(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106039
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】製造システム、軸受及び工場
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240731BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240731BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 160
B23K20/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010100
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信行
【テーマコード(参考)】
4E167
5G066
【Fターム(参考)】
4E167BF02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギを利用して得た電力を工場設備の稼働に利用する。
【解決手段】製造システム1は、再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置群2と、発電装置群2が出力する電気エネルギを受けて、電気エネルギと回転運動エネルギとを相互に変換可能な変換ユニット31と、回転運動エネルギを利用して被処理物に対して所定の加工を施す加工ユニット32と、を含む複数の加工装置30と、発電装置群2と加工装置30との間の電気エネルギの授受を制御するコントローラ43と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置と、
前記発電装置が出力する前記電気エネルギを受けて、前記電気エネルギと回転運動エネルギとを相互に変換可能な変換ユニットと、前記回転運動エネルギを利用して被処理物に対して所定の加工を施す加工ユニットと、を含む1又は複数の加工装置と、
前記発電装置と前記加工装置との間の前記電気エネルギの授受を制御するコントローラと、を備える製造システム。
【請求項2】
前記変換ユニットは、
前記電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部と、
前記回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部と、を有する、請求項1に記載の製造システム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記発電装置が生み出す前記電気エネルギの総量であるエネルギ発生量と、前記複数の加工装置が要求する前記電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、
前記エネルギ発生量が前記エネルギ要求量に満たない場合に、前記エネルギ発生量が前記エネルギ要求量を満たすように、稼働させる前記加工装置の数又は停止させる前記加工装置の数を決定する、請求項2に記載の製造システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記発電装置が生み出す前記電気エネルギの量であるエネルギ発生量と、前記複数の加工装置が要求する前記電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、
前記エネルギ発生量が前記エネルギ要求量に満たない場合に、停止させる前記加工装置の数を決定すると共に、
前記停止させる前記加工装置から、前記エネルギ保存部に保存された前記回転運動エネルギを前記エネルギ変換部によって回生電気エネルギに変換し、前記回生電気エネルギを出力させる動作を実行させる前記加工装置の数を決定する、請求項2に記載の製造システム。
【請求項5】
前記被処理物は、少なくとも第1部材と第2部材とを含み、
前記加工ユニットは、前記回転運動エネルギを利用して、前記第1部材に対して前記第2部材を相対的に回転させることによって、摩擦熱を発生させ、前記摩擦熱を利用した加工を行う、請求項2に記載の製造システム。
【請求項6】
前記加工ユニットが行う前記摩擦熱を利用した加工は、前記摩擦熱を利用した熱処理加工である、請求項5に記載の製造システム。
【請求項7】
前記加工ユニットが行う前記摩擦熱を利用した加工は、前記摩擦熱を利用して前記第1部材及び前記第2部材を相互に接合する接合加工である、請求項5に記載の製造システム。
【請求項8】
請求項1に記載された製造システムによって製造された軸受。
【請求項9】
再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置と、
2以上の材料を利用して結果物を得る複数の加工装置と、を備え、
前記加工装置は、前記発電装置が出力する前記電気エネルギを利用することによって、外部からの前記電気エネルギの供給を受けることなく稼働することが可能であり、
前記加工装置は、前記材料として廃材を利用することによって、外部からの材料の供給を受けることなく前記結果物を得ることが可能である、工場。
【請求項10】
複数の前記加工装置は、複数の前記材料同士を相対的に動かすことによって得られる摩擦熱を利用した加工を行い、
前記摩擦熱を利用した加工に要するエネルギは、前記再生可能エネルギに基づく前記発電装置が出力する前記電気エネルギによって賄われる、請求項9に記載の工場。
【請求項11】
複数の前記加工装置から、前記結果物の製造のために稼動させる加工装置と、稼働させない加工装置と、が選択され、
前記稼働させない加工装置は、前記電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部と、前記回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部と、を有し、
前記稼働させない加工装置は、前記回転運動エネルギを保存すると共に、保存された前記回転運動エネルギを前記エネルギ変換部を介して前記電気エネルギとして出力する、請求項9に記載の工場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造システム、軸受及び工場に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆる再生可能エネルギの利用に注目が集まっている。特許文献1は、再生可能エネルギを用いて発電する装置を含むエネルギシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生可能エネルギを利用して得た電力は、一般家庭の電力需要を満たすために用いられるだけでなく、工場設備の稼働に用いることも検討されている。しかし、再生可能エネルギを利用する発電は、固有の特徴を有している。それらの固有の特徴は、再生可能エネルギを利用して得た電力を工場設備の稼働に用いるに際して、制限となることがある。
【0005】
そこで、本発明は、再生可能エネルギを利用して得た電力を工場設備の稼働に利用することが可能な製造システムを提供する。また、本発明は、当該製造システムによって製造された軸受を提供する。さらに、本発明は、当該システムを備えた工場を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である製造システムは、再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置と、発電装置が出力する電気エネルギを受けて、電気エネルギと回転運動エネルギとを相互に変換可能な変換ユニットと、回転運動エネルギを利用して被処理物に対して所定の加工を施す加工ユニットと、を含む1又は複数の加工装置と、発電装置と加工装置との間の電気エネルギの授受を制御するコントローラと、を備える。
【0007】
この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電気エネルギは、回転運動エネルギに変換される。そして加工装置は、当該回転運動エネルギを利用して所定の加工を行うことが可能である。従って、再生可能エネルギを利用して得た電力を工場設備の稼働に利用することができる。
