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  • 特開-庇の施工方法および庇ユニット 図1
  • 特開-庇の施工方法および庇ユニット 図2
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  • 特開-庇の施工方法および庇ユニット 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105992
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】庇の施工方法および庇ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20240731BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20240731BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
E04B1/00 501B
E04B7/02 501Z
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010025
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】濱田 幸崇
(72)【発明者】
【氏名】深谷 朋之
(72)【発明者】
【氏名】宮▲高▼ 芳信
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA01
2E174DA07
2E174DA18
2E174DA21
2E174DA32
2E174DA63
2E174DA64
(57)【要約】
【課題】施工性が高い庇の施工方法、および、庇の施工性を高める庇ユニットを提供する。
【解決手段】本体鉄骨20に対し、第1大梁21よりも本体鉄骨20の屋内側に本体側仮固定部26を設ける。また、第1セメント組成物が硬化した庇部43と庇部43に埋設された基端部を有して庇部43から本体鉄骨20の屋内側に向かって突出する下地鉄骨70とを有するプレキャスト製の庇ユニット41を形成する。そして、下地鉄骨70の先端部を本体側仮固定部26に仮固定するとともに下地鉄骨70の中間部を第1大梁21に支持させた状態で、本体側仮固定部26と下地鉄骨70とが埋設されるように第2セメント組成物を打設する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体鉄骨の外周部に位置する梁に沿うように設けられる庇の施工方法であって、
前記本体鉄骨に対し、前記梁よりも前記本体鉄骨の屋内側に本体側仮固定部を設け、
第1セメント組成物が硬化した庇部と前記庇部に埋設された基端部を有して前記庇部から前記本体鉄骨の屋内側に向かって突出する下地鉄骨とを有するプレキャスト製の庇ユニットを前記梁に沿うように配置し、
前記下地鉄骨の先端部を前記本体側仮固定部に仮固定するとともに前記下地鉄骨の中間部を前記梁に支持させた状態で、前記本体側仮固定部と前記下地鉄骨とが埋設されるように第2セメント組成物を打設する
庇の施工方法。
【請求項2】
前記下地鉄骨は、ボルトを用いて前記本体側仮固定部に仮固定される
請求項1に記載の庇の施工方法。
【請求項3】
前記下地鉄骨の先端部には、前記下地鉄骨の延在方向に延びる長穴形状の孔が形成されており、前記孔に前記ボルトを挿通する
請求項2に記載の庇の施工方法。
【請求項4】
前記梁に、前記中間部の位置を上下方向に調整可能に前記中間部を支持する調整機構を設け、
前記下地鉄骨の先端部を前記本体側仮固定部に仮固定した状態において、前記調整機構を用いて、前記庇ユニットの位置調整を行う
請求項1に記載の庇の施工方法。
【請求項5】
前記庇ユニットは、前記第1セメント組成物によって前記庇部と一体的に形成され、前記庇部の下端部から前記本体鉄骨の屋内側に向かって突出し、前記梁に支持される先端部を有する下枠部を有し、
前記下枠部を前記庇部と前記梁との間における型枠として前記第2セメント組成物を打設する
請求項1に記載の庇の施工方法。
【請求項6】
前記本体鉄骨の外周部に沿うように複数の前記庇ユニットを仮固定したのち、
前記複数の庇ユニットの前記下地鉄骨が埋設されるように前記第2セメント組成物を打設する
請求項1~5のいずれか一項に記載の庇の施工方法。
【請求項7】
本体鉄骨の外周部に位置する梁に沿う庇を構成するプレキャスト製の庇ユニットであって、
