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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105998
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】繊維製品の型崩れ回復方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/04 20060101AFI20240731BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20240731BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20240731BHJP
   D06M 16/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C11D1/04
C11D3/386
D06M13/188
D06M16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010031
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政宏
(72)【発明者】
【氏名】的場 美樹
【テーマコード(参考)】
4H003
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA01
4H003EB04
4H003EB14
4H003EC03
4H003ED02
4H003FA21
4H003FA28
4L031AB31
4L031BA39
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA17
(57)【要約】
【課題】繊維製品に発生した型崩れを回復させる、繊維製品の型崩れ回復方法、及び繊維製品用型崩れ回復剤を提供する。
【解決手段】有効成分として下記(a)成分、及び水を含む処理液を、繊維製品に接触させて、JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が35以下である機械力で繊維製品を洗浄する、繊維製品の型崩れ回復方法。
(a)成分:炭素数10以上18以下の脂肪酸又はその塩
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として下記(a)成分、及び水を含む処理液を、繊維製品に接触させて、JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が35以下である機械力で繊維製品を洗浄する、繊維製品の型崩れ回復方法。
(a)成分:炭素数10以上18以下の脂肪酸又はその塩
【請求項2】
前記処理液が、更に下記(b)成分を含有する、請求項1に記載の繊維製品の型崩れ回復方法。
(b)成分:エンド型セルラーゼ
【請求項3】
有効成分として下記(a)成分を含有する、繊維製品用型崩れ回復剤。
(a)成分:炭素数10以上18以下の脂肪酸又はその塩
【請求項4】
(a)成分の含有量が1質量%以上である、請求項3に記載の繊維製品用型崩れ回復剤。
【請求項5】
更に下記(b)成分を含有する、請求項3又は4に記載の繊維製品用型崩れ回復剤。
(b)成分:エンド型セルラーゼ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の型崩れ回復方法、及び繊維製品用型崩れ回復剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料が着用や洗濯の繰り返しによって、新品時の外観の美しさを失うことは避けられないと言われている。特にファッション性に優れたニット衣料は、単繊維を甘く撚った糸で構成されていることから、着用や洗濯によって糸の解れや、糸を構成する単繊維の位置ずれが発生するため、伸びや型崩れなどの外観変化が発生しやすい。即ち、着用者にとって重要とされる衣料の外観美が失われてしまう。このように、衣料が中古化することによりくたびれた外観が生じる。
【0003】
特許文献1には、(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる1種以上と(ポリ)オキシアルキレン単位と、を有する水溶性ポリマーと、(B)成分:一般式(b1)で表される化合物及びその塩から選ばれる1種以上と、(C)成分:水不溶性シリコーンと、を含有し、前記(B)成分/前記(A)成分で表される質量比は0.5~5、前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比は0.2~14であることよりなる、繊維製品の品位低下をより良好に防げる繊維製品用の洗浄剤が開示されている。
【0004】
従来の繊維製品に発生した型崩れを回復させる手段としては、糊剤や特許文献1に記載されているような合成ポリマーを用いるのが一般的である。しかし、このような化学物質は、生産から排出まで環境負荷が高い。今後、持続可能な社会の実現のためにもサステナブルな剤の選定が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-127369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、繊維製品に発生した型崩れを回復させる、繊維製品の型崩れ回復方法、及び繊維製品用型崩れ回復剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有効成分として下記(a)成分、及び水を含む処理液を、繊維製品に接触させて、JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が35以下である機械力で繊維製品を洗浄する、繊維製品の型崩れ回復方法に関する。
(a)成分:炭素数10以上18以下の脂肪酸又はその塩
【0008】
また本発明は、有効成分として前記(a)成分を含有する、繊維製品用型崩れ回復剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維製品に発生した型崩れを回復させる、繊維製品の型崩れ回復方法、及び繊維製品用型崩れ回復剤が提供される。
本発明において「型崩れ」とは、本明細書の段落[0076]に記載の布のカーリング変形率の式により定義され、カーリング変形率が35%以上になる状態を指す。「型崩れ回復」とはカーリング変形率が35%以上になる状態から、カーリング変形率が32%未満に回復した状態を指す。また、「型崩れ」は、ヨレやくたびれと同義である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[繊維製品用型崩れ回復剤]
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、繊維製品の型崩れ回復の有効成分として、(a)成分である、炭素数10以上18以下の脂肪酸又はその塩を含有する。
