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特開2024-106008デジタル音声処理装置及びデジタル音声処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106008
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】デジタル音声処理装置及びデジタル音声処理方法
(51)【国際特許分類】
   G10L 21/0388 20130101AFI20240731BHJP
   G10L 21/057 20130101ALN20240731BHJP
【FI】
G10L21/0388 100
G10L21/057
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010043
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】辻井 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】山邊 孝朗
(72)【発明者】
【氏名】秋元 秀之
(72)【発明者】
【氏名】桑岡 俊治
(57)【要約】
【課題】低域周波数に含まれる高調波成分を十分に補償することができるデジタル音声処理装置を提供する。
【解決手段】周辺サンプル補正値生成部32は、極大サンプル及び極小サンプルの周辺サンプルを補正するための周辺サンプル補正値を生成する。歪補正値生成部33は、極大サンプルの前に位置する極小サンプルと極大サンプルとの間の上昇サンプル区間、極大サンプルの後に位置する極大サンプルと極小サンプルとの間の下降サンプル区間における、周辺サンプル補正値によって補正されないサンプルを歪補正対象サンプルとして、歪補正対象サンプルを補正するための歪補正値を生成する。加減算部37は、周辺サンプルに周辺サンプル補正値を加減算し、歪補正対象サンプルに歪補正値を加減算する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大サンプル及び極小サンプルを検出する極大・極小サンプル検出部と、
前記極大サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極大サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第1の周辺サンプル、前記極大サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極大サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第2の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極小サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第3の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極小サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第4の周辺サンプルとし、前記第1の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の周辺サンプルを補正するための第1の周辺サンプル補正値を生成し、前記第2の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の周辺サンプルを補正するための第2の周辺サンプル補正値を生成し、前記第3の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第3の周辺サンプルを補正するための第3の周辺サンプル補正値を生成し、前記第4の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第4の周辺サンプルを補正するための第4の周辺サンプル補正値を生成する周辺サンプル補正値生成部と、
前記極大サンプルの前に位置する前記極小サンプルと前記極大サンプルとの間の上昇サンプル区間における前記第1または第4の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第1の歪補正対象サンプル、前記極大サンプルの後に位置する前記極大サンプルと前記極小サンプルと間の下降サンプル区間における前記第2または第3の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第2の歪補正対象サンプルとし、前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正対象サンプルを補正するための第1の歪補正値を生成し、前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正対象サンプルを補正するための第2の歪補正値を生成する歪補正値生成部と、
前記第1の周辺サンプルの各サンプルに前記第1の周辺サンプル補正値を加算し、前記第2の周辺サンプルの各サンプルに前記第2の周辺サンプル補正値を加算し、前記第3の周辺サンプルの各サンプルより前記第3の周辺サンプル補正値を減算し、前記第4の周辺サンプルの各サンプルより前記第4の周辺サンプル補正値を減算し、前記第1の歪補正対象サンプルに前記第1の歪補正値を加算するか前記第1の歪補正対象サンプルより前記第1の歪補正値を減算し、前記第2の歪補正対象サンプルに前記第2の歪補正値を加算するか前記第2の歪補正対象サンプルより前記第2の歪補正値を減算する加減算部と、
を備えるデジタル音声処理装置。
【請求項2】
前記歪補正値生成部は、
前記第1及び第4の周辺サンプルをそれぞれ第3及び第4の歪補正対象サンプルとし、前記第2及び第3の周辺サンプルをそれぞれ第5及び第6の歪補正対象サンプルとし、
前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正値を生成し、
前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正値を生成し、
前記第3~第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して、それぞれ、第3~第6の歪補正値を生成し、
前記加減算部は、
前記第1、第3、第4の歪補正対象サンプルにそれぞれ前記第1、第3、第4の歪補正値を加算し、
前記第2、第5、第6の歪補正対象サンプルよりそれぞれ前記第2、第5、第6の歪補正値を減算する
請求項1に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項3】
前記歪補正値生成部は、
前記第1及び第4の周辺サンプルをそれぞれ第3及び第4の歪補正対象サンプルとし、前記第2及び第3の周辺サンプルをそれぞれ第5及び第6の歪補正対象サンプルとし、
前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正値を生成し、
前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正値を生成し、
前記第3の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第3の歪補正値を生成し、
前記第4の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第4の歪補正値を生成し、
前記第5の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第5の歪補正値を生成し、
前記第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第6の歪補正値を生成し、
前記加減算部は、
前記第1及び第3の歪補正対象サンプルにそれぞれ前記第1及び第3の歪補正値を加算し、
前記第4の歪補正対象サンプルより前記第4の歪補正値を減算し、
前記第2及び第5の歪補正対象サンプルにそれぞれ前記第2及び第5の歪補正値を加算し、
前記第6の歪補正対象サンプルより前記第6の歪補正値を減算する
請求項1に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項4】
前記歪補正値生成部は、
前記第1及び第4の周辺サンプルをそれぞれ第3及び第4の歪補正対象サンプルとし、前記第2及び第3の周辺サンプルをそれぞれ第5及び第6の歪補正対象サンプルとし、
前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正値を生成し、
前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正値を生成し、
前記第3の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第3の歪補正値を生成し、
前記第4の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第4の歪補正値を生成し、
前記第5の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第5の歪補正値を生成し、
前記第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第6の歪補正値を生成し、
前記加減算部は、
前記第1及び第3の歪補正対象サンプルにそれぞれ前記第1及び第3の歪補正値を加算し、
前記第4の歪補正対象サンプルより前記第4の歪補正値を減算し、
前記第2及び第6の歪補正対象サンプルよりそれぞれ前記第2及び第6の歪補正値を減算し、
前記第5の歪補正対象サンプルに前記第5の歪補正値を加算する
請求項1に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項5】
前記歪補正値生成部は、
前記第1及び第4の周辺サンプルをそれぞれ第3及び第4の歪補正対象サンプルとし、前記第2及び第3の周辺サンプルをそれぞれ第5及び第6の歪補正対象サンプルとし、
前記第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるとき、前記第1の歪補正対象サンプルのうちの前記第1の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算し、前記第1の歪補正対象サンプルのうちの前記第4の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正値を生成し、
前記第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であるとき、前記第1の歪補正対象サンプルの中央に位置する第1の中央サンプルと前記第1の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算し、前記第1の中央サンプルと前記第4の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正値を生成し、
前記第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるとき、前記第2の歪補正対象サンプルのうちの前記第2の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算し、前記第3の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正値を生成し、
前記第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であるとき、前記第2の歪補正対象サンプルの中央に位置する第2の中央サンプルと前記第2の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算し、前記第2の中央サンプルと前記第3の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正値を生成し、
前記第3の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第3の歪補正値を生成し、
