(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106001
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】塗料用樹脂組成物及び塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 129/00 20060101AFI20240731BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240731BHJP
C09C 1/48 20060101ALI20240731BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C09D129/00
C09D7/62
C09C1/48
C09C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010034
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111419
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 宏一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 直樹
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037CC16
4J037EE03
4J037EE06
4J037EE08
4J037EE28
4J037FF01
4J037FF23
4J038CE061
4J038CH002
4J038DG262
4J038HA026
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA09
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA11
4J038PA01
4J038PA06
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB08
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】デザイン性が高く、耐擦傷性に優れた膜を形成することができる塗料用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)樹脂成分、(A1)ポリビニルアセタール樹脂、(B)黒色材、(B1)黒色顔料と樹脂の複合物、とする。このとき、本発明に係る組成物は、(A)、及び(B)を少なくとも含む。(A)は(A1)を90質量%以上含む。
(B)は、粒子径が2μm以上6μm以下の(B1)を90質量%以上含み、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が7以上14以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料用樹脂組成物であって、
(A)、及び(B)を少なくとも含み、
(A)は、(A1)を90質量%以上含み、
(B)は、粒子径が2μm以上6μm以下の(B1)を90質量%以上含み、(A):1に対する(B)の質量比が7以上14以下である、組成物。
(A)樹脂成分
(A1)ポリビニルアセタール樹脂
(B)黒色材
(B1)黒色顔料と樹脂の複合物
【請求項2】
(B1)は、カーボンブラックを内包したアクリル樹脂粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物、及び(C)を含み、
B型粘度計による25℃での粘度が1mPa・s以上2000mPa・s以下である、塗料。
(C)希釈溶媒
【請求項4】
模型部品の塗布用である、請求項3に記載の塗料。
【請求項5】
カメラ部品の塗布用である、請求項3に記載の塗料。
【請求項6】
B型粘度計による25℃での粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下である、スプレーコート法による塗布用の請求項3に記載の塗料。
【請求項7】
B型粘度計による25℃での粘度が20mPa・s以上500mPa・s以下である、ディップコート法による塗布用の請求項3に記載の塗料。
【請求項8】
B型粘度計による25℃での粘度が10mPa・s以上300mPa・s以下である、ディスペンサー法による塗布用の請求項3に記載の塗料。
【請求項9】
B型粘度計による25℃での粘度が100mPa・s以上2000mPa・s以下である、筆塗り法による塗布用の請求項3に記載の塗料。
【請求項10】
請求項3に記載の塗料から形成された膜であって、
膜が形成された面の最表面の、入射角度60°の入射光に対する光沢度が1%未満、波長550nmの光に対する反射率が1.5%未満、SCE方式によるCIELAB表色系でのL値が15未満、である膜。
【請求項11】
膜に透過での遮光性が求められる場合、膜が形成された面の最表面の、光学濃度が2以上、である請求項10に記載の膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用樹脂組成物と、それを含む塗料と、に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット、パソコン等の電子機器には、デザイン性の向上、内部配線等の隠蔽、及び遮光等を目的として、その筐体の一部又は全部(外面、内面は不問)や、タッチパネルの視認面側に配置して固定されるカバーガラスの、非視認面の一部(例えば額縁部分)に、黒塗りの膜を施すことがある。近年、この要請は、例えば各種カメラユニットに装着されるレンズ等電子機器部品の一部(例えばレンズの外縁)又は全部や、プラスチックモデル等の組み立て模型、あるいは該模型キットにおける組み立て模型のパーツに対してもある。
【0003】
例えば特許文献1では、スマートフォン等の携帯型電子機器の筐体に、絶縁材料で構成されるスクリーン印刷を直接施し、あるいはスクリーン印刷を施した、膜形成フィルムをインモールド成形することによって膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の工業製品のデザイン性向上の要請に伴い、このような製品に対して更にデザイン性の高い黒塗りの膜(例えば凹凸膜)を施すことが求められるようになってきている。また、膜の製造(成膜)時及び取扱い時における耐擦傷性を確保することも求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものである。本発明は、デザイン性が高く、耐擦傷性に優れた膜を形成することができる塗装用の樹脂組成物とその塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下のa要件を満たす(つまり、黒色材中に所定の粒子径範囲を有する特定複合物を含める)ことにより、形成される膜中での黒色材の配合量を増加させることに成功した。その結果、低光沢(1%未満)であることに加え、これまで以上の超低反射(1.5%未満)と超低L値(15未満)を発現する、デザイン性の高い膜の形成に有効であることを見出した。また、以下のb要件を満たす(つまり、樹脂成分中に特定の樹脂を含める)ことにより、形成される膜中での黒色材に対する相対的な配合量が少量であっても、高い膜強度を発現する、耐擦傷性の高い膜の形成に有効であることを見出した。
【0008】
(a)所定の粒子径範囲を有する特定複合物(黒色顔料と樹脂の複合物)を含む黒色材を用いる。
(b)特定の樹脂(ポリビニルアセタール樹脂)を含む樹脂成分を用いる。