【0011】
(a)成分の脂肪酸の炭素数は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
(a)成分の脂肪酸は、直鎖脂肪酸、分岐鎖脂肪酸の何れでもよいが、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、直鎖脂肪酸が好ましい。
(a)成分の脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の何れでもよいが、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、飽和脂肪酸が好ましい。
(a)成分の塩は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はモノエタノールアンモニウム塩やジエタノールアンモニウム塩などの有機アンモニウム塩などが挙げられる。
【0012】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、(a)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、回復剤中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下含有する。
本発明において、(a)成分の質量は、酸換算した値を用いるものとする。
【0013】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、任意に(b)成分として、エンド型セルラーゼを含有することが好ましい。
【0014】
エンド型セルラーゼとは、セルロース鎖をランダムに加水分解し種々のセロオリゴ糖を生成するセルラーゼの総称である。
エンド型セルラーゼとしては、型崩れ回復の観点から、例えば、セルクリーン4500L(商品名、ノボザイムズ社製)、ケアザイムプレミアム4500L(商品名、ノボザイムズ社製)、及びREVITALENZ200(商品名、デュポン社製)等から選ばれる1種以上のエンドグルカナーゼ製剤が好ましい。この内、型崩れ回復の観点から、(b)成分は、ケアザイムプレミアム4500Lがより好ましい。これらの(b)成分は、1種類の成分が単独で用いられてもよいし、2種類以上の成分が組み合わされて用いられてもよい。
【0015】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、(b)成分を、繊維製品の型崩れを回復させる観点から、酵素タンパク質量として、回復剤中、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.003質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下含有する。
なお本発明において、(b)成分の質量に関する規定は、純分換算、すなわち酵素タンパク質量として換算された値を用いる。(b)成分の酵素タンパク質量は、(b)成分が市販品で酵素タンパク質量が既知であればその値を採用してよい。また、(b)成分の酵素タンパク質量を測定する場合は、Lowry法に基づいて測定されたものであってよい。Lowry法には、市販の測定キット、例えば、DCプロテインアッセイキットII(バイオラッド社製)を用いて測定することができる。
【0016】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは200以下、より更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下である。
【0017】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、任意に(c)成分として、界面活性剤(但し、(a)成分を除く)を含有してもよい。
【0018】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、(c)成分を含有する場合、(c)成分として、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、(c1)ノニオン界面活性剤(以下、(c1)成分という)、及び(c2)アニオン界面活性剤(但し、(a)成分に該当するものは除く、以下、(c2)成分という)から選ばれる1種以上を含有してもよい。
【0019】
(c1)成分のノニオン界面活性剤としては、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ソルビタン系非イオン性界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、(c1)成分は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、一般式(c1-1)で表される化合物〔以降、(c1-1)成分〕、一般式(c1-2)で表される化合物〔以降、(c1-2)成分〕、一般式(c1-3)で表される化合物〔以降、(c1-3)成分〕、及び一般式(c1-4)で表される化合物〔以降、(c1-4)成分〕から選ばれる1種以上のノニオン界面活性剤が挙げられる。
1-1c-(AO)-R1-2c (c1-1)
〔一般式(c1-1)中、R1-1cは炭素数9以上18以下の炭化水素基であり、AOはアルキレンオキシ基であり、nはAOの平均付加モル数であり、3以上50以下の数であり、R1-2cは水素原子又はメチル基である。〕
1-3c-O-(EO)-(PO)-(EO)-R1-4c (c1-2)〔一般式(c1-2)中、R1-3cは炭素数10以上24以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOとPOはこの順でブロック結合をしており、yはPOの平均付加モル数であり、1以上6以下の数であり、x、zはEOの平均付加モル数であり、x+zは3以上50以下の数であり、R1-4cは水素原子又はメチル基である。〕
1-5cCOO-(AO)-R1-6c (c1-3)
〔一般式(c1-3)中、R1-5cは炭素数9以上24以下の炭化水素基であり、AOはアルキレンオキシ基であり、mはAOの平均付加モル数であり、3以上50以下の数であり、R1-6cは水素原子又はメチル基である。〕
1-7c-O-(PO)-(EO)-R1-8c (c1-4)
〔式中のR1-7cは炭素数10以上24以下の脂肪族炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOとPOはこの順でブロック結合をしており、sはPOの平均付加モル数であり、0.1以上20以下の数であり、tはEOの平均付加モル数であり、4以上25以下の数であり、R1-8cは水素原子又はメチル基である。〕
【0021】
一般式(c1-1)中、R1-1cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、18以下、好ましくは15以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c1-1)中、AOはアルキレンオキシ基であり、好ましくはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。
