(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106023
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法及び焼結鉱の製造設備
(51)【国際特許分類】
C22B 1/16 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
C22B1/16 P
C22B1/16 K
C22B1/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010073
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】宮村 渉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA01
4K001CA22
4K001KA06
(57)【要約】
【課題】装入層の層高さに対応させて焼結原料を焼結させるのに必要十分な熱指数を特定することで、焼結鉱の製造におけるコークス原単位を低減できる焼結鉱の製造方法及び焼結鉱の製造設備を提供する。
【解決手段】鉄含有原料、コークス及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒ステップと、焼結機の原料供給装置で無端移動式のパレットに造粒粒子を装入して焼結原料の装入層を形成する装入層形成ステップと、原料供給装置の下流側に設けられる点火炉で装入層の表層に含まれるコークスに点火し、パレットの下方に設けられたウインドボックスで前記装入層内の空気を吸引することでコークスを燃焼させて装入層を焼結ケーキとする焼結ステップと、焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕ステップと、を有し、装入層形成ステップでは、装入層の上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内になるように装入層を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有原料、コークス及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒ステップと、
焼結機の原料供給装置で無端移動式のパレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する装入層形成ステップと、
前記原料供給装置の下流側に設けられる点火炉で前記装入層の表層に含まれる前記コークスに点火し、前記パレットの下方に設けられたウインドボックスで前記装入層内の空気を吸引することで前記コークスを燃焼させて前記装入層を焼結ケーキとする焼結ステップと、
前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕ステップと、
を有し、
前記装入層形成ステップでは、前記装入層の上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内になるように前記装入層を形成する、焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記装入層形成ステップでは、前記装入層の下層の熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲内になるように前記装入層を形成する、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記上層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を求めておき、
前記装入層形成ステップでは、前記対応関係を用いて前記上層におけるコークスの含有量を特定し、前記上層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記装入層を形成する、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を求めておき、
前記装入層形成ステップでは、前記対応関係を用いて前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量を特定し、前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記装入層を形成する、請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
鉄含有原料、コークス及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒機と、
無端移動式のパレットと、前記パレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する原料供給装置と、前記装入層の表層に含まれる前記コークスを点火する点火炉と、前記パレットの下方に設けられ、前記装入層内の空気を吸引するウインドボックスとを有し、前記装入層を焼結して焼結ケーキとする焼結機と、
前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕機と、
前記造粒機、焼結機及び破砕機の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記装入層の上層における熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内になるように前記焼結機を制御する、焼結鉱の製造設備。
【請求項6】
前記制御装置は、前記装入層の下層における熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲内になるように前記焼結機を制御する、請求項5に記載の焼結鉱の製造設備。