上記現象を発現する作用機序は定かではないが、樹脂成分中に特定の樹脂を含めることにより、当該特定の樹脂が少量の配合でも高い膜強度を発現することの反射的効果として、膜中での、特定複合物を含む黒色材の相対的な配合量を増加させることができ、その結果、膜のデザイン性が高められるのではないか、と考えている。
【0009】
本発明者は、こうした新たな知見に基づき、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。以下では、(A)樹脂成分、(A1)ポリビニルアセタール樹脂、(B)黒色材、(B1)黒色顔料と樹脂の複合物、(C)希釈溶媒、とする。
【0010】
本発明によれば、
塗料用樹脂組成物であって、
(A)、及び(B)を少なくとも含み、
(A)は、(A1)を90質量%以上含み、
(B)は、粒子径が2μm以上6μm以下の(B1)を90質量%以上含み、(A):1に対する(B)の質量比が7以上14以下である、組成物
が提供される。
【0011】
上記の組成物は、以下の態様を含み得る。
・(B1)は、カーボンブラックを内包したアクリル樹脂粒子を含むことが好ましい。
【0012】
本発明によれば、
上記の組成物、及び(C)を含み、
B型粘度計による25℃での粘度が1mPa・s以上2000mPa・s以下である、塗料
が提供される。
【0013】
上記の塗料は、以下の態様を含み得る。
・模型部品の塗布用であってよい。
・カメラ部品の塗布用であってよい。
・スプレーコート法による塗布用であってよい。
・ディップコート法による塗布用であってよい。
・ディスペンサー法による塗布用であってよい。
・筆塗り法による塗布用であってよい。
【0014】
本発明によれば、
上記の塗料から形成された膜であって、
膜が形成された面の最表面の、入射角度60°の入射光に対する光沢度(以下単に「光沢度」ともいう。)が1%未満、波長550nmの光に対する反射率(以下単に「反射率」ともいう。)が1.5%未満、SCE方式によるCIELAB表色系でのL値が15未満、である膜
が提供される。
【0015】
上記の膜は、以下の態様を含み得る。
・膜に透過での遮光性が求められる場合、膜が形成された面の最表面の、光学濃度が2以上、であってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、デザイン性が高く、耐擦傷性に優れた膜を形成することができる塗装用の樹脂組成物とその塗料、が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
【0018】
本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0019】
<塗料用樹脂組成物>
本発明の一形態に係る塗料用樹脂組成物(以下単に「組成物」ともいう。)は、(A)樹脂成分、及び(B)黒色材、を含む。(A)は、(A1)ポリビニルアセタール樹脂を含み、また(B)は、所定の粒子径範囲を有する(B1)黒色顔料と樹脂の複合物を含む。
(A)及び(B)を含む組成物から形成される膜は、従来の塗料用樹脂組成物から形成される膜と比較して、低光沢(1%未満)であることに加え、これまで以上の超低反射(1.5%未満)と超低L値(15未満)を発現し、しかも高い膜強度をも発現する。理由は定かではないが、(A)中に、強靭で可撓性があり自身でも架橋性を持つ性質の(A1)を含めることにより、形成される膜中への少量の配合で高い膜強度を発現する。そのこと(少量の配合で十分)の反射的効果として、膜中での(B1)を含む(B)の相対的な配合量を増加させることができ、その結果、効果的に、低光沢、超低反射、超低L値を発現しているものと考えられる。
【0020】
-(A)-
組成物の形成に用いる(A)は、塗面に対する定着材であり、(B)のバインダーでもある。具体的には、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリルエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、形成される膜表面の低光沢、超低反射、超低L値の実現や膜強度の観点で、(A1)ポリビニルアセタール樹脂、を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(A)に含める熱可塑性樹脂が(A1)を含むことにより、形成される膜に対し、柔軟性や強靭さが付与され得る。これに加え、自身でも架橋性を持つことから組成物中(引いては膜中)での配合が少量でも高い膜強度(耐擦傷性)を実現可能である。
【0022】
(A1)は、分子内にアセタール基を有する構成単位を有する重合体であり、好ましくは、アセタール基を有する構成単位とヒドロキシ基を有する構成単位を有する重合体である。(A1)としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、より具体的には、下記式(1)で表される重合体が好ましい。
【0023】
【0024】
式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。xはビニルアセタール基を有する構成単位の含有量(モル%)を示し、アセタール化されたビニルアルコール由来の構成単位の合計含有量(モル%)で示される。yはビニルアルコール由来の構成単位の含有量(モル%)を示し、zは酢酸ビニル由来の構成単位の含有量(モル%)を示す。x及びyは0よりも大きく、zは0であってもよい。
【0025】
R1としては、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、プロピル基が最も好ましい。すなわち(A1)としては、R1がプロピル基である構成単位を有するポリビニルブチラール樹脂が最も好ましい。
【0026】
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸性条件下で反応させてアセタール化することにより得ることができる。PVAをアセタール化する場合、PVAを完全にアセタール化することは困難であるため、部分的にヒドロキシ基が不可逆的に残存する。 また、PVAは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより製造されるが、PVA製造工程のケン化の際に少量のアセチル基が残存することが多いため、ポリビニルブチラール樹脂には、部分的にアセチル基やヒドロキシ基が不可逆的に残存することが一般的である。
【0027】
ポリビニルブチラール樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から、40℃以上130℃以下であってよく、好ましくは60℃以上120℃以下であってよい。ガラス転移温度(Tg)がこのような範囲内であることにより、塗膜化した際の塗膜強度向上等のメリットを発現し得る。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定による熱量変化の測定(DSC法)により求めることができる。
【0028】
(A1)は、そのx、すなわちアセタール基を有する構成単位の含有量(以下「アセタール基量」若しくは「アセタール化度」ともいう)が、塗膜化した際の塗膜表面の滑り性の観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であってよく、また組成物中での黒色材の分散性の観点から、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下であってよい。
