(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106048
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】砥石判定装置、学習器、判定プログラム、および砥石判定方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20240731BHJP
B24B 53/04 20120101ALI20240731BHJP
B24B 7/02 20060101ALI20240731BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240731BHJP
【FI】
B24B53/00 A
B24B53/04
B24B7/02
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010115
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】井村 諒介
(72)【発明者】
【氏名】川下 智幸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 彰浩
【テーマコード(参考)】
2G024
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024AD11
2G024BA12
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
3C043BA01
3C043BA16
3C043CC03
3C043DD04
3C043DD06
3C043EE03
3C047AA02
3C047AA10
3C047BB01
3C047BB10
(57)【要約】
【課題】砥石の劣化状態を高い精度で判定する。
【解決手段】自動研削装置には、テーブルの振動を検出する振動センサが設けられる。砥石判定装置の電子制御装置は、振動センサによって検出した検出データの周波数解析を行う(ステップS11)。周波数解析の結果得られる解析データは、判定用データとして、電子制御装置の記憶部に記憶される(ステップS12)。電子制御装置の記憶部には、特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器が記憶されている。電子制御装置は、判定用データを入力データとして、記憶部に記憶された学習済みの振動用の学習器から、砥石の劣化度合いに応じた値を出力する(ステップS13)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石による研削加工を行う加工機に適用されて、前記砥石の状態を判定する砥石判定装置において、
前記加工機に設けられ、同加工機の振動に関するデータを検出する振動検出部と、
前記振動検出部によって検出した検出データの周波数解析を行う振動解析部と、
前記振動解析部による周波数解析の結果得られる解析データを判定用データとして記憶する振動入力部と、
特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器を記憶する振動記憶部と、
前記判定用データを入力データとして、前記振動記憶部に記憶された学習済みの前記振動用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する振動出力部と、
を備える砥石判定装置。
【請求項2】
前記解析データは、既定の長さの期間において前記振動検出部によって検出された前記加工機の振動に関するデータからなる時系列データを、短時間フーリエ変換することによって得られるデータである
請求項1に記載の砥石判定装置。
【請求項3】
判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として記憶する画像入力部と、
特定の劣化状態の砥石の砥面を撮像した画像を含む教師データによって学習された学習済みの画像用の学習器を記憶する画像記憶部と、
前記判定画像を入力データとして、前記学習済みの画像用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する画像出力部と、
前記画像入力部による前記判定画像の記憶、および、前記画像出力部による前記砥石の劣化度合いに応じた値の出力を、前記振動出力部の出力値が前記砥石の劣化度合いが所定レベル未満であることを示す値である場合には実行せず、且つ、前記振動出力部の出力値が前記砥石の劣化度合いが前記所定レベル以上であることを示す値である場合には実行する実行部と、を有する
請求項1または2に記載の砥石判定装置。
【請求項4】
前記砥石の砥面を撮像する撮像部と、
前記砥石の砥面を覆う態様で同砥面に沿って延びるシャッター部と、
前記シャッター部を開閉操作するものであって、前記砥面の撮像時には同砥面と前記撮像部との間が前記シャッター部によって仕切られない開状態にする一方、前記砥面の非撮像時には前記砥面と前記撮像部との間が前記シャッター部によって仕切られた閉状態にするシャッター操作部と、を備える
請求項3に記載の砥石判定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の砥石判定装置が備える前記学習済みの振動用の学習器。
【請求項6】
請求項1に記載の砥石判定装置が具備する前記振動検出部の処理、前記振動解析部の処理、前記振動入力部の処理、前記振動記憶部の処理、および前記振動出力部の処理を、前記砥石判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラム。
【請求項7】
砥石による研削加工を行う加工機に適用されて、前記砥石の状態を判定する砥石判定方法であって、
前記加工機に設けられた振動検出部によって同加工機の振動に関するデータを検出する検出工程と、
前記振動検出部によって検出した検出データについての周波数解析を行う解析工程と、
前記周波数解析の結果得られる解析データを判定用データとして砥石判定装置の振動記憶部に記憶させる入力工程と、
特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器を、前記振動記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記判定用データを入力データとして、前記振動記憶部に記憶された学習済みの前記振動用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する出力工程と、
を備える砥石判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石の状態を判定する砥石判定装置、同装置で使用される学習器、同装置で使用される判定プログラム、および砥石の状態を判定する砥石判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工対象物としてのワークの表面を砥石によって研削加工する研削加工機が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
研削加工機による研削加工においては、研削工具としての砥石の状態によってワークの加工面の仕上げ品質が左右される。そのため、研削加工機による研削加工を実行する際には、定期的に、砥石の加工面(いわゆる砥面)のメンテナンスが実行される。これにより、研削加工機による研削加工の加工精度が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研削加工機では、砥石のメンテナンスを同砥石の状態に合わせて適正なタイミングで実行するために、砥石の状態を高い精度で判定することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための砥石判定装置は、砥石による研削加工を行う加工機に適用されて、前記砥石の状態を判定する砥石判定装置において、前記加工機に設けられ、同加工機の振動に関するデータを検出する振動検出部と、前記振動検出部によって検出した検出データの周波数解析を行う振動解析部と、前記振動解析部による周波数解析の結果得られる解析データを判定用データとして記憶する振動入力部と、特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器を記憶する振動記憶部と、前記判定用データを入力データとして、前記振動記憶部に記憶された学習済みの前記振動用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する振動出力部と、を備える。