【請求項7】
前記制御装置は、前記上層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を用いて、前記上層のコークスの含有量を特定し、前記上層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記焼結機を制御する、請求項5に記載の焼結鉱の製造設備。
【請求項8】
前記制御装置は、前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を用いて、前記上層及び前記下層のコークスの含有量を特定し、前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記焼結機を制御する、請求項6に記載の焼結鉱の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用原料である焼結鉱の製造方法及び焼結鉱の製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄鋼業において環境負荷低減のためCO2排出量の削減が求められている。高炉用原料の一つである焼結鉱は、主原料である鉄鉱石と、石灰石等のCaOを含む副原料、珪石等のSiO2を含む副原料、コークス等の固体燃料に数パーセントの水分を添加し、混合、造粒して擬似粒化したものを、固体燃料の燃焼熱により焼結させて製造される。焼結プロセスにおいて排出されるCO2の大部分は、固体燃料として使用されるコークスが燃焼した際に発生するものであり、焼結プロセスにおけるコークス使用量の削減が求められている。
【0003】
しかしながら、焼結原料中に占めるコークスの割合を減らすと、焼結時の熱量低下による溶融不足を招き、シンターケーキ破砕後の粉の発生量を増加させ、焼結プロセスにおける成品歩留を低下させる。従って、コークス量を少なくしすぎると焼結プロセスの成品歩留を低下させてしまい、かえってコークス原単位を増加させてしまう。ここで、コークス原単位とは、成品焼結鉱1トンを製造するのに必要とするコークス使用量であり、以下の式で定義される。
コークス原単位(kg/t-sinter)=コークス使用量(kg)/成品焼結鉱生産量(t-sinter)
【0004】
また、焼結プロセスでは装入層の上層から下方に空気を吸引しながら、上層から下方に向けて焼結を進行させる。このため、装入層の上層の焼結時は、室温の空気を吸引するので、当該空気に冷却されて温度が低くなり、下層と比較して成品歩留の低下を招きやすい。従って、良好な成品歩留を得るには、装入層の上層におけるコークスの含有量を下層におけるコークスの含有量よりも多くして、焼結時における上層の層内温度を高める必要がある。
【0005】
装入層の上層にコークスを偏析させる焼結鉱の製造方法として、特許文献1には、固体燃料の粒径を1~3mmのものが50質量%以上になるように調整し、かつ表層の固体燃料の含有割合を、それよりも深い部位における固体燃料の含有割合の1.08~1.42倍にする焼結鉱の製造方法が開示されている。特許文献1によると、成品歩留向上の観点からは装入層の上層における固体燃料の含有量は多いほど好ましいが、固体燃料の含有量を多くしすぎると焼結速度が低下する。このため、装入層の上層における固体燃料含有割合を上記の範囲とすることで良好な生産性が得られるとしている。
【0006】
また、特許文献2には、固体燃料の含有量を、装入層の上層で4.0~5.5質量%とし、且つ、装入層の下層で3.0~3.3質量%とする焼結鉱の製造方法が開示されている。特許文献2によると、装入層の上層における固体燃料の含有量を増加させると当該上層の通気抵抗が増大して焼結速度が低下するが、併せて装入層の下層における固体燃料を少なくすることで装入層の下層における通気抵抗が低下し、これにより、焼結速度が向上するので良好な生産性が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-98358号公報
【特許文献2】特許第5811936号公報
【特許文献3】特許第6364940号公報
【特許文献4】特許第2982128号公報
【特許文献5】特開平10-330854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に開示されているコークスの偏析量は、焼結速度を向上させて生産性を高めることを目的としてその偏析量が定められており、コークス使用量をできる限り少なくし、コークス原単位を削減することを目的としたコークスの偏析量ではない。また、成品歩留は、焼結時の層内温度や高温で保持される時間に依存し、特に1200℃以上の温度をしめす時間範囲での層内温度の時間積分値である熱指数に依存する。装入層における各層のコークスの含有量が多いほど、焼結時の発熱量が多くなるので熱指数が大きくなることが予測されるが、上記のとおり装入層の上層は下層と比較して空気による冷却が大きいので、コークスの含有量が同じであっても熱指数は下層よりも上層の方が小さくなる。このため、装入層の各層におけるコークスの偏析量を定めても、焼結機が設置される環境によっては必ずしも目標とする熱指数の範囲内にならない場合があるという課題があった。本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、装入層の層高さに対応させて焼結原料を焼結させるのに必要十分な熱指数を特定し、当該熱指数に対応した熱量で焼結原料を焼結することで、焼結鉱の製造におけるコークス原単位を低減できる焼結鉱の製造方法及び焼結鉱の製造設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 鉄含有原料、コークス及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒ステップと、焼結機の原料供給装置で無端移動式のパレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する装入層形成ステップと、前記原料供給装置の下流側に設けられる点火炉で前記装入層の表層に含まれる前記コークスに点火し、前記パレットの下方に設けられたウインドボックスで前記装入層内の空気を吸引することで前記コークスを燃焼させて前記装入層を焼結ケーキとする焼結ステップと、前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕ステップと、を有し、前記装入層形成ステップでは、前記装入層の上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内になるように前記装入層を形成する、焼結鉱の製造方法。
