(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106031
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
B21D 5/01 20060101AFI20240731BHJP
B21D 5/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B21D5/01 B
B21D5/02 D
B21D5/02 W
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010087
(22)【出願日】2023-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】516243962
【氏名又は名称】株式会社伊藤
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸平
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063BA01
4E063BA07
4E063CA01
4E063DA03
4E063GA03
4E063GA04
4E063JA02
4E063JA06
4E063MA10
(57)【要約】
【課題】 突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置であって、突起が湾曲部から外に向けて突出するよう折り曲げる方法及びその装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 突起を有する板材の曲げ加工方法であって、突起91を有する板材90を、V字溝11を有するダイ10とパンチ30との間に配置する配置工程と、パンチ30をダイ10のV字溝11の底部11aに接近させて板材90を折り曲げる曲げ工程とを備え、ダイ10は、V字溝11の底部11aに設けられた凹部12を有し、配置工程において、突起91が突出する面をV字溝11に向けつつ突起91が凹部12に対向するよう、板材90が配置され、曲げ工程の間に、突起91が凹部12に収容されることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起を有する板材を、V字溝を有するダイとパンチとの間に配置する配置工程と、
前記パンチを前記ダイの前記V字溝の底部に接近させて前記板材を折り曲げる曲げ工程とを備え、
前記ダイは、前記V字溝の底部に設けられた凹部を有し、
前記配置工程において、前記突起が突出する面を前記V字溝に向けつつ前記突起が前記凹部に対向するよう、前記板材が配置され、
前記曲げ工程の間に、前記突起が前記凹部に収容される
ことを特徴とする突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項2】
前記配置工程が、
ガイドマークが表面に形成されたガイドシートを、前記凹部に前記ガイドマークが対向するよう前記ダイの前記V字溝に被せて配置するガイドシート配置工程と、
前記ガイドマークの位置と前記突起の位置とが合うよう前記板材を配置する板材配置工程とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項3】
前記突起が貫通孔を有し、
前記板材配置工程において、前記貫通孔を通して見える前記ガイドマークの位置に前記突起の位置を合わせて前記板材を配置する
ことを特徴とする請求項2に記載の突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項4】
前記ガイドシートの材質が軟質の樹脂である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項5】
突起を有する板材を曲げる曲げ加工装置であって、
V字溝と当該V字溝の底部に設けられた凹部とを有するダイと、
ガイドマークが表面に形成されたガイドシートとを備え、
前記凹部に前記ガイドマークが対向するようよう前記ガイドシートを前記ダイの前記V字溝に被せて配置し、
前記突起が突出する面を前記V字溝に向けつつ前記ガイドマークの位置と前記突起の位置とが合うよう前記板材を配置した後、
パンチを前記ダイの前記V字溝の底部に接近させて前記板材を折り曲げる工程の間に前記突起が前記凹部に収容される
ことを特徴とする突起を有する板材の曲げ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、床面などの滑り止めの手段として、縞板のように鋼板の表面に多数の突起が設けられた滑り止め板が知られている。その突起として形状も長楕円のものや円形のものなどが広く使用されている。また、突起の中央に貫通孔を有するような滑り止め板もあり、その中でもバーリング加工で形成された突起は滑り止め性能が高いことが知られている。そのため、床面だけでなく、梯子、グレーチングや階段などの滑り止めとして、バーリング加工で形成された突起を有する滑り止め板が使用されている。
【0003】
階段の滑り止めとして突起を有する滑り止め板を使用する場合、
