IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Frontier Visionの特許一覧

<>
  • 特開-ドレープ 図1
  • 特開-ドレープ 図2
  • 特開-ドレープ 図3
  • 特開-ドレープ 図4
  • 特開-ドレープ 図5
  • 特開-ドレープ 図6
  • 特開-ドレープ 図7
  • 特開-ドレープ 図8
  • 特開-ドレープ 図9
  • 特開-ドレープ 図10
  • 特開-ドレープ 図11
  • 特開-ドレープ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106044
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ドレープ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240731BHJP
   A61B 46/20 20160101ALI20240731BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
A61B46/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010108
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】509114376
【氏名又は名称】株式会社Frontier Vision
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】飽浦 淳介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大介
(57)【要約】
【課題】安価かつ簡易な構成にして、眼瞼縁の皮膚および睫毛を十分に覆いながら患者の眼に簡単かつ確実に設置することができるドレープを提供することを提供することを目的とする。
【解決手段】本ドレープ1は、患者の眼瞼を被覆するシート状またはフィルム状の本体部11と、本体部11の中央部に予め形成された横長の切り欠き部12と、本体部11における切り欠き部12の上側と下側に設けられた一対のフラップ部13、13とを備える。一対のフラップ部13、13は、開瞼器2により患者の眼瞼縁の皮膚および睫毛を覆いながら眼瞼の裏側に折り込まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術時において患者の眼の周りに設置されるドレープであって、
患者の眼瞼を被覆するシート状またはフィルム状の本体部と、
前記本体部の中央部に予め形成された横長の切り欠き部と、
前記本体部における前記切り欠き部の上側と下側に設けられた一対のフラップ部とを備え、
前記一対のフラップ部は、開瞼器により患者の眼瞼縁の皮膚および睫毛を覆いながら眼瞼の裏側に折り込まれることを特徴とするドレープ。
【請求項2】
前記一対のフラップ部は、前記本体部における前記切り欠き部の上側縁部と下側縁部に別体に設けられる請求項1に記載のドレープ。
【請求項3】
前記本体部は、前記一対のフラップ部の裏面に設けられた非粘着部と、該一対のフラップ部の周囲に設けられた粘着部とを有する請求項1または請求項2に記載のドレープ。
【請求項4】
前記本体部は、術者の指で把持するための非粘着部が裏面に設けられている請求項3に記載のドレープ。
【請求項5】
前記本体部は、前記切り欠き部の耳側および/または鼻側に第2のフラップ部が設けられている請求項1または請求項2に記載のドレープ。
【請求項6】
前記本体部は、周端部に眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を吸収する吸収部が設けられている請求項1または請求項2に記載のドレープ。
【請求項7】
前記本体部は、外周端部が中央部よりも肉厚に形成されている請求項1または請求項2に記載のドレープ。
【請求項8】
前記本体部は、前記切り欠き部の耳側において、眼科手術時に瞼裂内に貯留する液体を瞼裂外に排出するための排液器が設けられている請求項1または請求項2に記載のドレープ
【請求項9】