前記本体鉄骨は、前記梁よりも前記本体鉄骨の屋内側に位置する本体側仮固定部を有し、
前記庇ユニットは、
セメント組成物が硬化した庇本体と、前記庇本体に埋設された基端部を有して前記庇本体から前記本体鉄骨の屋内側に向かって突出する下地鉄骨と、を有し、
前記下地鉄骨は、前記本体側仮固定部に仮固定される先端部と前記梁に支持される中間部とを有する
庇ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庇の施工方法、および、該庇を構成する庇ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、セメント組成物製の庇の施工方法が開示されている。具体的には、庇の形成部分に支保工で支持された型枠を設置したのち、その型枠に対してセメント組成物を打設することにより庇を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-164753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、支保工の設置・撤去が必要であるため、施工性が高いとはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する庇の施工方法は、本体鉄骨の外周部に位置する梁に沿うように設けられる庇の施工方法であって、前記本体鉄骨に対し、前記梁よりも前記本体鉄骨の屋内側に本体側仮固定部を設け、第1セメント組成物が硬化した庇部と前記庇部に埋設された基端部を有して前記庇部から前記本体鉄骨の屋内側に向かって突出する下地鉄骨とを有するプレキャスト製の庇ユニットを前記梁に沿うように配置し、前記下地鉄骨の先端部を前記本体側仮固定部に仮固定するとともに前記下地鉄骨の中間部を前記梁に支持させた状態で、前記本体側仮固定部と前記下地鉄骨とが埋設されるように第2セメント組成物を打設する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、庇の施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】庇の施工方法の一実施形態によって庇が設置された建築物の概略構成を示す図である。
図2】本体鉄骨とともに庇ユニットの一実施形態の概略構成を示す上面図である。
図3】本体鉄骨とともに庇ユニットの内部構造を模式的に示す図である。
図4】外周方向における庇ユニットの端面を示す図である。
図5】(a)本体鉄骨に対して庇ユニットが配置される様子を示す図であり、(b)スラブを形成する第2セメント組成物が打設される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図5を参照して、庇の施工方法および庇ユニットの一実施形態について説明する。図1に示すように、建築物10は、本体鉄骨20、スラブ35、庇40を有する。
本体鉄骨20は、例えばH形鋼などの各種の鉄骨材を互いに接続することにより形成されている。
【0009】
スラブ35は、本体鉄骨20に支持されている。スラブ35は、第2セメント組成物を打設して硬化させることにより形成される。本実施形態のスラブ35は、各種鉄筋が埋設された鉄筋コンクリート製である。この場合、第2セメント組成物は、セメントと、砂や砂利などの骨材と、水とを混練したフレッシュコンクリートである。
【0010】
庇40は、スラブ35に連なるようにして本体鉄骨20の外周部から本体鉄骨20の屋外側へ延びている。庇40は、本体鉄骨20の外周部に沿うように並設されたプレキャスト製の複数の庇ユニット41を有する。庇ユニット41は、本体鉄骨20に仮固定された状態でスラブ35が形成されることにより、本体鉄骨20およびスラブ35に固定される。
【0011】
なお、以下では、場合によって、本体鉄骨20の外周部に沿う方向を外周方向、水平方向のうち本体鉄骨20の屋外側に向かう水平方向を屋外方向、本体鉄骨20の屋内側に向かう水平方向を屋内方向という。各図において、X方向は外周方向、+Y方向は屋外方向、-Y方向は屋内方向、Z方向は上下方向である。
【0012】
(本体鉄骨)
図2に示すように、本体鉄骨20は、スラブ35を支持する鉄骨材として、第1大梁21、第2大梁22、小梁23、接続梁24を有する。第1大梁21は、柱材25から外周方向に延びている。第2大梁22は、柱材25から屋内方向に延びている。小梁23は、外周方向に延びて第2大梁22同士を接続している。接続梁24は、第1大梁21から屋内方向に延びて第1大梁21と小梁23とを接続している。
【0013】