【0006】
上記課題を解決するための学習器は、上記砥石判定装置が備える前記学習済みの振動用の学習器である。
上記課題を解決するための判定プログラムは、上記砥石判定装置が具備する前記振動検出部の処理、前記振動解析部の処理、前記振動入力部の処理、前記振動記憶部の処理、および前記振動出力部の処理を、前記砥石判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラムである。
【0007】
上記課題を解決するための砥石判定方法は、砥石による研削加工を行う加工機に適用されて、前記砥石の状態を判定する砥石判定方法であって、前記加工機に設けられた振動検出部によって同加工機の振動に関するデータを検出する検出工程と、前記振動検出部によって検出した検出データについての周波数解析を行う解析工程と、前記周波数解析の結果得られる解析データを判定用データとして砥石判定装置の振動記憶部に記憶させる入力工程と、特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器を、前記振動記憶部に記憶させる記憶工程と、前記判定用データを入力データとして、前記振動記憶部に記憶された学習済みの前記振動用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する出力工程と、を備える。
【0008】
砥石によってワークを研削加工する際には加工機は振動する。そして、砥石が劣化すると、同砥石によるワークの研削態様が変化するため、加工機の振動態様も変化するようになる。
【0009】
上記砥石判定装置、学習器、判定プログラム、および砥石判定方法によれば、特定の劣化状態になった砥石を利用して研削加工を行った場合における解析データに対応するデータ(教師データ)が用意される。そして、この教師データによって予め学習させた学習済みの振動用の学習器が用意される。そのため、学習済みの振動用の学習器を利用して、砥石の劣化に伴う加工機の振動態様の変化を捉えることで、砥石の劣化状態を高い精度で判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、砥石の劣化状態を高い精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態の砥石判定装置が適用される自動研削装置の概略構成を示す略図である。
【
図2】開状態の砥石カバーおよびその周辺の構造を示す断面図である。
【
図3】砥石判定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】振動判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図5】学習器の学習態様を説明するための説明図である。
【
図6】学習器から出力される生成誤差を説明するための説明図である。
【
図7】画像判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図8】撮像処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図9】総合判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図10】砥石の研削加工量と生成誤差ΔP1との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、砥石判定装置、学習器、判定プログラム、砥石判定方法の一実施形態について説明する。
(加工機としての自動研削装置)
図1に示すように、本実施形態の砥石判定装置30は、数値制御(NC)式の自動研削装置20に適用される。
【0013】
自動研削装置20は、研削工具として、略円板状の砥石21を有している。砥石21は、基材の外周面に多数の砥粒が分散した状態で結合剤によって固着された構造をなすものである。砥石21は、回転可能な状態で支持されている。砥石21には、例えばサーボモータを有する回転駆動部22が接続されている。回転駆動部22は、砥石21の回転位置を検出するための位置センサ45を有している。
【0014】
自動研削装置20は、支持台201を有する。支持台201には、テーブル202が相対移動可能な状態で設けられている。テーブル202は、加工対象物(以下、ワークW)を着脱可能になっている。テーブル202には、その振動を検出するための振動センサ46が設けられている。本実施形態では、振動センサ46として、所定の周波数範囲(例えば、10kHz~1MHz)の振動を検出することの可能なものが採用されている。振動センサ46としては、具体的には、AE(アコースティック・エミッション)センサが採用されている。なお振動センサ46としては、検出可能な周波数範囲が「数十kHz~数MHz」であるものを採用することが好ましい。本実施形態では、振動センサ46が振動検出部に相当する。
【0015】
自動研削装置20は、砥石21とテーブル202とを相対移動させることが可能になっている。自動研削装置20は、研削加工を実行する際には、テーブル202にワークWを固定した状態で、砥石21を回転駆動しつつ同砥石21とテーブル202とを相対移動させる。このとき砥石21をワークWに接触させることにより、砥石21の砥面23によって同ワークWの上面が研削加工される。
【0016】
自動研削装置20は、砥石21による加工部分(詳しくは、砥石21とワークWとが接触する部分)に研削液を供給する供給装置203を有している。供給装置203は、研削液を貯留する貯留部(図示略)や、貯留部内の研削液を圧送するポンプ(図示略)、加工部分に向けて研削液を噴射するノズル204などを有している。そして、自動研削装置20による研削加工を実行する際には、供給装置203によって加工部分に研削液が供給される。
【0017】
図1および
図2に示すように、自動研削装置20は砥石カバー25を有している。砥石カバー25は、下方が開口する四角箱状をなしている。砥石21は、同砥石21の下部が外部に露出する状態で砥石カバー25の内部に収容されている。
【0018】
砥石カバー25における上方の壁部をなす上壁部26には、同砥石カバー25の内外を連通する開口部27が設けられている。砥石カバー25には、開口部27を開閉する板状のシャッター部28と、同シャッター部28を往復移動させるためのアクチュエータ(以下、シャッター操作部29)とが設けられている。シャッター操作部29の作動制御を通じて、シャッター部28を一方向に移動させることにより、砥石カバー25の開口部27がシャッター部28によって塞がれた閉状態(
図1に示す状態)になる。一方、シャッター操作部29の作動制御を通じて、シャッター部28を他方向に移動させることにより、シャッター部28が砥石カバー25の開口部27から退避した開状態(
図2に示す状態)になる。本実施形態では、シャッター操作部29の作動制御を通じて、砥石カバー25の開口部27が閉じられた閉状態と開かれた開状態とを切り替え可能になっている。
【0019】