前記排液器は、撥水性の素材により網状に構成され、
先端部が瞼裂内に位置し、かつ基端部が瞼裂外に位置して眼瞼を跨ぐ態様で配置される請求項7に記載のドレープ。
【請求項10】
前記本体部は、患者の顔面を覆うための覆い布が周囲に設けられ、
前記本体部と覆い布の間において術者の指を挿入するための指入部が設けられている請求項1または請求項2に記載のドレープ
【請求項11】
前記本体部は、患者の顔面を覆うための覆い布が周囲に設けられ、
前記本体部の周囲の前記覆い布において、周端部に眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を収容する袋部が設けられている請求項1または請求項2に記載のドレープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科手術時において患者の眼の周りに設置されるドレープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白内障手術や他の眼科手術の際、まず念頭におかなければならないのは、手術後に発生する細菌性眼内炎を防止することである。具体的には、眼瞼、睫毛、結膜嚢には常在菌が存在しており、手術中にそれら眼瞼、睫毛、結膜嚢に触れた手術器具、眼内レンズあるいは手術装置から供給される眼内灌液体を通して、常在菌が切開創から眼内に侵入し、術後細菌性眼内炎の原因になっていた。この術後細菌性眼内炎は滅多に発生するものではないが、発症して、その原因がMRSAなどの薬剤耐性菌の場合は失明する危険もあった。
【0003】
そこで、この術後細菌性眼内炎を防止するため、通常の眼科手術では消毒液で眼瞼や眼球結膜を洗浄した後、滅菌済みのドレープで眼の周りを覆い、金属製や樹脂製の開瞼器を用いて眼瞼を開いて手術を行っていた。
【0004】
ところが、単にドレープで眼の周りの眼瞼を覆う場合、手術前にドレープを切ったり貼ったりする作業が必要な上、眼瞼縁、特に耳側と鼻側の角の眼瞼縁の皮膚や睫毛を覆うことができなかった。特に耳側の角の眼瞼縁の皮膚は、切開創に挿入される手術器具が何度も接触する箇所であり、その手術器具を通して眼内に常在菌が持ち込まれることが危惧されていた。
【0005】
これに対して、特許文献1に示すように開口部が形成されたドレープが知られている。
本ドレープは、患者を大きく覆う覆布本体と、手術野開孔周囲の周縁部から構成され、該周縁部の皮膚側全面に粘着剤層が設けられた構造となっており、周縁部は目の周りの凹凸に追従して密着しながら貼り付けられる。
【0006】
ところが、このドレープは、手術時に患者の皮膚に貼り付けられる際、手術野開口周囲の周縁部が目の周りの凹凸に追従して密着しながら貼り付けられるものに過ぎず、依然として眼瞼縁の皮膚や睫毛を十分に覆うことができないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に示すように、耳側と鼻側の角の眼瞼縁も含めて、眼瞼縁の全体を覆うドレープとしての機能を有する開瞼器も提案されている。これは、眼を囲繞し、顔面に接して装着される可撓性を有する上リングと、結膜嚢内に挿入され、瞼結膜側に接して装着される下リングと、柔軟な筒型薄膜の端部の一方を上リングへ、他方を下リングへ各々取り付け、顔面側から瞼結膜側にかけて位置する弾性シートにより構成され、眼瞼縁および瞼結膜を覆うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-218096号公報
【特許文献2】特開2011-55990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この開瞼器は、全体として柔軟性を有するとしながらも、眼瞼を開くための開瞼器としての機能が要求されるために、元に戻ろうとする弾性力が大きく、手術時において眼瞼に設置することが難しく、設置作業が煩わしい上、製造コストがかかるという問題があった。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、安価かつ簡易な構成にして、眼瞼縁の皮膚および睫毛を十分に覆いながら患者の眼に簡単かつ確実に設置することができるドレープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、眼科手術時において患者の眼の周りに設置されるドレープであって、患者の眼瞼を被覆するシート状またはフィルム状の本体部と、前記本体部の中央部に予め形成された横長の切り欠き部と、前記本体部における前記切り欠き部の上側と下側に設けられた一対のフラップ部とを備え、前記一対のフラップ部は、開瞼器により患者の眼瞼縁の皮膚および睫毛を覆いながら眼瞼の裏側に折り込まれることを特徴とする。
