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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106011
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】水電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240731BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240731BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240731BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20240731BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/08 302
C25B15/023
C25B15/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010047
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】村田 元
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC09
4K021CA08
4K021CA13
4K021CA15
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB50
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】電解質膜に破損の前兆となる異常が発生した場合にその異常を早期に検出できる水電解システムを提供する。
【解決手段】水電解システムは、水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、水電解部に供給される供給水の水圧を変動可能な水圧変動部と、供給水の水圧を測定する圧力測定部と、水電解部の電圧を測定する電圧測定部と、供給水の水圧の変動に応じて変動する水電解部の電圧を用いて、水電解システムの異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解システムであって、
水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、
前記水電解部に供給される供給水の水圧を変動可能な水圧変動部と、
前記供給水の水圧を測定する圧力測定部と、
前記水電解部の電圧を測定する電圧測定部と、
前記供給水の水圧の変動に応じて変動する前記水電解部の電圧を用いて、前記水電解システムの異常の有無を判定する判定部と、を備える、水電解システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水電解システムであって、
前記判定部は、前記供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する前記水電解部の各周期の電圧に含まれる最大電圧と最小電圧との差分値において、予め設定された上限値よりも大きい前記差分値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行う、水電解システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水電解システムであって、
前記判定部は、予め設定された下限値よりも小さい前記差分値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行う、水電解システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水電解システムであって、
前記判定部は、前記供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する前記水電解部の各周期の電圧のうち1周期分の電圧である周期電圧と、1周期の間に変動する前記水電解部の電圧の基準として予め設定された基準周期電圧と、の差分の絶対値において、予め設定された閾値よりも大きい前記絶対値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行う、水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水の電気分解(電解)により酸素および水素を生成する水電解システムが知られている。特許文献1には、電解質膜に破損等の事故が発生している可能性があるとみなされる場合に、水素取出しラインおよび酸素取出しラインに設けられた調整弁を閉鎖することによって安全性の向上を図っている固体高分子型水電解装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-121146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解質膜の劣化は比較的長い時間をかけて少しずつ進行するが、電解質膜の破損は比較的短い時間の間に急速に進行するため、破損の前兆となる異常が認識されることなく破損が発生してから認識される可能性が高い。