[2] 前記装入層形成ステップでは、前記装入層の下層の熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲内になるように前記装入層を形成する、[1]に記載の焼結鉱の製造方法。
[3] 前記上層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を求めておき、前記装入層形成ステップでは、前記対応関係を用いて前記上層におけるコークスの含有量を特定し、前記上層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記装入層を形成する、[1]に記載の焼結鉱の製造方法。
[4] 前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を求めておき、前記装入層形成ステップでは、前記対応関係を用いて前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量を特定し、前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記装入層を形成する、[2]に記載の焼結鉱の製造方法。
[5] 鉄含有原料、コークス及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒機と、無端移動式のパレットと、前記パレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する原料供給装置と、前記装入層の表層に含まれる前記コークスを点火する点火炉と、前記パレットの下方に設けられ、前記装入層内の空気を吸引するウインドボックスとを有し、前記装入層を焼結して焼結ケーキとする焼結機と、前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕機と、前記造粒機、焼結機及び破砕機の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記装入層の上層における熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内になるように前記焼結機を制御する、焼結鉱の製造設備。
[6] 前記制御装置は、前記装入層の下層における熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲内になるように前記焼結機を制御する、[5]に記載の焼結鉱の製造設備。
[7] 前記制御装置は、前記上層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を用いて、前記上層のコークスの含有量を特定し、前記上層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記焼結機を制御する、[5]に記載の焼結鉱の製造設備。
[8] 前記制御装置は、前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量と熱指数との対応関係を用いて、前記上層及び前記下層のコークスの含有量を特定し、前記上層及び前記下層におけるコークスの含有量が、特定されたコークスの含有量になるように前記焼結機を制御する、[6]に記載の焼結鉱の製造設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焼結時の熱指数が所定の範囲内になるように装入層を形成させることで、焼結に必要十分な熱量で焼結原料を焼結できるようになり、これにより、焼結鉱の製造におけるコークス原単位の低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法が実施できる焼結鉱の製造設備10を示す模式図である。
【
図2】
図2は、上層の熱指数と成品歩留との関係を示したグラフである。
【
図3】
図3は、下層の熱指数と成品歩留との関係を示したグラフである。
【
図4】
図4は、試験1~5の上層及び下層の成品歩留とコークス原単位とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。
図1は、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法が実施できる焼結鉱の製造設備10を示す模式図である。焼結鉱の製造設備10は、造粒機16と、焼結機20と、破砕機30と、制御装置40とを備える。
【0013】
造粒機16は、鉄含有原料、コークス粉及びCaO含有原料を含む焼結原料12を造粒して造粒粒子18とする。造粒機16が造粒粒子18を造粒する際、焼結原料12には造粒水14が添加される。この工程が造粒ステップとなる。造粒機16によって造粒された造粒粒子18は、焼結機20に搬送される。なお、鉄含有原料は、例えば、鉄鉱石や製鉄所内で発生するダストである。また、CaO含有原料は、例えば、生石灰、石灰石、スラグである。
【0014】