【0012】
これによれば、眼科手術時において切り欠き部を眼瞼縁に合わせながら本体部を眼瞼に載置したあと、開瞼器により一対のフラップ部を眼瞼の裏側に折り込むと、眼瞼縁の皮膚および睫毛を十分に覆いながら、ドレープを患者の眼の周りに簡単かつ確実に設置することができる。しかも、ドレープはシート状またはフィルム状の本体部に横長の切り欠き部が形成された簡易な構成であるため、製造コストを抑えることができる。
【0013】
また、前記一対のフラップ部は、前記本体部における前記切り欠き部の上側縁部と下側縁部に別体に設けられてもよい。これによれば、一対のフラップ部を切り欠き部の上側と下側に簡単かつ確実に構成することができる。また、一対のフラップ部を変形しやすい材質、非粘着性の材質、あるいは滑りやすい材質などの所望の材質に設計し易くなる。さらに、一対のフラップ部の内側縁部を切欠部の上側縁部および下側縁部より内側に配置した場合、一対のフラップ部が眼瞼の裏側の奥まで延びるように折り込まれるため、手術器具等を通して目尻や目元から常在菌が眼内に持ち込まれることをより一層防止できる。
【0014】
また、前記本体部は、前記一対のフラップ部の裏面に設けられた非粘着部と、該一対のフラップ部の周囲に設けられた粘着部とを有してもよい。これによれば、ドレープを患者の眼の周りに設置する際、一対のフラップ部の非粘着部が眼瞼の睫毛に粘着しないため、一対のフラップ部により眼瞼縁の睫毛を起こしながら切り欠き部を眼瞼縁の間にスムーズに挿入することができる。また、一対のフラップ部の非粘着部が眼瞼縁の皮膚にも粘着しないため、開瞼器により切り欠き部を開くとき、一対のフラップ部を眼瞼縁の皮膚で滑らせながら眼瞼の裏側にスムーズに折り込むことができる。さらに、本体部の粘着部が眼瞼等の眼の周りに粘着するため、ドレープを患者の眼の周りに簡単かつ確実に固定することができる。
【0015】
また、前記本体部は、術者の指で把持するための非粘着部が裏面に設けられていてもよい。これによれば、ドレープを設置するときに該非粘着部を把持すれば、本体部が術者の指に粘着しないため、手術時にドレープを扱い易くなる。
【0016】
また、前記本体部は、前記切り欠き部の耳側および/または鼻側に第2のフラップ部が設けられてもよい。これによれば、第2のフラップ部が耳側の眼瞼縁(目尻)および/または鼻側の眼瞼縁(目元)を被覆するため、手術器具等を通して目尻や目元から常在菌が眼内に持ち込まれることを防止できる。
【0017】
また、前記本体部は、周端部に眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を吸収する吸収部が設けられてもよい。これによれば、吸収部が眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を吸収するため、液体がドレープ外に不用意に漏れ出ることを軽減または防止できる。
【0018】
また、前記本体部は、外周端部が中央部よりも肉厚に形成されてもよい。これによれば、ドレープの平面方向の形状を保ち易くなり、ドレープを患者の眼の周りに設置し易くなる。
【0019】
また、前記本体部は、前記切り欠き部の耳側において、眼科手術時に瞼裂内に貯留する液体を瞼裂外に排出するための排液器が設けられてもよい。これによれば、眼科手術時に瞼裂内に貯留する液体を排液器に沿って瞼裂外に排出することができる。
【0020】
また、前記排液器は、撥水性の素材により網状に構成され、先端部が瞼裂内に位置し、かつ基端部が瞼裂外に位置して眼瞼を跨ぐ態様で配置されてもよい。これによれば、眼科手術時に瞼裂内に貯留する液体を排液器に沿って瞼裂外に大量かつスムーズに排出することができる。
【0021】