【0008】
上記の製造システムの変換ユニットは、電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部と、回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部と、を有してもよい。この構成によれば、加工装置は、回転運動エネルギを保存することができる。
【0009】
上記の製造システムのコントローラは、発電装置が生み出す電気エネルギの総量であるエネルギ発生量と、複数の加工装置が要求する電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、エネルギ発生量がエネルギ要求量に満たない場合に、エネルギ発生量がエネルギ要求量を満たすように、稼働させる加工装置の数又は停止させる加工装置の数を決定してもよい。この構成によれば、発電装置の発電量が低下した場合であっても、加工装置を安定して稼働させることができる。
【0010】
上記の製造システムのコントローラは、発電装置が生み出す電気エネルギの量であるエネルギ発生量と、複数の加工装置が要求する電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、エネルギ発生量がエネルギ要求量に満たない場合に、停止させる加工装置の数を決定すると共に、停止させる加工装置から、エネルギ保存部に保存された回転運動エネルギを、エネルギ変換部によって回生電気エネルギに変換し、回生電気エネルギを出力させる動作を実行させる加工装置の数を決定してもよい。この構成によれば、発電装置の発電量がさらに低下した場合であっても、加工装置を安定して稼働させることができる。
【0011】
上記の製造システムにおいて、被処理物は、少なくとも第1部材と第2部材とを含み、加工ユニットは、回転運動エネルギを利用して、第1部材に対して第2部材を相対的に回転させることによって、摩擦熱を発生させ、摩擦熱を利用した加工を行ってもよい。この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力によって、加熱を要する加工を行うことができる。
【0012】
上記の製造システムにおいて、加工ユニットが行う摩擦熱を利用した加工は、摩擦熱を利用した熱処理加工であってもよい。この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力によって、熱処理加工を行うことができる。
【0013】
上記の製造システムにおいて、加工ユニットが行う摩擦熱を利用した加工は、摩擦熱を利用して第1部材及び第2部材を相互に接合する接合加工であってもよい。この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力によって、接合加工を行うことができる。
【0014】
本発明の別の形態は、上記の製造システムによって製造された軸受である。この軸受は、再生可能エネルギを利用して製造することができる。
【0015】
本発明のさらに別の形態である工場は、再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置と、2以上の材料を利用して結果物を得る複数の加工装置と、を備える。加工装置は、発電装置が出力する電気エネルギを利用することによって、外部からの電気エネルギの供給を受けることなく稼働することが可能である。加工装置は、材料として廃材を利用することによって、外部からの材料の供給を受けることなく結果物を得ることが可能である。このような工場によれば、材料費やエネルギー価格に左右されずに、安定した低コストで、かつ、環境負荷の小さい軸受を生産できる。
【0016】
上記の工場において、複数の加工装置は、複数の材料同士を相対的に動かすことによって得られる摩擦熱を利用した加工を行ってもよい。摩擦熱を利用した加工に要するエネルギは、再生可能エネルギに基づく発電装置が出力する電気エネルギによって賄われてもよい。
【0017】
上記の工場では、複数の加工装置から、結果物の製造のために稼動させる加工装置と、稼働させない加工装置と、が選択されてもよい。稼働させない加工装置は、電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部と、回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部と、を有してもよい。稼働させない加工装置は、回転運動エネルギを保存すると共に、保存された回転運動エネルギをエネルギ変換部を介して電気エネルギとして出力してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力を工場設備の稼働に利用することが可能な製造システムが提供される。また、当該製造システムによって製造された軸受が提供される。さらに、本発明によれば、当該システムを備えた工場が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態の製造システムを備えた工場を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、プレス加工を行う加工装置の例示である。
【
図3】
図3は、接合加工を行う加工装置の例示である。
【
図4】
図4は、コントローラの機能ブロック図である。
【
図5】
図5(a)は材料供給管理施設が扱う廃材の一例である。
図5(b)は材料供給管理施設が扱う別の廃材の一例である。
【
図6】
図6(a)は、製造システムにおける第1の態様である。
図6(b)は、製造システムにおける第2の態様である。
【
図7】
図7は、雲天であるときのいくつかの状況を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)は、製造システムにおける第3の態様の一例である。
図8(b)は、製造システムにおける第3の態様の別の例である。
【
図9】
図9(a)は、製造システムにおける第3の態様のさらに別の例である。
図9(b)は、製造システムにおける第3の態様のさらに別の例である。
【
図10】
図10(a)は、製造システムにおける第4の態様の一例である。
図10(b)は、製造システムにおける第4の態様の別の例である。
【
図11】
図11(a)は、製造システムにおける第4の態様の一例である。
図11(b)は、製造システムにおける第4の態様の別の例である。
【
図12】
図12は、製造システムにおける第4の態様の一例である。
図11(b)は、製造システムにおける第4の態様のさらに別の例である。
【
図13】
図13(a)は、製造システムにおける第5の態様の一例である。
図13(b)は、製造システムにおける第5の態様の別の例である。
【
図14】
図14は、製造システムにおける第5の態様のさらに別の例である。
【
図15】
図15(a)は、製造システムにおける第6の態様の一例である。
図15(b)は、製造システムにおける第6の態様の別の例である。
【
図16】
図16(a)は、製造システムにおける第7の態様の一例である。
図16(b)は、製造システムにおける第7の態様の別の例である。
【
図17】
図17(a)は、製造システムにおける第8の態様の一例である。
図17(b)は、製造システムにおける第8の態様の別の例である。
【
図18】
図18は、変形例の製造システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、製造システム1を示すブロック図である。
図1に示す製造システム1は、2つの特徴を有する。第1の特徴は、外部の大規模発電所からの電力の供給を必要としない点である。この「外部からの電力の供給を必要としない」とは、外部から電力の供給を受けることを排除するものではない。製造システム1は、外部からの電力の供給がなくとも、稼働をすることができる。このような製造システム1は、いわゆるマイクログリッドとも称することができる。第2の特徴は、製造システム1が製造する製品のための材料の一部又は全部について、廃材θ2を利用している点である。廃材θ2とは、製造システム1が稼働する工場9Aから排出されるものでもよいし、別の工場9Bから排出され、輸送されたものであってもよい。つまり、製造システム1は、稼働に要するエネルギ(電力)及び材料について外部に頼ることなく、内部で必要量を満たそうとするものである。