焼結機20は、例えば、ドワイトロイド式の焼結機である。焼結機20は、原料供給装置21と、パレット22と、コークス含有量調整装置23と、カットオフプレート24と、点火炉25と、ウインドボックス26とを備える。原料供給装置21は、造粒粒子18をパレット22に装入する。
【0015】
パレット22は、無端移動式のパレットである。原料供給装置21からパレット22に造粒粒子18が装入されるとともにコークス含有量調整装置23により層内のコークス含有量が調整されて、パレット22内に焼結原料12の装入層が形成される。カットオフプレート24は、装入層の表層を平らに均すとともに装入層の厚さを予め設定された目標とする層厚に合わせる。この工程が装入層形成ステップとなる。
【0016】
本実施形態に係る焼結鉱の製造方法では、装入層の上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内になるように装入層を形成する。これにより、焼結に必要十分な熱量で装入層の上層を焼結でき、装入層の上層の成品歩留を向上できるとともにコークス原単位も低減できる。ここで、装入層の上層とは、装入層の表面から下方に200mmまでの領域である。また、熱指数とは、装入層内の温度が1200℃以上を示す時間範囲における層内温度の時間積分値である。なお、装入層の上層の熱指数が100K・min以上200K・min以下の範囲内になるように装入層の上層を形成することがより好ましい。これにより、装入層の上層の成品歩留をさらに向上できるとともにコークス原単位をさらに低減できる。
【0017】
装入層の上層の熱指数を所定の範囲内にするために、コークス含有量調整装置23が用いられる。コークス含有量調整装置23は、例えば、特許文献3に記載されている送風機である。パレット22に落下する焼結原料にコークス粒子を含め、送風機から当該焼結原料に吹き付けられるコークス偏析用ガスの風量を制御することで、装入層の上層に装入されるコークスの含有量を制御できる。
【0018】
また、コークス含有量調整装置23は、特許文献4に記載されている粉体燃料散布装置であってもよい。当該粉体燃料散布装置を用いて上方からコークスを散布することで、装入層の上層に装入されるコークスの含有量を制御できる。さらに、コークス含有量調整装置23は、特許文献5に記載されている原料供給装置21に設けられるコークスホッパであってもよい。当該コークスホッパの開口部の開閉を制御することで、装入層の上層に装入されるコークスの含有量を制御できる。なお、このように、焼結原料に含まれるコークスとは別に、焼結機においてコークスをさらに装入する場合には、その分のコークスを、焼結原料に配合するコークスから減少させておけばよい。
【0019】
また、装入層の下層の熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲内になるように装入層を形成することが好ましい。これにより、焼結に必要十分な熱量で装入層の下層を焼結でき、装入層の下層における成品歩留を向上できるとともにコークス原単位を低減できる。装入層の下層における熱指数を400K・min以上1000K・min以下の範囲内にする方法は、装入層の上層と同様の方法で実施できる。ここで装入層の下層とは、装入層の底部から上方に200mmまでの領域である。なお、装入層の下層の熱指数が600K・min以上800K・min以下の範囲内になるように装入層の下層を形成することがより好ましい。これにより、装入層の下層における成品歩留をさらに向上できるとともにコークス原単位をさらに低減できる。
【0020】
点火炉25は、原料供給装置21の下流側に設けられ、装入層の表層に含まれているコークスに点火する。ウインドボックス26は、パレット22の下方に設けられ、パレット22内に形成されている装入層内の空気を下方に吸引する。ウインドボックス26によって装入層内の空気が下方に吸引されると、装入層内の燃焼、溶融帯は装入層の下方に移動する。パレット22の移動とともに装入層内の燃焼、溶融帯が下方に移動することで、装入層の焼結原料12は焼結される。焼結原料12の焼結により、焼結ケーキが得られる。この工程が焼結ステップとなる。
【0021】
破砕機30は、焼結機20から排鉱される焼結ケーキを破砕して焼結ケーキの破砕物とする。焼結ケーキの破砕物は、冷却及び整粒されて焼結鉱32が製造される。この工程が破砕ステップとなる。
【0022】
制御装置40は、例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。制御装置40は、制御部41及び記憶部42を有する。制御部41は、例えば、CPU等であって、記憶部42から読み込んだプログラムを実行することにより、造粒機16、焼結機20及び破砕機30の動作を制御する。記憶部42は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体及びその読み書き装置である。記憶部42には、制御部41が各機能を実行するためのプログラムや当該プログラムで使用するデータ等が記憶されている。
【0023】
また、目標とする熱指数の範囲内にできる上層及び下層のコークスの含有量は、装入層の上層及び下層のそれぞれに対して予め実験等によりコークスの含有量と熱指数の対応関係を示す回帰式を求めておき、当該対応関係を用いてコークスの含有量を特定すればよい。上層及び下層のコークスの含有量と熱指数の対応関係を示す回帰式は、予め求められて記憶部42に記憶される。
【0024】
制御部41は、記憶部42から当該回帰式を読み出し、当該回帰式を用いて装入層の上層におけるコークスの含有量を特定する。制御部41は、装入層の上層におけるコークスの含有量が特定されたコークスの含有量になるようにコークス含有量調整装置23を制御する。これにより、装入層の上層における熱指数を30K・min以上300K・min以下の範囲内に調整できる。
【0025】