図3に示すように、本体鉄骨20は、スラブ35を支持する鉄骨材に、本体側仮固定部26と調整機構30とを有する。本体側仮固定部26は、調整機構30よりも本体鉄骨20の屋内側に設けられる。本実施形態では、本体側仮固定部26は接続梁24、調整機構30は第1大梁21に設けられている。
【0014】
本体側仮固定部26は、庇ユニット41が仮固定される部分である。本体側仮固定部26は、接続梁24から上方に向かって延びている。本体側仮固定部26は、一対の側面部と上面部とを有する。本体側仮固定部26の上面部には、本体側挿通孔28が形成されている。また、接続梁24は、本体側仮固定部26の接合部分の下方が補強板29によって補強されている。
【0015】
調整機構30は、本体側仮固定部26に仮固定された庇ユニット41を下方から支持するとともに本体側仮固定部26を基準とした上下方向における庇ユニット41の位置を調整する機構である。調整機構30は、第1大梁21に接合された調整用ナット31と調整用ナット31に螺合する調整用ボルト32とで構成される。
【0016】
(庇ユニット)
図3に示すように、庇ユニット41は、庇本体42と下地鉄骨70とを有する。
庇本体42は、図3においてドットが付された部分である。庇本体42は、第1セメント組成物を硬化させることにより形成される。本実施形態の庇本体42は、各種鉄筋が埋設された鉄筋コンクリート製である。この場合、第1セメント組成物は、セメントと、砂や砂利などの骨材と、水とを混練したフレッシュコンクリートである。
【0017】
庇本体42は、庇部43と、下枠部44と、サッシ支持部45とを有する。
庇部43は、本体鉄骨20から屋外方向に向かって延びる部分である。庇部43の上面43aは、屋外方向寄りに位置する部位ほど下方に位置するように傾斜する傾斜面に形成されている。庇部43の下面43bは、水平方向に沿う平坦面に形成されている。庇部43の各所には、吊り用金具46が埋設されている。吊り用金具46は、クレーンなどで庇ユニット41を揚重する際に吊り具が連結される。吊り用金具46は、庇部43の上面部や屋内方向における庇部43の端部に埋設されている。
【0018】
下枠部44は、庇部43に一体的に形成されて庇部43の下端部から屋内方向に延びる板状の部分である。下枠部44は、スラブ35の形成時に打設される第2セメント組成物の型枠として機能する。下枠部44は、その先端部が第1大梁21に上方から当接可能に形成される。
【0019】
サッシ支持部45は、屋内方向における庇部43の端部から上方に突出して外周方向に延びる突条の部分である。サッシ支持部45には、外周方向における所定間隔で、図示されないサッシ用アンカーが埋設される。
【0020】
また、上階に位置する庇部43との間にルーバーが設置される場合、庇本体42は、庇部43にルーバー支持部47を有していてもよい。ルーバー支持部47は、庇部43の上面43aから上方に突出して、庇部43の先端部から本体鉄骨20の屋内方向に延びる突条に形成される。ルーバー支持部47には、ルーバー用金具が埋設される。
【0021】
庇本体42は、各種鉄筋として、下端筋51、定着筋52、矩形筋53、配力筋54、および、カイザー筋55を有する。下端筋51、定着筋52、矩形筋53、および、カイザー筋55の各々は、所定の設計間隔で外周方向に並設されている(図2参照)。
【0022】
下端筋51は、庇部43の下端部と下枠部44とに跨がるように庇部43の先端部から屋内方向に延びている。
定着筋52は、屋外方向における下端筋51の端部付近から上方に向かって延びたのち、庇本体42の上面43aに沿って本体鉄骨20側へ延びている。定着筋52は、庇本体42の上面43aに沿って延びたあとに屋内方向へ延びている。定着筋52は、屋内方向における庇部43の端面43cから突出している。定着筋52の突出端は、下枠部44よりも本体鉄骨20の屋内側に配置される。
【0023】
矩形筋53は、屋内方向における庇部43の端部とサッシ支持部45とに跨がるように埋設されている。
配力筋54は、外周方向に並設された下端筋51、定着筋52、および、矩形筋53の各々を互いに接続するように外周方向に延びている。
【0024】
カイザー筋55は、庇部43に埋設された部分を有する。カイザー筋55は、その埋設された部分から屋内方向に向かって延びている。カイザー筋55は、屋内方向における庇部43の端面43cから突出している。その突出部分における下端部は、下枠部44に埋設されている。なお、図3においては、カイザー筋55を点線で示している。
【0025】