また、前記本体部は、患者の顔面を覆うための覆い布が周囲に設けられ、前記本体部と覆い布の間において術者の指を挿入するための指入部が設けられてもよい。これによれば、ドレープに覆い布が設けられたときでも、本体部と覆い布の間の指入部に術者の指を入れることよって、ドレープの本体部を把持することができ、ドレープを患者の眼の周りにより簡単かつ確実に設置することができる。
【0022】
また、前記本体部は、患者の顔面を覆うための覆い布が周囲に設けられ、前記本体部の周囲の前記覆い布において、周端部に眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を収容する袋部が設けられてもよい。これによれば、袋部が眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を収容するため、液体が覆い布の外側に不用意に漏れ出ることを軽減または防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、眼科手術時において切り欠き部を眼瞼縁に合わせながら本体部を眼瞼に載置したあと、開瞼器により一対のフラップ部を眼瞼の裏側に折り込むと、眼瞼縁の皮膚および睫毛を十分に覆いながら、ドレープを患者の眼の周りに簡単かつ確実に設置することができる。しかも、ドレープはシート状またはフィルム状の本体部に横長の切り欠き部が形成された簡易な構成であるため、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係るドレープを示す平面図である。
図2図1のドレープを示す(a)A-A線矢視断面図および(b)B-B線矢視断面図である。
図3】患者の眼を示す(a)上下方向の断面図および(b)平面図である。
図4図1のドレープを患者の眼の周りに設置するときの状態を示す(a)C-C線矢視断面図および(b)平面図である。
図5図1のドレープを患者の眼の周りに設置したあとの状態を示す(a)D-D線矢視断面図および(b)平面図である。
図6図1のドレープを患者の眼の周りに設置したあとの状態を示すE-E線矢視断面図である。
図7図1のドレープを患者の眼の周りに設置するときに用いる開瞼器を示す平面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るドレープおよび排液器を示す平面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るドレープおよび覆い布を示す(a)裏側の平面図および(b)表側の平面図である。
図10図9のドレープを示す(a)F-F線矢視断面図および(b)G-G線矢視断面図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係るドレープおよび覆い布を示す平面図である。
図12】本発明の第5の実施形態に係るドレープを患者の眼の周りに設置するときの状態を示す(a)H-H線矢視断面図および(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係るドレープ(以下、本ドレープ1という)の第1の実施形態について図1図7を参照しつつ説明する。
【0026】
なお、ドレープが患者の眼Oの周りに設置された際、主に患者の眼Oの上下方向(図3の左右右向)を「上下方向」といい、患者の眼Oの左右方向(図3(b)の上下方向)を「左右方向」といい、患者の眼Oに直交する方向(図3(a)の上下方向)を「前後方向」という。
【0027】
以下、本ドレープ1並びに本ドレープ1を患者の眼Oの周りに設置するときに用いる開瞼器2について具体的に説明する。
【0028】
[本ドレープ1の構成]
本ドレープ1は、外科手術時において眼Oの周りに設置されるものであって、図1に示すように、患者の眼瞼Mを被覆する平面視略矩形状の本体部11を主に備える。具体的には、この本体部11は、患者の鼻側の先端部1aが平面視山型に形成され、患者の上側(眉側)と下側(口側)の側端部1b、1bが平面視直線状に形成され、患者の耳側の基端部1cが平面視直線状に形成されたポリウレタン等の可撓性かつ伸縮性を有する透明のシート部材またはフィルム部材であって、上下方向の幅が90mm(吸収部を含めると100mm)、左右方向の長さが105mm(吸収部を含めると115mm)、前後方向の厚みが1mm以下の大きさに形成されている。なお、本体部11の大きさや材質については特に限定されるものではないが、少なくとも眼Oの周りの眼瞼Mを覆う大きさであって、眼Oの周りの眼瞼Mの表面に追随する材質であるのが好ましい。