砥石カバー25には、撮像部としてのカメラ31が取り付けられている。カメラ31は、砥石カバー25の開口部27を介して、同砥石カバー25の内部に収容された砥石21の砥面23を撮像可能な態様で取り付けられている。カメラ31としては、エリアスキャンカメラが採用されている。本実施形態では、カメラ31によって砥石21の砥面23が所定の倍率で撮像されるとともに、撮像された画像(詳しくは、画像データ)が後述する電子制御装置40に出力されるようになっている。なお本実施形態では、カメラ31による撮像に際して砥石21の砥面23を照らすための照明器(図示略)が同カメラ31に一体に設けられている。
【0020】
カメラ31は、X軸駆動部32、Y軸駆動部33、Z軸駆動部34を介して砥石カバー25に取り付けられている。これらX軸駆動部32、Y軸駆動部33およびZ軸駆動部34は、スライド機構と同スライド機構を作動させるアクチュエータ(本実施形態ではサーボモータ)とを有している。本実施形態では、X軸駆動部32の作動制御を通じて、カメラ31を砥石カバー25に対してX方向(
図1の左右方向)に相対移動させることが可能になっている。またY軸駆動部33の作動制御を通じて、カメラ31を砥石カバー25に対してY方向(
図1の上下方向)に相対移動させることが可能になっている。さらにはZ軸駆動部34の作動制御を通じて、カメラ31を砥石カバー25に対してZ方向(
図1における紙面の奥行き方向)に相対移動させることが可能になっている。
【0021】
(電子制御装置)
自動研削装置20は電子制御装置40を有している。
図3に示すように、電子制御装置40はCPU41と、ROM42と、RAM43と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部44とを有している。記憶部44は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の随時書き込み読み出しが可能な不揮発性メモリによって構成されている。電子制御装置40は、各種のプログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行するように構成されている。電子制御装置40は、その演算結果をもとに、研削加工についての数値制御や、砥石21の状態の判定にかかる各種制御を実行する。本実施形態では、電子制御装置40が、振動解析部、画像出力部、振動出力部、および実行部に相当する。
【0022】
自動研削装置20は表示装置35を有している。この表示装置35は電子制御装置40に接続されている。表示装置35には、砥石21の状態を判定した判定結果が表示されるようになっている。
【0023】
本実施形態の砥石判定装置30は、砥石21の状態を判定するために、自動研削装置20(詳しくは、そのテーブル202)の振動に基づく判定(以下、振動判定)と、砥面23を撮像した画像に基づく判定(以下、画像判定)とを実行する装置である。振動判定では、振動センサ46の検出信号を加工したデータである判定用データ55を入力データとして、学習済みの振動用の学習器51Aから、砥石21の状態が判定される。画像判定では、カメラ31によって砥石21の砥面23を撮像した画像(判定画像50)を入力データとして、学習済みの画像用の学習器51Bから、砥石21の状態が判定される。
【0024】
電子制御装置40の記憶部44は、各種の実行プログラム52を記憶する記憶領域や、学習器51A,51Bの機械学習に利用される教師データ53A,53Bを記憶する記憶領域を有している。なお教師データ53Aは、砥石21の状態を判定する能力を獲得するように、振動用の学習器51Aの機械学習を行うためのデータである。また教師データ53Bは、砥石21の状態を判定する能力を獲得するように、画像用の学習器51Bの機械学習を行うためのデータである。
【0025】
記憶部44は、学習済みの振動用の学習器51A(詳しくは、機械学習の実行を通じて作成された学習データ)を記憶する振動記憶部としての記憶領域を有している。また記憶部44は、学習済みの画像用の学習器51B(詳しくは、機械学習の実行を通じて作成された学習データ)を記憶する画像記憶部としての記憶領域を有している。さらに記憶部44は、判定用データ55を記憶する振動入力部としての記憶領域や、判定画像50を記憶する画像入力部としての記憶領域、砥石21の状態を判定した結果を示す判定結果データ54を記憶する記憶領域を有している。
【0026】
実行プログラム52は、学習器51A,51Bの機械学習を実行させるとともに同機械学習の実行結果を示すデータである学習データを生成させるためのプログラムを含んでいる。また実行プログラム52は、砥石21の状態の判定にかかる各種処理を実行させるとともに判定結果を示す判定結果データ54を生成させるための判定プログラムを含んでいる。
【0027】
(振動判定)
以下、振動判定について、詳しく説明する。
図4は、振動判定にかかる処理(振動判定処理)の実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、振動判定処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として、電子制御装置40により実行される。
【0028】
図4に示すように、この処理では先ず、テーブル202の振動を検出する処理(振動検出処理)が実行される(ステップS11)。本実施形態では、ステップS11の処理が検出工程に相当する。
【0029】
振動検出処理では、自動研削装置20による研削加工を実行した状態で、既定の長さの期間(具体的には、一つのワークWを加工する加工期間)におけるテーブル202の振動波形が振動センサ46によって検出される。本実施形態では、テーブル202の振動の検出が、加工期間における複数パスのうちの同加工期間の中間にあたる時期において実行される複数回分(例えば、8回分)のパスについて実行される。詳しくは、テーブル202の振動の検出は、各パスの中間にあたる時期付近において実行されるアップカットの複数回分(例えば、3回分)について実行される。そして、振動検出処理では、振動センサ46によって検出した各振動波形からなるデータセットが作成される。データセットとしては、横軸が「時間」であり、縦軸が「振幅」であるデータ(時系列データ)が作成される。
【0030】
その後、時系列データを解析する処理(振動解析処理)が実行される(ステップS12)。本実施形態では、ステップS12の処理が解析工程に相当する。振動解析処理では、時系列データを短時間フーリエ変換してスペクトラムに変換することで、判定用データ55が作成される。振動解析処理では、詳しくは、時系列データが、所定の時間幅のウィンドウTWの範囲のデータ毎に、切り出し開始時刻を変更しながら窓関数(本実施形態では、ハニング窓)で切り出されて、判定用データ55に整形される。本実施形態では、ウィンドウTWの範囲として、研削加工に際してワークWと砥面23とが接触する部分の長さに相当する範囲(例えば、砥石21が35度回転する範囲)が設定される。これにより、研削加工に際してワークWと砥面23とが接触する接触範囲の単位で周波数特性を得ることができる。そのため、そうした接触範囲の単位で、砥石21の劣化状態を解析することができる。
【0031】
振動解析処理では、判定用データ55として、縦軸が「周波数」であり、且つ、横軸が「時間」である解析データ(スペクトログラム)が生成される。このスペクトログラムでは、振動の強度が色で表される。スペクトログラムでは、詳しくは、振動の強度が低い部分ほど暗い青系の色になり、同強度が高い部分ほど明るい赤系の色になる。本実施形態では、1つのデータセットに含まれる振動データは、1つのスペクトログラム(判定用データ55)になる。そして、この判定用データ55は、記憶部44に記憶される。本実施形態では、ステップS12の処理が入力工程に相当する。
【0032】
(振動用の学習器)
本実施形態では、振動用の学習器51Aとして、敵対的生成ネットワーク(Efficient-GAN)が採用されている。そして、本実施形態では、記憶部44に記憶された教師データ53Aをもとに学習器51Aの機械学習が実行される。詳しくは、教師データ53Aを構成する複数の画像データの一つを抽出するとともに同画像データを入力データとして学習器51Aを機械学習させるといった学習処理が、教師データ53Aを構成する画像データ毎に繰り返し実行される。そして、機械学習の実行を通じて作成された学習データが記憶部44に記憶される。本実施形態では、こうした学習器51Aの機械学習にかかる一連の処理が自動的に実行されるように、実行プログラム52が構築されて記憶部44に記憶されている。本実施形態では、このようにして学習器51Aの機械学習を実行する工程が記憶工程に相当する。
