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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105982
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/41 20060101AFI20240731BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20240731BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01N27/41 325K
G01N27/41 325Q
G01N27/419 327K
G01N27/419 327Q
G01N27/409 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010012
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山村 武志
(72)【発明者】
【氏名】市川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴司
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BD04
2G004BE04
2G004BG20
2G004BJ03
2G004BK03
(57)【要約】
【課題】特定部位の高精度な温度検出を可能とするガスセンサ素子を提供すること。
【解決手段】酸素イオン伝導性を有する固体電解質体2と、固体電解質体2を加熱するヒータ5と、固体電解質体2に設けられたセンサ電極31及び基準ガス側電極32と、固体電解質体2、センサ電極31及び基準ガス側電極32の少なくとも一つに印刷された熱電対4と、を有するガスセンサ素子1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性を有する固体電解質体(2)と、
上記固体電解質体を加熱するヒータ(5)と、
上記固体電解質体に設けられた被測定ガス側電極(31、33、34)及び基準ガス側電極(32)と、
上記固体電解質体、上記被測定ガス側電極及び上記基準ガス側電極の少なくとも一つに印刷された熱電対(4)と、
を有するガスセンサ素子(1)。
【請求項2】
上記被測定ガス側電極として、被測定ガス中の測定対象である特定ガスに対して活性を有するセンサ電極を有し、該センサ電極と、上記基準ガス側電極と、上記固体電解質体における上記センサ電極と上記基準ガス側電極との間に酸素イオンを伝導させる部位と、によってセンサセル(3)が構成されており、上記熱電対の測温接点(41)は、上記センサセルに印刷されている、請求項1に記載のガスセンサ素子。
【請求項3】
上記熱電対の測温接点は、上記センサ電極又は上記基準ガス側電極に、配置されている、請求項2に記載のガスセンサ素子。
【請求項4】
上記ヒータに印加される電力と上記センサセルの温度との関係に基づいて上記ヒータを制御することができるよう構成されたガス検出システムに用いられるガスセンサ素子である、請求項2又は3に記載のガスセンサ素子。
【請求項5】
上記センサ電極に面したチャンバ(71)内の酸素をポンピングする機能を備えたポンプセル(30)を有し、上記ポンプセルのインピーダンスに基づいて、上記ヒータを制御することができるよう構成されたガス検出システムに用いられるガスセンサ素子である、請求項2又は3に記載のガスセンサ素子。
【請求項6】
上記固体電解質体を含めた複数のセラミック層を積層してなる積層型のガスセンサ素子である、請求項1又は2に記載のガスセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系等において、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するガスセンサが搭載されている。かかるガスセンサに組み込まれたガスセンサ素子として、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体と、該固体電解質体に設けられた被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、素子を加熱するヒータとを備えたものがある。
【0003】