図6に示すように、階段の踏み面Fと蹴上Gとの境界の角部Cに突起を配置することが効果的である。角部Cは靴底に接触しやすい箇所である一方で、滑り落ちやすい箇所だからである。角部Cに突起を配置するには、折れ曲がった板の湾曲部に突起を設けて、その湾曲部が角部Cに位置するように、階段の上に滑り止め板を配置すればよい。
図6に示す滑り止め板900は、湾曲部900cで折れ曲がっており、貫通孔910aを有する複数の突起910が、踏み面Fだけでなく角部Cにも位置するよう、階段に配置されている。
【0004】
湾曲部に突起を有する滑り止め板を得るためには、平板の板材に突起を形成し、突起が並んでいる直線に沿って板材をV字に折り曲げればよい。しかし、ダイとパンチで板材をV字に曲げる場合、折り曲げ線である湾曲部にはダイとパンチに挟まれ高い圧力が作用する。すなわち、折り曲げ線上に位置する突起に対して厚さ方向に圧力が作用して、突起が潰れるおそれがある。突起が潰れると、滑り止め性能は低下してしまう。
【0005】
なお、突起を有する板材を、突起を潰すことなくV字に曲げる技術は知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術は、パンチに「逃げ」を形成することにより、曲げ加工した際に突起に圧力が作用しないように構成したものである。しかしこの技術で形成される板は、突起が湾曲部から内(曲げアールの中心方向)に向けて突出するような板であるため、滑り止めとして使用することはできない。
【0006】
滑り止めとして使用するためには、突起は外に向けて突出する必要がある。さらに階段の滑り止めとして好適に使用できるよう、突起が湾曲部に位置しつつ湾曲部から外(曲げアールの中心と反対方向)に向けて突出する板が得られるような、突起を有する板材の曲げ加工方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を鑑みて、本発明は、突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置であって、突起が湾曲部から外に向けて突出するよう折り曲げる方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る突起を有する板材の曲げ加工方法は、突起を有する板材を、V字溝を有するダイとパンチとの間に配置する配置工程と、前記パンチを前記ダイの前記V字溝の底部に接近させて前記板材を折り曲げる曲げ工程とを備え、前記ダイは、前記V字溝の底部に設けられた凹部を有し、前記配置工程において、前記突起が突出する面を前記V字溝に向けつつ前記突起が前記凹部に対向するよう、前記板材が配置され、前記曲げ工程の間に、前記突起が前記凹部に収容されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、突起を有する板材の曲げ加工方法であって、突起が湾曲部から外に向けて突出するよう折り曲げる方法を提供することができる。
【0011】
本発明に係る他の突起を有する板材の曲げ加工方法は、前記配置工程が、ガイドマークが表面に形成されたガイドシートを、前記凹部に前記ガイドマークが対向するよう前記ダイの前記V字溝に被せて配置するガイドシート配置工程と、前記ガイドマークの位置と前記突起の位置とが合うよう前記板材を配置する板材配置工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ガイドシートのガイドマークに合わせて板材を配置することによって、曲げ工程の間に突起が凹部に確実に収容されるような、突起を有する板材の曲げ加工方法を提供することができる。
【0013】
本発明に係る他の突起を有する板材の曲げ加工方法は、前記突起が貫通孔を有し、前記板材配置工程において、前記貫通孔を通して見える前記ガイドマークの位置に前記突起の位置を合わせて前記板材を配置することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ガイドマークの位置と突起の位置とを目視により確実に合わせられるような、突起を有する板材の曲げ加工方法を提供することができる。
【0015】
本発明に係る他の突起を有する板材の曲げ加工方法は、前記ガイドシートの材質が軟質の樹脂であることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、板材がダイと直接接触せずガイドシートが緩衝するため板材に傷が付くのが防止される、突起を有する板材の曲げ加工方法を提供することができる。
【0017】
本発明に係る突起を有する板材を曲げる曲げ加工装置は、V字溝と当該V字溝の底部に設けられた凹部とを有するダイと、ガイドマークが表面に形成されたガイドシートとを備え、前記凹部に前記ガイドマークが対向するようよう前記ガイドシートを前記ダイの前記V字溝に被せて配置し、前記突起が突出する面を前記V字溝に向けつつ前記ガイドマークの位置と前記突起の位置とが合うよう前記板材を配置した後、パンチを前記ダイの前記V字溝の底部に接近させて前記板材を折り曲げる工程の間に前記突起が前記凹部に収容されることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、突起を有する板材の曲げ加工装置であって、突起が湾曲部から外に向けて突出するよう折り曲げる装