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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105976
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】雌端子および端子ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/187 20060101AFI20240731BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20240731BHJP
   H01R 13/193 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01R13/187 B
H01R4/02 C
H01R13/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010005
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
(72)【発明者】
【氏名】木村 章夫
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB06
5E085CC03
5E085DD03
5E085DD09
5E085EE05
5E085EE13
5E085HH12
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】大電流化への対応が必要な場合でも、雌端子の大型化を抑制しつつ、接点ばね部の製造時の変形リスクも抑制できる、雌端子を開示する。
【解決手段】雌端子10が、第1金属平板16のプレス加工品であって、他部材に導通接続される接続部18と中空の筒状導体部20とを有する本体部22と、第1金属平板16よりも板厚が薄い第2金属平板24のプレス加工品であって、筒状導体部20に導通可能に組み付けられている接点形成金具26と、を備え、筒状導体部20は、一端側に向かって開口する雄端子挿入口32を有し、接点形成金具26は、筒状導体部20の壁部36a,36b,38,40の内面に組み付けられる枠体部62と、枠体部62に保持されて枠体部62の内方に向かって突出して雄端子挿入口32から挿入される雄端子12に圧接される接点ばね部64とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属平板のプレス加工品であって、他部材に導通接続される接続部と中空の筒状導体部とを有する本体部と、
前記第1金属平板よりも板厚が薄い第2金属平板のプレス加工品であって、前記筒状導体部に導通可能に組み付けられている接点形成金具と、を備え、
前記筒状導体部は、一端側に向かって開口する雄端子挿入口を有し、
前記接点形成金具は、前記筒状導体部の壁部の内面に組み付けられる枠体部と、前記枠体部に保持されて前記枠体部の内方に向かって突出して前記雄端子挿入口から挿入される雄端子に圧接される接点ばね部とを有する、
雌端子。
【請求項2】
前記接点形成金具が溶接部を有しており、前記溶接部が前記筒状導体部の被溶接部に対して溶接されている、請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記接点形成金具は、前記筒状導体部の前記一端側の前記雄端子挿入口から他端側に向かって挿入されて前記筒状導体部に組み付けられており、
前記接点形成金具の前記枠体部は、前記筒状導体部の前記雄端子挿入口側の端面に重ね合わされる当接縁部を有しており、
前記当接縁部の前記端面への当接により前記接点形成金具の前記筒状導体部への挿入端が規定されており、
前記当接縁部が前記端面に溶接されつつ、前記当接縁部によって前記溶接部が構成されているとともに、前記端面によって前記被溶接部が構成されている、請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記筒状導体部は、一対の側壁と前記一対の側壁によって連結された上壁および下壁とを有する矩形筒状を有しており、
前記接点形成金具の前記枠体部は、前記筒状導体部の前記一対の側壁のそれぞれに重ね合わされる一対の側部と、前記筒状導体部の前記上壁および前記下壁のそれぞれに重ね合わされる上部および下部を有する矩形枠状を有しており、
前記枠体部の前記上部および前記下部の少なくとも一方を部分的に前記内方に切り起こすことにより、片持ち梁状の前記接点ばね部が構成されている、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項5】
前記接点形成金具は、前記筒状導体部の前記一端側の前記雄端子挿入口から他端側に向かって挿入されて前記筒状導体部に組み付けられており、
前記筒状導体部の前記一対の側壁および前記枠体部の前記一対の側部の一方は、それぞれロック穴を有し、
前記筒状導体部の前記一対の側壁および前記枠体部の前記一対の側部の他方は、それぞれ前記ロック穴に嵌合されるロック爪を有し、
前記ロック爪が弾性変形することにより前記接点形成金具の前記他端側への挿入が許容され、前記ロック爪が弾性復帰して前記ロック穴に嵌合されることにより、前記接点形成金具が前記筒状導体部への組み付け状態に保持される、請求項4に記載の雌端子。
【請求項6】
前記筒状導体部の他端側には、後方開口窓が設けられており、
前記接点ばね部は、第1接点ばね部と第2接点ばね部とを含み、
前記枠体部の前記上部および前記下部は、前記一端側で前記枠体部に保持されつつ前記他端側に向かって前記内方に突出して片持ち梁状に延び出した前記第1接点ばね部と前記第2接点ばね部とを上下一対で有しており、
前記第1接点ばね部および前記第2接点ばね部のそれぞれの突出端部を挟み込むように配置されるとともに前記後方開口窓を挿通可能な大きさを有する接圧付与ばねをさらに備え、
前記第1接点ばね部と前記第2接点ばね部の対向面間への前記雄端子の圧入に伴って前記接圧付与ばねにより前記それぞれの突出端部が相互に接近する方向に付勢されて、前記雄端子に対して前記第1接点ばね部と前記第2接点ばね部とが圧接される、請求項4に記載の雌端子。
【請求項7】
前記接圧付与ばねが、矩形平板状の連結板部と、前記連結板部の両側縁部から相互に接近する方向に突出するそれぞれ矩形平板状の一対の挟持板部とを有するクリップばねによって構成されており、前記雄端子の挿入時において、前記クリップばねの前記一対の挟持板部間に前記第1接点ばね部の前記突出端部と前記第2接点ばね部の前記突出端部とが挟持されている、請求項6に記載の雌端子。
【請求項8】
前記接点ばね部は、前記雄端子の板幅方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ配置された複数の前記第1接点ばね部と複数の前記第2接点ばね部とを含み、
前記クリップばねが、前記接点ばね部に対応して、前記板幅方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ配置された複数の前記一対の挟持板部を有し、
前記雄端子の挿入時において、複数の前記第1接点ばね部のそれぞれの前記突出端部と複数の前記第2接点ばね部のそれぞれの前記突出端部とが、それぞれ対で、複数の前記一対の挟持板部の各々により各別に挟持されている、請求項7に記載の雌端子。
【請求項9】
雌端子と、前記雌端子に接続される雄端子とを備えた端子ユニットであって、
前記雌端子が、請求項1または請求項2に記載の雌端子である、端子ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌端子および端子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属平板をプレス加工して形成される雌端子が提案されている。雌端子の基端側には、一対の平板部を重ね合わせて構成された電線接続部が設けられており、雌端子の先端側には、平タブ形状の雄端子が挿入される雄端子装着筒部が設けられており、雌端子と雄端子による端子ユニットとして提供されている。そして、雄端子装着筒部は、各平板部から重ね合わせ方向の反対側に突出した後に先端側に向かって突出するL字形状の一対の支持板部を有している。さらに、雄端子装着筒部は、一対の支持板部の突出端部に半円弧状の湾曲部を介して片持ち梁状に連結されて基端側に向かって突出する一対の接点ばね部も有している。一対の接点ばね部は、雄端子挿入隙間を隔てて対向配置されており、一対の接点ばね部の先端部には、別体の接圧付与ばねが装着されている。この接圧付与ばねにより、一対の接点ばね部の雄端子への接圧が付加されて、安定した雌雄端子の接続状態を保持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-83287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の雌端子は、金属平板をプレス加工して形成していることから、接点ばね部も電流容量に応じた厚さが必要となる。それゆえ、大電流を流す必要がある場合には、接点ばね部の板厚も厚くなる。その結果、接点ばね部の雄端子への追従性を確保するためには、接点ばね部を長くすることで対応せざるを得ず、雌端子が大型化する傾向がある。また、接点ばね部は、側方に開放されていることから、雌端子の製造段階で他部材や工具に接触しやすく、変形するおそれもあった。