ガスセンサ素子は、特定ガス成分濃度の検出精度を高めるためには、適切な活性温度に制御される必要がある。それゆえ、ヒータを制御することによって、ガスセンサ素子の温度を所定の温度に制御している。例えば、特許文献1に開示されているように、ガスセンサ素子は、素子温度とインピーダンスとの間に所定の関係である基本特性がある。この基本特性に基づいて、ヒータをフィードバック制御することが、特許文献1には記載されている。この場合においても、ガスセンサ素子の基本特性を把握すべく、事前にガスセンサ素子の所定の部位の温度と、当該温度におけるインピーダンスとを、測定する必要がある。それゆえ、ガスセンサ素子の所定の部位の温度を測定する手段が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-50227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガスセンサ素子における所定の部位の温度を測定する具体的手段について、特許文献1には何ら開示されていない。特許文献1には、熱電対を取り付けて素子温度を実測することが記載されているが、通常の熱電対をガスセンサ素子に取り付けることができても、所望の位置に精度よく取り付けることは、極めて困難である。そうすると、ガスセンサ素子における特定部位の温度を精度よく検出することが困難となる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、特定部位の高精度な温度検出を可能とするガスセンサ素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体(2)と、
上記固体電解質体を加熱するヒータ(5)と、
上記固体電解質体に設けられた被測定ガス側電極(31、33、34)及び基準ガス側電極(32)と、
上記固体電解質体、上記被測定ガス側電極及び上記基準ガス側電極の少なくとも一つに印刷された熱電対(4)と、
を有するガスセンサ素子(1)にある。
【発明の効果】
【0008】
上記ガスセンサ素子は、上記固体電解質体、上記被測定ガス側電極及び上記基準ガス側電極の少なくとも一つに印刷された熱電対を有する。それゆえ、固体電解質体、センサ電極及び基準ガス側電極の少なくとも一つにおける特定部位の温度を精度よく検出することができる。すなわち、印刷された熱電対は、その配置を精度よく行うことができる。これにより、特定部位の温度を精度よく検出することができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、特定部位の高精度な温度検出を可能とするガスセンサ素子を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における、長手方向に沿ったガスセンサ素子の断面説明図であり、図2のI-I線矢視断面図。
図2図1のII-II線矢視断面図。
図3】(a)図1のIIIa-IIIa線矢視断面図、(b)図1のIIIb-IIIb線矢視断面図、。
図4】実施形態1における、熱電対の平面説明図。
図5】一般的な熱電対をガスセンサ素子におけるセンサセル付近の部位に接触させた状態の断面説明図。
図6】実施形態2における、ヒータ電力とセンサセルの温度との関係を概略的に示す線図。
図7】実施形態3における、長手方向に沿ったガスセンサ素子の断面説明図。
図8図7のVIII-VIII線矢視断面図。
図9】実施形態3における、センサセルの温度およびポンプセルの温度と、ポンプセルのインピーダンスとの関係を概略的に示す線図。
図10】実施形態3における、ヒータ電力の制御システムを説明する説明図。
図11】実施形態4における、長手方向に沿ったガスセンサ素子の断面説明図。
図12】一般的な熱電対をガスセンサ素子における基準ガス側電極に接触させた状態の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
ガスセンサ素子に係る実施形態について、図1図4を参照して説明する。
本形態のガスセンサ素子1は、図1図2に示すごとく、固体電解質体2と、ヒータ5と、被測定ガス側電極としてのセンサ電極31と、基準ガス側電極32と、熱電対4と、を有する。
【0012】
固体電解質体2は、酸素イオン伝導性を有する。ヒータ5は、固体電解質体2を加熱する。センサ電極31及び基準ガス側電極32は、固体電解質体2に設けられている。熱電対4は、固体電解質体2、センサ電極31及び基準ガス側電極32の少なくとも一つに印刷されている。
【0013】
ガスセンサ素子1は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサセル3を備えている。センサ電極31と、基準ガス側電極32と、固体電解質体2におけるセンサ電極31と基準ガス側電極32との間に酸素イオンを伝導させる部位と、によってセンサセル3が構成されている。熱電対4の測温接点41は、センサセル3に印刷されている。
【0014】
本形態において、熱電対4の測温接点41は、センサ電極31又は基準ガス側電極32に、配置されている。特に本形態においては、測温接点41は、センサ電極31に配置されている。
【0015】