前記第4の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第4の歪補正値を生成し、
前記第5の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第5の歪補正値を生成し、
前記第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第6の歪補正値を生成し、
前記加減算部は、
前記第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるとき、前記第1の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルに前記第1の歪補正値を加算し、前記第4の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルより前記第1の歪補正値を減算し、
前記第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であるとき、前記第1の中央サンプルと前記第1の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルに前記第1の歪補正値を加算し、前記第1の中央サンプルと前記第4の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルより前記第1の歪補正値を減算し、
前記第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるとき、前記第2の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルに前記第2の歪補正値を加算し、前記第3の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルより前記第2の歪補正値を減算し、
前記第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であるとき、前記第2の中央サンプルと前記第2の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルに前記第2の歪補正値を加算し、前記第2の中央サンプルと前記第3の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルより前記第2の歪補正値を減算し、
前記第3の歪補正対象サンプルに前記第3の歪補正値を加算し、
前記第4の歪補正対象サンプルより前記第4の歪補正値を減算し、
前記第5の歪補正対象サンプルに前記第5の歪補正値を加算し、
前記第6の歪補正対象サンプルより前記第6の歪補正値を減算する
請求項1に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項6】
前記極大サンプルと前記極大サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記極大サンプルを補正するための極大サンプル補正値を生成し、前記極小サンプルと前記極小サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記極小サンプルを補正するための極小サンプル補正値を生成する極大・極小サンプル補正値生成部をさらに備え、
前記加減算部は、
前記極大サンプルに前記極大サンプル補正値を加算し、
前記極小サンプルより前記極小サンプル補正値を減算する
請求項1~5のいずれか1項に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項7】
前記極大サンプルと前記極大サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記極大サンプルを補正するための極大サンプル補正値を生成し、前記極小サンプルと前記極小サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記極小サンプルを補正するための極小サンプル補正値を生成する極大・極小サンプル補正値生成部をさらに備え、
前記歪補正値生成部は、
前記極大サンプルを第7の歪補正対象サンプル、前記極小サンプルを第8の歪補正対象サンプルとし、
前記極大サンプルと前記極大サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第7の歪補正値を生成し、
前記極小サンプルと前記極小サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して第8の歪補正値を生成し、
前記加減算部は、
前記第7の歪補正対象サンプルに前記第7の歪補正値を加算し、
前記第8の歪補正対象サンプルより前記第8の歪補正値を減算する
請求項2~5のいずれか1項に記載のデジタル音声処理装置。
【請求項8】
入力デジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大サンプル及び極小サンプルを検出し、
前記極大サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極大サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第1の周辺サンプル、前記極大サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極大サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第2の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極小サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第3の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極小サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第4の周辺サンプルとし、
前記第1の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の周辺サンプルを補正するための第1の周辺サンプル補正値を生成し、
前記第2の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の周辺サンプルを補正するための第2の周辺サンプル補正値を生成し、
前記第3の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第3の周辺サンプルを補正するための第3の周辺サンプル補正値を生成し、
前記第4の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第4の周辺サンプルを補正するための第4の周辺サンプル補正値を生成し、
前記極大サンプルの前に位置する前記極小サンプルと前記極大サンプルとの間の上昇サンプル区間における前記第1または第4の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第1の歪補正対象サンプル、前記極大サンプルの後に位置する前記極大サンプルと前記極小サンプルと間の下降サンプル区間における前記第2または第3の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第2の歪補正対象サンプルとし、
前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正対象サンプルを補正するための第1の歪補正値を生成し、
前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正対象サンプルを補正するための第2の歪補正値を生成し、
前記第1の周辺サンプルの各サンプルに前記第1の周辺サンプル補正値を加算し、
前記第2の周辺サンプルの各サンプルに前記第2の周辺サンプル補正値を加算し、
前記第3の周辺サンプルの各サンプルより前記第3の周辺サンプル補正値を減算し、
前記第4の周辺サンプルの各サンプルより前記第4の周辺サンプル補正値を減算し、
前記第1の歪補正対象サンプルに前記第1の歪補正値を加算するか前記第1の歪補正対象サンプルより前記第1の歪補正値を減算し、
前記第2の歪補正対象サンプルに前記第2の歪補正値を加算するか前記第2の歪補正対象サンプルより前記第2の歪補正値を減算する
デジタル音声処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル音声信号を処理するデジタル音声処理装置及びデジタル音声処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デジタル音声信号の波形の極大値を有する極大サンプルの周辺に位置するサンプルに補正値を加算し、極小値を有する極小サンプルの周辺に位置するサンプルより補正値を減算して、デジタル音声信号の波形を補正することが記載されている。特許文献2には、特許文献1に記載の補正に加えて、極大サンプルに補正値を加算し、極小サンプルより補正値を減算して、デジタル音声信号の波形を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3401171号公報
【特許文献2】特許第3659489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載のデジタル音声処理装置によれば、補正対象のサンプルが局所的であるため、低域周波数に含まれる高調波成分を十分に補償することができない。
【0005】
1またはそれ以上の実施形態は、低域周波数に含まれる高調波成分を十分に補償することができるデジタル音声処理装置及びデジタル音声処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、入力デジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大サンプル及び極小サンプルを検出する極大・極小サンプル検出部と、前記極大サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極大サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第1の周辺サンプル、前記極大サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極大サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第2の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極小サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第3の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極小サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第4の周辺サンプルとし、前記第1の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の周辺サンプルを補正するための第1の周辺サンプル補正値を生成し、前記第2の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の周辺サンプルを補正するための第2の周辺サンプル補正値を生成し、前記第3の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第3の周辺サンプルを補正するための第3の周辺サンプル補正値を生成し、前記第4の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第4の周辺サンプルを補正するための第4の周辺サンプル補正値を生成する周辺サンプル補正値生成部と、前記極大サンプルの前に位置する前記極小サンプルと前記極大サンプルとの間の上昇サンプル区間における前記第1または第4の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第1の歪補正対象サンプル、前記極大サンプルの後に位置する前記極大サンプルと前記極小サンプルと間の下降サンプル区間における前記第2または第3の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第2の歪補正対象サンプルとし、前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正対象サンプルを補正するための第1の歪補正値を生成し、前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正対象サンプルを補正するための第2の歪補正値を生成する歪補正値生成部と、前記第1の周辺サンプルの各サンプルに前記第1の周辺サンプル補正値を加算し、前記第2の周辺サンプルの各サンプルに前記第2の周辺サンプル補正値を加算し、前記第3の周辺サンプルの各サンプルより前記第3の周辺サンプル補正値を減算し、前記第4の周辺サンプルの各サンプルより前記第4の周辺サンプル補正値を減算し、前記第1の歪補正対象サンプルに前記第1の歪補正値を加算するか前記第1の歪補正対象サンプルより前記第1の歪補正値を減算し、前記第2の歪補正対象サンプルに前記第2の歪補正値を加算するか前記第2の歪補正対象サンプルより前記第2の歪補正値を減算する加減算部とを備えるデジタル音声処理装置を提供する。