(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106014
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】圧着端子用クリップ
(51)【国際特許分類】
H01R 11/24 20060101AFI20240731BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20240731BHJP
G01R 1/04 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01R11/24
G01R1/067 F
G01R1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010051
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】船越 亘留
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸二
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA05
2G011AA14
2G011AE04
2G011AF05
2G011AF06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧着端子の平板状の圧着部を挟持可能であり、一旦挟持された圧着部が外れない
圧着端子用クリップを提供する。
【解決手段】圧着端子用クリップ1は、一方の本体2と、他方の本体3と、接続部4と、
一方の挟持部5と、他方の挟持部6を備え、一方の挟持部5は、複数の凸段5Aであり、
他方の挟持部6は、複数の凸段5Aが嵌合可能な複数の凹段6Aであり、複数の凸段5Aは、その外径が、一方の挟持部5の外周から中心へ向かう凸段半径方向に沿って、段階的に小さくなる同心円状に形成されるとともに、その高さが、凸段半径方向に沿って、段階的に高くなる階段状に形成され、複数の凹段6Aは、その内径が、他方の挟持部6の外周から中心へ向かう凹段半径方向に沿って、段階的に小さくなる同心円状に形成されるとともに、その高さが、凹段半径方向に沿って、段階的に低くなる階段状に形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状またはC字状をなす圧着部と、この圧着部に連なる柄部と、を備える圧着端子を挟
持する圧着端子用クリップであって、
一方及び他方の本体と、前記一方の本体と、前記他方の本体とを重ね合わせて接続可能
な接続部と、前記圧着部を挟持する一方及び他方の挟持部と、を備え、
前記他方の本体は、第1の導電体で形成され、
前記一方の挟持部は、前記一方の本体のうち、少なくとも第1の縁部に設けられる複数
の凸段であり、
前記他方の挟持部は、前記他方の本体のうち、少なくとも前記第1の縁部に対向する第
2の縁部に設けられ、複数の前記凸段の少なくとも一部が嵌合可能な複数の凹段であり、
複数の前記凸段は、その外径が、前記一方の挟持部の外周から前記一方の挟持部の中心
へ向かう凸段半径方向に沿って、段階的に小さくなる同心円状に形成されるとともに、複
数の前記凸段の前記一方の本体からの高さが、前記凸段半径方向に沿って、段階的に高く
なる階段状に形成され、
複数の前記凹段は、その内径が、前記他方の挟持部の外周から前記他方の挟持部の中心
へ向かう凹段半径方向に沿って、段階的に小さくなる同心円状に形成されるとともに、複
数の前記凹段の前記他方の本体からの高さが、前記凹段半径方向に沿って、段階的に低く
なる階段状に形成され、かつ、前記圧着端子の前記柄部を収容する切り欠き部が形成され
、
複数の前記凹段のうち、少なくとも一の凹段は、前記第1の導電体と導通する第2の導
電体であることを特徴とする圧着端子用クリップ。
【請求項2】
複数の前記凸段は、その外径が、前記凸段半径方向に沿って、段階的に小さくなる順に
設けられる、第1乃至第3の凸段であり、
複数の前記凹段は、その内径が、前記凹段半径方向に沿って、段階的に小さくなる順に
設けられる、少なくとも第1及び第2の凹段であり、
前記一の凹段は、前記第2の凹段であることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子用
クリップ。
【請求項3】
前記一方の本体は、その外表面に、絶縁性を有する第1の絶縁体を備え、
前記他方の本体は、その外表面と、前記切り欠き部の底面と、複数の前記凹段のうち、
最も前記内径が小さい最小径凹段で囲まれる最小底面に、絶縁性を有する第2の絶縁体を
備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧着端子用クリップ。
【請求項4】
前記接続部は、前記一方及び他方の挟持部にそれぞれ設けられる一対の挟持部磁石であ
り、
一対の前記挟持部磁石は、複数の前記凸段のうち、最も前記外径が小さい最小径凸段と
、複数の前記凹段のうち、最も前記内径が小さい最小径凹段で囲まれる最小底面に、それ
ぞれ配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧着端子用クリップ。
【請求項5】
前記一方の本体と、前記他方の本体とを重ね合わせて接続した場合に、前記一方の本体
と、前記他方の本体との間に形成される収容空間に収容されるヒューズと、このヒューズ
が備える両側端子とそれぞれ導通する一対の導通部を備え、
前記一方の本体は、絶縁性を有する第3の絶縁体で形成され、
前記他方の本体は、前記第1の導電体の代わりに、絶縁性を有する第4の絶縁体で形成
され、
前記一方の挟持部は、前記一方の本体のうちの前記第1の縁部に加えて、前記一方の本
体の中央について、前記第1の縁部と対称的に位置する第3の縁部に設けられ、
前記他方の挟持部は、前記他方の本体のうちの前記第2の縁部に加えて、前記他方の本
体の中央について、前記第2の縁部と対称的に位置する第4の縁部に設けられ、
一対の前記導通部は、前記第2及び第4の縁部に設けられる前記他方の挟持部が備える
前記第2の導電体とそれぞれ導通することを特徴とする請求項4に記載の圧着端子用クリ
ップ。
【請求項6】
前記一方の挟持部と、前記他方の挟持部が、前記圧着部を挟持する場合に、前記一方の
挟持部と、前記他方の挟持部を分離不能に、前記一方の本体と、前記他方の本体の周囲に
装着されるカバーを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧着端子用ク
リップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工事において、端子を挟持するために用いられるクリップに係り、特に
、環状またはC字状をなす圧着部を備える圧着端子を挟持する圧着端子用クリップに関す
る。