【0029】
また、前記本体部11は、中央部に左右方向に延びる横長の切り欠き部12が予め形成されている。この切り欠き部12は、眼科手術時において患者の半開きまたは閉じた眼瞼縁Nの内側に沿うように上下方向の幅が3mm以内、左右方向の長さが20mmの大きさの横長に形成され、後述するように手術時に開瞼器2により上下方向に開かれることにより患者の眼O(角膜)が露出状態となる。
【0030】
また、前記本体部11は、切り欠き部12の上側(患者の眼Oの上側)と下側(患者の眼Oの下側)において一対のフラップ部13、13が本体部11と一体的に連続して設けられている。この一対のフラップ部13は、いずれも左右方向の長さが20mm、上下方向の幅が9mmの大きさに形成され、後述するように眼科手術時に開瞼器2により患者の眼瞼縁Nの皮膚および睫毛Kを覆いながら眼瞼Mの裏側(結膜)に折り込まれる。
【0031】
また、前記本体部11は、図2に示すように、一対のフラップ部13の裏面に設けられた非粘着部14、14と、一対のフラップ部13の周囲の裏面に設けられた粘着部15とを有する。これによれば、後述するように本ドレープ1を患者の眼Oの周りに設置する際、一対のフラップ部13の非粘着部14が眼瞼Mの睫毛Kに粘着しないため、一対のフラップ部13で眼瞼縁Nの睫毛Kを起こしながら切り欠き部12を眼瞼縁Nの間にスムーズに挿入することができる。また、一対のフラップ部13の非粘着部14が眼瞼縁Nの皮膚にも粘着しないため、開瞼器2により切り欠き部12を開くとき、一対のフラップ部13を眼瞼縁Nの皮膚で滑らせながら眼瞼Mの裏側にスムーズに折り込むことができる。さらに、本体部11の粘着部15が眼瞼M等の眼Oの周りに粘着するため、ドレープを患者の眼Oの周りに簡単かつ確実に固定することができる。
【0032】
なお、非粘着部14は、フラップ部13に対する大きさが特に限定されるものではないが、左右方向の長さが切り欠き部12の左右方向の長さと同一か、やや短い程度(例えば、1~2mm程短い)の長さであって、眼瞼縁Nの皮膚と睫毛Kを十分に覆うように上下方向の長さが3~10mmに形成されるのが好ましい。
【0033】
また、粘着部15は、使用前の状態では剥離紙が積層され、該剥離紙をはがして本ドレープ1を使用してもよい。
【0034】
また、前記本体部11は、切り欠き部12の耳側および鼻側に第2のフラップ部18が設けられている。これによれば、第2のフラップ部18が耳側の眼瞼縁N(目尻)および/または鼻側の眼瞼縁N(目元)を被覆するため、手術器具等を通して目尻や目元から常在菌が眼O内に持ち込まれることを防止できる。
【0035】
また、前記本体部11は、周端部の裏面に吸収部16が全周に亘って設けられている。この吸収部16は、上下方向の幅が100mm、左右方向の長さが115mmの環状に形成され、パルプなどの天然繊維あるいはポリプロピレンなどの合成繊維の不織布からなる。これにより、眼科手術時に患者の瞼裂内から流れ出た液体を吸収するものとなされている。これによれば、吸収部16が眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を吸収するため、液体がドレープ外に不用意に漏れ出ることを軽減または防止できる。
【0036】
また、前記本体部11は、周端部の表面において本体部11の輪郭形状に沿った環状の外枠部17が貼着されている。このため、本体部11の周端部が中央部よりも肉厚となるため、ドレープの平面方向の形状が保ち易くなる。なお、外枠部17の表面側に粘着層と剥離紙を設けて、剥離紙をはがしたあと、外枠部17の粘着層を覆い布に貼り付けるものとしてもよい。
【0037】
[開瞼器2の構成]
本実施形態に係る開瞼器2は、図7に示すように、把持機構21、アーム部22および掛止部23が金属等の弾性変形可能な一の線状部材を曲折することにより構成されている。
【0038】
