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特開2024-106007シュート内原料粉化抑止装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106007
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】シュート内原料粉化抑止装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 11/20 20060101AFI20240731BHJP
   C10B 31/04 20060101ALI20240731BHJP
   C10B 53/08 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B65G11/20 Z
C10B31/04
C10B53/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010041
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】廣池 承一郎
(72)【発明者】
【氏名】関口 毅
【テーマコード(参考)】
3F011
4H012
【Fターム(参考)】
3F011AA03
3F011BA01
3F011BB01
3F011BC08
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】耐火物やライナの有無にかかわらず、シュートへの取付けが簡易で、また、原料のデッドストックの長期間滞留を簡易に回避できるシュート内原料粉化抑止装置および方法を提供する。
【解決手段】搬送用シュート内に投入された原料の落下衝撃による粉化を抑止する装置であって、支持部9と、上端部が前記支持部に支持されるとともに前記シュート内にて下方に向けて延在する複数の懸垂部材2と、前記複数の懸垂部材の下端部に固定され、前記原料を留める手段を有する下端部材3とを備え、前記複数の懸垂部材は前記シュートの幅方向に間隔を置いて配列されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用シュート内に投入された原料の落下衝撃による粉化を抑止する装置であって、
支持部と、
上端部が前記支持部に支持されるとともに前記シュート内にて下方に向けて延在する複数の懸垂部材と、
前記複数の懸垂部材の下端部に固定され、前記原料を留める手段を有する下端部材と、を備え、
前記複数の懸垂部材は前記シュートの幅方向に間隔を置いて配列されていることを特徴とする搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
【請求項3】
前記懸垂部材および前記原料を留める手段が鋼材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
【請求項4】
下記A、BおよびCの少なくともいずれか1つを満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。

A:前記原料が製鉄用原料であること
B:前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであること
C:前記シュートが耐火物またはライナで被覆されたこと
【請求項5】
下記A、BおよびCの少なくともいずれか1つを満たすことを特徴とする請求項3に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。

A:前記原料が製鉄用原料であること
B:前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであること
C:前記シュートが耐火物またはライナで被覆されたこと
【請求項6】
請求項1または2に記載された搬送用シュート内原料粉化抑止装置を用いる搬送用シュート内原料粉化抑止方法であって、
前記支持部にて前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を設定し、前記原料を留める手段で前記原料を堰き止めて形成した原料溜まりにて前記落下衝撃を緩和することを特徴とする、搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項7】
請求項3に記載された搬送用シュート内原料粉化抑止装置を用いる搬送用シュート内原料粉化抑止方法であって、
前記支持部にて前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を設定し、前記原料を留める手段で前記原料を堰き止めて形成した原料溜まりにて前記落下衝撃を緩和することを特徴とする、搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項8】
