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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106049
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】薬液供給ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010118
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】住吉 聡
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066HH11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薬液収容容器と計量設定装置とを別体で構成することで、扱いを容易にすることができると共に、その組み立て及び分解が容易になし得る薬液供給ユニットを提供する。
【解決手段】軸筒11に配置された操作部2dの操作に基づいて、軸筒の前端部から作動シャフトが繰り出される計量設定装置1と、薬液が収容されると共に押し込み操作部2dの押し込み量に応じて、収容された薬液の導出量が制御される薬液収容容器2とが、それぞれ別体に備えられる。計量設定装置の作動シャフトの先端部を、薬液収容容器の押し込み操作部に対峙させた状態で、計量設定装置と薬液収容容器は、ホルダー3に装着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒に配置された操作部の操作に基づいて、軸筒の前端部から作動シャフトが繰り出される計量設定装置と、薬液が収容されると共に押し込み操作部の押し込み量に応じて、収容された前記薬液の導出量が制御される薬液収容容器とが、それぞれ別体に備えられ、前記計量設定装置の作動シャフトの先端部を、前記薬液収容容器の押し込み操作部に対峙させて配置した薬液供給ユニットであって、
前記計量設定装置には、
一方向に回転させることによって前記軸筒の後端部から後方向に引き出され、押し込まれることで前方向に移動する前記操作部と、
前記軸筒の後端部に設けられ、前記操作部の一方向の回転を許容する天冠部と、
前記操作部の前端部に形成された第1の突起部と螺合する螺子部を有すると共に、前記操作部が後方向に引き出される状態では前記天冠部と係合し回転が禁止され、前記操作部が前方向に押し込まれる状態では、前記天冠部との係合が解除され、前記操作部の第1の突起部によって回転する回転子と、
前記操作部の軸方向に貫通する軸孔内に収容されて、前記回転子と共に回転する前記作動シャフトと、
前記作動シャフトの回転により、前記作動シャフトを軸筒の前端部から繰り出す運動変換部と、が備えられ、
前記操作部を一方向に回転させることにより軸筒の後端部から後方向に引き出し、前記操作部を押し込むことにより前記回転子及び作動シャフトを回転させて、前記運動変換部を介して作動シャフトを軸筒の前端部から繰り出し、繰り出された作動シャフトの先端部を前記薬液収容容器の押し込み操作部に当接させて、押し込み操作を行うことを特徴とする薬液供給ユニット。
【請求項2】
前記計量設定装置の作動シャフトの先端部を、前記薬液収容容器の押し込み操作部に対峙させた状態で、前記計量設定装置及び薬液収容容器を、それぞれ長手方向の一端部及び他端部に着脱可能に取り付けることができるホルダーが備えられた請求項1に記載の薬液供給ユニット。
【請求項3】
前記ホルダーは、中央のベース板の長手方向の両辺に左右の側板が同方向に折り曲げ形成されることで、長手方向に直交する断面形状がコ字状に成形され、前記ホルダーの長手方向の一端部近傍及び他端部近傍における前記左右側板の内壁面には、前記計量設定装置及び薬液収容容器の一部に係止して、それぞれ計量設定装置及び薬液収容容器を前記一端部及び他端部に着脱可能に取り付ける係止部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の薬液供給ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、注射器などの薬液収容容器から、設定された量の薬液が導出できるようにした薬液供給ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液体状の薬剤を、人間又は動物に投与するために、注射器が多用されている。
例えば糖尿病の治療薬として用いられるインシュリンなどは、使用者(患者)自身が前記注射器を用いて自己投与することが一般的である。そこで、使用者が1回分の投与量を設定することができ、使用者自身が皮下注射できるようにした薬液供給装置が、提案されている。