【0033】
振動用の学習器51Aの機械学習に利用される教師データ53Aを取得する場合には、未使用の砥石やドレッシングが適正に実行された状態の砥石など、劣化していない状態の砥石21[A]が用意される。この砥石21[A]は自動研削装置20に取り付けられる。そして、その状態で電子制御装置40による振動検出処理(ステップS11の処理)および振動解析処理(ステップS12の処理)が実行される。そして、振動検出処理および振動解析処理を通じて取得された画像データ(詳しくは、上記スペクトログラム)が、学習器51Aの機械学習に用いる教師データ53Aとして記憶部44に記憶される。このように本実施形態では、劣化していない状態の砥石21[A]を利用して研削加工を行った場合における前記解析データ(スペクトログラム)が教師データ53Aに定められる。本実施形態では、複数の砥石21[A]についての画像データが取得されるとともに、それら画像データによって教師データ53Aが構成される。本実施形態では、砥石21が劣化していない状態が「特定の劣化状態」に相当する。
【0034】
図5に概念的に示すように、振動用の学習器51Aの機械学習は、入力データと、同入力データをもとに学習器51Aによって生成される生成画像データとを同一の画像を示すデータ(画像データA)にする態様で実行される。そして、学習済みの学習器51Aからは、入力データと生成画像データとの差分に相当する値が生成誤差ΔP1として出力される。これにより、学習器51Aが適正に学習されている場合には、判定対象の砥石21の状態を判定する処理(振動判定処理)が実行されると、学習器51Aから生成誤差ΔP1として以下の値が出力される。
【0035】
判定対象の砥石21が劣化していない状態である場合には、入力データである上記判定用データ55と学習器51Aによって生成される生成画像データとが略同一になる。そのため、この場合には学習器51Aから出力される生成誤差ΔP1はごく小さい値(例えば「0」)になる。
【0036】
一方、判定対象の砥石21が劣化した状態になっている場合には、
図6に示すように、入力データである判定用データ55と生成画像データとが一致しなくなる。この場合には、学習器51Aから出力される生成誤差ΔP1は、入力データと生成画像データとの差分に応じた「正の値」になる。しかも、この場合には、砥石21の劣化の度合いが大きいときほど、入力データと生成画像データとの差分が大きくなるため、学習器51Aから出力される生成誤差ΔP1も大きい値になる。
【0037】
したがって、振動用の学習器51Aを利用した判定処理では、生成誤差ΔP1が大きい値であるほど、判定対象の砥石21の劣化が進んでいると判定することができる。
(振動判定処理)
図4に示すように、振動判定処理では、振動解析処理が実行された後(ステップS12)、生成誤差ΔP1を出力する第1出力処理が実行される(ステップS13)。本実施形態では、ステップS13の処理が出力工程に相当する。第1出力処理では、判定用データ55を入力データとして、学習済みの振動用の学習器51Aから、生成誤差ΔP1が出力される。本実施形態の砥石判定装置30では、この生成誤差ΔP1をもとに、砥石21の劣化度合いが判定される。
【0038】
(画像判定)
以下、前述した画像判定について、詳しく説明する。
図7は、画像判定にかかる処理(画像判定処理)の実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、画像判定処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として、電子制御装置40により実行される。
【0039】
図7に示すように、この処理では先ず、判定画像50の取得のために、カメラ31によって砥石21の砥面23を撮像する撮像処理が実行される(ステップS21)。
この撮像処理の実行手順について
図8を参照しつつ説明する。なお
図8は、撮像処理の実行手順を概念的に示している。同
図8のフローチャートに示される一連の処理は、電子制御装置40により実行される。
【0040】
図8に示すように、撮像処理では先ず、シャッター操作部29の作動制御を通じてシャッター部28が開状態にされる(ステップS31)。
その後、砥面23の撮像に適した態様で砥石21を回転駆動しつつ、カメラ31による砥面23の撮像が実行される(ステップS32)。なお本実施形態では、砥石21の回転駆動パターン、カメラ31の位置制御パターン、同カメラ31の撮像パターンとして、カメラ31によって砥面23の全面を効率良く撮像することが可能になる各パターンが予め求められて電子制御装置40に記憶されている。上記各パターンを記憶部44に記憶させる手法としては、以下の(手法A)や(手法B)などが想定される。(手法A)自動研削装置20のユーザーが実際に利用する砥石21を取り付けた後に、自動研削装置20を作動させることで同砥石21に適した上記各パターンを求めて電子制御装置40に記憶させる。(手法B)自動研削装置20の製造メーカーは、各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、砥石21の砥面23の全面を効率良く撮像することが可能になる上記各パターンを予め求めている。そして、それらパターンにかかるデータを、出荷前の自動研削装置20、あるいはユーザーの工場に設置された自動研削装置20に記憶させる。
【0041】
ステップS32の処理では、そうした砥石21の回転駆動パターンに基づいて回転駆動部22の作動制御が実行されるとともに、カメラ31の位置制御パターンに基づいてX軸駆動部32、Y軸駆動部33、Z軸駆動部34の作動制御が実行される。また、カメラ31の撮像パターンに基づいて同カメラ31による砥面23の撮像が実行される。そして、電子制御装置40は、カメラ31によって撮像された砥面23の画像データを取り込んで記憶部44に記憶する。詳しくは、カメラ31によって砥面23が複数回に分けて撮像される。そして、撮像した複数枚の画像を予め定めた順に縦横に並べた状態で結合することで、砥面23の全体を示す一枚の画像(判定画像50)が生成される。電子制御装置40は、このようにして生成した画像を記憶部44に記憶する。
【0042】
カメラ31による砥面23の撮像が完了すると、シャッター操作部29の作動制御を通じて、シャッター部28が閉状態にされる(ステップS33)。
図8に示す撮像処理は、砥石21によるワークWの研削加工が実行されていないことを条件に実行される。なお撮像処理を実行する際には、その実行に先立ち、撮像対象の砥面23にエアーを吹き付けることで同砥面23表面の切削オイルを除去する作業が必要に応じて実行される。
【0043】
(画像用の学習器)
本実施形態では、画像用の学習器51Bとして、敵対的生成ネットワーク(Efficient-GAN)が採用されている。そして、本実施形態では、記憶部44に記憶された教師データ53Bをもとに学習器51Bの機械学習が実行される。詳しくは、教師データ53Bを構成する複数の画像データの一つを抽出するとともに同画像データを入力データとして学習器51Bを機械学習させるといった学習処理が、教師データ53Bを構成する画像データ毎に繰り返し実行される。そして、機械学習の実行を通じて作成された学習データが記憶部44に記憶される。本実施形態では、こうした学習器51Bの機械学習にかかる一連の処理が自動的に実行されるように、実行プログラム52が構築されて記憶部44に記憶されている。
【0044】
学習器51Bの機械学習に利用される教師データ53Bを取得する場合には、劣化していない状態の砥石21[A]が用意される。この砥石21[A]は自動研削装置20に取り付けられる。そして、その状態で電子制御装置40による撮像処理(