本形態のガスセンサ素子1は、複数のセラミック層が積層された積層型のガスセンサ素子である。ガスセンサ素子1は、板状の固体電解質体2の一方側の面と他方側の面とのそれぞれに、センサ電極31と基準ガス側電極32とが形成されている。センサ電極31と基準ガス側電極32とは、互いに固体電解質体2の一部を介して互いに対向配置されている。センサ電極31と基準ガス側電極32と、固体電解質体2におけるセンサ電極31と基準ガス側電極32との間の部位とによって、センサセル3が形成される。センサ電極31は、被測定ガス中の特定ガスに対して活性を有する。例えば、被測定ガスは、内燃機関の排ガスであり、特定ガスは酸素である。酸素に対して活性を有するセンサ電極31は、例えば、白金(Pt)と金(Au)とを含有する。
【0016】
ガスセンサ素子1は、センサ電極31が配置されるチャンバ71と、基準ガス側電極32が配されるダクト72とを有する。固体電解質体2におけるセンサ電極31を設けた側の面に、チャンバ形成層11と遮蔽層12とを順次積層してある。また、固体電解質体2における基準ガス側電極32を設けた側の面に、ダクト形成層13とヒータ層14とが順次積層してある。
【0017】
本明細書において、複数のセラミック層が積層された積層方向を、適宜、Z方向という。また、ガスセンサ素子1は、Z方向に直交する一方向に長尺な板棒状の形状を有する。このガスセンサ素子1の長手方向を、適宜、X方向という。そして、X方向とZ方向との双方に直交する方向を、適宜、Y方向という。
【0018】
チャンバ71には、チャンバ71に被測定ガス(例えば内燃機関の排ガス)を導入するガス導入口150が設けられ、該ガス導入口150に、拡散抵抗部15が配置されている。ダクト72は、ガスセンサ素子1の基端部に開口しており、基端側から基準ガスとしての大気が導入されるよう構成されている。
【0019】
固体電解質体2は、ジルコニアを主成分とするセラミック層である。チャンバ形成層11、遮蔽層12、ダクト形成層13、ヒータ層14は、いずれもアルミナを主成分とするセラミック層である。拡散抵抗部15も、アルミナを主成分とする。ただし、拡散抵抗部15は、被測定ガスを透過させることができるよう、多孔質のセラミック体からなる。
【0020】
ヒータ5は、ヒータ層14に形成されている。すなわち、ヒータ層14におけるダクト形成層13側の面に、ヒータパターンが形成されている。図3(b)に示すごとく、ヒータ5は、ヒータ発熱部51とヒータリード部52とを有する。ヒータリード部52は、ヒータ発熱部51の基端側に接続され、基端側へ延設されている。ヒータ発熱部51は、ヒータリード部52よりも導通抵抗が大きい。これにより、ヒータ5に通電したとき、主にヒータ発熱部51が発熱する。
【0021】
ヒータ5は、印刷によりヒータ層14に形成されている。また、センサ電極31及び基準ガス側電極32も、印刷により、固体電解質体2の表面に形成されている。熱電対4も、印刷により、センサ電極31の表面に形成されている。図3(a)、図4に示すごとく、また、熱電対4を構成する2つの金属線は、例えば、白金-ロジウム合金からなる金属線4P、及び、白金からなる金属線4Nとすることができる。この場合、前者がプラス脚、後者がマイナス脚となる。
【0022】
熱電対4は、Z方向の厚みを、例えば、8~12μm程度とすることができる。また、熱電対4を構成する金属線4P、4N、すなわち、プラス脚及びマイナス脚の線幅は、それぞれ、例えば、80~100μm程度とすることができる。また、プラス脚とマイナス脚との間の間隔は、例えば、400~500μm程度とすることができる。
【0023】
熱電対4は、測温接点41を含めた一部が、センサ電極31の表面に配置され、他の部分は固体電解質体2の表面に配置されている。ただし、熱電対4とセンサ電極31との間、並びに熱電対4と固体電解質体2との間には、電気的絶縁を図るためのアルミナ等からなる絶縁層が形成されている(図示略)。図4に示すごとく、熱電対4の2つの金属線4P、4Nは、ガスセンサ素子1の基端部に設けた端子42まで電気的に引き出されている。
【0024】
本形態のガスセンサ素子1を製造する際、ヒータ層14となるセラミックグリーンシートに、ヒータ5となる導電ペーストを印刷する。また、固体電解質体2のグリーンシートのそれぞれの表面に、センサ電極31となる導電ペーストと、基準ガス側電極32となる導電ペーストとを、それぞれスクリーン印刷する。
【0025】
さらに、熱電対4も、ガスセンサ素子1の製造の際に、熱電対4となる金属ペーストを、センサ電極31の表面に、スクリーン印刷する。ただし、センサ電極31と熱電対4との間の電気的絶縁を図る必要があるので、熱電対4とセンサ電極31との間には、アルミナ等からなる絶縁層が形成される。すなわち、センサ電極31の表面を絶縁層となるセラミックペーストにて覆ったのち、該セラミックペーストの上に、熱電対4となる金属ペーストをスクリーン印刷する。
【0026】
熱電対4は、上述のように、例えば、白金-ロジウム合金と、白金とによって形成することができる。この場合、白金-ロジウム合金のペーストと、白金ペーストとを、所定の位置に所定のパターン(例えば、図4に示すような配線パターン)に印刷することとなる。なお、熱電対4において、白金-ロジウム合金にて形成された配線部と、白金にて形成された配線部との接合部が、測温接点41となる。
