(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105974
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】放射線遮蔽壁構築用のパネル、放射線遮蔽壁、及び放射線遮蔽壁の製造方法。
(51)【国際特許分類】
G21F 1/12 20060101AFI20240731BHJP
G21F 1/04 20060101ALI20240731BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20240731BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G21F1/12
G21F1/04
G21F3/00 L
E04H9/14 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010001
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】511212365
【氏名又は名称】株式会社サムシング・ファイン
(71)【出願人】
【識別番号】598164511
【氏名又は名称】不二窯業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176349
【氏名又は名称】三石耐火煉瓦株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 和夫
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】森 宏行
(72)【発明者】
【氏名】神田 二郎
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA23
2E139AC12
2E139AC19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パネルの継ぎ目に形成される目地からの放射線の漏洩に対して対策を施した放射線遮蔽壁構築用のパネルと、それにより構築される放射線遮蔽壁と、放射線遮蔽壁の製造方法とを提供すること。
【解決手段】複数のパネルを並べて放射線を遮蔽する壁体を構築するためのパネルであり、当該パネルは、本体と、当該本体の端部から突出する形状であり、隣のパネルとの間に形成される目地を遮蔽する凸部とを備えており、本体は、外部環境にさらされる第1層部と、第1層部により外部環境側の面が被覆される第2層部とを備えており、前記第1層部は、コンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成され、前記第2層部はコンクリートで構成される放射線遮蔽壁構築用のパネル、及び当該パネルで構成される放射線遮蔽壁。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネルを並べて放射線を遮蔽する壁体を構築するためのパネルであり、
当該パネルは、本体と、当該本体の端部から突出する形状であり、隣のパネルとの間に形成される目地を遮蔽する凸部とを備えており、
本体は、外部環境にさらされる第1層部と、第1層部により外部環境側の面が被覆される第2層部とを備えており、
前記第1層部は、コンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成され、前記第2層部はコンクリートで構成される放射線遮蔽壁構築用のパネル。
【請求項2】
前記凸部は、外部環境側に配される第1層部と、該第1層部により外部環境側の面が被覆される第2層部とを備えており、
前記第1層部はコンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成され、前記第2層部はコンクリートで構成される請求項1に記載の放射線遮蔽壁構築用のパネル。
【請求項3】
前記凸部には、少なくとも、隣接して配置されるパネルとの間に形成される目地を覆う領域に第1層部が配される形状である請求項2に記載の放射線遮蔽壁構築用のパネル。
【請求項4】
前記第1層部は、前記凸部の付け根から、前記凸部の突出方向と反対側に延在する形状である請求項3に記載の放射線遮蔽壁構築用のパネル。
【請求項5】
前記第1層部は、前記凸部の付け根から、前記凸部の先端まで配置される形状である請求項3又は4に記載の放射線遮蔽壁構築用のパネル。
【請求項6】
複数の請求項1に記載のパネルにより構築された放射線遮蔽壁であり、