このため、電解質膜が破損するのを未然に防止するために、その破損の前兆となる異常を早期に検出できる技術が要望されていた。なお、特許文献1の固体高分子型水電解装置では、電解質膜の破損の前兆となる異常を早期に検出することについては何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、電解質膜に破損の前兆となる異常が発生した場合にその異常を早期に検出できる水電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、水電解システムが提供される。この水電解システムは、水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、前記水電解部に供給される供給水の水圧を変動可能な水圧変動部と、前記供給水の水圧を測定する圧力測定部と、前記水電解部の電圧を測定する電圧測定部と、前記供給水の水圧の変動に応じて変動する前記水電解部の電圧を用いて、前記水電解システムの異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【0008】
供給水の水圧の変動に応じた水電解部の電圧の変動は、電解質膜に破損の前兆となる異常が生じている場合には、通常とは異なる挙動を示す。この水電解部の電圧の変動を引き起こす供給水の水圧の変動は、供給水が水電解部に供給されているときであれば、任意のタイミング且つ短時間で実施させることができる。このため、この構成によれば、変動する水電解部の電圧を指標として、水電解システムにおける異常の有無の判定を実施することから、その判定を高頻度で実行することができる。したがって、電解質膜に破損の前兆となる異常が発生した場合にその異常を早期に検出できることから、電解質膜が破損するのを未然に防止することができる。
【0009】
(2)上記形態の水電解システムにおいて、前記判定部は、前記供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する前記水電解部の各周期の電圧に含まれる最大電圧と最小電圧との差分値において、予め設定された上限値よりも大きい前記差分値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行ってもよい。
この構成によれば、水電解部の電圧変動における差分値と予め設定された上限値との比較によって、水電解システムにおける異常の有無が判定される。上限値よりも大きい差分値が存在する場合、その原因となった異常は電解質膜の破損の前兆となる異常である可能性が高いことから、この構成によれば、そのような異常を早期に検出することによって、電解質膜が破損するのを未然に防止することができる。
【0010】
(3)上記形態の水電解システムにおいて、前記判定部は、予め設定された下限値よりも小さい前記差分値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行ってもよい。
この構成によれば、水電解部の電圧変動における差分値と予め設定された下限値との比較によって、水電解システムにおける異常の有無が判定される。下限値よりも小さい差分値が存在する場合、その原因となった異常は水圧変動部における異常である可能性が高いことから、この構成によれば、電解質膜の破損の前兆となる異常の検出に加えて、水圧変動部における異常も検出することができる。
【0011】
(4)上記形態の水電解システムにおいて、前記判定部は、前記供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する前記水電解部の各周期の電圧のうち1周期分の電圧である周期電圧と、1周期の間に変動する前記水電解部の電圧の基準として予め設定された基準周期電圧と、の差分の絶対値において、予め設定された閾値よりも大きい前記絶対値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行ってもよい。
この構成によれば、水電解部の周期電圧と基準周期電圧との差分の絶対値と、予め設定された閾値と、の比較によって、水電解システムにおける異常の有無が判定される。閾値よりも大きい絶対値が存在する場合、その原因となった異常は電解質膜の破損の前兆となる異常である可能性が高いことから、この構成によれば、そのような異常を早期に検出することによって、電解質膜が破損するのを未然に防止することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、水電解システムの制御方法、水電解システムにおける水の電気分解を制御するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の水電解システムの構成を示した説明図である。
図2】水電解部を構成する水電解セルの詳細な構成を示した説明図である。
図3】供給水の水圧変動に応じて変動する水電解セルの電圧を示す説明図である。
図4】供給水の水圧変動に応じて変動する水電解セルの電圧を示す説明図である。
図5】供給水の水圧変動に応じて変動する水電解セルの電圧を示す説明図である。
図6】供給水の水圧変動に応じて変動する水電解セルの電圧を示す説明図である。
図7】差分の絶対値の算出を説明する説明図である。
図8】第1判定処理の手順を示すフローチャートである。
