(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106013
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】音量制御装置、電子楽器、音量制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/46 20060101AFI20240731BHJP
G10H 1/053 20060101ALI20240731BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G10H1/46
G10H1/053 C
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010050
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博毅
【テーマコード(参考)】
5D220
5D478
【Fターム(参考)】
5D220AB08
5D478DC04
5D478DC17
(57)【要約】
【課題】容易により適切な音量で音出力することのできる音量制御装置、電子楽器、音量制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】音量制御装置は、音源情報に基づく音出力に係る音設定を取得する設定取得部と、音設定に基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成するDSP(70)と、を備える。音設定は、音量を規定する音量設定と、音設定の音量感に応じた音量の音高ごとの補正量に係る補正設定とを含む。補正量は、生成された音出力信号に応じた出力音量又は音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものである。DSP(70)は、音量設定で定められている音量を、出力する音高での補正量に基づいて補正して音出力信号を生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源情報に基づく音出力に係る音設定を取得する設定取得部と、
前記音設定に基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成する音処理部と、
を備え、
前記音設定は、音量を規定する音量設定と、前記音設定の音量感に応じた前記音量の音高ごとの補正量に係る補正設定とを含み、
前記補正量は、生成された前記音出力信号に応じた出力音量又は前記音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものであり、
前記音処理部は、前記音量設定で定められている前記音量を前記補正量に基づいて補正してなる前記音出力信号を生成する
音量制御装置。
【請求項2】
前記補正設定は、前記補正量の反映度合の設定を含み、
前記音処理部は、前記音設定で定められている前記音量に対し、前記反映度合で前記補正量を適用することで補正してなる前記音出力信号を生成する
請求項1記載の音量制御装置。
【請求項3】
前記補正設定は、ある音出力部による前記音出力に対応する特定補正設定を含み、
前記音処理部は、前記音出力部から音を出力させる場合には、前記音量設定で定められている前記音量を、出力する音高での前記特定補正設定で定められた補正量に基づいて補正して前記音出力信号を生成する
請求項1記載の音量制御装置。
【請求項4】
前記補正設定は、前記特定補正設定で定められた前記補正量の反映度合の設定である特定度合設定を含み、
前記音処理部は、前記音出力部から音を出力させる場合には、前記音設定で定められている前記音量に対し、前記特定度合設定に係る前記反映度合で前記補正量を適用することで補正して前記音出力信号を生成する
請求項3記載の音量制御装置。
【請求項5】
前記特定補正設定は、前記補正設定がなされた音量に対して更に適用される、請求項3記載の音量制御装置。
【請求項6】
前記音源情報及び前記音設定に基づいて前記音処理部により生成された前記音出力信号による前記出力音量を、前記音量感に係るある特定の特性に基づいて取得する音量取得部と、
前記出力音量と前記特定の特性に基づく基準音量との差分がある基準を満たして小さくなるように前記補正量を定めて、前記補正設定として前記音設定に含める補正設定部と、
を備える請求項1記載の音量制御装置。
【請求項7】
前記音源情報及び前記音設定に基づいて前記音処理部により生成された前記音出力信号による出力音量を、前記音量感に係るある特定の特性に基づいて取得する音量取得部と、
前記出力音量と前記特定の特性に基づく基準音量との差分がある基準を満たして小さくなるように前記補正量を定めて、前記補正設定として前記音設定に含める補正設定部と、
集音して音入力信号に変換する音入力部が集音して得た前記音入力信号を前記音入力部から入力させる接続部と、
を備え、
前記出力音量が前記音出力部からの出力に係るものである場合に、前記音量取得部は、前記音入力部が前記音出力を集音して得た前記音入力信号の入力音量の計測の結果に基づいて、前記出力音量を取得し、
前記補正設定部は、前記出力音量と前記基準音量との差分に基づいて定めた前記補正量を前記特定補正設定として前記音設定に含める
請求項4記載の音量制御装置。
【請求項8】
前記補正設定部は、音高ごとに前記補正量が設定される音高範囲において、前記音設定に基づく前記出力音量が最大の音高である最大音量音高を特定し、前記最大音量音高の音をある基準音量で前記音出力部から出力させた場合に取得される前記出力音量の前記基準音量に対応する音量との差分が、ある基準を満たして小さくなるように前記音入力部からの入力音量を整合させた後に、前記特定補正設定を定める
請求項7記載の音量制御装置。
【請求項9】
前記音量取得部は、ある音高に応じた前記出力音量として、前記音設定に応じた前記ある音高によるある出力時間内の出力音量のうち最大値を取得する、請求項6~8のいずれか一項に記載の音量制御装置。
【請求項10】
前記補正設定部は、前記差分が小さいほど小さい変化量で前記補正量を変化させながら前記音量取得部により前記出力音量を取得させて、前記差分が前記基準を満たす前記補正量を漸近的に特定する
請求項6~8のいずれか一項に記載の音量制御装置。
【請求項11】
前記補正量は、前記音量設定で定められている音量に対して乗じられる係数である請求項1~4のいずれか一項に記載の音量制御装置。
【請求項12】
前記ある特定の特性は、LUFS(Loudness Units Full Scale)である請求項6~8のいずれか一項に記載の音量制御装置。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の音量制御装置を備える電子楽器。
【請求項14】
音源情報に基づく音出力に係る音設定を取得する設定取得ステップ、
前記音設定に基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成する音処理ステップ、
を含み、
前記音設定は、音量を規定する音量設定と、前記音設定の音量感に応じた前記音量の音高ごとの補正量に係る補正設定とを含み、
前記補正量は、生成された前記音出力信号に応じた出力音量又は前記音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものであり、
前記音処理ステップでは、前記音量設定で定められている前記音量を前記補正量に基づいて補正してなる前記音出力信号を生成する
音量制御方法。
【請求項15】
コンピュータを
音源情報に基づく音出力に係る音設定を取得する設定取得手段、
前記音設定に基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成する音処理手段、
として機能させ、
前記音設定は、音量を規定する音量設定と、前記音設定の音量感に応じた前記音量の音高ごとの補正量に係る補正設定とを含み、
前記補正量は、生成された前記音出力信号に応じた出力音量又は前記音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものであり、
前記音処理手段は、前記音量設定で定められている前記音量を前記補正量に基づいて補正してなる前記音出力信号を生成する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音量制御装置、電子楽器、音量制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器では、ユーザの演奏操作に対して多様な音色や音量で音出力することができる。これらの音色、音量や演奏効果(エフェクト)の設定は、個々にスイッチなどにより操作されるだけでなく、これらの組み合わせを予め設定したパッチなどと呼ばれる音設定を選択して演奏に適用することでも行われる。ユーザは、ライブ会場、演奏曲目や曲内の場面などの組み合わせに係るシーンごとにパッチを切り替えることで、容易に電子楽器の演奏の出力を所望の音色の間で容易かつ速やかに変更することができる。
【0003】
また、電子楽器では、自機の演奏に係る楽音と外部からの音データ入力、例えば他者の演奏や予め録音されている演奏データなどとを統合して音出力することもできる。このときに組み合わされる楽音の音量設定などが異なると、一部の音が大きく他の音が効きづらいという場合が生じる。特許文献1の技術では、外部から歌唱者の音声の入力がある場合に、音声データの段階でその入力を検出して実際の音声出力前に相対的に音量などを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、音設定の結果、各音高の出力が聴感上バランスよく適切な音量に聞こえない場合があるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、容易により適切な音量で音出力することのできる音量制御装置、電子楽器、音量制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
音源情報に基づく音出力に係る音設定を取得する設定取得部と、
前記音設定に基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成する音処理部と、
を備え、
前記音設定は、音量を規定する音量設定と、前記音設定の音量感に応じた前記音量の音高ごとの補正量に係る補正設定とを含み、
前記補正量は、生成された前記音出力信号に応じた出力音量又は前記音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものであり、
前記音処理部は、前記音量設定で定められている前記音量を前記補正量に基づいて補正してなる前記音出力信号を生成する
音量制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、容易により適切な音量で音出力することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】電子楽器の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】電子楽器における信号の流れを説明する図である。