一のパネルは、他のパネルに対して、目地の位置で隙間を開けて、配置されており、
一のパネルの端部と他のパネルの端部との間に形成される目地は、他のパネルの端部に設けられた凸部により遮蔽される放射線遮蔽壁。
【請求項7】
複数の請求項1に記載のパネルを用いて放射線遮蔽壁を製造する方法であり、
一のパネルを、他のパネルに対して、目地の位置で隙間を開けて配置することで、一のパネルの端部と他のパネルの端部との間に形成される目地を、他のパネルの端部に設けられた凸部により遮蔽するようにパネルを配置する工程を有する放射線遮蔽壁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽壁構築用のパネル、放射線遮蔽壁、及び放射線遮蔽壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放射性廃棄物を隔離する目的、放射線から身を守る目的で放射線遮蔽壁の利用が検討されている。例えば、特許文献1のように、複数のプレキャストコンクリートパネルを用いて放射線遮蔽壁を構築する方法が知られている。特許文献1のプレキャストコンクリートパネルにおいては、目地の位置に突出した部分を設けている。
【0003】
また、特許文献2のように、鉄筋コンクリートからなる内壁壁及び内側天井の上に複数の遮蔽板体を固定した構造を有する放射線遮蔽室が知られている。
【0004】
また、特許文献3のように、プレキャストコンクリートパネルを上下方向に積み上げて、壁体を構築する方法が知られている。特許文献3のプレキャストコンクリートパネルにおいては、目地の位置に突出した部分を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-36200号公報
【特許文献2】特許第6678869号公報
【特許文献3】特開2020-148584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射性物質の種類によって、半減期が異なる。例えば、セシウム137では半減期は30年であるとされ、プルトニウム239では半減期は2万4千年であるとされている。このように、放射性物質の種類によっては、半減期が極めて長い。放射線遮蔽壁が破損した場合には補修が必要になるが、当然ながら放射線遮蔽壁を補修する際には作業員が放射線に曝されることになる。放射線遮蔽壁の補修は大きな負担を伴うため、放射線遮蔽壁が短期間で破損しないようにする必要がある。
【0007】
特許文献1ないし3のように、複数のプレキャストコンクリートパネルを設置して、放射線遮蔽壁を構築する方法が知られている。コンクリートが外気に曝され続けると、コンクリートの表面から二酸化酸素が染み込んで、コンクリートを構成するアルカリ成分と反応して中性化が生じる。また、排気ガスに含まれる亜硫酸ガスや酸性雨も中性化の原因となる。中性化が鉄筋にまで達すると、鉄筋を錆びさせる。鉄筋が発錆すると鉄筋の体積が膨張して、コンクリートにひび割れを生じさせて、さらに中性化が進行しやすくなる。また、コンクリートにひび割れが生じるとそこから水が浸入して、鉄筋の発錆がさらに進行しやすくなる。また、ひび割れに侵入した水が凍結すると体積が膨張し、コンクリートの破損がさらに進行することになる。
【0008】
特許文献2のように、鉄筋コンクリートの上に鉄、鉛、酸化鉄、又はコンクリートブロック等で構成される放射線遮蔽体を固定して、放射線遮蔽室を構築する方法も提案されているが、放射線遮蔽体が長期的な耐久性において十分ではないコンクリートなどの素材で構成されている場合には、長期的にみると、壁や天井を構成するコンクリートが中性化してしまうという問題があった。また、特許文献2の構造では、壁の目地における放射線の漏洩が考慮されておらず、目地を有するような大規模な放射線遮蔽壁を構築するのには向いていないという問題がある。
【0009】
本発明は、コンクリートの表面が放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で保護されており、パネルの継ぎ目に形成される目地からの放射線の漏洩に対して対策を施した放射線遮蔽壁構築用のパネルと、それにより構築される放射線遮蔽壁と、放射線遮蔽壁の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数のパネルを並べて放射線を遮蔽する壁体を構築するためのパネルであり、当該パネルは、本体と、当該本体の端部から突出する形状であり、隣のパネルとの間に形成される目地を遮蔽する凸部とを備えており、本体は、外部環境にさらされる第1層部と、第1層部により外部環境側の面が被覆される第2層部とを備えており、前記第1層部は、コンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成され、前記第2層部はコンクリートで構成される放射線遮蔽壁構築用のパネルにより、上記の課題を解決する。