【背景技術】
【0002】
従来、修繕・改良工事等の電気工事においては、例えば、電源等を仮接続する際に、ワ
ニ口タイプのクリップを用いて、環状またはC字状の平板状をなす圧着部を備える圧着端
子を挟持している。この場合、ワニ口の鋸歯部と、平板状をなす圧着部との噛み合せが不
十分になるため、圧着部を挟持した状態のワニ口の外側に、ビニールテープを巻き付けて
無理やり固縛し、養生している。
しかし、ビニールテープによる固縛が緩いと、ワニ口が圧着部から外れ、感電や電源等
の短絡・地絡が発生する原因となる。そのため、健全設備の運転に支障をきたしたり、人
災が発生したりするおそれがある。
そこで、上記のような、ワニ口タイプのクリップが、挟持対象である端子から外れ易い
という課題を解決するための技術が開発されており、それに関して既に考案が開示されて
いる。
【0003】
特許文献1には「結線用クリップ」という名称で、圧着端子を挟持するものではないが
、細線等を強く挟持するための結線用クリップに関する考案が開示されている。
特許文献1に開示された考案は、軸支された一対の挟持片と、この挟持片に軸を介して
係合し、挟持片先端を相互に接触させる挟持ばねとを具備し、一方の挟持片先端にテーパ
ー状の突起を、また、他方の挟持片先端に突起が係合するテーパー状の孔をそれぞれ有す
るように構成したことを特徴とする。
このような特徴を有する考案においては、挟持ばねのばね力に抗して突起と孔との係合
を解き、孔に接続すべき細線等を挿入し、再度ばね力を作用させると、細線等は、ばね力
により、一対の挟持片先端の挟持面の間に挟持される。突起は、孔の壁面に合わせてテー
パー状に作られているので、突起と、孔とは確実に密着して係合する。その結果、細線等
は挟持片先端によって強く挟持され、安定した電気的接続が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された考案においては、テーパー状をなす突起と孔は
、細線等を挟持し易いが、環状等の平板状をなす圧着部を挟持することには、不適である
。また、細線等は孔に挿入されることのみで、挟持片先端によって挟持されるため、仮に
、細線等が意図せず強く引っ張られると、孔から抜け出してしまうおそれがある。
よって、特許文献1に開示された考案では、上記形状の圧着部がクリップから外れ易い
という従来の課題を十分に解決できるとはいえない。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、圧着端子が備える環
状等の平板状をなす圧着部を挟持可能であり、かつ、一旦挟持された圧着部が、意図せず
外れることを防止できる圧着端子用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、環状またはC字状をなす圧着部と、この圧着
部に連なる柄部と、を備える圧着端子を挟持する圧着端子用クリップであって、一方及び
他方の本体と、一方の本体と、他方の本体とを重ね合わせて接続可能な接続部と、圧着部
を挟持する一方及び他方の挟持部と、を備え、他方の本体は、第1の導電体で形成され、
一方の挟持部は、一方の本体のうち、少なくとも第1の縁部に設けられる複数の凸段であ
り、他方の挟持部は、他方の本体のうち、少なくとも第1の縁部に対向する第2の縁部に
設けられ、複数の凸段の少なくとも一部が嵌合可能な複数の凹段であり、複数の凸段は、
その外径が、一方の挟持部の外周から一方の挟持部の中心へ向かう凸段半径方向に沿って
、段階的に小さくなる同心円状に形成されるとともに、複数の凸段の一方の本体からの高
さが、凸段半径方向に沿って、段階的に高くなる階段状に形成され、複数の凹段は、その
内径が、他方の挟持部の外周から他方の挟持部の中心へ向かう凹段半径方向に沿って、段
階的に小さくなる同心円状に形成されるとともに、複数の凹段の他方の本体からの高さが
、凹段半径方向に沿って、段階的に低くなる階段状に形成され、かつ、圧着端子の柄部を
収容する切り欠き部が形成され、複数の凹段のうち、少なくとも一の凹段は、第1の導電
体と導通する第2の導電体であることを特徴とする。
【0008】
このような構成の発明において、一方及び他方の本体として、例えば、それぞれ長方形
状をなす平板体や、棒状体が想定される。また、接続部は、例えば、一方の本体を、他方
の本体に対して傾動可能に接続することが可能な部材が考えられる。このような接続部と
して、例えば、一方の本体の一部と、他方の本体の一部に設けられるヒンジ構造が考えら
れる。
これ以外にも、接続部は、一方の本体と、他方の本体とを平行に重ね合わせて接続した
り、一方の本体と、他方の本体とを完全に分離させたりすることが可能な部材であっても
よい。このような接続部として、例えば、一方の本体と、他方の本体にそれぞれ設けられ
、互いに吸着や分離が可能な磁石が考えられる。
【0009】
また、複数の凸段の少なくとも一部とは、例えば、複数の凸段のうち、最も外径が小さ
い凸段をいう。なお、複数の凹段に嵌合される凸段は、複数の凸段の段数や、複数の凸段
のうち、最も外径が大きい凸段の外径と、複数の凹段のうち、最も内径が大きい凹段の内
径との大小関係によって異なる。
さらに、複数の凹段のうち、少なくとも一の凹段とは、例えば、複数の凹段のうち、最
も内径が小さい凹段である。
【0010】
上記構成の発明においては、複数の凸段が複数の凹段に嵌合する場合に、複数の凸段と
、これに対向する複数の凹段によって囲まれる間隙が形成される。よって、この間隙に、
圧着端子の圧着部が収容されることになる。
これとともに、圧着部の中央に形成されている孔部に、例えば、2番目に外径が小さい
凸段や、最も外径が小さい凸段が挿通される。なお、圧着部の孔部に挿通される凸段は、
複数の凸段の段数によって異なる。
また、複数の凹段に形成される切り欠き部には、圧着端子の柄部が収容される。したが
って、複数の凸段と、複数の凹段によって囲まれる間隙に圧着端子の圧着部が収容され、
かつ、切り欠き部に圧着端子の圧着部が収容される結果、圧着端子の圧着部が、一方の挟
持部と、他方の挟持部によって挟持されることになる。
【0011】
さらに、複数の凹段のうち、少なくとも一の凹段は、他方の本体を形成する第1の導電
体と導通する第2の導電体であるから、上述の間隙に収容された圧着部が、一の凹段と接
触することで、他方の本体と導通する。
したがって、他方の本体のうち、他方の挟持部が設けられない箇所(例えば、他方の本
体の中央について、第2の縁部と対称的に位置する縁部)に、リード線を取り付けるリー
ド線取付部を設けることで、圧着端子の圧着部がリード線と導通可能となる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、複数の凸段は、その外径が、凸段半径方向に沿っ
て、段階的に小さくなる順に設けられる、第1乃至第3の凸段であり、複数の凹段は、そ