【0022】
製造システム1は、発電装置群2と、加工装置群3と、エネルギ管理装置4と、材料供給管理装置5と、を有する。
【0023】
<発電装置群>
発電装置群2は、加工装置群3の稼働に要する電力を発生する。発電装置群2は、基本的には外部の電力系統に接続されていない。従って、発電装置群2が発生した電力は、エネルギ管理装置4を介して加工装置群3に分配される。発電装置群2は、製造システム1が設置されている工場9Aの敷地内に設けてもよい。発電装置群2は、工場9Aの敷地の外に設けてもよい。工場9Aの敷地の外に設けた場合には、発生した電力は、専用の送電線によって工場9Aに送られる。つまり、発電装置群2が発生した電力は、電力系統を介して工場9Aに送られなくてもよい。
【0024】
発電装置群2は、例えば、太陽光発電装置21と、風力発電装置22と、を有する。これらは再生可能エネルギである太陽光や風力をエネルギ源として発電する。発電装置群2は、再生可能エネルギを利用して発電するその他の装置を含んでもよい。
【0025】
<加工装置群>
加工装置群3は、発電装置群2から電力の供給を受けて、稼働する。つまり、加工装置群3は、電力の需要家である。加工装置群3は、複数の多様な加工装置を含む。
図1の例示では、加工装置群3は、複数の加工装置30A、30B、30C、30Dを含む。以下の説明において、特に区別する必要がない場合には、単に「加工装置30」と記載する。
【0026】
図2は、加工装置30Aの例示である。加工装置30Aは、プレス加工装置である。シングルプレス機といったプレス加工装置は、供給された材料に対して、前加工、ブランク、増厚、フォームといった加工を実行する。さらに、卓上プレス機といったプレス加工装置は、反転、径調整(拡径)といった加工を実行する。加工装置30Aは、変換ユニット31と、加工ユニット32Aと、を有する。
【0027】
変換ユニット31は、電力を受けて、当該電力を加工に要する運動エネルギに変換する。具体的には、変換ユニット31は、モータ311と、フライホイール312と、クラッチ313と、ギヤ314と、を含んでよい。モータ311は、電気エネルギを回転運動エネルギに変換する。フライホイール312は、回転運動エネルギを一時的に蓄えるエネルギ保存部である。
【0028】
モータ311の回転に要する電力は、再生可能エネルギによって発電する発電装置群2から出力される電力によって十分に満たすことができる。加工装置30が実行する加工は、様々である。加工装置30は、電力を回転運動エネルギに変換し、その回転運動エネルギをさらに加工の内容に応じて利用する機能を有する。
【0029】
モータ311は、電気エネルギを回転運動エネルギに変換するものであるが、回転運動エネルギを電気エネルギに変換することもできる。つまり、フライホイール312の回転運動によってモータ311の回転軸を回す。その結果、モータ311は電力を発生することができる。つまり、変換ユニット31は、電力を消費する需要家であると同時に、電力を生み出す電力供給部としても機能することができる。
【0030】
加工ユニット32Aは、フライホイール312に保存されたエネルギを用いて、被処理物8に対してプレス加工を行う。加工ユニット32Aは、一例として、クランクシャフト321と、コンロッド322と、スライダー323と、ボルスター324と、を有する。クランクシャフト321は、フライホイール312の回転運動を往復直線運動に変換する。クランクシャフト321には、コンロッド322が連結されている。コンロッド322の先端には、被処理物8をプレスするスライダー323が取り付けられている。コンロッド322の往復直線運動によって、スライダー323がボルスター324の上に載置された被処理物8に対してプレス加工を行う。
【0031】
図3は、加工装置30Dの例示である。加工装置30Dは、接合装置である。加工装置30Dは、複数の部品同士を摩擦熱によって接合する。加工装置30Dの加工ユニット32Dは、ローラ325と、固定治具326と、ローラ側チャック327と、固定治具側チャック328と、を有する、ローラ325は、クラッチ313を介して、フライホイール312から回転運動を受けて、回転する。回転するローラ325は、例えば、軸受のための部品である円盤部品80(第1部品)をローラ側チャック327でチャックして回転する。一方、回転しない固定治具326は、フランジ付き円筒部品83を固定治具側チャック328でチャックして固定する。ローラ325が回転する前は、円盤部品80、円筒部品81、82及びフランジ付き円筒部品83は、いずれも互いに接触しているだけである。つまり、これらの部品は、互いに固定されていない。ただし、フランジ付き円筒部品83、円筒部品81、82は、互いに、隙間が存在しない状態(いわゆるゼロスキマ)であってもよい。さらに、円筒部品81(第2部品)、円筒部品82(第2部品)及びフランジ付き円筒部品83(第2部品)は、軽い圧入によって組み立てられたものであってもよい。
325
【0032】
ローラ325の回転に伴って、ローラ側チャック327にチャックされている円盤部品80が回転する。そうすると、次の箇所の相対回転が生じ、擦れ合う。
【0033】
第1の箇所(P1A、P1B、P1C):円盤部品80の端面801と円筒部品81の端面811とが接触する箇所(P1A)。円盤部品80の端面801と円筒部品82の端面821とが接触する箇所(P1B)。円盤部品80の端面801とフランジ付き円筒部品83の端面831とが接触する箇所(P1C)。
【0034】
第2の箇所(P2):フランジ付き円筒部品83の外周面832と円筒部品82の内周面822とが接触する箇所(P2)。
第3の箇所(P3):円筒部品82の外周面823と円筒部品81の内周面812とが接触する箇所(P3)。
第4の箇所(P4):フランジ付き円筒部品83のフランジ面833と円筒部品81の端面814とが接触する箇所(P4)。
第5の箇所(P5):フランジ付き円筒部品83のフランジ面833と円筒部品81の端面824とが接触する箇所(P5)。
【0035】
以上の第1~第5の箇所で、擦れ合いに起因して、摩擦熱が発生する。発生する摩擦熱に応じて、部品同士は、いわゆる熱圧着(拡散接合)によって互いに固定される。加熱された部品の温度は、変態点として定義された温度より高くなる。変態点である温度より高い温度である部品を冷却する際に、冷却速度を制御する。その結果、所望の熱処理を施すことが可能である。
【0036】
このように、加工装置30Dは、接合加工及び熱処理のために部品を加熱する際に、フライホイール312に保存された回転運動エネルギを用いる。この回転運動エネルギは、太陽光発電装置21が発生する電力を受けたモータ311によって発生する。一般に、接合加工及び熱処理に要する熱として、電気エネルギから直接に変換された熱エネルギを利用する場合には、高電圧或いは大電流を要する。一方、モータ311の駆動に要する電力は、これよりも低い電圧或いは少ない電流で足りる。従って、外部の大規模発電所からの電力により電気炉のような高電圧或いは大電流を要する装置を駆動するのではなく、太陽光発電装置21が発生する電力によってモータ311を駆動することが可能である。従って、モータ311の回転運動エネルギを利用する加工装置30Dの電源として、再生可能エネルギを利用した太陽光発電装置21及び/又は風力発電装置22を利用することができる。
【0037】
<エネルギ管理装置>
エネルギ管理装置4は、複数の加工装置に対して、稼働に必要な電力を適宜供給する。製造システム1は、電力を供給するものとして、発電装置群2と蓄電池42と加工装置群3の加工装置30とを含む。製造システム1は、電力を消費するものとして、加工装置群3と蓄電池42とを含む。エネルギ管理装置4は、これらの電力を供給するものと電力を消費するものとの間に立ち、複数の加工装置に対して稼働に必要な電力を適宜分配する。
【0038】