図9】第2判定処理の手順を示すフローチャートである。
図10】供給水の水圧変動に応じて変動する複数の水電解セルの電圧を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の水電解システム1の構成を示した説明図である。水電解システム1は、水の電気分解により酸素及び水素を生成するシステムである。水電解システム1は、貯蔵タンク5と、酸素気液分離部10と、水電解部20と、水素気液分離部30と、制御部40と、DC電源50と、を備える。
【0015】
貯蔵タンク5は、水を貯蔵するタンクである。流路F1は、貯蔵タンク5と酸素気液分離部10とを接続する流路である。流路F1を形成している配管(不図示)には、調整弁S1と、供給ポンプR1と、が設けられている。調整弁S1は、開閉度合に応じて、流路F1を形成している配管内の流量を調整可能であるとともに、配管内の流通を遮断可能でもある。供給ポンプR1は、酸素気液分離部10へ水を送出する。
【0016】
酸素気液分離部10には、貯蔵タンク5から水が供給される。酸素気液分離部10は、後述する水電解部20にて生成された酸素と水との混合物を酸素と水とに分離する。分離された酸素は、酸素気液分離部10の重力方向上側部分に接続された流路F2を介して、水電解システム1の外部に送られる。分離された水や貯蔵タンク5から供給された水は、流路F3を介して、後述する水電解部20へ供給される。流路F3は、酸素気液分離部10から水電解部20に供給される水が流通するための流路である。以降、酸素気液分離部10から水電解部20に供給される水を供給水と呼ぶ。
【0017】
流路F3を形成している配管(不図示)には、調整弁S2と、供給ポンプR2と、圧力センサPと、が設けられている。調整弁S2は、調整弁S1と同様、開閉度合に応じて、流路F3を形成している配管内の流量を調整可能であるとともに、配管内の流通を遮断可能でもある。供給ポンプR2は、水電解部20へ供給水を送出する。本実施形態において、供給ポンプR2は、流路F3内を流通する供給水の水圧を変動可能な水圧変動部に相当する。圧力センサPは、流路F3を形成している配管内を流通する供給水の水圧を測定する。本実施形態において、圧力センサPは、圧力測定部に相当する。
【0018】
水電解部20は、水の電気分解(電解)により酸素及び水素を生成する。水電解部20にて生成された酸素と水との混合物は、後述する流路F4を介して、酸素気液分離部10に送られる。水電解部20にて生成された水素と水との混合物は、後述する流路F5を介して、水素気液分離部30に送られる。流路F4は、水電解部20にて生成された酸素と水との混合物を酸素気液分離部10へ供給するための流路である。流路F4を形成している配管(不図示)には、調整弁S3が設けられている。流路F5は、水電解部20にて生成された水素と水との混合物を水素気液分離部30へ供給するための流路である。流路F4を形成している配管(不図示)にも調整弁が設けられていてもよい。複数のセル電圧センサ21Vは、電圧測定部として、水電解部20を構成している水電解セル21(図2にて説明)の各々の電圧を測定する。本実施形態において、水電解セル21の各々に対応して、セル電圧センサ21Vが設けられている。すなわち、水電解セル21の各々の電圧は、個別に測定可能である。
【0019】
水素気液分離部30は、水電解部20にて生成された水素と水との混合物を水素と水とに分離する。分離された水素は、水素気液分離部30の重力方向上側部分に接続された流路F6を介して、水電解システム1の外部に送られる。分離された水は、流路F7を介して、水電解部20へ供給される。分離された水は、流路F7を介して、酸素気液分離部10へ供給されてもよい。
【0020】
制御部40は、水電解システム1が備える各種センサから得た情報に基づいて、水電解システム1全体の作動を制御する。制御部40による制御としては、例えば、調整弁S1~S3の開閉制御、供給ポンプR1,R2の送出制御、DC電源50から水電解部20への電力供給の制御が挙げられる。
【0021】
図2は、水電解部20を構成する水電解セル21の詳細な構成を示した説明図である。水電解部20は、複数の水電解セル21が積層されて構成されている。水電解セル21は、PEM(Polymer Electrolyte Membrane:固体高分子電解質膜)型水電解セルである。水電解セル21は、膜電極接合体(以下、「MEA」と呼ぶ)22を有する。MEA22は、プロトン(H+)と水を通すことが可能な電解質膜24の両面に、水を分解し酸素と水素イオンと電子を生成する酸素極26と、水素イオンと電子から水素を生成する水素極28と、が接合されたものである。酸素極26のうち電解質膜24とは反対側の表面には、金属メッシュ等から成る給電体26fが設けられている。酸素極26および給電体26fの周囲には、ガスケット26gが設けられている。一方、水素極28のうち電解質膜24とは反対側の表面には、同様に、給電体28fが設けられているとともに、水素極28および給電体28fの周囲には、ガスケット28gが設けられている。
【0022】
これらガスケット26g、給電体26f、MEA22、ガスケット28g、給電体28fの接合体は、酸素極26側に設けられたセパレータ26sおよび水素極28側に設けられたセパレータ28sによって挟持されている。この接合体を挟持した状態において、セパレータ26sは、水電解部20に供給される供給水および水電解部20で生成された酸素と水との混合物が流れる流路Fcを形成している。また、セパレータ28sは、水電解部20で生成された水素と水との混合物が流れる流路Faを形成している。セパレータ26sおよびセパレータ28sは、いわゆる複極板である。図2に示す接触部分Ctについては後述する。