【
図5】周波数に対する音量特性の設定例を示す図である。
【
図6】(a)音量設定値と振幅の関係を示す図、及び(b)音圧について説明する図である。
【
図7】音出力制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図8】ラインキー音量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】音量測定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図10】スピーカキー音量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図11】マイク音量自動調整処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図12】出力音量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の音量制御装置を含む電子楽器1の上面(操作面)を見た平面図である。
【0011】
電子楽器1は、鍵盤楽器(キーボード)であって、音源(楽器)としての構成と、音源情報(楽器の演奏データなど)を受けて当該音源情報に応じた音出力を行う際の音を調整するマルチエフェクタとしての構成とを含む。電子楽器1は、操作受付部と、表示部と、接続端子群13(接続部)と、音出力部14(スピーカ)と、鍵盤Kbなどを備える。
【0012】
操作受付部は、パッチ設定スイッチP1、P2と、調整スイッチP3と、電源スイッチP5と、マスタ音量ダイヤルP6と、データ入力ダイヤルP7と、2つの回転自在のホイールで構成された演奏ホイールP8と、を含む。
【0013】
パッチ設定スイッチP1は、バンクスイッチであり、音色や音量などの設定に係るパッチ(音設定)の選択群を上下に1つずつ切り替える。パッチ設定スイッチP2は、ナンバースイッチであり、選択されているバンクにおけるパッチの番号(ここでは、1~8のいずれか)を選択する。すなわち、パッチは、バンクとナンバーとの組み合わせに対して各々設定される。なお、直近で選択設定されたパッチの情報は、メモリ82(
図2参照)などに記憶されてもよい。この場合、電子楽器1の電力供給が一度オフされて再起動された場合にも、引き続き選択されているパッチの設定が利用され得る。
【0014】
調整スイッチP3は、後述のライン出力の音量と音出力部14からの音出力の音量(出力音量)とを調整する操作受付信号を出力する押しボタンスイッチである。
【0015】
電源スイッチP5は、電子楽器1の側面に位置し、入力操作に応じて電子楽器1の内部構成への電力供給有無を交互に切り替えるオルタネイト型スイッチである。
【0016】
マスタ音量ダイヤルP6は、上面(操作面)に垂直な方向に伸びる軸回りで回転操作を受け付け可能であり、回転位置に応じて各パッチなどに基づく出力音量の最大値を定める。
【0017】
データ入力ダイヤルP7は、パッチの内容の作成変更時に回転操作されることで、パッチで定義されている各パラメータの設定値を変更する。
【0018】
演奏ホイールP8は、例えば、ベンダーホイールとモジュレーションホイールとを含む。これらは、電子楽器1の上面(操作面)に沿った軸回りに回転操作を受け付ける。回転軸は、上面よりも下方にあり、操作は、上面から部分的に露出されている部分を前後方向に移動させることで行われる。演奏ホイールP8は、回転操作量に応じて演奏時における音高の一時的な変化を生じさせる。ベンダーホイールは、音高を連続的に変化させるものであり、回転操作後にユーザが手を離すと自動的に初期位置に戻る。モジュレーションホイールは、例えば、ビブラートなどの音程変化を生じさせる。モジュレーションホイールは、回転操作後にユーザが手を離しても回転操作による操作位置で静止する。
【0019】
鍵盤Kbは、打鍵操作を受け付けることで、出力する音の音高を規定する。ここでは、鍵盤Kbとして、5オクターブ幅の61鍵が示されているが、これに限られない。鍵数は、これよりも多くても少なくてもよい。
【0020】
表示部は、デジタル表示部121と、数値表示部122と、点灯表示部123などを備える。デジタル表示部121は、液晶表示画面(LCD)などを有し、制御信号に従って文字、数値、図形や標識などをLCDに表示させることができる。LCDには、後述のようにタッチパネル25(
図2参照)が重なって位置している。
【0021】
数値表示部122は、数値を表示するためのセグメントを有し、ここでは3桁分の数字を表示することが可能となっている。セグメントは、液晶であってもよいし、LEDであってもよい。数値表示部122は、選択されているバンク(2桁)とナンバー(1桁:1~8)とを表示することができる。
【0022】
点灯表示部123は、後述の音量レベル自動調整に係るステータスに応じたLEDを点灯する。点灯表示部123は、ここでは、4個のLEDを有する。これら4個のLEDは、それぞれ“LINE”、“SPEAKER”、“EDITED”、“ERROR”の文字標識と並んで位置している。
【0023】
接続端子群13には、電力供給線の接続端子(AC)、音信号出力端子(LINE OUT)(ここでは左右別個)、ヘッドホン端子(HEADPHONE)、及びマイク入力端子(MIC IN)(接続部)が含まれる。音信号出力端子は、外部機器(電子機器の他、スピーカやアンプなどを含む)などへ演奏データなどを出力する。ヘッドホン端子は、ヘッドホンへ音信号を出力する。マイク入力端子は、接続されたマイクから音信号が入力される。
【0024】
音出力部14は、演奏などに応じて生成、出力された音信号を音に変換して音出力する。音出力部14は、ここでは、左右に1つずつ位置しており、ステレオ出力が可能であってもよい。
【0025】
図2は、電子楽器1の機能構成を示すブロック図である。
電子楽器1は、CPU41(Central Processing Unit)(設定取得部)と、RAM42(Random Access Memory)と、メモリ43と、LCDコントローラ44と、I/Oインターフェイス45(Input / Output)と、DSP70(Digital Signal Processing)(音処理部)と、ADC22(Analog to Digital Converter;アナログデジタル変換部)と、ロータリーエンコーダ23、24と、タッチパネル25と、キースキャナ26と、アンプコントローラ27と、マイク接続検出部28と、ヘッドホン接続検出部29などを備える。これらは、バス90に接続されて、交互にデータをやり取り可能となっている。
【0026】
CPU41は、演算処理を行って電子楽器1の動作を統括制御するプロセッサである。CPU41は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサが並列に動作し、又は用途などに応じて独立に動作してもよい。CPU41は、汎用のプロセッサに限られず、専用に設計されたものであってもよい。
【0027】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、例えばDRAMであるが、これに限られるものではない。
【0028】
メモリ43は、データを記憶保持する不揮発性のものである。例えば、メモリ43は、フラッシュメモリなどである。メモリ43は、CPU41によって実行されるプログラム431と、パッチデータ432などを記憶保持している。
【0029】
パッチデータ432には、演奏データに対する音高、音色、音量や効果を具体的に既定する設定データであるパッチ(音設定)が含まれる。パッチは、設定可能上限数内で識別番号(バンク及びナンバーの組み合わせ)に対応付けられて記憶されている。操作受付部への入力操作により指定されたパッチがパッチデータ432から読み出されて(取得されて)用いられる。
【0030】
LCDコントローラ44は、CPU41などから出力された表示対象画像データに基づいて、各RGB画素の発光有無や発光量を定め、デジタル表示部121のLCD121aを駆動する。
【0031】
I/Oインターフェイス45は、操作受付部の各構成から直接、又は当該各構成が受け付けた操作内容を特定する構成などから検出内容に係る操作受付信号を取得する。I/Oインターフェイス45は、点灯表示部123及び数値表示部122の各セグメントに対して選択的に必要な電力を供給する駆動信号を出力する。また、I/Oインターフェイス45は、外付けされるマイクの受信音量(音信号の振幅強度)を定める信号をCPU41から受けてマイク音量設定部62へ出力する。
【0032】
I/Oインターフェイス45には、上記パッチ設定スイッチP1、P2及び調整スイッチP3を含む操作受付部の入力操作の検出に係る構成が接続されている。ロータリーエンコーダ23は、データ入力ダイヤルP7の回転量を検出して検出結果をI/Oインターフェイス45へ出力する。ロータリーエンコーダ24は、演奏ホイールP8の回転量を検出して検出結果をI/Oインターフェイス45へ出力する。タッチパネル25は、上記のようにLCD121aと重なって位置しており、タッチパネル25へのタッチ操作が継続している間タッチ位置の情報をI/Oインターフェイス45へ出力する。
【0033】
マスタ音量ダイヤルP6の回転操作に係る検出信号は、ADC22によりデジタル変換されてI/Oインターフェイス45へ送られる。
【0034】
鍵盤Kbは、鍵盤Kbの各鍵の操作を検出するキースキャナ26を介してI/Oインターフェイス45に接続されている。
【0035】
アンプコントローラ27は、音出力部14へ出力する音信号を増幅するアンプ73に増幅度合を示す制御信号を出力する。
【0036】
マイク接続検出部28は、マイク入力端子にマイクMが接続されている場合に検出信号をI/Oインターフェイス45へ出力する。ここでは、マイク接続検出部28からの検出信号の有無に応じて、マイクMが接続されているか否かを示す2値のマイク装着フラグFmがCPU41によって設定される。マイクが接続されている場合には、マイク装着フラグFmが「1」に設定される。マイクMが接続されていない場合には、マイク装着フラグFmが「0」に設定される。
なお、このマイク装着フラグFmは、電子楽器1の動作時に常に設定されていなくてもよい。後述のように、マイクMからの入力が利用される場合にのみ、マイク接続検出部28の検出結果に基づいて一時的に設定されるものであってもよい。
【0037】
ヘッドホン接続検出部29は、ヘッドホン端子にヘッドホンが接続されている場合に検出信号をI/Oインターフェイス45へ出力する。
【0038】
一方、電子楽器1は、音処理に係る構成として、上記DSP70に加えて、アンプ61と、上記のマイク音量設定部62と、ADC63と、DAC71(Digital to Analog Converter;デジタル/アナログ変換器)と、プリアンプ72と、アンプ73、74と、RAM81と、メモリ82などを備える。
【0039】
アンプ61は、マイク入力端子から入力された音信号の振幅を増幅する。マイク音量設定部62は、上述のように、CPU41からI/Oインターフェイス45を介して入力された制御信号に従ってこの音信号を所定の倍率又は割合に振幅を調整する。ADC63は、マイク音量設定部62により調整された音信号を適宜なサンプリングレートでデジタル変換する。得られたデジタル信号は、DSP70に入力される。