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、入力デジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大サンプル及び極小サンプルを検出し、前記極大サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極大サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第1の周辺サンプル、前記極大サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極大サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第2の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ前のサンプルを含む前記極小サンプルの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第3の周辺サンプル、前記極小サンプルの1つ後のサンプルを含む前記極小サンプルの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第4の周辺サンプルとし、前記第1の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の周辺サンプルを補正するための第1の周辺サンプル補正値を生成し、前記第2の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の周辺サンプルを補正するための第2の周辺サンプル補正値を生成し、前記第3の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第3の周辺サンプルを補正するための第3の周辺サンプル補正値を生成し、前記第4の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第4の周辺サンプルを補正するための第4の周辺サンプル補正値を生成し、前記極大サンプルの前に位置する前記極小サンプルと前記極大サンプルとの間の上昇サンプル区間における前記第1または第4の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第1の歪補正対象サンプル、前記極大サンプルの後に位置する前記極大サンプルと前記極小サンプルと間の下降サンプル区間における前記第2または第3の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上のサンプルを第2の歪補正対象サンプルとし、前記第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第1の歪補正対象サンプルを補正するための第1の歪補正値を生成し、前記第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に1未満の係数を乗算して前記第2の歪補正対象サンプルを補正するための第2の歪補正値を生成し、前記第1の周辺サンプルの各サンプルに前記第1の周辺サンプル補正値を加算し、前記第2の周辺サンプルの各サンプルに前記第2の周辺サンプル補正値を加算し、前記第3の周辺サンプルの各サンプルより前記第3の周辺サンプル補正値を減算し、前記第4の周辺サンプルの各サンプルより前記第4の周辺サンプル補正値を減算し、前記第1の歪補正対象サンプルに前記第1の歪補正値を加算するか前記第1の歪補正対象サンプルより前記第1の歪補正値を減算し、前記第2の歪補正対象サンプルに前記第2の歪補正値を加算するか前記第2の歪補正対象サンプルより前記第2の歪補正値を減算するデジタル音声処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理装置及びデジタル音声処理方法によれば、低域周波数に含まれる高調波成分を十分に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理装置を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す音声波形分析部1の具体的な構成例を示すブロック図である。
図3図3は、入力デジタル音声信号の波形の一例を示す図である。
図4図4は、図2に示す極大・極小サンプル検出部12の動作を示す図である。
図5図5は、極値間隔数のグループ分けの一例を示す図である。
図6図6は、図1に示す補正対象サンプル・補正係数設定部2の具体的な構成例を示すブロック図である。
図7図7は、図6に示す補正対象サンプル位置パターン選択部21に設定されている補正対象サンプル位置パターンの一例を示す図である。
図8A図8Aは、図6に示す補正係数群選択部22に設定されている、サンプリング周波数が44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHzであるときの極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数を示す図である。
図8B図8Bは、図6に示す補正係数群選択部22に設定されている、サンプリング周波数が176.4kHz、192kHz、352.8kHz、384kHzあるときの極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数を示す図である。
図9図9は、図1に示す音声波形補正部3の具体的な構成例を示すブロック図である。
図10A図10Aは、音声波形補正部3が極大サンプルを補正する動作を示す図である。
図10B図10Bは、音声波形補正部3が極小サンプルを補正する動作を示す図である。
図11A図11Aは、音声波形補正部3が極大サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルを補正する動作を示す図である。
図11B図11Bは、音声波形補正部3が極小サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルを補正する動作を示す図である。
図12A図12Aは、音声波形補正部3が極大サンプルの1つ前、2つ前、1つ後、及び2つ後のサンプルを補正する動作を示す図である。
図12B図12Bは、音声波形補正部3が極小サンプルの1つ前、2つ前、1つ後、及び2つ後のサンプルを補正する動作を示す図である。
図13図13は、上昇サンプル区間、下降サンプル区間、第1及び第2の中間サンプル、第1~第4の周辺サンプル、第1~第8の歪補正サンプルの定義を示す図である。
図14A図14Aは、周辺サンプル係数に乗算する位置定数を1とするサンプル位置を示す図である。
図14B図14Bは、周辺サンプル係数に乗算する位置定数を1/2とするサンプル位置を示す図である。
図15図15は、図6に示す補正係数群選択部22に設定されている歪補正係数を示す図である。
図16図16は、第1の歪補正パターンの一例を示す図である。
図17図17は、図16に示す第1の歪補正パターンが選択された状態で音声波形補正部3が各サンプルをどのように補正するかを示す図である。
図18図18は、第2の歪補正パターンの一例を示す図である。
図19図19は、図18に示す第2の歪補正パターンが選択された状態で音声波形補正部3が各サンプルをどのように補正するかを示す図である。
図20図20は、第3の歪補正パターンの一例を示す図である。
図21図21は、図20に示す第3の歪補正パターンが選択された状態で音声波形補正部3が各サンプルをどのように補正するかを示す図である。
図22図22は、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるときの第4の歪補正パターンの一例を示す図である。
図23図23は、図22に示す第4の歪補正パターンが選択された状態で音声波形補正部3が各サンプルをどのように補正するかを示す図である。
図24図24は、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であるときの第4の歪補正パターンの一例を示す図である。
図25図25は、図24に示す第4の歪補正パターンが選択された状態で音声波形補正部3が各サンプルをどのように補正するかを示す図である。
図26図26は、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理プログラムを実行するマイクロコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図27図27は、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理方法、及び、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理プログラムが中央処理装置に実行させる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理装置及びデジタル音声処理方法について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理装置100は、音声波形分析部1、補正対象サンプル・補正係数設定部2、音声波形補正部3を備える。音声波形分析部1及び音声波形補正部3には、補正対象の入力デジタル音声信号として、所定の量子化ビット数及び所定のサンプリング周波数のデジタル音声信号が入力される。図1では図示を省略しているが、音声波形分析部1において分析された音声波形に応じて音声波形補正部3が入力デジタル音声信号を補正するように、音声波形補正部3に入力される入力デジタル音声信号は遅延器で遅延される。これにより、音声波形分析部1による音声波形の分析と音声波形補正部3による入力デジタル音声信号の補正とのタイミングが合わせられている。
【0012】
図2は、音声波形分析部1の具体的な構成例を示している。図2に示すように、音声波形分析部1は、サンプリング周波数取得部11、極大・極小サンプル検出部12、極値間隔グループ選択部13を有する。サンプリング周波数取得部11は、入力デジタル音声信号よりサンプリング周波数を取得して、補正対象サンプル・補正係数設定部2に供給する。サンプリング周波数取得部11が入力デジタル音声信号よりサンプリング周波数を取得できない場合には、ユーザが手動でサンプリング周波数を入力してもよい。
【0013】
極大・極小サンプル検出部12は、入力デジタル音声信号における極大値を有する極大サンプル、及び極小値を有する極小サンプルを検出する。極大・極小サンプル検出部12は、極小サンプルから極大サンプルまでの間隔数(サンプル数)、及び極大サンプルから極小サンプルまでの間隔数(サンプル数)を極値間隔数として極値間隔グループ選択部13及び補正対象サンプル・補正係数設定部2に供給する。極大・極小サンプル検出部12は、入力デジタル音声信号の波形が極小サンプルから極大サンプルに向かう正の傾きを有するか、極大サンプルから極小サンプルに向かう負の傾きを有するかを示す傾き識別値を補正対象サンプル・補正係数設定部2に供給する。