この種の薬液供給装置については、本出願人においても過去に提案をしており、これは特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された薬液供給装置においては、細長い軸筒の前半部に、先端に注射針を備えた注射器が配置され、前記軸筒の後半部には、前記注射器の外筒内に収容されるピストン棒を押し出すことができる計量設定装置が配置されている。
前記した薬液供給装置によると、薬液投与量の設定を行う計量設定装置と薬液の投与を行う注射器を、細長い軸筒内に収めた一つの部材で構成されているので、部品点数を抑制した薬液供給装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-127879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に示す薬液供給装置によると、前半の注射器と後半のピストン棒を有する計量設定装置を、軸筒内の前後に直線状に収めた構造を有しているため、その全長が長く、例えば搬送に際しても扱い難いという問題を抱えている。
また、注射器内に薬液を注入するに際しても、全長が長い薬液供給装置の全体を把持して操作をしなければならず、使い勝手が悪いために、操作に様々な支障が生ずるという課題を有している。
【0006】
この発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、注射器としての薬液収容容器と、前記薬液収容容器から薬液を導出するために、押し込み操作を行うことができる計量設定装置とを別体で構成することで、その扱いを容易にすることができると共に、その組み立て及び分解が容易になし得る薬液供給ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解消するためになされたこの発明に係る薬液供給ユニットは、軸筒に配置された操作部の操作に基づいて、軸筒の前端部から作動シャフトが繰り出される計量設定装置と、薬液が収容されると共に押し込み操作部の押し込み量に応じて、収容された前記薬液の導出量が制御される薬液収容容器とが、それぞれ別体に備えられ、前記計量設定装置の作動シャフトの先端部を、前記薬液収容容器の押し込み操作部に対峙させて配置した薬液供給ユニットであって、前記計量設定装置には、一方向に回転させることによって前記軸筒の後端部から後方向に引き出され、押し込まれることで前方向に移動する前記操作部と、前記軸筒の後端部に設けられ、前記操作部の一方向の回転を許容する天冠部と、前記操作部の前端部に形成された第1の突起部と螺合する螺子部を有すると共に、前記操作部が後方向に引き出される状態では前記天冠部と係合し回転が禁止され、前記操作部が前方向に押し込まれる状態では、前記天冠部との係合が解除され、前記操作部の第1の突起部によって回転する回転子と、前記操作部の軸方向に貫通する軸孔内に収容されて、前記回転子と共に回転する前記作動シャフトと、前記作動シャフトの回転により、前記作動シャフトを軸筒の前端部から繰り出す運動変換部とが備えられ、前記操作部を一方向に回転させることにより軸筒の後端部から後方向に引き出し、前記操作部を押し込むことにより前記回転子及び作動シャフトを回転させて、前記運動変換部を介して作動シャフトを軸筒の前端部から繰り出し、繰り出された作動シャフトの先端部を前記薬液収容容器の押し込み操作部に当接させて、押し込み操作を行うことを特徴とする。
【0008】
この発明に係る薬液供給ユニットによると、軸筒に配置された操作部の操作に基づいて、軸筒の前端部から作動シャフトが繰り出される計量設定装置と、薬液が収容されると共に押し込み操作部の押し込み量に応じて、収容された前記薬液の導出量が制御される薬液収容容器とがそれぞれ別体に備えられる。
すなわち、計量設定装置と注射器などの薬液収容容器は、別体に構成されて備えられるので、例えば搬送に際しても扱い易く、また薬液収容容器としての注射器内に薬液を注入するに際しても、単独の薬液収容容器に対して薬液を注入できるので、その扱いは容易となる。
【0009】
また、この発明に係る薬液供給ユニットにおいては、前記計量設定装置の作動シャフトの先端部を、前記薬液収容容器の押し込み操作部に対峙させた状態で、前記計量設定装置及び薬液収容容器を、それぞれ長手方向の一端部及び他端部に着脱可能に取り付けることができるホルダーが備えられる。
この場合、前記ホルダーは、中央のベース板の長手方向の両辺に左右の側板が同方向に折り曲げ形成されることで、長手方向に直交する断面形状がコ字状に成形され、前記ホルダーの長手方向の一端部近傍及び他端部近傍における前記左右側板の内壁面には、前記計量設定装置及び薬液収容容器の一部に係止して、それぞれ計量設定装置及び薬液収容容器を、前記一端部及び他端部に着脱可能に取り付ける係止部が形成されていることが望ましい。
【0010】
前記したように、計量設定装置と薬液収容容器は、ホルダーを利用して組み立てられ、前記計量設定装置に備えられた操作部の操作に基づいて、設定された量の薬液を薬液収容容器から導出することができる。