の内径が、凹段半径方向に沿って、段階的に小さくなる順に設けられる、少なくとも第1
及び第2の凹段であり、一の凹段は、第2の凹段であることを特徴とする。
このような構成の発明において、第1の凸段の外径は、第1の凹段の内径と同等の大き
さであるほか、第1の凸段の外径が、第1の凹段の外径と同等の大きさであってもよい。
この場合、少なくとも第2及び第3の凸段がそれぞれ第1及び第2の凹段に嵌合する。
また、複数の凹段は、第1及び第2の凹段に加えて、第3の凹段が設けられてもよい。
【0013】
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、第3の凹段が設けられない場
合、第2及び第3の凸段がそれぞれ第1及び第2の凹段に嵌合することにより、第1及び
第2の凸段と、第1及び第2の凹段と、で囲まれる環状の大径を有する空間と、第2及び
第3の凸段と、第2の凹段と第2の凹段で囲まれる底面と、で囲まれる環状の小径を有す
る空間が形成される。よって、大径を有する空間に、圧着部が収容され、小径を有する空
間にも、圧着部が収容される。
なお、大径を有する空間に収容される圧着部の直径は、小径を有する空間収容される圧
着部の直径よりも大きい。すなわち、第2及び第3の凸段がそれぞれ第1及び第2の凹段
に嵌合することにより、大径を有する圧着部と、小径を有する圧着部という、二種類のサ
イズの圧着部が、一方の挟持部と、他方の挟持部によって挟持される。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、一方の本体は、その外表面に、絶縁性を
有する第1の絶縁体を備え、他方の本体は、その外表面と、切り欠き部の底面と、複数の
凹段のうち、最も内径が小さい最小径凹段で囲まれる最小底面に、絶縁性を有する第2の
絶縁体を備えることを特徴とする。
このような構成の発明において、一方の本体の外表面とは、一方の本体の両表面のうち
、一方の本体と、他方の本体を接続した際に他方の本体と対向しない側の表面をいう。同
様に、他方の本体の外表面とは、他方の本体の両表面のうち、一方の本体と、他方の本体
を接続した際に、一方の本体と対向しない側の表面をいう。また、最小底面とは、他方の
本体の両表面のうち、一方の本体と、他方の本体を接続した際に、一方の本体と対向する
側の表面と同一面上の領域である。
【0015】
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、一方の本体の外表面
と、他方の本体の外表面に、それぞれ第1の絶縁体と、第2の絶縁体を備えるため、作業
者が触れ易い部分に充電露出部が形成されない。
【0016】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、接続部は、一方及び他方の挟持部にそれ
ぞれ設けられる一対の挟持部磁石と、一方の本体の内表面と、他方の本体の内表面にそれ
ぞれ設けられる一対の本体磁石であり、一対の挟持部磁石は、複数の凸段のうち、最も外
径が小さい最小径凸段と、複数の凹段のうち、最も内径が小さい最小径凹段で囲まれる最
小底面に、それぞれ配置されることを特徴とする。
このような構成の発明において、一対の挟持部磁石は、互いに吸着または所望の際に分
離可能な磁石であって、導電性の有無は問われない。また、最小底面とは、他方の本体の
両表面のうち、一方の本体と、他方の本体を接続した際に、一方の本体と対向する側の表
面と同一面上の領域である。
【0017】
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、一方の本体と、他方
の本体が、一対の挟持部磁石を介して接続又は分離される。
また、一対の挟持部磁石が、最小径凸段と、最小底面にそれぞれ配置されるため、一方
の挟持部が他方の挟持部に嵌合する場合に、最小径凸段と、最小底面とが吸着し合う。こ
れにより、一方の挟持部と他方の挟持部から圧着部が外れることが防止される。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、一方の本体と、他方の本体とを重ね合わせて接続
した場合に、一方の本体と、他方の本体との間に形成される収容空間に収容されるヒュー
ズと、このヒューズが備える両側端子とそれぞれ導通する一対の導通部を備え、一方の本
体は、絶縁性を有する第3の絶縁体で形成され、他方の本体は、第1の導電体の代わりに
、絶縁性を有する第4の絶縁体で形成され、一方の挟持部は、一方の本体のうちの第1の
縁部に加えて、一方の本体の中央について、第1の縁部と対称的に位置する第3の縁部に
設けられ、他方の挟持部は、他方の本体のうちの第2の縁部に加えて、他方の本体の中央
について、第2の縁部と対称的に位置する第4の縁部に設けられ、一対の導通部は、第2
及び第4の縁部に設けられる他方の挟持部が備える第2の導電体とそれぞれ導通すること
を特徴とする。
【0019】
このような構成の発明において、一方の本体と、他方の本体は、2組の一対の挟持部磁
石を介して接続される。
また、第1の縁部に設けられる一方の挟持部と、第2の縁部に設けられる他方の挟持部
によって1個目の圧着部が挟持される。さらに、第3の縁部に設けられる一方の挟持部と
、第4の縁部に設けられる他方の挟持部によって2個目の圧着部が挟持される。
上記構成の発明においては、第4の発明の作用に加えて、一方の本体は、絶縁性を有す
る第3の絶縁体で形成され、他方の本体は、絶縁性を有する第4の絶縁体で形成され、か
つ、ヒューズが備える両側端子とそれぞれ導通する一対の導通部は、第2及び第4の縁部
に設けられる他方の挟持部が備える第2の導電体とそれぞれ導通するため、上記の1個目
の圧着部と、2個目の圧着部は、ヒューズを介して導通する。
【0020】
第6の発明は、第1又は第2の発明において、一方の挟持部と、他方の挟持部が、圧着
部を挟持する場合に、一方の挟持部と、他方の挟持部を分離不能に、一方の本体と、他方
の本体の周囲に装着されるカバーを備えることを特徴とする。
このような構成の発明において、カバーは、例えば、一方の本体と、他方の本体を挿通
可能な筒体が考えられる。また、カバーは、絶縁性を有することが望ましく、伸縮性を有
していてもよい。
【0021】
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、カバーが、一方の挟
持部と、他方の挟持部を分離不能とするため、一方の挟持部と、他方の挟持部によって挟
持される圧着部が、一層外れ難い状態で保持される。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、圧着端子の圧着部が、一方の挟持部と、他方の挟持部によって挟
持されるため、圧着部を挟持可能である。加えて、圧着部の中央に形成されている孔部に
、複数の凸段のうち、最も外径が小さい凸段や、2番目に外径が小さい凸段が挿通される