【0014】
極大・極小サンプル検出部12に入力される波形が図3である場合を例として、極大・極小サンプル検出部12の動作を具体的に説明する。図3において、丸で示すS99、S0~S7は入力デジタル音声信号のサンプルを示している。図4に示すように、極大・極小サンプル検出部12は、サンプルS0~S7の各サンプルを注目サンプル、各サンプルの1つ前のサンプルを比較サンプルとして、注目サンプルが比較サンプルと比較してサンプル値が大であるか小であるかを判定する。サンプルS0~S7において、小、大、大、大、小、小、小、大の大小判定が得られる。
【0015】
極大・極小サンプル検出部12は、大小判定の判定結果に基づき、波形の傾きが正であるか負であるかを検出する。例えば、極大・極小サンプル検出部12は、波形の傾きが正であれば傾き識別値として+1、波形の傾きが負であれば傾き識別値として-1を出力する。極大・極小サンプル検出部12は、大小判定の判定結果に基づき、極大値を有する極大サンプル、及び極小値を有する極小サンプルを検出する。大小判定が小から大へと変化するときの小と判定された注目サンプルが極小サンプルであり、大小判定が大から小へと変化するときの大と判定された注目サンプルが極大サンプルである。
【0016】
図3に示す波形においては、ハッチングを付して示すサンプルS0及びS6が極小サンプルであり、ハッチングを付して示すサンプルS3が極大サンプルである。
【0017】
極大・極小サンプル検出部12は、極大サンプルまたは極小サンプルとなると次のサンプルでカウント値を1として、極小サンプルに到達するまで、及び極大サンプルに到達するまでサンプルをカウントする。図4に示すように、図3に示す波形においては、極大サンプルであるサンプルS3でカウント値は3、極小サンプルであるサンプルS6でカウント値は3となる。極大・極小サンプル検出部12は、このようにカウントしたカウント値を極値間隔数として出力する。
【0018】
極値間隔数2~32をそれぞれ極値間隔2fs~32fsと称することとする。図2において、極値間隔グループ選択部13は、入力された極値間隔数に基づいて選択した極値間隔グループを補正対象サンプル・補正係数設定部2に供給する。
【0019】
極値間隔グループ選択部13は、一例として図5に示すように極値間隔数をグループ分けした極値間隔グループを出力する。図5に示す例では、極値間隔2fs~5fsが極値間隔グループG1、極値間隔6fs~8fsが極値間隔グループG2、極値間隔9fs~11fsが極値間隔グループG3、極値間隔12fs~16fsが極値間隔グループG4である。極値間隔17fs~20fsが極値間隔グループG5、極値間隔21fs~24fsが極値間隔グループG6、極値間隔25fs~28fsが極値間隔グループG7、極値間隔29fs~32fsが極値間隔グループG8である。
【0020】
デジタル音声処理装置100は、極値間隔数が32を超える波形を補正の対象外としている。デジタル音声処理装置100は、入力デジタル音声信号の高調波成分を補償するよう波形を補正する。極値間隔数が32を超えるような低域周波数を有する波形の高調波成分を補償しても効果がなく補償する必要がないため、補正対象の極値間隔の上限を32fsとしている。補正対象の極値間隔の上限は32fsに限定されるものではなく、所定の極値間隔を上限とすればよい。極値間隔グループ選択部13は、極値間隔2fsから上限の極値間隔までを所定の複数の極値間隔ごとにグループ分けすればよい。
【0021】
図6は、補正対象サンプル・補正係数設定部2の具体的な構成例を示している。図6に示すように、補正対象サンプル・補正係数設定部2は、補正対象サンプル位置パターン選択部21及び補正係数群選択部22を有する。
【0022】
補正対象サンプル位置パターン選択部21は、一例として図7に示すように、入力された極値間隔グループG1~G8に応じて、補正対象サンプル位置パターンを選択する。図7において、S(-1)とは極大サンプルまたは極小サンプルの1つ前のサンプル、S(+1)とは極大サンプルまたは極小サンプルの1つ後のサンプルであることを示す。S(-2)とは極大サンプルまたは極小サンプルの2つ前のサンプル、S(+2)とは極大サンプルまたは極小サンプルの2つ後のサンプルであることを示す。このように、nを1~8の数とすると、S(-n)は極大サンプルまたは極小サンプルのn個前のサンプルを示し、S(+n)は極大サンプルまたは極小サンプルのn個後のサンプルを示す。
【0023】
極値間隔グループG1の補正対象サンプル位置パターンがS(-1),S(+1)であるとは、極大サンプルまたは極小サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルが、極大サンプルまたは極小サンプル周辺の補正対象のサンプル(以下、周辺サンプル)であることを示す。極値間隔グループG2の補正対象サンプル位置パターンがS(-1)S(-2),S(+1),S(+2)であるとは、極大サンプルまたは極小サンプルの1つ前、2つ前、1つ後、2つ後のサンプルが、補正対象の周辺サンプルであることを示す。
【0024】
このように、図7に示す補正対象サンプル位置パターンにおいては、極値間隔グループがG1からG8に向かうに従って、極大サンプルまたは極小サンプルを挟む補正対象の周辺サンプルを前方向及び後ろ方向に順に1サンプルずつ広げるよう設定している。補正対象サンプル位置パターン選択部21は、極値間隔グループに対応する補正対象サンプル位置パターンを選択する。
【0025】
補正対象の周辺サンプルを極大サンプル及び極小サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルのみに限定してもよい。極値間隔グループG1のみ、極大サンプル及び極小サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルを補正対象の周辺サンプルとし、極値間隔グループG2以降、極大サンプル及び極小サンプルの1つ前、2つ前、1つ後、2つ後のサンプルを補正対象の周辺サンプルとすることも可能である。極大サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルを含む極大サンプルの前及び後に位置する1またはそれ以上のサンプル、極小サンプルの1つ前及び1つ後のサンプルを含む極小サンプルの前及び後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の周辺サンプルとすればよい。
【0026】
補正係数群選択部22には、補正係数群の1つとして、図8A及び図8Bに示すような1未満の極大・極小サンプル係数及び1未満の周辺サンプル係数が設定されている。極大・極小サンプル係数は極大サンプルと極小サンプルを補正する補正値を生成するために用いられ、周辺サンプル係数は周辺サンプルを補正する補正値を生成するために用いられる。補正係数群選択部22は、サンプリング周波数と極値間隔2fs~32fsとに対応する、極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数とを選択して出力する。
【0027】
図8Aに示す例では、サンプリング周波数44.1kHz及び48kHzで共通の係数群を設定し、サンプリング周波数88.2kHz及び96kHzで共通の係数群を設定している。図8Bに示す例では、サンプリング周波数176.4kHz及び192kHzで共通の係数群を設定し、サンプリング周波数352.8kHz及び384kHzで共通の係数群を設定している。
【0028】
図8A及び図8Bに示す極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数の数値は一例であり、極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数は図8A及び図8Bに示す数値に限定されない。サンプリング周波数176.4kHz及び192kHzにおける極値間隔2fs、サンプリング周波数352.8kHz及び384kHzにおける極値間隔2fs~6fsの例外を除き、極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数は大方、極値間隔が大きくなるほど小さく設定されている。但し、複数の極値間隔で同じ係数が設定されていてもよい。
【0029】
補正係数群選択部22は、サンプリング周波数と極値間隔2fs~32fsとに基づいて極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数を選択して出力するときに、傾き識別値に基づいて次のように極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数の正または負を決定する。補正係数群選択部22は、極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数を正とするときには、図8A及び図8Bで設定されている極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数をそのまま出力する。補正係数群選択部22は、極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数を負とするときには、図8A及び図8Bで設定されている極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数に-1を乗算して出力する。
【0030】
傾き識別値が+1であれば、極小サンプルから極大サンプルに向かう波形である。このとき、補正係数群選択部22は、極小サンプルに続く周辺サンプルを補正する補正値を生成するための周辺サンプル係数を負、極大サンプル手前の周辺サンプルを補正する補正値を生成するための周辺サンプル係数と極大サンプルを補正するための極大・極小サンプル係数を正とする。傾き識別値が-1であれば、極大サンプルから極小サンプルに向かう波形である。このとき、補正係数群選択部22は、極大サンプルに続く周辺サンプルを補正する補正値を生成するための周辺サンプル係数を正、極小サンプル手前の周辺サンプルを補正する補正値を生成するための周辺サンプル係数と極小サンプルを補正するための極大・極小サンプル係数を負とする。
【0031】
図9は、音声波形補正部3の具体的な構成例を示している。図9に示すように、音声波形補正部3は、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34~36を有する。加算器34~36は加減算部37を構成する。
【0032】
入力デジタル音声信号は、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34に入力される。補正対象サンプル位置パターン選択部21より出力された補正対象サンプル位置パターンは、極大・極小サンプル補正値生成部31及び周辺サンプル補正値生成部32に入力される。補正係数群選択部22より出力された極大・極小サンプル係数は、極大・極小サンプル補正値生成部31に入力される。補正係数群選択部22より出力された周辺サンプル係数は、周辺サンプル補正値生成部32に入力される。
【0033】
図10A及び図10Bは、極大・極小サンプル補正値生成部31が極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminを補正するための補正値を生成し、加算器34が生成された補正値に基づいて極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminを補正する動作を示している。
【0034】
図10Aに示すように、極大・極小サンプル補正値生成部31は、極大サンプルSmaxと、極大サンプルSmaxの1つ前のサンプルS(-1)との差分Δ(-1)に極大・極小サンプル係数を乗算して、極大サンプルSmaxを補正するための極大サンプル補正値Vaddmaxを生成する。このときの極大・極小サンプル係数は正であるから、加算器34は、入力デジタル音声信号における極大サンプルSmaxに正の値である極大サンプル補正値Vaddmaxを加算する。これにより、破線で示す補正前の極大サンプルSmaxは、極大サンプル補正値Vaddmaxが加算されることにより、実線で示す極大サンプルSmax’へと補正される。
【0035】