一般式(c1-1)中、nは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下の数である。
一般式(c1-1)中、R1-2cは、好ましくは水素原子である。
【0022】
一般式(c1-2)中、R1-3cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数10以上、好ましくは11以上、より好ましくは12以上、そして、24以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c1-2)中、yは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、そして、6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下の数である。
一般式(c1-2)中、x+zは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは25以下の数である。
一般式(c1-2)中、R1-4cは、好ましくは水素原子である。
【0023】
一般式(c1-3)中、R1-5cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c1-3)中、AOはアルキレンオキシ基であり、好ましくはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。
一般式(c1-3)中、mは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下の数である。
一般式(c1-3)中、R1-6cは、好ましくはメチル基である。
【0024】
一般式(c1-4)中、R1-7cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c1-4)中、sは、POの平均付加モル数であり、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、0.1以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、そして、20以下、好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下、より更に好ましくは4以下の数である。
一般式(c1-4)中、tは、EOの平均付加モル数であり、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、4以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、そして、25以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは17以下の数である。
一般式(c1-4)中、R1-8cは、好ましくは水素原子である。
【0025】
(c2)成分のアニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル、アルケニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルケニルベンゼンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、内部オレフィンスルホン酸、アルキル又はジアルキルスルホコハク酸、アルケニル又はジアルケニルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、(c2)成分は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、一般式(c2-1)で表される化合物〔以降、(c2-1)成分〕、一般式(c2-2)で表される化合物〔以降、(c2-2)成分〕、及び一般式(c2-3)で表される化合物〔以降、(c2-3)成分〕から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。(c2)成分は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、(c2-3)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が好ましい。
2-1c-B-SOM (c2-1)
〔一般式(c2-1)中、R2-1cは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、Bはベンゼン環であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。Bに結合するR2-1cに対して、スルホン酸基はパラ位に結合している。〕
2-2c-O-(AO)-SOM (c2-2)
〔一般式(c2-2)中、R2-2cは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、AOはアルキレンオキシ基であり、pはAOの平均付加モル数であり、0.1以上10以下の数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。〕
2-3c-O-(PO)(EO)-SOM (c2-3)
〔一般式(c2-3)中、R2-3cは炭素数8以上22以下の炭化水素基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、EOとPOはブロック又はランダム結合であってもよく、qはPOの平均付加モル数であり、1以上5以下の数であり、rはEOの平均付加モル数であり、0.1以上10以下の数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。〕
【0027】
一般式(c2-1)中、R2-1cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c2-1)中、Mは、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。Mは、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0028】
一般式(c2-2)中、R2-2cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c2-2)中、AOはアルキレンオキシ基であり、好ましくはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。
一般式(c2-2)中、pは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、そして、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下の数である。