ことから、一旦挟持された圧着部が、意図せず外れることを防止できる。
したがって、電気工事中の感電や電源等の短絡・地絡の発生を防止でき、安全性を向上
させることができる。
また、第1の発明によれば、一方の挟持部と、他方の挟持部によって、簡単に圧着部を
挟持できるため、作業性を向上させることができるとともに、作業者の熟練度に関わらず
、使用方法を間違える可能性が極めて低いので、適切に第1の発明を使用できる。
【0023】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、二種類のサイズの圧着部が、一方の
挟持部と、他方の挟持部によって挟持されるため、使い勝手が良好である。加えて、圧着
部のサイズ毎に、クリップを準備しなくてよいので、作業者の煩雑さを軽減できるととも
に、経済性が良好である。
【0024】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、作業者が触れ易い部分に充
電露出部が形成されないので、作業者の安全性を確保することができる。
【0025】
第4の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、一方の本体と、他方の本体
が、一対の挟持部磁石を介して接続または分離されることから、圧着端子を、容易に一方
の挟持部と、他方の挟持部の間に挿入または取り出しが可能である。
また、一対の挟持部磁石が、最小径凸段と、最小底面にそれぞれ配置され、一方の挟持
部と他方の挟持部から圧着部が外れることが防止されることから、電気工事中の安全性を
一層向上させることができる。
【0026】
第5の発明によれば、第4の発明の効果に加えて、合計2個の圧着部は、ヒューズを介
して導通することから、2個の圧着部間の過電流を即座に遮断することができる。すなわ
ち、第5の発明自体が、ヒューズホルダーとして機能する。
【0027】
第6の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、カバーにより、一方の挟持
部と、他方の挟持部によって挟持される圧着部が、一層外れ難い状態で保持されるため、
養生の際の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)は実施例に係る圧着端子用クリップを構成する一方の本体を、その内表面からみた場合の平面図であり、(b)は同圧着端子用クリップを構成する他方の本体を、その内表面からみた場合の平面図である。
【
図2】(a)は実施例に係る圧着端子用クリップを構成する一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、(b)は同一方及び他方の挟持部を開いた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図である。
【
図3】(a)乃至(c)は、それぞれ実施例に係る圧着端子用クリップが、大径端子を挟持する状態を説明するための説明図であり、(a)は一方の挟持部を、一方の本体の内表面からみた場合の拡大図であり、(b)は他方の挟持部を、他方の本体の内表面からみた場合の拡大図であり、(c)は一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向拡大矢視図である。
【
図4】(a)乃至(c)は、それぞれ実施例に係る圧着端子用クリップが、小径端子を挟持する状態を説明するための説明図であり、(a)は一方の挟持部を、一方の本体の内表面からみた場合の拡大図であり、(b)は他方の挟持部を、他方の本体の内表面からみた場合の拡大図であり、(c)は一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向拡大矢視図である。
【
図5】(a)は実施例の第1の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する一方の挟持部を、一方の本体の内表面からみた場合の平面図であり、(b)は(a)におけるB-B線矢視断面図であり、(c)は同圧着端子用クリップを構成する他方の挟持部を、他方の本体の内表面からみた場合の平面図であり、(d)は(c)におけるC-C線矢視断面図である。
【
図6】(a)は実施例の第2の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、(b)は同一方及び他方の挟持部を開いた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図である。
【
図7】(a)は実施例の第3の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、(b)は同一方及び他方の挟持部を開いた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図である。
【
図8】(a)は実施例の第4の変形例に係る圧着端子用クリップを構成するカバーの、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、(b)及び(c)はそれぞれ実施例の第5の変形例に係る圧着端子用クリップを構成するカバーの、
図1(b)におけるA方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0029】
本発明の実施の形態に係る圧着端子用クリップについて、
図1乃至
図8を用いて詳細に
説明する。
図1(a)は実施例に係る圧着端子用クリップを構成する一方の本体を、その
内表面からみた場合の平面図であり、
図1(b)は同圧着端子用クリップを構成する他方
の本体を、その内表面からみた場合の平面図である。
図2(a)は実施例に係る圧着端子
用クリップを構成する一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向
矢視図であり、
図2(b)は同一方及び他方の挟持部を開いた場合の、
図1(b)におけ
るA方向矢視図である。
まず、圧着端子について、
図3(b)及び
図4(b)を用いて説明する。
図3(b)に示すように、圧着端子50Aは、環状をなす圧着部51Aと、この圧着部
51Aにそれぞれ連なる柄部52Aを備える。
また、
図4(b)に示すように、圧着端子50Bは、環状をなす圧着部51Bと、この
圧着部51Bにそれぞれ連なる柄部52Bを備える。
これらのうち、圧着部51A,51Bは、それぞれの中央に孔部51a,51bが形成
されている。そして、圧着部51Aの外径D
51A及び内径d
51Aは、圧着部51Bの
D
51B及び内径d
51Bよりもそれぞれ大きい。よって、これ以降、圧着端子50Aを
大径端子50Aといい、圧着端子50Bを小径端子50Bという。
【0030】
次に、
図1及び
図2に示すように、圧着端子用クリップ1は、一方の本体2と、他方の