【0027】
印刷された各ペーストは、積層されたセラミックグリーンシート等と共に、焼成される。これにより、センサ電極31、基準ガス側電極32、ヒータ5等と共に、熱電対4が、ガスセンサ素子1の一部として形成される。
【0028】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
ガスセンサ素子1は、センサ電極31等に印刷された熱電対4を有する。それゆえ、特定部位の温度を精度よく検出することができる。すなわち、印刷された熱電対4は、その配置を精度よく行うことができる。これにより、特定部位の温度を精度よく検出することができる。
【0029】
具体的には、熱電対4の測温接点41は、センサセル3に印刷されている。これにより、センサセル3の温度を精度よく検出することができる。つまり、印刷にて熱電対4を形成するため、その形成位置を高精度に決めることができる。また、印刷された熱電対4は、被印刷面に対して形成した位置からずれることもないので、センサセル3の温度測定時において、所定の位置の温度を精度よく検出することができる。
【0030】
また、印刷された熱電対4は、その厚みを小さくすることができる。それゆえ、ガスセンサ素子1における狭い空間に配置することができる。それゆえ、ガスセンサ素子1の構造を特に変更することなく、所定の位置に熱電対4を配置することができる。つまり、熱電対4を配置するためだけに、ガスセンサ素子1の構造を特に変更する必要がない。
【0031】
また、本形態のガスセンサ素子1においては、特に、熱電対4の測温接点41がセンサ電極31に配置されている。これにより、ガスセンサ素子1による特定ガス濃度の検出精度において重要な位置の温度を精度よく検出することができる。
【0032】
その一方で、センサ電極31が面するチャンバ71は、Z方向の厚みが、例えば30μm程度と、極めて小さい空間となりやすい。かかる狭い空間に一般的な熱電対を挿入することは困難であり、例えば、図5に示すように、センサセル3の近傍に熱電対94を固定することとなる。そうすると、結局、センサ電極31を含むセンサセル3の温度を直接測定することは不可能となり、間接的にしか測定することができない。それゆえ、所望の箇所の温度を精度よく検出することができない。また、この場合、熱電対94を例えば遮蔽層12の一部に埋め込むなどの方法が考えられるが、熱電対94の配置にあたり、遮蔽層12の一部を削って熱電対94を埋めるなどの工数がかかってしまう。さらには、熱電対94の配置精度を高くすることは困難である。
【0033】
これに対して、本形態のガスセンサ素子1においては、印刷にて熱電対4を配置するため、チャンバ71に面するセンサ電極31の表面にも容易かつ正確に配置することができる。それゆえ、熱電対4によってガスセンサ素子1における特定部位の温度を高精度に検出することができる。
【0034】
以上のごとく、本形態によれば、特定部位の高精度な温度検出を可能とするガスセンサ素子を提供することができる。
【0035】
(実施形態2)
本形態は、図6に示すごとく、ガスセンサ素子1を、ヒータ5に印加される電力(以下において、適宜、「ヒータ電力」ともいう。)とセンサセル3の温度との関係に基づいてヒータ5を制御することができるよう構成されたガス検出システムに用いる形態である。
【0036】
上述のように、ガスセンサ素子1は、センサセル3の温度が適切な活性温度に維持された状態において、高精度のガス検出を行うことができる。そこで、センサセル3に印刷された熱電対4によってセンサセル3の温度を正確に測定できる点において、上記ガスセンサ素子1は有利であるといえる。
【0037】
その一方で、ガスセンサ素子1によるガス濃度検出の際に、常に熱電対4によってセンサセル3をモニタリングし、その検出温度をフィードバックすることは、システム上複雑となる。そこで、例えば、ガスセンサ素子1の出荷前に、ヒータ5に印加される電力とセンサセル3の温度との関係を測定しておき、測定された当該関係マップを、ガスセンサの制御装置等に記憶しておくことが考えられる。制御装置は、例えば、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0038】
関係マップは、例えば、図6に示すごとく、ヒータ5への印加電力と、センサセル3の温度との間の関係として、得られる。すなわち、印加電力が大きいほど、センサセル3の温度が大きくなる。この関係マップは、所定の印加電力を印加し続けると、センサセル3の温度が所定の温度において安定する、ということを意味する。
【0039】
そして、ガスセンサ素子1を組み込んだガスセンサを、排気系等における被測定ガス中の特定ガス濃度の検出に使用する際には、関係マップに基づいて、印加電力をヒータ5に印加する。これにより、ガスセンサの利用中において、センサセル3の温度を所望の温度に維持することができる。
【0040】
