(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106020
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】照明装置及びプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240731BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240731BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240731BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20240731BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 E
H04N5/74 A
H04N9/31 500
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010064
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮 広明
【テーマコード(参考)】
2H149
2K203
5C058
5C060
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AA21
2H149AB01
2H149BA04
2H149DA02
2H149DA12
2H149EA02
2H149FA44Y
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA54
2K203FA62
2K203FB03
2K203GA36
2K203HA42
2K203MA01
5C058AB03
5C058BA29
5C058BA35
5C058EA02
5C058EA14
5C058EA26
5C058EA51
5C060HD00
5C060HD07
5C060JB06
(57)【要約】
【課題】出射される光において一種類の直線偏光の光が占める割合を高めることができる照明装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】照明装置は、第1波長帯域の第1色光と、第1波長帯域よりも波長が長い第2波長帯域の第2色光と、第2波長帯域よりも波長が長い第3波長帯域の第3色光とを含む光を出射する光源装置と、光源装置から出射された光のうち第1偏光の光を、第1偏光とは異なる第2偏光の光に変換する偏光変換素子と、を備え、偏光変換素子は、光源装置から出射された光を第1偏光の光と第2偏光の光とに分離する偏光分離部と、偏光分離部によって分離された第1偏光の光を第2偏光の光に変換する位相差板と、を有し、光源装置から出射される第1色光のうち80%以上の光は、第2偏光の光であり、位相差板の偏光回転効率が最も高い波長は、第2色光のピーク波長よりも長く、第3色光のピーク波長よりも短い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯域の第1色光と、前記第1波長帯域よりも波長が長い第2波長帯域の第2色光と、前記第2波長帯域よりも波長が長い第3波長帯域の第3色光とを含む光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射された光のうち第1偏光の光を、前記第1偏光とは異なる第2偏光の光に変換する偏光変換素子と、を備え、
前記偏光変換素子は、
前記光源装置から出射された光を前記第1偏光の光と前記第2偏光の光とに分離する偏光分離部と、
前記偏光分離部によって分離された前記第1偏光の光を前記第2偏光の光に変換する位相差板と、を有し、
前記光源装置から出射される前記第1色光のうち80%以上の光は、前記第2偏光の光であり、
前記位相差板の偏光回転効率が最も高い波長は、前記第2色光のピーク波長よりも長く、前記第3色光のピーク波長よりも短い、ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記第1色光は、青色光であり、
前記第2色光は、緑色光であり、
前記第3色光は、赤色光である、ことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の照明装置において、
前記光源装置は、
前記第2偏光の前記第1色光を出射する発光素子と、
前記発光素子から出射された前記第1色光により励起され、前記第1偏光の前記第2色光と、前記第2偏光の前記第2色光と、前記第1偏光の前記第3色光と、前記第2偏光の前記第3色光とを出射する波長変換素子と、を備え、
前記第1色光のピーク波長は、455nmであり、
前記第2色光のピーク波長は、550nmであり、
前記第3色光のピーク波長は、610nmである、ことを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置において、
前記位相差板の偏光変換効率が最も高い波長は、560nm以上、600nm以下である、ことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の照明装置において、
前記位相差板は、水晶板を有する水晶位相差板である、ことを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の照明装置において、
前記水晶板は、
遅相軸を有する第1水晶板と、
光入射側から見て前記第1水晶板の遅相軸に対して直交する遅相軸を有する第2水晶板と、を含み、
前記位相差板の光軸における前記第1水晶板の厚さと前記第2水晶板の厚さとの差は、31μm以上、33μm以下である、ことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の照明装置と、
前記照明装置から出射された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置にて変調された光を投射する投射光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射された光を変調して画像情報に応じた画像光を形成し、形成した画像光を投射するプロジェクターが知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のプロジェクターは、白色光源と、白色光源から出射された光の偏光方向を揃える偏光変換素子と、偏光変換素子から出射された偏光光を変調する液晶パネルと、変調された光を投射する投射レンズと、を備える。
偏光変換素子は、誘電体膜、全反射膜及び位相差フィルムを有する。誘電体膜は、白色光源から出射された光のうち、p偏光の光を透過し、s偏光の光を反射する。全反射膜は、誘電体膜にて反射されたs偏光の光を反射して、誘電体膜を透過したp偏光の光と平行に出射する。位相差フィルムは、全反射膜から入射するs偏光の光をp偏光の光に変換して出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、位相差フィルムは、偏光回転効率が最も高いピーク波長を有し、入射する光の波長がピーク波長から離れるに従って偏光回転効率が低くなる。
このため、特許文献1に記載の偏光変換素子において、位相差フィルムのピーク波長が緑色光の波長帯域に設定されている場合、s偏光の緑色光をp偏光の緑色光に効率よく変換できるものの、s偏光の赤色光及び青色光をp偏光の赤色光及び青色光に効率よく変換することができない。このため、液晶パネルの光入射側に設けられる偏光板によって、赤色光及び青色光が遮蔽されやすくなり、画像の輝度を高めづらいという問題がある。
近年、投射画像の高輝度化の要望から、光源の高輝度化が進んでいるが、上記のように、赤色光及び青色光が遮蔽されやすいことから、投射画像の高輝度化を充分に図ることが難しいという問題がある。