エネルギ管理装置4が行う電力の供給とは、例えば、発電装置群2が発生した電力を複数の加工装置30に分配することである。また、エネルギ管理装置4が行う電力の供給とは、発電装置群2が発生した電力と、後述する蓄電池42の電力と、を足し合わせた電力を複数の加工装置30に分配することである。
【0039】
図1に示すように、エネルギ管理装置4は、配電設備41と、蓄電池42と、コントローラ43と、を含む。配電設備41は、発電装置群2と、加工装置群3と、を電気的に接続する電力網である。配電設備41は、さらに電力の導通を許可又は禁止するスイッチを備えている。蓄電池42は、発電装置群2が発生した電力を一時的に保存(充電)する。さらに、蓄電池42は、保存した電力を必要に応じて加工装置30に供給(放電)する。蓄電池42の充電動作及び放電動作は、コントローラ43が出力する制御信号φ42によって制御される。コントローラ43は、電力の供給に要する種々の制御を実行する。
【0040】
エネルギ管理装置4は、さらにセンサ44を含んでもよい。センサ44は、天気に関する情報を取得する。センサ44は、取得したデータφ44をコントローラ43に出力する。データφ44は、例えば、空の領域に占める雲の量を数値化したものであってもよい。データφ44は、雨が降っているか否かを検知した結果であってもよい。さらに、データφ44は、太陽光の照射強度を数値化したものであってもよい。
【0041】
なお、センサ44は、発電装置群2が出力する電力に関する情報としてデータφ20を取得してもよい。つまり、発電装置群2が出力する電力に関する情報は、発電装置群2から直接にコントローラ43に与えられてもよいし、センサ44を介してコントローラ43に与えられてもよい。センサ44を介してコントローラ43に与えられる場合には、発電装置群2における電力計といった計測器を省略することができる。
【0042】
コントローラ43は、加工装置30のための制御信号φ31、配電設備41のための制御信号φ41及び蓄電池42のための制御信号φ42を出力する。コントローラ43は、エネルギに関する情報と、天気に関する情報と、を用いて制御信号φ31、φ41、φ42を出力する。コントローラ43が出力する制御信号φ41は、例えば、配電設備41のスイッチに出力される。コントローラ43が出力する制御信号φ42は、蓄電池42に出力される。コントローラ43が出力する制御信号φ31は、加工装置30に出力される。
【0043】
図4に示すように、コントローラ43は、エネルギ情報取得部431と、天候情報取得部432と、動作形態選択部433と、制御信号発生部434と、を有する。これらの機能構成要素は、所定のプログラムがコンピュータで実行されることによって実現される。
【0044】
エネルギ情報取得部431は、電力に関する情報としてデータφ20、φ30、φ42pを受ける。データφ20は、発電装置群2が出力する電力の情報である。データφ30は、加工装置群3が要求する電力又は加工装置群3が出力する電力の情報である。データφ42pは、蓄電池42が出力する電力の情報である。
【0045】
天候情報取得部432は、天候に関する情報として、データφ44、φ60を受ける。データφ44は、センサ44によって得た天候に関する情報である。データφ44は、太陽光の照射強度であってもよいし、雲量であってもよいし、雨量であってもよい。データφ60は、外部情報源60が出力する天候に関する情報である。
【0046】
動作形態選択部433は、製造システム1の動作形態を選択する。製造システム1の動作形態は、後述するようにいくつかの態様を含む。動作形態選択部433は、エネルギ情報取得部431が得たデータφ20、φ30、φ42p及び天候情報取得部432が得たデータφ44、φ60を用いて、製造システム1をいずれの形態で動作させるかを選択する。動作形態選択部433の具体的な動作については後述する。
【0047】
制御信号発生部434は、製造システム1を動作形態選択部433によって決定された態様とするための制御信号を発生する。
【0048】
<材料供給管理装置>
図1に示す材料供給管理装置5は、複数の加工装置30に対して、製品の製造に必要な材料θ1を供給する。材料供給管理装置5が供給する材料θ1は、加工装置群3から排出された廃材θ2を含む。また、材料供給管理装置5が供給する材料θ1は、製造システム1が設置された工場9Aとは別の工場9Bから輸送された廃材θ2であってもよい。
【0049】
材料供給管理装置5が扱う廃材θ2は、
図5(a)に示す円板状の部材843であってもよい。円板状の部材843は、他の部品や製品(例えばニードル軸受)の製造時に生じる。例えば、ニードル軸受の製造時には、コイル材を伸ばして得られる板状の部材841に順送プレス加工を施すことにより、板状の部材841から円環板状の部材842が形成される。この円環板状の部材842から、円環板状の部材842における中央の空洞部に対応した形状の円板状の部材843が得られる。この円板状の部材843は本来であれば廃材として廃棄される。しかし、材料供給管理装置5は、これらを回収し、別の部品のための素材として利用する。そのため、被処理物を準備するためのコストを低減することが可能となり、ひいては製造コストを低減することが可能となる。
【0050】
材料供給管理装置5が扱う廃材θ2は、円環板状の部材842とは異なる部材が素材として用いられてもよい。例えば、
図5(b)に示すように、順送プレス加工において搬送枠として用いられる巻回されたコイル材85の先端部851や終端部852は通常は廃棄される。これらの先端部851や終端部852から円板状の部材を形成してもよい。この場合にも、製造コストを低減することができる。
【0051】
<動作>
次に、エネルギ管理装置4の動作について説明する。すでに述べたように、製造システム1は、電力を供給するものと、電力を消費するものと、を含む。電力を与えるものと、電力を受け取るものとの間で行われる電力の授受に注目し、
図6~
図17を参照しながら第1~第8の態様のそれぞれについて説明する。
【0052】
図6、
図8~
図17では、加工装置30の数は、N台であるとする。N台の加工装置30のうち、NA台の加工装置30Aは、材料に対して何らかの加工動作を行っているものとする。N台の加工装置30のうち、残りのNB台の加工装置30Bは、加工動作を行っていないものとする。
【0053】
図6、
図8~
図17において、太い実線は電力が流れていることを示す。細い破線は電力が流れていないことを示す。
【0054】
以下の説明では、以下の値を用いる。
E(入力):発電装置群2から入力される発電電力。
E(NA):加工動作を行うNA台の加工装置30Aが要求する需要電力。
E(NB):加工動作を行わないNB台の加工装置30Bが要求する需要電力。
E(蓄電池):蓄電池42へ充電される充電電力又は蓄電池42から放電される放電電力。
【0055】
つまり、E(入力)は、データφ20の具体的な値であり、E(NA)及びE(NB)は、データφ30の具体的な値であり、E(蓄電池):は、データφ42pの具体的な値である。
【0056】
<第1の態様(S1)>
図6(a)は、製造システム1における第1の態様S1である。コントローラ43は、式(1)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、第1の態様S1を選択する。例えば、天候が快晴であるときに式(1)が満たされることがある。快晴であるとき、発電装置群2は、十分な電力を発生しているからである。
E(入力)>E(NA)+E(NB)…(1)
【0057】
第1の態様S1であるとき電力を与えるものは、発電装置群2である。第1の態様S1であるとき電力を受け取るものは、加工装置30A、30B及び蓄電池42である。
【0058】
加工装置30A、30Bは、電力を受け取ってモータ311を回転させ、モータ311が発生した回転運動エネルギをフライホイール312に保存する。加工動作を行うNA台の加工装置30Aは、フライホイール312に保存した回転運動エネルギをクラッチ313を介して加工ユニット32に渡す。つまり、クラッチ313は接続されている。その結果、フライホイール312に保存した回転運動エネルギは消費される。そして、加工ユニット32Aは、プレス加工又は接合加工などを行う。
【0059】
