IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本アキュムレータ株式会社の特許一覧

特開2024-106035包装物及びそれを用いた水素発生装置
<>
  • 特開-包装物及びそれを用いた水素発生装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106035
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】包装物及びそれを用いた水素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
C01B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010094
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227803
【氏名又は名称】NACOL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉村 健
(72)【発明者】
【氏名】下山 弘高
(57)【要約】
【課題】水素発生装置へ水素貯蔵材料の供給と反応後の副生成物の回収がより容易な固体の水素貯蔵材料を包含する包装物及びそれを用いた水素発生装置を提供する。
【解決手段】、水と反応することで水素を発生させる化合物又は混合物からなる固体の水素貯蔵材料Mを包含する包装物1において、包装体10を有するものとし、水素貯蔵材料Mを、包装体10内に包含し、包装体10を、複数の細孔を有するものとし、該細孔を、水及び水素を透過可能で且つ粉粒体の透過を阻止可能な大きさに形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の水素貯蔵材料を包含する包装物であって、ここで、該水素貯蔵材料は、水と反応することで水素を発生させる化合物又は混合物であり、
包装体を有し、該水素貯蔵材料は、該包装体内に包含され、
該包装体は、細孔を有しており、
該細孔は、水及び水素を透過可能で且つ粉粒体の透過を阻止可能な大きさに形成されていることを特徴とする包装物。
【請求項2】
請求項1に記載の包装物を用いた水素発生装置であって、
該包装物又は水素貯蔵材料を、貯蔵するための貯蔵部と、
該包装物に包含された水素貯蔵材料と水とを反応させるための反応部と、
該反応部と接続された水供給部及び水素貯留部と、
反応後の該包装物を回収するための回収部と、
該包装物を、該貯蔵部から、該反応部を経て、該回収部へと移送する移送手段と、を備え、
該反応部は、該包装物を、該反応部内へと搬入するために開閉可能に設けられていることを特徴とする水素発生装置。
【請求項3】
前記反応部は、開閉手段によって開閉可能に設けられており、
該開閉手段は、水圧駆動となっていることを特徴とする請求項2に記載の水素発生装置。
【請求項4】
請求項2に記載の水素発生装置に用いられる前記包装物であって、
前記反応部を密封するための封止部を更に有することを特徴とする包装物。
【請求項5】
前記水素貯蔵材料は、水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする請求項1若しくは4に記載の包装物又は請求項2若しくは3に記載の水素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装物及びそれを用いた水素発生装置に関し、より詳細には、固体の水素貯蔵材料を包含する包装物及びそれを用いた水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の懸念から、水素がエネルギー源として利用されつつある。しかしながら、水素単体は、可燃性ガスであるため、移送等に難があり、そのため、固体の水素貯蔵材料が、着目されている。
【0003】
水素貯蔵材料として、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4、以下、SBHと略記する)がある。SBHは、水と反応することで、水素を発生し、副生成物であるメタホウ酸ナトリウム(NaBO2、以下、SMBと略記する)を回収して、アルミニウム等と共に水素と反応させることにより、再度、SBHに再生可能であることから着目されている(特許文献1を参照)。
【0004】
一方、この様なSBHを用いた水素発生装置として、SBHをカートリッジ化し、このカートリッジを反応容器として、カートリッジ内でSBHを水と反応させ、水素を発生させる装置がある(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/190403号
【特許文献2】特開2020-183336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水素発生装置においては、カートリッジが、反応容器を兼ねているため、水素発生装置にSBHの供給及びSMBの回収をする際に、反応容器ごと交換する必要があり、決して、SBHの供給と反応後のSMBの回収が、容易とはいえないものであった。
【0007】