【0011】
また、複数の前記パネルにより構築された放射線遮蔽壁であり、一のパネルは、他のパネルに対して、目地の位置で隙間を開けて、配置されており、一のパネルの端部と他のパネルの端部との間に形成される目地は、他のパネルの端部に設けられた凸部により遮蔽される放射線遮蔽壁により、上記の課題を解決する。
【0012】
また、複数の前記パネルを用いて放射線遮蔽壁を製造する方法であり、一のパネルを、他のパネルに対して、目地の位置で隙間を開けて配置することで、一のパネルの端部と他のパネルの端部との間に形成される目地を、他のパネルの端部に設けられた凸部により遮蔽するようにパネルを配置する工程を有する放射線遮蔽壁の製造方法により、上記の課題を解決する。
【0013】
前記パネル、放射線遮蔽壁、放射線遮蔽壁の製造方法によれば、外部環境に曝される側に、コンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体が配置され、第2層部は前記放射線遮蔽体で被覆される。このため、壁体を構成するコンクリートにおいて、特に問題となる外部環境側からの中性化が進行しにくく、長期にわたり放射線を遮蔽する能力を維持した放射線遮蔽壁を得ることができる。また、パネル間の目地は、パネル本体に設けられる凸部によって遮蔽される。これにより、前記目地からの放射線の漏洩を防止することができる。
【0014】
前記パネル、放射線遮蔽壁、放射線遮蔽壁の製造方法において、前記凸部は、外部環境側に配される第1層部と、第1層部により外部環境側の面が被覆される第2層部とを備えており、前記第1層部はコンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成され、前記第2層部はコンクリートで構成されるものとすることが好ましい。
【0015】
前記パネル、放射線遮蔽壁、放射線遮蔽壁の製造方法において、前記凸部には、少なくとも、隣接して配置されるパネルとの間に形成される目地を覆う領域に第1層部が配される形状とすることが好ましい。当該構成によれば、目地に沿う角度で放射される放射線を効果的に遮蔽することができる。
【0016】
前記パネル、放射線遮蔽壁、放射線遮蔽壁の製造方法において、前記第1層部は、前記凸部の付け根から、前記凸部の突出方向と反対側に延在する形状とすることが好ましい。当該構成によれば、目地に対して、凸部の付け根側に斜めに傾斜した角度で放射される放射線を効果的に遮蔽することができる。
【0017】
前記パネル、放射線遮蔽壁、放射線遮蔽壁の製造方法において、前記第1層部は、前記凸部の付け根から、前記凸部の先端まで配置される形状とすることが好ましい。当該構成によれば、目地に対して、凸部の先端側に斜め傾斜した角度で放射される放射線を効果的に遮蔽することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリートの表面が放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で保護されており、パネルの継ぎ目に生じる目地からの放射線の漏洩に対して対策を施した放射線遮蔽壁構築用のパネルと、それにより構築される放射線遮蔽壁と、放射線遮蔽壁の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の放射線遮蔽壁の一例の平面図である。
【
図4】
図1の放射線遮蔽壁を高さ方向に構築する様子を示す断面図である。
【
図5】
図1の放射線遮蔽壁を内側から見た状態を示す背面図である。
【
図6】
図1の放射線遮蔽壁を横方向に構築していく手順を示す平面図である。
【
図7】
図1の放射線遮蔽壁の横方向における断面図であり、パネルの目地の構成を示す図である。
【
図9】
図1の放射線遮蔽壁の縦方向における断面図であり、パネルの目地の構成を示す図である。
【
図11】パネル及び放射線遮蔽壁の他の例を示す横方向の断面図である。
【
図12】パネル及び放射線遮蔽壁の他の例を示す横方向の図である。
【