一方、加工動作を行わないNB台の加工装置30Bは、フライホイール312に保存した回転運動エネルギを加工ユニット32に渡さない。つまり、クラッチ313は接続されていない。その結果、フライホイール312に保存した回転運動エネルギは保存される。
【0060】
式(2)に示すように、発電電力(E(入力))と、需要電力の合計値(E(NA)+E(NB))との差分は、蓄電池42に与えられてもよい。なお、電力(E(蓄電池))に付した符号(プラス)は、充電であることを示す。
+E(蓄電池)=E(入力)-{E(NA)+E(NB)}…(2)
【0061】
製造システム1は、平準化した計画で運用する。従って、加工動作を行わない加工装置30の数がゼロ(NB=0)となることはほぼない。従って、太陽光が多い場合には全ての加工装置30を加工動作を行うものとして扱ってもよい(N=NA)。
【0062】
<第2の態様(S2)>
図6(b)は、製造システム1における第2の態様S2である。コントローラ43は、式(3)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、第2の態様S2を選択する。例えば、天候が晴天であるときに式(3)が満たされることがある。第2の態様S2であるときの天候は、太陽光が雲に遮られる時間が所定量存在する晴天の状態であってもよい。
E(NA)+E(NB)>E(入力)>E(NA)…(3)
【0063】
第2の態様S2であるとき電力を与えるものは、発電装置群2である。第2の態様S2であるとき電力を受け取るものは、加工装置30A、30Bである。より詳細には、NA台の加工装置30Aは、電力を受け取る。NB台の加工装置30Bのうち一部の加工装置30Bは、電力を受け取る。NB台の加工装置30Bのうち残りの加工装置30Bは、電力を受け取らない。具体的には、NB台の加工装置30Bのうち一部の加工装置30Bが受け取る電力は、式(4)によって示す。
E(NB)=E(入力)-E(NA)…(4)
【0064】
NA台の加工装置30Aは、第1の態様S1と同様の動作を行う。NB台の加工装置30Bのうち一部の加工装置30Bも、第1の態様S1と同様の動作を行う。NB台の加工装置30Bのうち残りの加工装置30Bは、なんらの動作も行わない。
【0065】
なお、コントローラ43は、入力電力(E(入力))と需要電力(E(NA))との差分を、蓄電池42に与えてもよい(式(5)参照)。
+E(蓄電池)=E(入力)-E(NA)…(5)
【0066】
ところで、天候が曇りであるときには、様々な状況があり得る。太陽光発電装置21が発電する電力に影響を与える要素として、雲の状態と風の状態とが例示できる。
図7は、雲の状態を横軸とし、風の状態を縦軸とした図である。雲の状態は、薄い又は濃いとして評価する。風の状態は、強い又は弱いとして評価する。そうすると、4つの状況が設定できる。
第1の状況W1:雲の状態:薄い、風の状態:強い。
第2の状況W2:雲の状態:濃い、風の状態:強い。
第3の状況W3:雲の状態:濃い、風の状態:弱い。
第4の状況W4:雲の状態:薄い、風の状態:弱い。
【0067】
それぞれの状況において、発電装置群2が発生する発電電力と、加工装置群3が要求するする需要電力との関係は、おおよそ以下のように想定できる。
第1の状況W1:発電電力は需要電力より多い。発電電力は余る。
第2の状況W2:発電電力は需要電力と釣り合う。
第3の状況W3:発電電力は需要電力より少ない。発電電力は不足する。
第4の状況W4:発電電力は需要電力と釣り合う。
【0068】
つまり、それぞれの状況において、発電電力と需要電力との関係が異なる。そこで、コントローラ43は、それぞれの状況に応じて製造システム1の動作態様を選択する。
【0069】
<第3の態様(S3A、S3B、S3C、S3D)>
図8及び
図9は、製造システム1における第3の態様S3である。第3の態様S3は、雲天であるときに採用できる。第3の態様S3は、さらに態様S3A、S3B、S3C、S3Dを含む。
【0070】
図8(a)は、製造システム1における態様S3Aである。コントローラ43は、式(6)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S3Aを選択する。例えば、天候が曇りであり、且つ、上述した第1の状況W1(雲の状態:薄い、風の状態:強い)ときに、式(6)が満たされることがある。第1の状況W1では、太陽光発電装置21が一時的に太陽光を直接に受けることがある。
E(入力)>E(NA)…(6)
【0071】
態様S3Aであるとき電力を与えるものは、発電装置群2である。態様S3Aであるとき電力を受け取るものは、加工装置30A、30Bである。より詳細には、NA台の加工装置30Aは、電力を受け取る。NB台の加工装置30Bのうち一部の加工装置30Bは、電力を受け取る。NB台の加工装置30Bのうち残りの加工装置30Bは、電力を受け取らない。具体的には、NB台の加工装置30Bのうち一部の加工装置30Bが受け取る電力は、式(7)によって示す。
E(NB)=E(入力)-E(NA)…(7)
【0072】
なお、コントローラ43は、入力電力(E(入力))と需要電力(E(NA))との差分を、蓄電池42に与えてもよい(式(8)参照)。
+E(蓄電池)=E(入力)-E(NA)…(8)
【0073】
図8(b)は、製造システム1における態様S3Bである。コントローラ43は、式(9)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S3Bを選択する。例えば、天候が曇りであり、且つ、上述した第2の状況W2(雲の状態:濃い、風の状態:強い)ときに、式(9)が満たされることがある。
E(入力)≒E(NA)…(9)
【0074】
態様S3Bであるとき電力を与えるものは、発電装置群2である。態様S3Bであるとき電力を受け取るものは、加工装置30Aである。より詳細には、NA台の加工装置30Aは、電力を受け取る。NB台の加工装置30Bは、電力を受け取らない。
【0075】
図9(a)は、製造システム1における態様S3Cである。コントローラ43は、式(10)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S3Cを選択する。例えば、天候が曇りであり、且つ、上述した第3の状況W3(雲の状態:濃い、風の状態:弱い)ときに、式(10)が満たされることがある。
E(入力)<E(NA)…(10)
【0076】
態様S3Cであるとき電力を与えるものは、発電装置群2、加工装置3Bである。態様S3Cであるとき電力を受け取るものは、加工装置30Aである。より詳細には、NA台の加工装置30Aは、電力を受け取る。
【0077】
NB台の加工装置30Bは、式(11)に示すフライホイール212に保存したエネルギを変換した電力を出力する。
E(NB)=E(NA)-E(入力)…(11)
なお、NB台全ての加工装置30Bから出力された電力をもってしてもNA台の加工装置30Aの需要電力を満たせない場合には、不足する電力を蓄電池42から得てもよい。
【0078】
図9(b)は、製造システム1における態様S3Dである。コントローラ43は、式(12)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S3Dを選択する。例えば、天候が曇りであり、且つ、上述した第4の状況W4(雲の状態:薄い、風の状態:弱い)ときに、式(12)が満たされることがある。
E(入力)≒E(NA)…(12)
【0079】
態様S3Dであるとき電力を与えるものは、発電装置群2である。態様S3Dであるとき電力を受け取るものは、加工装置30Aである。より詳細には、NA台の加工装置30Aは、電力を受け取る。NB台の加工装置30Bは、電力を受け取らない。
【0080】
上述の第1の態様S1、第2の態様S2及び第3の態様S3は、ある特定の天候であるときに、製造システム1が採用し得るものであった。天候は、一日のうちで晴天から曇天に変わることもあるし、晴天から雨天に変わることもある。以下、このような場合に製造システム1が採用し得る第4の態様S4、第5の態様S5及び第6の態様S6について説明する。
【0081】
<第4の態様(S4A、S4B、S4C、S4D、S4E)>
図10、
図11及び