【0005】
そこで、大電流化への対応が必要な場合でも、雌端子の大型化を抑制しつつ、接点ばね部の製造時の変形リスクも抑制できる、雌端子および端子ユニットを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の雌端子は、第1金属平板のプレス加工品であって、他部材に導通接続される接続部と中空の筒状導体部とを有する本体部と、前記第1金属平板よりも板厚が薄い第2金属平板のプレス加工品であって、前記筒状導体部に導通可能に組み付けられている接点形成金具と、を備え、前記筒状導体部は、一端側に向かって開口する雄端子挿入口を有し、前記接点形成金具は、前記筒状導体部の壁部の内面に組み付けられる枠体部と、前記枠体部に保持されて前記枠体部の内方に向かって突出して前記雄端子挿入口から挿入される雄端子に圧接される接点ばね部とを有する、ものである。
【0007】
本開示の端子ユニットは、雌端子と、前記雌端子に接続される雄端子を備えた端子ユニットであって、前記雌端子が、本開示に記載の雌端子である、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、大電流化への対応が必要な場合でも、雌端子の大型化を抑制しつつ、接点ばね部の製造時の変形リスクも抑制できる、雌端子および端子ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る雌端子を雄端子との接続状態で示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された雌端子における平面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III断面図である。
図4図4は、図1に示された雌端子を雄端子との非接続状態で示す斜視図である。
図5図5は、図4に示された雌端子における縦断面図であって、図3に対応する図である。
図6図6は、図5におけるVI-VI断面図である。
図7図7は、図1に示された雌端子における分解斜視図である。
図8図8は、図1に示された雌端子を構成する接点形成金具を示す斜視図である。
図9図9は、図1に示された雌端子の本体部を構成する第1金属平板をプレス加工前の状態で示す平面図である。
図10図10は、図8に示された接点形成金具を構成する第2金属平板をプレス加工前の状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の雌端子は、
(1)第1金属平板のプレス加工品であって、他部材に導通接続される接続部と中空の筒状導体部とを有する本体部と、前記第1金属平板よりも板厚が薄い第2金属平板のプレス加工品であって、前記筒状導体部に導通可能に組み付けられている接点形成金具と、を備え、前記筒状導体部は、一端側に向かって開口する雄端子挿入口を有し、前記接点形成金具は、前記筒状導体部の壁部の内面に組み付けられる枠体部と、前記枠体部に保持されて前記枠体部の内方に向かって突出して前記雄端子挿入口から挿入される雄端子に圧接される接点ばね部とを有する、ものである。
【0011】
本開示の雌端子によれば、他部材との接続部と中空の筒状導体部を有する本体部と、本体部の筒状導体部に導通可能に組み付けられる接点形成金具とを、別部品として構成し、さらに、接点形成金具を、本体部を形成する第1金属平板よりも薄い板厚を有する第2金属平板を用いて形成している。これにより、大電流化への対応が必要な場合には、板厚寸法の大きな本体部において通電容量を確保しつつ、接点ばね部は本体部よりも薄い板厚で設けることができる。それゆえ、大電流化への対応が必要な場合でも、従来構造に比して、接点ばね部の雄端子への追従性を得るために、接点ばね部の長さを大きくする必要性を低減でき、雌端子の大型化を抑制しつつ大電流化への対応が可能となる。
【0012】
加えて、接点形成金具は、筒状導体部の壁部の内面に組み付けられる枠体部と、雄端子に圧接される接点ばね部を有しており、接点ばね部が枠体部に保持されて枠体部の内方に向かって突出するように形成されている。これにより、接点形成金具を本体部の筒状導体部に組み付ける際にも、枠体部を保持して組付作業を行い得ることから、組付作業を容易に行い得る。また、枠体部によって組付作業時に他部材や工具が接点ばね部に干渉するリスクも低減できることから、従来構造に比して、接点ばね部の製造時の変形リスクも抑制することができる。
【0013】
(2)上記(1)において、前記接点形成金具が溶接部を有しており、前記溶接部が前記筒状導体部の被溶接部に対して溶接されている、ことが好ましい。接点形成金具の溶接部が筒状導体部の被溶接部に対して溶接されることにより、接点形成金具と筒状導体部の間の電気的抵抗を低減することができ、接点形成金具と本体部とのより安定した導通状態を確保できるからである。
【0014】
(3)上記(2)において、前記接点形成金具は、前記筒状導体部の前記一端側の前記雄端子挿入口から他端側に向かって挿入されて前記筒状導体部に組み付けられており、前記接点形成金具の前記枠体部は、前記筒状導体部の前記雄端子挿入口側の端面に重ね合わされる当接縁部を有しており、前記当接縁部の前記端面への当接により前記接点形成金具の前記筒状導体部への挿入端が規定されており、前記当接縁部が前記端面に溶接されつつ、前記当接縁部によって前記溶接部が構成されているとともに、前記端面によって前記被溶接部が構成されている、ことが好ましい。
【0015】
接点形成金具が筒状導体部の雄端子挿入口から他端側に向かって挿入されて筒状導体部に組み付けられるようになっていることから、組付作業性が良好である。しかも、接点形成金具の当接縁部を筒状導体部の雄端子挿入口側の端面に重ね合わせて当接させることにより、接点形成金具の筒状導体部への挿入端が規定されることから、組み付け作業を一層容易に行うことができる。
【0016】
しかも、当接縁部が端面に溶接されており、溶接部および被溶接部が構成されていることから、たとえば、筒状導体部の雄端子挿入口を上方に配向して上方から当接縁部(溶接部)を端面(被溶接部)に重ね合わせ、端子形成金具の自重により溶接部を被溶接部に密接させた状態で溶接を行うことも可能となる。これにより、接点形成金具の筒状導体部の溶接作業を安定的に行うことが可能となり、接点形成金具と本体部とのより安定した導通状態を有利に確保できる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記筒状導体部は、一対の側壁と前記一対の側壁によって連結された上壁および下壁とを有する矩形筒状を有しており、前記接点形成金具の前記枠体部は、前記筒状導体部の前記一対の側壁のそれぞれに重ね合わされる一対の側部と、前記筒状導体部の前記上壁および前記下壁のそれぞれに重ね合わされる上部および下部を有する矩形枠状を有しており、前記枠体部の前記上部および前記下部の少なくとも一方を部分的に前記内方に切り起こすことにより、片持ち梁状の前記接点ばね部が構成されている、ことが好ましい。
【0018】
筒状導体部が矩形筒状に形成され、接点形成金具が矩形枠状に形成されていることから、それらの剛性を有利に確保することができる。しかも、接点形成金具の枠体部の上部および下部の少なくとも一方を部分的に枠体部の内方に向かって切り起こすことにより、片持ち梁状の接点ばね部が構成されていることから、接点ばね部を歩留りよく容易に製造することができる。さらに、上部や下部の内方への切り起こし長さを調整することで、接点ばね部のばね剛性や撓み量を所望の値に容易に設定することができ、製造性に優れている。
【0019】
なお、より好ましくは、上部および下部の両方が部分的に内方に切り起こされて、上下一対の接点ばね部が対向して形成される。これにより、上下一対の接点ばね部を雄端子の上下両面に接触させることができ、雌雄端子間の接続安定性を向上させることができる。
【0020】
(5)上記(4)において、前記接点形成金具は、前記筒状導体部の前記一端側の前記雄端子挿入口から他端側に向かって挿入されて前記筒状導体部に組み付けられており、前記筒状導体部の前記一対の側壁および前記枠体部の前記一対の側部の一方は、それぞれロック穴を有し、前記筒状導体部の前記一対の側壁および前記枠体部の前記一対の側部の他方は、それぞれ前記ロック穴に嵌合されるロック爪を有し、前記ロック爪が弾性変形することにより前記接点形成金具の前記他端側への挿入が許容され、前記ロック爪が弾性復帰して前記ロック穴に嵌合されることにより、前記接点形成金具が前記筒状導体部への組み付け状態に保持される、ことが好ましい。
【0021】
相互に対向配置された一対の側壁と一対の側部をうまく利用して、接点形成金具を筒状導体部への組み付け状態に保持させるロック穴とロック爪を設けることができる。これにより、雌端子の大型化を伴うことなく接点形成金具と筒状導体部の組み付け安定性を保持することができる。なお、ロック穴とロック爪は、接点形成金具の雄端子挿入口への移動を阻止するように嵌合されるものであってもよいし、接点形成金具の他端側への挿入端を規定するように嵌合されるものであってもよいし、その両方を含むように複数形成されてもよい。
