上下左右に間隔をおいて、棚受部材93が取り付けられている。それら棚受部材92,93を利用して、棚網90は設置されている。なお、前述した側面ダクト80に取り付けられた風向板84は、棚網90の直下に位置する高さに設けられており、棚網90上に載置された解凍対象物に向けて、効率的に空気が送られるようになっている。
【0057】
第2空間S2内には、第2収容室R5の温度制御等に用いられるセンサとして、サーミスタ96と、赤外線温度センサ98とが設けられている。サーミスタ96は、第2収容室R5内の温度(庫内温度)の検出を目的とするものである。サーミスタ96は、図4および図5等に示すように、第2冷却器室R4内における第2冷却器45の前方側の空間で、第2断熱仕切板43の下面に配設されている。
【0058】
また、赤外線温度センサ98は、第2収容室R5内に収容されている収容物(冷凍物、解凍物等)の表面温度を検出する。赤外線温度センサ98は、図5等に示されるように、第2冷却器室ダクト41に設けられている。赤外線温度センサ98は、収容物から放射される赤外線を集光して、その赤外線に対応した電気信号に変換して出力する。そして、その出力された電圧(電気信号)に基づいて、収容物の温度が求められる。なお、赤外線温度センサ98は、赤外線を集光する部分が第2収容室R5内に露出するように、第2冷却器室R4側(上面側)から第2収容室R5側(下面側)に貫通する形で第2冷却器室ダクト41に設けられている。
【0059】
<解凍室付き冷凍庫における制御>
以上のように構成された本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、制御装置36によって制御される。制御装置36は、CPU,ROM,RAMを有するコンピュータを主体とするものであり、図9に示すように、第1冷却ユニット34の圧縮機50および凝縮器ファン51B,第1収容室R3の庫内ファン53,第2冷却器ユニットの圧縮機60および凝縮器ファン61B,除霜用ヒータ63,背面ヒータ74,送風装置の4つにブロアファン86、および、サーミスタ96,赤外線温度センサ98等が接続されており、ROM内に記憶された種々のプログラムを実行することによって、それらの接続された機器が制御されるようになっている。本実施形態の解凍室付き冷凍庫10においては、上述したように、4つのブロアファン86の配置に特徴を有していることで、それら4つのブロアファン86からなる送風装置の制御に特徴を有している。以下に、ブロアファン86の制御について詳しく説明する。
【0060】
本実施形態の冷凍庫10において、第1収容室R3に対する運転と、第2収容室R5に対する運転とは、それぞれ独立して行うことができるようになっている。まず、第1収容室R3に対する運転は、一般的な冷却庫としての運転であり、第1収容室R3内の温度を設定された温度(設置温度によって、冷蔵庫としても冷凍庫しても使用可能)に保つために、第1冷却ユニット34を作動させる。
【0061】
次に、第2収容室R5に対する運転について説明する。第2収容室R5に対する運転には、運転モードとして、保冷モードと、解凍モードとを有する。保冷モードおよび運転モードの切り替えは、使用者による操作部38の操作や、予め定められたスケジュール等に基づいて、適宜、行われる。なお、本実施形態の冷凍庫10における制御は、本実施形態において主な特徴となる送風装置の制御以外については、簡略的に説明することとする。
【0062】
保冷モードには、2種類あり、1つ目は、解凍モードの前に、第2収容室R5内に収容された収容物である解凍前の冷凍物を、その温度で保冷する事前保冷モードである。詳しく言えば、赤外線温度センサ98によって冷凍物の温度を検出し、第2収容室R5内の温度が、赤外線温度センサ98によって検出された温度となるように、保冷される。また、保冷モードの2つ目は、解凍モードの後に、第2収容室R5内に収容された収容物である解凍後の解凍物等)を、品質を保持した状態で保管することを目的として、第2収容室R5内を所定範囲の保冷温度で維持する事後保冷モードである。所定範囲の保冷温度としては、例えば、-3℃~0℃である。事後保冷モードにおける保冷温度の条件は、使用者が操作部38を操作することで、適宜、変更可能である。なお、事後保冷モードにおける保冷温度は、後述する解凍温度よりも、低く設定されることが多いが、必要に応じて、解凍温度と同程度であってもよい。
【0063】
上記2つの保冷モードでの運転では、第2冷却ユニット35を作動させて冷媒を循環させる、いわゆる冷凍サイクルにより、第2冷却室R5内の空気が第2冷却器45により冷却される。そして、その冷却された空気(冷気)が第2冷却器室R4の前側のブロアファン86FL,86FRから吸い込まれて、前側の側面ダクト80FL,80FRの内部に供給される。前側の側面ダクト80FL,80FR内に供給された空気は、上下方向に並んだ複数の吹出孔83から、第2収容室R5内に吹き出される。そして、第2収容室R5内の空気は、4つのブロアファン86により吸い上げられて、背面ダクト70の内部を通って、再び、第2冷却器室R4内へ吸い込まれる。
【0064】