図10Bに示すように、極大・極小サンプル補正値生成部31は、極小サンプルSminと、極小サンプルSminの1つ前のサンプルS(-1)との差分Δ(-1)に極大・極小サンプル係数を乗算して、極小サンプルSminを補正するための極小サンプル補正値Vsubminを生成する。このときの極大・極小サンプル係数は負であるから、加算器34は、入力デジタル音声信号における極小サンプルSminに負の値である極小サンプル補正値Vsubminを加算する。これにより、破線で示す補正前の極小サンプルSminは、極小サンプル補正値Vsubminが減算されることにより、実線で示す極小サンプルSmin’へと補正される。
【0036】
具体的に、サンプリング周波数が44.1kHz、極値間隔4fsを例とする。極大・極小サンプル補正値生成部31は、図10Aに示す差分Δ(-1)に1/8を乗算した極大サンプル補正値Vaddmaxを生成し、図10Bに示す差分Δ(-1)に1/8を乗算した極小サンプル補正値Vsubminを生成する。加算器34は、極大サンプルSmaxに極大サンプル補正値Vaddmaxを加算し、極小サンプルSminより極小サンプル補正値Vsubminを減算する。
【0037】
図11A及び図11Bは、極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminの1つ前のサンプルS(-1)及び1つ後のサンプルS(+1)が、補正対象の周辺サンプルである場合を示している。図11A及び図11Bは、周辺サンプル補正値生成部32がサンプルS(-1)及びS(+1)を補正するための補正値を生成し、加算器35が生成された補正値に基づいてサンプルS(-1)及びS(+1)を補正する動作を示している。
【0038】
図11Aに示すように、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(-1)とその1つ後のサンプルである極大サンプルSmaxとの差分Δ(-1)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(-1)を補正するための補正値Vadd(-1)を生成する。このときの周辺サンプル係数は正であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(-1)に正の値である補正値Vadd(-1)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(-1)は、補正値Vadd(-1)が加算されることにより、実線で示すサンプルS(-1)’へと補正される。
【0039】
また、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(+1)とその1つ前のサンプルである極大サンプルSmaxとの差分Δ(+1)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(+1)を補正するための補正値Vadd(+1)を生成する。このときの周辺サンプル係数は正であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(+1)に正の値である補正値Vadd(+1)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(+1)は、補正値Vadd(+1)が加算されることにより、実線で示すサンプルS(+1)’へと補正される。
【0040】
図11Bに示すように、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(-1)とその1つ後のサンプルである極小サンプルSminとの差分Δ(-1)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(-1)を補正するための補正値Vsub(-1)を生成する。このときの周辺サンプル係数は負であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(-1)に負の値である補正値Vsub(-1)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(-1)は、補正値Vsub(-1)が減算されることにより、実線で示すサンプルS(-1)’へと補正される。
【0041】
また、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(+1)とその1つ前のサンプルである極小サンプルSminとの差分Δ(+1)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(+1)を補正するための補正値Vsub(+1)を生成する。このときの周辺サンプル係数は負であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(+1)に負の値である補正値Vsub(+1)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(+1)は、補正値Vsub(+1)が減算されることにより、実線で示すサンプルS(+1)’へと補正される。
【0042】
具体的に、サンプリング周波数が44.1kHz、極値間隔4fsを例とする。周辺サンプル補正値生成部32は、図11Aに示す差分Δ(-1)に1/16を乗算した補正値Vadd(-1)を生成し、図11Aに示す差分Δ(+1)に1/16を乗算した補正値Vadd(+1)を生成する。周辺サンプル補正値生成部32は、図11Bに示す差分Δ(-1)に1/16を乗算した補正値Vsub(-1)を生成し、図11Bに示す差分Δ(+1)に1/16を乗算した補正値Vsub(+1)を生成する。加算器35は、図11Aに示すサンプルS(-1)及びS(+1)にそれぞれ補正値Vadd(-1)及びVadd(+1)を加算し、図11Bに示すサンプルS(-1)及びS(+1)よりそれぞれ補正値Vsub(-1)及びVsub(+1)を減算する。
【0043】
ところで、極値間隔2fsの波形においては、極大サンプルSmaxの1つ前のサンプルS(-1)と、極小サンプルSminの1つ後のサンプルS(+1)とは同じサンプルであり、極大サンプルSmaxの1つ後のサンプルS(+1)と極小サンプルSminの1つ前のサンプルS(-1)とは同じサンプルである。そこで、極値間隔2fsの波形においては、極大サンプルSmaxの1つ前のサンプルS(-1)に補正値Vadd(-1)を加算してサンプルS(-1)’に補正し、極大サンプルSmaxの1つ後のサンプルS(+1)に補正値Vadd(+1)を加算してサンプルS(+1)’に補正するのみとするのがよい。
【0044】
図12A及び図12Bは、極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminの1つ前のサンプルS(-1)、2つ前のサンプルS(-2)、1つ後のサンプルS(+1)、2つ後のサンプルS(+2)が、補正対象の周辺サンプルである場合を示している。図12A及び図12Bは、周辺サンプル補正値生成部32がサンプルS(-1)、S(-2)、S(+1)、S(+2)を補正するための補正値を生成し、加算器35が生成された補正値に基づいてサンプルS(-1)、S(-2)、S(+1)、S(+2)を補正する動作を示している。
【0045】
周辺サンプル補正値生成部32が、極大サンプルSmaxを挟むサンプルS(-1)及びS(+1)と、極小サンプルSminを挟むサンプルS(-1)及びS(+1)とを補正する動作は、図11A及び図11Bで説明したとおりである。
【0046】
図12Aに示すように、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(-2)とその1つ後のサンプルであるサンプルS(-1)との差分Δ(-2)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(-2)を補正するための補正値Vadd(-2)を生成する。このときの周辺サンプル係数は正であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(-2)に正の値である補正値Vadd(-2)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(-2)は、補正値Vadd(-2)が加算されることにより、実線で示すサンプルS(-2)’へと補正される。
【0047】
また、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(+2)とその1つ前のサンプルであるサンプルS(+1)との差分Δ(+2)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(+2)を補正するための補正値Vadd(+2)を生成する。このときの周辺サンプル係数は正であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(+2)に正の値である補正値Vadd(+2)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(+2)は、補正値Vadd(+2)が加算されることにより、実線で示すサンプルS(+2)’へと補正される。
【0048】
図12Bに示すように、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(-2)とその1つ後のサンプルであるサンプルS(-1)との差分Δ(-2)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(-2)を補正するための補正値Vsub(-2)を生成する。このときの周辺サンプル係数は負であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(-2)に負の値である補正値Vsub(-2)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(-2)は、補正値Vsub(-2)が減算されることにより、実線で示すサンプルS(-2)’へと補正される。
【0049】
また、周辺サンプル補正値生成部32は、サンプルS(+2)とその1つ前のサンプルであるサンプルS(+1)との差分Δ(+2)に周辺サンプル係数を乗算して、サンプルS(+2)を補正するための補正値Vsub(+2)を生成する。このときの周辺サンプル係数は負であるから、加算器35は、入力デジタル音声信号におけるサンプルS(+2)に負の値である補正値Vsub(+2)を加算する。これにより、破線で示す補正前のサンプルS(+2)は、補正値Vsub(+2)が減算されることにより、実線で示すサンプルS(+2)’へと補正される。
【0050】
具体的に、サンプリング周波数が44.1kHz、極値間隔6fsを例とする。周辺サンプル補正値生成部32は、図12Aに示す差分Δ(-2)に1/32を乗算した補正値Vadd(-2)を生成し、図12Aに示す差分Δ(+2)に1/32を乗算した補正値Vadd(+2)を生成する。周辺サンプル補正値生成部32は、図12Bに示すΔ(-2)に1/32を乗算した補正値Vsub(-2)を生成し、図12Bに示す差分Δ(+2)に1/32を乗算した補正値Vsub(+2)を生成する。加算器35は、図12Aに示すサンプルS(-2)及びS(+2)にそれぞれ補正値Vadd(-2)及びVadd(+2)を加算し、図12Bに示すサンプルS(-2)及びS(+2)よりそれぞれ補正値Vsub(-2)及びVsub(+2)を減算する。
【0051】
図13に示すように、極大サンプルSmaxの前に位置する極小サンプルSminと極大サンプルSmaxとの間を上昇サンプル区間、極大サンプルSmaxの後に位置する極大サンプルSmaxと極小サンプルSminと間を下降サンプル区間と称することとする。図13は極値間隔8fsを例としており、サンプルS8が極大サンプルSmaxであり、サンプルS16が極小サンプルSminである。
【0052】