【0040】
DSP70は、設定されているパッチに従って、ADC63から入力されたデジタル信号を調整して出力する音信号(音出力信号)を生成、出力する処理(音処理)を行う。DSP70は、また、ADC63から入力された音信号などを用いてパッチ音量の補正処理を行う。RAM81は、DSP70の処理に利用され、一時データを記憶する。RAM81は、例えば、DRAMである。メモリ82は、不揮発性メモリである。メモリ82は、DSP70の処理に用いられる設定データなどを記憶保持する。
【0041】
DSP70により調整されたデジタル信号は、DAC71に入力されてアナログ変換される。アナログ変換されて得られた音信号は、プリアンプ72により増幅される。増幅された音信号は、音信号出力端子(LINE OUT)に接続された外部機器などへ出力され得る。また、この音出力信号は、更にアンプ73により増幅されて、音出力部14へ送られ、音出力される。アンプ73は、音出力部14から適切な音量で音出力するためのパワーアンプである。さらに、この音出力信号は、アンプ74により増幅されて、ヘッドホン端子に送られる。アンプ74は、ヘッドホン出力用のヘッドホンアンプである。
【0042】
ここでは、ヘッドホン端子にヘッドホンが接続されている場合には、アンプ73から音出力部14への音信号の出力が中止される。すなわち、アンプ73の増幅率がゼロとされるが、これに限らず、ヘッドホン端子にヘッドホンが接続されている場合には、プリアンプ72からアンプ73へ音信号が出力されないように切り替え制御されてもよい。ここでは、ヘッドホン接続検出部29からの信号に応じて、ヘッドホンが接続されているか否かを示す2値のヘッドホン装着フラグFaが設定される。ヘッドホンが接続されていない場合には、音のスピーカ出力が可能な状態としてヘッドホン装着フラグFaが「1」に設定される。ヘッドホンが接続されている場合には、音のスピーカ出力を禁止する状態として、ヘッドホン装着フラグFaが「0」に設定される。
上記各構成のうち、CPU41及びDSP70が少なくとも1つのプロセッサとして本実施形態の音量制御装置に含まれる。また、マイク入力端子がこの音量制御装置に含まれ得る。これらは、本実施形態のコンピュータとしての構成にも対応する。
【0043】
次に、DSP70により行われるパッチに従った音処理について説明する。
図3は、DSP70及びその周囲での信号の流れについて説明する図である。
【0044】
DSP70は、音生成部700と、ミキサ718と、第1エフェクトモジュール701と、第2エフェクトモジュール702と、第3エフェクトモジュール703と、第4エフェクトモジュール704と、パッチ音量設定部706と、マスタ音量設定部707と、入力切替部708と、音量計測部709(音量取得部)とを含む。これらの各部は、各々別個の回路として機能するハードウェア構成である必要はなく、一部又は全部の処理がソフトウェア的に共通のプロセッサにより実行されるものであってもよい。一方で、プロセッサは、実行対象とされる処理に特化して設計、製造されたものであってもよく、すなわち、汎用のCPUではなくてもよい。
【0045】
音生成部700は、同時に発する音の生成を並列に最大設定数(この
図3では簡略化して3音分が記載されているが、例えば64音)の範囲で行うことができる。キースキャナ26の出力などの演奏データに応じて生成された各音は、ミキサ718により合成されて、第1エフェクトモジュール701へ送られる。
【0046】
各音生成部700は、波形発生器711と、フィルタ712と、アンプ713と、イコライザ714と、ピッチエンベロープジェネレータ715と、フィルタエンベロープジェネレータ716と、アンプエンベロープジェネレータ717とを有する。波形発生器711は、発生させる音の音高に応じた周波数の信号を生成する。ピッチエンベロープジェネレータ715は、発生させる周波数信号の時間的な立ち上がり(Attack)、立ち上がりピークからの減衰(Decay)、減衰後に概ね一定値となる継続(Sustain)、及び鍵の押下終了(離鍵)後の立ち下がり(Release)の変化パターンを規定する。例えば、ピアノやオルガンなどの鍵盤楽器に応じた音を出力する場合には、鍵の押下から音が消えるまで音高が変化しないように定められる。
【0047】
フィルタ712は、生成された周波数の音の音色を定める。音色は、周波数スペクトル強度の分布などに応じて定まる。これらのスペクトルは楽器の種類に応じて概ね特徴的な形状を有するが、電子楽器では、多様な周波数スペクトル強度の分布形状が設定され得る。フィルタエンベロープジェネレータ716は、この音色の時間変化を規定する。特に音の立ち上がりでは、楽器に応じて特有の音色の変化を有することがあり、これらの音色の変化をフィルタエンベロープジェネレータ716により設定することができる。
【0048】
アンプ713は、生成された音高及び音色の音の音量を定める。アンプエンベロープジェネレータ717は、発生させる各音の音量の上記各期間(ADSR)にわたる時間変化を規定する。ピアノなどのように継続期間が存在しない場合には、鍵の押下の継続状態によらずに立ち下がりに従って無音状態まで音量を減衰させることもできる。
【0049】
生成された音に係る信号(音信号)は、第1エフェクトモジュール701、第2エフェクトモジュール702、第3エフェクトモジュール703及び第4エフェクトモジュール704により最大4種類のエフェクトに応じた音の調整がなされる。各エフェクトモジュール701~704に割り当てられるエフェクトの種類は、パッチごとに定められている。
【0050】
パッチには、各エフェクトモジュール701~704に割り当てられるエフェクトの種別の設定と、当該割当の有無にかかわらず、電子楽器1で設定され得るエフェクトの設定パラメータとが、それぞれ記憶される。特に限られるものではないが、エフェクトの種別としては、例えば、ワウ(Wah)、コンプレッサ(Compressor)、オーバードライブ(Overdrive)、ディストーション(Distortion)、フェーザー(Phaser)、コーラス(Chorus)、フランジャ(Flanger)、ディレイ(Delay)、リバーブ(Reverb)などが挙げられる。
【0051】
なお、4個のエフェクトの少なくともいずれかを必要としない場合には、各エフェクトモジュール701~704の一部又は全部に対して「割り当てなし」が設定されてもよい。この設定がなされたエフェクトモジュールでは、音信号の調整を行わずに入力されたデジタル信号をそのまま出力させる。
【0052】
このように、波形発生器711、フィルタ712及びアンプ713により、Attack、Decay、Sustain、Releaseの各段階における音高、音色及び音量が規定された各音の出力設定は、イコライザ714による周波数スペクトルの分布調整に係る設定、並びに各種エフェクトの設定とともにパッチに記憶される。これにより、選択されたパッチに応じた音が容易かつ多様に出力可能となっている。
【0053】
これらに加えて、パッチデータには、パッチごとに出力音量に係るパッチ音量(音量)の設定(音量設定)及び当該パッチにおける各音高の音量の補正量に係る補正設定が記憶される。
【0054】
図4は、音量パラメータの例を示す図表である。
音量パラメータには、パッチ音量(Patch Volume)PATVOL、マスタ音量(Master Volume)MASVOL、マイク音量(Mic Volume)MICVOLの他、ライン出力に関するパラメータとして、ラインキーレベル(Line Key Level)KLL及びラインキーレベルデプス(Line Key Level Depth)KLLDがある。また、スピーカ出力に係るパラメータとして、スピーカキーレベル(Speaker Key Level)KLS及びスピーカキーレベルデプス(Speaker Key Level Depth)KLSDがある。ラインキーレベルデプスKLLD及びスピーカキーレベルデプスKLSDが本実施形態の反映度合の設定に含まれる。このうち、スピーカキーレベルデプスKLSDがある特定度合設定に係る補正量の反映度合である。
【0055】
ラインキーレベルKLLは、後述のようにパッチごと、キー(鍵)すなわち音高ごとに設定がなされる。設定がなされているか否かに応じて2値フラグであるラインキーレベルアジャステッドフラグ(Line Key Level Adjusted Flag)Flaが設定される。設定がなされている場合にはラインキーレベルアジャステッドフラグFlaに「1」が設定される。また、スピーカキーレベルKLSも後述のようにパッチごと音高ごとに設定される。スピーカキーレベルKLSの設定がなされているか否かに応じて2値フラグであるスピーカキーレベルアジャステッドフラグ(Speaker Key Level Adjusted Flag)Fsaが設定される。設定がなされている場合には、スピーカキーレベルアジャステッドフラグFsaが「1」に設定される。これらのうち、ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLSが上記の補正設定における音高ごとの補正量に対応する。これらのうち、スピーカキーレベルKLSが特定補正設定に係る補正量である。
【0056】
マスタ音量MASVOLは、上述のマスタ音量ダイヤルP6の操作に応じて定まる値であり、パッチの設定やキー(音高)などとは無関係である。マイク音量MICVOLは、ユーザ操作やユーザ設定による指示に関係なく後述するCPU41の制御に基づいてI/Oインターフェイス45からの制御信号に応じて値が定められる。すなわち、マイク音量MICVOLは、ユーザ操作やユーザ設定などとは、独立して定められる。
【0057】
パッチ音量PATVOLは、パッチごとに設定される値であり、パッチデータ432に含まれている各パッチに対応付けられて当該パッチデータ432に記憶されている。パッチごとに規定された音高及び音色(周波数スペクトル)などと演奏効果などに応じて、音量感をパッチごとに規定するのがパッチ音量PATVOLである。
【0058】
各パッチでは、更に、周波数(音高)に対する音量の分布が存在する。すなわち、あるパッチで出力する音量は音高によって異なり得る。
【0059】
図5は、周波数に対する音量特性の設定例を示す図である。
図5(a)には、イコライザ714の設定例を示す。このように、強調したい音高付近などを選択的に、他の周波数帯よりも相対的に大きい音量で出力されるように設定することができる。
【0060】
図5(b)には、ギターアンプシミュレータによる音量特性の設定例を示す。この音量特性では、100Hz以下の低音域における音量が大きく低下している。
【0061】
このように、音高に応じた音量の差異は、出力される音の特徴となるが、一方で、局所的な音量の変化は、音階演奏など、演奏時に音量むらが生じることによる違和感にもつながり得る。電子楽器1では、このような音量むらを補正するための補正値を予めパッチごと音高ごとに定めておく。また、実際の演奏時には、この補正値をパッチに基づく演奏に対してどの程度反映するかを設定することができる。
【0062】