【0023】
図3は、供給水の水圧の変動に応じて変動する水電解セル21の電圧の例を示す説明図である。図3における各グラフの横軸は、時間を示している。図3の上段のグラフにおいて、縦軸は、圧力センサPによって測定された供給水の水圧を表し、波線L1は、供給ポンプR2によって周期的に変動させられた供給水の水圧を示す。図3の下段のグラフにおいて、縦軸は、セル電圧センサ21Vによって測定された1つの水電解セル21の電圧を表し、波線L2は、供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する水電解セル21の電圧を示す。
【0024】
図3の上段のグラフにおいて、波線L1のうち周期P1~P3の各々に含まれる部分で示されるように、供給水の水圧は、周期的に変動している。周期P1~P3の長さは、水圧変動部である供給ポンプR2によって調整可能である。また、図3の下段のグラフにおいて、波線L2のうち周期P4~P6(周期P1~P3に対応した周期)の各々に含まれる部分で示されるように、水電解セル21の電圧は、供給水の水圧の変動に応じて周期的に変動している。水電解セル21の電圧は、周期P4~P6の各々において最大電圧M2から最小電圧m2まで変動する。
【0025】
供給水の水圧の変動に応じた水電解部20(水電解セル21)の電圧の変動は、電解質膜24に破損の前兆となる異常が生じている場合には、通常とは異なる挙動を示す。そのような異常として、セパレータ26sと給電体26fとの接触不良が挙げられる。図2には、複極板であるセパレータ26sと給電体26fとの接触部分Ctが示されている。この接触部分Ctを介して、セパレータ26sから酸素極26へ電流が流れている。しかし、セパレータ26sと給電体26fとの接触不良が生じていると、供給水の水圧増加に応じて接触部分Ctが減少することがある。そのような場合、減少した接触部分Ctを流れる電流密度が上昇して、水電解部20(水電解セル21)の電圧上昇が引き起こされる。通常、供給水の水圧増加に応じて水電解部20(水電解セル21)の電圧も増加するが、接触不良が生じている際には、水電解部20(水電解セル21)の電圧は、供給水の水圧増加に応じた増加よりも更に大きく増加する。図3に示す波線L3は、そのような接触不良が生じている状態において、供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する水電解セル21の電圧を示している。このような状態において、水電解セル21の電圧は、周期P4~P6の各々において、最大電圧M3(>最大電圧M2)から最小電圧m2まで変動する。それに対して、波線L2は、電解質膜24に破損の前兆となる異常が生じていない状態において、供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する水電解セル21の電圧を示している。
【0026】
図4は、供給水の水圧の変動に応じて遅れて変動する水電解セル21の電圧を示す説明図である。図3においては、説明の便宜上、波線L1および波線L2は、同位相(周期P1~P3および周期P4~P6の各々の開始タイミングおよび終了タイミングが同じ)として図示したが、図4に図示された波線L1および波線L2は、同位相ではない。水電解システム1では、圧力センサPとセル電圧センサ21Vの各々との距離は離れている。このため、圧力センサPからの距離が遠いセル電圧センサ21Vほど、供給水の水圧の変動が開始されてから、水電解セル21の電圧の変動が開始されるまでの時間に遅れが生じる。すなわち、水電解システム1においては、図4に示すように、波線L1が示す位相に対して波線L2が示す位相は遅れている。図4では、供給水の水圧の増加がタイミングtaで開始されてから周期P1~P3の間隔で供給水の水圧の増減が繰り返された場合に、水電解セル21の電圧の増加はタイミングtaから遅延時間De経過後のタイミングtbで開始されてから周期P1~P3と同じ長さの間隔で水電解セル21の電圧の増減が繰り返される過程が示されている。このときの周期P1~P3と同じ長さの間隔が、周期P4~P6にあたる。また、この遅延時間Deの長さは、圧力センサPからの距離が遠いセル電圧センサ21Vほど大きくなる。ここでは、波線L1の位相に対する波線L2の位相の遅れについて説明したが、むろん波線L3の場合についても同様である。
【0027】