極大サンプルSmaxの1つ前のサンプルS(-1)を含む極大サンプルSmaxの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第1の周辺サンプル、極大サンプルSmaxの1つ後のサンプルS(+1)を含む極大サンプルSmaxの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第2の周辺サンプルと称することとする。極小サンプルSminの1つ前のサンプルS(-1)を含む極小サンプルSminの前に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第3の周辺サンプル、極小サンプルSminの1つ後のサンプルを含む極小サンプルSminの後に位置する1またはそれ以上のサンプルを補正対象の第4の周辺サンプルと称することとする。
【0053】
上記のように、第1~第4の周辺サンプルのサンプル数は極値間隔グループG1~G8に応じて図7に示すように設定されている。
【0054】
周辺サンプル補正値生成部32は、第1の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に周辺サンプル係数を乗算して第1の周辺サンプルを補正するための第1の周辺サンプル補正値を生成する。周辺サンプル補正値生成部32は、第2の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に周辺サンプル係数を乗算して第2の周辺サンプルを補正するための第2の周辺サンプル補正値を生成する。
【0055】
周辺サンプル補正値生成部32は、第3の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に周辺サンプル係数を乗算して第3の周辺サンプルを補正するための第3の周辺サンプル補正値を生成する。周辺サンプル補正値生成部32は、第4の周辺サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に周辺サンプル係数を乗算して第4の周辺サンプルを補正するための第4の周辺サンプル補正値を生成する
【0056】
このとき、周辺サンプル補正値生成部32は、各差分に図8A及び図8Bで設定されている周辺サンプル係数をそのまま乗算して周辺サンプル補正値を生成してもよいが、周辺サンプル係数に所定の定数を乗じることにより周辺サンプル補正値を調整してもよい。周辺サンプル補正値生成部32は、例えば次のようにして周辺サンプル補正値を調整する。
【0057】
周辺サンプル補正値生成部32は、極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminに近いサンプルに加算または減算する周辺サンプル補正値を生成するときには、各差分に周辺サンプル係数をそのまま乗算して周辺サンプル補正値を生成する。このとき、周辺サンプル係数に定数1を乗じているということである。周辺サンプル補正値生成部32は、極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminから離れたサンプルに加算または減算する周辺サンプル補正値を生成するときには、各差分に、周辺サンプル係数に1未満の定数を乗じた係数を乗算して周辺サンプル補正値を生成する。周辺サンプル係数に乗じる定数はサンプルの位置に応じて設定しているので、位置定数と称することとする。
【0058】
周辺サンプル補正値生成部32は、一例として、図14A及び図14Bに示すように位置定数を設定して、周辺サンプル係数に位置定数を乗算した上で周辺サンプル補正値を生成してもよい。図14Aは、極値間隔グループG1~G8ごとの位置定数を1とするサンプル位置を示している。図14Bは極値間隔グループG1~G8ごとの位置定数を1/2とするサンプル位置を示している。
【0059】
極大サンプルSmaxまたは極小サンプルSminから離れたサンプルに対する周辺サンプル補正値を生成するときに、各差分に、周辺サンプル係数に1未満の位置定数を乗じた係数を乗算して周辺サンプル補正値を生成すれば、離れたサンプルに対する補正量を意図的に小さくすることができる。周辺サンプル補正値生成部32が周辺サンプル係数に位置定数を乗算することは必須ではない。
【0060】
図9において、加減算部37の加算器34は、極大サンプルSmaxに極大サンプル補正値Vaddmaxを加算し、極小サンプルSminより極小サンプル補正値Vsubminを減算する。加減算部37の加算器35は、第1の周辺サンプルの各サンプルに第1の周辺サンプル補正値を加算し、第2の周辺サンプルの各サンプルに第2の周辺サンプル補正値を加算する。加算器35は、第3の周辺サンプルの各サンプルより第3の周辺サンプル補正値を減算し、第4の周辺サンプルの各サンプルより第4の周辺サンプル補正値を減算する。
【0061】
以上の説明より分かるように、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、加算器34及び35による入力デジタル音声信号の波形補正においては、次のサンプルが未補正のサンプルである。極小サンプルSminから極大サンプルSmaxへとサンプル値が上昇する上昇サンプル区間においては、図13に示す第1の周辺サンプルと第4の周辺サンプルとの間に位置する第1の中間サンプルが未補正のサンプルである。極大サンプルSmaxから極小サンプルSminへとサンプル値が下降する下降サンプル区間においては、図13に示す第2の周辺サンプルと第3の周辺サンプルとの間に位置する第2の中間サンプルが未補正のサンプルである。
【0062】
歪補正値生成部33は、未補正のサンプルが存在することによる波形の歪を軽減させるための歪補正値を生成する。加算器36は、入力デジタル音声信号に歪補正値を加算するか入力デジタル音声信号より歪補正値を減算することにより、入力デジタル音声信号をさらに補正する。歪補正値生成部33及び加算器36は、入力デジタル音声信号をさらに後述するように補正することによって、原音の高調波成分をさらに復元させて、原音により近付けた出力デジタル音声信号を生成する。歪補正値生成部33が歪補正値生成部33及び加算器36を有することにより、低域周波数に含まれる高調波成分を十分に補償することができる。
【0063】
補正係数群選択部22には、補正係数群の他の1つとして、図15に示すような1未満の歪補正係数がさらに設定されている。補正係数群選択部22は、サンプリング周波数と極値間隔4fs~32fsとに対応する歪補正係数を選択して出力する。歪補正係数は、図15に示す歪補正係数の数値は一例であり、歪補正係数は図15に示す数値に限定されない。サンプリング周波数352.8kHz及び384kHzにおける極値間隔4fs~7fsの例外を除き、歪補正係数は極値間隔が大きくなるほど小さく設定されている。歪補正係数は、極大・極小サンプル係数及び周辺サンプル係数よりも小さな値に設定するのがよい。
【0064】
補正係数群選択部22より出力された歪補正係数は、歪補正値生成部33に入力される。歪補正値生成部33には、ユーザが選択した歪補正パターンに対応する歪補正パターン信号が入力される。
【0065】
図13に示すように、上昇サンプル区間における第1または第4の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上の第1の中間サンプルを第1の歪補正対象サンプル、下降サンプル区間における第2または第3の周辺サンプル補正値によって補正されない1またはそれ以上の第2の中間サンプルを第2の歪補正対象サンプルと称することとする。
【0066】
例えば、極値間隔4fsであれば、上昇サンプル区間における中央の1つのサンプルが第1の歪補正対象サンプルであり、下降サンプル区間における中央の1つのサンプルが第2の歪補正対象サンプルとなる。極値間隔8fsであれば、上昇サンプル区間における中央の3つのサンプルが第1の歪補正対象サンプルであり、下降サンプル区間における中央の3つのサンプルが第2の歪補正対象サンプルとなる。
【0067】
歪補正値生成部33は、少なくとも第1及び第2の歪補正対象サンプルを歪補正対象サンプルとして、第1及び第2の歪補正対象サンプルを補正する第1及び第2の歪補正値を生成する。図13に示すように、歪補正値生成部33は、さらに、第1及び第4の周辺サンプルをそれぞれ第3及び第4の歪補正対象サンプルとし、第2及び第3の周辺サンプルをそれぞれ第5及び第6の歪補正対象サンプルとすることが好ましい。この場合、歪補正値生成部33は、第3~第6の歪補正対象サンプルを補正する第3~第6の歪補正値を生成する。
【0068】
図13に示すように、歪補正値生成部33は、さらに、極大サンプルSmaxを第7の歪補正対象サンプル、極小サンプルSminを第8の歪補正対象サンプルとすることが好ましい。この場合、歪補正値生成部33は、第7及び第8の歪補正対象サンプルを補正する第7及び第8の歪補正値を生成する。
【0069】
図16及び図17を用いて、第1の歪補正パターンを説明する。図16及び図17は、極値間隔8fsを例として、第1~第8の歪補正対象サンプルの全てを歪補正対象サンプルとしている例を示している。歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第1の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第2の歪補正値を生成する。
【0070】
歪補正値生成部33は、第3~第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、それぞれ、第3~第6の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第7の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第7の歪補正値を生成し、第8の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第8の歪補正値を生成する。
【0071】
加減算部37の加算器36は、第1、第3、第4の歪補正対象サンプルにそれぞれ前記第1、第3、第4の歪補正値を加算し、第2、第5、第6の歪補正対象サンプルよりそれぞれ前記第2、第5、第6の歪補正値を減算する。加算器36は、第7の歪補正対象サンプルに第7の歪補正値を加算し、第8の歪補正対象サンプルより第8の歪補正値を減算する。
【0072】
図16は、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、加算器34及び35による入力デジタル音声信号の波形補正を考慮しない、歪補正値生成部33及び加算器36のみによる入力デジタル音声信号の波形補正を概念的に示している。図16に示すように、歪補正値生成部33及び加算器36が第1の歪補正パターンで入力デジタル音声信号を補正すると、サンプルS1からサンプルS8(極大サンプルSmax)までの各サンプルのサンプル値が増加するように補正される。歪補正値生成部33及び加算器36が第1の歪補正パターンで入力デジタル音声信号を補正すると、サンプルS9からサンプルS16(極小サンプルSmin)までの各サンプルのサンプル値が減少するように補正される。
【0073】
図17は、第1の歪補正パターンを選択したとき、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34~36によって、各サンプルがどのように補正されるかを示している。図17及び後述する図19図21図23図25において、第1及び第2の中間のサンプルは従来においては未補正であったサンプルである。図17において、上向き矢印は、極大・極小サンプル補正値、周辺サンプル補正値、または歪補正値の加算、下向き矢印は、極大・極小サンプル補正値、周辺サンプル補正値、または歪補正値の減算を示している。
【0074】
極大・極小サンプルまたは周辺サンプルの補正と歪補正値の補正とで同じ向きの矢印であれば、各サンプルは、極大・極小サンプル補正値または周辺サンプル補正値と歪補正値との合計の補正値で補正される。極大・極小サンプルまたは周辺サンプルの補正と歪補正値の補正とで逆向きの矢印であれば、各サンプルは、極大・極小サンプル補正値または周辺サンプル補正値と歪補正値との差分の補正値で補正される。
【0075】
第1の歪補正パターンによれば、波形の歪の軽減、原音の高調波成分の復元に加えて、音の立ち上がりが早くなるため、音のレスポンスがよくなるという効果が期待される。
【0076】
図18及び図19を用いて、第2の歪補正パターンを説明する。図18及び図19も極値間隔8fsを例として、第1~第8の歪補正対象サンプルの全てを歪補正対象サンプルとしている例を示している。第2の歪補正パターンの説明において、第1の歪補正パターンの説明と重複する説明を省略することがある。
【0077】
歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第1の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第2の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第3の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第3の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第4の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第4の歪補正値を生成する。
【0078】
歪補正値生成部33は、第5の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第5の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第6の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第7の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第7の歪補正値を生成し、第8の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第8の歪補正値を生成する。
【0079】
加算器36は、第1及び第3の歪補正対象サンプルにそれぞれ第1及び第3の歪補正値を加算し、第4の歪補正対象サンプルより第4の歪補正値を減算する。加算器36は、第2及び第5の歪補正対象サンプルにそれぞれ第2及び第5の歪補正値を加算し、第6の歪補正対象サンプルより第6の歪補正値を減算する。加算器36は、第7の歪補正対象サンプルに第7の歪補正値を加算し、第8の歪補正対象サンプルより第8の歪補正値を減算する。
【0080】
図18に示すように、歪補正値生成部33及び加算器36が第2の歪補正パターンで入力デジタル音声信号を補正すると、サンプルS3からサンプルS8(極大サンプルSmax)までの各サンプルのサンプル値が増加し、サンプルS1及びサンプルS2の各サンプルのサンプル値が減少するように補正される。歪補正値生成部33及び加算器36が第2の歪補正パターンで入力デジタル音声信号を補正すると、サンプルS9からサンプルS13までの各サンプルのサンプル値が増加し、サンプルS14からサンプルS16(極小サンプルSmin)までの各サンプルのサンプル値が減少するように補正される。
【0081】
図19は、第2の歪補正パターンを選択したとき、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34~36によって、各サンプルがどのように補正されるかを示している。
【0082】
第2の歪補正パターンによれば、波形の歪の軽減、原音の高調波成分の復元に加えて、楽曲全体の音量感が増加し、楽曲が力強く感じられるという効果が期待される。
【0083】
図20及び図21を用いて、第3の歪補正パターンを説明する。図20及び図21も極値間隔8fsを例として、第1~第8の歪補正対象サンプルの全てを歪補正対象サンプルとしている例を示している。第3の歪補正パターンの説明において、第1の歪補正パターンの説明と重複する説明を省略することがある。
【0084】
歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第1の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第2の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第3の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第3の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第4の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第4の歪補正値を生成する。
【0085】
歪補正値生成部33は、第5の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第5の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第6の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第7の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第7の歪補正値を生成し、第8の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第8の歪補正値を生成する。
【0086】
加算器36は、第1及び第3の歪補正対象サンプルにそれぞれ第1及び第3の歪補正値を加算し、第4の歪補正対象サンプルより第4の歪補正値を減算する。加算器36は、第2及び第6の歪補正対象サンプルよりそれぞれ第2及び第6の歪補正値を減算し、第5の歪補正対象サンプルに第5の歪補正値を加算する。加算器36は、第7の歪補正対象サンプルに第7の歪補正値を加算し、第8の歪補正対象サンプルより第8の歪補正値を減算する。
【0087】
図20に示すように、歪補正値生成部33及び加算器36が第3の歪補正パターンで入力デジタル音声信号を補正すると、サンプルS3からサンプルS8(極大サンプルSmax)までの各サンプルのサンプル値が増加し、サンプルS1及びサンプルS2の各サンプルのサンプル値が減少するように補正される。歪補正値生成部33及び加算器36が第3の歪補正パターンで入力デジタル音声信号を補正すると、サンプルS9及びS10の各サンプルのサンプル値が増加し、サンプルS11からサンプルS16(極小サンプルSmin)までの各サンプルのサンプル値が減少するように補正される。
【0088】
図21は、第3の歪補正パターンを選択したとき、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34~36によって、各サンプルがどのように補正されるかを示している。
【0089】
第3の歪補正パターンによれば、波形の歪の軽減、原音の高調波成分の復元に加えて、倍音が伸びて、楽曲全体がすっきりとした音に感じられるという効果が期待される。
【0090】
図22図25を用いて、第4の歪補正パターンを説明する。図22及び図23は極値間隔7fsを例として、図24及び図25は極値間隔8fsを例として、第1~第8の歪補正対象サンプルの全てを歪補正対象サンプルとしている例を示している。第4の歪補正パターンの説明において、第1の歪補正パターンの説明と重複する説明を省略することがある。
【0091】
図22及び図23に示す極値間隔7fsにおいては、第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であり、第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数である。歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルのうちの第1の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第1の周辺サンプル側の半分の数のサンプルのための第1の歪補正値を生成する。また、歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルのうちの第4の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第4の周辺サンプル側の半分の数のサンプルのための第1の歪補正値を生成する。
【0092】
歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルのうちの第2の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第2の周辺サンプル側の半分の数のサンプルのための第2の歪補正値を生成する。また、歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルのうちの第3の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第3の周辺サンプル側の半分の数のサンプルのための第2の歪補正値を生成する。
【0093】
歪補正値生成部33は、第3の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第3の歪補正値を生成し、第4の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第4の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第5の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第5の歪補正値を生成し、第6の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第6の歪補正値を生成する。
【0094】
歪補正値生成部33は、第7の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第7の歪補正値を生成し、第8の歪補正対象サンプルとその1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第8の歪補正値を生成する。
【0095】
加算器36は、第1の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルに第1の歪補正値を加算し、第4の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルより第1の歪補正値を減算する。加算器36は、第2の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルに第2の歪補正値を加算し、第3の周辺サンプル側の半分の数のサンプルの各サンプルより第2の歪補正値を減算する。
【0096】
加算器36は、第3の歪補正対象サンプルに第3の歪補正値を加算し、第4の歪補正対象サンプルより第4の歪補正値を減算する。加算器36は、第5の歪補正対象サンプルに第5の歪補正値を加算し、第6の歪補正対象サンプルより第6の歪補正値を減算する。加算器36は、第7の歪補正対象サンプルに第7の歪補正値を加算し、第8の歪補正対象サンプルより第8の歪補正値を減算する。
【0097】
図23は、極値間隔7fsで第4の歪補正パターンを選択したとき、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34~36によって、各サンプルがどのように補正されるかを示している。
【0098】
図24及び図25に示す極値間隔8fsにおいては、第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であり、第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数である。歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルの中央に位置する第1の中央サンプルと第1の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第1の周辺サンプル側のサンプルのための第1の歪補正値を生成する。また、歪補正値生成部33は、第1の中央サンプルと第4の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第4の周辺サンプル側のサンプルのための第1の歪補正値を生成する。
【0099】
歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルの中央に位置する第2の中央サンプルと第2の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ前のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第2の周辺サンプル側のサンプルのための第2の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第2の中央サンプルと第3の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルと各サンプルの1つ後のサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して、第3の周辺サンプル側のサンプルのための第2の歪補正値を生成する。
【0100】
歪補正値生成部33は、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるときと同様に、第3~第8の歪補正値を生成する。
【0101】
加算器36は、第1の中央サンプルと第1の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルに第1の歪補正値を加算し、第1の中央サンプルと第4の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルより第1の歪補正値を減算する。加算器36は、第2の中央サンプルと第2の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルに第2の歪補正値を加算し、第2の中央サンプルと第3の周辺サンプルとの間に位置するサンプルの各サンプルより第2の歪補正値を減算する。加算器36は、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるときと同様に、第3~第8の歪補正対象サンプルに対して第3~第8の歪補正値を加減算する。
【0102】
図25は、極値間隔8fsで第4の歪補正パターンを選択したとき、極大・極小サンプル補正値生成部31、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器34~36によって、各サンプルがどのように補正されるかを示している。図24及び図25より分かるように、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であるときには、第1及び第2の中央サンプルには歪補正値が加減算されず、元のサンプル値が維持される。
【0103】
第4の歪補正パターンによれば、波形の歪の軽減、原音の高調波成分の復元に加えて、楽曲全体が纏まったような音に感じられるという効果が期待される。
【0104】
図22においては、極小サンプルSminから極大サンプルSmaxへとサンプル値が上昇する上昇サンプル区間と極大サンプルSmaxから極小サンプルSminへとサンプル値が下降する下降サンプル区間との双方が極値間隔7fsである場合を示している。従って、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数である。図24においては、極小サンプルSminから極大サンプルSmaxへとサンプル値が上昇する上昇サンプル区間と極大サンプルSmaxから極小サンプルSminへとサンプル値が下降する下降サンプル区間との双方が極値間隔8fsである場合を示している。従って、第1及び第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数である。
【0105】
第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であり、第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数である場合があり、第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が奇数であり、第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数である場合がある。このような場合においても、歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるか奇数であるに応じて上記のように第1の歪補正値を生成し、第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるか奇数であるかに応じて上記のように第2の歪補正値を生成する。
【0106】
加算器36は、第1の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるか奇数であるに応じて、第1の歪補正対象サンプルに対して上記のように第1の歪補正値を加減算する。加算器36は、第2の歪補正対象サンプルのサンプル数が偶数であるか奇数であるかに応じて、第2の歪補正対象サンプルに対して上記のように第2の歪補正値を加減算する。
【0107】
以上説明したデジタル音声処理装置100において、音声波形補正部3における極大・極小サンプル補正値生成部31及び加算器34を省略して、音声波形補正部3を、周辺サンプル補正値生成部32、歪補正値生成部33、加算器35及び36よりなる加減算部37を有する構成としてもよい。
【0108】
周辺サンプル補正値生成部32は、第1~第4の周辺サンプル補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第1の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第1の歪補正対象サンプルを補正するための第1の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、第2の歪補正対象サンプルの各サンプルと各サンプルに隣接するサンプルとの差分に歪補正係数を乗算して第2の歪補正対象サンプルを補正するための第2の歪補正値を生成する。歪補正値生成部33は、少なくとも第1及び第2の歪補正値を生成する。
【0109】
加減算部37は、第1の周辺サンプルの各サンプルに第1の周辺サンプル補正値を加算し、第2の周辺サンプルの各サンプルに第2の周辺サンプル補正値を加算する。加減算部37は、第3の周辺サンプルの各サンプルより第3の周辺サンプル補正値を減算し、第4の周辺サンプルの各サンプルより第4の周辺サンプル補正値を減算する。加減算部37は、第1の歪補正対象サンプルに第1の歪補正値を加算するか第1の歪補正対象サンプルより第1の歪補正値を減算し、第2の歪補正対象サンプルに第2の歪補正値を加算するか第2の歪補正対象サンプルより第2の歪補正値を減算する。
【0110】
デジタル音声処理装置100において、音声波形補正部3は極大・極小サンプル補正値生成部31を有することが好ましく、加減算部37は加算器34~36を有することが好ましい。極大・極小サンプル補正値生成部31は、極大サンプル補正値及び極小サンプル補正値を生成する。加減算部37は、極大サンプルに極大サンプル補正値を加算し、極小サンプルより極小サンプル補正値を減算する。
【0111】
歪補正値生成部33は、第1及び第2の歪補正値に加えて、第3~第6の歪補正値を生成することが好ましい。加減算部37は、第3~第6の歪補正対象サンプルに対して第3~第6の歪補正値を加減算することが好ましい。第3~第6の歪補正対象サンプルは、それぞれ、第1、第4、第2、第3の周辺サンプルである。
【0112】
歪補正値生成部33は、第1~第6の歪補正値に加えて、第7及び第8の歪補正値を生成することが好ましい。加減算部37は、第7の歪補正対象サンプルに第7の歪補正値を加算し、第8の歪補正対象サンプルより第8の歪補正値を減算することが好ましい。第7の歪補正対象サンプルは極大サンプルであり、第8の歪補正対象サンプルは極小サンプルである。
【0113】
以上のように、デジタル音声処理装置100は以下のようなデジタル音声処理方法を実行する。デジタル音声処理装置100は、入力デジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大サンプル及び極小サンプルを検出する。デジタル音声処理装置100は、第1~第4の周辺サンプル補正値、及び、第1及び第2の歪補正値を生成する。
【0114】
デジタル音声処理装置100は、第1及び第2の周辺サンプルの各サンプルにそれぞれ第1及び第2の周辺サンプル補正値を加算し、第3及び第4の周辺サンプルの各サンプルよりそれぞれ第3及び第4の周辺サンプル補正値を減算する。デジタル音声処理装置100は、第1の歪補正対象サンプルに第1の歪補正値を加算するか第1の歪補正対象サンプルより第1の歪補正値を減算し、第2の歪補正対象サンプルに第2の歪補正値を加算するか第2の歪補正対象サンプルより第2の歪補正値を減算する。
【0115】
図1に示すデジタル音声処理装置100は、マイクロコンピュータの中央処理装置(CPU)がデジタル音声処理プログラムを実行することによって実現することができる。図26において、CPU50と、メインメモリ55と、記憶媒体60とがバスによって接続されている。記憶媒体60は、ハードディスクドライブ、光ディスク、半導体メモリ等の任意の非一時的な記憶媒体である。記憶媒体60には、デジタル音声処理プログラムが記憶されている。デジタル音声処理プログラムは、外部のサーバからインターネット等の通信回線を介して送信されて記憶媒体60に記憶されてもよい。
【0116】
CPU50は、記憶媒体60に記憶されているデジタル音声処理プログラムをメインメモリ55にロードする。CPU50は、メインメモリ55にロードされたデジタル音声処理プログラムに記述されている各命令を実行することによって、図27に示す処理を実行させる。
【0117】
図27に示すフローチャートを用いて、1またはそれ以上の実施形態に係るデジタル音声処理プログラムがCPU50に実行させる処理を説明する。処理が開始されると、CPU50は、ステップS01にて、入力デジタル音声信号の音声波形を分析する。ステップS01は、入力デジタル音声信号を構成するサンプルにおける極大サンプル及び極小サンプルを検出するステップを含む。CPU50は、ステップS02にて、補正対象サンプル位置を決定し、補正係数群を選択する。
【0118】
CPU50は、ステップS03にて、極大・極小サンプル補正値を生成し、ステップS04にて、周辺サンプル補正値を生成し、ステップS05にて、歪補正値を生成する。ステップS03は、極大サンプル補正値及び極小サンプル補正値を生成するステップを含む。ステップS04は、第1~第4の周辺サンプル補正値を生成するステップを含む。ステップS05は、第1及び第2の歪補正値を生成するステップを含む。
【0119】
CPU50は、ステップS06にて、入力デジタル音声信号に極大・極小サンプル補正値、周辺サンプル補正値、歪補正値を加減算する。ステップS06は、第1の周辺サンプルに第1の周辺サンプル補正値を加算するステップ、第2の周辺サンプルに第2の周辺サンプル補正値を加算するステップを含む。ステップS06は、第3の周辺サンプルより第3の周辺サンプル補正値を減算するステップ、第4の周辺サンプルより第4の周辺サンプル補正値を減算するステップを含む。ステップS06は、第1の歪補正対象サンプルに第1の歪補正値を加算するか第1の歪補正対象サンプルより第1の歪補正値を減算するステップ、第2の歪補正対象サンプルに第2の歪補正値を加算するか第2の歪補正対象サンプルより第2の歪補正値を減算するステップを含む。
【0120】
CPU50は、ステップS07にて、デジタル音声信号の入力が終了したか否かを判定する。デジタル音声信号の入力が終了していなければ(NO)、CPU50はステップS01~S07の処理を繰り返す。デジタル音声信号の入力が終了していれば(YES)、CPU50は処理を終了させる。
【0121】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 音声波形分析部
2 補正対象サンプル・補正係数設定部
3 音声波形補正部
11 サンプリング周波数取得部
12 極大・極小サンプル検出部
13 極値間隔グループ選択部
21 補正対象サンプル位置パターン選択部
22 補正係数群選択部
31 極大・極小サンプル補正値生成部
32 周辺サンプル補正値生成部
33 歪補正値生成部
34~36 加算器
37 加減算部
50 中央処理装置(CPU)
55 メインメモリ
60 記憶媒体
100 デジタル音声処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27