請求項4に記載された搬送用シュート内原料粉化抑止装置を用いる搬送用シュート内原料粉化抑止方法であって、
前記支持部にて前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を設定し、前記原料を留める手段で前記原料を堰き止めて形成した原料溜まりにて前記落下衝撃を緩和することを特徴とする、搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項9】
請求項5に記載された搬送用シュート内原料粉化抑止装置を用いる搬送用シュート内原料粉化抑止方法であって、
前記支持部にて前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を設定し、前記原料を留める手段で前記原料を堰き止めて形成した原料溜まりにて前記落下衝撃を緩和することを特徴とする、搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項10】
さらに前記懸垂部材の高さ方向位置を高くして前記原料溜まりを開放することおよび/または前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであることを特徴とする請求項6に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項11】
さらに前記懸垂部材の高さ方向位置を高くして前記原料溜まりを開放することおよび/または前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであることを特徴とする請求項7に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項12】
さらに前記懸垂部材の高さ方向位置を高くして前記原料溜まりを開放することおよび/または前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであることを特徴とする請求項8に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【請求項13】
さらに前記懸垂部材の高さ方向位置を高くして前記原料溜まりを開放することおよび/または前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであることを特徴とする請求項9に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に耐火物やライナなどを設置した搬送用シュートにおいて原料搬送時の原料粉化を抑止するためのシュート内原料粉化抑止装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスにおいては、石炭、鉄鉱石、成型炭、ペレットといった塊状の製鉄用原料を高炉、乾留炉等へ搬送するために複数のベルトコンベアが使用される。ベルトコンベア間の乗継部には落差があり搬送用シュート(以下、単にシュートともいう)が設置されている。
【0003】
しかし、上部ベルトコンベアから投射された塊状の製鉄用原料は、とくに原料を滑落させる下底部の壁面であるシュート壁面あるいは下部ベルトコンベアに衝突することで原料の一部が破壊し微粉が発生する。製鉄用原料中に微粉が多くなると、後工程の高炉、乾留炉等(以下、炉等と略することもある。)において空隙率低下、不均一化による加熱ムラが発生し操業歩留や製品品質が悪化する。また、ベルトコンベアからの微粉の飛散落下、発塵などの環境上の問題も存在する。現状、ベルトコンベアによる搬送後に、炉等に投入する前に篩装置を設置し微粉の除去を行っている。また、製鉄用原料中の微粉割合が多い場合は篩下が多くなり歩留りが低下し、炉等への投入量が減少し生産量も低下する。そのため、シュート内の原料の落下粉化を抑止することが望まれている。従来、このようなシュート内の原料粉化抑止のために、様々な方法が提案されている。
【0004】
例えば、シュート内の原料粉化抑止のための方法としては、シュート壁面に棚を設置し意図的に原料のデッドストックを形成し、デッドストック上に原料を落とすことで、緩衝、減速し原料粉化を抑制する方法が提案されている(特許文献1)。このデッドストックはこれへの落下原料の緩衝手段となり、かつこれを乗り越える落下原料の減速手段にもなる。しかし、この方法はシュート壁面が耐火物やライナ(セラミック等)で覆われている場合には、シュート設置後に棚を追加設置することが困難である。耐火物やライナを除去しないと溶接またはボルト等による棚の固定ができないからである。
【0005】