アセタール基量(x)は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除して求めたモル分率であり、アセタール基を有する構成単位の含有量(モル%)に相当する。アセタール基(特にブチラール基)が結合しているエチレン基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」を用いて測定できる。
【0029】
(A1)は、そのy、すなわちヒドロキシ基を有する構成単位の含有量(以下「ヒドロキシ基量」ともいう)が、塗膜化した際の塗膜と被塗物との密着性の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であってよく、また好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下であってよい。
(A1)は、アセチル基を有する構成単位を含有する場合、その含有量(以下「アセチル基量」ともいう)が、黒色材の含有量を多くする観点から、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.001モル%以上であってよく、また好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは8モル%以下であってよい。
【0030】
(A1)の分子量は特に限定されないが、塗膜化した際の塗膜強度の観点から、好ましくは8000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは1.5万以上、より更に好ましくは2万以上であり、また好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下、更に好ましくは15万以下である。(A1)の分子量は、計算により求めることができる。
【0031】
(A1)は、塗膜化した際の塗膜の凝集力を高める観点から、イミン構造を有する構成単位、酸変性基を有する構成単位、及びアミノ基又はアミド構造を有する構成単位からなる群から選ばれる1種以上を含有する、変性ポリビニルアセタール樹脂を含んでよい。
イミン構造(C=N結合を有する構造)を有する構成単位を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上であり、そして、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。酸変性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、マレイン酸基、リン酸基等とそれらの塩が挙げられる。酸変性基を有する構成単位を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.05モル%以上であり、そして、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。イミン構造を有する構成単位、及び酸変性基を有する構成単位の含有量は、例えば、NMRにより測定することができる。変性ポリビニルアセタール樹脂において、イミン構造、酸変性基、アミノ基又はアミド構造は、変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖又は側鎖を構成する炭素に直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
【0032】
(A1)、変性ポリビニルアセタール樹脂の分子量、構造、ヒドロキシ基量等は、用いるPVAの重合度やアセタール化反応条件により適宜調整可能である。
(A1)は、前記式(1)において、x、y、zの総和が100モル%であることが好ましい。
【0033】
ポリビニルアセタール(ブチラール)樹脂の市販品例としては、積水化学工業社の商品名:エスレックの、BL(低分子量タイプ)シリーズ:BL-1、BL-1H、BL-S、BL-2H; BM(中分子量タイプ)シリーズ:BM-1、BM-2(Z)、BM-5、BM-S(Z); BH(高分子量タイプ)シリーズ:BH-S、BH-A; BX(耐熱タイプ)シリーズ:BX-1、BX-5(Z); KS(高耐熱タイプ)シリーズ:KS-6Z、KS-5Z; 等の他、クラレ社のモビタールシリーズ製品、等が挙げられる。
上記の(A1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(A)は、(A1)とともに、熱硬化性樹脂を含有してもよい。(A)が熱硬化性樹脂を含むことにより、塗膜化した際の塗膜と被塗物との密着性の性能向上が期待される。熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(A)が熱硬化性樹脂を含有する場合、(A)中での熱硬化性樹脂の質量比は、塗膜化した際の塗膜と被塗物との密着性の観点から、(A1)の樹脂固形分:1に対して、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であってよく、また好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下であってよい。
【0035】
(A)中の、(A1)の含有量(総量)は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、である。その上限は、特に制限されず、100質量%である。すなわち一形態において、(A1)は、100質量%の(A)中に、好ましくは90質量%以上、含有されていればよい。
【0036】
(A)の含有量(総量)は特に限定されないが、他の成分との配合バランスを考慮すると、組成物の全固形分の総量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよく、また塗膜化した際の塗膜強度の観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であってよい。
【0037】
-(B)-
組成物の形成に用いる(B)は、(B1)黒色顔料と樹脂の複合物、を含む。
黒色顔料との複合物を構成する樹脂は、水に対して不溶性であるものが用いられる。この様な樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、エチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。中でも、組成物中での分散性の観点から、アクリル樹脂又はウレタン樹脂が好ましく、より好ましくはアクリル樹脂である。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ビーズという名称の前に樹脂名をつけることによって樹脂粒子の呼称を一部省略することができる。例えば、アクリル樹脂からなる樹脂粒子をアクリルビーズと呼ぶこともある。
【0038】
樹脂との複合物を構成する黒色顔料は、特に限定されないが、複合物の黒色化効果が大きく、価格面でも有利なカーボンブラック(以下単に「CB」ともいう。)を使用することが好ましい。CBを用いることにより、形成される膜が着色するため、更に反射防止効果が向上し、かつ良好な帯電防止効果が得られる。
【0039】
黒色顔料と樹脂との複合の形態としては、例えば、(1)黒色顔料を樹脂が被覆した形態(樹脂の粒子に黒色顔料を内包した形態を含む)、(2)黒色顔料の表面や内部に樹脂が結合した形態、(3)黒色顔料の表面や内部に樹脂が付着した形態、のいずれか、あるいは、これらの複合形態が挙げられる。
【0040】