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置であって、突起が湾曲部から外に向けて突出するよう折り曲げる方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法において、加工対象となる板材を模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の断面A-Aを拡大して示す拡大断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法で使用する装置のうち、ガイドシートを模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法で使用する装置のうち、ダイを模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の断面B-Bを示す断面図であり、(c)は(a)の断面C-Cを示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法における配置工程を模式的に示す斜視図であり、(a)はガイドシート配置工程の開始前の状態を示し、(b)はガイドシート配置工程の終了後の状態を示し、(c)は板材配置工程の終了後の状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法における曲げ工程を
図3(a)の断面C-Cで模式的に示す断面図であり、(a)はパンチがダイの底部に接近する前の状態を示し、(b)はパンチがダイの底部に最も接近した状態を示す。
【
図6】湾曲部に突起が設けられた折れ曲がった板を階段の滑り止めとして使用する状態を示す模式図であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を適用した突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0022】
本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法及びその装置について、
図1~5に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法において、加工対象となる板材を模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の断面A-Aを拡大して示す拡大断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法で使用する装置のうち、ガイドシートを模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法で使用する装置のうち、ダイを模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)の断面B-Bを示す断面図であり、(c)は(a)の断面C-Cを示す断面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法における配置工程を模式的に示す斜視図であり、(a)はガイドシート配置工程の開始前の状態を示し、(b)はガイドシート配置工程の終了後の状態を示し、(c)は板材配置工程の終了後の状態を示す。
図5は、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法における曲げ工程を
図3(a)の断面C-Cで模式的に示す断面図であり、(a)はパンチがダイの底部に接近する前の状態を示し、(b)はパンチがダイの底部に最も接近した状態を示す。
【0023】
まず、本発明に係る突起を有する板材の曲げ加工方法において加工対象となる板材90について、
図1に基づき説明する。
図1(a)に示すように、板材90は矩形の平板状に形成されており、その表面90aに複数の突起91が形成されている。複数の突起91は、長手方向に直線状に並ぶ突起の列が、幅方向に複数列設けられて千鳥状に構成されている。板材90は、後の曲げ工程により、折曲線90cで折り曲げられる。折曲線90cは長手方向に延びる直線であり、折曲線90cの上に複数の突起91が設けられている。折曲線90cにおいて突起91はピッチPで等間隔に並んでいる。なお、
図1(a)に示す板材90の突起91は千鳥状に配置されているが、格子状に配置してもよい。
【0024】
図1(b)に示すように、突起91は裏面90bから表面90aに向けて突出しており、その中央に貫通孔91aを有する。この突起91はバーリング加工により形成されており、表面90aに対してほぼ垂直に立ち上がっている。なお、板材90の材質として、曲げ加工可能な任意の金属を使用することができ、用途に応じて適宜選択すればよい。板材90の板厚、貫通孔91aの孔径、突起91の高さも、強度や用途に応じて適宜に決めることができるが、例えば、板厚を1.2mm、孔径を5mm、高さを2mm程度とすることができる。
【0025】
次に、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工装置を構成するガイドシート20について、
図2に基づき説明する。