図3に示すように、下地鉄骨70は、例えばH形鋼で形成される。下地鉄骨70は、庇部43に埋設された基端部から屋内方向へ延びている。下地鉄骨70は、屋内方向における庇部43の端面43cから突出している。下地鉄骨70の先端部は、定着筋52の突出端よりも本体鉄骨20の屋内側に配置される。下地鉄骨70は、庇本体42を片持ち状に支持するのに十分な強度を有する。下地鉄骨70は、所定の設計間隔で外周方向に並設されている(図2参照)。
【0026】
下地鉄骨70の先端部には、ユニット側挿通孔71が設けられている。ユニット側挿通孔71は、下地鉄骨70の延在方向に延びる長穴形状に形成されている(図2参照)。本実施形態において、ユニット側挿通孔71は、下地鉄骨70の下面に接合されて下地鉄骨70よりも幅広な仮固定板72に形成されている。仮固定板72には、上面視において下地鉄骨70を挟むように一対のユニット側挿通孔71が形成されている。庇ユニット41は、本体側挿通孔28とユニット側挿通孔71とに挿通されるボルト85がナット86と締結されることにより仮固定される(図5(b)参照)。なお、ユニット側挿通孔71は、下地鉄骨70の下側フランジに設けられていてもよい。
【0027】
下地鉄骨70の各所には、補強板73が設けられている。補強板73は、下地鉄骨70の上側フランジ、下側フランジ、および、ウェブに対して接合されている。補強板73は、下地鉄骨70の先端部のほか、調整機構30の直上に位置する中間部などに設けられている。
【0028】
図4に示すように、庇ユニット41は、外周方向における庇本体42の端面43dにガスケット溝80とノロ止め溝81を有する。ガスケット溝80には、隣に位置する庇本体42との間の隙間をシールするガスケットが配設される。ガスケットは、その隙間を通じた庇本体42の下方空間への雨水の漏れを防止する。ノロ止め溝81には、ノロ止めが配設される。ノロ止めは、スラブ35の形成時に、隣に位置する庇本体42との間の隙間を通じた第2セメント組成物の漏れを防止する。
【0029】
(施工方法)
上述した庇40の施工方法について説明する。なお、本体鉄骨20には、本体側仮固定部26と調整機構30とが設置されているものとする。また、施工現場には、工場等において製作された庇ユニット41が搬入されているものとする。
【0030】
まず、図5(a)に示すように、図示されないクレーンなどを用いて庇ユニット41を揚重し、下枠部44の先端部が第1大梁21に、下地鉄骨70の先端部が本体側仮固定部26に、下地鉄骨70の中間部が調整機構30に当接するように庇ユニット41を搬送する。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、ボルト85とナット86とで構成される仮固定材を用いて、本体側仮固定部26と下地鉄骨70の先端部とを連結して本体鉄骨20に庇ユニット41を仮固定する。この際、庇ユニット41は、調整機構30による位置調整や長穴形状のユニット側挿通孔71を利用した位置調整が可能な程度の締結力で仮固定される。庇ユニット41の位置調整が行われると、庇ユニット41の位置がずれない程度に仮固定材の締結力を調整する。なお、こうした庇ユニット41の仮固定や位置調整は、クレーンに揚重された状態で行われることが好ましい。
【0032】
庇ユニット41の仮固定および位置調整が完了すると、ガスケット溝80にガスケットが配設されたのち、隣に位置する庇ユニット41について、搬送、仮固定、位置調整が行われる。また、ノロ止め溝81にノロ止めが配設される。
【0033】
そして、全ての庇ユニット41が配設されると、各庇ユニット41の下地鉄骨70などが埋設されるように第2セメント組成物が打設される。第2セメント組成物が硬化してスラブ35が形成されると、各庇ユニット41は、定着筋52、カイザー筋55、および、下地鉄骨70がスラブ35に埋設された状態で本体鉄骨20およびスラブ35に固定される。
【0034】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)上述した庇の施工方法においては、庇ユニット41が本体鉄骨20に仮固定されたのち、スラブ35を形成する際に打設される第2セメント組成物に埋設される下地鉄骨70を有する。この下地鉄骨70は、庇本体42を片持ち状に支持するのに十分な強度を有するため、支保工を設置することなく庇40を設置することができる。その結果、庇40の施工性を高めることができる。
【0035】
(2)下地鉄骨70がスラブ35に埋設されることにより、本体鉄骨20およびスラブ35に対して庇ユニット41をより強固に固定することができる。