本体3と、一方の本体2と、他方の本体3とを重ね合わせて接続可能な接続部4と、圧着
部51A,51Bを挟持する一方の挟持部5と、他方の挟持部6と、を備える。
このうち、一方の本体2と、他方の本体3は、いずれも第1の導電体で形成される。た
だし、他方の本体3には、他方の挟持部6が設けられない箇所に、リード線を取り付ける
リード線取付部7がねじ留めによって設けられるが、一方の本体2には設けられないため
、この一方の本体2は、絶縁体で形成されてもよい。
【0031】
また、一方の本体2は、第1の縁部2aと、一方の本体2の長手方向Yに関する中央に
ついて、第1の縁部2aと対称的に位置する第3の縁部2bと、第3の縁部2bにそれぞ
れ直交する側縁部2c,2dと、内表面2eと、外表面2fと、で囲まれる略長方形状を
なす板状体である。なお、Xは長手方向Yに直交する短手方向を表し、Zは長手方向Y及
び短手方向Xにそれぞれ直交する高さ方向を表す。
【0032】
さらに、一方の本体2は、接続部4から第3の縁部2bまでの部分が、接続部4から第
1の縁部2aまでの部分に対して屈曲し、把持部2gを形成している。
他方の本体3は、第1の縁部2aに対向する第2の縁部3aと、他方の本体3の長手方
向Yに関する中央について、第2の縁部3aと対称的に位置する第4の縁部3bと、第4
の縁部3bにそれぞれ直交する側縁部3c,3dと、内表面3eと、外表面3fと、で囲
まれる略長方形状をなす板状体である。
ここで、内表面2e,3eとは、一方の本体2と、他方の本体3を、接続部4を介して
接続した際に、対向する側の表面をいう。また、外表面2f,3fとは、一方の本体2と
、他方の本体3を接続した際に、内表面2e,3eとは反対側の、対向しない側の表面を
いう。
【0033】
接続部4は、一方の本体2に固着される突出体4aと、他方の本体3に固着される突出
体4bと、突出体4aと、突出体4b同士を貫通する傾動軸4c(
図2参照)と、この傾
動軸4cの周囲に取り付けられるねじりばね(図示せず)からなる。
また、突出体4aは、一方の本体2の側縁部2c,2dの外方において、一方の本体2
の内表面2eから離れる方向へ突出する略箱状体である。そして、突出体4bは他方の本
体3の側縁部3c,3dの外方において、他方の本体3の内表面3eから離れる方向へ突
出する略箱状体である。そして、突出体4a,4bは、例えば、それぞれ硬質樹脂で形成
されて、一方の本体2の外表面2fと、他方の本体3の外表面3fに接着されている。
【0034】
一方、傾動軸4cと、ねじりばねは、それぞれ金属製である。このうち、ねじりばねは
、傾動軸4cを中心として、第1の縁部2aが第2の縁部3aに接近する方向の傾動を付
勢する。
したがって、作業者が把持部2gを他方の本体3へ近づける方向へ押し下げると、第1
の縁部2aが第2の縁部3aから遠ざかり、大径端子50Aと、小径端子50Bを、一方
の挟持部5と、他方の挟持部6の間に差し込むことができる。差し込んだ後、作業者が、
把持部2gから指を離すと、大径端子50A等が、一方の挟持部5と、他方の挟持部6に
よって挟持された状態が維持される。
【0035】
一方の挟持部5と、他方の挟持部6は、それぞれ一方の本体2の内表面2eと、他方の
本体3の内表面3eに接着されている。このうち、一方の挟持部5は、一方の本体2のう
ち、第1の縁部2aに設けられる複数の凸段5Aである。また、他方の挟持部6は、他方
の本体3のうち、第2の縁部3aに設けられ、複数の凸段5Aが嵌合可能な複数の凹段6
Aである。
図1(a)に示すように、複数の凸段5Aは、その外径が、一方の挟持部5の外周、す
なわち第1の縁部2a、から一方の挟持部5の中心O
5へ向かう凸段半径方向に沿って、
段階的に小さくなる同心円状に形成される。
より詳細には、複数の凸段5Aは、その外径が、凸段半径方向に沿って、段階的に小さ
くなる順に設けられる、第1の凸段5aと、第2の凸段5bと、第3の凸段5cである。
なお、複数の凸段5Aの材料は、硬質の材料であればよく、特に種類は限定されず、また
導電性の有無も問われない。
【0036】
また、
図1(b)に示すように、複数の凹段6Aは、その内径が、他方の挟持部6の外
周、すなわち第2の縁部3a、から他方の挟持部6の中心O
6へ向かう凹段半径方向に沿
って、段階的に小さくなる同心円状に形成される。
より詳細には、複数の凹段6Aは、その内径が、凹段半径方向に沿って、段階的に小さ
くなる順に設けられる、第1の凹段6aと、第2の凹段6bと、第3の凹段6cである。
なお、一方の挟持部5を他方の挟持部6に嵌合したときに、他方の挟持部6の中心O
6
の位置は、一方の挟持部5の中心O
5の位置と一致する。よって、複数の凸段5Aにおけ
る凸段半径方向は、複数の凹段6Aにおける凹段半径方向と一致する。
【0037】
次に、複数の凹段6Aのうち、第2の凹段6bは、他方の本体3を構成する第1の導電
体と導通する第2の導電体である。この第2の凹段6bの材料は、導電性を有する硬質の
材料であればよく、特に種類は限定されない。なお、第1の凹段6aと、第3の凹段6c
の材料は、第2の凹段6bの材料と同一であってもよい。
ただし、第1の凹段6aと、第3の凹段6cの材料は、硬質の材料であればよく、特に
種類は限定されず、また導電性の有無も問われない。これは、大径端子50Aの圧着部5
1Aと、小径端子50Bの圧着部51Bは、それぞれ第2の凹段6bに接触することで、
他方の本体3と導通状態になるためである。
さらに、複数の凹段6Aは、第1の凹段6aと、第2の凹段6bと、第3の凹段6cの
すべてに亘って、大径端子50Aの柄部52Aと、小径端子50Bの柄部52Bを収容す
る切り欠き部8が形成される。また、この切り欠き部8の底面8aは、他方の本体3の内
表面3eである。
【0038】
さらに、
図2(a)に示すように、第1の凸段5aの外径と、第1の凹段6aの内径は
同等の大きさであり、第2の凸段5bの外径は、第1の凹段6aの内径よりも小さい。さ
らに、第3の凸段5cの外径は、第2の凹段6bの内径よりも小さいが、第3の凹段6c
の内径と同等の大きさを有する。
そして、一方の挟持部5においては、複数の凸段5Aは、一方の本体2の内表面2eか
らの高さが、凸段半径方向に沿って、段階的に高くなる階段状に形成される。
また、他方の挟持部6においては、複数の凹段6Aは、他方の本体3の内表面3eから
の高さが、凹段半径方向に沿って、段階的に低くなる階段状に形成される。
より詳細には、第1の凸段5a乃至第3の凸段5cの各厚みは、それぞれ同等である。
また、第1の凹段6aの厚みは、第2の凹段6bの2倍であり、さらに、第3の凹段6c
の厚みと、第1の凸段5aの厚みのそれぞれ4倍である。
【0039】
次に、圧着端子用クリップが、大径端子を挟持する状態を、
図3を用いて説明する。図
3(a)乃至
図3(c)は、それぞれ実施例に係る圧着端子用クリップが、大径端子を挟
持する状態を説明するための説明図であり、