このような制御を行うために必要な関係マップを得るにあたり、センサセル3に印刷された熱電対4を用いてセンサセル3の温度を測定することで、精度の高い関係マップを得ることができる。その結果、センサセル3の温度を精度よく制御することができ、ひいては、精度の高い特定ガス濃度検出が可能となる。
【0041】
その他は、実施形態1と同様であり、同様の作用効果を有する。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0042】
(実施形態3)
本形態は、図7図8に示すごとく、ガスセンサ素子1を、NOxセンサ素子とした形態である。
【0043】
すなわち、本形態のガスセンサ素子1は、チャンバ71内の酸素をポンピングする機能を備えたポンプセル30を有する。ポンプセル30は、ポンプ電極33を有する。ポンプ電極33は、固体電解質体2におけるチャンバ71に面する面に設けてある。ポンプ電極33は、Z方向から見て、ダクト72に面して設けてある基準ガス側電極32の一部と重なる位置に配置されている。この基準ガス側電極32と、ポンプ電極33と、固体電解質体2における基準ガス側電極32とポンプ電極33との間の部位とによって、ポンプセル30が構成されている。
【0044】
本形態において、センサ電極31は、ポンプ電極33の基端側に配置されている。また、図8に示すごとく、ポンプ電極33におけるY方向に隣り合う位置に、モニタ電極34が形成されている。モニタ電極34も、Z方向から見て、ダクト72に面して設けてある基準ガス側電極32の一部と重なる位置に配置されている。この基準ガス側電極32と、モニタ電極34と、固体電解質体2における基準ガス側電極32とモニタ電極34との間の部位とによって、モニタセル3Mが構成されている。モニタセル3Mは、チャンバ71における酸素濃度を検出することができる。本形態において、ポンプ電極33、センサ電極31、及びモニタ電極34が、被測定ガス側電極である。また、本形態において、センサ電極31は、測定対象の特定ガスであるNOx(窒素酸化物)と、酸素に対して活性な材料からなる。センサ電極31は、例えば白金(Pt)とロジウム(Rh)とを含む。また、ポンプ電極33及びモニタ電極34は、例えば白金及び金を含有し、酸素に対して活性を有する。
【0045】
NOxセンサである本形態のガスセンサ素子1は、ポンプセル30によって、チャンバ71内の酸素をダクト72側へポンピングすることができる。これにより、チャンバ71内の酸素濃度を所定の濃度に低下させることができる。そのうえで、センサセル3によって、チャンバ71内におけるNOxの濃度を検出する。チャンバ71内の酸素は、一部残留することがあるため、その酸素濃度をモニタセル3Mによって検出する。センサセル3の出力は、残留酸素による分が重畳されるため、モニタセル3Mの出力分をセンサセル3の出力から減算することで、精度の高いNOx濃度を測定することが可能となる。
【0046】
ポンプ電極33もモニタ電極34も、固体電解質体2に対して、印刷により形成されている。これらの電極の形成も、実施形態1に示したセンサ電極31等と同様に、スクリーン印刷にて形成することができる。
【0047】
また、本形態のガスセンサ素子1は、図9に示すごとく、ポンプセル30のインピーダンスに基づいて、ヒータ5を制御することができるよう構成されている。
【0048】
ポンプセル30の温度とポンプセル30のインピーダンスとの間には、図9の実線曲線TpZpに示すような、所定の関係がある。すなわち、ポンプセル30の温度が高いほど、ポンプセル30のインピーダンスは高くなる。それゆえ、ポンプセル30の温度とポンプセル30のインピーダンスとの関係を予め測定し、ガスセンサシステムの制御装置に記憶させておき、ガスセンサの使用中において、ポンプセル30のインピーダンスをモニタリングすれば、ポンプセル30の温度を把握することが可能である。
【0049】
それゆえ、ポンプセル30のインピーダンスをモニタリングしながら、ヒータ5に印加する電力(すなわちヒータ電力)を制御することで、ポンプセル30を所定の温度に保つことは可能である。すなわち、ポンプセル30のインピーダンスが所定の値となるように、ヒータ電力を制御することで、ポンプセル30の温度を所定の温度に保つことが可能となる。
【0050】
ところが、NOxの検出精度を高めるためには、センサセル3の温度を精度よく把握して、高精度にセンサセル3の温度を制御する必要がある。ここで、センサセル3の温度は、ポンプセル30の温度と全く同じではなく、多少の差がある。それゆえ、ポンプセル30の温度とポンプセル30のインピーダンスとの間の関係マップ(図9の実線曲線TpZp参照)に基づいて、ヒータ電力を制御すると、センサセル3の温度を所望の温度に制御することが困難な場合がある。
【0051】