【0022】
(6)上記(4)または(5)において、前記筒状導体部の他端側には、後方開口窓が設けられており、前記接点ばね部は、第1接点ばね部と第2接点ばね部とを含み、前記枠体部の前記上部および前記下部は、前記一端側で前記枠体部に保持されつつ前記他端側に向かって前記内方に突出して片持ち梁状に延び出した前記第1接点ばね部と前記第2接点ばね部とを上下一対で有しており、前記第1接点ばね部および前記第2接点ばね部のそれぞれの突出端部を挟み込むように配置されるとともに前記後方開口窓を挿通可能な大きさを有する接圧付与ばねをさらに備え、前記第1接点ばね部と前記第2接点ばね部の対向面間への前記雄端子の圧入に伴って前記接圧付与ばねにより前記それぞれの突出端部が相互に接近する方向に付勢されて、前記雄端子に対して前記第1接点ばね部と前記第2接点ばね部とが圧接される、ことが好ましい。
【0023】
接圧付与ばねにより第1接点ばね部と第2接点ばね部の突出端部が相互に接近する方向に付勢されており、第1接点ばね部と第2接点ばね部の間に圧入される雄端子に対して第1接点ばね部と第2接点ばね部が高い圧接力により圧接される。これにより、雌端子の小型化を有利に図りつつ、接点ばね部の可撓性・追従性を確保しつつ雌雄端子間の接圧を有利に確保することができる。さらに、接圧付与ばねが後方開口窓を挿通可能な大きさを有していることから、後方開口窓を挿通して第1接点ばね部と第2接点ばね部の突出端部に対して、突出方向の前方側から接圧付与ばねを配置することができる。これにより、第1接点ばね部と第2接点ばね部の突出方向に直交する方向である側方側からしか組み付けることができなかった従来構造に比して、雌端子の組付性が改善されている。
【0024】
(7)上記(6)において、前記接圧付与ばねが、矩形平板状の連結板部と、前記連結板部の両側縁部から相互に接近する方向に突出するそれぞれ矩形平板状の一対の挟持板部とを有するクリップばねによって構成されており、前記雄端子の挿入時において、前記クリップばねの前記一対の挟持板部間に前記第1接点ばね部の前記突出端部と前記第2接点ばね部の前記突出端部とが挟持されている、ことが好ましい。接圧付与ばねとしてクリップばねを採用したことにより、第1接点ばね部と第2接点ばね部の突出端部への配置を可能にしつつ、雄端子の挿入時において第1ばね片と第2ばね片の突出端部を相互に接近する方向に付勢することのできる接圧付与ばねをコンパクト且つ簡単な構造で構成できる。
【0025】
(8)上記(7)において、前記接点ばね部は、前記雄端子の板幅方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ配置された複数の前記第1接点ばね部と複数の前記第2接点ばね部とを含み、前記クリップばねが、前記接点ばね部に対応して、前記板幅方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ配置された複数の前記一対の挟持板部を有し、前記雄端子の挿入時において、複数の前記第1接点ばね部のそれぞれの前記突出端部と複数の前記第2接点ばね部のそれぞれの前記突出端部とが、それぞれ対で、複数の前記一対の挟持板部の各々により各別に挟持されている、ことが好ましい。雄端子の板幅方向に離隔した複数箇所に配置された複数の第1接点ばね部と第2接点ばね部で雄端子を挟持できる。しかも雄端子の挿入時において、第1接点ばね部と第2接点ばね部のペアは、板幅方向に離隔して配置された各別の一対の挟持板部により挟持されている。これにより、雄端子の回転変位への雌端子の安定した追従性を有利に実現できる。
【0026】
本開示の端子ユニットは、
(9)雌端子と、前記雌端子に接続される雄端子とを備えた端子ユニットであって、前記雌端子が、上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の雌端子である、ものである。本開示の端子ユニットでは、雌端子が上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の態様で構成されていることから、上記(1)から(8)のいずれか1つで得られるものと同様の作用効果を奏することができる、端子ユニットを提供することができる。
【0027】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の雌端子および端子ユニットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の雌端子10および、雌端子10と雌端子10に接続される雄端子12とを備えた端子ユニット14について、図1から図10を用いて説明する。雌端子10は、例えばバッテリ等の電源側の部材とモータ等の負荷側の部材との間を接続する端子である。そして、電源側と負荷側の一方に設けられる雌端子10と、電源側と負荷側の他方に設けられる雄端子12とが相互に接触して導通状態とされることで、バッテリ等の電源からモータ等の負荷へ電力が供給されるようになっている。なお、雌端子10は任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは図3中の上方、下方とは図3中の下方、前方とは図2中の左方、後方とは図2中の右方、左方とは図2中の上方、右方とは図2中の下方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0029】
<雌端子10>
雌端子10は、他部材(例えば、バッテリ等の電源側の部材)に導通接続される接続部18と中空の筒状導体部20を有する本体部22を備えている。本体部22は、第1金属平板16(図9参照)のプレス加工品である。また、雌端子10は、筒状導体部20に導通可能に組み付けられている接点形成金具26を備えている。接点形成金具26は、第1金属平板16よりも板厚が薄い第2金属平板24(図10参照)のプレス加工品である。
【0030】
<雄端子12>
雄端子12は、全体として板状をなすタブ端子である。雄端子12は、平面視において略矩形状を有しており、所定の幅方向寸法(左右方向寸法)および厚さ方向寸法(上下方向寸法)を有して、前後方向に略ストレートに延びている。実施形態1では、雄端子12が、厚さ方向寸法に比べて幅方向寸法の方が大きな横長の形状とされている。なお、雄端子12において、雌端子10への挿入方向前方側の端部分(後端部分)は、先細形状である。雄端子12は、導電性を有しており、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属により形成される。雄端子12の基端部分(前端部分)には、例えばボルト挿通孔が設けられて、図示しないボルトにより雄端子12が他部材(例えば、モータ等の負荷側の部材)に固定される。あるいは、ボルト挿通孔が設けられない場合、雄端子12の基端部分には、負荷側の電線等が圧着等により固定される。
【0031】
<接続部18>
接続部18は全体として略板状であり、雌端子10が図1から図3に示されるように配置された状態では、接続部18は全体として前後方向に延びており、側面視(左右方向視)において上下方向寸法より前後方向寸法の方が大きい略矩形状とされている。接続部18の後端部には、板厚方向(左右方向)に貫通するボルト挿通孔28が形成されており、例えばボルト挿通孔28に挿通される図示しないボルトにより雌端子10が他部材(例えば、バッテリ等の電源側の部材)に固定され得る。例えば、接続部18には、他部材として図示しない電線の端末やバスバー等が接続され得る。
【0032】
なお、上述のように、接続部18と筒状導体部20を有する本体部22は、単一の金属平板である第1金属平板16のプレス加工品であり、接続部18は、筒状導体部20と同じ板厚寸法を有している。そして、接続部18の前方に筒状導体部20が一体的に連結されて設けられている。換言すれば、筒状導体部20から接続部18が後方に延び出しており、実施形態1では、筒状導体部20を構成する後述する一対の側壁36,36のうち左側の側壁(左側壁36a)から後方に延び出している。図9にも示されるように、接続部18と筒状導体部20(左側壁36a)との連結部分(接続部18の前端部分)には、接続部18および左側壁36aよりも幅方向寸法(上下方向寸法)が小さくされた狭幅部30が設けられている。これにより、第1金属平板16のプレス加工を容易に行うことができるようになっている。
【0033】
<筒状導体部20>
筒状導体部20は全体として前後方向両側に開口する略筒状であり、筒状導体部20の長さ方向の一端側(前端側)に向かって開口する雄端子挿入口32と、長さ方向の他端側(後端側)に向かって開口する後方開口窓34とを有している。実施形態1では筒状導体部20が略横長の矩形筒形状とされており、一対の側壁36,36(左側壁36aおよび右側壁36b)と、これら左右の側壁36a,36bによって連結された上壁38と下壁40とを有している。そして、左右の側壁36a,36bの上下方向寸法に比して上壁38および下壁40の左右方向寸法の方が大きくされることで、筒状導体部20が略横長の矩形筒形状とされている。筒状導体部20を構成する各壁部(左右の側壁36a,36b、上壁38および下壁40)はそれぞれ略矩形板状である。実施形態1では、上壁38および下壁40における雄端子挿入口32側の端面である各前端面41において被溶接部が構成されており、接点形成金具26における後述する各当接縁部88により構成される溶接部が溶接されるようになっている。