そこで、本発明は、水素発生装置へ水素貯蔵材料の供給と反応後の副生成物の回収がより容易な固体の水素貯蔵材料を包含する包装物及びそれを用いた水素発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は。固体の水素貯蔵材料を包含する包装物であって、ここで、該水素貯蔵材料は、水と反応することで水素を発生させる化合物又は混合物であり、包装体を有し、該水素貯蔵材料は、該包装体内に包含され、該包装体は、細孔を有しており、該細孔は、水及び水素を透過可能で且つ粉粒体の透過を阻止可能な大きさに形成されていることを特徴とする包装物である。
【0009】
又、本発明は、前記包装物を用いた水素発生装置であって、該包装物又は水素貯蔵材料を、貯蔵するための貯蔵部と、該包装物に包含された水素貯蔵材料と水とを反応させるための反応部と、該反応部と接続された水供給部及び水素貯留部と、反応後の該包装物を回収するための回収部と、該包装物を、該貯蔵部から、該反応部を経て、該回収部へと移送する移送手段と、を備え、該反応部は、該包装物を、該反応部内へと搬入するために開閉可能に設けられていることを特徴とする水素発生装置である。
【0010】
尚、本発明は、前記反応部を、開閉手段によって開閉可能に設け、該開閉手段を、水圧駆動とすることが可能である。又、本発明は、前記水素発生装置に用いられる前記包装物において、前記反応部を密封するための封止部を更に有するものとすることが可能である。又、本発明は、前記水素貯蔵材料を、水素化ホウ素ナトリウムとすることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、水素貯蔵材料を包装体内に包含させ、該包装体が、液体及び気体を透過し且つ粉粒体の透過を阻止可能な大きさに形成された細孔を有することにより、水素発生装置へ水素貯蔵材料の供給と反応後の副生成物の回収がより容易な固体の水素貯蔵材料を包含する包装物及びそれを用いた水素発生装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における水素発生装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1に基づき説明する。先ず、本実施形態の包装物1及び水素発生装置2の構成について説明する。包装物1は、固体の水素貯蔵材料M(以下、材料Mと略記する)を包含しており、水素発生装置2(以下、装置2と略記する)に材料Mを供給するための包装物であり、包装体10を有している。
【0014】
材料Mは、水と反応することで水素を発生させる化合物又は混合物であり、例えば、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム(SBH)、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素マグネシウム、水素化ホウ素カルシウム等に代表される錯体水素化物であり、特に、水と反応の副生成物であるメタホウ酸ナトリウム(SMB)から比較的容易に再生可能であるSBHが好ましい。
【0015】
包装体10は、その内に、材料Mが包含されている。包装体10は、細孔(図示せず)を有している。該細孔は、水及び水素を透過可能で且つ粉粒体の透過を阻止可能な大きさに形成されている。本実施形態においては、包装体10は、少なくとも一面又はその全部が、該細孔を有する素材、例えば、不織布、織物、編物、で形成されており、該細孔は、例えば、不織布の線維と線維との間の空隙、織目、編目として形成される。又、本実施形態において、包装物1は、ティーバッグ様になっており、複数の包装物1が連結する形で設けられている。
【0016】
装置2は、材料Mを水と反応させることで水素を製造する装置であり、貯蔵部20と、反応部21と、水供給部22と、水素貯留部23と、回収部24と、移送手段と、を備えている。本実施形態においては、装置2を制御するために演算手段25を更に備えている。
【0017】
貯蔵部20は、反応前の包装物1(以下、包装物1Aという)を貯蔵しておくために設けられている。本実施形態においては、複数の包装物1Aが連結箇所で折り畳まれた状態で収容されており、移送時に包装体10の前記細孔が設けられている面が、後述する反応部21の放水部21cと対向する様に収容されている。貯蔵部20は、材料Mが、雰囲気中の水と反応しない様に、乾燥状態が保持される様になっている。
【0018】
反応部21は、材料Mと水とを反応させ、水素を発生させるために設けられており、水供給部22と、水素貯留部23とに接続されている。又、反応部21は、包装物1Aを反応部21内に搬入するために開閉可能に設けられている。
【0019】
本実施形態において、反応部21は、可動部21aと、基部21bと、によって構成されている。可動部21aは、開閉手段26によって上下動可能に設けられており、その内部には、水供給バルブV1を介して、水供給部22と接続された放水部21cが設けられている。又、基部21bには、基部21bに溜まった廃水の回収及び反応後の包装物1内の内容物の脱水を行うための排水手段27、例えば、真空ポンプ等と接続されている。開閉手段26は、ピストンとして設けられており、本実施形態においては、水圧駆動となっている。