図3(a)は一方の挟持部を、一方の本体の
内表面からみた場合の拡大図であり、
図3(b)は他方の挟持部を、他方の本体の内表面
からみた場合の拡大図であり、
図3(c)は一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、
図1
(b)におけるA方向拡大矢視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素について
は、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
図3(a)に示すように、大径端子50Aの圧着部51Aは、複数の凸段5Aのうち、
第1の凸段5aに一致して配置される。
さらに、
図3(b)に示すように、圧着部51Aは、複数の凹段6Aのうち、第2の凹
段6bに一致して配置される。ここで、圧着部51Aの外径D
51Aは、第1の凸段5a
の外径と同等であり、第1の凹段6aの内径とも同等である。また、圧着部51Aの内径
d
51Aは、第2の凸段5bの外径と同等であり、第2の凹段6bの内径とも同等である
。
したがって、
図3(c)に示すように、圧着部51Aは、第1の凸段5aと、第2の凸
段5bと、第1の凹段6aと、第2の凹段6bと、で囲まれる環状の大径空間S
1に収容
される。
【0041】
さらに、圧着端子用クリップが、小径端子を挟持する状態を、
図4を用いて説明する。
図4(a)乃至
図4(c)は、それぞれ実施例に係る圧着端子用クリップが、小径端子を
挟持する状態を説明するための説明図であり、
図4(a)は一方の挟持部を、一方の本体
の内表面からみた場合の拡大図であり、
図4(b)は他方の挟持部を、他方の本体の内表
面からみた場合の拡大図であり、
図4(c)は一方及び他方の挟持部を閉じた場合の、図
1(b)におけるA方向拡大矢視図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素につい
ては、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4(a)に示すように、小径端子50Bの圧着部51Bは、複数の凸段5Aのうち、
第2の凸段5bに一致して配置される。
さらに、
図4(b)に示すように、圧着部51Bは、複数の凹段6Aのうち、第3の凹
段6cに一致して配置される。ここで、圧着部51Bの外径D
51Bは、第2の凸段5b
の外径と同等であり、第2の凹段6bの内径とも同等である。また、圧着部51Bの内径
d
51Bは、第3の凸段5cの外径と同等である。
したがって、
図4(c)に示すように、圧着部51Bは、第2の凸段5bと、第3の凸
段5cと、第2の凹段6bと、第3の凹段6cと、で囲まれる環状の小径空間S
2に収容
される。
【0042】
上記構成を有する圧着端子用クリップ1においては、複数の凹段6Aのうち、第2の凹
段6bは、他方の本体3を構成する第1の導電体と導通する第2の導電体であるから、大
径空間S1に収容された大径端子50Aの圧着部51Aが、第2の凹段6bと接触するこ
とで、他方の本体3と導通する。
また、小径空間S2に収容された小径端子50Bの圧着部51Bが、第2の凹段6bと
接触することで、他方の本体3と導通する。
さらに、他方の本体3にはリード線取付部7が設けられているため、このリード線取付
部7に取り付けられるリード線(図示せず)と、大径端子50A、または小径端子50B
がこのリード線と導通可能となる。
【0043】
以上説明したように、圧着端子用クリップ1によれば、第1の凸段5a乃至第3の凸段
5cと、第1の凹段6a乃至第3の凹段6cが設けられるために、二種類のサイズの圧着
部51Aと、圧着部51Bを、一方の挟持部5と、他方の挟持部6によって挟持可能であ
り、使い勝手が良好である。
加えて、圧着部51A,51Bのサイズ毎に、クリップの準備や使い分けをする必要が
ないので、作業者の煩雑さを軽減できるとともに、経済性も良好である。
【0044】
さらに、圧着端子用クリップ1によれば、圧着部51Aの中央に形成されている孔部5
1aに、複数の凸段5Aのうち、2番目に外径が小さい第2の凸段5bが挿通され、また
、圧着部51Bの中央に形成されている孔部51bに、複数の凸段5Aのうち、最も外径
が小さい第3の凸段5cが挿通されることから、一旦挟持された圧着部51A,51Bが
、意図せず外れることを防止できる。
したがって、電気工事中の感電や電源等の短絡・地絡の発生を防止でき、安全性を向上
させることができる。
また、圧着端子用クリップ1によれば、一方の挟持部5と、他方の挟持部6によって、
簡単に圧着部51A,51Bを挟持できるため、作業性を向上させることが可能であると
ともに、作業者の熟練度に関わらず、使用方法を間違える可能性が極めて低いので、適切
に圧着端子用クリップ1を使用することが可能である。
【0045】
次に、実施例の第1の変形例に係る圧着端子用クリップについて、
図5を用いて説明す
る。
図5(a)は実施例の第1の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する一方の挟持
部を、一方の本体の内表面からみた場合の平面図であり、
図5(b)は
図5(a)におけ
るB-B線矢視断面図であり、
図5(c)は同圧着端子用クリップを構成する他方の挟持
部を、他方の本体の内表面からみた場合の平面図であり、
図5(d)は
図5(c)におけ
るC-C線矢視断面図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5に
おいても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、実施例の第1の変形例に係る圧着端子用クリ
ップ1Aは、実施例に係る圧着端子用クリップ1を構成する一方の本体2と、他方の本体
3の代わりに、それぞれ一方の本体9と、他方の本体10を備える。また、圧着端子用ク
リップ1Aは、圧着端子用クリップ1と同様に、一方の挟持部5と、他方の挟持部6も備
える。
【0046】
一方の本体9は、その第1の縁部9aと、第3の縁部9bと、側縁部9c,9dと、外
表面9fに、絶縁性を有する第1の絶縁体11を備える。この第1の絶縁体11として、
例えば、変形が可能な樹脂が用いられる。
第1の絶縁体11は、実施例における一方の本体2よりも細長形状の一方の本体2Aに
固定される。なお、これ以外の一方の本体2Aの構成は、実施例に係る一方の本体2の構
成と同様である。
また、第1の絶縁体11の固定方法は、接着剤による接着や、一方の本体2Aに対する
第1の絶縁体11の嵌合である。
【0047】
図5(c)及び
図5(d)に示すように、他方の本体10は、その第1の縁部10aと
、側縁部10c,10dと、外表面10fに、絶縁性を有する第2の絶縁体12を備える
。この第2の絶縁体12として、例えば、第1の絶縁体11と同様の変形が可能な樹脂が