【0034】
実施形態1では、上壁38の右端部における前後方向中間部分に、右側壁36b側に突出する嵌合凸部42が設けられているとともに、右側壁36bの上端部における前後方向中間部分に、上壁38側に開口する嵌合凹部44が設けられている。嵌合凸部42の長さ寸法(前後方向寸法)は、嵌合凹部44の長さ寸法と略等しくされている。これにより、第1金属平板16にプレス加工等を施して筒状導体部20を構成する際に、例えば上壁38における嵌合凸部42を右側壁36bにおける嵌合凹部44に対して略圧入状態で嵌め入れることで、筒状導体部20の形成時において上壁38と右側壁36bとが意図せず離隔することが防止され得る。
【0035】
第1金属平板16が折り曲げられて筒状導体部20が構成された状態において、左右の側壁36a,36bは左右方向で相互に対向している。そして、図6にも示されるように、筒状導体部20の内面を構成する左右の側壁36a,36bの内面における後端部分には、対向方向内方(左右方向内方)に突出する位置決め突部46が設けられている。また、左右の側壁36a,36bの外面において各位置決め突部46と対応する位置には外方に開口する凹部48が形成されている。さらに、左右の側壁36a,36bにおいて、各位置決め突部46(各凹部48)よりも前方には、左右の側壁36a,36bを厚さ方向(左右方向)で貫通するロック穴50が形成されている。各ロック穴50は、側面視(左右方向視)において略矩形であり、所定の大きさの前後方向寸法と上下方向寸法を有している。なお、左右の側壁36a,36bの前端部には、前方に突出する当接部52が設けられており、雌端子10と雄端子12との接続時において、各当接部52が、雄端子12を保持する図示しないハウジングに当接するようになっている。
【0036】
同様に、筒状導体部20が構成された状態において、上壁38および下壁40は上下方向で相互に対向している。そして、上壁38および下壁40の外面における後端部分には、対向方向外方(上下方向外方)に突出する係止凸部54が設けられている。各位置決め突部46の後端面および各係止凸部54の前端面は、それぞれ前後方向に対して垂直な方向に広がる垂直面56とされている。また、筒状導体部20の内面を構成する上壁38および下壁40の内面において各係止凸部54と対応する位置には、内方に開口する凹部58が形成されている。
【0037】
<本体部22>
プレス加工を行う前の第1金属平板16を図9に示す。第1金属平板16における左右の側壁36a,36bに対して、筒状導体部20の外面側となる図9中の紙面奥側に各凹部48が形成されることで、筒状導体部20の内面側となる図9中の紙面手前側に各位置決め突部46が突出して形成されている。また、第1金属平板16における上壁38および下壁40に対して、筒状導体部20の内面側となる図9中の紙面手前側に各凹部58が形成されることで、筒状導体部20の外面側となる図9中の紙面奥側に各係止凸部54が突出して形成されている。
【0038】
図9に示されるように、第1金属平板16のプレス加工前の状態では、筒状導体部20を構成する上壁38、左側壁36a、下壁40および右側壁36bが図9中の上下方向で連続して設けられているとともに、左側壁36aからは接続部18が、狭幅部30を介して図9中の右方に延び出している。そして、図9中に二点鎖線で示されるように、上壁38と左側壁36a、左側壁36aと下壁40、下壁40と右側壁36bとの間には、それぞれ折曲部60が設けられている。各折曲部60を折り曲げて、嵌合凸部42と嵌合凹部44とを嵌合させることによって、本体部22の前方部分において筒状導体部20が構成されるようになっている。本体部22を構成する第1金属平板16の金属の材質は限定されるものではないが、導電性に優れる金属が採用可能であり、例えば純銅が採用され得る。
【0039】
<接点形成金具26>
接点形成金具26は、筒状導体部20の壁部(左右の側壁36a,36b、上壁38および下壁40)の内面に組み付けられる枠体部62を有している。また、接点形成金具26は、枠体部62に保持されて枠体部62の内方に向かって突出して雄端子挿入口32から挿入される雄端子12に圧接される接点ばね部64を有している。実施形態1では、接点ばね部64が、枠体部62の上方部分から枠体部62の内方に向かって突出する第1接点ばね部66と、枠体部62の下方部分から枠体部62の内方に向かって突出する第2接点ばね部68とを含んでいる。特に、実施形態1では、接点形成金具26が略上下対称形状とされており、上下の向きを区別することなく筒状導体部20に組み付けられ得る。
【0040】
<枠体部62>
図8に示されるように、接点形成金具26の枠体部62は、全体として矩形枠状である。すなわち、枠体部62は、筒状導体部20の各側壁36(左側壁36aおよび右側壁36b)に組み付けられる一対の側部70,70(左側部70aおよび右側部70b)と、上壁38に重ね合わされる上部72と、下壁40に重ね合わされる下部74とを有している。そして、左側部70aおよび右側部70bが、それぞれ上部72および下部74により連結されている。これにより、枠体部62は前後方向両側に開口しており、前方開口部75aと後方開口部75bとが設けられている。
【0041】
これら上部72および下部74の前後方向中間部分には、それぞれ厚さ方向(上下方向)で貫通する略矩形の貫通窓部76が形成されており、各貫通窓部76が上部72および下部74の左右方向全長にわたって形成されている。これにより、上部72および下部74は各貫通窓部76により前後両側で分断されており、上部72および下部74が、それぞれ各側部70(左側部70aおよび右側部70b)を前方部分で接続する前方接続部78と、後方部分で接続する後方接続部80とを含んで構成されている。換言すれば、左側部70aおよび右側部70bが、前方部分において上部72および下部74における各前方接続部78により接続されているとともに、後方部分において上部72および下部74における各後方接続部80により接続されている。
【0042】
第2金属平板24におけるプレス加工前の状態を図10に示す。そして、図8にも示されるように、実施形態1では、第2金属平板24を折り曲げて接点形成金具26を形成する際に相互に突き合わされる部分が、左側部70aに設けられている。すなわち、上部72における前方接続部78および後方接続部80の左端部には、下方に延び出す第1左側部82aが設けられているとともに、下部74における前方接続部78および後方接続部80の右端部には、上方に延び出す第2左側部82bが設けられている。これら第1左側部82aおよび第2左側部82bが上下方向で相互に突き合わされることにより、左側部70aが構成されている。特に、実施形態1では、第1左側部82aの下端に下方に開口する係合凹部84が設けられているとともに、第2左側部82bの上端に上方に突出する係合凸部86が設けられている。これにより、接点形成金具26の形成時において、例えば係合凸部86を外側から叩いて係合凹部84に嵌め入れることにより左側部70aが構成されて、第1左側部82aと第2左側部82bとが意図せず離隔することが防止され得る。
【0043】
また、実施形態1では、接点形成金具26が、筒状導体部20における雄端子挿入口32側の端面(各前端面41)に重ね合わされる当接縁部88を有している。この当接縁部88は、接点形成金具26における上部72および下部74における各前方接続部78に設けられており、各前方接続部78から上下方向外方に延び出して構成されている。そして、後述するように筒状導体部20と接点形成金具26とを溶接する際には、相互に重ね合わされる各前端面41と各当接縁部88とが溶接されるようになっており、各当接縁部88により溶接部が構成されているとともに、各前端面41により被溶接部が構成されている。なお、これら各前端面41と各当接縁部88との溶接方法は限定されるものではないが、実施形態1では、レーザー溶接により溶接されている。
【0044】
さらに、接点形成金具26における左右の側部70a,70bの後端部において、上下方向中央部分には、後方に開口するとともに各側部70a,70bを厚さ方向(左右方向)で貫通する切欠部90が設けられている。また、これら左右の側部70a,70bの前方部分には、各側部70a,70bを厚さ方向で貫通する略矩形の貫通孔92が形成されているとともに、各貫通孔92の内周面における後方部分には前方に突出するロック爪94が設けられている。各ロック爪94の周囲の三方(上下方向両側および前方)には空間(隙間)が設けられており、各ロック爪94が左右方向で弾性変形可能とされている。図8等に示されているように、接点形成金具26の組立状態では、各ロック爪94が前方になるにつれて次第に左右方向外方へと傾斜する方向に突出している。なお、上述のように、左側部70aは上下の第1左側部82aと第2左側部82bにより構成されていることから、接点形成金具26を構成する第2金属平板24の折り曲げ前には、左側の貫通孔92およびロック爪94も分断されている。すなわち、第1左側部82aと第2左側部82bとを突き合わせて左側部70aを構成することで左側の貫通孔92およびロック爪94が形成されるようになっている。