そして、前記ホルダーは長手方向に直交する断面形状がコ字状に成形され、ホルダーの一端部近傍及び他端部近傍には、計量設定装置及び薬液収容容器を着脱可能に取り付ける係止部が形成されているので、ホルダーに対する計量設定装置と薬液収容容器の取り付け及び取り外しを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、例えば注射器としての薬液収容容器と計量設定装置とが、別体で構成されているので、扱いを容易にすることができると共に、その組み立て及び分解が容易になし得る薬液供給ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る薬液供給ユニットの一実施形態を示す外観斜視図である。
図2図1に示す薬液供給ユニットを示し、(A)は平面図、(B)は軸方向に沿った断面図である。
図3図1に示す薬液供給ユニットを構成する計量設定装置の部分断面図である。
図4A図3に示す計量設定装置の作動シャフトの繰り出し状態を示す断面図であり、(A)は初期状態、(B)は操作部を引いた状態、(C)は操作部を押し始めた状態を示す。
図4B図4Aに続く作動シャフトの繰り出し状態を示す断面図であり、(A)は操作部を押す途中の状態、(B)は操作終了の状態を示す
図5】計量設定装置の軸筒を除外した状態で示す斜視図であり、(A)は操作部を押し始めた状態、(B)は操作部を押す途中の状態、(C)は操作終了の状態を示す。
図6図4Aに示す操作部を引く途中の状態における操作部と天冠部との状態を示し、(A)は正面図、(B)は軸方向に沿った断面図、(C)は(B)におけるa-a線より矢印方向に見た拡大断面図である。
図7】軸筒の単品構成を示し、(A)は前方側から見た斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は軸方向に沿った断面図ある。
図8A】操作部の単品構成を示し、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後方から見た斜視図である。
図8B】操作部の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は軸方向に沿った断面図、(D)は(C)におけるb-b線より矢印方向に見た一部拡大断面図である。
図9A】天冠部の単品構成を示し、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後方から見た斜視図である。
図9B】天冠部の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は軸方向に沿った断面図、(D)は左側面図である。
図10A】回転子の単品構成を示し、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後方から見た斜視図である。
図10B】回転子の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は軸方向に沿った断面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図である。
図11】作動シャフトの単品構成を示し、(A)は正面図、(B)は前方から見た斜視図である。
図12】運動変換部の単品構成を示し、(A)は前方から見た斜視図、(B)は正面図、(C)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る薬液供給ユニットの一実施形態について、図に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、一部の図面においては紙面の都合により代表的な部分に符号を付けて、その細部については各部品ごとの単品構成で示したそれぞれの図面に付けた符号を引用して説明する。
この薬液供給ユニットは、図1及び図2に示すように、計量設定装置1と薬液が収容される薬液収容容器としての注射器(シリンジ)2が、ホルダー3に装着されて構成されている。
すなわち、前記ホルダー3には長手方向の一端部に計量設定装置1の前端部が着脱可能に取り付けられ、ホルダー3の他端部には薬液収容容器としての注射器2の後端部が着脱可能に取り付けられる。
【0014】
このホルダー3は、中央のベース板3aの長手方向の両辺に左右の側板3bが同方向に折り曲げた状態で成形されて、長手方向に直交する断面形状がコ字状に形成されている。そして、ホルダー3の開放された一側面が上向きにセットされる。
ホルダー3の長手方向の前記一端部近傍には、左右の側板3bの内壁面に沿ってリブ状に突出する第1係止部3cが対向して形成されており、この対向する第1係止部3cに、計量設定装置1の軸筒11の前端部に形成された環状溝11fが嵌め込まれることで、計量設定装置1が、ホルダー3に着脱可能に取り付けられる。