制御部40は、判定部として、供給水の水圧の変動に応じて変動する水電解部20(水電解セル21)の電圧を用いて、水電解システム1の異常の有無を判定する。詳細には、制御部40は、供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する水電解部20(水電解セル21)の各周期の電圧に含まれる最大電圧と最小電圧との差分値Dfにおいて、予め設定された上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在する場合、水電解システム1に異常がある旨の出力を行う。波線L2において、各周期の差分値Dfは、最大電圧M2と最小電圧m2との差分の値である。波線L3において、各周期の差分値Dfは、最大電圧M3と最小電圧m2との差分の値である。差分値Dfと比較される上限値Uには、セパレータ26sと給電体26fとの接触不良が生じている状態において、水電解セル21の電圧を変動させた際に想定される差分値Dfよりも小さい値が設定される。この想定される差分値Dfは、実際に接触不良が生じている水電解セル21を準備して計測することによって取得してもよい。図4には、上限値Uの一例を図示している。なお、図3,4では、各周期の差分値Dfが同じ値である波線L2,L3を示したが、各周期の差分値Dfは、実際には異なる値となることの方が多い。また、図3,4では、波線L3の最小電圧は、波線L2と同じ最小電圧m2となっていたが、波線L3の最小電圧は、最小電圧m2とは異なる値の最小電圧m3となることもある。最小電圧m3は、最小電圧m2より大きい場合と、最小電圧m2より場合と、のうちいずれの場合もあり得る。むろん、いずれの場合であっても、差分値Dfは、最大電圧M3と最小電圧m3との差分の値である。
【0028】
上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在する場合において、水電解システム1に異常がある旨の出力は、水電解システム1の管理者への報知であってもよい。この報知には、電解質膜24に破損の前兆となる異常が生じている旨の報知や水電解部20を構成する水電解セル21のうちその異常が生じている水電解セル21を特定する情報の報知を含むのが好ましい。異常が生じている水電解セル21は、上限値Uよりも差分値Dfが大きい電圧変動を測定したセル電圧センサ21Vに基づいて特定される。また、水電解システム1に異常がある旨の出力は、水電解部20による電解を停止させるために、DC電源50から水電解部20への電力供給の停止制御や供給水の停止制御であってもよい。供給水の停止制御には、調整弁S1~S3の閉弁制御や供給ポンプR1,R2の送出の停止制御が含まれる。
【0029】
また、制御部40は、判定部として、予め設定された下限値(不図示)よりも小さい差分値Dfが存在する場合、水電解システム1に異常がある旨の出力を行う。下限値よりも小さい差分値Dfが存在する場合として、水圧変動部である供給ポンプR2に異常が生じたことにより、供給ポンプR2による供給水の水圧変動の幅(最大水圧と最小水圧との幅)が通常時の幅と比べて小さくなったことに伴って、差分値Dfも小さくなった場合が挙げられる。このため、差分値Dfと比較される下限値には、供給ポンプR2に異常が生じている状態において、水電解セル21の電圧を変動させた際に想定される差分値Dfよりも大きい値が設定される。この想定される差分値Dfは、実際に供給ポンプR2に異常が生じている水電解セル21を準備して計測することによって取得してもよい。下限値よりも小さい差分値Dfが存在する場合において、水電解システム1に異常がある旨の出力としては、上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在する場合と同様、水電解システム1の管理者への報知や水電解部20による電解の停止制御が挙げられる。なお、この報知には、水圧変動部である供給ポンプR2に異常が生じている旨の報知を含むのが好ましい。
【0030】
図5は、供給水の水圧の変動に応じて変動する水電解セル21の電圧の別例を示す説明図である。図5は、図3と比べて、波線L2および波線L3の代わりに波線L4が示されている点を除いて、図3と同じである。電解質膜24に破損の前兆となる異常としては、セパレータ26sと給電体26fとの接触不良の他に、電解質膜24の変形による流路Fc(図2参照)の縮小が挙げられる。セパレータ26sもしくは給電体26fによるMEA22の押さえが緩んでいる場合、電解質膜24の膨潤もしくは差圧(水素極28側の圧力が酸素極26側の圧力より高い)による電解質膜24の変形によって、給電体26fが流路Fcに押し出されて流路Fcを縮小させることがある。そのような場合、供給水の水圧の増減に応じた水電解部20(水電解セル21)の電圧変化は妨げられる。すなわち、水電解セル21の電圧は、波線L2(図3,4)が示すように滑らかに変動せず波線L2よりも乱れて変動する。図5に示す波線L4は、そのような流路Fcが縮小している状態において、供給水の水圧変動に応じて変動する水電解セル21の電圧を示している。波線L4が波線L2よりも乱れた波形となるのは、流路Fcが給電体26fによって縮小されていることや、その給電体26fが供給水の水圧により電解質膜24側に不定期に押し戻されて一時的に流路Fcが拡がることに起因している。
【0031】
図6は、供給水の水圧の変動に応じて遅れて変動する水電解セル21の電圧を示す説明図である。図5においては、波線L1および波線L4は、同位相であったが、図6においては、波線L1および波線L4は、同位相ではない。図5では、説明の便宜上、波線L1および波線L4は同位相として図示したが、むろん波線L4の場合についても、図4で説明した波線L2(L3)と同様に、その位相は波線L1の位相に対して遅れる。図6においても、供給水の水圧の増加がタイミングtaで開始されてから周期P1~P3の間隔で供給水の水圧の増減が繰り返された場合に、水電解セル21の電圧の増加はタイミングtaから遅延時間De経過後のタイミングtbで開始されてから周期P1~P3と同じ長さの間隔で水電解セル21の電圧の増減が繰り返される過程が示されている。このときの周期P1~P3と同じ長さの間隔が、波線L4における周期P7~P9にあたる。