【0045】
<接点ばね部64(第1接点ばね部66および第2接点ばね部68)>
上部72および下部74のそれぞれにおいて、各貫通窓部76の内部における各前方接続部78の後端から第1接点ばね部66および第2接点ばね部68が後方に向かって片持ち梁状に延び出している。すなわち、第1接点ばね部66および第2接点ばね部68は、一端側である前方側で枠体部62における各前方接続部78に保持されて他端側である後方側に向かって内方に突出して片持ち梁状に延び出している。これにより、第1接点ばね部66および第2接点ばね部68の周囲の三方(左右方向両側および後方)には空間(隙間)が設けられており、第1接点ばね部66および第2接点ばね部68がそれぞれ前端における各前方接続部78との接続部分を基点として、上下方向で弾性変形可能とされている。
【0046】
図8等に示されているように、接点形成金具26の組立状態では、第1接点ばね部66および第2接点ばね部68は後方になるにつれて相互に接近する方向(上下方向内方)に傾斜している。これにより、これら第1接点ばね部66と第2接点ばね部68とは上下方向で対向している。そして、第1接点ばね部66は、第2接点ばね部68への対向面(下面)に雄端子12への第1接点96を有しているとともに、第2接点ばね部68は、第1接点ばね部66への対向面(上面)に雄端子12への第2接点98を有している。特に、図5にも示されるように、雌端子10に対する雄端子12の挿入前の状態では、第1および第2接点ばね部66,68のそれぞれの突出端部99が比較的接近しており、第1接点96と第2接点98とが相互に当接するか、僅かに離隔して上下方向で対向している。
【0047】
実施形態1では、第1接点ばね部66および第2接点ばね部68の各突出先端部分に屈曲部100が設けられており、各屈曲部100の形成位置において、上記第1接点96および第2接点98が設けられている。これら第1接点96および第2接点98は、図3図5に示す縦断面において湾曲円弧状に形成されており、第1および第2接点ばね部66,68の左右方向中央部分において所定の左右方向寸法を有しているとともに、第1および第2接点ばね部66,68において屈曲部100を挟んで前後方向両側にまたがるように設けられている。このような第1および第2接点96,98は、平面視(上下方向の投影)において、左右方向寸法に比して、雄端子12の挿入方向となる前後方向の寸法の方が大きくされた長円形状とされている。これにより、雌端子10に挿入された雄端子12が上下方向で揺動変位する場合にも、第1および第2接点96,98と雄端子12との接触面積を安定して確保できるようになっている。実施形態1では、第1および第2接点96,98がそれぞれ第1および第2接点ばね部66,68にプレス加工を施すことで形成されており、第1および第2接点ばね部66,68における対向方向外方(上下方向外方)において、第1および第2接点96,98と対応する位置には、凹部102が形成されている。
【0048】
実施形態1では、上部72における前方接続部78において、雄端子12の板幅方向(左右方向)で相互に離隔した複数箇所(2箇所)のそれぞれに第1接点ばね部66,66が設けられているとともに、下部74における前方接続部78において、雄端子12の板幅方向で相互に離隔した複数箇所(2箇所)のそれぞれに第2接点ばね部68,68が設けられている。すなわち、各前方接続部78から後方に延び出して第1接点ばね部および第2接点ばね部を構成する略矩形の部分の左右方向中央において、前後方向の略全長にわたって延びるスリット104を設けることで、一対の第1接点ばね部66,66が左右方向で相互に離隔して設けられているとともに、一対の第2接点ばね部68,68が左右方向で相互に離隔して設けられている。
【0049】
なお、図10において第2金属平板24における折り曲げ部分を二点鎖線で示す。図10に示されるように、第2金属平板24のプレス加工前の状態では、接点形成金具26を構成する第2左側部82b、下部74、右側部70b、上部72および第1左側部82aが、折り曲げ部分を介して図10中の上下方向で連続して設けられている。接点形成金具26を構成する第2金属平板24の金属の材質は限定されるものではないが、導電性且つばね性を有する金属が採用可能であり、例えば銅合金が採用され得る。
【0050】
実施形態1では、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68のそれぞれが、上部72および下部74を構成する壁部を部分的に切り起こすことにより構成されている。すなわち、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68は、例えば上部72および下部74から図10における紙面手前側に切り起こされており、接点形成金具26の形成時には、枠体部62の内方に突出するようになっている。同様に、各ロック爪94は、左側部70a(第1左側部82aと第2左側部82b)および右側部70bを構成する壁部を部分的に切り起こすことにより構成されている。すなわち、各ロック爪94は、例えば左側部70aおよび右側部70bから図10中における紙面奥側に切り起こされており、接点形成金具26の形成時には、接点形成金具26において左右方向外方に突出するようになっている。なお、各第1接点ばね部66や各第2接点ばね部68、各ロック爪94は、接点形成金具26を略筒状に形成後、枠体部62の内方や左右方向外方に突出するように折り曲げてもよい。
【0051】
<接圧付与ばね(クリップばね106)>
雌端子10は、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68のそれぞれの突出端部99に配置される接圧付与ばねとしてのクリップばね106を備えている。そして、雌端子10に雄端子12が挿入されることで、クリップばね106により、各第1接点ばね部66における突出端部99と各第2接点ばね部68における突出端部99とが相互に接近する方向に付勢されるようになっている。このクリップばね106は、筒状導体部20における後方開口窓34を挿通可能な大きさで形成されている。特に、実施形態1では、クリップばね106が、筒状導体部20の内部に配置される接点形成金具26における後方開口部75bを挿通可能な大きさで形成されている。
【0052】
具体的には、クリップばね106は、図7にも示されるように、矩形平板状の連結板部108と、連結板部108の両側縁部(上下両側縁部)から相互に接近する方向(上下方向内方)に突出する矩形平板状の一対の挟持板部110,110を有している。実施形態1では、連結板部108の両側のそれぞれにおいて、雄端子12の板幅方向となる左右方向で相互に離隔する複数(2つ)の挟持板部110,110が設けられており、クリップばね106において合計で4つの挟持板部110が設けられている。すなわち、上下方向で対向する一対の挟持板部110,110が、左右方向で離隔する位置において、もう一対設けられている。これら各挟持板部110は、連結板部108との接続部分を基点として上下方向で弾性変形可能とされている。
【0053】
なお、各挟持板部110の左右方向寸法は、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の上下方向外方に設けられる各凹部102の左右方向寸法よりも大きくされている。また、各挟持板部110の長さ方向中間部分には屈曲部分112が設けられている。これにより、図2図3に示されるように、雌端子10に雄端子12が挿入されて、各挟持板部110における屈曲部分112が各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68における各凹部102の形成位置に当接する際には、各挟持板部110の左右方向両端部分が、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68における各凹部102よりも左右方向外方の部分で当接するようになっている。
【0054】
そして、各挟持板部110の長さ方向中間部分に屈曲部分112が設けられていることから、各挟持板部110の突出先端部分は屈曲部分112から相互に離隔する方向に延び出している。したがって、上下方向で対向する各挟持板部110の対向距離は、長さ方向中間部分に設けられた屈曲部分112において最も小さくされている。これら屈曲部分112の間の隙間が、各第1および第2接点ばね部66,68の各突出端部99を挿し込んで組み付けるための挿込口114である。
【0055】