【0020】
水供給部22は、例えば、ポンプとして設けられる。本実施形態において、開閉手段26及び後述する水素供給バルブV4に作動圧を供給する水圧ポンプを兼ねており、水供給部22は、バルブV2を介して、開閉手段26と、バルブV3を介して水素供給バルブV4と、接続されている。
【0021】
水素貯留部23は、反応部21で発生させた水素を反応部21より回収し、貯留しておくタンクであり、二次側が、水素供給バルブV4を介して、水素供給先(図示せず)、例えば、燃料電池等、と接続されている。
【0022】
本実施形態においては、水素貯留部23には、圧力ゲージ28と接続されており、圧力ゲージ28の数値が、演算手段25への送信される様になっている。水素供給バルブV4は、水圧駆動となっており、水素供給バルブV4と該水素供給先との間に流量計29が設けられている。
【0023】
回収部24は、反応後の包装物1(以下、包装物1Bという)を回収するために設けられている。前記移送手段は、包装物1を貯蔵部20から、反応部21を経て、回収部24へと移送するために設けられている。本実施形態において、回収部24は、包装体10を巻き取るローラとなっており、該移送手段を兼ねるものとなっている。
【0024】
次に、装置2の水素製造工程について、材料MがSBHである場合を例として説明する。貯蔵部20に収容された包装物1Aは、前記移送手段を兼ねる回収部24のローラが回転することによって、反応部21へと搬送される。包装物1Aが、反応部21まで搬送されると、開閉手段26に水供給部22より作動圧が供給され、可動部21aが降下し、反応部21を密閉する。
【0025】
反応部21が密閉された後に、水供給部22より放水部21cへと水が供給され、放水部21cより必要量の水が包装物1へと散布される。散布された水は、包装体10の前記細孔を透過して包装物1内に浸透し、材料Mと接触する。材料Mは、水と反応し、水素が発生し、発生した水素は、該細孔を透過して反応部21内へと放出され、水素貯留部23に貯留される。
【0026】
材料Mの大部分又は全てが水と反応し、水素の発生が略停止した段階で、再度、開閉手段26に水供給部22より作動圧が供給し、可動部21aを上昇させ、次の包装物1Aを反応部21へと搬送する。同様の手順を繰り返し、連続的に水素を発生させる。この際、包装物1Bには、SMBを含む副生成物Bが、包装体10内によって包含されている。本実施形態においては、可動部21aを上昇させる前に、排水手段27を起動させ、副生成部Bを含む包装体10内の内容物の脱水が行われる。
【0027】
包装物1Bは、回収部24のローラに巻き取られながら回収される。貯蔵部20に貯蔵されていた全ての包装物1Aについて反応させた後、回収部24によって回収された包装物1Bは、処理業者等に回収され、再処理施設等に送られ、SMBをSBHとする再生処理される。
【0028】
従って、本実施形態においては、材料Mを、水及び水素を透過可能で且つ粉粒体の透過を阻止可能な大きさの細孔が形成されている包装体10内に包含したため、装置1へ水素材料Mの供給と反応後の副生成物Bの回収がより容易となっている。
【0029】
以上、本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
(1)本発明は、錯体水素化物以外の材料M、例えば、金属水素化物等にも適用可能である。
【0031】
(2)上記実施形態においては、回収部24が前記移送手段を兼ねるものとしたが、別途、該移送手段として、ベルトコンベア等を設け、回収部24とは別の構成とすることも可能である。
【0032】
(3)上記実施形態においては、複数の包装物1を連結させたが、各包装物1をバラバラの状態とすることも可能である。
【0033】
(4)包装体10に、反応部21を密封するための封止部材(図示せず)、例えば、O-リング等を設け、該封止部材を可動部21aと基部21bとが挟持する様にして、反応部21を密封する様にしてもよい。
【0034】
(5)上記実施形態においては、予め材料Mが包装されている包装物1Aを貯蔵部20に貯蔵しておいたが、水素発生装置2に、材料Mを包装体10で包装し、包装物1を作成する包装手段(図示せず)を別途設け、貯蔵部20には材料Mを貯蔵しておき、それを該包装手段により包装し、反応部20へと移送する様にすることも可能である。この様にすることにより、水素発生装置2への材料Mの供給がより容易となる。
【0035】
(6)包装体10の細孔は、細孔のない素材に物理的に開けた孔であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば、燃料電池を動力源とする機関車・気動車の水素供給源として利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 包装物 10 包装体 2 水素発生装置
20 貯蔵部 21 反応部 21a 可動部
21b 基部 21c 放水部 22 水供給部
23 水素貯留部 24 回収部 25 演算手段
26 開閉手段 27 排水手段 28 圧力ゲージ
29 流量計 B 副生成物 M 水素貯蔵材料
V1 水供給バルブ V2 バルブ V3 バルブ
V4 水素供給バルブ
図1