【0032】
図7は、水電解部20(水電解セル21)の各周期の電圧と基準周期電圧STとの差分の絶対値Abの算出を説明する説明図である。制御部40は、判定部として、供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する水電解部20(水電解セル21)の各周期の電圧のうち1周期分の電圧である周期電圧PVと、1周期の間に変動する水電解部20(水電解セル21)の電圧の基準として予め設定された基準周期電圧STと、の差分の絶対値Abにおいて、予め設定された閾値Thよりも大きい絶対値Abが存在する場合、水電解システム1に異常がある旨の出力を行う。ここで周期電圧PVとは、供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する水電解部20(水電解セル21)の各周期(波線L2、L3における周期P4~P6や波線L4における周期P7~P9)の電圧のうちの1周期分の電圧のことである。周期電圧PVは、波線L2~L4で示された変動する一連の水電解部20の電圧から抽出される。具体的には、供給水の水圧の増加開始タイミング(図4,6のタイミングtaに相当)からセル電圧センサ21Vごとに設定された遅延時間(図4,6の遅延時間Deに相当)経過後のタイミング(図4,6のタイミングtbに相当)以降で周期P1~P3と同じ長さの間隔(図4の周期P4~P6および図6の周期P7~P9に相当)中に変動する各々の電圧が周期電圧PVとして抽出される。
【0033】
基準周期電圧STは、水圧変動部である供給ポンプR2に異常が生じておらず、且つ、電解質膜24にも破損の前兆となる異常が生じていない通常状態時に、供給水の水圧を周期的に変動させることによって予め測定された一連の電圧の中から抽出された周期電圧PVである。周期電圧PVと基準周期電圧STとの差分の絶対値Abは、図6の矢印で示すように、各位相において算出される。図7に示す周期電圧PVは、波線L4(図6参照)が示す各々の周期(周期P7~P9)電圧PVのうちの1つである。なお、周期電圧PVが通常状態時に測定された周期電圧PVである場合には、その周期電圧PVと基準周期電圧STとの差分の絶対値Abは、いずれの位相においても0に近い値となる。絶対値Abと比較される閾値Thは、流路Fcの縮小が生じている状態において想定される周期電圧PV(周期P7~P9のいずれかの周期電圧PV)と基準周期電圧STとを用いて各位相の絶対値Abが算出された際に、それら絶対値Abのうちの一部よりも小さくなる値に設定される。図7には、閾値Thの一例を図示している。
【0034】
なお、図5,6では、流路Fcの縮小が生じている状態において供給水の水圧を変動させた場合に水電解部20の電圧が周期的に変動するように波線L4を示したが、このような状態においては、水電解部20の電圧は周期的に変動しない場合もあり得る。そのような場合であっても、セル電圧センサ21Vによって経時的に測定された電圧を示す波線のうち、供給水の水圧の増加開始タイミング(図6のタイミングtaに相当)からセル電圧センサ21Vごとに設定された遅延時間(図6の遅延時間Deに相当)経過後のタイミング(図6のタイミングtbに相当)以降で周期P1~P3と同じ長さの間隔中に変動する各々の電圧を周期電圧PVとして、基準周期電圧STとの比較に用いることとする。
【0035】
図8は、第1判定処理の手順を示すフローチャートである。第1判定処理は、電解質膜24に破損の前兆となる異常が発生しているか否かを判定する処理である。第1判定処理は、水電解部20による電解が実行されている間、定期的に実行される。
【0036】
第1判定処理が開始されると、制御部40は、まず初めに、供給ポンプR2を制御して、流路F3内を流通する供給水の水圧に周期的な変動を付与する(ステップS11)。次に、制御部40は、供給水の水圧が周期的に変動させられている間に測定された一連の水電解セル21の電圧を、供給水の水圧の変動の周期(上述の周期P1~P3)に基づいて周期(上述の周期P4~P6や周期P7~P9)ごとに区切ったのち、各周期の電圧のうち最大電圧と最小電圧との差分値Dfを算出する(ステップS12)。この区切りは、換言すれば、周期的な水圧変動が開始されてからセル電圧センサ21Vごとに設定された遅延時間が経過して以降、周期的な水圧変動における1周期分の長さが経過するごとの区切りであり、上述した周期電圧PVの抽出と同様の処理によって生成される区切りである。
【0037】
差分値Dfを算出したのち、制御部40は、上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在するか否か判定する(ステップS13)。上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在しない場合(ステップS13:NO)、制御部40は、下限値よりも小さい差分値Dfが存在するか否か判定する(ステップS14)。上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在する場合(ステップS13:YES)、もしくは、下限値よりも小さい差分値Dfが存在する場合(ステップS14:YES)、制御部40は、水電解システム1に異常がある旨の出力を行う(ステップS15)。その後、制御部40は、第1判定処理を終了する。一方、下限値よりも小さい差分値Dfが存在しない場合(ステップS15:NO)、制御部40は、第1判定処理を終了する。