クリップばね106における各挟持板部110の弾性変形前の各挿込口114の開口寸法(上下方向寸法)は、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の突出先端部分における上下方向寸法と等しくされてもよいし、僅かに大きくまたは小さくされてもよい。このようなクリップばね106は、筒状導体部20の後方開口窓34(特に、接点形成金具26の後方開口部75b)から筒状導体部20の内部に挿し入れられる。そして、各挟持板部110において最も上下方向内方に位置する各屈曲部分112に対して各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の突出先端部分が当接することなく、または各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の突出先端部分により各屈曲部分112を上下方向外方に押し広げつつ、各挿込口114に各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の突出先端部分が挿し込まれるようになっている。このクリップばね106における後方開口窓34からの筒状導体部20の内方への挿入端位置は、図5,6にも示されるように、連結板部108の左右両端部が、左側壁36aおよび右側壁36bの各内面に設けられた各位置決め突部46における後端の垂直面56に当接することで規定される。
【0056】
なお、上述のように、雄端子12の挿入前の雌端子10では、各挿込口114の上下方向寸法が、挿し込まれる各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の突出先端部分における上下方向寸法よりも大きくされていてもよい。また、各位置決め突部46(垂直面56)と後述するリテーナ116との前後方向間距離が連結板部108の厚さ寸法(前後方向寸法)よりも大きくされているとともに、左側壁36aおよび右側壁36bにおける各内面の対向面間距離が、連結板部108の幅方向寸法(左右方向寸法)よりも大きくされていてもよい。これにより、雄端子12の挿入前の雌端子10では、クリップばね106が筒状導体部20に対して、上下、前後、左右の各方向で固定されることなく、フリーな状態で配置されていてもよい。
【0057】
<リテーナ116>
雌端子10は、筒状導体部20に組み付けられて後方開口窓34を覆い、上記クリップばね106の脱落を防止するリテーナ116をさらに備えている。リテーナ116は、図7にも示されるように、略帯状の部材をプレス加工等により折り曲げることで構成されている。リテーナ116は、例えば金属や合成樹脂により形成され得て、十分な強度(変形剛性)と耐熱性を有することが好ましく、実施形態1ではステンレス鋼により形成されている。
【0058】
筒状導体部20に組み付けられた状態においてリテーナ116は全体として上下方向に延びており、長さ方向中央部分には、雌端子10の組立時において、クリップばね106に近接配置されてクリップばね106に当接することでクリップばね106の後方開口窓34側への変位を規制する変位規制部118が設けられている。変位規制部118は、正面視(前後方向視)において略矩形状とされており、後方開口窓34よりも小さい大きさとされている。特に、実施形態1では、変位規制部118が、筒状導体部20の内部に配置される接点形成金具26における後方開口部75bよりも僅かに小さい大きさとされている。これにより、リテーナ116を筒状導体部20に組み付けた際には、図5,6にも示されるように、変位規制部118が後方開口窓34を通じて筒状導体部20の内部に入り込み、接点形成金具26の後方開口部75bの略全体を覆うようになっている。
【0059】
また、リテーナ116の上下方向両端部分は、変位規制部118に対して前方に延び出すように屈曲されており、これらリテーナ116の上下方向両端部分において前方に延び出す部分により、リテーナ116を筒状導体部20に固定するための固定部120が構成されている。各固定部120の前方部分には、厚さ方向(上下方向)で貫通する略矩形の係止孔122が形成されており、筒状導体部20に対してリテーナ116を後方から接近させて筒状導体部20において上下方向外方に突出する各係止凸部54を各係止孔122に係止させることで、リテーナ116が筒状導体部20に組み付けられるようになっている。
【0060】
<雌端子10の組立て>
以下、雌端子10を組み立てる方法の具体的な一例を説明する。なお、雌端子10の組立方法は、以下に記載の態様に限定されるものではない。
【0061】
先ず、本体部22を構成する第1金属平板16を準備して、各折曲部60を折り曲げ、右側壁36bの嵌合凹部44に上壁38の嵌合凸部42を嵌め入れる。これにより、筒状導体部20および接続部18を有する本体部22が形成される。また、接点形成金具26を構成する第2金属平板24を準備して、各折り曲げ部分を折り曲げ、第1左側部82aの係合凹部84に第2左側部82bの係合凸部86を嵌め入れる。これにより、枠体部62と接点ばね部64(各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68)とを有する接点形成金具26が形成される。
【0062】
その後、図7に示されるように、接点形成金具26と本体部22とを前後方向で対向配置して、筒状導体部20の一端側(前端側)である雄端子挿入口32から他端側(後端側)に向かって接点形成金具26を挿入して組み付ける。この接点形成金具26が筒状導体部20に組み付けられた状態では、接点形成金具26における各当接縁部88が、筒状導体部20における雄端子挿入口32側の端面である各前端面41に重ね合わせられている。要するに、各当接縁部88における各前端面41への当接により、接点形成金具26における筒状導体部20への挿入端が規定されている。なお、このような筒状導体部20への接点形成金具26の挿入は、例えば筒状導体部20における雄端子挿入口32を上方へ向けた状態で、接点形成金具26を上方から挿し入れることでなされてもよい。これにより、筒状導体部20の内部において接点形成金具26が重力に従って自然と下方へ変位して、各当接縁部88を各前端面41に対して簡単に、且つ略隙間なく重ね合わせることができる。
【0063】
なお、接点形成金具26が筒状導体部20に挿入された際には、接点形成金具26の後端に設けられた各切欠部90に筒状導体部20においてそれぞれ内方に突出する各位置決め突部46が入り込むことで、各位置決め突部46と接点形成金具26における左右の側部70a,70bとの干渉が回避されている。また、接点形成金具26において左右方向外方に突出する各ロック爪94は、筒状導体部20への挿入に伴って左右の側壁36a,36bに当接して左右方向内方に弾性変形し、これにより、筒状導体部20における後方へのさらなる挿入が許容される。そして、各ロック爪94が左右の側壁36a,36bにおける各ロック穴50に至ることで弾性的に復元変形(弾性復帰)して、各ロック爪94が各ロック穴50に嵌合する。これにより、各ロック爪94が各ロック穴50の内周面における前方部分に当接することで、接点形成金具26が筒状導体部20から前方へ抜け落ちることが防止されて、接点形成金具26が筒状導体部20への組み付け状態で保持される。
【0064】
上述のように各ロック爪94が各ロック穴50に嵌合して接点形成金具26が筒状導体部20へ組み付けられた状態で、相互に重ね合わされた各当接縁部88と各前端面41とを溶接する。実施形態1では、この溶接がレーザー溶接により実施されている。特に、筒状導体部20における雄端子挿入口32を上方へ向けた状態で接点形成金具26を上方から組み付ける場合、接点形成金具26の挿入に続く溶接(実施形態1ではレーザー溶接)も、各当接縁部88と各前端面41との重ね合わせ部分に対して上方から行うことができることから、接点形成金具26と筒状導体部20との組付作業を効率良く行うことができる。
【0065】
その後、筒状導体部20における後方開口窓34(特に、接点形成金具26における後方開口部75b)を通じて筒状導体部20内にクリップばね106を挿し入れて、クリップばね106における各挿込口114に各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68の突出先端部分を挿し入れる。これにより、クリップばね106が、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68のそれぞれの突出端部99に配置される。なお、クリップばね106における後方開口窓34を通じた筒状導体部20内への挿入は、例えばクリップばね106における連結板部108が、筒状導体部20の内部に突出する各位置決め突部46に当接することによって制限される。
【0066】
そして、クリップばね106の後方にリテーナ116を配置して、当該リテーナ116を筒状導体部20に対して接近させる。これにより、リテーナ116における変位規制部118が接点形成金具26の後方開口部75bに入り込むとともに、リテーナ116の上下両側の各固定部120における各係止孔122に筒状導体部20の各係止凸部54が入り込んで係止される。この結果、リテーナ116が筒状導体部20に組み付けられて、実施形態1の雌端子10の組立てが完了する。
【0067】
<端子ユニット14の組立て>
以下、実施形態1の雌端子10に対して雄端子12を挿入して、雌端子10と雄端子12とが接続された状態の端子ユニット14を組み立てる方法の具体的な一例を説明する。
【0068】