用いられる。
第2の絶縁体12は、実施例における他方の本体3よりも細長形状の他方の本体3Aに
固定される。一方の本体2Aの場合と同様に、これ以外の他方の本体3Aの構成は、実施
例に係る他方の本体3の構成と同様である。
さらに、他方の本体3Aへの第2の絶縁体12の固定方法も、一方の本体2Aへの第1
の絶縁体11の固定方法と同様である。
【0048】
加えて、他方の本体10は、第1の凹段6aのうち、第1の縁部10a寄りの一部と、
切り欠き部8の底面8aと、複数の凹段6Aのうち、最も内径が小さい最小径凹段である
第3の凹段6cで囲まれる最小底面6sにも、第2の絶縁体12を備える。ここで、最小
底面6sは、他方の本体3Aの内表面3eと同一面上の領域である。
【0049】
以上説明したように、圧着端子用クリップ1Aは、一方の本体9の外表面9f等と、他
方の本体10の外表面10f等に、それぞれ第1の絶縁体11と、第2の絶縁体12を備
えるため、作業者が触れ易い部分に充電露出部が形成されない。
特に、圧着端子用クリップ1Aは、第1の凹段6aの一部や、切り欠き部8の底面8a
等にも第2の絶縁体12を備えるため、作業者が頻繁に触れ易い部分に、絶縁性を付与す
ることができる。したがって、作業者に対する安全性を確保することができる。これ以外
の圧着端子用クリップ1Aの作用及び効果は、実施例に係る圧着端子用クリップ1の作用
及び効果と同様である。
【0050】
続いて、実施例の第2の変形例に係る圧着端子用クリップについて、
図6を用いて説明
する。
図6(a)は実施例の第2の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する一方及び
他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、(b)は同一方
及び他方の挟持部を開いた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図である。なお、
図1
乃至
図5で示した構成要素については、
図6においても同一の符号を付して、その説明を
省略する。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、実施例の第2の変形例に係る圧着端子用クリ
ップ1Bは、実施例に係る圧着端子用クリップ1を構成する一方の本体2と、他方の本体
3と、接続部4の代わりに、それぞれ一方の本体13と、他方の本体14と、接続部15
を備える。また、圧着端子用クリップ1Bは、圧着端子用クリップ1と同様に、一方の挟
持部5と、他方の挟持部6も備える。
【0051】
一方の本体13は、第1の導電体からなり、略長方形状をなす一様な板状体である。た
だし、一方の本体13は、実施例に係る一方の本体2が備える屈曲した把持部2g(
図1
参照)は形成されない。これ以外の一方の本体13の構成は、一方の本体2の構成と同様
である。
他方の本体14も、第1の導電体からなる略長方形状をなす一様な板状体であって、実
施例に係る他方の本体3と同様な構成を有する。
【0052】
接続部15は、一方の挟持部5と、他方の挟持部6にそれぞれ設けられる挟持部磁石1
6a,16bと、一方の本体13の内表面13eと、他方の本体14の内表面14eにそ
れぞれ設けられる本体磁石17a,17bである。
挟持部磁石16a,16bは、互いに吸着または所望の際に分離可能な磁石であって、
導電性の有無は問われない。本体磁石17a,17bについても、同様である。
【0053】
挟持部磁石16a,16bは、複数の凸段5Aのうち、最も外径が小さい最小径凸段で
ある第3の凸段5cの先端面と、複数の凹段6Aのうち、最も内径が小さい最小径凹段で
ある第3の凹段6cに囲まれる最小底面6sに、それぞれ配置される。
詳細には、挟持部磁石16aは、固定脚(図示せず)を備え、この固定脚を第3の凸段
5cの先端面に打ち込むことによって、第3の凸段5cに固定される。
また、挟持部磁石16bも、固定脚(図示せず)を備え、この固定脚を最小底面6sに
形成された埋設孔mに打ち込むことによって、最小底面6sに埋設される。
【0054】
本体磁石17a,17bも、固定脚(図示せず)を備え、この固定脚をそれぞれ一方の
本体13の内表面13eと、他方の本体14の内表面14eに形成された埋設孔mに打ち
込むことによって、内表面13eと、内表面14eに固定される。
【0055】
以上説明したように、圧着端子用クリップ1Bは、一方の本体13と、他方の本体14
が、挟持部磁石16a,16bと、本体磁石17a,17bを介して接続又は分離される
。
また、挟持部磁石16a,16bが、第3の凸段5cと、最小底面6sにそれぞれ配置
されるため、一方の挟持部5が他方の挟持部6に嵌合する場合に、第3の凸段5cと、最
小底面6sとが吸着し合う。これにより、一方の挟持部5と他方の挟持部6から圧着部5
1A,圧着部51B(
図3,4参照)が外れることが防止される。したがって、電気工事
中の安全性を一層向上させることができる。
【0056】
一方で、挟持部磁石16a,16bと、本体磁石17a,17bは、一方の本体13と
、他方の本体14を把持しながらこれらが分かれるように引っ張ることで、簡単に分離す
る。
したがって、圧着端子用クリップ1Bによれば、圧着部51Aと、圧着部51Bを、容
易に一方の挟持部5と、他方の挟持部6の間に挿入または取り出しが可能である。これ以
外の圧着端子用クリップ1Bの作用及び効果は、実施例に係る圧着端子用クリップ1の作
用及び効果と同様である。
【0057】
さらに、実施例の第3の変形例に係る圧着端子用クリップについて、
図7を用いて説明
する。
図7(a)は実施例の第3の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する一方及び
他方の挟持部を閉じた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、
図7(b)は同
一方及び他方の挟持部を開いた場合の、
図1(b)におけるA方向矢視図である。なお、
図1乃至
図6で示した構成要素については、
図7においても同一の符号を付して、その説
明を省略する。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、実施例の第3の変形例に係る圧着端子用クリ
ップ1Cは、実施例の第2の変形例に係る圧着端子用クリップ1Bが備える一方の本体1
3と、他方の本体14の代わりに、一方の本体18と、他方の本体19を備える。また、
圧着端子用クリップ1Cは、2組の挟持部磁石16a,16bと、一方の挟持部5,5と
、一対の他方の挟持部6,6を備える。
【0058】
さらに、圧着端子用クリップ1Cは、2組の挟持部磁石16a,16bを介して、一方
の本体18と、他方の本体19とを重ね合わせて接続した場合に、一方の本体18と、他