この音量むらの補正値は、更に、アンプ73や音出力部14の特性にも依存する。したがって、ライン出力やヘッドホン出力の場合の補正値と、音出力部14による出力時の補正値とは、それぞれ別個に定められ得る。ここでは、ライン出力やヘッドホン出力の場合の補正値が、ラインキーレベルKLLとして定められ、音出力部14による出力の場合の補正値が、スピーカキーレベルKLSとして定められる。
図4に示したように、ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLSは、0~200%の数値範囲で定められる。100%未満の数値は、パッチで定められる音量を低減する補正を示し、100%より大きい数値は、パッチで定められる音量を上昇させる補正を示す。すなわち、ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLSは、それぞれ元の設定音量に乗じられて音量を増減させる係数である。
【0063】
また、これらの補正値の反映度合が、それぞれラインキーレベルデプスKLLD及びスピーカキーレベルデプスKLSDである。
図4に示したように、ラインキーレベルデプスKLLD及びスピーカキーレベルデプスKLSDは、0~100%の数値範囲で定められる。100%は、音量の差異を完全に補正する場合に対応し、0%は、パッチの出力音量を補正しない場合に対応する。
【0064】
上記のようにして第4エフェクトモジュール704から出力されたデジタル信号は、パッチ音量設定部706及びマスタ音量設定部707(まとめて音量設定部706、707)により出力音量に応じた振幅に調整される。
図6(a)は、音量設定値と振幅の関係を示す図である。音量設定値は、0~127の128階調の値であり、概ね振幅の平方根と対応する。すなわち、音量設定値が127から約半分の64になると、振幅は1から1/4となり、音量設定値が最大階調時の約1/4の32になると、振幅は1/16となる。また、音量設定値127の場合の振幅を1とすると、振幅が1/2となるのは、音量設定値が127の約1/√2となる90付近である。
【0065】
すなわち、電子楽器1から出力される音量は、元の音量値に対し、これらの各音量設定部706、707の音量設定値を乗じたものに対応する。
図4に示したように、パッチ音量設定部706の設定値及びマスタ音量設定部707の設定値は、それぞれ0~100%の範囲で定められる。したがって、出力音量は、元の音量設定値から、各音量設定部706、707の音量設定値に応じた割合に低減されたものとなる。
【0066】
音出力部14からの音出力は、マイクM(音入力部)によって集音されて電気信号(音入力信号)に変換されてもよい。マイク入力端子(MIC IN)にマイクケーブルが接続されたマイクMへ入力する音の音量(入力音量)は、音出力部14及びマイクMの位置関係などに応じたものとなる。マイクMで得られた、入力音量に応じた音入力信号は、マイク入力端子から電子楽器1へ入力される。音入力信号は、アンプ61により増幅され、マイク音量設定部62により設定された振幅に変換(1倍以上に増幅あるいは1倍未満に減衰)された後、ADC63によりデジタル変換される。
【0067】
ADC63により得られたデジタル信号は、音量計測部709に入力される。音量計測部709は、当該デジタル信号に係る音入力信号の聴感上の音量感(ラウドネス)を求める。このような音量感の評価値(音量感に係るある特定の特性)としては、例えば、Loudness Units Full Scale(LUFS)やLoudness Units(LU)などが挙げられる。LUFSは、音入力信号のある期間ごとの振幅のRMS(最小二乗平均)に対して、
図6(b)に示す等ラウドネス曲線(ISO226:2003)などを適用して周波数ごとに重み付け加算された(積分された)後、交流信号を整流、平滑化することで算出される。例えば、人間の聴覚では、特に3-4kHz付近の周波数の音に対する感度が他の周波数の音に比して高い傾向がある。したがって、3-4kHzの音では、他の周波数の音と比較して顕著に低い音圧レベル(信号強度)で、他の周波数と等しい音量感(ラウドネス)が得られる。音量計測部709は、等ラウドネス曲線を反転させた重み付けデータ、すなわち
図6(b)における線LAのデータを記憶している。各周波数の音量設定値に対してこの線LAで示される重みを乗算することで、当該音量設定値に対応する音量感の値が得られ、可聴帯域周波数の範囲での同一階調の出力音量に対して、互いに略均等な聴覚上の音量感にすることができる。音量計測部709は、各タイミングの音量を計測する(取得データとして得る)他、ある設定タイミングからの最大音量(最大値)を取得保持(ピークホールド)することができる。設定タイミングは、CPU41からの制御信号に基づいて定められ得る。
【0068】
一方で、DSP70では、入力切替部708の切り替えにより、パッチ音量設定部706が出力するデジタル信号(音出力信号)をそのまま音量計測部709に入力させることもできる。この場合には、入力音量は、音出力部14との位置関係、電子楽器1の周囲の環境音並びにアンプ73、音出力部14及びマイクMの出力特性などには依存しない。録音(収録)を行う場合の音量調整などであれば、実際の音出力ではなく、デジタル信号のまま音量感に応じた補正音量の設定を行っても適宜な調整が可能である。また、ライブ会場で実際に音を出して調整することが困難な場合に、デジタル信号の間で音量感に応じた調整(音量補正)を行うことで、パッチ間の音量感の違いを低減可能である。
【0069】
音量補正部411(補正設定部)は、音量計測部709の計測結果に基づいて、音高ごとの音量の補正量を設定(調整)する。このとき、音量補正部411は、マイク音量設定部62の適用する比率/倍率(信号強度)の設定を変更することができる。また、音量補正部411は、設定された補正量に基づいて、音生成部700の各アンプ713の増幅率を変更することができる。音量補正部411(補正設定部)は、CPU41がソフトウェア的に実施する処理を機能的に表した構成であってもよい。あるいは、音量補正部411は、上記音量補正に係る各処理を行う専用のハードウェア構成であってもよい。
DSP70による音出力信号の生成、出力に係る処理動作は、CPU41などの制御を介さず実行されてよい。すなわち、DSP70は、音出力に係るデジタル信号が入力されると、機械的に当該デジタル信号から音出力信号の生成、出力を行ってよい。
【0070】
次に、電子楽器1による音量設定動作について説明する。
電子楽器1は、上述のように音高ごとに音量を調整することで、パッチの設定に応じて不自然な音量プロファイルを補正することができる。
【0071】
上記のように、音高に応じた音量の傾向は、出力する音の特徴でもあるので、全ての傾向を補正してしまうと所望の特徴が低減され得る。したがって、設定された補正データをどの程度適用するかの反映度合(上記、ラインキーレベルデプスKLLD及びスピーカキーレベルデプスKLSD)は、ユーザにより別途定められればよい。
【0072】
補正音量であるラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLSは、それぞれ、ベロシティの調整量に係るパラメータ(係数)である。補正音量は、上記音高や周波数スペクトル分布などが反映された基準音高K0かつ基準ベロシティV0の音量(基準音量)と、出力音量との差分が基準以内となる(ある基準を満たして小さくなる)ように定められる。実際の出力音量は、上記のように、パッチ音量に応じた振幅のRMS(最小二乗平均)に対して等ラウドネス曲線などを適用して算出したLUFSなどの想定値であってもよい。あるいは、出力音量は、実際にアンプから出力した音をマイクMにより集音して計測した実測値(振幅の計測値から上記手順でLUFSを算出したもの)であってもよい。
【0073】
ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLSは、それぞれ、鍵盤Kbの音高範囲を含む各音高に係る変数Kに対して定められる。電子楽器1では、鍵盤Kbが上記のように61鍵であっても、パッチ設定などにより当該鍵盤Kbの操作により出力される音高範囲を変更することが可能である。そこで、例えば、128音階の音高に対して各々ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLSが定められ得る。基準ベロシティV0は、例えば、設定されるベロシティの最大値Vmaxを基準ベロシティV0として定められる。
【0074】
実際にアンプから出力する音量の好ましい絶対値は、演奏を行うユーザや演奏(ライブ)会場などに応じて異なる。これは、マスタ音量MASVOLなどによってパッチによらずに別途設定されてもよいし、パッチ音量PATVOLに含まれて設定されてもよい。
【0075】
次いで、基準音を基準ベロシティで発音させて、その音量を計測する。スピーカ出力の音量調整の場合には、この発音に応じた音出力部14からの音出力は、マイクMにより集音され、増幅、デジタル変換されてデジタル信号とされる。ライン出力の場合には、パッチ音量設定部706が出力するデジタル信号(音出力信号)が取得される。基準音は、操作者が鍵盤Kbを直接押鍵することによって発音されるのではなく、メモリ43のプログラム431に従ったCPU41の指示に応じてDSP70により発音される。
【0076】
その後、メモリ43のプログラム431に従って、その他の全ての音高で発音させて音量を取得する。このとき、ベロシティの変数Vの値を変化させながら、取得された音量が上記基準音の音量と最も近くなるベロシティ(変数V)の値を特定する。
【0077】
なお、スピーカ出力の音量をマイクMによって集音して計測する場合には、マイク音量MICVOLによって計測値が変化する。また、マイクMの集音は、マイクMと音出力部14との位置関係、マイクMの指向性とその向き、マイクMの感度などの条件に依存する。したがって、計測前に、予めマイク音量MICVOLが適切に調整される必要がある。
【0078】
ここでは、マイクMから集音されてデジタル変換された信号の振幅が、音量計測部709の音量計測範囲(音高範囲)の最大値(自身の最大取得可能音量)から基準範囲内に収まるように、マイク音量設定部62におけるマイク音量MICVOL(音入力信号の信号強度)が調整される。これにより、出力音量と入力音量との整合が図られる。すなわち、音量計測部709が計測して得る取得データは、音出力部14による出力音量に対応する。ある音高に対して定められたマイク音量MICVOLは、全ての音高における音量補正値の特定に用いられる。
【0079】
図7は、電子楽器1で実行される音出力制御処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。この音出力制御処理は、電源スイッチP5がオンされたときにプログラム431から読み出されて起動され、電源スイッチP5がオフ操作を受け付けて終了処理がなされるまでの間継続的に実行される。なお、電子楽器1では、その動作に係る多様な処理が継続的に実行され得るが、ここでは、音量制御以外の処理については適宜記載を省略又は簡略化している。
【0080】
音出力制御処理が開始されると、CPU41は、各種設定パラメータなどを初期化する(ステップS101)。CPU41は、操作受付部への入力操作を待ち受けており、ユーザによる設定のための入力操作の内容を取得する(ステップS102)。