これらのことから、出射される光において一種類の直線偏光の光が占める割合を高めることができる構成が要望されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る照明装置は、第1波長帯域の第1色光と、前記第1波長帯域よりも波長が長い第2波長帯域の第2色光と、前記第2波長帯域よりも波長が長い第3波長帯域の第3色光とを含む光を出射する光源装置と、前記光源装置から出射された光のうち第1偏光の光を、前記第1偏光とは異なる第2偏光の光に変換する偏光変換素子と、を備え、前記偏光変換素子は、前記光源装置から出射された光を前記第1偏光の光と前記第2偏光の光とに分離する偏光分離部と、前記偏光分離部によって分離された前記第1偏光の光を前記第2偏光の光に変換する位相差板と、を有し、前記光源装置から出射される前記第1色光のうち80%以上の光は、前記第2偏光の光であり、前記位相差板の偏光回転効率が最も高い波長は、前記第2色光のピーク波長よりも長く、前記第3色光のピーク波長よりも短い。
【0006】
本開示の第2態様に係るプロジェクターは、上記第1態様に係る照明装置と、前記照明装置から出射された光を変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光を投射する投射光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るプロジェクターの構成を示す模式図。
【
図2】一実施形態に係る光源装置の構成を示す模式図。
【
図3】一実施形態に係る偏光変換素子を示す断面図。
【
図4】一実施形態に係る位相差板の構成を示す模式図。
【
図5】一実施形態に係る青色光におけるs偏光の割合が50%である照明光を偏光変換素子に入射させた場合の位相差板のピーク波長毎の偏光変換素子の偏光変換効率を示すグラフ。
【
図6】一実施形態に係る青色光におけるs偏光の割合が80%である照明光を偏光変換素子に入射させた場合の位相差板のピーク波長毎の偏光変換素子の偏光変換効率を示すグラフ。
【
図7】一実施形態に係る青色光におけるs偏光の割合が90%である照明光を偏光変換素子に入射させた場合の位相差板のピーク波長毎の偏光変換素子の偏光変換効率を示すグラフ。
【
図8】一実施形態に係る偏光変換素子から出射される各色光の光量変化率と、偏光変換素子からの出射光の明るさの変化率とを位相差板のピーク波長ごとに示すグラフ。
【
図9】一実施形態に係る位相差板のピーク波長と2枚の水晶板の厚み差との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[プロジェクターの概略構成]
図1は、本実施形態に係るプロジェクター1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、光源装置4から出射された光を変調して画像情報に応じた画像光を形成し、形成した画像光を被投射面に拡大投射する。
プロジェクター1は、
図1に示すように、外装筐体2と、外装筐体2に収容される画像投射装置3と、を備える。この他、図示を省略するが、プロジェクター1は、プロジェクター1の動作を制御する制御装置、プロジェクター1を構成する電子部品に電力を供給する電源装置、及び、プロジェクター1を構成する冷却対象を冷却する冷却装置を備える。
【0009】
[画像投射装置の構成]
画像投射装置3は、制御装置から入力する画像情報に応じた画像光を形成し、形成された画像光を投射する。画像投射装置3は、光源装置4、均一化光学系5、色分離光学系31、リレー光学系32、画像形成装置33、光学部品用筐体34及び投射光学装置35を備える。
以下の説明では、互いに直交する三方向を+X方向、+Y方向及び+Z方向とする。+Z方向を、+Y方向から見て光源装置4が照明光を出射する方向とし、+X方向を、+Y方向から見て投射光学装置35が画像光を出射する方向とする。図示を省略するが、+X方向とは反対方向を-X方向とし、+Y方向とは反対方向を-Y方向とし、+Z方向とは反対方向を-Z方向とする。更に、+X方向と平行な軸をX軸とし、+Y方向と平行な軸をY軸とし、+Z方向と平行な軸をZ軸とする。
【0010】
[光源装置の構成]
図2は、光源装置4の構成を示す模式図である。
光源装置4は、均一化光学系5とともに照明装置LEを構成する。光源装置4は、照明光を均一化光学系5に出射する。光源装置4は、
図2に示すように、光源41、拡散透過部42、光分離部43、第1集光素子44、波長変換素子45、第2集光素子46、拡散反射素子47及び筐体48を備える。
【0011】
光源装置4には、X軸に沿う光軸Ax1と、光軸Ax1に直交してZ軸に沿う光軸Ax2とが設定されている。光源装置4の光学部品は、光軸Ax1又は光軸Ax2上に配置されている。
具体的に、光源41、拡散透過部42、光分離部43、第2集光素子46及び拡散反射素子47は、光軸Ax1上に配置されている。
波長変換素子45、第1集光素子44及び光分離部43は、光軸Ax2上に配置されている。すなわち、光分離部43は、光軸Ax1と光軸Ax2との交差部に配置される。
光軸Ax2は、均一化光学系5の後述する第1レンズアレイ51の位置にて、画像投射装置3の光軸Axと繋がる。
【0012】
[光源の構成]
光源41は、-X方向に光を出射する。光源41は、少なくとも1つの発光素子411と、基板412と、を備える。
発光素子411は、青色光BLを出射する。青色光は、波長変換素子45が含有する蛍光体を励起させる励起光である。発光素子411は、ピーク波長が455nmのレーザー光を出射する半導体レーザーであり、発光素子411が出射する青色光BLは、s偏光の青色光BLsである。なお、s偏光の光は、光分離部43と後述する偏光変換素子6の偏光分離部63にて反射される直線偏光の光であり、p偏光の光は、光分離部43及び偏光分離部63を透過する直線偏光の光である。
基板412は、発光素子411を支持した状態にて筐体48に固定される。基板412は、例えば金属によって構成され、発光素子411から伝達される熱を、筐体48の外部に放熱する。
【0013】
[拡散透過部の構成]
拡散透過部42は、光源41から入射する青色光BLsを拡散させて、照度分布を均一化した光を出射する。拡散透過部42から出射された青色光BLsは、光分離部43に入射する。拡散透過部42は、ホログラムを有する構成、複数の小レンズが光軸直交面に配列された構成、及び、光が通過する面が粗面である構成を例示できる。
なお、拡散透過部42に代えて、一対のマルチレンズアレイを有するホモジナイザー光学素子を光源装置4に採用してもよい。一方、拡散透過部42が採用される場合には、ホモジナイザー光学素子が採用される場合に比べて、光源41から光分離部43までの距離を短くできる。
【0014】
[光分離部の構成]
光分離部43は、光源41から拡散透過部42を介して入射する青色光BLsのうち、一部の青色光BLsを通過させ、他の青色光BLsを反射するハーフミラーの機能を有する。すなわち、光分離部43は、拡散透過部42から入射する青色光BLsのうち、一部の青色光BLsである第1部分光を-Z方向に反射して第1集光素子44に入射させ、他の青色光BLsである第2部分光を-X方向に透過させて第2集光素子46に入射させる。
光分離部43は、波長変換素子45から+Z方向に入射する蛍光YLを通過させ、拡散反射素子47から+X方向に入射する青色光BLを反射するダイクロイックミラーの機能を有する。
本実施形態では、波長変換素子45における光の吸収を考慮して、光分離部43は、第1部分光の光量を、第2部分光の光量よりも小さくしている。しかしながら、これに限らず、第1部分光の光量と第2部分光の光量との割合は調節可能であり、第1部分光の光量と第2部分光の光量とは同じでもよく、第2部分光の光量は第1部分光の光量よりも大きくてもよい。
【0015】
[第1集光素子の構成]
第1集光素子44は、光分離部43にて反射された第2部分光を波長変換素子45に集光する。また、第1集光素子44は、波長変換素子45から入射する光を平行化する。
本実施形態では、第1集光素子44は、2つのレンズ441,442を有するが、第1集光素子44を構成するレンズの数は、2に限定されない。
【0016】
[波長変換素子の構成]
波長変換素子45は、入射する光の波長を変換した変換光を、光の入射方向とは反対方向に拡散させて出射する反射型の波長変換素子である。詳述すると、波長変換素子45は、励起光である青色光BLが入射されることによって励起される蛍光体を含有し、入射された青色光BLよりも波長が長い蛍光YLを反射しつつ拡散させて、第1集光素子44に向けて出射する。波長変換素子45から出射される光は、例えば500~700nmの範囲にピーク波長を有する蛍光YLであり、蛍光YLは、緑色光及び赤色光を含む。すなわち、波長変換素子45は、光源41から出射された第1色光を、第1色光の波長よりも長い波長を有する第2色光及び第3色光に変換する。