黒色顔料の表面を樹脂によって被覆する手段としては、例えば、マイクロカプセル法、より具体的には界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被覆法(オリフィス法)、水溶液からの相分離法、液中乾燥法等が挙げられる。その他、マイクロカプセル法以外にも、分散された黒色顔料に樹脂を結合させたり、付着させる方法もある。その例として、顔料を核として、この表面を多数のコロイド状の樹脂粒子で覆ったものもある。黒色顔料の核にコロイド状の樹脂粒子で覆った着色剤を採用する場合には、顔料の核に対して、周囲の樹脂粒子サイズは、十分に小さいことが望ましい。更にコロイド状の樹脂粒子は、顔料の核をほぼ隙間無く被覆したものであることが望ましい。ただし、顔料の核が直接外部に露出したものを除外するものではない。
【0041】
(B1)は、顔料に、該顔料の粒子と同等程度の大きさの樹脂を結合させたものでもよい。その他熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に黒色顔料や黒色染料を練り込み粉砕することにより、黒色顔料等と樹脂とを複合させることもできる。
【0042】
一形態において、複合の形態は、組成物中での分散性向上の観点から、(1)の形態、すなわち黒色顔料を内包した樹脂粒子、の形態が好ましい。黒色顔料を内包した樹脂粒子は、径がより大きな樹脂粒子に顔料が内包されるため、径が小さい顔料を直接、組成物中に配合する場合と比較して、組成物中で凝集体が発生し難くなり、分散性の向上に寄与する。
【0043】
(B1)中の、顔料(特にCB)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、である。
【0044】
(B1)の粒子径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは4μm以下、である。粒子径が小さすぎると、組成物中の凝集体が増加するため、分散が困難になる傾向がある。粒子径が大きすぎると、着色力が低下する傾向がある。
なお、(B1)の粒子径は、粒子径分布において積算(累積)百分率で表される積算値が50%となる粒径(D50)の値をいう。
【0045】
(B1)の形状は特に限定されないが、艶消しの観点で、真球状が好ましい。また、形成される膜表面の、一層の、低光沢、低反射、低L値を実現するためには、粒度分布が狭い(CV(Coefficient of Variation)値が例えば15以下)粒子(シャープ品)を用いることが好ましい。CV値は、粒子径の平均値(算術平均粒子径)に対する粒子径分布の拡がり(粒子径のばらつき)度合いを数値化したものである。このような粒子を用いることにより、膜中で均一に含有され膜表面に微細な凹凸が形成され、膜表面の、一層の、低光沢、低反射、低L値を実現しやすい。
また、形成される膜表面の光沢度をより低減するために、(B1)として、不定形粒子を用いてもよい。(B1)として不定形粒子を用いることにより、膜となったとき、(B1)の表面及び内部で光が屈折を繰り返すことにより、膜表面の光沢度を更に低減することができる。
【0046】
(B1)として市販品を使用できる。ウレタンビーズを含むものとして、例えば、アートパールC800黒(粒子径6.5μm、CB含有量7.5%、根上工業社):等が挙げられる。アクリル(アクリルコポリマー)ビーズを含むものとして、例えば、アートパールGR-004BK(粒子径3~5μm、CB含有量35~39%、根上工業社):ラブコロール224(SMD)ブラック(平均粒子径2~3μm、CB含有量18%、大日精化工業社):等が挙げられる。
【0047】
(B)中の、(B1)の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、である。その上限は、特に制限されず、100質量%である。すなわち一形態において、(B1)は、100質量%の(B)中に、好ましくは90質量%以上、含有されていればよい。
【0048】
一形態において、(B)の質量比は、(A)の樹脂固形分:1に対して、7以上、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、また好ましくは14以下、より好ましくは12以下、である。この質量比範囲で(B)を配合することにより、塗膜強度を維持しつつ、低光沢、低反射、低L値の実現を享受し得る。
【0049】
(B)の含有量(総量)は、組成物の全固形分の総量(100質量%)に対して、例えば60質量%以上、好ましくは65質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、例えば90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、である。(B)の総量が60質量%未満であると、光沢上昇、光学濃度不足の不都合を生じ、90質量%を超えると、形成された膜中の(A)が相対的に少なくなり、その結果、被塗物からの膜脱落の不都合を生じる場合がある。
【0050】
-(D)任意成分-
組成物には、前記成分((A)、(B))以外に、本発明の効果を損なわない程度に、(D)が含まれていてもよい。(D)としては、例えば、レベリング剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、分散剤、消泡剤、硬化剤、反応触媒等が挙げられる。組成物中への(D)の配合量は、100質量部の(A)に対し、0~100質量部とすることが好ましく、0~30質量部とすることがより好ましい。
【0051】
特に硬化剤を配合することにより、(A1)に含まれるヒドロキシ基を利用して(A)の架橋を促進させることができる。ヒドロキシ基と反応する硬化剤としては、例えば、エポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物、チタンキレート化合物等が挙げられる。これらの中でも、特にイソシアネート化合物が好ましい。
【0052】
硬化剤として好ましく用いられるイソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば適宜用いることができる。例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体の少なくとも1つが挙げられる。ここで、芳香脂肪族ポリイソシアネートは、イソシアネート基が脂肪族炭素原子を介して芳香環に結合している構造を有するポリイソシアネートをいう。
【0053】
芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、又は、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、前記イソシアネート化合物のイソシアヌレート体のような3量体、2量体、5量体等の多量体や、前記イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とを反応させたアダクト体や、アロハネート体、ビュレット体等の変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
塗膜化した際の塗膜と被塗物との密着性の点から、イソシアネート基の窒素原子が脂肪族炭素原子に結合している構造を有することが好ましく、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体の少なくとも1つが好適に用いられる。中でも塗膜化した際の塗膜と被塗物との密着性や塗膜強度の点から、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート及びこれらの変性ポリイソシアネートが好適に用いられる。
塗料に配合可能な硬化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
組成物中に硬化剤を配合する場合、その割合は、100質量%の(A)に対して、10~70質量%とすることが好ましい。上記範囲で硬化剤を添加することにより、より高い膜強度を発現する、耐擦傷性のより高い膜が得られ、長期にわたり膜表面の光学特性が維持され得る。