また、装入層の下層の熱指数を400K・min以上1000K・min以下の範囲内にする場合には、制御部41は、記憶部42から装入層の下層におけるコークスの含有量と熱指数の対応関係を示す回帰式を読み出し、当該回帰式を用いて装入層の下層におけるコークスの含有量を特定する。制御部41は、装入層の下層におけるコークスの含有量が特定されたコークスの含有量になるようにコークス含有量調整装置23を制御する。これにより、装入層の下層における熱指数を400K・min以上1000K・min以下の範囲内に調整できる。
【0026】
なお、上記例では、装入層の上層及び下層の熱指数を所定の範囲内にするために、上層及び下層のコークスの含有量を調整する例を示したが、これに限らない。例えば、上層及び下層に装入されるコークス粒度を調整することでコークスの燃焼性を制御し、これにより、上層及び下層の熱指数を所定の範囲内にしてもよい。さらに、各層に装入される焼結原料の水分を調整することで水分の蒸発熱を制御し、これにより、上層及び下層の熱指数を所定の範囲内にしてもよい。このように上層及び下層のコークスの含有量を調整しない場合には、焼結機20はコークス含有量調整装置23を有さなくてもよい。
【0027】
次に、装入層の熱指数と、成品歩留と、コークスの原単位との関係を確認した焼結試験について説明する。直径300mm、高さ600mmの円筒型焼結試験鍋内の火格子上に床敷として焼結鉱を20mm充填し、この上にコークスの配合量が調整された焼結原料の造粒粒子を充填した。造粒粒子の造粒にあたっては、造粒物の水分含有量が7質量%になるように添加水分量を調整した。鍋天頂部から下方に200mmまでの領域を上層とし、鍋天頂部から下方に380mmから床敷までの領域を下層として、上層及び下層に種々のコークス量を配合した造粒粒子を充填することで、上層及び下層の熱指数を調整して焼結試験を行った。試験1~5において上層及び下層に充填した焼結原料の配合割合を下記表1に示す。
【0028】
【0029】
表1に示した配合割合の焼結原料の造粒粒子を充填した円筒型焼結試験鍋の下部より、吸引圧力10kPaで吸気しつつ装入層の表層に着火して焼結原料を焼結した。この際、装入層に熱電対を挿入し、鍋天頂部から下方100mmの位置の鍋直径方向の中心部と、鍋天頂部から下方500mmの位置の鍋直径方向の中心部との温度とを測定し、上層及び下層の熱指数を算出した。焼結完了後、円筒型焼結試験鍋から焼結ケーキを取り出し、当該焼結ケーキを分割して上層と下層の成品歩留を個別に評価した。成品歩留は、上層及び下層の焼結ケーキを2mの高さから4回落下させた後、目開き5mmの篩の篩上となった重量を測定し、落下前の焼結ケーキの重量に占める目開き5mmの篩上の重量割合を成品歩留として評価した。評価結果を下記表2と、
図2、3に示す。
【0030】
【0031】
図2は、上層の熱指数と成品歩留との関係を示したグラフである。また、
図3は、下層の熱指数と成品歩留との関係を示したグラフである。
図2、3ともに横軸は熱指数(K・min)であり、縦軸は成品歩留(質量%)である。
【0032】
表1及び
図2に示すように、上層の成品歩留は上層の熱指数に依存し、上層の成品歩留を75質量%以上にするには、上層の熱指数を30K・min以上300K・min以下の範囲内にすればよいことがわかる。また、上層の熱指数を100K・min以上200K・min以下の範囲内にすることで上層の成品歩留を80質量%以上にできるので、より好ましいことがわかる。
【0033】
また、表1及び
図3に示すように、下層の成品歩留も下層の熱指数に依存し、下層の歩留を85質量%以上にするには、下層の熱指数を400K・min以上にすればよいことがわかる。一方、下層の成品歩留は熱指数を高くしても90質量%より高くならない。このため、熱指数を1000K・minより高くしても、さらなる成品歩留向上につながらず、かえってコークス原単位の増加を招いてしまうので好ましくない。従って、下層の熱指数は400K・min以上1000K・min以下の範囲内にすることが好ましく、600K・min以上800K・min以下の範囲内にすることがより好ましいことがわかる。
【0034】
図4は、試験1~5の上層及び下層の成品歩留とコークス原単位とを示すグラフである。試験1、2は、上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内であり、下層の熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲内である試験例である。上層及び下層の熱指数が上記範囲であることで、焼結に必要十分な熱指数で焼結原料を焼結でき、これにより、コークス原単位を66kg/t-s未満にできることが確認され、焼結鉱の製造におけるコークス原単位を低減できることが確認された。。
【0035】
試験4は上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲内であるが、下層の熱指数が400K・min以上1000K・min以下の範囲外である試験例である。試験4では、下層の熱指数が低く、下層の成品歩留が低下したものの、成品歩留が低下しやすい上層の成品歩留を向上できるので、これにより、試験3、5よりも焼結鉱の製造におけるコークス原単位を低減できることが確認された。
【0036】
試験3、5は、上層の熱指数が30K・min以上300K・min以下の範囲外となり、下層の熱指数も400K・min以上1000K・min以下の範囲外となる試験例である。これらの試験では、上層及び下層の成品歩留を向上できず、この結果、試験3、5では、焼結鉱の製造におけるコークスの原単位を低減できないことが確認された。
【符号の説明】
【0037】
10 焼結鉱の製造設備
12 焼結原料
14 造粒水
16 造粒機
20 焼結機
22 パレット
23 コークス含有量調整装置
24 カットオフプレート
25 点火炉
26 ウインドボックス
30 破砕機
40 制御装置
41 制御部
42 記憶部