また、ホルダー3の前記他端部近傍には、左右の側板3bの内壁面に溝状の第2係止部3dが対向して形成されており、この対向する第2係止部に注射器2の外筒2aに施された鍔部2bが嵌め込まれることで、注射器2がホルダー3に取り付けられる。
【0015】
これにより、計量設定装置1と注射器2とは、それぞれの軸心が直線状となるように前記ホルダー3に対して取り付けられて、薬液供給ユニットが構成されている。そして、計量設定装置1の前端部に配置された後述する作動シャフト16の先端に形成された押圧子16bが、注射器2の内筒2cの後端部に形成された押し込み操作部としての円盤状の押し子2dに対峙するようにして配置される。
なお、この薬液供給ユニットにおいては、図示していないが、前記注射器2の先端部に接続された薬液供給チューブを介して、注射針が取り付けられた構成とすることが望ましい。
【0016】
前記計量設定装置1の全体構成が図3に部分断面図で示されており、計量設定装置1には軸筒11と、この軸筒11の後端部から後方向に引き出され、押し込まれることで前方向に移動する操作部12が備えられる。なお、この計量設定装置1においては、操作部12の配置側を後方向、その反対側の前記した環状溝11fや作動シャフト16の押圧子16bの配置側を前方向という。
また、計量設定装置1には軸筒11の後部に設けられ、前記操作部12の一方向の回転を許容する天冠部13と、前記天冠部13と係合、あるいは非係合の状態になされる回転子14を備えている。
【0017】
この回転子14は、前記操作部12が後方向に引き出される状態では前記天冠部13と係合し、前記操作部12が前方向に押し込まれる状態では、前記天冠部13との係合が解除され、回転するように構成されている。
前記天冠部13と回転子14の係合あるいは非係合(係合の解除)は、前記回転子14の後方端を前記天冠部13の前方端に圧接するコイル状のスプリング15によってなされる。すなわち、スプリング15によって、回転子14の後方端が前記天冠部13の前方端に圧接することにより、前記天冠部13と回転子14が係合する。
【0018】
一方、操作部12が押し込まれることで、回転子14がスプリング15を圧縮しながら前方向に移動し、天冠部13と回転子14の係合が解除される(非係合の状態になされる)。また、前記計量設定装置1は、前記回転子14と共に回転する作動シャフト16と、その先端部に設けられた作動子16bを、前方向への移動に変換する運動変換部17とを備えている。
【0019】
以下においては、前記計量設定装置1を構成する各部材の単品構成について説明する。
図7は、前記計量設定装置1を構成する軸筒11の単品構成を示している。この軸筒11は好ましくは樹脂素材により、前端部を除いた他の大部分は円筒状に成形されている。
この軸筒11の前端部は、図7(D)に示すように肉厚状に成形されて、開口11aが形成され、この開口11aの奥にはさらに小径な通孔11bが形成されて、軸筒11の円筒状の内周空間に連通している。前記開口11aを取り巻く肉厚部11cには、その周側面から開口11aに向かう複数のビス孔11dが施されており、このビス孔11dに挿入されたビス11eによって、前記開口11aに挿入される後述する運動変換部17が締結されて、当該運動変換部17は軸筒11の前端部に装着される。
【0020】
また、ビス孔11dの直後の肉厚部11cには、軸筒11の周に沿って環状溝11fが形成されており、この環状溝11fは前記したホルダー3の左右の側板3bに対向して形成されたリブ状に突出する第1係止部3cに装着されて、計量設定装置1はホルダー3に対して着脱可能に取り付けられるものとなる。
そして、肉厚部11cの内側は、円環状の平面部を構成しており、この円環状の平面部は後述するスプリング15のスプリング受け11hとして機能する。
なお、軸筒11の後端部寄りの周面には、ビス孔11gが形成されており、このビス孔に挿入される図示せぬビスによって、軸筒11の後端部から挿入される後述する天冠部13を締結し、天冠部13を軸筒11の内周面に沿って同軸状に取り付けるものとなる。
【0021】
図8A及び図8Bは、操作部12の単品構成を示している。
この操作部12は、使用者が把持し回転及び押し込み操作を行う把持部12aと、前記把持部12aの前方側に設けられ、前記天冠部13と係合、非係合状態になされる天冠部内挿入部12bと、前記天冠部内挿入部12bの前方側に設けられ、押し込んだ際、回転子14を回転させる回転子内挿入部12cとが、順次外径を細くした状態で成形されている。そして、この操作部12には図8B(C)に示されているように、軸方向に貫通する軸孔12dが施されており、この軸孔12d内には、後述するとおり作動シャフト16が挿入されて配置される。これにより、計量設定装置1の全体の長さ寸法が短くなるように配慮されている。
【0022】