【0017】
波長変換素子45は、基板451、波長変換層452及び反射層453を有する。
基板451は、金属によって形成された支持体であり、波長変換層452及び反射層453を支持する。基板451は、筐体48に固定される。
波長変換層452は、第1集光素子44から入射される青色光BLの波長を変換した非偏光の蛍光YLを拡散して出射する蛍光体を含む蛍光体層である。
反射層453は、波長変換層452に対して青色光BLの入射側とは反対側に位置し、波長変換層452から入射する蛍光YLを反射する。
波長変換素子45から出射された蛍光YLは、光軸Ax2に沿って第1集光素子44を通過した後、光分離部43に入射する。光分離部43に入射した蛍光YLは、光分離部43を光軸Ax2に沿って通過し、光源装置4の外部に出射される。
【0018】
[第2集光素子の構成]
第2集光素子46は、光分離部43から入射する第2部分光を拡散反射素子47に集光する。第2集光素子46は、拡散反射素子47から入射する青色光を平行化する。
本実施形態では、第2集光素子46は、第1集光素子44と同様に、2つのレンズ461,462を有するが、第2集光素子46を構成するレンズの数は、2に限定されない。
【0019】
[拡散反射素子の構成]
拡散反射素子47は、筐体48に固定される基板471と、基板471に設けられる拡散反射層472と、を有する。
拡散反射層472は、波長変換素子45から出射される蛍光YLの拡散角と略同じ拡散角、もしくは、蛍光YLの拡散角よりも少し小さい拡散角で、第2集光素子46から入射される青色光BLを反射して拡散させる。すなわち、拡散反射層472は、入射する光の波長を変換せずに、入射する光を反射して拡散させる。
拡散反射層472にて+X方向に反射された青色光BLは、第2集光素子46を通過した後、光分離部43にて+Z方向に反射され、蛍光YLとともに光源装置4の外部に出射される。
【0020】
[筐体の構成]
筐体48は、光源41、拡散透過部42、光分離部43、第1集光素子44、波長変換素子45、第2集光素子46及び拡散反射素子47を収容する。本実施形態では、筐体48は、内部に塵埃が侵入しにくい密閉筐体である。しかしながら、これに限らず、筐体48は、上記した光学部品を収容できればよい。
【0021】
以上のように、光源装置4の外部に出射される照明光WLは、青色光BLと、緑色光及び赤色光を含む蛍光YLとが混在した白色光である。青色光BLは、第1波長帯域の第1色光に相当し、緑色光は、第1波長帯域よりも波長が長い第2波長帯域の第2色光に相当し、赤色光は、第2波長帯域よりも波長が長い第3波長帯域の第3色光に相当する。青色光BLのピーク波長は455nmであり、緑色光のピーク波長は550nmであり、赤色光のピーク波長は610nmである。それぞれの色光のピーク波長は、必ずしも上記に限定されず、上記付近の波長がピーク波長であってもよい。
なお、光源41がs偏光を出射することから、光源装置4から出射される青色光におけるs偏光の割合は、p偏光の割合よりも高い。一方、光源装置4から出射される蛍光YLは、非偏光の蛍光であるため、蛍光YLに含まれる緑色光及び赤色光におけるs偏光の割合とp偏光の割合とは略同じである。
【0022】
[均一化光学系の構成]
図1に示す均一化光学系5は、光源装置4とともに照明装置LEを構成する。均一化光学系5は、光源装置4から+Z方向に出射された照明光の照度及び偏光状態を略均一化して出射する。均一化光学系5から出射された照明光は、色分離光学系31及びリレー光学系32を経て、後述する光変調素子333の変調領域を照明する。
均一化光学系5は、第1レンズアレイ51、第2レンズアレイ52、偏光変換素子6及び重畳レンズ53を備える。
【0023】
第1レンズアレイ51は、図示を省略するが、入射する照明光を複数の部分光束に分割する複数の第1レンズを有する。
第2レンズアレイ52は、複数の第1レンズ511に対応する複数の第2レンズ521を有し、各第1レンズから入射する部分光束を偏光変換素子6に入射させる。なお、複数の第2レンズ521については、後述する
図3にて図示する。
【0024】
偏光変換素子6は、第2レンズアレイ52から入射する光の偏光方向を揃える。具体的に、偏光変換素子6は、光源装置4から出射されて各レンズアレイ51,52を介して入射する光のうち、第1偏光の光を、第1偏光とは異なる第2偏光の光に変換することによって、偏光方向を揃えた光を出射する。本実施形態では、偏光変換素子6は、入射する光のうち、p偏光の光をs偏光の光に変換する。偏光変換素子6の構成は、後に詳述する。
重畳レンズ53は、第2レンズアレイ52とともに、偏光変換素子6から入射する光を、画像形成装置33の後述する各光変調素子333に重畳する。
【0025】
[色分離光学系の構成]
色分離光学系31は、均一化光学系5から入射する光を赤色光、緑色光及び青色光に分離する。色分離光学系31は、ダイクロイックミラー311,312と、反射ミラー313と、を備える。
ダイクロイックミラー311は、+Z方向に入射する光を青色光と、緑色光及び赤色光とに分離する。具体的に、ダイクロイックミラー311は、入射する光のうち、青色光を+X方向に反射し、緑色光及び赤色光を+Z方向に透過する。
ダイクロイックミラー312は、ダイクロイックミラー311から+Z方向に入射する光を緑色光と赤色光とに分離する。具体的に、ダイクロイックミラー312は、入射する緑色光及び赤色光のうち、緑色光を+X方向に反射し、赤色光を+Z方向に透過する。
反射ミラー313は、ダイクロイックミラー311によって分離された青色光を+Z方向に反射する。
【0026】
[リレー光学系の構成]
リレー光学系32は、他の色光の光路よりも長い赤色光の光路に設けられ、赤色光の損失を抑制する。リレー光学系32は、入射側レンズ321、リレーレンズ323、反射ミラー322,324を備える。本実施形態では、リレー光学系32に赤色光を導くこととした。しかしながら、これに限らず、例えば他の色光より光路が長い色光を青色光とし、青色光をリレー光学系32に導く構成としてもよい。
【0027】
[画像形成装置の構成]
画像形成装置33は、入射する赤、緑及び青の各色光を変調し、変調された各色光を合成して、画像光を形成する。画像形成装置33は、入射する色光に応じて設けられる3つのフィールドレンズ331と、3つの入射側偏光板332と、3つの光変調素子333と、3つの視野角補償板334、3つの出射側偏光板335と、1つの色合成光学系336と、を有する。
【0028】
光変調素子333は、光源装置4から出射された光を、制御装置から入力する画像信号に基づいて変調する。具体的に、光変調素子333は、入射側偏光板332から入射する色光を、制御装置から入力する画像信号に応じて変調し、変調された色光を出射する。3つの光変調素子333は、赤色光用の光変調素子333R、緑色光用の光変調素子333G、及び、青色光用の光変調素子333Bを含む。
本実施形態では、光変調素子333には、光入射面と光出射面とが異なる透過型の液晶パネルが採用されている。光変調素子333と、入射側偏光板332及び出射側偏光板335とにより、光変調装置LMが構成される。光変調装置LMは、液晶ライトバルブであり、照明装置LEから出射された光を変調する。
【0029】
色合成光学系336は、光変調素子333B,333G,333Rによって変調された3つの色光を合成して、画像光を形成する。色合成光学系336によって形成された画像光は、投射光学装置35に入射する。本実施形態では、色合成光学系336は、略直方体状のクロスダイクロイックプリズムによって構成されているが、複数のダイクロイックミラーによって構成されていてもよい。
【0030】
光学部品用筐体34は、上記した均一化光学系5、色分離光学系31、リレー光学系32及び画像形成装置33を収容する。画像投射装置3には、設計上の光軸Axが設定されており、光学部品用筐体34は、光軸Axにおける所定位置に均一化光学系5、色分離光学系31、リレー光学系32及び画像形成装置33を保持する。光源装置4及び投射光学装置35は、光軸Axにおける所定位置に配置される。
投射光学装置35は、画像形成装置33から入射する画像光をスクリーン等の被投射面に投射する。投射光学装置35は、例えば、図示しない複数のレンズと、複数のレンズを収容する鏡筒と、を備える組レンズとすることができる。