方の本体19との間に形成される収容空間Sに収容されるヒューズホルダー20と、この
ヒューズホルダー20によって保持されるヒューズHが備える両側端子h1,h2とそれ
ぞれ導通する導通部21a,21bを備える。なお、ヒューズHとしては、例えば、一般
的なガラス管ヒューズが用いられる。
【0059】
一方の本体18及び他方の本体19は、いずれも、圧着端子用クリップ1Bを構成する
一方の本体13及び他方の本体14と同様に、略長方形状をなす一様な板状体である。
ただし、一方の本体18及び他方の本体19は、本体磁石17a,17b(
図6参照)
を備えていない。また、他方の本体19は、リード線取付部7(
図2参照)も備えていな
い。
また、一方の本体18は、一方の本体13が形成される第1の導電体の代わりに、絶縁
性を有する第3の絶縁体で形成される。他方の本体19は、他方の本体14が形成される
第1の導電体の代わりに、絶縁性を有する第4の絶縁体で形成される。
【0060】
さらに、一方の挟持部5は、一方の本体18のうちの第1の縁部18aに加えて、一方
の本体18の長手方向Yに関する中央について、第1の縁部18aと対称的に位置する第
3の縁部18bに設けられる。
他方の本体19は、他方の本体19のうちの第2の縁部19aに加えて、他方の本体1
9の長手方向Yに関する中央について、第2の縁部19aと対称的に位置する第4の縁部
19bに設けられる。
よって、第1の縁部18aに設けられる一方の挟持部5と、第2の縁部19aに設けら
れる他方の挟持部6によって、1個目の圧着部51Aまたは1個目の圧着部51Bが挟持
される。さらに、第3の縁部18bに設けられる一方の挟持部5と、第4の縁部19bに
設けられる他方の挟持部6によって、2個目の圧着部51Aまたは2個目の圧着部51B
が挟持される。
【0061】
ヒューズホルダー20は、一対の略C字形状をなす金属製の保持部20a,20aと、
この保持部20a,20aを、他方の本体19に固定する固定脚20b,20bを備える
。
また、導通部21a,21bは、線状部22a,22bと、線状部22a,22bと導
通する接合部23a,23bからなる。このうち、線状部22a,22bは、具体的には
、リード線である。さらに、接合部23a,23bは、具体的には、ハンダ付け部分であ
って、第2の縁部19aと、第4の縁部19bに設けられる他方の挟持部6,6が備える
第2の凹段6b,6bとそれぞれ導通する。
したがって、導通部21a,21bは、他方の挟持部6,6が備える第2の凹段6b,
6bとそれぞれ導通する。
【0062】
以上説明したように、圧着端子用クリップ1Cにおいて、一方の本体18は第3の絶縁
体で形成され、他方の本体19は、第4の絶縁体で形成され、かつ、ヒューズHが備える
両側端子h1,h2とそれぞれ導通する導通部21a,21bは、他方の挟持部6,6が
備える第2の凹段6b,6bとそれぞれ導通する。そのため、上記の1個目の圧着部51
Aと、2個目の圧着部51Aは、ヒューズHを介して導通する。また、1個目の圧着部5
1Bと、2個目の圧着部51Bも、これ以外の圧着端子用クリップ1Cの作用及び効果は
、実施例に係る圧着端子用クリップ1の作用及び効果と同様である。
【0063】
そして、実施例の第4及び第5の変形例に係る圧着端子用クリップについて、
図8を用
いて説明する。
図8(a)は実施例の第4の変形例に係る圧着端子用クリップを構成する
カバーの、
図1(b)におけるA方向矢視図であり、
図8(b)及び
図8(c)はそれぞ
れ実施例の第5の変形例に係る圧着端子用クリップを構成するカバーの、
図1(b)にお
けるA方向矢視図である。なお、
図1乃至
図7で示した構成要素については、
図8におい
ても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図8(a)に示すように、実施例の第4の変形例に係る圧着端子用クリップ1Dは、実
施例に係る圧着端子用クリップ1に、カバー24が装着されたものである。
カバー24は、一方の挟持部5と、他方の挟持部6が、圧着部51A,51Bを挟持す
る場合に、一方の挟持部5と、他方の挟持部6を分離不能に、一方の本体2と、他方の本
体3の周囲に装着される。
【0064】
また、カバー24は、伸縮性を有しない硬質樹脂製の筒状体であって、内部24aが形
成される。よって、一方の挟持部5と、他方の挟持部6が、例えば、圧着部51Aを挟持
する前に、予めカバー24の内部24aに大径端子50Aを挿通しておく。そして、圧着
部51Aを挟持した後、カバー24を一方の挟持部5等の位置にスライドさせると、一方
の本体2等と、一方の挟持部5等が内部24aに挿通されて、一方の挟持部5と、他方の
挟持部6が分離不能となる。
【0065】
次に、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、実施例の第5の変形例に係る圧着端子
用クリップ1Eは、実施例の第2の変形例に係る圧着端子用クリップ1Bに、カバー25
が装着されたものである。
図8(b)に示すように、カバー25は、一方の挟持部5と、他方の挟持部6が、圧着
部51A,51Bを挟持する場合に、一方の挟持部5と、他方の挟持部6を分離不能に、
一方の本体13と、他方の本体14の周囲に装着される。このカバー25も、筒状体であ
って、内部25aが形成される。ただし、カバー25は、伸縮性を有する軟質樹脂製であ
る。
よって、
図8(c)に示すように、カバー25は、一方の本体13を他方の本体14か
ら遠ざけると伸長する。よって、一方の挟持部5と、他方の挟持部6の間に、圧着部51
A,51Bを差し込んだり、取り出したりする場合に、カバー25の内部25aに、一方
の本体13と、他方の本体14挿通したままで、一方の挟持部5と、他方の挟持部6を分
離させることができる。
【0066】
以上説明したように、圧着端子用クリップ1D,1Eによれば、カバー24,25が設
けられることにより、一方の挟持部5と、他方の挟持部6によって挟持される圧着部51
A,51Bが、一層外れ難い状態で保持されるため、養生の際の安定性を高めることがで
きる。
これ以外の圧着端子用クリップ1D,1Eの作用及び効果は、実施例に係る圧着端子用
クリップ1の作用及び効果と同様である。
【0067】
なお、本発明に係る圧着端子用クリップは、実施例に示すものに限定されない。例えば
、圧着端子用クリップ1~1Eは、環状の圧着部51A,51B以外にも、C字状をなす
圧着部を挟持可能である。
また、圧着端子用クリップ1~1Eにおいて、他方の挟持部6が備える第3の凹段6c
は、省略されてもよい。この場合でも、小径空間S2は形成されるからである。
さらに、一方の挟持部5が備える複数の凸段5Aの段数が4段であり、かつ他方の挟持
部6が備える第1の凹段6aの段数が3段または4段であってもよい。この場合、大、中
、小の三種類の直径を有する圧着部が挟持される。