図8参照)が実行される。そして、撮像処理を通じて取得された画像データが、学習器51Bの機械学習に用いる教師データ53Bとして記憶部44に記憶される。本実施形態では、複数の砥石21[A]についての画像データが取得されて、それら画像データによって教師データ53Bが構成される。
【0045】
図5に概念的に示すように、学習器51Bの機械学習は、詳しくは、入力データと、同入力データをもとに学習器51Bによって生成される生成画像データとを同一の画像を示すデータ(画像データA)にする態様で実行される。そして、学習済みの学習器51Bからは、入力データと生成画像データとの差分に相当する値が生成誤差ΔP2として出力される。これにより、学習器51Bが適正に学習されている場合には、判定対象の砥石21の状態を判定する処理(画像判定処理)が実行されると、学習器51Bから、生成誤差ΔP2として、以下の値が出力される。
【0046】
判定対象の砥石21が劣化していない状態である場合には、入力データである判定画像50と学習器51Bによって生成される生成画像データとが略同一になる。そのため、この場合には学習器51Bから出力される生成誤差ΔP2はごく小さい値(例えば「0」)になる。
【0047】
一方、判定対象の砥石21が劣化した状態になっている場合には、
図6に示すように、入力データと生成画像データとが一致しなくなる。この場合には、学習器51Bから出力される生成誤差ΔP2は、入力データと生成画像データとの差分に応じた「正の値」になる。しかも、この場合には、砥石21の劣化の度合いが大きいときほど、入力データと生成画像データとの差分が大きくなるため、学習器51Bから出力される生成誤差ΔP2も大きい値になる。
【0048】
したがって、画像用の学習器51Bを利用した判定処理では、生成誤差ΔP2が大きい値であるほど、判定対象の砥石21の劣化が進んでいると判定することができる。
ここで、砥石21が劣化していない状態のときには、砥面23の最外周面は砥粒の突端面のみによって構成されている。そして、砥石21による研削加工が実行されて、砥石21(詳しくは、砥面23)が劣化すると、砥石21の最外周面に、砥粒以外の部分(主に、結合剤によって構成される部分)が現れる。このように、砥石21の劣化の度合いは、砥面23の最外周面に現れる。本実施形態では、判定画像50や教師データ53Bを構成する画像データとして、砥面23を撮像した画像が用いられる。そのため、判定画像50や教師データ53Bを構成する画像データには、砥面23の最外周面に関する情報、詳しくは砥面23における特徴的な状態の部分に関する情報が、同砥面23の劣化状態を表す情報として含まれていると云える。したがって本実施形態では、画像用の学習器51Bの機械学習に際して、そうした砥面23の最外周面の状態を特徴量として抽出させることができ、この特徴量に基づいて学習器51Bの機械学習を進めることができる。
【0049】
図7に示すように、画像判定処理では、撮像処理が実行された後(ステップS21)、生成誤差ΔP2を出力する第2出力処理が実行される(ステップS22)。第2出力処理では、判定画像50を入力データとして、学習済みの画像用の学習器51Bから、生成誤差ΔP2が出力される。
【0050】
その後、生成誤差ΔP2が第2判定値J2以上であるか否かが判断される(ステップS23)。なお本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期になったときの生成誤差ΔP2が予め求められている。そして、この生成誤差ΔP2に相当する値が、第2判定値J2として定められて記憶部44に記憶されている。
【0051】
そして、生成誤差ΔP2が第2判定値J2以上である場合には(ステップS23:YES)、砥石21の劣化が所定レベル以上進んでいるとして、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定される(ステップS24)。なお本実施形態では、画像判定処理による判定結果は、判定結果データ54として記憶部44に記憶されるとともに、表示装置35に表示される。表示装置35には、生成誤差ΔP2が判定値J2以上である場合には、ドレッシングを実行するべき時期であることを示す文字情報(ドレスタイミング)が表示される。ユーザーは、記憶部44に記憶されている判定結果データ54や、表示装置35に表示される判定結果をもとに、ドレッシングを実行するべき時期であることを把握することができる。
【0052】
一方、生成誤差ΔP2が第2判定値J2未満である場合には(ステップS23:NO)、砥石21の劣化が許容範囲内であるとして、ステップS24の処理がジャンプされる。
(総合判定処理)
本実施形態では、振動判定処理(
図4参照)と画像判定処理(
図7参照)とを組み合わせて実行することにより、砥石21の状態が判定される。
【0053】
以下、そうした処理(総合判定処理)の実行手順について
図9を参照しつつ説明する。
図9は、総合判定処理の実行手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、総合判定処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として、電子制御装置40により実行される。
【0054】
図9に示すように、この処理では先ず、振動判定処理(
図4参照)が実行される(ステップS41)。ステップS41の処理では、判定用データ55に基づいて、振動用の学習器51Aから、生成誤差ΔP1が出力される。
【0055】
その後、上記生成誤差ΔP1が第1判定値J1以上であるか否かが判断される(ステップS42)。そして、上記生成誤差ΔP1が第1判定値J1未満である場合には(ステップS42:NO)、画像判定処理は実行されない(ステップS43の処理がジャンプされる)。
【0056】
図10に、砥石21の研削加工量と生成誤差ΔP1との関係の一例を示す。
図10に示すように、ドレッシングの実行後に砥石21による研削加工がなされていないとき、すなわち砥石21が劣化していないときには(時刻t11)、振動判定処理において学習器51Aから出力される生成誤差ΔP1は小さい値になる。そして、砥石21による研削加工が実行されて同砥石21の劣化が進むと、生成誤差ΔP1は徐々に大きい値になる。
【0057】
本実施形態では、生成誤差ΔP1が第1判定値J1以上になるまでの期間(時刻t11~t12)においては、画像判定処理は実行されず、振動判定処理のみが実行される。すなわち、砥石21が劣化していないときから、砥石21の劣化度合いが所定のレベルに達するまでの期間においては、画像判定処理は実行されず、振動判定処理のみが実行される。
【0058】
図9に示すように、その後において本処理が繰り返し実行されて、生成誤差ΔP1が第1判定値J1以上になると(ステップS42:YES)、画像判定処理(
図7参照)が実行される(ステップS43)。本実施形態では、砥石21の劣化度合いが所定レベルに達すると、以後においては画像判定処理および振動判定処理が実行されるようになる。
【0059】
このように本実施形態では、振動判定処理(
図4参照)において出力される生成誤差ΔP1が砥石21の劣化度合いが所定レベル未満であることを示す値(ΔP1<J1)である場合には、画像判定処理(
図7参照)は実行されない。そして、生成誤差ΔP1が砥石21の劣化度合いが所定レベル以上であることを示す値(ΔP1≧J1)になると、画像判定処理が実行されるようになる。
【0060】
(作用効果)
以下、こうした総合判定処理を実行することによる作用効果について説明する。
自動研削装置20では、砥石21による研削加工に際して、加工部分に研削液が供給される。自動研削装置20では、砥石21を撮像するカメラ31が同砥面23の近傍に設けられる。カメラ31による砥面23の撮像は、同カメラ31に研削液が付着するとうまくいかない。そのため本実施形態では、カメラ31による撮像は、砥石21によるワークWの研削加工が実行されていない状況下、すなわち研削液が供給されない状況下で実行される。そして、カメラ31による撮像を実行しないときには、シャッター部28を閉状態(