図2に示すように、ガイドシート20は矩形の薄いシート状に形成されており、その表面20aに複数のガイドマーク21が形成されている。ガイドマーク21は幅方向に延びる直線で構成されており、それらが長手方向に、突起91と同じピッチPで等間隔に平行に並んでいる。ガイドシート20は、自由に伸縮できるよう、軟質の樹脂から構成されており、特にウレタン樹脂からなる薄手のシートで構成するのが好適である。また、ガイドマーク21は表面20aに印刷したりペンで手書きするなどして形成されている。
【0026】
本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工装置を構成するダイ10について、
図3に基づき説明する。
図3に示すように、ダイ10は長手方向に延びるV字溝11を有する。V字溝11の底部11aには、
図3(a),(c)に示すように、複数の凹部12が設けられている。凹部12は、
図3(a)に示すように、長手方向に、突起91と同じピッチPで等間隔に並んでいる。凹部12は、板材90の突起91を収容できるような大きさ及び深さで形成されている。本実施形態において、凹部12は、
図3(a)に示すように平面視で長円であり、
図3(c)に示すように底が平坦面となっているが、板材90の突起91を収容できるような大きさ及び深さであれば任意の形状を採用することができる。
【0027】
なお、V字溝11の底部11aのうち、凹部12が形成されていない箇所は、
図3(b)に示すように、斜面11b同士がほぼ90度で交わる谷部13が形成されている。またV字溝11の幅方向の両脇には、同一の平面上に位置する上面14が設けられている。
【0028】
〔曲げ加工方法〕
次に、本発明の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法について
図4,5に基づき説明する。この加工方法は、板材90をダイ10とパンチ30との間に配置する配置工程と、パンチ30をダイ10のV字溝11の底部11aに接近させて板材90を折り曲げる曲げ工程とを備える。またこの配置工程は、ガイドシート20をダイ10のV字溝11に被せて所定の位置に配置するガイドシート配置工程と、ガイドシート20に対する所定の位置に板材90を配置する板材配置工程とを有する。
【0029】
〔配置工程〕
ダイ10及びパンチ30はプレス成形機(図示省略)に装着されており、パンチ30はプレス成形機により駆動されてダイ10に向けて接近可能となっている。
図4(a)は、配置工程の開始前の、ダイ10とパンチ30とが離れている状態である。この状態からガイドシート配置工程に移る。
【0030】
ガイドシート配置工程では、
図4(b)に示すように、ガイドシート20を表面20aが表に現れるように、ダイ10に被せて配置する。なおダイ10及びガイドシート20は曲げ加工装置100の構成要素である。この時ガイドシート20は、ガイドマーク21の線が長手方向に垂直となるよう向けられるとともに、ガイドマーク21がそれぞれダイ10の凹部12に対向するよう配置される。なお、ガイドマーク21と凹部12は同じピッチPで並んでいるため、一つのガイドマーク21を一つの凹部12に対向させれば、複数のガイドマーク21がそれぞれ凹部12に対向する。ガイドシート20は、ダイ10のV字溝11に被さるともに上面14に載って、その外側は下に垂れ下がる。そしてガイドシート20をダイ10に対して適宜に固定する。このときガイドシート20のうち、垂れ下がった部分を利用してマグネットや粘着テープなど(図示省略)でダイ10に固定するのが好適である。なお、ダイ10におけるガイドシート20の縁が位置する箇所に目印などを設けることによって、ガイドシート20をダイ10の上に容易に配置することができる。
【0031】
次に板材配置工程に移る。この工程では、ダイ10に載ったガイドシート20の上に板材90を配置する。この時、板材90の表面90aをダイ10のV字溝11に向けつつ、折曲線90cがV字溝11の底部11aに対向するように、板材90を配置する。なお、プレス成形機には突合壁Wが設置されており、板材90の辺90dを突合壁Wにぴったり当てることで、折曲線90cがV字溝11の底部11aに対向するよう板材90が配置される。これにより、幅方向におけるダイ10と板材90との相対的な位置が決まる。そして、折曲線90c上の突起91の位置がガイドシート20のガイドマーク21の位置に合うよう、長手方向に動かして板材90を配置する。このとき、折曲線90c上の突起91の貫通孔91aを通してガイドマーク21が見えれば、突起91とガイドマーク21の位置が合っていることになる。これにより、長手方向におけるダイ10と板材90との相対的な位置が決まる。突起91、ガイドマーク21及び凹部12は全て同じピッチPで長手方向に並んでいるため、板材90の折曲線90c上の突起91は全て、ダイ10の凹部12に対向する。配置工程が終わった状態が
図5(a)に示されている。
【0032】
〔曲げ工程〕
次に曲げ工程に移る。曲げ工程では、プレス成形機によりパンチ30をダイ10のV字溝11の底部11aに接近させて、板材90を折り曲げる(
図5(b)参照)。このとき板材90の突起91は、ダイ10のV字溝11の底部11aに接近し、