【0031】
[偏光変換素子の構成]
図3は、XZ平面に沿う偏光変換素子6の断面を示す図である。
図3においては、偏光変換素子6を通過する光のうち、s偏光の光路を、黒丸を付した実線によって示し、p偏光の光路を、直交線を付した実線によって示している。
偏光変換素子6は、
図3に示すように、入射光束を2種類の直線偏光に分離して出射する偏光分離素子アレイ61と、複数の位相差板65と、複数の遮光板66と、を有する。
【0032】
[偏光分離素子アレイの構成]
偏光分離素子アレイ61は、複数の基材62、複数の偏光分離部63及び複数の反射部64を有する。偏光分離素子アレイ61は、+X方向における中央を通り、かつ、+Y方向に沿う中心線CLを中心として線対称に構成されている。中心線CLは、光軸Axと交差する。
【0033】
複数の基材62のそれぞれは、白板ガラス等の透光性材料により形成された柱状体であり、X軸に沿って並んで配列されている。複数の基材62には、XZ平面に沿う断面が直角二等辺三角形の基材621と、XZ平面に沿う断面が平行四辺形の基材622と、が含まれ、これらが組み合わされて、全体として板状の偏光分離素子アレイ61が形成されている。各基材62の間には、偏光分離部63及び反射部64が配置されている。
【0034】
複数の偏光分離部63のそれぞれと、複数の反射部64のそれぞれとは、Y軸に長い矩形状に形成されている。複数の偏光分離部63は、偏光分離部631~636を含み、複数の反射部64は、反射部641~646を含む。
偏光分離部631,633,635と反射部641,643,645とは、中心線CLから+X方向に向かって交互に配置されている。偏光分離部632,634,636と反射部642,644,646とは、中心線CLから-X方向に向かって交互に配置されている。各偏光分離部63及び各反射部64は、光軸Axに対して略45°傾斜している。
【0035】
各偏光分離部63は、誘電体多層膜により構成され、レンズアレイ51,52を介して光源装置4から入射する光をp偏光の光とs偏光の光とに分離する。具体的に、各偏光分離部63は、+Z方向に入射する光のうち、p偏光の光を+Z方向に透過させ、s偏光の光を反射する。
各反射部64は、反射部64と隣り合う1つの偏光分離部63と組で機能する。すなわち、1つの反射部64は、1つの偏光分離部63と1対1にて対応し、偏光分離部63に対向して配置されている。反射部64は、組となる偏光分離部63にて反射されたs偏光を、偏光分離部63を透過したp偏光の進行方向に沿うように、+Z方向に反射させる。反射部64は、誘電体多層膜によって形成された反射膜により構成されている。
このような偏光分離素子アレイ61を光出射側から見て、偏光分離部63に対応する部分からp偏光の光が出射され、反射部64に対応する部分からs偏光の光が出射される。
【0036】
[位相差板の構成]
複数の位相差板65のそれぞれは、偏光分離素子アレイ61から出射される2種類の直線偏光のうち、一方の直線偏光の光路上に配置された1/2波長板である。複数の位相差板65のそれぞれは、入射する一方の直線偏光の偏光方向を90°回転させて他方の直線偏光の偏光方向と同一にする。
複数の位相差板65は、位相差板651~656を含む。位相差板656,654,652,651,653,655は、+Z方向から見て偏光分離部636,634,632,631,633,635と重なる位置に配置されている。すなわち、各位相差板65は、偏光分離部63を透過したp偏光の光路に配置され、入射するp偏光の光をs偏光の光に変換する。
【0037】
図4は、位相差板65の構成を示す模式図である。
位相差板65は、
図4に示すように、第1水晶板65A及び第2水晶板65Bを有する水晶位相差板である。
第1水晶板65A及び第2水晶板65Bは、位相差板65の光軸に沿って互いに重ね合わせて配置される。各水晶板65A,65Bには、進相軸及び遅相軸を含む光学軸が設定されている。第1水晶板65Aの遅相軸SA1と、第2水晶板65Bの遅相軸SA2とは、位相差板65に対する光入射側から見て互いに略直交する。第1水晶板65Aの遅相軸SA1と、第2水晶板65Bの遅相軸SA2とは、各水晶板65A,65Bにおける入射面の法線に対して直交している。
【0038】
なお、位相差板65は、1枚の水晶板によって構成することも可能である。しかしながら、1枚の水晶板によって位相差板65を構成する場合、位相差板65を光が通過する方向における水晶板の厚みは、非常に薄いものとなり、そのような水晶板を作成することは困難である。このため、本実施形態に係る位相差板65は、2つの水晶板65A,65Bを重ねて構成している。
【0039】
図3に示す複数の遮光板66のそれぞれは、偏光分離素子アレイ61に対する光入射側に設けられている。すなわち、複数の遮光板66は、第2レンズアレイ52と偏光分離素子アレイ61との間に配置されている。詳述すると、複数の遮光板66のそれぞれは、光入射側から偏光変換素子6を見て、反射部64を覆う位置に設けられている。
複数の遮光板66のそれぞれは、偏光分離部63を介さずに、第2レンズアレイ52から反射部64に入射する光を遮蔽する。
【0040】
[偏光変換素子の偏光変換効率]
水晶位相差板である位相差板65は、p偏光とs偏光とのうち一方の直線偏光の光から他方の直線偏光の光に偏光方向を回転する効率である偏光回転効率が最も高くなるピーク波長を有する。位相差板65のピーク波長と同じ波長を有する色光が位相差板65に入射した場合には、一方の直線偏光から他方の直線偏光に効率よく変換できる。一方、位相差板65に入射する色光の波長が位相差板65のピーク波長から離れるに従って、位相差板65による直線偏光の回転効率が低下する。
以下、位相差板65のピーク波長を、位相差板ピーク波長とし、青色光のピーク波長を青ピーク波長とし、緑色光のピーク波長を緑ピーク波長とし、赤色光のピーク波長を赤ピーク波長とする。
【0041】
例えば、偏光変換素子6に入射する照明光WLの青色光におけるs偏光の割合が50%であり、p偏光の割合が50%である場合を想定する。なお、波長が430nm以上、490nm以下の第1波長帯域の色光を青色光とし、波長が490nmを超え、550nm以下の第2波長帯域の色光を緑色光とし、550nmを超え、770nm以下の第3波長帯域の色光を赤色光とする。
なお、上記のように、青ピーク波長は455nmであり、緑ピーク波長は550nmであり、赤ピーク波長は610nmである。
【0042】
図5は、偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が50%である場合の位相差板65のピーク波長毎の偏光変換素子6の偏光変換効率を示すグラフである。なお、照明光WLに含まれる緑色光及び赤色光におけるs偏光の割合は50%である。
図5に実線にて示すように、位相差板ピーク波長が520nmである場合には、緑色光に対する位相差板65の偏光回転効率が高いことから、位相差板65に入射するp偏光の緑色光をs偏光の緑色光に効率よく変換できる。このため、偏光変換素子6から出射される緑色光は、ほぼs偏光の緑色光となる。
しかしながら、青色光及び赤色光のそれぞれのピーク波長は位相差板ピーク波長から離れているため、青色光及び赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率は低い。このため、位相差板65に入射するp偏光の青色光をs偏光の青色光に効率よく変換できず、位相差板65に入射するp偏光の赤色光をs偏光の赤色光に効率よく変換できない。このことから、偏光変換素子6から出射される青色光及び赤色光には、p偏光の青色光及び赤色光が多く含まれることとなる。
このように、偏光変換素子6から出射される光に、p偏光の光が多く含まれていると、入射側偏光板332によって遮蔽される光の光量が多くなり、光変調素子333に入射する光の光量が低下し、ひいては、投射画像の輝度が低下する。
【0043】
このような傾向は、
図5に細かい点線にて示すように、位相差板ピーク波長が540nmである場合も同様である。そして、位相差板ピーク波長が長くなるに従って、青色光の偏光回転効率が低下するものの、緑色光及び赤色光の偏光回転効率は高くなる。
【0044】