先ず、上述のように組み立てられた雌端子10と雄端子12とを、図4から図6に示されるように前後方向で対向させる。その後、雄端子12を、雄端子挿入口32を通じて筒状導体部20の内部に挿し入れて、上下の各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68における各第1接点96および各第2接点98の対向面間に圧入する。これにより、図3に示されるように、雄端子12の上下両面に対して各第1接点ばね部66における各第1接点96および各第2接点ばね部68における各第2接点98が当接して、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68とが相互に離隔する方向に押し広げられる。
【0069】
そして、上下方向外方に押し広げられた各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68における各屈曲部100が、クリップばね106における各屈曲部分112に上下方向内方から当接して、各挟持板部110が上下方向外方に弾性変形させられる。これら各挟持板部110の弾性的な復元力によって、各挟持板部110により各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の各突出端部99が挟持されて、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の各突出端部99が相互に接近する方向に付勢されている。これにより、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68の対向面間に圧入される雄端子12の上下両面に対して、各第1接点96および各第2接点98が圧接されている。この結果、雄端子12と雌端子10とが電気的に導通状態とされて、雌端子10と雄端子12とが接続された状態の端子ユニット14が完成する。
【0070】
すなわち、雄端子12の挿入後において雄端子12に対して上下両側から圧接される各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68の各屈曲部100における上下方向距離A(図3参照)が、雄端子12の挿入前におけるクリップばね106の各挿込口114の上下方向寸法B(図5参照)よりも大きくされている。この結果、雄端子12の挿入に伴って各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68だけでなく、クリップばね106における各挟持板部110も上下方向外方に押し広げられて、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68の弾性的な復元力だけでなく、各挟持板部110の弾性的な復元力によっても、各第1接点96および各第2接点98が雄端子12の上下両面に圧接されるようになっている。
【0071】
特に、実施形態1では、左右方向で相互に離隔する一対の第1接点ばね部66,66と一対の第2接点ばね部68,68とが設けられているとともに、クリップばね106の上下両側におけるそれぞれにおいて、左右方向で相互に離隔する一対の挟持板部110,110が設けられている。これにより、左右方向の両側で各別に、上下両側の挟持板部110,110が第1接点ばね部66および第2接点ばね部68を挟持して、第1接点96と第2接点98を雄端子12に圧接するようになっている。
【0072】
実施形態1の雌端子10によれば、各第1接点96および各第2接点98を有する接点形成金具26を、筒状導体部20を有する本体部22とは別体として設けて、接点形成金具26を筒状導体部20内に組み付ける構成とした。これにより、従来構造のように金属平板を折り曲げて接点を構成する場合に比べて、接点を構成する部材(接点形成金具26)を比較的板厚が小さい第2金属平板24から形成することができて、雌端子10の小型化が図られる。また、筒状導体部20を有する本体部22は、比較的板厚が大きい第1金属平板16を折り曲げることで形成されることから、大電流化にも対応することができ、通電容量の向上と端子の大型化回避とを両立して達成することができる。
【0073】
特に、接点形成金具26は枠体部62と接点ばね部64(各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68)とを備えており、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68はそれぞれ枠体部62の内方に突出している。これにより、接点形成金具26を筒状導体部20に組み付けるに際して、接点形成金具26を把持した際に各第1接点ばね部66や各第2接点ばね部68に意図せず接触するおそれが低減されて、接点形成金具26と筒状導体部20との組付時に各第1接点ばね部66や各第2接点ばね部68が変形してしまう不具合が回避され得る。
【0074】
接点形成金具26が溶接部を有しており、この溶接部が筒状導体部20の被溶接部に対して溶接されている。実施形態1では、接点形成金具26における溶接部が、上部72および下部74における前方接続部78から上下方向外方に延び出す各当接縁部88により構成されているとともに、筒状導体部20における被溶接部が、上壁38および下壁40における各前端面41により構成されている。接点形成金具26を筒状導体部20に挿入する際には、各当接縁部88が各前端面41に当接することで挿入端が規定されるとともに、相互に重ね合わされる各当接縁部88と各前端面41とを巧く利用してこれらを溶接することで、接点形成金具26と筒状導体部20とが強固に固定され得る。特に、それぞれ一連のプレス加工により筒状導体部20と接点形成金具26とを形成した後に、各当接縁部88と各前端面41との溶接作業を行うことから、例えばプレス加工の途中で溶接作業を行う場合に比べて製造効率の向上が図られる。
【0075】
筒状導体部20が左右の側壁36a,36bと上壁38および下壁40を有する矩形筒状であるとともに、接点形成金具26の枠体部62が、左右の側部70a,70bと上部72および下部74を有する矩形枠状である。このように筒状導体部20と接点形成金具26がいずれも矩形の外形状を有していることから、筒状導体部20内での接点形成金具26の変位(がたつき等)が抑制され得る。特に、接点形成金具26が略上下対称形状とされていることから、接点形成金具26の上下を特定することなく筒状導体部20に組み付けることができて、組付効率の向上が図られる。また、接点形成金具26における各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68は、それぞれ上部72および下部74を部分的に切り起こすことで形成されていることから、第1接点ばね部および第2接点ばね部を形成するに際して枠体部とは別体の他部材を採用することがなく、良好な歩留りをもって接点形成金具26が形成され得る。
【0076】
筒状導体部20の左右の側壁36a,36bが各ロック穴50を有しているとともに、接点形成金具26の左右の側部70a,70bが各ロック爪94を有しており、接点形成金具26における筒状導体部20への組付時において、各ロック爪94が各ロック穴50に嵌合されるようになっている。すなわち、上述の各当接縁部88と各前端面41との当接により接点形成金具26における筒状導体部20の挿入方向への変位が制限されるとともに、接点形成金具26における筒状導体部20の挿入方向と反対方向への変位が、上記各ロック爪94と各ロック穴50との嵌合によって制限される。これにより、接点形成金具26と筒状導体部20とが前後方向で位置決めされ得る。そして、このように接点形成金具26と筒状導体部20とが前後方向で位置決めされた状態で各当接縁部88と各前端面41とが溶接されることから、これら各当接縁部88と各前端面41との間に略隙間が生じることなくこれらを溶接することができる。
【0077】
雌端子10は、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68のそれぞれの突出端部99に配置されるとともに筒状導体部20の後方開口窓34を挿通可能な大きさを有する接圧付与ばねとしてのクリップばね106を有している。すなわち、従来構造ではクリップばねを側方から組み付けていたのに対して、実施形態1の雌端子10では、クリップばね106を、筒状導体部20の後方開口窓34を通じて後方から組み付ける構成とした。特に、従来構造では、クリップばねの開口部を広げた状態で組み付けていたのに対して、実施形態1では、各第1接点ばね部66と各第2接点ばね部68の各突出端部99における上下方向寸法がクリップばね106における挿込口114の開口寸法と略等しく、開口部を広げる作業を略伴うことなく組み付けることができる。これにより、クリップばね106を組み付ける際の作業性の向上が図られる。
【0078】