また、原料が石炭等の可燃性原料である場合、長期間滞留したデッドストックが乾燥し自然発火する防災上のリスクがある。とくにシュートが下方の炉等と直結している場合は、炉等からの熱により自然発火する防災上のリスクがより高くなる。
【0006】
また、別の方法としては、シュート壁面に階段状の凹凸を設置し意図的に原料のデッドストックを形成し、デッドストック上に原料を落とすことで、緩衝、減速し原料粉化を抑制する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、特許文献1の場合と同様、シュート設置後に凹凸を追加設置することが困難である。また、特許文献1の場合と同様、原料が石炭等の可燃性原料である場合、長期間滞留したデッドストックが乾燥し自然発火するという防災上のリスクがある。
【0007】
また、別の方法としては予めシュート形状の一部を凹部とし意図的に原料のデッドストックを形成し、デッドストック上に原料を落とすことで、緩衝、減速し原料粉化を抑制する方法が提案されている(特許文献3)。しかし、この方法も、特許文献1の場合と同様、シュート設置後に前記凹部を改造することが困難である。また、特許文献1の場合と同様、原料が石炭等の可燃性原料である場合、長期間滞留したデッドストックが乾燥し自然発火する防災上のリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6464790号公報
【特許文献2】特開2014-118294号公報
【特許文献3】実開平6-76227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の事情に鑑み、耐火物やライナの有無にかかわらず、シュートへの取付けが簡易で、また、原料のデッドストックの長期間滞留を簡易に回避できるシュート内原料粉化抑止装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前述の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、シュート内に原料を一時的に留める手段を上方から吊り下げる形で設置することにより、シュート設置後の手段の取付けや改造が容易化し、かつ、留めた原料の滞留期間を簡易に制御できるとの知見を得、さらに検討を加えて本発明をなした。
【0011】
すなわち本発明は以下のとおりである。
[1] 搬送用シュート内に投入された原料の落下衝撃による粉化を抑止する装置であって、
支持部と、
上端部が前記支持部に支持されるとともに前記シュート内にて下方に向けて延在する複数の懸垂部材と、
前記複数の懸垂部材の下端部に固定され、前記原料を留める手段を有する下端部材と、を備え、
前記複数の懸垂部材は前記シュートの幅方向に間隔を置いて配列されていることを特徴とする搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
[2] 前記支持部は、前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を調整する手段を備えることを特徴とする前記[1]に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
[3] 前記懸垂部材および前記原料を留める手段が鋼材からなることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
[4] 前記原料が製鉄用原料であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
[5] 前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
[6] 前記シュートが耐火物またはライナで被覆されたことを特徴とする前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の搬送用シュート内原料粉化抑止装置。
[7] 前記[1]~[5]のいずれか一つに記載された搬送用シュート内原料粉化抑止装置を用いる搬送用シュート内原料粉化抑止方法であって、
前記支持部にて前記懸垂部材の配列間隔および/または高さ方向位置を設定し、前記原料を留める手段で前記原料を堰き止めて形成した原料溜まりにて前記落下衝撃を緩和することを特徴とする、搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
[8] さらに前記懸垂部材の高さ方向位置を高くして前記原料溜まりを開放することを特徴とする前記[7]に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