一般式(c2-2)中、Mは、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。Mは、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0029】
一般式(c2-3)中、R2-3cは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
一般式(c2-3)中、POとEOは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくはR2-3c-Oに、PO、EOの順にブロック結合である。
一般式(c2-3)中、qは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上、そして、5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下の数である。
一般式(c2-3)中、rは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、0.1以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下の数である。
一般式(c2-3)中、Mは、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。Mは、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはモノエタノールアンモニウムである。
【0030】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、回復剤中、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下含有する。
なお本発明において、(c)成分として、(c2)成分を含有する場合、(c2)成分の質量は、(c2-1)成分および(c2-2)成分はナトリウム塩、(c2-3)成分はモノエタノールアミン塩に換算された値を用いる。
【0031】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤中、(c)成分を含有する場合、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.003以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.15以下である。
【0032】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、任意に(d)成分として、水酸基を有する有機溶剤を任意に含有することができる。
【0033】
(d)成分の具体例は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、下記の(d1)~(d5)の化合物を挙げることができる。
(d1)エタノール、イソプロパノール等の炭素数2以上4以下の1価のアルコール
(d2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の炭素数2以上8以下の2価以上6価以下の多価アルコール
(d3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数4以上12以下のグリコールエーテル
(d4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1,3-ジメチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、1,3-ジエチルグリセリルエーテル、1-ペンチルグリセリルエーテル、2-ペンチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の2価以上4価以下の多価アルコールのアルキル(炭素数1以上10以下)エーテル
(d5)フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2-ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等のグリコールの芳香族エーテル
【0034】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、回復剤中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、そして、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下含有する。
【0035】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、繊維製品の処理に用いられる一般的な組成物に添加される成分を含有することができ、例えば防腐剤、顔料、キレート剤、ハイドロトロープ剤等(但し、(a)成分~(d)成分を除く)を含有することができる。
【0036】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、従来の繊維製品に発生した型崩れを回復させる手段として用いられていた、下記(e1)~(e6)成分から選ばれる1種以上(以下、(e)成分という)を含有しなくとも、繊維製品の型崩れ回復をすることができる。(e)成分は、生産から排出まで環境負荷が高いため、(e)成分を用いない若しくはその含有量が少ない、本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献できる。
(e1)シリコーン
(e2)消泡剤
(e3)3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物
(e4)アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位を含有し、かつ(ポリ)オキシアルキレン単位を有する水溶性ポリマー
(e5)糊基剤
(e6)風合い向上剤
【0037】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤中、(e)成分の含有量は、環境負荷低減の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下である。
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、環境負荷低減の観点から、(e)成分を含有しなくともよい。
【0038】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、水を含有することができる。水としては、イオン交換水、水道水、精製水、次亜塩素酸ナトリウムを0.1mg/kg以上3mg/kg以下含有する水等を使用することができる。