図2に示す状態)にすることで、カメラ31に研削液がかからない状態にされる。このように、砥石判定装置30では、カメラ31による撮像や撮像した画像に基づく判定が、研削液による影響を受け易い。そのため砥石判定装置30では、カメラ31による撮像や撮像した画像に基づく判定についての制約が多いと云える。
【0061】
これに対して、振動センサ46は、その構造上、仮に研削液が付着したとしても精度良く検出することが可能である。また振動センサ46は、砥石21から離れた位置に設けることも可能である。したがって、砥石判定装置30では、振動センサ46による振動の検出や、同振動センサ46の検出信号に基づく判定が、研削液による影響を受け難い。そのため砥石判定装置30では、画像に基づく判定と比較して、振動センサ46による検出や検出信号に基づく判定についての制約が少ないと云える。
【0062】
また、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、砥面23を撮像した画像に基づく判定は、テーブル202の振動に基づく判定と比較して、砥石21の劣化を高い精度で判定することができることが分かった。
【0063】
本実施形態にかかる総合判定処理によれば、砥石21の劣化がさほど進んでいないときには、テーブル202の振動に基づく振動判定(
図4参照)、すなわち研削液による影響を受け難い方法での判定を実行することができる。この場合には、振動判定処理を通じて、研削加工の実行中においても研削液による影響をなんら考慮することなく、テーブル202の振動を容易に検出することができる。そのため、そうして検出されるテーブル202の振動をもとに、砥石21の劣化度合いをタイムリーに判定することができる。
【0064】
しかも、砥石21の劣化がある程度進むと、砥面23を撮像した画像に基づく画像判定(
図7参照)、言い換えれば研削液による影響を受け易い判定方法であるものの高い判定精度が見込める判定方法で、砥石21の劣化度合いを判定することができる。本実施形態によれば、砥石21の劣化がさほど進んでいないときに画像判定が実行されない分だけ、画像判定の実行期間を短くすることができる。そして、砥石21の劣化がある程度進んだときには、以後において画像判定を実行することで、砥石21の劣化を高い精度で判定することができる。
【0065】
このように本実施形態によれば、テーブル202の振動に基づく振動判定と砥面23を撮像した画像に基づく画像判定とを利用して、砥石21の劣化判定を高い自由度で実行することができる。
【0066】
(効果)
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)テーブル202の振動を検出する振動センサ46がテーブル202に設けられている。電子制御装置40は、振動センサ46によって検出した検出データの周波数解析を行う。周波数解析の結果得られる解析データ(詳しくは、スペクトログラム)が判定用データ55として電子制御装置40の記憶部44に記憶される。劣化していない状態の砥石21[A]を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データ53Aにする。この教師データ53Aによって学習された振動用の学習器51Aが電子制御装置40の記憶部44に記憶される。電子制御装置40は、判定用データ55を入力データとして、記憶部44に記憶された学習済みの振動用の学習器51Aから、砥石21の劣化度合いに応じた値(生成誤差ΔP1)を出力する。
【0067】
砥石21によってワークWを研削加工する際には自動研削装置20は振動する。そして、砥石21が劣化すると、同砥石21によるワークWの研削態様が変化するため、自動研削装置20の振動態様も変化するようになる。
【0068】
本実施形態によれば、劣化していない状態の砥石21[A]を利用して研削加工を行った場合における解析データ(詳しくは、前記スペクトログラム)に対応する教師データ53Aが用意される。そして、この教師データ53Aによって予め学習させた学習済みの振動用の学習器51Aが用意される。そのため、学習済みの振動用の学習器51Aを利用して、砥石21の劣化に伴うテーブル202の振動態様の変化を捉えることで、砥石21の劣化状態を高い精度で判定することができる。
【0069】
(2)解析データを、既定の長さの期間における振動センサ46の検出値からなる時系列データを短時間フーリエ変換することによって得られるデータとした。本実施形態によれば、振動センサ46の検出値からなる時系列データを解析した「スペクトログラム」を取得することができる。そして、この「スペクトログラム」を示す画像データを、振動用の学習器51Aについての教師データ53Aとして利用したり、同学習器51Aに基づく判定における判定用データ55として利用したりすることで、砥石21の劣化を精度良く判定することができる。
【0070】
(3)電子制御装置40の記憶部44には、判定対象の砥石21の砥面23を撮像した画像が判定画像50として記憶される。電子制御装置40の記憶部44には、劣化していない状態の砥石21の砥面23を撮像した画像からなる教師データ53Bによって学習された学習済みの画像用の学習器51Bが記憶される。電子制御装置40は、判定画像50を入力データとして、学習済みの画像用の学習器51Bから、砥石21の劣化度合いに応じた値(生成誤差ΔP2)を出力する。電子制御装置40は、画像判定処理を、振動用の学習器51Aから出力される生成誤差ΔP1が第1判定値J1未満である場合には実行せず、且つ、生成誤差ΔP1が第1判定値J1以上である場合には実行する。
【0071】
本実施形態によれば、劣化していない状態の砥石21[A]の砥面23を撮像した画像が用意されるとともに、同画像を教師データ53Bとして予め学習させた学習済みの画像用の学習器51Bが用意される。そのため、学習済みの画像用の学習器51Bを利用して、判定対象の砥石21の劣化度合いを高い精度で判定することができる。また、本実施形態によれば、テーブル202の振動に基づく振動判定と砥面23を撮像した画像に基づく画像判定とを利用して、砥石21の劣化判定を高い自由度で実行することができる。
【0072】
(4)自動研削装置20には、砥石21の砥面23を撮像するカメラ31が取り付けられている。カメラ31によって撮像された画像は、判定画像50として、電子制御装置40の記憶部44に記憶される。自動研削装置20は、砥石21の砥面23を覆う態様で同砥面23に沿って延びるシャッター部28と、シャッター部28を開閉操作するシャッター操作部29とを有する。シャッター操作部29は、砥面23の撮像時には同砥面23とカメラ31との間がシャッター部28によって仕切られない開状態にする一方、砥面23の非撮像時には同砥面23とカメラ31との間がシャッター部28によって仕切られた閉状態にする。
【0073】
これにより、砥面23を撮像する作業や砥面23を撮像した画像を電子制御装置40に記憶させる作業を、それら作業に合わせて自動研削装置20にカメラ31を着脱することなく、自動研削装置20に砥石21を取り付けた状態のままで容易に行うことができる。また、カメラ31による砥面23の撮像が実行されない非撮像時には、シャッター部28を閉じて、カメラ31と砥石21との間が仕切られた閉状態にすることができる。これにより、カメラ31への異物(研削液や、切り粉、オイル等)の付着を抑えることができる。そして、カメラ31による砥面23の撮像を実行する撮像時には、シャッター部28を開いてカメラ31と砥石21との間が仕切られない開状態にすることで、カメラ31による砥面23の撮像が可能な状態にすることができる。
【0074】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0075】
・砥面23の状態を判定した判定結果を表示装置35に表示することに限らず、判定結果に応じて警告ブザーを吹聴したりスピーカーから音声情報を発したりするようにしてもよい。