[9] 前記原料が成型炭であって、平均粒径が10~60mmであることを特徴とする前記[7]または[8]に記載の搬送用シュート内原料粉化抑止方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シュート幅方向に複数配列する懸垂部材の上端部を支持し、下端部材で原料を留めることができるので、新たに投入される原料を緩衝・減速して粉化が抑止される。支持部は耐火物やライナのないシュート上方に配置することもできて、設置が容易である。また、支持部により懸垂部材の上端部を支持したことで、懸垂部材の配列間隔と下端部材下方の間隙の調整により原料溜まりの量の制御が可能となり、可燃性原料の長期間滞留による自然発火を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明装置の一例の概略構成を示す斜視図である。
図2図1の側断面図である。
図3図2のA-A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明装置は、搬送用シュート内に投入された原料の落下衝撃による粉化を抑止する装置であって、支持部と、上端部が前記支持部に支持されるとともにシュート内にて下方に向けて延在する複数の懸垂部材を備える。そして、複数の懸垂部材の下端部に固定され、原料を留める手段を有する下端部材を備え、複数の懸垂部材はシュートの幅方向に間隔を置いて配列されているものである。粉化を抑止される原料としては、塊状の製鉄用原料であり、具体的には石炭、鉄鉱石、成型炭またはペレット等が挙げられる。
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明装置の一例の概略構成を示す斜視図、図2は、図1の側断面図、図3図2のA-A矢視図である。図1~3に示した例では原料は成型炭6であり、好ましくは平均粒径が10~60mmである(本発明の[5])。より好ましくは20~35mmである。ここで、平均粒径とは、ふるい下積算分布の値が50%になる粒子径すなわちD50(メジアン径)と定義する。
【0016】
[シュート]
成型炭6はシュートの上方に設置されたベルトコンベア(図示せず)または投入装置(図示せず)によってシュート内に投入される。シュートの搬送面(シュート壁面4の下底部)は水平面から下向きに傾斜し、傾斜角は適正な搬送のために35°以上(安息角以上)70°以下であることが好ましい。シュートの出側下方には乾留炉(図示せず)が設置されている。乾留炉の熱からシュートを保護するためにシュート壁面4は耐火物5で被覆されていることが好ましい。耐火物5の厚さDは、適宜選定されるが、図1~3に示した例ではD=120mmである。また、シュートの入側上方には所用の部品を溶接やボルト締結具等で固定するための枠部材8が設置されている。
【0017】
[懸垂部材]
懸垂部材2は、上端部が後述の支持部9に支持されるとともにシュート内にて下方に向けて延在するものであり、シュートの幅方向に間隔を置いて複数配列されている。これは懸垂部材2が原料の通過を遮断しないようにするためである。懸垂部材2の配列間隔Δ(懸垂部材2の隣接間隔を意味する。図3参照)は、原料が余裕をもって通過できるように、原料の平均粒径の3~10倍とするのが好ましい。配列間隔Δが原料の平均粒径の3倍未満の場合、原料の通過量が少なくて生産能率が低下する場合がある。また、10倍超の場合、後述の下端部材3の原料を留める手段が固定点の個数不足で変形する場合があるため好ましくない。図1~3に示した例では配列間隔Δ=120mmとしている。
懸垂部材2の構成材料は強度確保の観点から、鋼材とすることが好ましい(本発明の[3])。鋼材としては鋼管、形鋼および鋼板が挙げられる。図1~3に示した例では、懸垂部材2は角型鋼管で構成している。
【0018】
[下端部材]
下端部材3は、懸垂部材2の下端部に固定され、原料を留める機能を有する。図1~3に示した例では原料を留める手段として下端部材3自体を用いている。原料を留める手段(下端部材3)は、原料を堰き止めて原料溜まり7(前述のデッドストックに相当)の形成を促すものである。下端部材3の構成材料は、強度確保の観点から、鋼材(鋼管、形鋼、鋼板等)とすることが好ましい(本発明の[3])。図1~3に示した例では下端部材3は、ボルト通し穴を開けた複数の鋼板を、懸垂部材2の下端部に設けた留め穴にボルトナットで締結することで固定している。なお、複数の鋼板の代わりに、単体の鋼板を用いることもできる。単体、複数いずれの鋼板を用いる場合も、原料溜まり7の安定形成のために、シュートの幅方向全域を遮蔽することが好ましい。
【0019】
また、原料溜まり7は、その下流端部高さH(図2図3参照)を、原料の平均粒径の3~10倍の範囲とすることが好ましい。下流端部高さHが原料の平均粒径の3倍未満の場合、粉化抑止効果が過小となる場合がある。また、10倍超の場合、原料溜まり7が下端部材3および懸垂部材2を押す力が増大し、後述する支持部材1の負荷が過大となる場合がある。そのため、下端部材3の高さ方向寸法h(図2図3参照)は、原料溜まり7の下流端部高さHの好適範囲(原料の平均粒径の3~15倍の範囲)内とすることが好ましい。ただし、原料溜まり7の下流端部高さHには原料溜まり7の上部からの原料のオーバーフロー分が含まれるので、h<H、とすることが好ましい。