前記把持部12aは厚みのある円盤状に形成され、使用者が把持して回転させ易く、また後端面が平坦に形成され、押し易くなされている。
前記天冠部内挿入部12bは、前記把持部12aよりも外径が小さな円筒状に形成され、その外周面には、径方向に出没する第2の突起部12eが形成されている。
この突起部12eは、コ状のスリット12fによって囲まれた板状部12gの上面に形成されている。したがって、第2の突起部12eに外力が作用すると、板状部12gが径方向内側に変形し、第2の突起部12eは外周面から没する。
一方、前記外力が除かれると、板状部12gが元の状態に戻り、第2の突起部12eは外周面から出るように形成されている。
加えて、第2の突起部12eは、図8B(D)に拡大断面図で示したように、周方向の一方に斜面部12e1が施され、他方に垂直面12e2が施されている。
【0023】
前記回転子内挿入部12cは、前記天冠部内挿入部12bよりも外径が小さな円筒状に形成され、その外周面の対向する位置には、後述する回転子14に形成される螺子部14a〔図10B(C)参照〕と螺合する螺旋状の第1の突起部12hが形成されている。
したがって、操作部12の把持部12aを一方向に回転させることにより、前記第2の突起部12eが後述する回転子14の螺子部14a内を後方向に移動し、操作部12は軸筒11の後端部から後方向に引き出される。
【0024】
図9A及び図9Bは、天冠部13の単品構成を示している。
この天冠部13は、前記軸筒11の後端部に設けられ、前記操作部12の一方向の回転を許容するものである。
この天冠部13は円筒状に形成され、前記軸筒11の後端面に当接されるリング状の係止部13aを有する。また、図9B(D)に示すように、前記天冠部13の内周面には、前後の軸方向に延設され、周方向の一方に斜面部13b1を有し、他方に垂直面13b2を有する複数の凸部13bが連続して等間隔に設けられている。
【0025】
この凸部13bと前記した操作部12の突起部12eが係合する。すなわち、前記操作部12に一方向(斜面部13b1の形成方向)に回転する力(使用者が与える回転力)が作用すると、操作部12の突起部12eに施された斜面部12e1と前記斜面部13b1が当接し、板状部12gが変形し、第2の突起部12eは外周面から没し、操作部12を回転させることができる。そして、前記操作部12の一方向(斜面部13b1の形成方向)の回転力(使用者の回転力)が停止されると、板状部12gが元の状態に戻り、第2の突起部12eは外周面から突出し(元の状態に戻り)、凸部13bと係合する。
【0026】
一方、前記操作部12に他の方向(垂直面13b2の形成方向)に回転する力(使用者が与える回転力)が作用すると、前記突起部12eの垂直面12e2と前記垂直部13b2が当接し、板状部12gは変形しない。そのため、第2の突起部12eは外周面から没することなく、凸部13bに係止され、操作部12の回転は禁止される。
【0027】
前記天冠部13の前方部には、周に沿って凹部13cが連続的に形成されている。この凹部は後述する回転子14に形成された凸部14b〔図10A参照〕と係合し、前記操作部12を回転させながら引き出す際、回転子14の回転を阻止するものである。
すなわち、前記操作部12の第1の突起部12hが回転しながら、回転子14の螺子部14a内を移動する際、前記操作部12の回転によって、前記回転子14が回転するのを禁止するものである。
【0028】
なお、この実施形態にあっては前記したように、前記天冠部13に凹部13cを形成し、回転子14に凸部14bを形成した例を示したが、天冠部13側に凸部を形成し、回転子14側に凹部を形成しても良い。
また、前記天冠部13の前方側の周側面には、有底状の穴13dが形成されている。これは、前記した軸筒11のビス孔11gに挿入される図示せぬビスの先端部が有底状の穴13dに挿入されることで、天冠部13は軸筒11の内周面に沿って同軸状に取り付けられるものとなる。
【0029】
図10A及び図10Bは、回転子14の単品構成を示している。
回転子14は円筒状に形成され、前記回転子14の内周面の全域にわたって形成された螺子部14aを有し、この螺子部14aは、前記した操作部12の第1の突起部12hと螺合する。また、回転子14の後方端には、前記した天冠部13の凹部13cに係合する楔状の凸部14bが形成されている。
この凸部14bは螺子部14aの外径よりも外径寸法の大きい鍔部14cの後面上に軸方向に向いて、周に沿った二か所に形成されている。なお、この凸部14bについては前記したように天冠部13側に形成し、回転子14側に凸部に係合する凹部を形成しても良い。
【0030】
前記回転子14の鍔部14cの前面に、図3に示しように、スプリング15の一端が係止される。このスプリング15の他端は軸筒11に形成されたスプリング受け11hに当接される。その結果、スプリング15によって、回転子14は天冠部13側に付勢され、一対の凸部14bは天冠部13の凹部13dに係合する。