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、水を、回復剤中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下含有する。
【0039】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤の25℃におけるpHは、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。このようなpHに調整するには、通常の硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、乳酸等の酸と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ剤、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の炭素数2以上6以下のアルカノールアミンを用いることができる。
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤のpHは、下記に記載のpHの測定法に従って測定する。
[pHの測定法]
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター D-74)にpH測定用複合電極(HORIBA製 9615S計量法型式JF15)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプルを25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し2分後のpHを測定する。
【0040】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤は、後述するJIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が、35以下、好ましくは30以下、そして、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上の機械力で、繊維製品、好ましくはセルロース繊維を含む繊維製品を洗浄する方法に好適である。
【0041】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤が対象とする繊維製品は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくはセルロース繊維を含む繊維製品である。
セルロース繊維としては、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、再生セルロース繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート)などが挙げられる。
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤が対象とする繊維製品は、繊維製品の型崩れ回復を実感できる観点から、繊維製品中のセルロース繊維の含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、100質量%以下である。
【0042】
本発明の繊維製品用型崩れ回復剤が対象とする繊維製品は、セルロース繊維以外の繊維を含んでよい。
セルロース繊維以外の繊維は、疎水性繊維、セルロース繊維以外の親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)等が例示される。セルロース繊維以外の親水性繊維としては、例えば、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛等が例示される。
【0043】
本発明において繊維製品としては、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、前記の繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品が挙げられる。
【0044】
[繊維製品の型崩れ回復方法]
本発明は、有効成分として(a)成分、及び水を含む処理液(以下、本発明の処理液という)を、繊維製品に接触させて、JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が35以下である機械力で繊維製品を洗浄する、繊維製品の型崩れ回復方法に関する。
【0045】
<処理液>
本発明の処理液は、有効成分として(a)成分、及び水を含む。
本発明の処理液は、更に(b)成分を含有することができる。
本発明の処理液は、更に(c)成分を含有することができる。
本発明の処理液は、更に(d)成分を含有することができる。
(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、は、本発明の繊維製品用型崩れ回復剤で記載した態様と同じである。
本発明の処理液は、本発明の繊維製品用型崩れ回復剤を水で希釈して調製されたものであってよい。
本発明の処理液は、本発明の繊維製品用型崩れ回復剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の処理液中の(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)は、本発明の繊維製品用型崩れ回復剤で記載した範囲と同じである。
【0046】
本発明の処理液は、(a)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、処理液中、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0003質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上、そして、好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.005質量%以下含有する。
【0047】
本発明の処理液は、(b)成分を含有する場合、(b)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、酵素タンパク質量として、処理液中、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは0.15ppm以上、より更に好ましくは0.2ppm以上、そして、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下含有する。
【0048】
本発明の処理液は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、処理液中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、更に好ましくは0.06質量%以下含有する。
【0049】