【0020】
また、下端部材3は、シュート壁面4の下底部と接触した状態(図示せず)とすることもできるが、図1~3に示した例のように、シュート壁面4の下底部との間に間隙δ(図2図3参照)もたせることもできる。間隙δをもたせることで、後述するように、可燃性原料の長期間滞留を回避し、自然発火のリスクを解消できる。なお、難燃性原料(鉄鉱石、ペレット)の場合、間隙δを無としたままでも自然発火のリスクは小さい。
【0021】
間隙δを調整する一つの手段として、懸垂部材2の下端部の前記留め穴を長穴(図示せず)とし、この長穴に下端部材3をボルトで固定し、長穴内の固定位置を変更することで間隙δを調整するよう構成した下端調整手段が挙げられる。
【0022】
[支持部]
支持部9は、懸垂部材2の上端部で懸垂部材2を支持する。本実施形態においては、シュートの上方に設置された枠部材8と、枠部材8に取り付けられた支持部材1とが本発明の支持部9として機能する。懸垂部材2を支持する機構としては、支持部材1に設けた留め穴に懸垂部材2の上端部をボルトで固定する機構が挙げられる。支持部9が備える支持部材1は、シュート自体ではなくシュート上方の枠部材8に溶接等で固定できる。したがって、シュート壁面4の耐火物5の有無にかかわらず、またシュート設置の前後にかかわらず、本発明装置は簡単に設置できる。
【0023】
支持部9は、懸垂部材2の配列間隔Δおよび/または高さ方向位置を調整する手段を備えることが好ましい。支持部9には、懸垂部材2の配列間隔Δを調整する手段である配列調整手段を備えることが好ましい。これにより、平均粒径の異なる原料への変更に応じて、変更後の原料の平均粒径に適応した配列間隔Δへの変更が容易となる。配列調整手段としては、支持部材1に設けた前記留め穴を長穴とし、この長穴に懸垂部材2の上端部をボルトで固定するものが挙げられる。これによれば長穴内の固定位置を変更することで配列間隔Δの調整が可能である。
【0024】
さらに、支持部9には、前記懸垂部材2の高さ方向位置を調整する手段である上端調整手段を備えることが好ましい。この上端調整手段は、前述の、下端部材3にシュート壁面4の下底部との間隙δをもたせるもう一つの手段でもある。
【0025】
前記下端調整手段および/または前記上端置調整手段を備えることで、操業時に以下の2つの運用が可能である。
【0026】
(i)下端調整手段および/または上端調整手段により、間隙δを所定の値に保持しておく。この所定の値を原料の平均粒径の3~10倍とすることで、原料溜まり7下部の原料が間隙δを通って定常的に流出する。したがって、これにより可燃性原料の長期間滞留を回避でき、自然発火のリスクを解消できる。
また、原料の投入を停止して、原料溜まり7内の原料を間隙δから流出させ、原料溜まり7を解消することもできる。
(ii)さらに、上端調整手段により、間隙δを随時拡大して原料溜まり7を少なくとも一部開放する。これにより、偶発的に間隙δが原料で閉塞された場合でも、閉塞状態を迅速に解消することができる。
【0027】
なお、前記(i)の場合は、下端部材3の高さ方向寸法hと間隙δの合計が原料溜まり7の下流端部高さHの好適範囲内に収まるようにすることが好ましい。ただし、原料溜まり7の下流端部高さHには原料溜まり7の上部からの原料のオーバーフロー分が含まれるので、h+δ<H、とすることが好ましい。
【0028】
上端位置調整手段としては、支持部材1を所定の高さ方向区間内で昇降させる昇降機構が挙げられる(図示せず)。かかる昇降機構は油圧シリンダ等を用いて構成できる。
【0029】
次に、前述の本発明装置を用いる搬送用シュート内原料粉化抑止方法について説明する。
その特徴は、支持部9で懸垂部材2の配列間隔Δおよび/または高さ方向位置(間隙δ)を設定し、下端部材3(原料を留める手段)で原料(例えば成型炭6)を堰き止めて形成した原料溜まり7で前記原料の落下衝撃を緩和することである(本発明の[7])。懸垂部材2と下端部材3とにより、上方から落下してきた原料の流れが阻害され、これら部材と接して上流側に原料溜まり7が形成される。この原料溜まり7の上に新しい原料を落下させることで原料に作用する機械的衝撃を緩和し原料粉化を抑止することができる。また、配列間隔Δと間隙δを調整することで、原料溜まり7からの原料の流出量および原料溜まり7の層厚さ(下流端部厚さH)を簡易に制御することが可能である。
【0030】
これは、前記(i)の運用に該当する。これにより、原料溜まり7を安定的に形成させて原料の落下衝撃を緩和して粉化を抑止できる。それと共に、原料溜まり7下部の原料を間隙δから定常的に流出させて、可燃性原料(例えば成型炭6)の長期間滞留を回避し、自然発火のリスクを解消できる。