【0056】
組成物中に硬化剤を配合する場合、(A)と硬化剤の反応を促進するために、反応触媒を併用することもできる。反応触媒としては、アンモニアや塩化アンモニウム等が挙げられる。組成物中に反応触媒を配合する場合の割合は、硬化剤100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、である。
【0057】
本発明の一形態に係る組成物は、(A)、(B)、必要に応じて(D)を添加して、混合攪拌することにより調製(製造)することができる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではなく、これらの成分が均一に混合されればよい。
【0058】
<塗料>
本発明の一形態に係る塗料は、塗面に上記組成物からなる膜を形成するために使用されるものであり、上記組成物、及び(C)希釈溶媒、を含む。
【0059】
-(C)-
塗料の形成に用いる(C)は、(A)を溶解し、また、該組成物全体の粘度を調整する目的で配合される。(C)を使用することにより、塗料の均一性を向上させる。また、塗料の粘度を適度に調整することができ、塗面に膜を形成するときの、塗料の操作性及び塗布厚の均一性を高くすることが可能となるため、最終的に得られる物品のデザイン性向上に大いに寄与し得る。
【0060】
(C)としては、(A)を溶解でき、かつ塗料粘度を調整可能な溶媒であれば特に限定されない。水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒の混合液、が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を用いることができる。(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配合量としては、塗料の固形分濃度を調整するために適宜設定すればよい。
【0061】
塗料の粘度は、塗布方式によって適正な範囲が異なるため一概にいえないが、B型粘度計による25℃での粘度は、おおよそ1mPa・s以上2000mPa・s以下、程度である。例えば、塗布方式がスプレーコート法の場合は、1mPa・s以上50mPa・s以下、程度とするのが好ましい。塗布方式がディップコート法の場合は、20mPa・s以上500mPa・s以下、程度とすることが好ましい。塗布方式がディスペンサー法の場合は、10mPa・s以上300mPa・s以下、程度とすることが好ましい。塗布方式が筆やハケを用いた方法(筆塗り法)による場合は、100mPa・s以上2000mPa・s以下、程度とすることが好ましい。
【0062】
スプレーコート法の場合、塗料の粘度が低すぎると、所定の性能を発現可能な厚みの膜を形成することができない場合があり得る。塗料の粘度が高すぎると、ノズルから液が出ない、出ても霧化することが出来ない等の不都合を生じやすい。ディップコート法の場合は、塗料の粘度が低すぎると、液垂れが激しくなりムラが発生してキレイな膜を形成することができない場合がある。塗料の粘度が高すぎると、被塗物を塗料から引き上げる際に液切れが悪くなりバリ等が発生したり、塗膜の表面形状が平らになりやすく光沢感が出てしまう場合があり得る。
ディスペンサー法の場合は、塗料の粘度が低すぎると、液はね、液垂れを起こし塗布したくない場所まで塗ってしまう場合があり得る。塗料の粘度が高すぎると、ノズルから液が出てこない、出てきても表面形状が平らになりやすく光沢感が出てしまう場合があり得る。筆塗り法の場合、塗料の粘度が低すぎると、液垂れの不都合を生じ得る。塗料の粘度が高すぎると、液かすれの不都合を生じ得る。
【0063】
塗料の粘度は、塗料中の組成物に含まれる成分、即ち、組成物の形成に用いた(A)、(B)の種類や分子量等によって異なり、また、上記(A)、(B)の他に、任意成分を配合した場合、任意成分の種類や分子量等によっても異なるが、塗料中の(C)の量を適宜決定することにより、容易に調整することができる。
【0064】
一形態に係る上記塗料は、1液型であってもよいし、2液型であってもよい。硬化剤を配合する場合、一形態に係る上記塗料は、例えば、硬化剤以外の成分を含む第1液と、硬化剤を含む第2液と、の2液型であってもよい。
【0065】
一形態に係る上記塗料は、組み立て模型の部品の塗布用、カメラ部品の塗布用、スプレーコート法による塗布用、ディップコート法による塗布用、ディスペンサー法による塗布用、又は、筆塗り法による塗布用、であってよい。
【0066】
<塗布方法、被塗物>
本発明の一形態に係る膜は、上記塗料を被塗物に塗布して塗膜を形成した後に、該塗膜を乾燥させて成膜することにより形成される。
【0067】
上記塗料の塗布方法としては、スプレーコート法(例えば、エアスプレー方式、エアレススプレー方式、静電スプレー方式等)によるものであってよい。スプレーコート法を用いることで、被塗物の表面に凸部や段差等が存在していたとしても、それらの表面全体に、厚さが均一で特定性能を備えた膜を形成することができる。
【0068】
スプレーコート法を用いた塗布条件として、スプレーガンの口径は0.2~1.2mm程度、吐出液量は0.2~10(g/分)程度、スプレーガンと被塗物の塗布面との最短距離は30~500mm程度、塗布速度は30~300(mm/秒)程度、重ねピッチは1.5~10mm程度、霧化エアーの圧力は0.03~0.2MPa程度、が好ましい。スプレーガンの数として、単一ガンで運用する以外に、塗布効率化の観点から、被塗物のサイズに合わせて、複数ガンを配置しても良い。
【0069】
上記塗料を被塗物表面に塗布した後、乾燥によって溶媒を除去して成膜させる。必要に応じて、塗膜にUV光やEB光を照射してもよい。
上記塗料が硬化剤を含む場合には、塗膜を加熱することにより、塗膜を硬化させてもよい。加熱条件は、加熱前塗膜の厚み、被塗物の耐熱性、使用する(C)の種類、等により適宜調整すればよい。加熱条件は、一例として、70℃以上150℃以下で1分間以上30分間以下、好ましくは100℃以上130℃以下で2分間以上10分間以下、である。
【0070】
上記塗料の塗布は、スプレーコート法による場合の他、例えば、ディップコート(浸漬)法によるもの、ディスペンサー法によるもの、筆塗り法によるものであってよい。
【0071】
上記塗料の塗布が筆塗り法による場合、塗面に形成される膜の厚みは、形成される場所によってばらつきやすいものの、得られる膜の性能は、他の塗布方式と同等になる。その理由は明らかではないが、適量な顔料分を含有していることにより凹凸を形成しているからだと考えられる。
【0072】
塗料の塗布対象(被塗物)は、特に限定されず、例えばガラス、樹脂、金属、セラミックス、木材等を素材とする硬質表面を有する物体であればよい。被塗物の形状も特に限定されず、板状、(中空の)筒状、及びフィルム状のもの等が挙げられる。
被塗物として、例えば、以下を挙げることができる。
・携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコン、パソコン周辺機器(キーボード、プリンタ、外付けディスク等)、腕時計、オーディオ機器、各種OA機器等の電気・電子機器。
・冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、テレビ、録画機器等の家電製品。
・階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具、木工製品。
・各種建材、フローリング、建物の内壁・外壁等。