図12は、製造システム1における第4の態様S4である。第4の態様S4は、晴天から曇天に変わるときに採用できる。第4の態様S4は、さらに態様S4A、S4B、S4C、S4Eを含む。コントローラ43は、晴天であるときに態様S4A又は態様S4Bを選択する。コントローラ43は、曇天であるときに態様S4C又は態様S4Eを選択する。
【0082】
コントローラ43は、式(13)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S4A又は態様S4Bを選択する(
図10参照)。コントローラ43は、天候を直接に示す情報によらず、発電電力と需要電力との関係に基づいて、動作形態を選択してよい。つまり、式(13)を満たすときが、晴天であると定義してもよい。
E(入力)>E(NA)…(13)
【0083】
コントローラ43は、余剰電力の保存先として、まず蓄電池42を選択する。コントローラ43は、蓄電池42からデータφ42pを受ける。データφ42pが満充電ではない状態を示すとき、コントローラ43は、態様S4Aを選択する。態様S4Aは、余剰電力を蓄電池42に蓄える(
図10(a)参照)。データφ42pが満充電である状態を示すとき、コントローラ43は、態様S4Bを選択する。態様S4Bは、余剰電力をNB台の加工装置30Bに蓄える(
図10(b)参照)。要するに、コントローラ43は、余剰電力の保存先として蓄電池42をNB台の加工装置30Bより優先させてもよい。
【0084】
天候が晴天から曇天に変わると、式(13)に示す電力の関係が満たされなくなる。コントローラ43は、式(13)に示す電力の関係が満たされなったことを条件として、次に、式(14)を満たすか否かを判定する。曇天であるときには、式(14)を満たす場合と、式(14)を満たさない場合と、がある。
E(入力)≒E(NA)…(14)
【0085】
例えば、式(14)は、曇天であって、且つ、上述した第2の状況W2(雲の状態:濃い、風の状態:強い)又は第4の状況W4(雲の状態:薄い、風の状態:弱い)であるときに満たされる。式(14)が満たされる場合には、コントローラ43は、発電装置群2が出力した発電電力(E(入力))を、NA台の加工装置30Aに与える態様S4Cを選択する(
図11(a)参照)。コントローラ43は、発電装置群2が出力した発電電力(E(入力))を、NB台の加工装置30B及び蓄電池42には与えない。
【0086】
例えば、式(14)は、曇天であって、且つ、上述した第3の状況W3(雲の状態:濃い、風の状態:弱い)であるときに満たされない。式(14)が満たされないとは、要するに、発電電力(E(入力))が需要電力(E(NA))よりも少ない状態である。この場合には、コントローラ43は、不足する電力をNB台の加工装置30Bから賄う態様S4D(
図11(b))又は蓄電池42から賄う態様S4E(
図12)を選択する。
【0087】
コントローラ43は、まず、NB台の加工装置30Bからデータφ30を受ける。データφ30が所定量の電力の蓄えがあることを示す場合には、コントローラ43は、NB台の加工装置30Bから電力を出力させる態様S4Dを選択する。一方、データφ30が所定量の電力の蓄えがないことを示す場合には、コントローラ43は、蓄電池42から電力を出力させる態様S4Eを選択する。要するに、コントローラ43は、不足電力を賄う電力源としてNB台の加工装置30Bを蓄電池42より優先させてもよい。
【0088】
なお、コントローラ43は、晴天であるか雲天であるかの判断を、センサ44のデータφ44又は外部情報源60のデータφ60を用いて判断してもよい。例えば、コントローラ43は、センサ44のデータφ44又は外部情報源60のデータφ60が第3の状況W3(雲の状態:濃い、風の状態:弱い)を定義する条件を満たすときに、式(13)を満たすか否かの判断と、式(14)を満たすか否かの判断を行うことなく、態様S4D又は態様S4Eを選択する動作を行ってもよい。
【0089】
コントローラ43は、蓄積されたデータφ20、データφ44及びデータφ60等を利用して、将来の天候を予測してもよい。コントローラ43は、将来の電力E(入力)の長期又は短期の時間変化を予測してもよい。例えば、コントローラ43は、天候に関するデータφ44及びデータφ60に基づく天候の予想結果が「晴天から雲天」である第3の状況W3(雲の状態:濃い、風の状態:弱い)である場合には、電力E(入力)が少なくなるとの予想をしてもよい。この場合には、コントローラ43は、蓄電力E(NA)も少なくなるような生産計画を立案する。さらに、コントローラ43は、電力E(蓄電池)が不足しないように、かつ、電力の無駄がないように、最適な生産計画を立案してもよい。
【0090】
<第5の態様(S5A、S5B、S5C)>
図13(a)及び
図13(b)は、製造システム1における第5の態様S5である。第5の態様S5は、晴天から雨天に変わるときに採用できる。第5の態様S5は、さらに態様S5A、S5B、S5Cを含む。コントローラ43は、晴天であるときに態様S5A、S5Bを選択する。コントローラ43は、雨天であるときに態様S5Cを選択する。
【0091】
コントローラ43は、式(15)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S5A又は態様S5Bを選択する(
図13(a)、
図13(b)参照)。態様S5A、S5Bは、態様S4A、S4Bと同じであるから、詳細な説明は省略する。
E(入力)>E(NA)…(15)
【0092】
天候が晴天から雨天に変わると、式(15)に示す電力の関係が満たされなくなる。コントローラ43は、式(15)に示す電力の関係が満たされなかったことを条件として、次に、式(16)を満たすか否かを判定する。雨天であるときは、十分な発電電力が得られないので、式(16)を満たすこともない。
E(入力)≒E(NA)…(16)
【0093】
コントローラ43は、式(16)に示す電力の関係が満たされなかったことを条件として、式(17)に基づく動作(態様S5C)を行う(
図14参照)。
E(入力)+E(NB)+E(蓄電池)≒E(NA)…(17)
つまり、発電装置群2からの発電電力とNA台の加工装置30Aの需要電力との差分を、NB台の加工装置30Bに蓄えた電力及び蓄電池42に蓄えた電力によって賄う。なお、不足する電力がNB台の加工装置30Bに蓄えた電力だけで賄える場合には、蓄電池42を利用しなくてもよい。
【0094】
なお、コントローラ43は、晴天であるか雨天であるかの判断を、センサ44のデータφ44又は外部情報源60のデータφ60を用いて判断してもよい。例えば、コントローラ43は、センサ44のデータφ44又は外部情報源60のデータφ60が雨天を定義する条件を満たすときに、式(15)、式(16)及び式(17)を満たすか否かの判断を行うことなく、態様S5Cを直接に選択してもよい。
【0095】
コントローラ43は、蓄積されたデータφ20、データφ44及びデータφ60等を利用して、将来の天候を予測してもよい。コントローラ43は、将来の電力E(入力)の長期又は短期の時間変化を予測してもよい。コントローラ43による予測結果が「晴天から雨天」への変化であった場合には、コントローラ43は、予測結果に基づいて、事前に、必要なだけ、電力E(蓄電池)やE電力(NB)の電力を蓄える指令を出力してもよい。コントローラ43は、蓄えた電力に応じて、電力E(NA)の生産計画を立案してもよく、電力E(蓄電池)が不足しないように、最適な生産計画を立案してもよい。
【0096】
<第6の態様(S6A、S6B)>
図15(a)及び
図15(b)は、製造システム1における第6の態様S6である。第6の態様S6は、曇天から雨天に変わるときに採用できる。第6の態様S6は、さらに態様S6A、S6Bを含む。コントローラ43は、曇天であるときに態様S6Aを選択する。コントローラ43は、雨天であるときに態様S6Bを選択する。
【0097】
コントローラ43は、式(18)を満たすとき、製造システム1の動作形態として、態様S6Aを選択する(
図15(a)参照)。態様S6Aが選択される状況は、上述した第2の状況W2(雲の状態:濃い、風の状態:強い)又は第4の状況W4(雲の状態:薄い、風の状態:弱い)である。
E(入力)≒E(NA)…(18)