事前保冷モードにおいては、現時点での第2収容室R5内の温度Tと、目標となる温度Teとの差が大きい場合がある。そのような場合、背面ダクト70から第2冷却器室R4に入った空気は、第2冷却器45を通過して、効果的に冷却されることが望ましい。つまり、第2冷却器45の後方側の空気を、後側のブロアファン86BL,86BRが吸い込まないように、後側のブロアファン86BL,86BRの送風量は、前側のブロアファン86FL,86RLの送風量より小さくなるように制御される。例えば、後側のブロアファン86BL,86BRの送風量は、第2収容室R5内の奥側(後側)に、空気が留まることのないようにする程度の風量とすることができる。以下、この際の送風装置の制御を、冷却時送風運転と呼ぶ場合がある。
【0065】
一方、事前保冷モードにおいて、現時点での第2収容室R5内の温度Tが目標となる温度Teに近づいた場合、および、事後保冷モードにおいては、第2収容室R5内における温度が、どの箇所においても均一になるよう、4つのブロアファン86の送風量が独立して調整されるようになっている。以下、この際の送風装置の制御を、保冷時送風制御と呼ぶ場合がある。
【0066】
このように保冷モードでの運転では、第2収容室R5内の空気を、背面ダクト70、第2冷却器室R4、側面ダクト80を移動させて循環させることで、第2収容室R5内の温度が、目標となる範囲の保冷温度とされる。なお、保冷モードにおいても、必要に応じて、除霜用ヒータ63や背面ヒータ74が通電制御されて、第2収容室R5に供給される空気が温められる。
【0067】
次いで、解凍モードついて説明する。解凍モードは、第2収容室R5に収容された冷凍物を解凍することを目的とした運転モードである。解凍モードでの運転には、事前保冷モードから続いて行われる場合の運転(前仕込み解凍運転)、および、解凍前の冷凍物が第2収容室R5に収容されてすぐに行われる場合の運転(スピード解凍運転)がある。解凍モードでの運転は、例えば、使用者が操作部38を操作することで開始されたり、設定されたタイマー等に基づいて、開始されたりする。また、例えば、使用者が操作部38を操作することで開始され、制御装置36は、設定されたタイマーや温度センサ96,98の検出結果等に基づいて、事前保冷モードおよび前仕込み解凍運転、あるいは、スピード解凍運転のいずれを行うかを判断して、自動で開始するような構成とすることもできる。
【0068】
解凍モードでの運転が開始されると、制御装置36は、第2冷却ユニット35の作動を停止し、4つのブロアファン86を作動させる。この場合の4つのブロアファン86の送風量は、最大となるように制御される。以下、この際の送風装置の制御を、解凍時送風制御と呼ぶ場合がある。解凍モードでは、まず、サーミスタ96と赤外線温度センサ98の検出結果に基づいて、冷凍物の分量や冷凍物の温度が計測され、必要な解凍時間等が推定される。そして、加温装置である除霜用ヒータ63および背面ヒータ74を作動させ、第2収容室R5内の空気を温める。なお、本実施形態においては、第2収容室R5の温度が、現時点での収容物の温度に対して所定の温度差で高い温度となるように制御される。例えば、所定の温度差は、例えば、前仕込み解凍運転の場合には、収容物の温度+5℃~10℃で、スピード解凍運転の場合には、収容物の温度+15℃~20℃である。
【0069】
そして、第2収容室R5の温度が、定められた温度(例えば、-5℃)となると、除霜用ヒータ63および背面ヒータ74は停止させられ、4つのブロアファン86の送風量が小さくされる、あるいは、4つのブロアファン86が停止させられ、前述した事後保冷モードに移行させられる。
【0070】
ちなみに、上記の送風装置である4つのブロアファン86の制御は、例えば、図10にフローチャートを示す送風装置制御プログラムが実行されることによって行われる。この送風装置制御プログラムは、比較的短い所定の時間間隔Δtごとに繰り返し実行されるようになっている。
【0071】
この制御プログラムでは、まず、ステップ1(以下「S1」と略す場合がある。他のステップも同様である。)において、解凍モードか否かの判定が行われる。解凍モードでない場合、つまり、保冷モードである場合には、S2において、サーミスタ96により検出された庫内温度Tと、目標となる庫内温度Teとの温度差ΔTが、設定値ΔTより大きいか否かの判定が行われる。温度差ΔTが設定値ΔTより大きい場合には、S3において、前述した冷却時送風制御が実行され、後側のブロアファン86BL,86BRの送風量は、前側のブロアファン86FL,86RLの送風量より小さくなるように制御される。また、S2において、温度差ΔTが設定値ΔT以下となると、S4において、前述した保冷時送風制御が実行され、第2収容室R5内における温度が、どの箇所においても均一になるよう、4つのブロアファン86の送風量が独立して調整される。さらに、S1において、解凍モードである場合には、前述した解凍時送風制御が実行され、4つのブロアファン86の送風量が最大となるように制御される。
【0072】
上述した送風装置の制御を実行する制御装置36は、図9にブロック図で示すような機能構成のものとされ、種々の機能部を有するものとなっている。具体的には、制御装置36は、第1収容室R3内の制御を行う第1収容室制御部100と、第2収容室R5内の制御を行う第2収容室制御部102と、を有している。その第2収容室制御部102は、上記の送風装置制御プログラムを実行して4つのブロアファン86の送風量を独立して調整する送風装置制御部104を含んで構成されている。そして、その送風装置制御部104は、前述した冷却時送風制御実行部106,保冷時送風制御実行部108,解凍時送風制御実行部110を有していると考えることができる。