本発明の処理液は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、処理液中、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下含有する。
【0050】
本発明の処理液は、前記した(e)成分を含有してよいが、環境負荷低減の観点から、その含有量は制限される。
本発明の処理液中、(e)成分の含有量は、環境負荷低減の観点から、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.003質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下、より更に好ましくは0.0005質量%以下、より更に好ましくは0.0001質量%以下、より更に好ましくは0.00005質量%以下である。
本発明の処理液は、環境負荷低減の観点から、(e)成分を含有しなくともよい。
【0051】
<洗浄工程>
本発明の方法は、本発明の処理液を、繊維製品に接触させて、JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が35以下である機械力で繊維製品を洗浄する。
対象とする繊維製品は、本発明の繊維製品用型崩れ回復剤で記載した態様と同じである。
本発明の処理液を、繊維製品に接触させる方法は、繊維製品を本発明の処理液に浸漬させる方法が好ましい。
【0052】
洗浄は、JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値が、繊維製品の型崩れを回復させる観点から、35以下、好ましくは30以下、そして、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上の機械力で洗浄すればよい。
【0053】
MA値(Mechanical Action Value)の測定は、一定の剛軟度の綿白布の中央部にあらかじめ直径35mmの円形の穴を五つ打ち抜いてあるMA試験布の4隅を繊維製品に縫い止めたもので洗浄試験を行い、洗浄し乾燥後のMA試験布の穴の上下左右から穴の中に押し出された糸の本数を合計した数値をMA値として測定する。MA値は、洗浄時の繊維製品に及ぼす機械力の指針となる。
【0054】
JIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値の測定方法は、具体的には、以下の方法により測定することができる。
(a)MA試験布の準備
MA試験布は、一定の剛軟度の綿白布の中央部にあらかじめ直径35mmの円形の穴を五つ打ち抜いてある試験布である。これを被洗浄物とともに洗濯し,乾燥後に穴の中にほつれ出た糸の本数を数え,五つの穴についての合計本数をMA値(Mechanical Action Value)と称し,この数値の大小によって洗濯機械力を評価する。MA試験布は,Danish Technological Institute(Denmark)製の試験布で,Mechanical Action Test Clothの略である。これには,主に40cm×40cmと24cm×24cmの2サイズがある。本発明の実施態様では24cm×24cmのMA試験布を使用する。
(b)MA試験布の洗濯処理
MA試験布を被洗浄物に取り付け、MA試験布を取り付けた被洗浄物を、他の被洗浄物とともに、任意の方法で洗濯処理(洗浄、濯ぎ、脱水、乾燥を含む)する。
(c)MA値の測定
洗濯処理後のMA試験布について、各穴に一番近いたて糸及びよこ糸,各2本計4本に細線を引き、外接正方形を記す。次にMA試験布の穴の中央部に向かって、記した外接正方形に接する上下左右で押し出された糸の数を数える。糸の数え方は、X=切れた糸の本数、Y=つながった状態で飛び出した糸の本数を数え、それを外接正方形の4か所について数え、1穴のX+Yの合計を計算した後、5穴の合計を求める。
【0055】
洗浄は、MA値が前記範囲の機械力であれば、回転式洗濯機を用いてもよく、手洗いや漬け置きによる洗浄でもよいが、繊維製品の型崩れを回復させる観点から、回転式洗濯機を用いるのが好ましい。
回転式洗濯機としては、具体的には、縦型洗濯機、二層式洗濯機、ドラム式洗濯機、パルセータ式洗濯機又はアジテータ式洗濯機が挙げられる。これらの回転式洗濯機は、それぞれ、家庭用として市販されているものを使用することができる。
【0056】
本発明の方法において、回転式洗濯機を用いる場合、MA値が前記範囲の機械力で洗濯すればよく、洗濯コースとしては、ドライコース、おしゃれ着コース、手洗いコース、ソフトコース、おうちクリーニングコース、デリケートコース、ホームクリーニングコース等を選択することができる。
【0057】
本発明の方法において、繊維製品の質量(kg)と処理液の水量(リットル)の比で表される浴比の値、すなわち処理液の水量(リットル)/繊維製品の質量(kg)(以下、この比を浴比とする場合もある)の値は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下である。
【0058】
洗浄時の処理液の温度は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは3℃以上、更に好ましくは5℃以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
【0059】
洗浄時間は、繊維製品の型崩れ回復性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは3分以上、そして、好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下である。洗浄時間とは、本発明の処理液が繊維製品と接触している時間を表す。
【0060】
本発明の方法は、本発明の処理液に繊維製品を接触させて洗浄した後に、更に、脱水工程、濯ぎ工程、乾燥工程を行うことができる。但し、脱水工程、濯ぎ工程、乾燥工程ともに、MA値が前記の範囲の機械力で行う必要がある。
【0061】
〔脱水工程〕
本発明の方法において、本発明の処理液を繊維製品と接触させ、洗浄する工程の後に、繊維製品を脱水する脱水工程を行うことができる。脱水工程は、本発明の方法において、繊維製品と共に存在する処理液の量を低減する工程である。脱水工程を行うことで、後述する乾燥時間が早くなり、繊維製品が着用に適する状態になることができる。
脱水工程は、回転式洗濯機を用いて行うことができる。但し、MA値が前記の範囲の機械力で行う必要がある。
【0062】
〔濯ぎ工程〕
本発明の方法において、本発明の処理液を繊維製品と接触させ、洗浄する工程の後、又は繊維製品を脱水する脱水工程の後に、濯ぎ工程を行うこともできる。本発明において、濯ぎ工程とは、洗浄工程で得られた繊維製品を新しい水と接触することで、繊維製品と共にキャリーオーバーされる本発明の処理液の量を減少させる工程を言う。濯ぎ工程は、脱水工程と合わせて複数回行うことができる。
濯ぎ工程は、回転式洗濯機を用いて行うことができる。但し、MA値が前記の範囲の機械力で行う必要がある。