一方、位相差板ピーク波長が560nmである場合には、緑色光に対する位相差板65の偏光回転効率が高く、赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率も比較的高い。このため、
図5に一点鎖線にて示すように、例えば緑ピーク波長である550nmでは、偏光変換素子6の偏光変換効率は略100%であり、赤ピーク波長である610nmでは、偏光変換素子6の偏光変換効率は略99%である。このように、偏光変換素子6に入射する照明光に含まれるp偏光の緑色光及び赤色光を、s偏光の緑色光及び赤色光に効率よく変換できる。
しかしながら、位相差板ピーク波長が560nm未満である場合に比べて、位相差板ピーク波長と青ピーク波長である455nmとの差が更に大きくなるため、青色光に対する位相差板65の偏光回転効率は更に低くなり、偏光変換素子6の青色光の偏光変換効率は、更に低くなる。
このため、位相差板ピーク波長が560nmである場合には、偏光変換素子6から出射される緑色光及び赤色光は、ほぼs偏光であるのに対し、偏光変換素子6から出射される青色光には、p偏光の青色光が多く含まれることとなる。
このような傾向は、
図5に粗い点線にて示すように、位相差板ピーク波長が580nmである場合も同様であり、
図5に二点鎖線にて示すように、位相差板ピーク波長が600nmである場合も同様である。
【0045】
図6は、偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が80%である場合の位相差板65のピーク波長毎の偏光変換素子6の偏光変換効率を示すグラフである。なお、偏光変換素子6に入射する照明光WLに含まれる緑色光におけるs偏光の割合は50%であり、赤色光におけるs偏光の割合は50%である。波長470nmにおいて偏光変換効率が低下するのは、青色光におけるs偏光の割合がp偏光の割合よりも高いことに起因する。
これに対し、偏光変換素子6に入射する照明光WLの青色光におけるs偏光の割合が80%であり、p偏光の割合が20%である場合を想定する。
図6に実線にて示すように、位相差板ピーク波長が520nmである場合には、
図5に実線にて示した場合と同様に、緑色光に対する位相差板65の偏光回転効率が高いことから、位相差板65に入射するp偏光の緑色光をs偏光の緑色光に効率よく変換できる。また、位相差板65に入射するp偏光の青色光の光量は少ないことから、偏光変換素子6から出射される青色光においてs偏光の割合を
図5に示した場合に比べて高くできる。
【0046】
しかしながら、赤ピーク波長が位相差板ピーク波長から離れており、赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率は低い。このため、位相差板65に入射するp偏光の赤色光を効率よくs偏光の赤色光に変換できず、偏光変換素子6から出射される赤色光には、p偏光の赤色光が多く含まれることとなる。
このような傾向は、
図6に細かい点線にて示すように、位相差板ピーク波長が540nmである場合も同様である。そして、
図5に示した場合と同様に、位相差板ピーク波長が長くなるに従って、青色光の偏光回転効率が低下するものの、緑色光及び赤色光の偏光回転効率は高くなる。
【0047】
一方、
図6に一点鎖線にて示すように、位相差板ピーク波長が560nmである場合には、
図5に示した一点鎖線と同様に、緑色光の偏光変換効率が高く、赤色光の偏光変換効率も比較的高い。このため、位相差板65に入射するp偏光の緑色光及び赤色光をs偏光の緑色光及び赤色光に効率よく変換できる。
一方、偏光変換素子6に入射する青色光におけるp偏光の割合は、
図5に示した場合に比べて低いことから、青色光に対する位相差板65の偏光回転効率が低くても、偏光変換素子6による青色光の偏光変換効率を高くすることができる。
このため、位相差板ピーク波長が560nmである場合には、偏光変換素子6から出射される緑色光及び赤色光は、ほぼs偏光であり、偏光変換素子6から出射される青色光におけるs偏光の青色光の割合も、
図5に示した場合に比べて高くなる。
このような傾向は、
図6に粗い点線にて示すように、位相差板ピーク波長が580nmである場合も同様であり、
図6に二点鎖線にて示すように、位相差板ピーク波長が600nmである場合も同様である。
【0048】
図7は、偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が90%である場合の位相差板65のピーク波長毎の偏光変換素子6の偏光変換効率を示すグラフである。なお、偏光変換素子6に入射する照明光WLに含まれる緑色光におけるs偏光の割合は50%であり、赤色光におけるs偏光の割合は50%である。波長470nmにおいて偏光変換効率が低下するのは、青色光におけるs偏光の割合がp偏光の割合よりも高いことに起因する。
図5及び
図6にて説明した偏光変換素子6の偏光変換効率は、青色光におけるs偏光の割合が90%である照明光WLを偏光変換素子6に入射させた場合に、より改善される。
例えば、
図7に実線にて示すように、位相差板ピーク波長が520nmである場合には、
図5及び
図6に実線にて示した場合と同様に、緑色光に対する位相差板65の偏光回転効率が高いことから、位相差板65は、p偏光の緑色光をs偏光の緑色光に効率よく変換できる。また、位相差板65に入射するp偏光の青色光の光量はより少なくなることから、偏光変換素子6から出射される青色光においてs偏光の割合を
図6に示した場合に比べて更に高くできる。
しかしながら、赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率は低いため、偏光変換素子6から出射される赤色光には、p偏光の赤色光が多く含まれる。
このような傾向は、
図7に細かい点線にて示すように、位相差板ピーク波長が540nmである場合も同様である。そして、
図6に示した場合と同様に、位相差板ピーク波長が長くなるに従って、青色光の偏光回転効率が低下するものの、緑色光及び赤色光の偏光回転効率は高くなる。
【0049】
一方、
図7に一点鎖線にて示すように、位相差板ピーク波長が560nmである場合には、
図5及び
図6に示した一点鎖線と同様に、緑色光及び赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率は高いため、偏光変換素子6に入射する照明光のうち、p偏光の緑色光をs偏光の緑色光に効率よく変換でき、p偏光の赤色光をs偏光の赤色光に効率よく変換できる。
更に、
図6に示した場合に比べて、偏光変換素子6に入射する青色光におけるp偏光の割合が更に低いことから、青色光に対する位相差板65の偏光回転効率が低くても、位相差板65に入射するp偏光の青色光の光量は更に少ないので、照明光WLに含まれる青色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率を高くすることができる。
このため、位相差板ピーク波長が560nmである場合には、偏光変換素子6から出射される青色光、緑色光及び赤色光を、ほぼs偏光の青色光、緑色光及び赤色光とすることができる。
図7に粗い点線又は二点鎖線にて示すように、位相差板ピーク波長が580nm又は600nmである場合も、位相差板ピーク波長が560nmである場合と同様である。
【0050】
本件発明者は、位相差板65のピーク波長が580nmである偏光変換素子6を用いて、照明光WLに含まれる各色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率を測定した。
偏光変換効率の測定結果では、偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、緑色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率は100%であり、赤色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率は100%であった。
【0051】
一方、偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が60%であり、青色光におけるp偏光の割合が40%である場合には、青色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率は91%であった。
偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が70%であり、青色光におけるp偏光の割合が30%である場合には、青色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率は93%であった。
偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が80%であり、青色光におけるp偏光の割合が20%である場合には、青色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率は96%であった。
偏光変換素子6に入射する照明光WLのうち、青色光におけるs偏光の割合が90%であり、青色光におけるp偏光の割合が10%である場合には、青色光に対する偏光変換素子6の偏光変換効率は98%であった。
【0052】
これらのことから、位相差板ピーク波長が緑ピーク波長よりも長い560nm以上で、赤ピーク波長よりも短い600nm以下であり、青色光におけるs偏光の比率が80%以上である照明光WLが偏光変換素子6に入射する場合に、偏光変換素子6から出射される青色光、緑色光及び赤色光を、ほぼs偏光の青色光、緑色光及び赤色光にすることができる。
なお、上記のように、照明光WLに含まれる青色光におけるs偏光の割合が50%を超えていれば、位相差板65に入射するp偏光の青色光の光量を
図5に示した場合よりも少なくできる。このため、位相差板ピーク波長が560nm以上、600nm以下である場合に、照明光WLに含まれる青色光において、s偏光の青色光の割合が50%を超え、p偏光の青色光の割合が50%未満であることにより、偏光変換素子6から出射される青色光におけるs偏光の割合を、
図5に示した場合に比べて高くすることができる。
【0053】
[色光の光量変化率]
次に、偏光変換素子6から出射される色光の光量変化、及び、偏光変換素子6からの出射光の明るさ変化について説明する。
上記のように、偏光変換素子6には、発光素子411に由来する青色光BLと、非偏光の蛍光YLに含まれる緑色光及び赤色光とが入射する。
ここで、偏光変換素子6から出射される青色光、緑色光及び赤色光のそれぞれの光量と、偏光変換素子6の出射光の明るさとは、位相差板ピーク波長に応じて変化する。なお、偏光変換素子6からの出射光の明るさは、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの光量に比視感度を乗算して得た値を合計したものである。
【0054】
図8は、偏光変換素子6から出射される色光の光量変化率、及び、偏光変換素子6からの出射光の明るさ変化率と、位相差板ピーク波長との関係を示すグラフである。なお、
図8では、位相差板ピーク波長が520nmである偏光変換素子6から出射される各色光の光量を100%とし、偏光変換素子6の出射光の明るさを100%としたときの各色光の光量変化率及び明るさ変化率を示している。
図8に示すように、偏光変換素子6に入射する青色光におけるs偏光の割合が90%である場合、位相差板ピーク波長が520nm以上、620nm以下の範囲において、偏光変換素子6から出射される青色光の光量は、位相差板ピーク波長が長くなるに従って低下する。
偏光変換素子6から出射される緑色光の光量は、位相差板ピーク波長が520nm以上、550nm未満の範囲では、位相差板ピーク波長が長くなるに従って増加し、位相差板ピーク波長が550nm以上、620nm以下の範囲では、位相差板ピーク波長が長くなるに従って低下する。
【0055】
偏光変換素子6から出射される赤色光の光量は、位相差板ピーク波長が520nm以上、620nm以下の範囲において、位相差板ピーク波長が長くなるに従って増加する。
また、偏光変換素子6からの出射光の明るさは、緑色光の光量変化と同様に、位相差板ピーク波長が520nm以上、550nm未満の範囲では、位相差板ピーク波長が長くなるに従って増加し、位相差板ピーク波長が550nm以上、620nm以下の範囲では、位相差板ピーク波長が長くなるに従って低下する。
【0056】
このため、偏光変換素子6からの出射光がほぼs偏光となる範囲である位相差板ピーク波長の560nm以上、600nm以下の範囲において、位相差板ピーク波長が560nmである偏光変換素子6は、出射光の明るさが最も高い特性を有する。また、位相差板ピーク波長が580nmである偏光変換素子6は、各色光の光量バランスがよい特性を有し、位相差板ピーク波長が600nmである偏光変換素子6は、出射光に含まれる赤色光の光量が比較的多い特性を有する。
【0057】
[位相差板のピーク波長設定]
図9は、位相差板ピーク波長と2枚の水晶板65A,65Bの厚み差との関係を示すグラフである。
以上のように、位相差板ピーク波長は、560nm以上、600nm以下であることが好ましい。このような位相差板ピーク波長は、位相差板65の光軸における第1水晶板65Aの厚さと、位相差板65の光軸における第2水晶板65Bの厚さとの差によって位相差板65に設定できる。以下、位相差板65の光軸における第1水晶板65Aの厚さと、位相差板65の光軸における第2水晶板65Bの厚さとの差を、厚み差という。
図9に示すように、厚み差が28μm以上、33μm以下の範囲において、厚み差が大きくなるに従って、位相差板ピーク波長は略520nmから長くなり、厚み差が33μmであると、位相差板ピーク波長は600nmとなる。
このため、水晶板65A,65Bの厚み差を31μm以上、33μm以下とすることによって、位相差板ピーク波長を560nm以上、600nm以下の値とすることができる。例えば、水晶板65A,65Bの厚み差を略30.6μmとすることによって、位相差板ピーク波長を560nmとすることができる。例えば、水晶板65A,65Bの厚み差を略31.8μmとすることによって、位相差板ピーク波長を580nmとすることができる。また、上記のように、水晶板65A,65Bの厚み差を略33μmとすることによって、位相差板ピーク波長を600nmとすることができる。
【0058】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係るプロジェクター1は、以下の効果を奏する。
プロジェクター1は、照明装置LE、光変調装置LM及び投射光学装置35を備える。
光変調装置LMは、照明装置LEから出射された光を変調する。
投射光学装置35は、光変調装置LMにて変調された光を投射する。
【0059】
照明装置LEは、光源装置4及び偏光変換素子6を備える。
光源装置4は、青色光、緑色光及び赤色光を含む光を出射する。青色光は、430nm以上、490nm以下の第1波長帯域の第1色光であり、緑色光は、第1波長帯域よりも波長が長い490nmを超え、550nm以下の第2波長帯域の第2色光であり、赤色光は、第2波長帯域よりも波長が長い550nmを超え、770nm以下の第3波長帯域の第3色光である。
なお、本実施形態では第2波長帯と第3波長帯の境界を550nmとしたが、必ずしも上記に限らず、例えば、590nmを境界としてもよい。この場合、波長が590nmである色光は、緑色光としてもよく、赤色光としてもよい。
【0060】
偏光変換素子6は、光源装置4から出射された光のうちp偏光の光をs偏光の光に変換する。p偏光は第1偏光であり、s偏光は、第1偏光とは異なる第2偏光である。偏光変換素子6は、偏光分離部63及び位相差板65を有する。
偏光分離部63は、光源装置4から出射された光をp偏光の光とs偏光の光とに分離する。位相差板65は、偏光分離部63によって分離されたp偏光の光をs偏光の光に変換する。
光源装置4から出射される青色光のうち80%以上の光は、s偏光の光である。
位相差板65の偏光回転効率が最も高い波長を位相差板ピーク波長とすると、位相差板ピーク波長は、緑色光のピーク波長よりも長く、赤色光のピーク波長よりも短い。
【0061】
ここで、位相差板ピーク波長から、位相差板65に対する入射光のピーク波長が離れるに従って、入射光に対する位相差板65の偏光回転効率が低下する。
このため、上記構成によれば、緑色光及び赤色光のそれぞれのピーク波長は、位相差板ピーク波長に近い。このため、位相差板65によって、p偏光の緑色光及び赤色光をs偏光の緑色光及び赤色光に効率よく変換できる。このことから、偏光変換素子6から出射される緑色光に占めるs偏光の緑色光の割合を高めることができ、偏光変換素子6から出射される赤色光に占めるs偏光の赤色光の割合を高めることができる。