図13】パネル及び放射線遮蔽壁の他の例を示す縦方向の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の放射線遮蔽壁構築用のパネル、放射線遮蔽壁、及び放射線遮蔽壁の製造方法の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[第1実施形態]
図1ないし
図2に放射線遮蔽壁の一実施形態を示す。本実施形態の放射線遮蔽壁1は、複数種の放射線遮蔽壁構築用のパネル11、12、及び13から構成される。以下では、パネル11を第1パネルと称し、パネル12を第2パネルと称し、パネル13を第3パネルと称することがある。なお、
図1においては、ハッチングを省略した。
図6においても同様である。
【0022】
パネル11、12、及び13は、いずれも、複数のパネルを並べて放射線を遮蔽する壁体を構築するためのものであり、本体111、121、及び131と、本体111、121、及び131の一端部から突出する形状であり、隣のパネルとの間に形成される目地を遮蔽する凸部112、122、及び132を備える。
【0023】
本体111、121、及び131は、
図2等に示したように、外部環境にさらされる第1層部21と、第1層部21により外部環境側の面が被覆される第2層部22とを備える。本体111、121、及び131は、放射線を遮蔽する部分の主要部を構成する平坦部を備える板状である。前記第1層部21は、コンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成される。前記第2層部22はコンクリートで構成される。なお、外部環境とは、壁の外部に対応する。
【0024】
第1層部は、特に限定されないが、ブロックなどの複数の構成要素に分割してもよい。前記ブロックを第2層部であるコンクリートの表面に、適宜の方法で固定することにより、放射線遮蔽壁を構築することができる。製造工場において、ブロックを予めコンクリートの表面に固定しておけば、施工現場において、前記ブロックをコンクリートの表面に固定する手間を省くことができる。
【0025】
凸部112、122、及び132は、外部環境側に配される第1層部21と、第1層部21により外部環境側の面が被覆される第2層部22とを備える。前記第1層部21はコンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成される。前記第2層部22はコンクリートで構成される。凸部112、122、及び132は、
図1に示したように、一のパネルと他のパネルとの間に設けられる目地の背面側に位置するように突出する。
【0026】
第1パネル11は、左右方向及び上下方向に延在する形状であり放射線を遮蔽する主要部を構成する本体111と、本体111の一端部から本体の左右における延在方向に沿って延びる凸部112とを備える形状である。本体111の他端部は、本体111の延在方向に延びる平坦な形状である。
【0027】
第2パネル12は、左右方向及び上下方向に延在する形状であり放射線を遮蔽する主要部を構成する本体121と、本体121一端部から本体の左右における延在方向に沿って延びる凸部122とを備える形状である。本体121の他端部は、本体121の左右方向における延在方向に交差する方向に延びる屈曲部123とされており、放射線遮蔽壁1の角部を構成する。
【0028】
第3パネル13は、左右方向及び上下方向に延在する形状であり放射線を遮蔽する主要部を構成する本体131と、本体131の一端部に配され、本体131の左右における延在方向に交差する方向に延びる凸部132と、本体131の左右における延在方向に交差する方向に延びる屈曲部133とを備える形状である。屈曲部133は、放射線遮蔽壁1の角部を構成する。本体131の他端部は、本体131の左右における延在方向に延びる平坦な形状である。
【0029】
図1及び
図2に示したように、第1パネル11、第2パネル12、第3パネル13には、梁材61と放射線遮蔽壁1とを連結するためのアンカー63の基部を埋め込んで固定するための突部64が設けられる。パネルに設けられる突部64の数は、一又は複数であってもよいし、設けなくてもよい。梁材61は、前記柱62に連結される。なお、
図1においては、アンカーの形状を簡略化して線で示した。
図2、及び
図3においても同様である。
【0030】
図4に示したように、第1パネル11、第2パネル12、及び第3パネル13においては、本体111、121、及び131の下端部から本体の上下方向に突出する凸部31を備えており、本体111、121、及び131の上端部には、凹部32を備える。凹部32は、隣接する他のパネルの凸部31を収容することができる形状とされる。凸部31は、