・自動車やオートバイ等の車両又はその部品:具体的には、車両のボディ、内装品(メーターパネル、ダッシュボード、ハンドル、センシングカメラブラケット(フロントガラス内側上部等に装着)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等)、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ヘッドライト、テールライト、アルミホイール、オートバイのガソリンタンク等。
・光学用途、例えば各種カメラユニットに装着されるレンズ、レンズ鏡筒内壁、レンズユニットの内外カバー、レンズのスペーサー等のカメラ部品。
・眼鏡、ゴーグル、これらに類する製品。
・樹脂成形品からなるホビー製品、その組み立て用部品(例えば、組み立て模型(プラスチックモデル等)、該模型キットにおける組み立て模型のパーツ、等)。
【0073】
一形態に係る塗料から形成される膜の厚さは、被塗物の用途等に応じて適宜調整でき、特に限定されない。好適な膜厚の一例として、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、好ましくは40μm以下、より好ましくは25μm以下、が挙げられる。なお、一形態に係る塗料から形成される膜の厚さとは、被塗物表面から膜の(B)により突出している部分を含む高さのことである。膜の厚さは、JIS K7130に準拠した方法で測定することができる。
【0074】
<膜の特性>
上記塗料から形成される膜の特性は、以下のとおりである。
【0075】
(光沢度、反射率、L値、光学濃度、密着性、塗膜強度(耐擦傷性))
上記塗料から形成される膜は、膜表面の、光沢度が1%未満、反射率が1.5%未満、L値が15未満、であることが好ましい。上記塗料から形成される膜に透過での遮光性が求められる場合には、上記特性(膜表面の、光沢度が1%未満、反射率が1.5%未満、L値が15未満)に加え、更に、膜表面の光学濃度が2以上、であることが好ましい。
【0076】
ここで、上記塗料から形成される膜が最表面に露出している構成であれば、文字どおり、膜表面の、光沢度、反射率、L値、必要により光学濃度、が上記範囲であることが好ましい。上記塗料から形成される膜上に他の膜が被覆されている場合には、その他の膜の表面、すなわち被塗物上に形成された膜の最表面の、光沢度、反射率、L値、必要により光学濃度、が上記範囲であることが好ましい。以下これらの表面を合わせて「膜最表面」という。
【0077】
上記塗料から形成される膜は、膜最表面の、光沢度が1%未満、反射率が1.5%未満、L値が15未満、であることが好ましい。上記塗料から形成される膜に透過での遮光性が求められる場合には、上記特性(膜最表面の、光沢度が1%未満、反射率が1.5%未満、L値が15未満)に加え、更に、膜最表面の光学濃度が2以上、であることが好ましい。膜最表面の、光沢度、反射率、L値、必要により光学濃度が上記範囲であることにより、膜最表面の、低光沢性、低反射率、高い黒色度、必要により高遮光性を実現することができる。
【0078】
光沢度の上限値は、より好ましくは0.7%未満、更に好ましくは0.5%未満、である。光沢度を上記範囲に調整することにより、光の乱反射によるフレア・ゴースト現象を効果的に防止することができる。光沢度の下限値は、特に限定されず、低ければ低いほどよい。
【0079】
反射率の上限値は、より好ましくは1.25%未満、更に好ましくは1.0%未満、である。反射率の下限値は、特に限定されず、低ければ低いほどよい。反射率を上記範囲に調整することにより、光の乱反射によるフレア・ゴースト現象を更に効果的に防止することができる。
【0080】
L値(黒色度)の上限値は、より好ましくは12未満、更に好ましくは10未満、である。L値の下限値は、特に限定されないが、外観のより黒々しさを求める観点から、低ければ低いほどよい。L値を上記範囲に調整することにより、黒色度が高く黒さが際立ちデザイン性に優れるため、スマートフォン等の携帯電話のカメラユニット等として好適に利用することができる。
上記L値は、膜最表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB) 表色系での明度L*値のことである。SCE方式とは、正反射光除去方式のことであり、正反射光を除去して色を測定する方法を意味する。SCE方式の定義は、JIS Z8722(2009)に規定されている。SCE方式では、正反射光を除去して測定するため、実際の人の目で見た色に近い色となる。
CIEは、Commission Internationale de l‘Eclairageの略称であり、国際照明委員会を意味する。CIELAB表示色は、知覚と装置の違いによる色差を測定するために、1976年に勧告され、JIS Z8781(2013)に規定されている均等色空間である。CIELABの3つの座標は、L*値、a*値、b*値で示される。L*値は明度を示し、0~100で示される。L*値が0の場合は黒色を意味し、L*値が100の場合は白の拡散色を意味する。a*値は赤と緑の間の色を示す。a*値がマイナスであれば、緑寄りの色を意味し、プラスであれば赤寄りの色を意味する。b*値は黄色と青色の間の色を意味する。b*がマイナスであれば青寄りの色を意味し、プラスであれば、黄色寄りの色を意味する。
【0081】
上記塗料から形成される膜に透過での遮光性が求められる場合における、光学濃度の下限値は、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.2以上、である。光学濃度を上記範囲に調整することにより、遮光性を更に向上させることができる。光学濃度の上限値は、特に限定されず、高ければ高いほどよい。
【0082】
上記光沢度、反射率、L値、光学濃度は、後述の方法で測定することができる。
【0083】
上記特性(光沢度、反射率、L値、必要により光学濃度)に加え、上記塗料から形成される膜は、更に、該膜の、塗面への密着性が良好であることが好ましい。上記塗料から形成される膜の、塗面への密着性は、後述の実施例における密着性評価で示すように、塗膜残存が90%以上、が好ましい。また、上記塗料から形成される膜は、更に、塗膜強度が高いことが好ましい。上記塗料から形成される膜の塗膜強度は、後述の実施例における耐擦傷性評価で示すように、JIS K5600-5-10 ISO 7784-3における傷つき本数が10本以下が好ましく、より好ましくは2本以下であり、更に好ましくは0本である。
【実施例0084】
以下、本発明を実験例(実施例及び比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されない。以下の記載において、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示すものとする。
【0085】
[組成物の構成成分]
A(樹脂成分)として、以下のものを準備した。
・A1: ポリビニルアセタール樹脂(エスレック、積水化学工業社)
・A1a: BL-S
(アセタール化度:約72モル%、ヒドロキシ基量:約23モル%、アセチル基量:4~6モル%、計算分子量:約23000、Tg:66℃)
・A1b: BM-S(Z)
(アセタール化度:約72モル%、ヒドロキシ基量:約23モル%、アセチル基量:4~6モル%、計算分子量:約55000、Tg:67℃)
・A1c: BH-S
(アセタール化度:約72モル%、ヒドロキシ基量:約23モル%、アセチル基量:4~6モル%、計算分子量:約66000、Tg:67℃)
・A1d: BX-5(Z)
(アセタール化度:約72モル%、ヒドロキシ基量:約27モル%、アセチル基量:3モル%以下、計算分子量:約130000、Tg:92℃)
・A1e: KS-5Z
(アセタール化度:約74モル%、ヒドロキシ基量:約25モル%、アセチル基量:3モル%以下、計算分子量:約130000、Tg:113℃)