【0081】
CPU41は、取得した入力操作がパッチ設定スイッチP1、P2へのパッチの切り替え操作であるか否かを判別する(ステップS103)。入力操作がパッチの切り替え操作であると判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU41は、取得された操作内容に応じたパッチへ設定を切り替える(ステップS104)。CPU41は、メモリ43のパッチデータ432から選択されたバンク及びナンバーのパッチの設定データを読み出して、DSP70の各部のレジスタなどに設定する。CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。
【0082】
入力操作がパッチの切り替え操作ではないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU41は、入力操作の内容がデータ入力ダイヤルP7やタッチパネル25へのパッチ内容の編集操作であるか否かを判別する(ステップS105)。入力操作がパッチ内容の編集操作であると判別された場合には(ステップS105で“YES”)、CPU41は、現在選択されているバンク及びナンバーのパッチの内容を編集内容に応じて一時更新する(ステップS106)。このとき、CPU41は、点灯表示部123のうち標識“EDITED”と対応するLEDを点灯させることで、現在設定されているパッチの内容を編集中であることを報知する。ここでいう一時更新は、DSP70の各部のレジスタの設定値の変更を意味し、また、更新情報は、RAM81などに一時的に記憶保持されてもよい。一方で、一時更新には、メモリ43のパッチデータ432を更新して保存することを含まない。CPU41は、ラインキーレベルアジャステッドフラグFla及びスピーカキーレベルアジャステッドフラグFsaをそれぞれ「0」(未設定)とする。CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。
【0083】
入力操作がパッチ内容の編集操作ではないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、CPU41は、入力操作がパッチの保存操作であるか否かを判別する(ステップS107)。パッチの保存操作は、例えば、LCD121aの表示内容に応じたタッチパネル25への入力操作により受け付けられてもよい。入力操作がパッチの保存操作であると判別された場合には(ステップS107で“YES”)、CPU41は、ステップS106の処理に基づいてDSP70の各部のレジスタの設定値をパッチデータ432の対応するパッチの設定データに更新記憶させる(ステップS108)。このとき、CPU41は、点灯表示部123のうち標識“EDITED”に対応するLEDを消灯させる。CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。
【0084】
入力操作がパッチの保存操作ではないと判別された場合には(ステップS107で“NO”)、CPU41は、ライン出力時の各キー(音高)音量(ラインキー音量)の音量補正を要求する操作であるか否かを判別する(ステップS109)。この操作は、調整スイッチP3の標識“LINE”に対応する押しボタンスイッチを押下する操作である。入力操作がラインキー音量の補正を要求する操作である判別された場合には(ステップS109で“YES”)、CPU41は、ラインキー音量補正処理を実行する(ステップS110)。CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。
【0085】
入力操作がラインキー音量の音量補正処理の要求操作ではないと判別された場合には(ステップS109で“NO”)、CPU41は、入力操作がスピーカ出力時の各キー(音高)音量(スピーカキー音量)の音量補正を要求操作であるか否かを判別する(ステップS111)。この操作は、調整スイッチP3の標識“SPEAKER”に対応する押しボタンスイッチを押下する操作である。入力操作がスピーカキー音量の音量補正を要求する操作であると判別された場合には(ステップS111で“YES”)、CPU41は、スピーカキー音量補正処理を実行する(ステップS112)。CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。
【0086】
入力操作がスピーカキー音量の音量補正処理の要求操作ではないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、CPU41は、入力操作が鍵盤Kbの操作であるか否かを判別する(ステップS113)。入力操作が鍵盤Kbの操作であると判別された場合には(ステップS113で“YES”)、CPU41は、音量補正処理を実行する(ステップS114)。それから、CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。
【0087】
入力操作が鍵盤Kbの操作ではないと判別された場合には(ステップS113で“NO”)、CPU41は、その他の通常処理を実行する(ステップS115)。通常処理は、毎回ステップS115の処理が呼び出されるごとに実行されるものである必要はない。ステップS115が実行されるタイミングで、ステップS101~S114の処理以外のその他の処理の実行要求がなされていれば、その他の処理が適宜実行されればよい。通常処理には、例えば、LCD121aへの表示制御、通信処理、DSP70の動作制御やその他の基幹制御処理などが含まれる。
【0088】
CPU41は、入力操作が電源オフ操作であるか否かを判別する(ステップS116)。電源オフ操作は、電源スイッチP5の操作である。入力操作が電源オフ操作ではないと判別された場合には(ステップS116で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS102へ戻る。入力操作が電源オフ操作であると判別された場合には(ステップS116で“YES”)、CPU41は、電子楽器1の動作停止に係る処理を行う(ステップS117)。動作停止に係る処理には、例えば、メモリ43、82へのアクセスの停止などが含まれ得る。そして、CPU41は、音出力制御処理を終了する。
ステップS104,S108の処理が本実施形態の設定取得ステップ及び設定取得手段に対応する。
【0089】
図8は、音出力制御処理のステップS110で実行されるラインキー音量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
ラインキー音量補正処理が開始されると、CPU41は、ラインキーレベルデプスKLLDをRAM42へ一時的に記憶(退避)させる。CPU41は、ラインキーレベルデプスKLLDとして「100」を設定する(ステップS201)。CPU41は、音量計測部709への入力をパッチ音量設定部706の出力とするように入力切替部708を設定する(ステップS202)。
【0090】
CPU41は、基準音高K0として設定する。基準音高K0は、特には限られないが、設定範囲の中央付近の音高であり、例えば、上記音高数Kn=128(音高に係る変数K=0~127)のうち60などであってもよい。K=60は、MIDI(Musical Instruments Digital Interface)データにおけるC4の音高に対応する。また、CPU41は、基準ベロシティV0として、設定可能な最大値Vmaxを設定する。CPU41は、ラインキーレベルKLL[K0]を100(すなわち、補正なし)に設定する(ステップS203)。
【0091】
CPU41は、DSP70により設定された基準音高K0及び基準ベロシティV0で音を発生(発音)させる(ステップS204)。CPU41は、音量測定処理を実行して、発音された音の音量計測部709による測定値を取得する(ステップS205)。CPU41は、測定値を、差分値Dを示す設定式(D=TL-LL)における基準音量値TLに代入する(ステップS206)。CPU41は、上記の発音を停止させる(ステップS207)。CPU41は、変数Kを「0」に設定する(ステップS208)。
【0092】
CPU41は、ベロシティに係る変数Vを「0」に設定する(ステップS209)。CPU41は、設定された変数K、VでDSP70により発音させる(ステップS210)。CPU41は、発音させた音の音量を音量計測部709から取得する(ステップS211)。CPU41は、取得した音量を、差分値Dを示す設定式における変数LLに代入する(ステップS212)。CPU41は、上記発音を停止させる(ステップS213)。
【0093】
CPU41は、設定式に従い、差分値Dとして基準音量値TLから変数LLを引いた値を得る(ステップS214)。CPU41は、差分値Dが0以下であるか否かを判別する(ステップS215)。差分値Dが0以下であると判別された場合には(ステップS215で“YES”)、CPU41の処理は、ステップS219へ移行する。
【0094】
差分値Dが0以下ではない(正の値である)と判別された場合には(ステップS215で“NO”)、CPU41は、変数Vに対して差分値Dの大きさに応じた値を加算する(ステップS216)。差分値Dに応じた値(変化量)は、差分値Dが小さいほど小さくなるような相関性の値である。検出最大値L0と音量計測値Lとの一致精度に応じた一定の加算値を音量設定値に毎回加算していくと、音量計測値Lが検出最大値L0に到達するまでに多大な時間を要する。したがって、差分値Dが大きいうちはマイクの音量設定値を大きく変化させることで一気に検出最大値L0に近づける。差分値Dが小さくなると、これに合わせて変化量も小さくしていくことで、漸近的に音量計測値Lを検出最大値L0に寄せて、効率よく精度のよいマイクの音量設定値を得る。
【0095】
CPU41は、ベロシティの変数Vが最大値Vmaxより大きいか否かを判別する(ステップS217)。変数Vが最大値Vmaxより大きくない(以下である)と判別された場合には(ステップS217で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS210に戻る。
【0096】
変数Vが最大値Vmaxより大きいと判別された場合には(ステップS217で“YES”)、CPU41は、変数Vに最大値Vmaxを設定する(ステップS218)。それから、CPU41の処理は、ステップS219へ進む。
【0097】
ステップS219の処理へ移行すると、CPU41は、ラインキーレベルKLL[K]に変数Vの値を代入する(ステップS219)。その後、CPU41は、変数Kに1を加算し(ステップS220)、加算された変数Kが基準音高K0と等しいか否かを判別する(ステップS221)。変数Kが基準音高K0と等しいと判別された場合には(ステップS221で“YES”)、CPU41の処理は、ステップS220に戻る。基準音高K0におけるラインキーレベルKLL[K0]は、ステップS203で初期設定されているので、ここでは処理が省略される。
【0098】