図4に示したように、一のパネルと他のパネルとの間に設けられる目地の背面側に位置するように突出する。
【0031】
前記凸部31は、外部環境側に配される第1層部21と、第1層部21により外部環境側の面が被覆される第2層部22とを備えている。前記第1層部21はコンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる放射線遮蔽体で構成され、前記第2層部22はコンクリートで構成される。
【0032】
前記パネルの第2層部22は、コンクリートで構成される。コンクリートは、JASS5(2018年版)に準拠して求めた材齢28日における圧縮強度が36N/mm2以上となるようにすることが好ましく、50N/mm2以上となるようにすることがより好ましい。これにより、コンクリートの中性化が経時的に進行しにくくなり、放射線遮蔽壁の長期的な耐久性を確保することができる。なお、コンクリートの圧縮強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、60N/mm2以下である。
【0033】
コンクリート構造物の中性化深さ(mm)は、次式で求められる。ただし、dは中性化深さ(mm)であり、Aは中性化速度係数であり、tは経過時間(年)である。
d=A・t1/2 (式1)
そして、A(中性化速度係数)は、次式で求められる。ただし、fは標準養生供試体の材齢28日における圧縮強度である。なお、鉄筋コンクリート構造物のかぶり厚さが40mmのときのd値は、13.6mmにするとJASS5(2018年版)において定められている。
A=23.8(1÷f1/2-0.13) (式2)
【0034】
上記の式1及び式2より、コンクリートの圧縮強度が大きくなると、中性化速度係数が小さくなり、一定の中性化深さまで中性化するのに要する時間が大きくなることがわかる。
【0035】
前記コンクリートには、長期的な耐久性を高めるために、普通ポルトランドセメントを使用することが望ましい。配合する骨材は、例えば、石灰岩の砕石や密度の高い骨材を使用することが好ましい。コンクリートの密度は、例えば、2.3g/cm3を超える値とすることが好ましい。コンクリートの密度の上限値は特に限定されないが、例えば、6.0g/cm3以下とすることができる。
【0036】
前記放射線遮蔽体は、コンクリートに比して、放射線の遮蔽能力及び経時的な耐久性において優れる素材で構成する。例えば、放射線遮蔽体は、セラミクスを主たる成分として構成することが好ましい。セラミクスは、無機物を熱加工して得られるものであり、自然環境において化学的に安定である。放射線遮蔽体は、密度が大きいものを使用することが好ましい。例えば、放射線遮蔽体の密度は、2.3~6g/cm3の範囲にすることができる。セラミクスは、吸水率が低いものを使用することが好ましく、例えば、JIS A 1509-3:2014の煮沸法で測定した吸水率が0.1~3%であるものを使用することが好ましい。吸水率の低いものを使用することにより、放射線遮蔽体の経年変化をより抑えることができる。なお、放射線遮蔽体とコンクリートとを固定するには、ボルト及びナットなどの金物、モルタルなど任意の手段を利用すればよい。
【0037】
上記のセラミクスとしては、例えば、Fe2O3、Al2O3、ZrO2、ZrSiO4、及びMgSiO4からなる群より選ばれる一種以上の成分を含有する焼結体が挙げられる。これらの焼結体は、例えば、赤鉄鉱(ヘマタイト)の粉砕物、酸化アルミニウムの粉砕物、二酸化ジルコニウムの粉砕物、ジルコン鉱石の粉砕物、及びオリビン鉱石の粉砕物からなる群より選ばれる物質に対して、必要に応じて粘土などのバインダーを添加して、所定の温度で焼成することにより得ることができる。
【0038】
前記本体部、前記凸部を構成する第1層部の厚みは、特に限定されないが、輸送時や施工時の取り扱い安さを考慮して、例えば、10~180mmにすることができる。前記本体部、前記凸部を構成する第2層部の厚みは、特に限定されないが、例えば、120~250mmにすることができる。
【0039】
図1及び
図4等に示したように、前記凸部112、122、132、31には、少なくとも、隣接して配置されるパネルとの間に形成される目地51を覆う領域に第1層部21が配される形状である。この構成によれば、
図8及び
図10において、矢印A及び矢印Bで示したように、目地51の開口に沿って放射される放射線を第1層部21に確実に接触させて、第1層部21を形成する放射線遮蔽体により、放射線を減衰させることができる。
【0040】