態様S6Aでは、発電電力が需要電力とほぼ同じである。つまり、NA台の加工装置30Aを稼働させることは可能である。しかし、NB台の加工装置30B又は蓄電池42に電力を蓄えることはできない。態様S6Aの詳細は、態様S4Bと同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0098】
コントローラ43は、式(18)に示す電力の関係が満たされなかったことを条件として、式(19)に基づく動作(態様S6B)を行う(
図15(b)参照)。
E(入力)+E(蓄電池)≒E(NA)…(19)
つまり、発電装置群2からの発電電力とNA台の加工装置30Aの需要電力との差分を、蓄電池42に蓄えた電力によって賄う。つまり、態様S6Bは、NB台の加工装置30Bに電力が蓄えられていないが、蓄電池42には電力が蓄えられている場合に選択できる。
【0099】
第4の態様S4及び第5の態様S5と同様に、雲天であるか否かの判断及び雨天であるか否かの判断は、センサ44のデータφ44又は外部情報源60のデータφ60を用いて判断してもよい。
【0100】
コントローラ43は、蓄積されたデータφ20、データφ44及びデータφ60等を利用して、将来の天候を予測してもよい。コントローラ43は、将来の電力E(入力)の長期又は短期の時間変化を予測してもよい。コントローラ43による予測結果が晴天から雨天への変化であった場合には、コントローラ43は、予測結果に基づいて、事前に、必要なだけ、電力E(蓄電池)及び/又は電力E(NB)を蓄える指令を出力してもよい。コントローラ43は、より少ない電力E(NA)によって製品を生産するように、生産計画を立案してもよい。コントローラ43は、電力E(蓄電池)が不足しないように、生産性を確保した最適な生産計画を立案してもよい。
【0101】
<第7の態様(S7A、S7B)>
図16(a)及び
図16(b)は、製造システム1における第7の態様S7である。第7の態様S7は、電力の需給バランスや天候を条件としない動作の態様である。第7の態様S7は、NA台の加工装置30Aのうち、なんらかの理由でフライホイール312を停止させるときに採用できる。フライホイール312を停止させるときに、フライホイール312に蓄えられていた回転運動エネルギは、回生エネルギとして再び電気エネルギに変換される。当該電気エネルギは、蓄電池42又はNB台の加工装置30Bに蓄えられる。態様S7Aは、回生エネルギを蓄電池42に蓄える。態様S7Bは、回生エネルギをNB台の加工装置30Bに蓄える。
【0102】
コントローラ43は、蓄電池42からデータφ42pを得る。そして、コントローラ43は、データφ42pが満充電でないことを示す場合に態様S7A(
図16(a)参照)を選択する。一方、コントローラ43は、データφ42pが満充電であることを示す場合に態様S7B(
図16(b)参照)を選択する。つまり、コントローラ43は、回生エネルギの保存先として蓄電池42をNB台の加工装置30Bよりも優先させる。
【0103】
<第8の態様(S8A、S8B)>
図17(a)及び
図17(b)は、製造システム1における第8の態様S8である。第8の態様S8の一例は、発電装置群2からの電力の供給がない場合である。例えば、第8の態様S8は、夜間又は雨天時に選択できる。第8の態様S8は、態様S8A、S8Bを含む。
【0104】
コントローラ43は、式(20)を満たすことを条件として、態様S8A(
図17(a)参照)を選択する。
E(入力)<E(NA)…(20)
つまり、第8の態様S8は、発電装置群2からの電力の供給がない(E(入力)=0)場合を含む。さらに、第8の態様S8は、発電装置群2からの電力の供給があった(E(入力)>0)場合でも、NA台の加工装置30Aが要求する需要電力を満たせない場合も含む。
【0105】
コントローラ43は、まず、態様S8Aとして、式(21)を満たす動作のための制御信号を出力する。つまり、コントローラ43は、電力の供給源としてNB台の加工装置30Bを蓄電池42よりも優先させる。なお、NB台の加工装置30Bにエネルギが蓄えられていない場合には、蓄電池42から電力を供給させる動作に移行する。
E(NA)=E(NB)…(21)
【0106】
コントローラ43は、NB台の加工装置30Bに蓄えたエネルギを使い切った後に、態様S8Bとして、式(22)を満たす動作(態様S8B)のための制御信号を出力する(
図17(b)参照)。
E(NA)=E(蓄電池)…(22)
【0107】
<作用効果>
製造システム1は、再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置群2と、発電装置群2が出力する電気エネルギを受けて、電気エネルギと回転運動エネルギとを相互に変換可能な変換ユニット31と、回転運動エネルギを利用して被処理物に対して所定の加工を施す加工ユニット32と、を含む複数の加工装置30と、発電装置群2と加工装置30との間の電気エネルギの授受を制御するコントローラ43と、を備える。
【0108】
この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電気エネルギは、回転運動エネルギに変換される。そして加工装置30は、当該回転運動エネルギを利用して所定の加工を行うことが可能である。従って、再生可能エネルギを利用して得た電力を工場設備の稼働に利用することができる。
【0109】
変換ユニット31は、電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部であるモータ311と、回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部であるフライホイール312と、を有する。この構成によれば、加工装置30は、回転運動エネルギを保存することができる。
【0110】
コントローラ43は、発電装置群2が生み出す電気エネルギの総量であるエネルギ発生量と、複数の加工装置が要求する電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、エネルギ発生量がエネルギ要求量に満たない場合に、エネルギ発生量がエネルギ要求量を満たすように、稼働させる加工装置の数又は停止させる加工装置30の数を決定する。この構成によれば、発電装置群2の発電量が低下した場合であっても、加工装置30を安定して稼働させることができる。
【0111】
コントローラ43は、発電装置群2が生み出す電気エネルギの量であるエネルギ発生量と、複数の加工装置30が要求する電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、エネルギ発生量がエネルギ要求量に満たない場合に、停止させる加工装置30の数を決定する。次に、コントローラ43は、停止させる加工装置30から、エネルギ保存部であるフライホイール312に保存された回転運動エネルギを、エネルギ変換部であるモータ311によって回生電気エネルギに変換し、回生電気エネルギを出力させる加工装置30の数を決定する。この構成によれば、発電装置群2の発電量がさらに低下した場合であっても、加工装置30を安定して稼働させることができる。
【0112】
被処理物8は、少なくとも第1部材である円筒部品81と第2部材である円筒部品82とを含み、加工ユニット32は、回転運動エネルギを利用して、円筒部品82に対して円筒部品81を相対的に回転させることによって、摩擦熱を発生させ、当該摩擦熱を利用した加工を行う。この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力によって、加熱を要する加工を行うことができる。
【0113】
加工ユニット32が行う摩擦熱を利用した加工は、摩擦熱を利用した熱処理加工である。この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力によって、熱処理加工を行うことができる。
【0114】
加工ユニット32が行う摩擦熱を利用した加工は、摩擦熱を利用して円筒部品81及び円筒部品82を相互に接合する接合加工である。この構成によれば、再生可能エネルギを利用して得た電力によって、接合加工を行うことができる。
【0115】