変数Kが基準音高K0と等しくないと判別された場合には(ステップS221で“NO”)、CPU41は、変数Kが音高数Kn(本実施形態では128)以上であるか否かを判別する(ステップS222)。変数Kが音高数Kn以上ではない(音高数Kn未満である)と判別された場合には(ステップS222で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS209に戻る。
【0099】
変数Kが音高数Kn以上であると判別された場合には(ステップS222で“YES”)、CPU41は、設定すべき全音高に対するラインキー音量補正処理が行われたとみなし、点灯表示部123における標識“LINE ADJUSTED”に対応するLEDを点灯させる(ステップS223)。また、CPU41は、ラインキーレベルアジャステッドフラグFlaを「1」とする。CPU41は、RAM42に退避させていたラインキーレベルデプスKLLDの値を読み出して当該ラインキーレベルデプスKLLDに再設定する(ステップS224)。そして、CPU41は、ラインキー音量補正処理を終了して、処理を音出力制御処理に戻す。
【0100】
図9は、ラインキー音量補正処理のステップS205、S211で呼び出された音量測定処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
音量測定処理が実行されると、CPU41は、DSP70に対し、音量計測部709のピークホールド値をリセットさせる指示を出力する(ステップS601)。すなわち、このタイミングがピークホールドの開始タイミングとなる。
【0101】
CPU41は、経過時間を表す変数tをリセットして「0」とする(ステップS602)。CPU41は、経過時間の計数を開始する(ステップS603)。経過時間の計数は、特には限られないが、例えば、ある周波数でのクロック信号を割込み信号で取得し、当該割込み信号の取得回数を計数することでなされてもよい。
【0102】
CPU41は、経過時間tが基準時間Tph以上であるか否かを判別する(ステップS604)。基準時間Tphは、特には限られないが、例えば、300msecであってもよい。経過時間tが基準時間Tph以上ではない(基準時間Tph未満である)と判別された場合には(ステップS604で“NO”)、CPU41は、ステップS604の処理を繰り返す。
【0103】
経過時間tが基準時間Tph以上であると判別された場合には(ステップS604で“YES”)、CPU41は、DSP70から音量計測部709の音量計測値L(すなわち、保持されているピークホールド値)を取得する。CPU41は、音量測定処理を終了して、当該音量測定処理を呼び出した元の処理の制御に戻る。
【0104】
図10は、
図7のステップS112で実行されるスピーカキー音量補正処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
スピーカキー音量補正処理が開始されると、CPU41は、スピーカキーレベルデプスKLSDの値をRAM42へ一時的に記憶(退避)させる。CPU41は、スピーカキーレベルデプスKLSDとして「100」を設定する(ステップS301)。
【0105】
CPU41は、ラインキーレベルアジャステッドフラグFlaが「1」であるか否かを判別する(ステップS341)。ラインキーレベルアジャステッドフラグFlaが「1」ではない(「0」である)場合には(ステップS341で“NO”)、CPU41は、点灯表示部123における標識“ERROR”に対応するLEDを点灯させる(ステップS344)。それから、CPU41の処理は、ステップS324へ移行する。
【0106】
ラインキーレベルアジャステッドフラグFlaが「1」であると判別された場合には(ステップS341で“YES”)、CPU41は、マイク音量自動調整処理を実行する(ステップS342)。CPU41は、マイクMの接続有無に係るマイク装着フラグFmが「1」である(マイクMが接続されている)か否かを判別する(ステップS343)。マイク装着フラグFmが「1」ではない(「0」である。マイクMが接続されていない)と判別された場合には(ステップS343で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS344へ移行する。
【0107】
マイク装着フラグFmが「1」である(マイクMが接続されている)と判別された場合には(ステップS343で“YES”)、CPU41は、音量計測部709への入力をADC63の出力とするように入力切替部708を設定する(ステップS302)。
【0108】
CPU41は、基準音高K0として設定する。基準音高K0は、特には限られないが、設定範囲の中央付近の音高であり、例えば、上記音高数Kn=128(音高に係る変数K=0~127)のうち60などであってもよい。また、CPU41は、基準ベロシティV0として、設定可能な最大値Vmaxを設定する。CPU41は、スピーカキーレベルKLS[K0]を100(すなわち、補正なし)に設定する(ステップS303)。
【0109】
CPU41は、設定された基準音高K0及び基準ベロシティV0でDSP70により音を発生(発音)させる(ステップS304)。CPU41は、音量測定処理を実行して、発音された音の音量計測部709による測定値を取得する(ステップS305)。CPU41は、差分値Dを示す設定式(D=TS-LS)における測定値を基準音量値TSに代入する(ステップS306)。CPU41は、上記の発音を停止させる(ステップS307)。CPU41は、変数Kを「0」に設定する(ステップS308)。
【0110】
CPU41は、ベロシティに係る変数Vを「0」に設定する(ステップS309)。CPU41は、設定された変数K、VでDSP70により発音させる(ステップS310)。CPU41は、発音させた音の音量を音量計測部709から取得する(ステップS311)。CPU41は、取得した音量を、差分値Dを示す設定式における変数LSに代入する(ステップS312)。CPU41は、上記発音を停止させる(ステップS313)。
【0111】
CPU41は、設定式に従い、差分値Dとして基準音量値TSから変数LSを引いた値を得る(ステップS314)。CPU41は、差分値Dが0以下であるか否かを判別する(ステップS315)。差分値Dが0以下であると判別された場合には(ステップS315で“YES”)、CPU41の処理は、ステップS319へ移行する。
【0112】
差分値Dが0以下ではない(差分値Dが正の値である)と判別された場合には(ステップS315で“NO”)、CPU41は、変数Vに対して差分値Dの大きさに応じた値を加算する(ステップS316)。差分値Dに応じた値(変化量)は、差分値Dが小さいほど小さくなるような相関性の値である。この対応関係は、ラインキー音量補正処理で定められた差分値Dに応じた値と同一であってもよい。
【0113】
CPU41は、ベロシティの変数Vが最大値Vmaxより大きいか否かを判別する(ステップS317)。変数Vが最大値Vmaxより大きくない(以下である)と判別された場合には(ステップS317で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS310に戻る。
【0114】
変数Vが最大値Vmaxより大きいと判別された場合には(ステップS317で“YES”)、CPU41は、変数Vに最大値Vmaxを設定する(ステップS318)。それから、CPU41の処理は、ステップS319へ進む。
【0115】
ステップS319の処理へ移行すると、CPU41は、スピーカキーレベルKLS[K]に変数Vの値を代入する(ステップS319)。その後、CPU41は、変数Kに1を加算し(ステップS320)、加算された変数Kが基準音高K0と等しいか否かを判別する(ステップS321)。加算された変数Kが基準音高K0と等しいと判別された場合には(ステップS321で“YES”)、CPU41の処理は、ステップS320に戻る。
【0116】
加算された変数Kが基準音高K0と等しくないと判別された場合には(ステップS321で“NO”)、CPU41は、変数Kが音高数Kn(本実施形態では128)以上であるか否かを判別する(ステップS322)。変数Kが音高数Kn以上ではない(音高数Kn未満である)と判別された場合には(ステップS322で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS309に戻る。
【0117】
変数Kが音高数Kn以上であると判別された場合には(ステップS322で“YES”)、CPU41は、設定すべき全音高に対するスピーカキー音量補正処理が行われたとみなし、点灯表示部123における標識“SPEAKER ADJUSTED”に対応するLEDを点灯させる(ステップS323)。また、CPU41は、スピーカキーレベルアジャステッドフラグFsaを「1」とする。CPU41は、RAM42に退避させていたスピーカキーレベルデプスKLSDの値を読み出して当該スピーカキーレベルデプスKLSDに再設定する(ステップS324)。そして、CPU41は、スピーカキー音量補正処理を終了して、処理を音出力制御処理に戻す。
【0118】
図11は、スピーカキー音量補正処理のステップS342で実行されるマイク音量自動調整処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0119】
マイク音量自動調整処理が開始されると、CPU41は、設定されている変数パラメータのうち、
図4に示したボリュームに係るパラメータ(設定対象のパッチのもの)を退避させる(ステップS701)。CPU41は、設定の初期化(メモリ領域を割り当て、リセット)を行う(ステップS702)。
【0120】
CPU41は、マイク接続検出部28の検出結果に基づいて、マイクMの接続がなされているか否かを判別する(ステップS703)。マイクMの接続がなされていないと判別された場合には(ステップS703で“NO”)、CPU41は、マイクの接続に係るマイク装着フラグFmを「0」に設定する(ステップS731)。それから、CPU41の処理は、ステップS727へ移行する。
【0121】
マイクMの接続がなされていると判別された場合には(ステップS703で“YES”)、CPU41は、マイク装着フラグFmを「1」に設定する(ステップS704)。CPU41は、音量計測部709への入力をパッチ音量設定部706の出力とするように、入力切替部708を切り替え設定する(ステップS705)。
【0122】
CPU41は、パッチ音量PATVOLを最大値である「100」に設定する。CPU41は、ラインキーレベルデプスKLLDを最大値である「100」に設定する(ステップS706)。CPU41は、最大音量値Lmxを初期値の「0」に設定する。CPU41は、最大音量値Lmxが得られる最大音量音高Kmxを「0」に設定する(ステップS707)。
【0123】
CPU41は、音高に係る変数KのラインキーレベルKLL[K]を「100」に設定する(ステップS708)。CPU41は、設定された変数K及び変数V=VmaxでDSP70により発音させる(ステップS709)。CPU41は、音量測定処理を実行し、発音された音の音量を音量計測部709から取得する(ステップS710)。CPU41は、取得された音量を音量計測値Lとする(ステップS711)。CPU41は、DSP70による発音を停止させる(ステップS712)。
【0124】