前記凸部112、122、132、31においては、前記第1層部は、
図7及び
図9において矢印C及び矢印Dで示したように、前記凸部の付け根から、前記凸部の突出方向と反対側に延在するように配置される形状である。この構成によれば、例えば
図7又は
図9において矢印E又は矢印Fで示したように、目地に対して凸部112、122、132、31の付け根側に斜めに傾斜した角度で放射される放射線を凸部112、122、132、31の突出方向と反対側に延在する第1層部21に接触させて、放射線を減衰させることができる。前記第2層部22には、凸部の突出方向と反対側に延在する第1層部21を収容する凹部23が設けられる。
【0041】
前記凸部112、122、132、31においては、前記第1層部21は、前記凸部の付け根から、前記凸部の突出方向と反対側に延在するように配置される形状である。前記反対側とは、
図7における矢印Cの反対側の方向、又は
図9における矢印Dの反対側の方向である。この構成によれば、例えば
図7又は
図9において矢印G又は矢印Hで示したように、目地に対して、凸部112、122、132、31の先端側に斜め傾斜した角度で放射される放射線を凸部112、122、132、31の突出方向に延在する第1層部21に接触させて、放射線を減衰させることができる。
【0042】
本実施形態の放射線遮蔽壁1においては、
図8及び
図10等に示したように、一のパネルは、他のパネルに対して、目地に対応する隙間を開けて、配置される。一のパネルを構成するパネルと、他のパネルとを構成するパネルとは、直接的に接触しない。例えば、放射線遮蔽壁1を構築するに際して、一のパネルの隣に他のパネルを設置する際に、意図せず他のパネルが一のパネルに接触して、一のパネル又は他のパネルが損傷する事故が生じにくくしてある。また、放射線遮蔽壁1を構築した後において、例えば、地震により一のパネルと他のパネルとが接触しないように、隙間を設けてある。
【0043】
本実施形態の放射線遮蔽壁1においては、上述の通り、一のパネルの他端部と他のパネルの一端部との間に形成される目地は、他のパネルの一端部に設けられた凸部により遮蔽される。このため、目地において放射線を遮蔽する能力が不十分となることを効果的に防ぐことができる。
【0044】
本実施形態の放射線遮蔽壁1においては、一のパネルと他のパネルとの間に形成される目地には、隙間を塞ぐ目的で第1シール材52と第2シール材53とが設けられる。
図8及び
図10に示したように、第1シール材52は外部環境側に設けられる。第2シール材53は、第1シール材52とは間隔を開けて、内部側に設けられる。第1シール材52と、第2シール材53とは、目地の延在する上下左右方向に沿って延びる長尺な部材として構成される。
【0045】
第1シール材は、外部環境側に設けられるため、耐候性に優れる硬質素材で構成することが好ましい。耐候性に優れる硬質素材としては、例えば、EPDMなどの合成ゴムなどが挙げられる。第2シール材は、適宜の弾性素材で構成することができる。本実施形態では、第2シール材は、シリコーンゴムの発泡体で構成される。
【0046】
目地は、第1シール材52、及び第2シール材53でシールされているため、放射線遮蔽壁1の内部に風雨が吹き込むことが防止される。また、湿気を帯びた空気が放射線遮蔽壁の内部に侵入することを防止することができる。これにより、放射線遮蔽壁1の内側から放射線遮蔽壁1が風化したり、中性化したりしにくくなっている。
【0047】
上記の実施形態の放射線遮蔽壁1は、
図6に示したように、一のパネルを、他のパネルに対して、目地に対応する隙間を開けて、配置することで、一のパネルの他端部と他のパネルの一端部との間に形成される目地を、他のパネルの一端部に設けられた凸部により遮蔽するようにパネルを配置する工程を有する放射線遮蔽壁の製造方法により、得ることができる。
【0048】
例えば、
図6に示したように、第1パネル11の一端部と、他の第1パネル11の他端部との間に隙間を開けて、他の第1パネル11を、一の第1パネル11に隣接して配置する。このとき、一の第1パネル11の凸部112によって、上記隙間(目地)が背面から覆い隠されるように、他の第1パネル11を配置する。また、他の第1パネルを設置する際には、第1シール材52と第2シール材53とを、目地に設置する。
【0049】
図6に示したように、放射線遮蔽壁1の一方の角部は、第2パネル12の他端部に位置する屈曲部123と、第1パネル11の一端部との隙間を開けて、第2パネル12を、第1パネル11に隣接して配置することで構築される。このとき、第1パネル11の凸部112によって、上記隙間(目地)が背面から覆い隠されるように、第2パネル11を配置する。