【0076】
・砥面23の状態を判定した判定結果を表示装置35に表示する構成を省略してもよい。
・振動センサ46としては、所定の周波数範囲(10kHz~1MHz、または、数十kHz~数MHz)の振動を検出することができるものであれば、AEセンサに限らず、任意のセンサを採用することができる。振動センサ46の取付部位は、砥石21によるワークWの研削加工に際して生じる振動を検出できる部位であれば、テーブル202に限らず、任意に変更することができる。
【0077】
・振動検出処理において、データセット(時系列データ)を作成する方法は、既定の長さの期間において振動センサ46によって検出された振動波形をもとに形成する方法であれば、任意に変更することができる。例えば振動検出処理におけるテーブル202の振動の検出を、加工期間における複数パスの全てについて実行したり、各パスにおいて実行される複数回のアップカットの全てについて実行したり、各パスにおけるダウンカットについて実行したりしてもよい。
【0078】
・判定対象の砥石21が設けられた自動研削装置20以外の装置(専用の撮像装置や他の自動研削装置など)に搭載されたカメラによって撮像した画像を、電子制御装置40に記憶させて、教師データ53Bとして用いるようにしてもよい。
【0079】
・判定画像50および教師データ53Bとして、砥面23の全体を示す一枚の画像を用いることに限らず、砥面23の一部(例えば半分)を示す一枚の画像を用いたり、砥面23の全体を示す画像を複数に分割した複数枚の画像を用いたりすることができる。
【0080】
・学習済みの学習器51A,51Bを電子制御装置40に記憶させるための作業は、以下の(作業A)~(作業C)のように、任意の態様で実行することができる。
(作業A)判定対象の砥石21が設けられる自動研削装置20を利用して、教師データ53A,53Bを取得するとともに、同教師データ53A,53Bによって学習器51A,51Bを機械学習させる。
【0081】
(作業B)実際に使用する砥石21に対応する教師データ53A,53Bを、自動研削装置20の製造メーカー、あるいは砥石21の製造メーカーに提供してもらう。そして、教師データ53A,53Bをユーザーが使用する砥石判定装置30の電子制御装置40に記憶させることで、学習器51A,51Bを機械学習させる。
【0082】
(作業C)自動研削装置20の製造時において、学習済みの学習器51A,51Bを電子制御装置40に記憶させる。
・カメラ31を、自動研削装置20における砥石カバー25以外の部分に取り付けるようにしてもよい。
【0083】
・カメラ31を有する撮像ユニットを、自動研削装置20と別体に構成してもよい。同構成では、砥面23の状態を判定する際に撮像ユニットを自動研削装置20に一時的に取り付けるとともに同撮像ユニットによって砥面23を撮像することで、判定対象の砥石21の砥面23を撮像した画像(判定画像50)を取得することができる。上記構成によれば、撮像ユニットによって砥面23を撮像する際に、自動研削装置20を構成する各種の駆動部を利用して、砥石21(詳しくは、その砥面23)と撮像ユニットとの相対位置を制御することができる。なお各種の駆動部としては、砥石21を移動させる移動装置や、ワークWが固定されるテーブル202を移動させる移動装置などを挙げることができる。
【0084】
・判定対象の砥石21のドレッシングが完了した直後において、1回に限り(または複数回にわたり)、砥面23を撮像した画像に基づく画像判定を実行するようにしてもよい。この画像判定においては、学習器51Bから出力される生成誤差ΔP2が所定値(具体的には、「0」ではない小さい値)以下であるか否かを判断する処理を実行するようにすればよい。これにより、学習器51Bから出力される生成誤差ΔP2が所定値以下である場合に、生成誤差ΔP2が略「0」になっているとして、判定対象の砥石21におけるドレッシングが適正に実行されたと判定することができる。
【0085】
・教師データ53A,53Bとしては、劣化していない状態の砥石21に対応する画像データを採用することに限らず、任意の劣化状態の砥石21に対応する画像データを採用することができる。
【0086】
そうした教師データ53A,53Bとしては、例えば、ドレッシングの実行開始に最も適した状態の砥石21に対応する画像データを用いることが可能である。同構成では、ドレッシングの実行開始に最も適した状態が、特定の劣化状態に相当する。この場合、教師データ53A,53Bの取得は、次のように実行すればよい。すなわち、ドレッシングの実行開始に最も適した状態の砥石21[B]を用意するとともに、同砥石21[B]を自動研削装置20に取り付ける。そして、その状態で振動センサ46の検出値をもとに画像データ(スペクトラム)を生成するとともに、同画像データを教師データ53Aとして記憶部44に記憶する。また、砥石21[B]を自動研削装置20に取り付けた状態で、カメラ31によって撮像した画像をもとに画像データを生成するとともに、同画像データを教師データ53Bとして記憶部44に記憶する。
【0087】
この構成では、判定対象の砥石21が劣化していない状態である場合には、学習器から出力される生成誤差の絶対値は大きい値になる。そして、判定対象の砥石21の劣化が進むに連れて、上記生成誤差の絶対値は徐々に小さくなる。判定対象の砥石21がドレッシングの実行開始に最も適した状態になると、上記生成誤差はごく小さい値(例えば「0」)になる。上記構成によれば、こうした生成誤差をもとに、砥石21の状態を判定することができる。
【0088】
・学習器51A,51Bとしては、敵対的生成ネットワークを採用することに限らず、オートエンコーダなどを採用することができる。
・学習器51A,51Bとして、畳み込みニューラルネットワークや、多層構造を有する一般的な順伝播型ニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなどを採用することも可能である。学習器51A,51Bとして、畳み込みニューラルネットワークを採用する場合には、以下のようにして砥石21の状態を判定することができる。
【0089】
畳み込みニューラルネットワークによって構成される学習器51A,51Bを、「ドレス直後」、「加工期」、および「ドレスタイミング」といった3種類の砥面23の劣化状態に対応する教師データ53A,53Bを利用して学習させる。なお「ドレス直後」は最適なドレッシングが実行された状態であり、「加工期」は研削加工に適した砥面23の状態であって、且つ、ドレッシングの実行完了後に砥石21による研削加工が所定期間にわたり実行された状態である。「ドレスタイミング」は、ドレッシングの実行開始に最も適した状態である。この構成では、「ドレス直後」、「加工期」、および「ドレスタイミング」が、特定の劣化状態に相当する。
【0090】
教師データ53A,53Bによって学習された学習済みの学習器51A,51Bは、入力データとしての判定画像50(または判定用データ55)を3つの分類クラス(クラス0,1,2)に分類した結果を出力する。判定画像50(または判定用データ55)が「ドレス直後」に対応する画像データである場合には、同画像データは「クラス0」に分類される。また、判定画像50(または判定用データ55)が「加工期」に対応する画像データである場合には、同画像データは「クラス1」に分類される。さらに判定画像50(または判定用データ55)が「ドレスタイミング」に対応する画像データである場合には、同画像データは「クラス2」に分類される。学習器51A,51Bは、具体的には、1枚の画像データ(判定画像50または判定用データ55)について同画像データが分類クラスに属する確率を、3つの分類クラスの各々について出力する。すなわち、上記学習器51A,51Bは、1枚の判定画像50(または判定用データ55)について「クラス0」に属する確率P0と、「クラス1」に属する確率P1と、「クラス2」に属する確率P2とを出力する。そして、砥石判定装置30は、上記学習器51A,51Bから出力される各分類クラスの確率P0,P1,P2に基づいて、砥石21における砥面23の劣化状態を判定する。