【0062】
一方、青色光のピーク波長は、緑色光のピーク波長よりも位相差板ピーク波長から離れていることから、青色光に対する位相差板65の偏光回転効率が低く、位相差板65によってp偏光の青色光がs偏光の青色光に効率よく変換されない。しかしながら、光源装置4から出射されて偏光変換素子6に入射する青色光のうち80%以上の光がs偏光の青色光である。このことから、位相差板65に入射するp偏光の青色光の光量を低減でき、偏光変換素子6から出射される青色光に占めるs偏光の割合を高めることができる。
従って、照明装置LEからの出射光におけるs偏光の割合を高めることができる。また、照明装置LEを備えるプロジェクター1は、光変調装置LMによる画像形成に利用可能な光の光量を大きくすることができるので、プロジェクター1によって投射される画像の輝度を高めることができる。
【0063】
照明装置LEでは、青色光は、第1色光に相当し、緑色光は、第2色光に相当し、赤色光は、第3色光に相当する。
このような構成によれば、照明装置LEから出射される光は、青色光、緑色光及び赤色光を含むことから、s偏光の光が占める割合が高い白色光を出射できる。
【0064】
照明装置LEでは、光源装置4は、発光素子411及び波長変換素子45を備える。
発光素子411は、s偏光の青色光を出射する。
波長変換素子45は、発光素子411から出射された青色光により励起され、p偏光の緑色光と、s偏光の緑色光と、p偏光の赤色光と、s偏光の赤色光とを出射する。
青色光のピーク波長は、455nmであり、緑色光のピーク波長は、550nmであり、赤色光のピーク波長は、610nmである。
このような構成によれば、光源ランプを備える光源装置に比べて、光源装置4から出射される青色光の偏光状態を制御しやすい。このため、光源装置4から偏光変換素子6に入射する青色光に占めるs偏光の光の割合を調節しやすくすることができる。
また、光源装置に広く用いられる波長変換素子は、ピーク波長が550nmである緑色光と、ピーク波長が610nmである赤色光を出射する。このため、上記したピーク波長を有する各色光を出射する光源装置4を簡易に構成できる。
【0065】
照明装置LEでは、位相差板65の偏光変換効率が最も高い位相差板ピーク波長は、560nm以上、600nm以下である。
このような構成によれば、緑色光に対する位相差板65の偏光回転効率、及び、赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率を高めることができる。このため、照明装置LEから出射される光に占めるs偏光の光の割合を更に高めることができる。
また、位相差板ピーク波長が560nm未満である場合に比べて、赤色光に対する位相差板65の偏光回転効率を高めることができる。更に、位相差板ピーク波長が600nmを超える場合に比べて、青色光及び緑色光に対する位相差板65の偏光回転効率を高めることができる。従って、照明装置LEから出射される光の色バランスを維持できる。
【0066】
照明装置LEでは、位相差板65は、水晶板65A,65Bを有する水晶位相差板である。
水晶位相差板は、位相差フィルムを有する位相差板に比べて耐久性が高く、経年劣化が生じにくい。このため、水晶位相差板である位相差板65を偏光変換素子6に用いることによって、照明装置LEの耐久性を高めることができる。
【0067】
照明装置LEでは、位相差板65が有する水晶板は、遅相軸SA1を有する第1水晶板65Aと、光入射側から見て第1水晶板65Aの遅相軸SA1に対して直交する遅相軸SA2を有する第2水晶板65Bと、を含む。位相差板65の光軸における第1水晶板65Aの厚さと第2水晶板65Bの厚さとの差は、31μm以上、33μm以下である。
ここで、1つの水晶板を有する水晶位相差板の位相差板ピーク波長を、緑色光のピーク波長よりも長く、赤色光のピーク波長よりも短くする場合、水晶板を薄く作成する必要がある。例えば位相差板ピーク波長が560nmの水晶位相差板を製造する場合、1枚の水晶板の厚さを略30.6μmとする必要がある。このため、このような範囲にピーク波長を有する位相差板を製造することが困難である。
これに対し、第1水晶板65Aの厚さと第2水晶板65Bの厚さとの差を上記範囲内の値とすることにより、上記した位相差板ピーク波長を有する位相差板65を構成することができる。従って、位相差板65の製造及び取扱を容易に実施できる。
【0068】
[実施形態の変形]
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形及び改良等は、本開示に含まれるものである。
上記実施形態では、照明装置LEは、光源装置4及び均一化光学系5を備え、均一化光学系5は、第1レンズアレイ51、第2レンズアレイ52、偏光変換素子6及び重畳レンズ53を備えるとした。しかしながら、これに限らず、照明装置LEは、レンズアレイ51,52と重畳レンズ53とのうち、少なくとも1つを備えなくてもよい。
【0069】
上記実施形態では、光源装置4は、発光素子411及び波長変換素子45を備えるとした。しかしながら、これに限らず、光源装置4の構成は、他の構成でもよい。すなわち、光源装置4の構成は、
図2に示した構成に限定されない。例えば、光源装置は、青色光を出射する発光素子、緑色光を出射する発光素子、及び、赤色光を出射する発光素子を備えるものでもよく、光源ランプを備えるものでもよい。
また、発光素子411は、LDに限らず、LED(Light Emitting Diode)でもよい。
また、波長変換素子45は、モーター等の駆動部によって光軸Ax2に沿う回転軸を中心に回転されてもよく、拡散反射素子47は、他の駆動部によって光軸Ax1に沿う回転軸を中心に回転されてもよい。更に、波長変換素子45は、青色光BLの入射方向に沿って蛍光YLを出射する透過型の波長変換素子であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、第1色光は、ピーク波長が455nmである青色光であり、第2色光は、ピーク波長が550nmである緑色光であり、第3色光は、ピーク波長が610nmである赤色光であるとした。しかしながら、これに限らず、第2色光は、第1波長帯域よりも波長が長い第2波長帯域の色光であり、第3色光は、第2波長帯域よりも波長が長い第3波長帯域の色光であればよく、第1色光、第2色光及び第3色光は、必ずしも青色光、緑色光及び赤色光でなくてもよい。
また、青色光のピーク波長は455nmでなくてもよく、緑色光のピーク波長は550nmでなくてもよく、赤色光のピーク波長は610nmでなくてもよい。
【0071】
上記実施形態では、偏光変換素子6に適用される位相差板65のピーク波長は、560nm以上、600nm以下であるとした。しかしながら、これに限らず、光源装置から出射されて偏光変換素子に入射する第2色光のピーク波長よりも長く、光源装置から出射されて偏光変換素子に入射する第3色光のピーク波長よりも短ければ、位相差板のピーク波長は、上記範囲に限定されない。
【0072】
上記実施形態では、位相差板65は、水晶板を有する水晶位相差板であるとした。しかしながら、これに限らず、偏光変換素子6に適用される位相差板は、透光性基板に位相差フィルムが設けられたものでもよく、偏光変換素子6を構成する基材62に設けられる位相差フィルムであってもよい。
また、位相差板65が水晶位相差板である場合、1つの水晶板を有する位相差板であってもよい。
【0073】
上記実施形態では、光源41の発光素子411がs偏光の青色光BLを出射するとした。しかしながら、これに限らず、発光素子411と波長変換素子45との間、詳しくは発光素子411と光分離部43との間に、位相差板を配置し、入射する光の進行方向に平行な軸を中心に位相差板を回転させることによって、位相差板から出射される光におけるs偏光の割合を調節してもよい。
【0074】
上記実施形態では、光源装置4から出射される青色光のうち80%以上の光は、s偏光の光であるとした。しかしながら、これに限らず、光源装置4から出射される青色光の50%がs偏光の青色光であれば、光源装置4から出射される青色光のうち、50%未満の青色光がs偏光の青色光である場合に比べて、照明装置LEから出射される光においてs偏光の光が占める割合を高めることができる。
【0075】