・A2: 熱硬化性アクリル樹脂(アクリディックA801、DIC社)
(樹脂Tg67℃、樹脂固形分34%、分子量15000、酸価1mgKOH/g、水酸基価5mgKOH/g)
【0086】
B(黒色材)として、以下のものを準備した。
・B1a: 黒色アクリルビーズ(粒子径3~5μm)
(アートパールGR-004BK、根上工業社、CB含有量35~39%)
・B2a: 黒色アクリルビーズ(粒子径14~16μm)
(アートパールGR-400BK、根上工業社、CB含有量6~10%)
・B2b: CB(粒子径150nm)
(MHIブラック_#273、御国色素社、CB含有量9.5%)
・B2c: 複合シリカ(粒子径3μm)
(ベクシアID、富士シリシア化学社)
・B2d: 透明アクリルビーズ(粒子径3μm)
(ユニパウダーMNB0320C、ENEOS社)
・B2e: 透明アクリルビーズ(粒子径2μm)
(ユニパウダーMNB0220C、ENEOS社)
【0087】
B1aに用いた「アートパールGR-004BK」とB2aに用いた「アートパールGR-400BK」は、ともに、CBを内包した真球状アクリル樹脂粒子であり、CBとアクリル樹脂の複合物の一つである。B2b(CB)に用いた「MHIブラック_#273」は、CB分散液であり、該分散液の固形分総量18%のうち9.5%がCB、残り8.5%がその他の化合物である。その他の化合物8.5%のうち3%が銅化合物、5.5%がアクリル樹脂である。B2c(複合シリカ)に用いた「ベクシアID」は、CB/シリカ=約25/75(質量比)の、CBとシリカの複合粒子である。
【0088】
D(任意成分)として、以下のものを準備した。
・D1: イソシアネート化合物
(タケネートD110N、三井化学社、固形分75%)
【0089】
[被塗物]
被塗物として、スマートフォンの筐体(プラスチック製の外箱)を準備した。
【0090】
[実験例1~20及び5a~16a]
1.塗料の作製
表1~3に示す所定量の、メチルエチルケトン及び酢酸ブチルの混合溶媒中に、総固形分(質量%)と各成分の固形分比が表1~3記載の値となるよう実験例ごとの各成分を入れ、攪拌混合することにより塗料を調製した。
【0091】
2-1.膜1の形成
各実験例で得られた塗料を、下記(3-3-1)塗布性1と同様の手法によるスプレーコート法によって、被塗物に向けて噴霧して塗膜を形成した後に、該塗膜を120℃で3分間加熱乾燥することにより、被塗物の塗面に、平均膜厚が10μmの、スプレーコート法による膜1を成膜した。
【0092】
2-2.膜2の形成
下記(3-3-2)塗布性2と同様の手法による筆塗り法によって、被塗物上に塗膜を形成した後に、該塗膜を120℃で3分間加熱乾燥することにより、被塗物の塗面に、平均膜厚が10μmの、筆塗り法による膜2を成膜した。
【0093】
3.評価
各実験例で得られた塗料について、下記に示す方法で各種特性(粘度、注入性、塗布性、液垂れ性)を評価した(塗料評価)。また、各実験例で得られた塗料から形成された膜について、下記に示す方法で各種特性(特性)を評価した(膜評価)。結果を表1~3に示す。
【0094】
[塗料評価]
(3-1-1)粘度1
塗料の粘度1は、B型粘度計(VISCOMETER BM2:東機産業社)を用い、25℃、60rpm、1分後、No.1ロータ、の条件で測定した。評価基準は、以下のとおりである。
【0095】
〇:粘度が1mPa・s以上50mPa・s以下(粘度が良好)
×:粘度が50mPa・s超え(粘度が過高)
(3-1-2)粘度2
塗料の粘度2は、B型粘度計(VISCOMETER BM2:東機産業社)を用い、25℃、60rpm、1分後、No.2ロータ、の条件で測定した。評価基準は、以下のとおりである。
【0096】
〇:粘度が100mPa・s以上2000mPa・s以下(粘度が良好)
×:粘度が2000mPa・s超え(粘度が過高)
【0097】
(3-2)注入性
塗料の注入性は、エアースプレーへの注入の様子を観察することにより評価した。
エアー缶(スプレーワークエアーカン420D:タミヤ社)にエアーブラシ(スプレーワークHGシングルエアーブラシ:タミヤ社)を取り付けたエアースプレーを用い、各塗料がエアーブラシのカップからノズルに入っていく様子を目視で観測し、注入性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
【0098】
〇:全く詰まりがなく、スムーズに液剤がノズルに入っていった
△:詰まりはなかったが、ややノズルに液剤が入っていく速度が遅かった
×:液剤が詰まり、ノズルに液剤が入っていかなかった
【0099】
(3-3-1)塗布性1
塗料の塗布性1は、スプレーコート法による塗布後の塗りムラを観察することにより評価した。各塗料を、上記(3-2)で用いたエアースプレーに注入し、エアーブラシ先端から10cmの距離から、10秒間、被塗物の外表面に向けて噴霧し、形成された塗膜(乾燥前)について、目視により塗りムラを評価した。
(3-3-2)塗布性2
塗料の塗布性2は、筆塗り法による塗布後の塗りムラを観察することにより評価した。
各塗料を、筆先に付けSUS板に10cm線を引き、形成された塗膜(乾燥前)について、目視により塗りムラを評価した。
【0100】
塗布性1及び塗布性2の評価基準は、ともに、以下のとおりである。
◎:塗りムラ(厚みムラ)は確認されなかった
〇:塗りムラがごく一部、確認された
×:塗りムラが多くの範囲に確認された
【0101】
(3-4)液垂れ性
塗料の液垂れ性は、スプレーコート法による塗布後の被塗物からの液垂れを観察することにより評価した。
上記(3-3-1)と同様に、各塗料を、上記(3-2)で用いたエアースプレーに注入し、エアーブラシ先端から10cmの距離から、10秒間、被塗物の外表面に向けて噴霧した後の、被塗物からの、付着した液滴の液垂れ性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
【0102】
〇:塗布後の被塗物を垂直に立てて置いた際も液垂れが全く生じなかった
△:塗布後の被塗物を垂直に立てて置いた際、次第に液が垂れてきた
×:塗布後の被塗物を垂直に立てて置いた際、すぐに液が垂れ出した
【0103】
[膜評価]
(3-5)特性
-光沢度-
各被塗物に形成された膜の表面の、入射角60°の測定光に対する光沢度(60°鏡面光沢度)は、グロスメータ(VG 7000:日本電色工業社)を用い、JIS Z8741に準拠した方法で光沢度9点測定し、その平均値を光沢度とした。評価基準は、以下のとおりである。
【0104】
◎:光沢度が0.5%未満(低光沢性が極めて優れている)
〇:光沢度が0.5%以上0.7%未満(低光沢性が優れている)
△:光沢度が0.7%以上1%未満(低光沢性が良好)
×:光沢度が1%以上(低光沢性が不十分)
【0105】
-反射率-
各被塗物に形成された膜の表面の、波長550nmの光に対する反射率(550nm反射率)は、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い、JIS Z8722に準拠した方法で反射率9点測定し、その平均値を反射率とした。評価基準は、以下のとおりである。
【0106】
◎:反射率が1未満(低反射性が極めて優れている)
〇:反射率が1%以上1.25%未満(低反射性が優れている)
△:反射率が1.25%以上1.5%未満(低反射性が良好)
×:反射率が1.5%以上(低反射性が不十分)
【0107】
-黒色度-
各被塗物に形成された膜の表面の黒色度は、該膜表面の、SCE方式による、CIE 1976 L*a*b*(CIELAB)表色系での明度L*値を測定することにより評価した。その明度L*値は、分光測色計(CM-5:コニカミノルタ社)を用い、JIS Z8781-4:2013に準拠した方法で測定した。評価基準は、以下のとおりである。