【0091】
上記構成においては、総合判定処理(
図9)における画像判定処理の実行の要否を判定する処理(ステップS42の処理参照)として、例えば、以下の(条件A)が満たされるか否かを判断する処理を実行すればよい。
【0092】
(条件A)「クラス1」に属する確率P1が所定値(例えば、45%)以上であり、且つ、「クラス2」に属する確率P2が所定値(例えば、5%)以上であること。
また上記構成においては、振動判定処理(
図7)における「ドレスタイミング」であるか否かを判断する処理(ステップS23の処理参照)として、例えば、以下の(条件B)が満たされるか否かを判断する処理を実行すればよい。
【0093】
(条件B)「クラス2」に属する確率P2が所定値(例えば、95%)以上であること。
さらに上記構成においては、「クラス0」に属する確率P0が所定値(例えば、95%)以上であることをもって、判定対象の砥石21におけるドレッシングが適正に実行されたと判定すること等も可能である。
【0094】
・砥石21の状態を判定するための処理として、自動研削装置20の振動に基づく振動判定(
図4参照)および砥面23を撮像した画像に基づく画像判定(
図7参照)のうち、振動判定のみを実行するようにしてもよい。
【0095】
この場合には、振動用の学習器51Aから出力される生成誤差ΔP1が、予め定められた第3判定値J3以上である場合に、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期(いわゆるドレスタイミング)であると判定するようにすればよい。また、上記生成誤差ΔP1が第3判定値J3未満である場合には、ドレスタイミングであると判定しないようにすればよい。なお上記構成においては、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとにドレスタイミングになったときの生成誤差ΔP1を予め求めるとともに、この生成誤差ΔP1に相当する値を第3判定値J3として定めて記憶部44に記憶しておけばよい。
【0096】
上記構成によれば、劣化していない状態の砥石21[A]を利用して研削加工を行った場合における解析データ(スペクトログラム)に対応する教師データ53Aを用意することができる。そして、この教師データ53Aによって予め学習させた学習済みの振動用の学習器51Aを用意することもできる。そのため、学習済みの振動用の学習器51Aを利用して、砥石21の劣化に伴うテーブル202の振動態様の変化を捉えることで、砥石21の劣化状態を高い精度で判定することができる。
【0097】
・時系列データの周波数解析を行う手法としては、窓関数をハニング窓とする短時間フーリエ変換を採用することに限らず、窓関数をハン窓とする短時間フーリエ変換を採用するなど、任意の手法の周波数解析を採用することができる。そうした手法としては、短時間フーリエ変換にも限定されず、スペクトログラムなどの何らかの画像データが得られる手法であれば、任意の周波数解析手法を採用することができる。
【0098】
・上記実施形態にかかる砥石判定装置は、円柱状の基材の底面に多数の砥粒が結合剤によって固着された構造をなす砥石にも適用することができる。
(付記)
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
【0099】
[付記1]砥石による研削加工を行う加工機に適用されて、前記砥石の状態を判定する砥石判定装置において、前記加工機に設けられ、同加工機の振動に関するデータを検出する振動検出部と、前記振動検出部によって検出した検出データの周波数解析を行う振動解析部と、前記振動解析部による周波数解析の結果得られる解析データを判定用データとして記憶する振動入力部と、特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器を記憶する振動記憶部と、前記判定用データを入力データとして、前記振動記憶部に記憶された学習済みの前記振動用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する振動出力部と、を備える砥石判定装置。
【0100】
[付記2]前記解析データは、既定の長さの期間において前記振動検出部によって検出された前記加工機の振動に関するデータからなる時系列データを、短時間フーリエ変換することによって得られるデータである、[付記1]に記載の砥石判定装置。
【0101】
[付記3]判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として記憶する画像入力部と、特定の劣化状態の砥石の砥面を撮像した画像を含む教師データによって学習された学習済みの画像用の学習器を記憶する画像記憶部と、前記判定画像を入力データとして、前記学習済みの画像用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する画像出力部と、前記画像入力部による前記判定画像の記憶、および、前記画像出力部による前記砥石の劣化度合いに応じた値の出力を、前記振動出力部の出力値が前記砥石の劣化度合いが所定レベル未満であることを示す値である場合には実行せず、且つ、前記振動出力部の出力値が前記砥石の劣化度合いが前記所定レベル以上であることを示す値である場合には実行する実行部と、を有する[付記1]または[付記2]に記載の砥石判定装置。
【0102】
[付記4]前記砥石の砥面を撮像する撮像部と、前記砥石の砥面を覆う態様で同砥面に沿って延びるシャッター部と、前記シャッター部を開閉操作するものであって、前記砥面の撮像時には同砥面と前記撮像部との間が前記シャッター部によって仕切られない開状態にする一方、前記砥面の非撮像時には前記砥面と前記撮像部との間が前記シャッター部によって仕切られた閉状態にするシャッター操作部と、を備える[付記3]に記載の砥石判定装置。
【0103】
[付記5]前記[付記1]~[付記4]のいずれか一項に記載の砥石判定装置が備える前記学習済みの振動用の学習器。
[付記6]前記[付記1]~[付記4]のいずれか一項に記載の砥石判定装置が具備する前記振動検出部の処理、前記振動解析部の処理、前記振動入力部の処理、前記振動記憶部の処理、および前記振動出力部の処理を、前記砥石判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラム。
【0104】
[付記7]砥石による研削加工を行う加工機に適用されて、前記砥石の状態を判定する砥石判定方法であって、前記加工機に設けられた振動検出部によって同加工機の振動に関するデータを検出する検出工程と、前記振動検出部によって検出した検出データについての周波数解析を行う解析工程と、前記周波数解析の結果得られる解析データを判定用データとして砥石判定装置の振動記憶部に記憶させる入力工程と、特定の劣化状態の砥石を利用して研削加工を行った場合における前記解析データを教師データにして学習された振動用の学習器を、前記振動記憶部に記憶させる記憶工程と、前記判定用データを入力データとして、前記振動記憶部に記憶された学習済みの前記振動用の学習器から、前記砥石の劣化度合いに応じた値を出力する出力工程と、を備える砥石判定方法。
【符号の説明】
【0105】
20 自動研削装置
201 支持台
202 テーブル
203 供給装置
204 ノズル
21 砥石
22 回転駆動部
23 砥面
25 砥石カバー
26 上壁部
27 開口部
28 シャッター部
29 シャッター操作部
30 砥石判定装置
31 カメラ
32 X軸駆動部
33 Y軸駆動部
34 Z軸駆動部
35 表示装置
40 電子制御装置
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 記憶部
45 位置センサ
46 振動センサ
50 判定画像
51A,51B 学習器
52 実行プログラム
53A,53B 教師データ
54 判定結果データ
55 判定用データ