CPU41は、音量計測値Lが最大音量値Lmxより大きいか否かを判別する(ステップS713)。音量計測値Lが最大音量値Lmxよりも大きいと判別された場合には(ステップS713で“YES”)、CPU41は、最大音量値Lmxを音量計測値Lの値に更新し、最大音量音高Kmxを変数Kの値に更新する(ステップS714)。そして、CPU41は、変数Kに1を加算する(ステップS715)。音量計測値Lが最大音量値Lmxより大きくない(以下である)と判別された場合には(ステップS713で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS715へ移行する。
【0125】
CPU41は、変数Kが音高数Kn以上であるか否かを判別する(ステップS716)。変数Kが音高数Kn以上ではない(音高数Kn未満である)と判別された場合には(ステップS716で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS708に戻る。
【0126】
変数Kが音高数Kn以上であると判別された場合には(ステップS716で“YES”)、CPU41は、音量計測部709への入力をマイク入力(ADC63)とするように入力切替部708を切り替え設定する(ステップS717)。
【0127】
CPU41は、マイク音量MICVOLを「0」に設定し、スピーカキーレベルデプスKLSDを「100」に設定する。CPU41は、得られた最大音量音高KmxにおけるラインキーレベルKLL[Kmx]及びスピーカキーレベルKLS[Kmx]をそれぞれ最大値である「200」に設定する(ステップS718)。
【0128】
CPU41は、音高に係る変数K=Kmx、ベロシティに係る変数Vを最大値Vmax(基準音量)として、DSP70により発音させる(ステップS719)。CPU41は、音量測定処理を実行して音量の計測値を取得する(ステップS720)。CPU41は、取得された計測値を音量計測値Lとする(ステップS721)。CPU41は、DSP70による発音を停止させる(ステップS722)。
【0129】
CPU41は、計測可能な最大音量から音量計測値Lを差し引いた値を差分値Dとする(ステップS723)。CPU41は、差分値Dが0以下であるか否かを判別する(ステップS724)。差分値Dが0以下であると判別された場合には(ステップS724で“YES”)、CPU41の処理は、ステップS728へ移行する。
【0130】
差分値Dが0以下ではないと判別された場合には(ステップS724で“NO”)、CPU41は、差分値Dに応じた大きさの値をマイク音量MICVOLに加算する(ステップS725)。差分値Dに応じた大きさの値は、上記ラインキー音量補正処理及びスピーカキー音量補正処理で定められたものと同一であってもよい。
【0131】
CPU41は、マイク音量MICVOLが設定可能な最大値より大きいか否かを判別する(ステップS726)。マイク音量MICVOLが最大値より大きくない(最大値以下である)と判別された場合には(ステップS726で“NO”)、CPU41の処理は、ステップS719に戻る。これにより、マイク音量MICVOLが出力音量に応じた音量で出力可能に整合される。マイク音量MICVOLが最大値より大きいと判別された場合には(ステップS726でYES“)、CPU41の処理は、ステップS727へ移行する。
【0132】
ステップS727の処理へ移行すると、CPU41は、点灯表示部123の標識“ERROR”に対応するLEDを点灯させる(ステップS727)。それから、CPU41の処理は、ステップS728へ移行する。
【0133】
ステップS728の処理へ移行すると、CPU41は、ステップS701で退避させたボリュームに係るパラメータをRAM42から読み出して、パラメータ設定を復帰させる(ステップS728)。CPU41は、マイク音量自動調整処理を終了して、処理をスピーカキー音量補正処理に戻す。
【0134】
図12は、音出力制御処理のステップS114で実行される音補正処理の制御手順を示すフローチャートである。この音補正処理は、DSP70の処理とともに本実施形態の音量制御方法/プログラムの特に音処理ステップ及び音処理手段に含まれる。
音出力制御処理が開始されると、CPU41は、音量値Aとして、パッチ音量PATVOLを100で割った値(PATVOL/100)を設定する(ステップS401)。この音量値Aは、入力された音に対してパッチを適用した音量である。CPU41は、音量値Bとして、出力音の音高に係る変数KのラインキーレベルKLL[K]を100で除した値(KLL[K]/100)に上記音量値Aを乗じた値を設定する(ステップS402)。この音量値Bは、上記パッチを適用した音量値Aを、更にライン音量自動調整処理で補正した音量である。
【0135】
CPU41は、出力音量(ベロシティの変数V)として、音量値Bに、ラインキーレベルデプスKLLDを100で除した値(KLLD/100)を乗じたものと、音量値Aに、1から上記値(KLLD/100)を引いた値を乗じたものとを加算した値を設定する(ステップS403)。すなわち、ベロシティの変数Vは、音量値Aに対して、ラインキーレベルデプスKLLDに応じた割合で音量値Bを反映させた値である。
【0136】
CPU41は、ヘッドホン装着フラグFaが1である、すなわち、ヘッドホンが接続されておらず、音出力部14からの音出力が可能な状態であるか否かを判別する(ステップS404)。ヘッドホン装着フラグFaが1ではないと判別された場合には(ステップS404で“NO”)、CPU41は、出力音量補正処理を終了して、処理を音出力制御処理に戻す。
【0137】
ヘッドホン装着フラグFaが1であると判別された場合には(ステップS404で“YES”)、CPU41は、音量値AにステップS403で定められたベロシティの値(変数V)を設定する(ステップS405)。CPU41は、音量値Bとして、出力対象の音高に係る変数KのスピーカキーレベルKLS[K]を100で除した値(KLS[K]/100)に音量値Aを乗じた値を設定する(ステップS406)。
【0138】
CPU41は、スピーカキーレベルKLS[K]を100で除した値(KLS[K]/100)を音量値Bに乗じた値と、上記値(KLS[K]/100)を1から差し引いた値(1-KLS[K]/100)に音量値Aを乗じた値とを加算した値をベロシティの変数Vとして設定する(ステップS407)。すなわち、音出力部14によるベロシティ(変数V)は、音量値Aに対して、スピーカキーレベルデプスKLSDに応じた割合で補正されたスピーカキーレベルKLS[K]に基づく音量値Bを反映させた値である。そして、CPU41は、音量補正処理を終了して、処理を音出力制御処理に戻す。
【0139】
このように設定されたベロシティの変数Vは、各音の音生成部700のアンプ713に設定される。音源情報として入力された各音は、その音高に応じた(補正量に基いた)増幅率でアンプ713により増幅されることで、それぞれ音量が補正される。
【0140】
以上のように、本実施形態の音量制御装置を含む電子楽器1は、音源情報(演奏に係る入力操作)に基づく音出力に係るパッチを取得するCPU41と、パッチに基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成するDSP70と、を備える。パッチは、音量を規定する音量設定(パッチ音量PATVOL)と、当該パッチの音量感(LUFS)に応じた音量の音高ごとの補正量(ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLS)に係る補正設定とを含む。補正量は、生成された音出力信号に応じた出力音量又は音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものである。DSP70は、音量設定で定められている音量を上記補正量に基づいて補正してなる音出力信号を生成する。
このように、電子楽器1は、パッチ設定によって生じ得る音高ごとの音量感の違いを低減させるので、演奏時などの音出力時における不自然な音量感のばらつきを低減させることができる。
【0141】
また、補正設定は、補正量(ラインキーレベルKLL、スピーカキーレベルKLS)の反映度合(ラインキーレベルデプスKLLD、スピーカキーレベルデプスKLSD)の設定を含む。DSP70は、パッチで定められている音量に対し、上記反映度合(ラインキーレベルデプスKLLD、スピーカキーレベルデプスKLSD)で補正量(ラインキーレベルKLL、スピーカキーレベルKLS)を適用することで補正してなる音出力信号を生成する。
パッチ設定は、音高ごとの音量感の違い自体も特徴となるので、これを完全に補正してしまうと、パッチの特徴が相殺されることになり得る。したがって、電子楽器1は、補正量を完全には適用せずに、部分的にパッチで定められた音量に適用することが可能であることで、全体としてパッチの音量傾向を残しつつ、不自然な音量感の差異を低減させることが可能となる。
【0142】
また、補正設定は、ある音出力部14による音出力に対応する特定補正設定を含む。DSP70は、音出力部14から音を出力させる場合には、パッチの音量設定で定められている音量を、出力する音高での特定補正設定(スピーカキーレベルKLS)で定められた補正量に基づいて補正して音出力信号を生成する。
音出力部14のようなスピーカから音を出力する場合には、スピーカ自身の特性の影響も大きく表れる。したがって、単に出力データ上の音量感の差異を補正するだけではなく、スピーカ特性を考慮して音量感の差異を補正することで、電子楽器1は、音出力部14から出力される音の音高に応じた音量感の差異を効果的に低減することができる。
【0143】
また、補正設定は、特定補正設定で定められた補正量(スピーカキーレベルKLS)の反映度合(スピーカキーレベルデプスKLSD)の設定である特定度合設定を含む。DSP70は、音出力部14から音を出力させる場合には、パッチで定められている音量に対し、特定度合設定に係る反映度合(スピーカキーレベルデプスKLSD)で補正量(スピーカキーレベルKLS)を適用することで補正して音出力信号を生成する。スピーカ出力の場合には、当該スピーカの特性を考慮して、反映度合(スピーカキーレベルデプスKLSD)をライン出力の場合などとは別個に定めることで、電子楽器1は、より違和感のない効果的な音出力を音出力部14から行わせることができる。
【0144】
また、特定補正設定(スピーカキーレベルKLS)は、補正設定(ラインキーレベルKLL)による補正がなされた音量に対して更に適用されるものであってもよい。すなわち、スピーカキーレベルKLSは、音出力部14の特性に応じた独自の補正部分をラインキーレベルKLLによるパッチに対する補正に上乗せする形で定められていてもよい。これにより、電子楽器1は、ラインキーレベルKLLの適用を乗じ行い、音出力部14からの出力有無に応じてスピーカキーレベルKLSの適用有無を容易に切り替えることができる。
【0145】
また、電子楽器1は、音源情報(演奏)及びパッチに基づいてDSP70により生成された音出力信号による出力音量を、音量感に係るある特定の特性に基づいて取得する音量計測部709と、出力音量と特定の特性(LUFS)に基づく基準音量との差分がある基準を満たして小さくなるように補正量を定めて、補正設定としてパッチの音設定に含める音量補正部411(CPU41)と、を備える。