(3)下地鉄骨70は、ボルト85を用いて本体側仮固定部26に仮固定される。これにより、溶接によって下地鉄骨70が本体側仮固定部26に仮固定される場合に比べて、下地鉄骨70の仮固定を容易に行うことができる。また、ユニット側挿通孔71が長穴形状に形成されていることにより、下地鉄骨70の延在方向において庇ユニット41の位置調整を行うことができる。
【0036】
(4)本体鉄骨20には、下地鉄骨70の中間部を支持するとともに中間部の位置を上下方向に調整可能な調整機構30が設けられている。これにより、下地鉄骨70の先端部を基準として上下方向における庇ユニット41の位置を調整することができる。
【0037】
(5)上述した(3)(4)により、庇ユニット41や本体鉄骨20に製造誤差などが生じている場合であっても、各庇ユニット41を高い精度のもとで設置することができる。
【0038】
(6)庇本体42は、スラブ35を形成する第2セメント組成物の打設時に、庇部43と本体鉄骨20との間における型枠として機能する下枠部44が設けられている。これにより、本体鉄骨20から庇部43が離れていたとしても、スラブ35を形成する際に、庇部43および下枠部44を型枠として第2セメント組成物を打設することができる。その結果、庇部43の形状や本体鉄骨20に対する庇部43の相対位置についての自由度が向上する。また、庇部43に連続するようにスラブ35を形成することができるとともにスラブ35の施工性も高めることができる。
【0039】
(7)庇ユニット41には、スラブ35に埋設される定着筋52が設けられている。また、庇ユニット41には、スラブ35に埋設されるカイザー筋55が設けられている。これらにより、スラブ35に対して庇ユニット41をより強固に固定することができる。
【0040】
(8)庇本体42には、外周方向における端面43dにガスケット溝80が形成されている。また、ガスケット溝80にガスケットが配設された状態で、隣に位置する庇ユニット41が設置される。これにより、隣り合う庇本体42の間の隙間を小さくしつつ、その隙間を通じた雨水の漏れを防止することができる。
【0041】
(9)庇本体42には、外周方向における端面43dにノロ止め溝81が形成されている。また、ノロ止め溝81には、隣に位置する庇ユニット41の庇本体42との間の隙間を覆うようにノロ止めが配設される。これにより、スラブ35の形成時に、その隙間を通じた第2セメント組成物の漏れを防止することができる。
【0042】
(10)複数の庇ユニット41が仮固定したのちにそれらの庇ユニット41の下地鉄骨70が埋設されるように第2セメント組成物が打設される。これにより、第2セメント組成物の打設工程に要する時間を短縮することができる。
【0043】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・庇ユニット41は、第1大梁21に直接当接するように庇部43が配置される構成であってもよい。この場合、下枠部44は不要である。
【0044】
・ボルト85の挿通孔は、円形孔であってもよい。
・下地鉄骨70の先端部は、例えば接続梁24など、本体鉄骨20を構成する梁の一部を本体側仮固定部として、その梁に直接仮固定される構成であってもよい。
【0045】
・下地鉄骨70の中間部は、調整機構30を介すことなく第1大梁21に支持される構成であってもよい。
・第1セメント組成物および第2セメント組成物は、スリムクリート(登録商標)等の繊維を混合したもの(繊維補強コンクリート材料)であってもよい。
【0046】
・庇ユニット41は、本体鉄骨20の外周部に位置する梁に沿うように設けられればよい。そのため、本体鉄骨20の外周部に小梁が配置される場合には、その小梁に沿うように設けられてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…建築物、20…本体鉄骨、21…第1大梁、22…第2大梁、23…小梁、24…接続梁、25…柱材、26…本体側仮固定部、28…本体側挿通孔、29…補強板、30…調整機構、31…調整用ナット、32…調整用ボルト、35…スラブ、40…庇、41…庇ユニット、42…庇本体、43…庇部、43a…上面、43b…下面、43c,43d…端面、44…下枠部、45…サッシ支持部、46…吊り用金具、47…ルーバー支持部、51…下端筋、52…定着筋、53…矩形筋、54…配力筋、55…カイザー筋、70…下地鉄骨、71…ユニット側挿通孔、72…仮固定板、73…補強板、80…ガスケット溝、81…ノロ止め溝、85…ボルト、86…ナット。
図1
図2
図3
図4
図5