要するに、製造システム1は、製品の製造に要する材料として工場9A、9Bで生じた廃材を利用する。さらに、製造システム1は、加工装置30の稼働に再生可能エネルギに基づく電力を用いる。製造システム1は、再生可能エネルギに基づく電気エネルギを回転運動エネルギに変換し、当該回転運動エネルギを利用して所望の加工を行う。このような構成によれば、比較的低電圧である再生可能エネルギに基づく電力を用いて、熱処理といった所望の処理を実行することができる。そして、製造システム1は、材料やエネルギーの価格の変動に左右されにくくなるので、これらの変動が生産コストに及ぼす影響を抑制することができる。
【0116】
具体的には、製造システム1は、製品の一例である軸受を、通常なら廃却しているものを組合わせるとともに接合加工を行う加工装置30Dを用いて摩擦熱で接合する。さらに、接合装置である加工装置30Dを用いて摩擦熱で加熱し、焼入れを行う。摩擦熱による加熱には、ワークを回転させるだけのエネルギで足りる。その結果、熱処理加工のための高い電圧の電気エネルギを用意する必要がない。熱処理加工とは別の切削加工といった加工は、比較的低い電圧の電気エネルギで行うことができる。
【0117】
従って、製造システム1は、材料費やエネルギー価格に左右されずに、安定した低コストで、かつ、環境負荷の小さい軸受を生産できる。
【0118】
<変形例>
本発明である製造システムは、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0119】
図18は、変形例の製造システム1Aを示すブロック図である。製造システム1Aが備える加工装置群3Aは、複数の種類の加工装置を有している。例えば、加工装置群3Aは、加工装置30A(プレス加工装置)と、切削装置30Eと、熱処理装置30Fと、研削装置30Gと、研磨装置30Hと、を有している。切削装置30E、研削装置30G及び研磨装置30Hは、回転運動エネルギを用いてスピンドルを回転させることにより、切削、研削及び研磨といった加工を行う。スピンドルは、フライホイール312のように回転運動エネルギを保存するものと捉えることができる。従って、切削装置30E、研削装置30G及び研磨装置30Hもプレス加工装置である加工装置30Aと同様に扱うことができる。つまり、エネルギを一時的に保存するとともに、スピンドルの回転をブレーキによって止めるときに回生エネルギとして回収することができる。回生エネルギは、別の加工装置に提供されてもよいし、蓄電池42に提供されてもよい。また、熱処理装置30Fでは、加熱した部品を冷却液で冷却したときに、高温の蒸気が発生する。この蒸気によってファンを回転させることにより、高温の部品が有していた熱エネルギを電気エネルギとして回収することができる。
【0120】
なお、
図1の加工装置30Cは、熱処理装置30F、研削装置30G及び研磨装置30Hなどと同じ構成を有すると共に同様の動作を行う装置であってもよい。
【0121】
このように、製造システム1Aは、それぞれの加工装置からエネルギを回収することができる。
【0122】
〔付記〕
本開示は、以下の構成を含む。
【0123】
本開示の製造システムは、[1]「再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置と、前記発電装置が出力する前記電気エネルギを受けて、前記電気エネルギと回転運動エネルギとを相互に変換可能な変換ユニットと、前記回転運動エネルギを利用して被処理物に対して所定の加工を施す加工ユニットと、を含む1又は複数の加工装置と、前記発電装置と前記加工装置との間の前記電気エネルギの授受を制御するコントローラと、を備える製造システム。」である。
【0124】
本開示の製造システムは、[2]「前記変換ユニットは、前記電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部と、前記回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部と、を有する、上記[1]に記載の製造システム。」である。
【0125】
本開示の製造システムは、[3]「前記コントローラは、前記発電装置が生み出す前記電気エネルギの総量であるエネルギ発生量と、前記複数の加工装置が要求する前記電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、前記エネルギ発生量が前記エネルギ要求量に満たない場合に、前記エネルギ発生量が前記エネルギ要求量を満たすように、稼働させる前記加工装置の数又は停止させる前記加工装置の数を決定する、上記[2]に記載の製造システム。」である。
【0126】
本開示の製造システムは、[4]「前記コントローラは、前記発電装置が生み出す前記電気エネルギの量であるエネルギ発生量と、前記複数の加工装置が要求する前記電気エネルギの総量であるエネルギ要求量と、を比較し、前記エネルギ発生量が前記エネルギ要求量に満たない場合に、停止させる前記加工装置の数を決定すると共に、前記停止させる前記加工装置から、前記エネルギ保存部に保存された前記回転運動エネルギを前記エネルギ変換部によって回生電気エネルギに変換し、前記回生電気エネルギを出力させる動作を実行させる前記加工装置の数を決定する、上記[2]又は[3]に記載の製造システム。」である。
【0127】
本開示の製造システムは、[5]「前記被処理物は、少なくとも第1部材と第2部材とを含み、前記加工ユニットは、前記回転運動エネルギを利用して、前記第1部材に対して前記第2部材を相対的に回転させることによって、摩擦熱を発生させ、前記摩擦熱を利用した加工を行う、上記[2]~[4]の何れか一項に記載の製造システム。」である。
【0128】
本開示の製造システムは、[6]「前記加工ユニットが行う前記摩擦熱を利用した加工は、前記摩擦熱を利用した熱処理加工である、上記[5]に記載の製造システム。」である。
【0129】
本開示の製造システムは、[7]「前記加工ユニットが行う前記摩擦熱を利用した加工は、前記摩擦熱を利用して前記第1部材及び前記第2部材を相互に接合する接合加工である、上記[5]又は[6]に記載の製造システム。」である。
【0130】
本開示の軸受は、[8]「上記[1]~[7]の何れか一項に記載された製造システムによって製造された軸受。」である。
【0131】
本開示の工場は、[9]「再生可能エネルギを利用して電気エネルギを生み出す発電装置と、2以上の材料を利用して結果物を得る複数の加工装置と、を備え、前記加工装置は、前記発電装置が出力する前記電気エネルギを利用することによって、外部からの前記電気エネルギの供給を受けることなく稼働することが可能であり、前記加工装置は、前記材料として廃材を利用することによって、外部からの材料の供給を受けることなく前記結果物を得ることが可能である、工場。」である。
【0132】
本開示の工場は、[9]「複数の前記加工装置は、複数の前記材料同士を相対的に動かすことによって得られる摩擦熱を利用した加工を行い、前記摩擦熱を利用した加工に要する電気エネルギは、前記再生可能エネルギに基づく前記発電装置が出力する前記電気エネルギによって賄われる、請求項9に記載の工場。」である。
【0133】
本開示の工場は、[9]「複数の前記加工装置から、前記結果物の製造のために稼動させる加工装置と、稼働させない加工装置と、が選択され、前記稼働させない加工装置は、前記電気エネルギを回転運動エネルギに変換するエネルギ変換部と、前記回転運動エネルギを保存するエネルギ保存部と、を有し、前記稼働させない加工装置は、前記回転運動エネルギを保存すると共に、保存された前記回転運動エネルギを前記エネルギ変換部を介して前記電気エネルギとして出力する、請求項9に記載の工場。」である。
【符号の説明】
【0134】
1…製造システム、2…発電装置群、21…太陽光発電装置、22…風力発電装置、3…加工装置群、30,30A,30B,30C,30D…加工装置、31…変換ユニット、311…モータ(エネルギ変換部)、312…フライホイール(エネルギ保存部)、32,32D…加工ユニット、4…エネルギ管理装置、41…配電設備、42…蓄電池、43…コントローラ、5…材料供給管理装置、8…被処理物、81,82…円筒部品、9A,9B…工場。