【0031】
なお、原料の投入を停止すると、原料溜まり7内の原料は間隙δから流出して原料溜まり7が解消するので、時々原料の投入を中断することによっても、原料の長期間滞留を回避できる。
【0032】
また、本発明方法では、さらに懸垂部材2の高さ方向位置をより高く(間隙δを拡大)して前記原料溜まりを開放するようにしてもよい(本発明の[8])。これは、前記(ii)の運用に該当する。これにより、偶発的に間隙δが原料で閉塞された場合でも、閉塞状態を迅速に解消することができる。
【0033】
また、本発明方法では、原料は成型炭6とし、その平均粒径を10~60mmとすることが好ましい(本発明の[9])。より好ましくは20~35mmである。成型炭6であれは形状寸法のばらつきが小さく表面の凹凸も小さくて流れが円滑であるため間隙δが閉塞されにくい。平均粒径は10~60mmとすることが好ましい。
【0034】
以上、本発明について実施形態を用いて説明してきたが、本発明はこの形態の構成には限られない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定まるものであり、その範囲内において実施の形態に示した構成要素の一部の省略や変形、またそれらの改良を施した構成の全てが本発明に含まれる。
【0035】
例えば、上記の実施形態では、支持部がシュート上方に設置された枠部材と枠部材に固定された支持部材とを含む場合を示したが、本発明はこの形態の構成には限られない。例えば、シュート壁面の耐火物またはライナで被覆されていない設置可能な部分に溶接等で支持部材を固定して支持部を形成しても良い。また、シュート上方に枠部材に加えて又は枠部材に代えて基礎部材を設け、この基礎部材に支持部材を固定して支持部を形成しても良い。
【実施例0036】
成型炭の乾留工程おいて、乾留炉の直前のシュートを対象として、図1~3に例示した実施形態で実施した。シュートの搬送面の傾斜角は45°とされている。また、懸垂部材を用いない(本発明装置の設置前)状態を比較例とした。
【0037】
前述のようにシュート壁面4は厚さD=120mmの耐火物5で被覆されているが、本発明装置の支持部9が備える支持部材1は、耐火物被覆のない上方の枠部材8に溶接等で容易に固定できた。このように、本発明装置は、耐火物(またはライナ)の被覆層を有する既設のシュートに対しても、簡易に設置可能である。
【0038】
本発明例および比較例において、成型炭6は平均形状が30mm×25.6mm×18.8mmの卵状であることを確認している。ここでは成型炭6は間欠投入であるが、本発明は連続投入の場合も実施可能である。本発明例において、懸垂部材2には、内寸77mm角×肉厚6mm×長さ1732mmのSS400製角型鋼管を使用した。なお、鋼管に代えて形鋼または鋼板を使用してもよい。本発明例では配列間隔Δは、前述の長穴による配列調整手段にて120mmに設定した。下端部材3には、板厚6mmのSS400鋼板を使用した。下端部材3の高さ方向寸法hは200mmとした。下端部材3は懸垂部材2の1本ごとに1枚ずつ固定し、全体でシュートの幅方向全域を遮蔽するようにした。なお、下端部材3の枚数を減らし、懸垂部材2の複数本ごとに1枚ずつ固定するようにしてもよい。また、本発明例では、間隙δは前記下端調整手段にて50mmに設定した。
【0039】
本発明例では、成型炭6の間欠投入での操業中、投入継続時には原料溜まり7が形成し、原料溜まり7上に落下する新たな原料が緩衝・減速される。また、原料溜まり7から間隙δを通って適量の原料が乾留炉に送られて乾留能率が維持される。また、投入休止時には原料溜まり7から間隙δを通って原料が流出して原料溜まり7が解消し、原料の長期間滞留を回避できる。
【0040】
本発明例と比較例とで原料粉化率を求め、比較した。ここで、原料粉化率は、対象としたシュートへの原料投入量(トン)に対する、該シュートを通過した原料の粉化量(トン)の比率(%)で評価した。なお、粉化量は、対象としたシュートの出側に設置した網目15mmの篩の篩下となった原料を回収・秤量して求めた。つまり、粒径15mm以下を粉と規定している。
【0041】
本発明例と比較例の原料粉化率を表1に示す。表1に示すとおり、本発明例では、比較例と比べ、原料粉化率が格段に低減しており、本発明の粉化抑止効果が明らかである。
【0042】
【表1】
【0043】
また、本発明例では、原料投入の休止時に原料溜まり7内の原料が間隙δから流出し、1分間程度で原料溜まり7が解消することが確認された。
【符号の説明】
【0044】
1 支持部材
2 懸垂部材
3 下端部材(原料を留める手段)
4 シュート壁面
5 耐火物
6 成型炭(原料)
7 原料溜まり
8 枠部材
9 支持部
図1
図2
図3