前記把持機構21は、眼瞼Mよりも耳側で左右方向に延びる上側の第1の把持部211と、眼瞼MMよりも耳側で左右方向に延びる下側の第2の把持部212と、第1の把持部211と第2の把持部212の間に設けられた連結部213とを備える。
【0039】
前記アーム部22は、第1の把持部211の鼻側の端部に設けられ、上眼瞼M1側に延びる第1のアーム部221と、第2の把持部212の鼻側の端部に設けられ、下眼瞼M2側に延びる第2のアーム部222とを備える。これら第1のアーム部221および第2のアーム部222は、把持機構21の第1の把持部211と第2の把持部212が自然に開いたときには互いに平行に離間した状態となり、前記把持機構21の第1の把持部211と第2の把持部212が近接方向に閉じられたときに互いに並行に近接した状態となる。
【0040】
前記掛止部23は、第1のアーム部221の鼻側の端部に設けられた第1の掛止部231と、第2のアーム部222の鼻側の端部に設けられた第2の掛止部232とを備える。
【0041】
前記第1の掛止部231は、上眼瞼M1の裏側(結膜嚢)に挿入される平面視略コ字状のスライド部231aと、上眼瞼M1の眼瞼縁Nに引っ掛けられる引掛部231bとを備える。また、前記第2の掛止部232は、下眼瞼M2の裏側(結膜嚢)に挿入される平面視略コ字状のスライド部232aと、下眼瞼M2の眼瞼縁Nに引っ掛けられる引掛部232bとを備える。
【0042】
而して、本開瞼器2が開いた自然状態において、把持機構21の第1の把持部211と第2の把持部212を把持して、連結部213の付勢力に抗しながら内側方向に把持力を作用させると、第1の把持部211と第2の把持部212が近接方向に閉じるに伴って、第1のアーム部221と第2のアーム部222が互いに近接していき、第1の掛止部231と第2の掛止部232が互いに間隔を狭めながら、本開瞼器2が閉じた状態に移行する。
【0043】
一方、本開瞼器2が閉じた状態において、把持機構21に対する把持力を弱めると、連結部21313が当初の位置に復帰しながら、第1の把持部211と第2の把持部212が離間方向に開くのに伴って、第1のアーム部221と第2のアーム部222が互いに離間していき、第1の掛止部231と第2の掛止部232が互いに間隔を拡げながら本開瞼器2が開いた状態に移行する。
【0044】
[本ドレープ1の設置方法]
次に本ドレープ1を患者の眼Oの周りに設置する方法について説明する。
【0045】
まず、図3は本ドレープ1を患者の眼Oの周りに設置する前の状態を示す図である。図3に示すように、一般に患者の眼Oにおいて、下睫毛K2は短く、下側の眼瞼縁Nから下向きに生えているのに対して、上睫毛K1は長く、カールして上向きに生えている場合もあるが、高齢者の多くは下向きに生えている。そして、本ドレープ1を設置する前に眼Oの周りを消毒して皮膚を十分に乾かす。
【0046】
次に、図4に示すように、本ドレープ1を患者の眼Oの周りに設置する際、本ドレープ1の耳側および鼻側の端部を主に3つの指で把持して、患者の眼Oの前方において眼Oに向かってドレープ1の中央部をV字状に屈曲させる。そして、ドレープ1の上側のフラップ部13(切り欠き部12の上側縁部)の裏面で上睫毛K1をやや起こし、かつ下側のフラップ部13(切り欠き部12の下側縁部)の裏面で下睫毛K2をやや押さえ、一対のフラップ部13を患者の眼Oに向かって下げながら上下の眼瞼縁Nの間に挿入したあと、本体部11を平面状態に戻していき、本体部11の裏面の粘着部15を眼瞼Mに貼り付ける。このとき、上下の一対のフラップ部13の裏面に非粘着部14が設けられているため、ドレープ1の上下の一対のフラップ部13を上睫毛K1や下睫毛K2で滑らせながら眼瞼縁Nの間に簡単かつ確実に挿入することができる。
【0047】
次に、図5に示すように、開瞼器2の第1の掛止部231および第2の掛止部232を閉じた状態で上側および下側の眼瞼縁Nに引っ掛けたあと、開瞼器2の第1の掛止部231および第2の掛止部232を開いていくと、患者の眼Oの眼瞼Mが上下方向に開いていくとともに、ドレープ1の上下の一対のフラップ部13が上下の眼瞼縁Nの皮膚と、上方向に起こされた睫毛Kとを覆いながら眼瞼Mの裏側(結膜嚢)に折込まれていく。このとき、上下の一対のフラップ部13の裏面に非粘着部14が設けられているため、一対のフラップ部13を眼瞼縁Nの皮膚と睫毛Kで滑らせながら眼瞼Mの裏側(結膜嚢)にスムーズに折り込むことができる。