【0063】
〔乾燥工程〕
本発明の方法では、洗浄工程、脱水工程、濯ぎ工程の後に、繊維製品を乾燥させる乾燥工程を行うこともできる。
乾燥工程は、繊維製品と共に存在する水の量を低減する工程である。乾燥は自然乾燥、乾燥機を用いた加熱乾燥のいずれでも良い。乾燥工程は、それぞれ、複数回行うことができる。
乾燥工程は、回転式加熱乾燥機を用いることができる。但し、MA値が前記の範囲の機械力で行う必要がある。
【実施例0064】
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
【0065】
<(a)成分>
・a-1:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の組成が飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸=91/9(質量比)の混合脂肪酸、飽和脂肪酸(全て直鎖)の炭素数組成は、炭素数12/炭素数14/炭素数16/炭素数18=55/22/11/3(質量比)、不飽和脂肪酸の組成がオレイン酸/リノール酸=7/2(質量比)である。花王(株)製
【0066】
<(b)成分>
・b-1:エンド型セルラーゼ、ケアザイムプレミアム4500L(商品名)、ノボザイムズ社製
【0067】
<(c)成分>
・c-1:炭素数12の直鎖第1級アルコールにエチレンオキシドを付加させた平均付加モル数が10モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、(c1-1)成分、一般式(c1-1)中、R1-1cが炭素数12のアルキル基、AOがエチレンオキシ基、nは10、R1-2cが水素原子である化合物
【0068】
<(d)成分>
・d-1:プロピレングリコール
・d-2:ブチルジグリコール
・d-3:エタノール
【0069】
<その他成分>
・pH調整剤:モノエタノールアミン
【0070】
<繊維製品用型崩れ回復剤の調製>
表1に示す各成分を用いて、下記に示す方法で、表1に示す組成の繊維製品用型崩れ回復剤を各100g調製した。
混合容器として200mL容量のガラス製ビーカーにスターラーピース(棒状、長さ3cm)を一つ入れ、必要量の25℃のイオン交換水と(d)成分を入れ、その後攪拌をしながら(c)成分を入れて目視で均一になるまで撹拌した。次いで、撹拌しながら(a)成分入れて混合後、pH調整剤にて組成物のpHが7になるように調整した。その上で最後に(b)成分を入れて混合し、表1に示す繊維製品用型崩れ回復剤を得た。尚、(a)成分と(c)成分において、常温(25℃)で固体である成分については溶融させて均一になったことを確認した上で、ゆっくりと投入をした。
なお表1中の各配合成分の含有量は、全て有効分量であり、(b)成分の含有量は、酵素タンパク質量である。
【0071】
<試験布の前処理>
T/C天竺(ニット)布(綿50質量%、ポリエステル50質量%、MVSカラーTOP天竺、サックスモク、双日ファッション(株)製)を、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレン(6)アルキルエーテル)を含む洗浄液を用いて全自動洗濯機(Panasonic(株)製、NA-F70PB1)で3回繰り返し洗濯し(洗浄液中の界面活性剤濃度0.01質量%、水道水(20℃)、標準コース(洗濯6分-すすぎ2回-脱水5分)、二槽式洗濯機(HITACHI(株)製、PS-H45L)で60分間すすいで、2分脱水した。洗濯したT/Cニット布を25℃/40%RHの環境下で12時間乾燥させて、縦がウェール方向、横がコース方向に平行になるように6×6cm角に裁断し、試験布として使用した。
【0072】
<型崩れした試験布の作製>
ターゴトメーター(Ueshima製MS-8212)を使用して処理を行った。ステンレスビーカーに0.6Lの水道水(20℃)を投入し、次いで衣類用洗濯用洗剤(アタック抗菌EX部屋干し用)0.5gを投入し、100rpmで10秒攪拌した。次に上記前処理済の試験布約30gを入れ、100rpmで10分間撹拌した後、2槽式洗濯機(HITACHI製 PS-H45L)の脱水槽で2分間脱水した。次いで、ステンレスビーカーに新しい水道水を0.6L投入し、そこへ脱水をした試験布を入れて100rpmで3分間撹拌した後、2槽式洗濯機で2分間脱水した。再びステンレスビーカーに新しい水道水を0.6L投入し、そこへ脱水をした試験布を入れて100rpmで3分間撹拌した後、2槽式洗濯機で2分間脱水した。これら一連の操作について累積で2回の処理を実施した。最後に試験布を23℃、40%RHの部屋にて試験布を平干しして自然乾燥を行い、型崩れした試験布として使用した。
【0073】
<調整布の作製>
47cm×100cmに裁断された木綿メリヤス((株)色染社製、綿ニット未シル(シルケット加工されていないもの)、木綿100%)8枚(約1.7kg)を、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレン(6)アルキルエーテル)を含む洗浄液を用いて全自動洗濯機(Panasonic(株)製、NA-F70PB1)で3回繰り返し洗濯し(洗浄液中の界面活性剤濃度0.01質量%、水道水(20℃)、標準コース(洗濯6分-すすぎ2回-脱水5分)、二槽式洗濯機(HITACHI(株)製、PS-H45L)で泡が出なくなるまで十分にすすいだのち、2分脱水した。脱水後は23℃/40%RHで自然乾燥させた後、6cm×6cm角に裁断して調整布として使用した。
【0074】
<型崩れした試験布の洗浄>
前述のターゴトメーター(Ueshima製MS-8212)を使用して処理を行った。ステンレスビーカーに0.6Lの水道水(20℃)を投入し、次いで表1に示す組成の繊維製品用型崩れ回復剤0.8gを投入し、60rpmで10秒攪拌した。次に上記型崩れした試験布3枚と調整布を合計15gになるように調整後、ステンレスビーカーに入れて60rpmで10分間撹拌後、2槽式洗濯機(HITACHI製 PS-H45L)の脱水槽で1分間脱水した。次いでステンレスビーカーに新しい水道水を0.6L投入し、そこへ脱水をした試験布を入れて60rpmで3分間撹拌した後、2槽式洗濯機で1分間脱水した。再びステンレスビーカーに新しい水道水を0.6L投入し、そこへ脱水をした試験布を入れて60rpmで3分間撹拌した後、2槽式洗濯機で1分間脱水した。これら一連の操作について累積で3回の処理を実施した。最後に試験布を取り出し、23℃、40%RHの部屋にて試験布を平干しして自然乾燥を行った。上記の洗浄方法におけるJIS L 1930:2014の附属書JAに記載の方法で測定されるMA値は30であった。
【0075】
<型崩れ回復性評価>
洗浄した各試験布について、各試験布の型崩れ回復性を、下記のカーリング変形率の式より算出し、試験布3枚の平均値をカーリング変形率として、表1に示した。型崩れ回復性評価は、カーリング変形率(%)が低いほど好ましいと判断した。なお型崩れさせた試験布のカーリング変形率は68.7%以上であった。
【0076】
【数1】
【0077】
【表1】