すなわち、電子楽器1は、自身でパッチによる各音の出力音量を計測して、当該計測の結果に基づいて補正量(ラインキーレベルKLLなど)を特定し、パッチに含めることがかのうである。ユーザは、電子楽器1により自動的に補正量を特定させることができるので、パッチの設定の際に細かい音高ごとの音量感の違いを考慮せずとも容易にその補正が可能となる。
【0146】
また、電子楽器1は、集音して音入力信号に変換するマイクMが集音して得た当該音入力信号をマイクMから入力させるマイク入力端子(MIC IN)と、を備える。出力音量が音出力部14からの出力に係るものである場合に、音量計測部709は、マイクMが音出力部14からの音出力を集音して得た音入力信号の入力音量の計測の結果に基づいて、出力音量を取得し得る。音量補正部411(CPU11)は、出力音量と基準音量との差分に基づいて定めた補正量(スピーカキーレベルKLS)を特定補正設定としてパッチの音設定に含める。このように音出力部14から一度出力した音をマイクMにより集音して音量を計測することで、特にライブ会場など周囲の環境も考慮した適切な音量を取得することができる。したがって、電子楽器1は、より実際の演奏時の環境に即して音高に応じた音量感の差異にユーザ(演奏者)やリスナー(聴衆)が違和感を生じにくい音出力を行うことができる。
【0147】
また、音量補正部411は、音高ごとに補正量(スピーカキーレベルKLS)が設定される音高範囲において、パッチに基づく出力音量が最大の音高である最大音量音高Kmxを特定し、当該最大音量音高Kmxの音をある基準音量(最大音量値Lmx)で音出力部14から出力させた場合に取得される出力音量の当該基準音量に対応する音量との差分が、ある基準を満たして小さくなるようにマイクMからの入力音量を整合させた後に、特定補正設定(スピーカキーレベルKLS)を定める。
マイクMにより集音される音の音量は、マイクMの位置、マイクMの性能や周囲の環境に応じて異なり得る。したがって、予めマイクMのボリューム(マイク音量MICVOL)を調整して出力音量と入力音量を整合させてから、スピーカキーレベルKLSの設定を行うことで、電子楽器1は、相対的な音量調整であってもより適切な基準で行うことができる。
【0148】
また、音量計測部709は、ある音高に応じた出力音量として、パッチに応じた上記ある音高によるある出力時間内の出力音量のうち最大値を取得する。単一音の発音及びその取得であっても、音色などに応じてその立ち上がりや残響などが異なり得る。したがって、ある程度の幅の発音期間内で最大音量を取得することで、電子楽器1は、適切に音量を評価してその音量感の差異を低減する補正量を定めることができる。
【0149】
また、音量補正部411は、差分値Dが小さいほど小さい変化量で音量の補正量(ラインキーレベルKLL、スピーカキーレベルKLS)を変化させながら音量計測部709により音出力信号に応じた出力音量を取得させて、差分値Dが基準を満たす補正量を漸近的に特定することとすることができる。これにより、電子楽器1は、効率よくかつ精度よく適正な補正量を得ることができる。
【0150】
また、音量の補正量(ラインキーレベルKLL、スピーカキーレベルKLS)は、パッチの音量設定で定められている音量に対して乗じられる係数である。すなわち、設定音量の倍率補正とすることで、マスタ音量MASVOLの変化などに対して自然に音量の補正を行うことができる。
【0151】
また、音量感に係るある特定の特性は、LUFS(Loudness Units Full Scale)であってもよい。音量感を定量的かつ精度よく表すことのできるLUFSを用いることで、電子楽器1は、演奏時の音量感のむらを効果的に低減させることができる。
【0152】
また、本実施形態の電子楽器1は、上記の音量制御装置としての機能構成を備える。よって、電子楽器1は、その演奏とパッチ設定とに応じた音の出力を、より自然に違和感を抑えながら行うことができる。
【0153】
また、本実施形態の音量制御方法は、音源情報に基づく音出力に係るパッチを取得する設定取得ステップ、パッチに基づいて、取得された音源情報から音出力信号を生成する音処理ステップ、を含む。パッチは、音量を規定する音量設定と、当該パッチの音量感に応じた音量の音高ごとの補正量(ラインキーレベルKLL、スピーカキーレベルKLS)に係る補正設定とを含む。補正量は、生成された音出力信号に応じた出力音量又は音出力信号に基づいて出力された音出力に応じた出力音量の取得データ、及び出力すべき音出力の音高に応じて調整されたものである。音処理ステップでは、音量設定で定められている音量を上記補正量に基づいて補正してなる前記音出力信号を生成する。
このような音量制御方法により、パッチ設定によって生じ得る音高ごとの音量感の違いを低減させるので、演奏時などの音出力時における不自然な音高ごとの音量感のばらつきを低減させることができる。
【0154】
また、上記音量制御方法に係るプログラム431をコンピュータにインストールして実行することで、ソフトウェア的に、音高ごとの音量感のばらつきを低減して音出力させることが可能になる。
【0155】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、マイク音量設定部62のマイク音量MICVOLの設定時に、音量ゼロから徐々に音量を増大させて基準値に漸近させ、基準値を超えた値で音量を確定させたが、これに限られない。マイク音量や補正音量には、基準値を超える前後の値のうち、差分値Dの絶対値が小さい方を採用してもよい。あるいは、例えば、差分値Dの正負が反転した場合に変化量の正負を反転させることで、音量の大小両側から基準値を挟みながら入力音量を当該基準値に漸近させてもよい。
【0156】
また、上記実施の形態では、DSP70で音量をピークホールドして最大値を取得することが可能としたが、これに限られない。CPU41がリアルタイムで出力される音量値のデータから最大値を特定してもよい。
【0157】
また、マイク音量を定める際に出力、調整される音量は、パッチ音量及び音量計測部709による計測音量としてそれぞれ最大の音量ではなくてもよい。他のパッチ音量及び計測音量でマイク音量が定められてもよい。
【0158】
また、上記実施の形態では、音出力部14により音出力をする場合、ラインキーレベルKLLで補正された音量を更にスピーカキーレベルKLSで補正するものとして説明したが、これに限られない。ラインキーレベルKLLとスピーカキーレベルKLSとは、独立に設定されて、音出力先に応じて各々パッチ音量に対して適用されてもよい。
【0159】
また、ラインキーレベルKLL、スピーカキーレベルKLS、ラインキーレベルデプスKLLD及びスピーカキーレベルデプスKLSDは、その一部又は全部が整数値以外で設定可能であってもよい。
【0160】
また、ラインキーレベルデプスKLLD及びスピーカキーレベルデプスKLSDは、ユーザが直接数値を設定するのではなくてもよい。GUI(Graphical User Interface)などを介してユーザが感覚的に調整可能であってもよい。また、CPU41が補正量(ラインキーレベルKLL及びスピーカキーレベルKLS)などに応じて動的にこれらの初期値を設定可能であってもよい。
【0161】
また、音出力部14が電子楽器1と一体のものではなくてもよい。電子楽器1と組み合わせて使われる特定の外部スピーカなどであってもよい。
【0162】
また、ライン接続は、有線(ケーブル)によるものに限られない。無線通信を介してワイヤレスで接続されてもよい。無線通信は、必要なデータ伝送速度が得られるものであれば特に限られない。例えば、伝送可能距離が数メートルから数十メートル程度の近距離無線通信のいずれかであってもよい。
【0163】
また、上記実施の形態では、音量計測部709をDSP70の構成、音量補正部411をDSP70外の構成として説明したが、これに限られない。いずれもDSP70内の構成であってもよいし、反対にいずれもDSP70外の構成であってもよい。
【0164】
また、DSP70による処理は、CPUによるソフトウェア処理でなされてもよい。
【0165】
また、上記実施の形態では、電子楽器として鍵盤楽器(キーボード)を例に挙げて説明したが、これらに限られない。電子楽器は他の楽器、例えば吹奏楽器や弦楽器などであってもよい。
【0166】
また、パッチは、電子楽器1で定められたものではなくてもよい。パッチの設定が外部で行われたものが取得されて利用されてもよい。この場合には、上記のように、パッチの設定が電子楽器1で取得されてから、ボリュームパラメータが設定されればよい。
【0167】
また、上記実施の形態では、音響情報として鍵盤Kbのユーザ演奏に係るデータを示したが、これに限られるものではない。音響情報に含まれる演奏データは、外部から取得されたMIDI(Musical Instruments Digital Interface)データなどであってもよい。また、これら複数の演奏データが組み合わされた音響情報であってもよい。
【0168】
また、以上の説明では、本発明の音量調整制御に係るプログラム431を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDD、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなるメモリ43を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0169】
1 電子楽器
11 操作受付部
121 デジタル表示部
121a LCD
122 数値表示部
123 点灯表示部
13 接続端子群
14 音出力部
22 ADC
23、24 ロータリーエンコーダ
25 タッチパネル
26 キースキャナ
27 アンプコントローラ
28 マイク接続検出部
29 ヘッドホン接続検出部
41 CPU
411 音量補正部
42 RAM
43 メモリ
431 プログラム
432 パッチデータ
44 LCDコントローラ
45 I/Oインターフェイス
61 アンプ
62 マイク音量設定部
63 ADC
70 DSP
700 音生成部
711 波形発生器
712 フィルタ
713 アンプ
714 イコライザ
715 ピッチエンベロープジェネレータ
716 フィルタエンベロープジェネレータ
717 アンプエンベロープジェネレータ
701~704 エフェクトモジュール
706 パッチ音量設定部
707 マスタ音量設定部
708 入力切替部
709 音量計測部
718 ミキサ
71 DAC
72 プリアンプ
73、74 アンプ
81 RAM
82 メモリ
90 バス
Fa ヘッドホン装着フラグ
Fm マイク装着フラグ
Fla ラインキーレベルアジャステッドフラグ
Fsa スピーカキーレベルアジャステッドフラグ
K0 基準音高
KLL ラインキーレベル
KLLD ラインキーレベルデプス
KLS スピーカキーレベル
KLSD スピーカキーレベルデプス
Kb 鍵盤
Kmx 最大音量音高
Kn 音高数
L 音量計測値
L0 検出最大値
Lmx 最大音量値
M マイク
MASVOL マスタ音量
MICVOL マイク音量
PATVOL パッチ音量
P1、P2 パッチ設定スイッチ
P3 調整スイッチ
P5 電源スイッチ
P6 マスタ音量ダイヤル
P7 データ入力ダイヤル
P8 演奏ホイール