上記実施形態では、p偏光は第1偏光に相当し、s偏光は第2偏光に相当するとした。しかしながら、これに限らず、s偏光を第1偏光とし、p偏光を第2偏光としてもよい。
【0076】
上記実施形態では、プロジェクター1は、3つの光変調素子333R,333G,333Bを備えるとした。しかしながら、これに限らず、2つ以下、あるいは、4つ以上の光変調素子を備えたプロジェクターにも、本開示を適用可能である。
【0077】
上記実施形態では、光変調素子333は、光入射面と光出射面とが異なる透過型の液晶パネルであるとした。しかしながら、これに限らず、プロジェクター1が備える光変調素子333は、光入射面と光出射面とが同一となる反射型の液晶パネルであってもよい。また、入射光束を変調して画像情報に応じた画像を形成可能な光変調装置であれば、マイクロミラーを用いたデバイス、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)等を利用したものなど、液晶以外の光変調装置を用いてもよい。この場合、入射側偏光板332及び出射側偏光板335を省略できる。
【0078】
上記実施形態では、照明装置LEをプロジェクター1に適用した例を挙げた。しかしながら、これに限らず、本開示に係る照明装置は、照明器具及び自動車等のヘッドライト等にも適用可能である。
【0079】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
[付記1]
第1波長帯域の第1色光と、前記第1波長帯域よりも波長が長い第2波長帯域の第2色光と、前記第2波長帯域よりも波長が長い第3波長帯域の第3色光とを含む光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射された光のうち第1偏光の光を、前記第1偏光とは異なる第2偏光の光に変換する偏光変換素子と、を備え、
前記偏光変換素子は、
前記光源装置から出射された光を前記第1偏光の光と前記第2偏光の光とに分離する偏光分離部と、
前記偏光分離部によって分離された前記第1偏光の光を前記第2偏光の光に変換する位相差板と、を有し、
前記光源装置から出射される前記第1色光のうち80%以上の光は、前記第2偏光の光であり、
前記位相差板の偏光回転効率が最も高い波長は、前記第2色光のピーク波長よりも長く、前記第3色光のピーク波長よりも短い、ことを特徴とする照明装置。
【0080】
以下、位相差板の偏光回転効率が最も高い波長を、位相差板ピーク波長という。
ここで、位相差板ピーク波長から、位相差板に対する入射光のピーク波長が離れるに従って、入射光に対する位相差板の偏光回転効率が低下する。
このため、上記構成によれば、第2色光及び第3色光のそれぞれのピーク波長は、位相差板ピーク波長に近い。このため、位相差板によって、第1偏光の第2色光を第2偏光の第2色光に効率よく変換でき、第1偏光の第3色光を第2偏光の第3色光に効率よく変換できる。このことから、偏光変換素子から出射される第2色光に占める第2偏光の第2色光の割合を高めることができ、偏光変換素子から出射される第3色光に占める第2偏光の第3色光の割合を高めることができる。
【0081】
一方、第1色光のピーク波長は、第2色光のピーク波長よりも位相差板ピーク波長から離れていることから、第1色光に対する位相差板の偏光回転効率が低く、位相差板によって第1偏光の第1色光が第2偏光の第1色光に効率よく変換されない。しかしながら、光源装置から偏光変換素子に入射する第1色光のうち80%以上の光が第2偏光の第1色光である。このことから、位相差板に入射する第1偏光の第1色光の光量を低減でき、偏光変換素子から出射される第1色光に占める第2偏光の第1色光の割合を高めることができる。
従って、照明装置から出射される光において第2偏光の光が占める割合を高めることができる。
【0082】
[付記2]
付記1に記載の照明装置において、
前記第1色光は、青色光であり、
前記第2色光は、緑色光であり、
前記第3色光は、赤色光である、ことを特徴とする照明装置。
このような構成によれば、照明装置から出射される光は、青色光、緑色光及び赤色光を含むことから、第2偏光の光が占める割合が高い白色光を出射できる。
【0083】
[付記3]
付記1又は付記2に記載の照明装置において、
前記光源装置は、
前記第2偏光の前記第1色光を出射する発光素子と、
前記発光素子から出射された前記第1色光により励起され、前記第1偏光の前記第2色光と、前記第2偏光の前記第2色光と、前記第1偏光の前記第3色光と、前記第2偏光の前記第3色光とを出射する波長変換素子と、を備え、
前記第1色光のピーク波長は、455nmであり、
前記第2色光のピーク波長は、550nmであり、
前記第3色光のピーク波長は、610nmである、ことを特徴とする照明装置。
このような構成によれば、光源ランプを備える光源装置に比べて、光源装置から出射される第1色光の偏光状態を制御しやすい。このため、光源装置から偏光変換素子に入射する第1色光に占める第2偏光の光の割合を調節しやすくすることができる。
また、光源装置に広く用いられる波長変換素子は、ピーク波長が550nmである緑色光と、ピーク波長が610nmである赤色光を出射する。このため、上記したピーク波長を有する各色光を出射する光源装置を簡易に構成できる。
【0084】
[付記4]
付記3に記載の照明装置において、
前記位相差板の偏光変換効率が最も高い波長は、560nm以上、600nm以下である、ことを特徴とする照明装置。
このような構成によれば、第2色光に対する位相差板の偏光回転効率、及び、第3色光に対する位相差板の偏光回転効率を高めることができる。このため、照明装置から出射される光に占める第2偏光の光の割合を更に高めることができる。
また、例えば位相差板ピーク波長が560nm未満である場合に比べて、第3色光に対する位相差板の偏光回転効率を高めることができる。また例えば位相差板ピーク波長が600nmを超える場合に比べて、第1色光及び第2色光に対する位相差板の偏光回転効率を高めることができる。従って、照明装置から出射される光の色バランスを維持できる。
【0085】
[付記5]
付記1から付記4のいずれか1つに記載の照明装置において、
前記位相差板は、水晶板を有する水晶位相差板である、ことを特徴とする照明装置。
水晶位相差板は、位相差フィルムを有する位相差板に比べて耐久性が高く、経年劣化が生じにくい。このため、水晶位相差板を偏光変換素子に用いることによって、照明装置の耐久性を高めることができる。
【0086】
[付記6]
付記5に記載の照明装置において、
前記水晶板は、
遅相軸を有する第1水晶板と、
光入射側から見て前記第1水晶板の遅相軸に対して直交する遅相軸を有する第2水晶板と、を含み、
前記位相差板の光軸における前記第1水晶板の厚さと前記第2水晶板の厚さとの差は、31μm以上、33μm以下である、ことを特徴とする照明装置。
ここで、1つの水晶板を有する水晶位相差板の位相差板ピーク波長を、第2色光のピーク波長よりも長く、第3色光のピーク波長よりも短くする場合、水晶板を薄く作成する必要があり、位相差板の製造が困難である。
これに対し、第1水晶板の厚さと第2水晶板の厚さとの差を上記範囲内の値とすることにより、上記した位相差板ピーク波長を有する位相差板を構成することができる。従って、位相差板の製造及び取扱を容易に実施できる。
【0087】
[付記7]
付記1から付記6のいずれか1つに記載の照明装置と、
前記照明装置から出射された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置にて変調された光を投射する投射光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
このようなプロジェクターによれば、上記した照明装置と同様の効果を奏することができる。この他、光変調装置による画像形成に利用可能な光の光量を大きくすることができるので、プロジェクターによって投射される画像の輝度を高めることができる。
【符号の説明】
【0088】
1…プロジェクター、332…入射側偏光板、333…光変調素子、335…出射側偏光板、35…投射光学装置、4…光源装置、41…光源、411…発光素子、45…波長変換素子、5…均一化光学系、6…偏光変換素子、61…偏光分離素子アレイ、62…基材、63…偏光分離部、64…反射部、65…位相差板、65A…第1水晶板、65B…第2水晶板、LE…照明装置、LM…光変調装置。