【0073】
<解凍室付き冷凍庫の効果>
以上のように構成された本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、断熱箱体14と、断熱箱体14の内部に取り付けられる断熱壁であって断熱箱体14の内部を2つの空間S1,S2に区画する仕切壁24と、第1空間S1に設けられて対象物を収容可能な第1収容室R3と、第2空間S2に設けられて対象物を収容可能な第2収容室R5と、第1収容室R3に冷気を供給する冷凍サイクル式の第1冷却ユニット34と、第2空間S2内に設けられて第2収容室R5の空気を循環させる送風装置86と、送風装置86により送られる空気を冷却する冷凍サイクル式の第2冷却ユニット35と、送風装置86により送られる空気を加温する加温装置63,74と、を備え、断熱箱体14内のうち第2収容室R5のみを解凍室として機能させることが可能なことを特徴とする。
【0074】
本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、冷凍庫の断熱箱体14内を仕切壁24で分割し、その分割した一部である第2収容室R5のみに対して、解凍機能を設けた構成となっている。なお、第2収容室R5に対して解凍運転を行っている場合であっても、第1収容室R3は、第1冷却ユニット34によって常時冷凍室として機能させることができる。換言すれば、第1収容室R3の冷凍性能に影響を与えることなく、第2収容室R5における解凍運転を実行することができ、冷凍機能と解凍機能とが両立されたものとなっている。また、本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、第2収容室R5のみに解凍機能を持たせた構成であるため、第2収容室R5を比較的小さなスペースでその第2収容室R5内の空気を循環させ易い構成とされており、効率的に解凍を行うことができるとともに、比較的コストを抑えたものとなっている。
【0075】
また、本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、断熱箱体14が、直方体形状のものとされ、仕切壁24が、断面L字形状のものとされ、仕切壁24の外側が第1空間S1とされ、仕切壁24の内側が第2空間S2とされている。そして、断熱箱体14内における一つの角部に対して第2空間S2が形成され、1つの扉16Dに対するその第2空間のみに、解凍機能が設けられている。つまり、本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、第2収容室R5が比較的小さなスペースで効率的に解凍を行うことが可能となる。
【0076】
また、本実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、断熱箱体14が、直方体形状のものとされ、第2空間S2を上下に区画して第2収容室R5の上側に第2冷却器45を収容する第2冷却器室R4を形成する第2冷却器室ダクト(冷却器室区画部材)41と、第2空間S2の側壁24A,14Cに対して設けられて第2冷却器室R4から下方に延び出した側面ダクト80と、を備え、送風装置86は、ブロアファンであり、第2冷却器45と側壁24A,14Cとの間で、側面ダクト80の上方に配されている。この構成により、ブロアファンを底面側に配置した場合に比較して、第2収容室R5の容積を広げることができる。また、第2収容室R5の洗浄を行う際に、ブロアファン86へ水が掛かるような事態を回避でき、第2収容室R5の洗浄が容易となっている。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
上記実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、仕切壁24が断面L字形状のものとされていたが、それに限定されない。しかしながら、コストを抑えるという観点からすれば、本実施形態の構成が好適である。
【0079】
また、上記実施形態の解凍室付き冷凍庫10は、送風装置が4つのブロアファン86からなるとともに、4本の側面ダクト80を備えるものとされていたが、その数である構成に限定されない。例えば、左右で一対のブロアファンと側面ダクトを備える構成であってもよく、左右に3つずつブロアファンと側面ダクトを備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…10…解凍室付き冷凍庫、14…断熱箱体、14C…右側壁〔第2空間の側壁〕、24…仕切壁、24A…内面〔第2空間の側壁〕、34…第1冷却ユニット、35…第2冷却ユニット、36…制御装置、41…第2冷却器室ダクト〔冷却器室区画部材〕、45…第2冷却器、63…除霜用ヒータ〔加温装置〕、70…背面ダクト、74…背面ヒータ〔加温装置〕、80…側面ダクト、86…ブロアファン〔送風装置〕、88L,88R…仕切プレート〔仕切板〕
S1…第1空間、S2…第2空間、R1…機械室、R3…第1収容室〔冷凍室〕、R4…第2冷却器室、R5…第2収容室〔解凍室〕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10