【0050】
図6に示したように、放射線遮蔽壁1の他方の角部は、第1パネル11の他端部と、第3パネル13の一端部に位置する屈曲部133との隙間を開けて、第1パネル11を、第3パネル13に隣接して配置することで構築される。このとき、第3パネル13の凸部132によって、上記隙間(目地)が背面から覆い隠されるように、第1パネル11を配置する。
【0051】
図6の例では、放射線遮蔽壁1の短辺は、第2パネル12の一端部と第3パネル13の他端部とが隣接するようにして、構築する。このとき、第2パネル12の凸部122によって、上記隙間(目地)が背面から覆い隠されるように、第3パネル13を配置する。第2パネル12と第3パネル13との間に第1パネル11とが介在するように構成してもよい。
【0052】
放射線遮蔽壁1を高さ方向に構築する際も同様である。
図4に示したように、一のパネル11の上端部と、他の第1パネル11の下端部との間に隙間を開けて、他の第1パネル11を、一の第1パネル11に隣接して配置する。このとき、他の第1パネル11の凸部31によって、上記隙間(目地)が背面から覆い隠されるように、他の第1パネル11を配置する。また、他の第1パネルを設置する際には、同様に、第1シール材52と第2シール材53とを、目地に設置する。第2パネル12、第3パネル13の場合も同様にして、放射線遮蔽壁を高さ方向に構築することができる。
【0053】
放射線遮蔽壁1が地面に接する部分には、上端部に凹部が設けられており、外部環境側に第1層部21が設けられており、第1層部21に接するように第2層部22が設けられた土台8が配置される。土台の凹部には、上記凸部31が収容され、土台と、土台の上に配置されたパネルとの間の目地を背面側から遮蔽する。土台の上端部に凸部を設けて、パネルの下端部に凹部を設けてもよい。この場合、凸部は、上記第1層部21と上記第2層部22とで構成する。
【0054】
放射線遮蔽壁1の上端部には、
図4に示したように、笠木9を配置する。笠木9は、放射線遮蔽壁1の上端の角部を構成する。笠木9は、下端部に第1層部21と第2層部22とからなる凸部31を備える。笠木9の上端部は、第2層部22が放射線遮蔽壁1の内側に向かって延びる屈曲部91とされる。これに替えて、笠木の下端部には、パネルの上端部に設けられた凸部を収容する凹部としてもよい。
【0055】
図4に示したように、各パネルの第2層部22と梁材61とは、固定具55により連結される。固定具55の一端部は第2層部22に埋め込まれ、固定具55の他端部は梁材61に打ちこまれる。
【0056】
図4に示したように、笠木9と、天井の躯体56とは、固定具57により連結される。固定具57の一端部は笠木9の第2層部22に埋め込まれ、固定具57の他端部は躯体56に打ちこまれる。
【0057】
[変形例]
凸部は、パネルの一端部、又は他端部のいずれに設けてもよい。
図11の例では、一のパネル11bの他端部に凸部112bが設けられる。他のパネル11bの一端部は、本体111bの延在方向に延びる平坦な形状とされる。一のパネル11bと他のパネル11bとの間に形成される目地を背面から上記凸部112bで遮蔽するように、凸部112bが設けられる。
図12の例では、一のパネル11bの他端部に凸部112bが設けられる。他のパネル13bの一端部は、本体131bの延在方向に交差する方向に延びる屈曲部133bとされる。一のパネル11bの一端部と他のパネル13bの屈曲部133bとの間に形成される目地を背面から上記凸部112bで遮蔽するように、凸部112bが設けられる。
【0058】
凸部は、パネルの上端部、又は下端部のいずれに設けてもよい。
図13の例では、パネル111bの上端部に凸部31bが設けられる。笠木9bの下端部は、前記凸部31bを受け入れる凹部32bが設けられた形状である。パネル111bと笠木との間に形成される目地を背面から前記凸部31bで遮蔽するように、凸部31bが設けられる。
【0059】
上記の実施形態においては、凸部112における第2層22の厚みは、本体22の厚みよりも小さく構成される。凸部112における第2層22の厚みは、本体22の厚みと少なくとも同等以上としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 放射線遮蔽壁
11 第1パネル
12 第2パネル
111 本体
121 本体
131 本体
112 凸部
122 凸部
132 凸部
31 凸部
112b 凸部
31b 凸部
21 第1層部
22 第2層部