測定においては、光源としてCIE標準光源D65を用い、視野角度10°として、SCE方式によりCIELAB表示色でL*値を求めた。CIE標準光源D65は、JIS Z8720(2000)「測色用イルミナイト(標準の光)及び標準光源」に規定されており、ISO 10526(2007)にも同じ規定がある。CIE標準光源D65は、昼光で照明される物体色を表示する場合に使用される。視野角度10°については、JIS Z8723(2009)「表面色の視覚比較方法」に規定されており、ISO/DIS 3668にも同じ規定がある。
【0108】
◎:L値が10未満(黒色度が極めて優れている)
〇:L値が10以上12未満(黒色度が優れている)
△:L値が12以上15未満(黒色度が良好)
×:L値が15以上(黒色度が不十分)
【0109】
-遮光性-
各被塗物に形成された膜の遮光性は、該膜の光学濃度を算出することにより評価した。各被塗物に形成された膜の光学濃度は、光学濃度計(X-rite 361T(オルソフィルタ):日本平版機材社)を用い、被塗物の膜側に垂直透過光束を照射して、膜がない状態との比をlog(対数)で表して算出した。光学濃度6.0以上は測定の検出上限値である。評価基準は、以下のとおりである。なお、本評価は、被塗物自体に透過性があり、かつその上に形成される膜に遮光性が求められる場合を想定したものである。膜に遮光性が求められない場合、ここでの評価は総合評価に影響を与えない。
【0110】
◎:光学濃度が3.2以上(遮光性が極めて優れている)
〇:光学濃度が2.5以上3.2未満(遮光性が優れている)
△:光学濃度が2以上2.5未満(遮光性が良好)
×:光学濃度が2未満(遮光性が不十分)
【0111】
-密着性-
各被塗物に形成された膜の被塗物表面への密着性は、該膜に市販のカッターにて切り込みを碁盤目状に入れ、そこにセロハンテープ(セロテープ:ニチバン社)を貼り付けた後引き剥がし、膜の残存状態を目視にて確認することにより評価した。評価基準は、以下のとおりである。
【0112】
◎:膜残存が100%(密着性が極めて優れている)
〇:膜残存が95%以上100%未満(密着性が優れている)
△:膜残存が90%以上95%未満(密着性が良好)
×:膜残存が90%未満(密着性が不十分)
【0113】
-耐擦傷性1-
各被塗物に形成された膜の耐擦傷性1は、JIS K5600-5-10 ISO 7784-3に準じて、耐摩耗試験機(スガ摩耗試験機NUS-ISO3)を用いて膜表面の傷つきを測定することにより評価した。測定条件は、荷重100g(重さは100g~3kg対応)とし、治具に合わせた大きさでカットした試験片(膜を形成した被塗物の一形態。以下同じ)1を、該試験片1の下に位置する回転輪に巻き付けられた、該回転輪に合わせた大きさの試験片2に対して10往復させ、擦り合わせて摩耗させ、試験片1の膜表面に傷が入るかの確認で評価した。回転輪は、試験片1が1往復する毎に0.9゜ずつ回転し、試験片2の新しい摩耗面が常に試験片1を摩耗させるようにした。評価基準は、以下のとおりである。
【0114】
◎:傷が0本(耐擦傷性が極めて優れている)
〇:傷が1~2本(耐擦傷性が優れている)
△:傷が3~10本(耐擦傷性が良好)
×:傷が11本以上(耐擦傷性が不十分)
【0115】
-耐擦傷性2-
各被塗物に形成された膜の耐擦傷性2は、メラミンスポンジ(激落ちくん、メラミンフォーム、レック社)を用いて傷の有無を観察することにより評価した。各被塗物に形成された膜表面を、設置面積7cm2×200g荷重で30回擦り、その後、目視により傷の有無を確認して評価した。評価基準は、以下のとおりである。
【0116】
◎:変化なし(耐擦傷性が極めて優れている)
〇:薄い傷が1~2本(耐擦傷性が優れている)
△:薄い傷が3~10本(耐擦傷性が良好)
×:薄い傷が11本以上(耐擦傷性が不十分)
××:鋭利な傷が擦り面の全面に入る(耐擦傷性が不良)
【0117】
-総合評価-
上記光沢度、反射率、黒色度、密着性、及び耐擦傷性1,2を総合評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、遮光性については、上記のとおり、必要な場合とそうでない場合とがあるため、総合評価の対象からは除外した。
【0118】
◎:光沢度、反射率、黒色度、密着性、及び耐擦傷性1,2の各評価が全て◎
〇:光沢度、反射率、黒色度、密着性、及び耐擦傷性1,2の各評価のうち少なくとも1つが〇で、いずれも×でない
×:光沢度、反射率、黒色度、密着性、及び耐擦傷性1,2の各評価のうち少なくとも1つが×
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
4.考察
表1で示すように、塗料に含まれる組成物中に(A)として(A1)を含めなかった場合(実験例1~4)、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性、耐擦傷性1,2の1つ以上、を満足させることができなかった。(A)として(A1)を組成物中に含めたとしても(実験例5~10)、(B)中に粒子径が所定範囲の(B1)を含めなかった場合(実験例6~10)、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性、耐擦傷性1,2の1つ以上、を満足させることができなかった。(B)中に粒子径が所定範囲の(B1)を含んでいても(実験例5、11~16)、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が7未満(実験例11)か、14超(実験例16)であると、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性、耐擦傷性1,2の1つ以上、の1つ以上を満足させることができなかった。
これに対し、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比も適切(7以上14以下)であると(実験例5、12~15)、塗料の特性、及び膜特性、のすべてを満足させることができた。
【0123】
表2で示すように、塗料に含まれる組成物中に(A)として(A1)を組成物中に含めたとしても(実験例5a~10a)、(B)中に粒子径が所定範囲の(B1)を含めなかった場合(実験例6a~10a)、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性、耐擦傷性1,2の1つ以上、を満足させることができなかった。(B)中に粒子径が所定範囲の(B1)を含んでいても(実験例5a、11a~16a)、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比が7未満(実験例11a)か、14超(実験例16a)であると、膜特性の、光沢度、反射率、L値、密着性、耐擦傷性1,2の1つ以上、の1つ以上を満足させることができなかった。
これに対し、(A)の樹脂固形分:1に対する(B)の質量比も適切(7以上14以下)であると(実験例5a、12a~15a)、塗料の特性、及び膜特性、のすべてを満足させることができた。
【0124】
表3で示すように、(A)の量を固定し、(A)中の(A1)の種類を代えた場合(実験例5、17~20)、分子量とガラス転移温度が高くなるにつれて、膜強度(鉛筆硬度、耐擦傷性)が向上することも確認された。
【0125】
[実験例21]
黒色材として、B1aに代え、B1aと同様、CBを内包した真球状アクリル樹脂粒子であるが、粒子径がやや大きい黒色アクリルビーズ(粒子径5~6μm)を用いた以外は、実験例5と同一の組成で塗料を調製した。そして、上記同様に、膜を成膜し、同様の評価を行ったところ、実験例5と同様の評価が得られることが確認できた。