【0038】
図9は、第2判定処理の手順を示すフローチャートである。第2判定処理は、第1判定処理と同様、電解質膜24に破損の前兆となる異常が発生しているか否かを判定する処理である。第2判定処理は、水電解部20による電解が実行されている間、第1判定処理と同時に実行される。
【0039】
第2判定処理が開始されると、制御部40は、まず初めに、第1判定処理のステップS11によって供給水の水圧に周期的な変動が付与されている間に測定された一連の水電解セル21の電圧から周期電圧PVを抽出する(ステップS21)。次に、制御部40は、図7に示すように、抽出された各々の周期電圧PVと基準周期電圧STとの差分の絶対値Abを算出する(ステップS22)。
【0040】
次に、制御部40は、閾値Thよりも大きい絶対値Abが存在するか否か判定する(ステップS23)。閾値Thよりも大きい絶対値Abが存在する場合(ステップS23:YES)、制御部40は、水電解システム1に異常がある旨の出力を行ったのち(ステップS24)、第2判定処理を終了する。一方、閾値Thよりも大きい絶対値Abが存在しない場合(ステップS23:NO)、制御部40は、第2判定処理を終了する。
【0041】
供給水の水圧の変動に応じた水電解部20(水電解セル21)の電圧の変動は、電解質膜24に破損の前兆となる異常が生じている場合には、波線L3や波線L4で示したように、通常とは異なる挙動を示す。この水電解部20(水電解セル21)の電圧の変動を引き起こす供給水の水圧の変動は、供給水が水電解部20に供給されているときであれば、任意のタイミング且つ短時間で実施させることができる。このため、以上説明した第1実施形態の水電解システム1によれば、変動する水電解部20(水電解セル21)の電圧を指標として、水電解システム1における異常の有無の判定を実施することから、その判定を高頻度で実行することができる。したがって、電解質膜24に破損の前兆となる異常が発生した場合にその異常を早期に検出できることから、電解質膜24が破損するのを未然に防止することができる。
【0042】
電解質膜の破損の前兆となる異常を早期に検出できない場合、電解質膜が破損する可能性が高くなる。電解質膜が破損すると、酸素と水素とが混合して燃焼を起こす場合がある。このような燃焼は、電解部を構成する種々の部材から大量の溶出物を発生させ、その大量の溶出物が水電解システム内を流通する水によって水電解システム全体に広がり、大規模な汚染を発生させる虞がある。一方、第1実施形態の水電解システム1によれば、電解質膜24に破損の前兆となる異常が発生した場合にその異常を早期に検出できる。したがって、電解質膜24の破損を未然に防止することによって、水電解システム1全体が汚染されるのを防止することができる。
【0043】
また、上記第1実施形態の水電解システム1によれば、水電解部20(水電解セル21)の電圧変動における差分値Dfと予め設定された上限値Uとの比較によって、水電解システム1における異常の有無が判定される。上限値Uよりも大きい差分値Dfが存在する場合、その原因となった異常は電解質膜24の破損の前兆となる異常である可能性が高いことから、上記実施形態の水電解システム1によれば、そのような異常を早期に検出することによって、電解質膜24が破損するのを未然に防止することができる。
【0044】
また、上記第1実施形態の水電解システム1によれば、水電解部20(水電解セル21)の電圧変動における差分値Dfと予め設定された下限値との比較によって、水電解システム1における異常の有無が判定される。下限値よりも小さい差分値Dfが存在する場合、その原因となった異常は水圧変動部である供給ポンプR2における異常である可能性が高いことから、上記第1実施形態の水電解システム1によれば、電解質膜24の破損の前兆となる異常の検出に加えて、供給ポンプR2における異常も検出することができる。
【0045】
また、上記第1実施形態の水電解システム1によれば、水電解部20(水電解セル21)の周期電圧PVと基準周期電圧STとの差分の絶対値Abと、予め設定された閾値Thと、の比較によって、水電解システム1における異常の有無が判定される。閾値Thよりも大きい絶対値Abが存在する場合、その原因となった異常は電解質膜24の破損の前兆となる異常である可能性が高いことから、上記第1実施形態の水電解システム1によれば、そのような異常を早期に検出することによって、電解質膜24が破損するのを未然に防止することができる。
【0046】
<第2実施形態>
図10は、供給水の水圧の変動に応じて変動する複数の水電解セル21の電圧を示す説明図である。第2実施形態の水電解システムは、第1実施形態の水電解システム1と比べて、基準周期電圧STに用いられる対象が異なる点を除いて、第1実施形態の水電解システム1と同じである。
【0047】