そこで、本形態においては、センサセル3の温度とポンプセル30のインピーダンスとの間の関係マップ(図9の破線曲線TsZp参照)に基づいて、ヒータ電力を制御する。つまり、センサセル3の温度とポンプセル30の温度との間には、差が生じ得るものの、所定の関係がある。この関係を介して、センサセル3の温度とポンプセル30のインピーダンスとの間にも所定の関係があることになる。この関係は、ガスセンサ素子1の個体間において、ばらつきが生じ得るものの、当該ガスセンサ素子1においては、所定の関係を有するものとなる。
【0052】
そうすると、例えば出荷前など、予め、ガスセンサ素子1において、センサセル3の温度とポンプセル30のインピーダンスとの関係を把握しておくことが考えられる(図9の実線矢印参照)。この関係を用いて、センサセル3の温度が所定の温度となるようなポンプセル30のインピーダンスとなるように、ヒータ5を制御する。これにより、ポンプセル30のインピーダンスをモニタリングしながら、ヒータ制御を行うことで、センサセル3の温度を所定の温度に高精度に制御することができる。
【0053】
図10に示すように、ポンプセル30の基準ガス側電極32とポンプ電極33との間に、電圧印加部Vpと電流検出部Ipとが設けてある。制御装置101により、電圧印加部Vpによる印加電圧を制御できるよう構成されている。例えば、制御装置101によって、電圧印加部Vpから変化電圧をポンプセル30に印加すると、電流検出部Ipにおいて変化電流が検出される。これらの関係から、ポンプセル30のインピーダンスを検出することができる。また、制御装置101には、上述のセンサセル3の温度とポンプセル30のインピーダンスとの関係マップが記憶されている。制御装置101は、この関係マップと、ポンプセル30のインピーダンスとから、センサセル3の温度を算出することができる。算出されたセンサセル3の温度に応じて、制御装置101は、ヒータ5への電力供給を制御する。制御装置は、例えば、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0054】
上記のように、予め、センサセル3の温度とポンプセル30のインピーダンスとの関係(図9の実線矢印参照)を把握するためには、センサセル3の温度を直接測定しておく必要がある。本形態のガスセンサ素子1は、センサセル3に熱電対4を印刷してある。
【0055】
これにより、センサセル3の温度を高精度に測定することができる。それゆえ、センサセル3の温度とポンプセル30のインピーダンスとの関係を精度よく把握することができる。そして、これに基づいて、ポンプセル30のインピーダンスを所定のインピーダンスに保つようにヒータ電力を制御することで、センサセル3の温度を所定の温度に保つことができる。その結果、NOxの検出精度を高めることができる。
その他は、実施形態1と同様の構成及び作用効果を有する。
【0056】
なお、図9に示す関係曲線は、一例であり、ガスセンサ素子1の構造等によっては、センサセル3の温度が、ポンプセル30の温度よりも高くなる場合等もある。
【0057】
(実施形態4)
本形態は、実施形態1の変形形態であり、図11に示すごとく、熱電対4を基準ガス側電極32に配置した形態である。
すなわち、本形態においては、熱電対4を、絶縁層(図示略)を介して、基準ガス側電極32の表面に印刷してある。これにより、熱電対4が、センサセル3に配置されることとなる。熱電対4の測温接点41が、基準ガス側電極32に配置されている。測温接点41を含めた熱電対4の少なくとも一部は、ダクト72内に配置されることとなる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0058】
本形態においても、センサセル3の温度を高精度に測定することができる。
なお、本形態とは異なり、図12に示すごとく、一般的な熱電対94を、ダクト72に挿入して、基準ガス側電極32に接触させることも考えられる。しかしながら、この場合は、熱電対94の配置精度を高くすることは困難であり、やはり、センサセル3の温度検出を精度よく行うことは困難となる。
【0059】
これに対して、本形態のガスセンサ素子1は、印刷によって、熱電対4を基準ガス側電極32の表面に設けることで、容易かつ正確に、熱電対4を所定の位置に配置することができる。その結果、センサセル3の温度を精度よく検出することが可能となる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0060】
なお、上記実施形態においては、熱電対の測温接点をセンサ電極上又は基準ガス側電極上に配置する形態を示したが、熱電対の測温接点を他の位置に設けることもできる。例えばセンサ電極又は基準ガス側電極の近傍における固体電解質体の表面に、熱電対の測温接点を印刷することもできる。
【0061】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ガスセンサ素子
2 固体電解質体
3 センサセル
31 センサ電極
32 基準ガス側電極
4 熱電対
5 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12