【0048】
また、図5(b)に示すように、開瞼器2により患者の眼Oの眼瞼Mが上下方向に開いていくと、ドレープ1の左右の一対の第2のフラップ部18が上下方向に伸張していきながら、図6に示すように、耳側の眼瞼縁N(目尻)および鼻側の眼瞼縁N(目元)を被覆するため、手術器具等を通して目尻や目元から常在菌が眼O内に持ち込まれることを防止できる。
【0049】
また、本体部11は、吸収部16が本体部11の周端部の裏面に設けられるものとしたが、吸収部16が設けられなくてもよい。この場合、本体部11は、周端部の全部または一部(例えば、鼻側の先端部1aや耳側の基端部1c)の裏面に術者の指で把持するための非粘着部が設けられてもよい。これにより、本ドレープ1を設置するときに該非粘着部を把持すれば、本体部11が術者の指に粘着しないため、手術時に本ドレープ1を扱い易くなる。
【0050】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係るドレープの第2の実施形態について図8を参照しつつ説明する。
【0051】
本実施形態に係るドレープ1は、切り欠き部12における患者の耳側において、眼科手術時に瞼裂内に貯留する液体を瞼裂外に排出するための排液器3が設けられている。
【0052】
この排液器3は、全体が撥水性の素材により網状に構成され、先端部が瞼裂内に位置し、かつ基端部が瞼裂外に位置して眼瞼Mを跨ぐ態様で配置される。
【0053】
例えば、排液器3は、撥水性の糸を用いた織編物から構成されてもよい。これによれば、瞼裂内に貯溜する液体が、排液器3の表面上を平面方向に伝いながら流れ易くなる。
【0054】
また、前記排液器3は、撥水性の合成繊維(ナイロンやポリエステルなど))の糸を用いた織編物から構成されてもよい。これによれば、排液器3の表面の撥水性を簡単かつ確実を向上させることができる。
【0055】
また、前記排液器3は、先端部から基端部に向けて長さ方向に延びる経糸と、該縦糸に交差する幅方向に延びる緯糸とから構成され、長さ方向に沿って延び、かつ経糸および緯糸の間隔よりも大きい幅を有する溝部が表面の幅方向に沿って複数形成されてもよい。これによれば、瞼裂内に貯溜する液体が、排液器3の表面上の各溝部を伝って大量に流れるため、瞼裂内に貯留する液体を瞼裂外により一層効率的に排出することができる。
【0056】
また、前記排液器3は、糸密度が10~50本/インチの織編物から構成されてもよい。これによれば、排液器3は、糸密度が10本/インチ以上の織編物から構成されるため、糸同士の隙間に所定量の液体が保持され、保持された液体の表面張力により顔面に吸着されて安定的に設置することができる。また、排液器3は、糸密度が50本/インチ以下の織編物から構成されるため、液体が排液器3の表面を伝って流れ易くなるとともに、脆弱になり過ぎてハンドリングが困難になったり、破損するのを防止することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、排液器3は、全体が撥水性の素材により網状に構成されるものとしたが、一部が撥水性の素材により網状に構成されてもよい。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係るドレープの第3の実施形態について図9および図10を参照しつつ説明する。
【0059】
本実施形態に係るドレープは、図9(a)に示すように、本体部11の周囲に患者の顔面を覆うための覆い布4が設けられている。具体的には、覆い布4の裏側に本ドレープ1の周端部が逢着等の方法で設けられるとともに、図9(b)に示すように覆い布4の表側に形成された開口窓41から本ドレープ1の本体部と切り欠き部が露出した状態になっている。
【0060】
また、本実施形態では、図10に示すように、本体部11と覆い布4の間において術者の指を挿入するための指入部42が設けられている。
【0061】
この指入部42は、本体部11の耳側および鼻側の端部に設けられており、本体部11と覆い布4の間の指入部42に術者の指を入れることよって、ドレープ1そのものを把持することができ、ドレープ1を患者の眼Oの周りにより簡単かつ確実に設置することができる。