図10に示された波線L5~L9は、水電解部20を構成している水電解セル21の各々における、供給水の水圧の変動に応じて変動する電圧を示す。第1実施形態では、基準周期電圧STは、予め通常状態時に供給水の水圧を周期的に変動させることによって測定された一連の電圧の中から抽出された周期電圧PVであった。一方、第2実施形態では、基準周期電圧STは、第2判定処理の判定対象となっている水電解セル21と同じ水電解部20に含まれている他の水電解セル21において、測定された一連の電圧の中から抽出される周期電圧PVである。更に、基準周期電圧STとして用いられる他の水電解セル21の周期電圧PVと、第2判定処理の判定対象となっている水電解セル21の周期電圧PVとは、同じタイミングの水圧変動によって生成されたものであるとする。このような第2実施形態の水電解システムにおいても、第1実施形態と同様に、電解質膜24に破損の前兆となる異常が発生した場合にその異常を早期に検出できることから、電解質膜24が破損するのを未然に防止することができる。
【0048】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
上述した実施形態では、水圧変動部は、供給ポンプR2であったが、これに限られない。例えば、水圧変動部は、供給ポンプR2に代えて、もしくは、供給ポンプR2に加えて、供給ポンプR1や調整弁S1~S3であってもよい。
【0050】
上述した実施形態では、水電解セル21の各々に対応した複数のセル電圧センサ21Vが設けられていたが、これに限られない。複数のセル電圧センサ21Vの代わりに、水電解部20全体に対して1つの電圧センサが設けられていてもよい。すなわち、供給水の水圧の周期的な変動の際には、水電解セル21の各々の電圧を測定するのではなく、水電解部20全体を1単位として電圧が測定されてもよい。この場合、第1判定処理や第2判定処理は、供給水の水圧が周期的に変動させられている間に測定された一連の水電解部20の電圧に基づいて実行される。
【0051】
上述した実施形態では、圧力センサPとセル電圧センサ21Vとの距離は離れていたが、これに限られない。圧力センサPとセル電圧センサ21Vとは同じ位置に配置されていてもよい。むろん、このような場合であっても、供給水の水圧の変動が開始されてから、水電解セル21の電圧の変動がセンサの測定値として出力されるまでに遅延時間が生じる場合には、そのような遅延時間を考慮して周期電圧PVの抽出等を行うべきである。
【0052】
上述した実施形態では、第1判定処理と第2判定処理とは同時に実行されていたが、これに限られない。例えば、第1判定処理と第2判定処理とは別々に実行されてもよい。この場合、第2判定処理を実行する際には、最後に実行された第1判定処理時に測定された一連の水電解セル21の電圧から周期電圧PVを抽出する(ステップS21)、もしくは、ステップS21の処理の前に新たに供給水の水圧に周期的な変動を付与して(第1判定処理のステップS11に相当)測定した一連の水電解セル21の電圧から周期電圧PVを抽出する(ステップS21)ことによって、ステップS22以降の処理を実行する。
【0053】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0054】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
水電解システムであって、
水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、
前記水電解部に供給される供給水の水圧を変動可能な水圧変動部と、
前記供給水の水圧を測定する圧力測定部と、
前記水電解部の電圧を測定する電圧測定部と、
前記供給水の水圧の変動に応じて変動する前記水電解部の電圧を用いて、前記水電解システムの異常の有無を判定する判定部と、を備える、水電解システム。
[適用例2]
適用例1に記載の水電解システムであって、
前記判定部は、前記供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する前記水電解部の各周期の電圧に含まれる最大電圧と最小電圧との差分値において、予め設定された上限値よりも大きい前記差分値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行う、水電解システム。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の水電解システムであって、
前記判定部は、予め設定された下限値よりも小さい前記差分値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行う、水電解システム。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに記載の水電解システムであって、
前記判定部は、前記供給水の水圧の周期的な変動に応じて変動する前記水電解部の各周期の電圧のうち1周期分の電圧である周期電圧と、1周期の間に変動する前記水電解部の電圧の基準として予め設定された基準周期電圧と、の差分の絶対値において、予め設定された閾値よりも大きい前記絶対値が存在する場合、前記水電解システムに異常がある旨の出力を行う、水電解システム。
【符号の説明】
【0055】
1…水電解システム
5…貯蔵タンク
10…酸素気液分離部
20…水電解部
21…水電解セル
21V…セル電圧センサ
24…電解質膜
26…酸素極
26f,28f…給電体
26g,28g…ガスケット
26s,28s…セパレータ
28…水素極
30…水素気液分離部
40…制御部
50…DC電源
F1~F7…流路
P…圧力センサ
R1,R2…供給ポンプ
S1~S3…調整弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10