各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68に対して、雄端子12の挿入時に接圧を付与する接圧付与ばねとして、クリップばね106を採用した。これにより、クリップばね106における挿込口114へ各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68の各突出端部99を挿し込むことで、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68に対してクリップばね106が組み付けられ得る。特に、雄端子12の挿入前では、筒状導体部20に対してクリップばね106を上下、前後、左右の各方向でフリーな状態で配置することも可能である。これにより、例えば雌端子10に対して雄端子12が傾斜して挿入される場合にも、クリップばね106が雄端子12の傾斜に対応して変位することができて、各第1接点ばね部66および各第2接点ばね部68に対して安定して接圧を付与することができる。
【0079】
接点形成金具26における上部72において一対の第1接点ばね部66,66が左右方向で相互に離隔して設けられているとともに、下部74において一対の第2接点ばね部68,68が左右方向で相互に離隔して設けられている。また、クリップばね106において、連結板部108の上下両側のそれぞれにおいて、2つの挟持板部110が左右方向で相互に離隔して設けられている。これにより、左右両側のそれぞれにおいて各別に、上下の挟持板部110により第1接点ばね部66および第2接点ばね部68に接圧を付与することができる。この結果、雌端子10への雄端子12の挿入後、例えば雄端子12が前後方向に延びる中心軸回りで回転変位するような場合にも、例えば左右の何れか一方で接圧が十分に及ぼされない等の不具合の発生が回避され得る。
【0080】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0081】
(1)前記実施形態では、雄端子12が平タブ状の端子とされており、筒状導体部20および接点形成金具26がそれぞれ略横長の矩形状とされていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、雄端子が円柱状のピン端子とされる場合、筒状導体部および接点形成金具は、それぞれ円筒形状とされてもよい。同様に、雄端子が縦長の端子とされる場合、筒状導体部および接点形成金具はそれぞれ略縦長の矩形状とされ得て、その場合、接点ばね部を構成する第1接点ばね部および第2接点ばね部は、接点形成金具における一対の側部のそれぞれに設けられてもよい。
【0082】
(2)前記実施形態では、筒状導体部20と接点形成金具26との固定が、各当接縁部88(溶接部)と各前端面41(被溶接部)との溶接に加えて、各ロック穴50と各ロック爪94との嵌合によってなされていたが、この態様に限定されるものではない。これら筒状導体部と接点形成金具との固定は、溶接のみによってなされてもよいし、ロック穴とロック爪との嵌合のような凹凸嵌合のみによってなされてもよい。あるいは、溶接や凹凸嵌合以外の固定方法(例えば、ボルトやリベットによる固定等)が採用されてもよい。
【0083】
(3)前記実施形態では、接点形成金具26の上部72および下部74における各前方接続部78の前端部から上下方向外方に延び出して溶接部としての各当接縁部88が構成されていたが、このような態様に限定されるものではない。例えば、雄端子を保持するハウジングの形状等によっては、上部および下部の前端部に代えて、または加えて、接点形成金具における一対の側部から左右方向外方に溶接部としての当接縁部が延び出していてもよい。また、前記実施形態では、接点形成金具26が筒状導体部20に対して前端側の雄端子挿入口32を通じて挿入されていたが、接点形成金具は、筒状導体部に対して後端側の後方開口窓を通じて挿入されてもよく、この場合には、溶接部としての当接縁部は、接点形成金具における一対の側部、上部および下部の少なくとも1箇所の後端部に設けられてもよい。なお、上述のように、筒状導体部と接点形成金具とは溶接以外の方法で固定されてもよく、溶接部および被溶接部は、本開示に係る雌端子において必須なものではない。
【0084】
(4)前記実施形態では、各第1接点ばね部66が接点形成金具26の上部72を部分的に切り起こすことによって形成されているとともに、各第2接点ばね部68が接点形成金具26の下部74を部分的に切り起こすことによって形成されていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、第1接点ばね部および/または第2接点ばね部は、接点形成金具における枠体部とは別体で形成されて、枠体部を構成する金属平板に対して溶接等により後固着されてもよい。その後、この金属平板に対してプレス加工を施すことにより、接点形成金具が構成されてもよい。
【0085】
(5)前記実施形態では、筒状導体部20に各ロック穴50が設けられているとともに、接点形成金具26に各ロック爪94が設けられていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、上記態様に代えて、または加えて、筒状導体部にロック爪が設けられるとともに、接点形成金具にロック穴が設けられてもよい。また、前記実施形態では、各ロック爪94が接点形成金具26における筒状導体部20への挿入方向とは反対方向(後方から前方に向かう方向)に突出しており、筒状導体部20に対する接点形成金具26の挿入方向と反対方向への変位が防止されていたが、この態様に限定されるものではない。例えばロック爪は、接点形成金具における筒状導体部への挿入方向と同方向に突出していてもよく、筒状導体部に対する接点形成金具の挿入方向への変位が防止されるようになっていてもよい。この場合、例えばロック爪を内方へ押し込んだ状態で接点形成金具を筒状導体部へ挿入することで、接点形成金具の挿入時にロック爪が筒状導体部の壁部に引っ掛かることが防止され得る。
【0086】
(6)前記実施形態では、雌端子10が接圧付与ばねとしてのクリップばね106を備えていたが、本開示に係る雌端子において接圧付与ばねは必須なものではない。すなわち、雄端子の挿入によって第1接点ばね部と第2接点ばね部とが上下方向外方に押し広げられるとともに、これら第1接点ばね部と第2接点ばね部の弾性的な復元力により、第1接点ばね部および第2接点ばね部における第1接点および第2接点が雄端子に圧接されるようになっていてもよい。また、接圧付与ばねを採用する場合でもクリップばねである必要はなく、コイルスプリングや環状の弾性体等、任意な構造の接圧付与ばねが採用され得る。
【0087】
(7)前記実施形態では、接点形成金具26における上部72に一対の第1接点ばね部66,66が設けられるとともに、下部74に一対の第2接点ばね部68,68が設けられていたが、これら第1接点ばね部および第2接点ばね部の数は限定されるものではない。すなわち、第1接点ばね部は接点形成金具の上部において1つまたは複数が設けられてもよいし、第2接点ばね部は接点形成金具の下部において1つまたは複数が設けられてもよい。同様に、クリップばねにおける上下の挟持板部の数は限定されるものではなく、それぞれ1つまたは複数が設けられてもよい。なお、第1接点ばね部の数と上側の挟持板部の数は相互に異なっていてもよいし、第2接点ばね部の数と下側の挟持板部の数は相互に異なっていてもよい。
【0088】
(8)前記実施形態では、他部材に導通接続される接続部18が筒状導体部20における左側壁36aから後方に延び出していたが、例えば筒状導体部における上壁や下壁から後方に延び出していてもよい。その場合、筒状導体部の後端部に取り付けられるリテーナは、左右方向に延びた状態で取り付けられ得る。なお、本開示に係る雌端子においてリテーナは必須なものではない。
【0089】
(9)前記実施形態では、第2金属平板24にプレス加工を施して接点形成金具26を形成する際に相互に突き合わされる部分が接点形成金具26における左側部70aに設けられていたが、この態様に限定されるものではなく、プレス加工の際に相互に突き合わされる部分は、接点形成金具における任意の位置に設定され得る。
【符号の説明】
【0090】
10 雌端子
12 雄端子
14 端子ユニット
16 第1金属平板
18 接続部
20 筒状導体部
22 本体部
24 第2金属平板
26 接点形成金具
28 ボルト挿通孔
30 狭幅部
32 雄端子挿入口
34 後方開口窓
36 側壁(壁部)
36a 左側壁(壁部)
36b 右側壁(壁部)
38 上壁(壁部)
40 下壁(壁部)
41 前端面(端面、被溶接部)
42 嵌合凸部
44 嵌合凹部
46 位置決め突部
48 凹部
50 ロック穴
52 当接部
54 係止凸部
56 垂直面
58 凹部
60 折曲部
62 枠体部
64 接点ばね部
66 第1接点ばね部
68 第2接点ばね部
70 側部(枠体部)
70a 左側部(枠体部)
70b 右側部(枠体部)
72 上部(枠体部)
74 下部(枠体部)
75a 前方開口部
75b 後方開口部
76 貫通窓部
78 前方接続部
80 後方接続部
82a 第1左側部
82b 第2左側部
84 係合凹部
86 係合凸部
88 当接縁部(溶接部)
90 切欠部
92 貫通孔
94 ロック爪
96 第1接点
98 第2接点
99 突出端部
100 屈曲部
102 凹部
104 スリット
106 クリップばね(接圧付与ばね)
108 連結板部
110 挟持板部
112 屈曲部分
114 挿込口
116 リテーナ
118 変位規制部
120 固定部
122 係止孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10