【0062】
なお、指入部42は、本体部11の耳側または鼻側の端部のいずれか一方の端部のみに設けられてもよいし、あるいは本体部11の上側や下側の端部に設けられてもよい。
【0063】
<第4の実施形態>
次に、本発明に係るドレープの第4の実施形態について図11を参照しつつ説明する。
【0064】
本実施形態に係るドレープ1は、図11に示すように、第3の実施形態と同様、患者の顔面を覆うための覆い布4が逢着等の方法で設けられ、本体部11の上側、下側、耳側の三方の周囲に眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を開口部43a、44a、45aを通じて収容する袋部43、44、45が設けられている。
【0065】
これによれば、袋部43、44、45が眼科手術時に瞼裂内から流れ出た液体を収容するため、液体が覆い布4の外側に不用意に漏れ出ることを軽減または防止できる。特に本実施形態では、排液器3の基端部が耳側の袋部43の内部に挿入されているため、瞼裂内の液体を排液器3を伝って流したあと、耳側の袋部43に直接収容することができる。
【0066】
<第5の実施形態>
次に、本発明に係るドレープの第5の実施形態について図12を参照しつつ説明する。
【0067】
本実施形態に係るドレープ1は、図12に示すように、一対のフラップ部13’、13’が切欠部14の上側縁部と下側縁部の裏面に本体部1とは別体に設けられている。この一対のフラップ部13’は、いずれも左右方向の長さが切欠部14の長さよりも短い18mm、上下方向の幅が3~9mmの大きさに形成された非粘着性のフィルム素材またはシート部材から構成される。
【0068】
また、一対のフラップ部13’、13’は、対向する内側縁部が切欠部14の上側縁部および下側縁部よりも内側に配置されることにより、切欠部14の内側において左右方向の延びる細長い第2の切欠部13’aが形成され、該第2の切欠部13’aから開瞼器2の引掛部23が挿入されて引っ掛けられるものとなされている。なお、第2の切欠き部13’aは、所定の幅を有する隙間であってもよいし、一対のフラップ部13’,13’の内側縁部同士が当接または重なった切欠線であってもよい。
【0069】
これによれば、一対のフラップ部13’、13’を切欠部14の上側と下側に簡単かつ確実に構成することができる。また、一対のフラップ部13’、13’を変形しやすい材質、非粘着性の材質、あるいは滑りやすい材質などの所望の材質に設計し易くなる。さらに、本実施形態のように一対のフラップ部13’、13’の内側縁部を切欠部の上側縁部および下側縁部より内側に配置した場合、一対のフラップ部13’、13’が上側眼瞼M1および下側眼瞼M2の裏側の奥まで延びるように折り込まれるため、手術器具等を通して目尻や目元から常在菌が眼内に持ち込まれることをより一層防止できる。
【0070】
なお、一対のフラップ部13’、13’は、本体部11における切欠部14の上側縁部および下側縁部の裏面に直接設けるものとしたが、粘着部15を切欠部14の上側縁部および下側縁部まで延設して、該粘着部15に貼着する態様で設けてもよい。
【0071】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…ドレープ
1a…先端部
1b…側端部
1c…基端部
11…本体部
12…切り欠き部
13…フラップ部
14…非粘着部
15…粘着部
16…吸収部
17…外枠部
18…第2のフラップ部
2…開瞼器
21…把持機構
211…第1の把持部
212…第2の把持部
213’…連結部
22…アーム部
221…第1のアーム部
222…第2のアーム部
23…掛止部
231…第1の掛止部
231a…スライド部
231b…引掛部
232…第2の掛止部
232a…スライド部
232b…引掛部
3…排液器
4…覆い布
41…開口窓
42…指入部
43、44、45…袋部
O…眼(角膜)
M…眼瞼
M1…上眼瞼
M2…下眼瞼
N…眼瞼縁
K…睫毛
K1…上睫毛
K2…下睫毛
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12