図5(b)に示すように、凹部12に収容される。そのため突起91は、パンチ30により加圧されても、潰れることはない。なお、ガイドシート20は伸縮性を有するため、板材90の変形に追従してV字溝11に押し付けられ、パンチ30による圧力で非常に薄くなるため、板材90の形状に影響を及ぼすことはない。また板材90の表面90aがダイ10と直接接触せず、ガイドシート20が緩衝するため、板材90の表面90aに傷がつくのが防止される。
【0033】
そしてパンチ30をダイ10から十分に離した後、曲げ加工された板材90を、ダイ10及びガイドシート20から取り外す。曲げ加工された板材90は、湾曲部に位置する突起91を有し、突起91は、湾曲部から外(曲げアールの中心と反対方向)に向けて突出している。曲げ加工された板材90は、好適には、
図6に示すような滑り止め板900として階段の滑り止めとして使用される。
【0034】
なお、ガイドシート20は伸縮性を有するため、板材90を取り外すと、ほぼ元の状態(
図4(b)参照)に戻る。そのため、この状態のガイドシート20の上に曲げ加工前の板材90を配置して、曲げ工程を行うことができる。すなわち、連続して板材90の曲げ加工を行うことができる。ガイドシート20は、パンチ30により加圧を受けた箇所が損傷したりガイドマーク21がかすれたりすることがある。そのため、連続して曲げ加工をする際には、ガイドシート20を幅方向に少しずつずらしながら使用するのが好適である。本実施形態ではガイドマーク21は幅方向に延びる直線で構成されているため、ガイドシート20を幅方向にずらしても、ガイドマーク21はダイ10の凹部12に対向したまま維持されるからである。そのため、作業効率を落とすことなく連続して曲げ加工をすることができる。
【0035】
〔変形例〕
先述の実施形態に係る突起を有する板材の曲げ加工方法では、ガイドシート20のガイドマーク21は、幅方向に延びる直線で構成されていたが、ガイドマークは格子状に構成することも可能であり、また点で構成することも可能である。またガイドシート20の材質は軟質の樹脂に限られず、例えば繊維をニット編みにして伸縮性を付与したシートを使用することも可能である。
【0036】
また、先述の実施形態では、板材90の突起91は貫通孔91aを有していたが、貫通孔の無い突起を有する板材を曲げ加工することも可能である。また、ガイドシート20を使用することなく、突起を有する板材を曲げ加工することも可能である。これらのとき、ダイ10と板材90との相対的な位置関係を、ダイ10に目印(例、板材90の長手方向の端の位置)を設けるなどして規定することで、配置工程において板材90をその目印に沿って配置することで、突起91がダイ10の凹部12に対向するよう配置することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10 ダイ
11 V字溝
11a 底部
11b 斜面
12 凹部
13 谷部
14 上面
20 ガイドシート
20a 表面
20b 裏面
21 ガイドマーク
30 パンチ
90 板材
90a 表面
90b 裏面
90c 折曲線
90d 辺
91 突起
91a 貫通孔
100 曲げ加工装置
900 滑り止め板
910 突起
910a 貫通孔
900c 湾曲部
C 角部
F 踏み面
G 蹴上
W 突合壁
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起を有する板材を、V字溝を有するダイとパンチとの間に配置する配置工程と、
前記パンチを前記ダイの前記V字溝の底部に接近させて前記板材を折り曲げる曲げ工程とを備え、
前記ダイは、前記V字溝の底部に設けられた凹部を有し、
前記配置工程において、前記突起が突出する面を前記V字溝に向けつつ前記突起が前記凹部に対向するよう、前記板材が配置され、
前記曲げ工程の間に、前記突起が前記凹部に収容され、
前記配置工程が、
ガイドマークが表面に形成されたガイドシートを、前記凹部に前記ガイドマークが対向するよう前記ダイの前記V字溝に被せて配置するガイドシート配置工程と、
前記ガイドマークの位置と前記突起の位置とが合うよう前記板材を配置する板材配置工程とを有する
ことを特徴とする突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項2】
前記突起が貫通孔を有し、
前記板材配置工程において、前記貫通孔を通して見える前記ガイドマークの位置に前記突起の位置を合わせて前記板材を配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項3】
前記ガイドシートの材質が軟質の樹脂である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の突起を有する板材の曲げ加工方法。
【請求項4】
突起を有する板材を曲げる曲げ加工装置であって、
V字溝と当該V字溝の底部に設けられた凹部とを有するダイと、
ガイドマークが表面に形成されたガイドシートとを備え、
前記凹部に前記ガイドマークが対向するようよう前記ガイドシートを前記ダイの前記V字溝に被せて配置し、
前記突起が突出する面を前記V字溝に向けつつ前記ガイドマークの位置と前記突起の位置とが合うよう前記板材を配置した後、
パンチを前記ダイの前記V字溝の底部に接近させて前記板材を折り曲げる工程の間に前記突起が前記凹部に収容される
ことを特徴とする突起を有する板材の曲げ加工装置。