なお、前記螺子部14aのリード角θ〔図10B(c)参照〕は、操作部12の第1の突起部12hの前進によって、前記回転子14が回転できるように、45度以上に設定されていることが望ましい。前記リード角θが45度以下である場合には、第1の突起部12hの前方向への移動によって、回転子14は正常な回転がし難いために、操作部12を押し込む(操作部12の前方への移動を行う)ことができない場合が生ずる。
【0031】
前記回転子14の前端面には、後述する作動シャフト16の断面形状と同一の形状を有し、作動シャフト16が挿通する貫通穴14dが形成されている。すなわち、貫通穴14dは図10B(D)に示すように、相対向する平面部14d1と前記平面部間に形成された湾曲部14d2により形成されている。
したがって、前記回転子14と作動シャフト16は、前記平面部14d1に作動シャフト16が当接し、一体となって回転する。一方、前記貫通孔14dが作動シャフトの断面形状と同一の形状であるため、運動変換部17を介することにより、作動シャフト16は回転子14に対して、前方向に移動することができる。
【0032】
図11は、作動シャフト16の単品構成を示している。
この作動シャフト16は、円柱状のねじ部16aと、ねじ部16aの先端部に形成された作動子16bと、ねじ部16aの後端部に形成された円盤状の鍔部16cとを備えている。また、この作動シャフト16は前記螺子部16aにおいて、相対向する平面部16a1と、前記平面部16a1間に形成されたねじ形成部16a2とを備えている。
前記作動シャフト16が前記形状に形成されているため、前記回転子14と一体となって回転するが、作動シャフト16は回転子14に対して、運動変換部17を介することにより、前方向に繰り出すことができるように構成されている。
なお、先端部に形成された作動子16bは、作動シャフト16の繰り出しにより、図1及び図2に示したように、薬液収容容器としての注射器2の後端部に配置された押し込み操作部としての円盤状の押し子2dに対して押し込み操作を与えるように動作する。
【0033】
次に、スプリング15について図3に基づいて説明する。
前記スプリング15はコイル状に形成されており、図3に示すように、回転子14の鍔部14cの前面側と、軸筒11のスプリング受け11hとの間に装着され、回転子14を天冠部13側に付勢している。これにより、回転子14の後端部に設けられた凸部14bは、天冠部13の凹部13cに係合している。
したがって、操作部12を回転させながら、軸筒11から前記操作部12を引き出す際、その操作部12の回転力が回転子14に伝達されても、凸部14bが天冠部13の凹部13cに係止されているため、回転子14は回転しない。
一方、操作部12が押し込まれることで、回転子14がスプリング15を圧縮しながら前方向に移動し、天冠部13と回転子14の係合が解除される(非係合の状態になされる)ため、回転子14は回転する。
【0034】
また、運動変換部17は図12に示されたとおり、若干厚みのあるリング状に形成され、その内周面に作動シャフト16のねじ形成部16a2と螺合する螺子部17aが形成されている。また、この運動変換部17の外周面には、等間隔に4個の突起17bが形成されて突起17bが軸方向から見て十字状を形成している。この突起17bを有する運動返還部17が、軸筒11における前端部の開口11aに装着されることで、運動返還部17は軸筒11に対して軸回転が阻止された状態で固定されている。
そのため、作動シャフト16が回転すると、作動シャフト16は運動変換部17によって前方向に移動する。すなわち、前記したように回転子14と作動シャフト16は、一体となって回転し、これにより作動シャフト16は運動変換部17によって、回転子14に対して前方向に移動し、結果として作動シャフト16は計量設定装置1の前端部から繰り出される。
【0035】
図4A及び図4Bは、以上説明した各部材を組み上げて構成した計量設定装置1を、軸方向に沿った断面図で示している。この計量設定装置1を構成する操作部12は、前記したとおり、軸方向に貫通する軸孔12d〔図8B(C)参照〕が施されており、この軸孔12d内に作動シャフト16が挿入されて配置されている。
この作動シャフト16は、特に図4A(A)に示した計量設定装置1の動作の初期状態において、作動シャフト16の軸方向の大部分が、前記軸孔12d内に収容されるように構成されている。これにより、組み上げられた計量設定装置1の長さ寸法を短縮することに寄与し、計量設定装置1の小型化に貢献している。
【0036】
以下において、前記した計量設定装置1の動作、作用について図4A図6に基づいて説明する。
図4A(A)は、計量設定装置1の初期の状態を示している。この状態において、計量設定装置1の操作部12を手前にして、操作部12を一方向(R方向)に回転〔図6参照〕させることで、操作部12の第2の突起部12eの斜面部12e1〔図8B(D)参照〕と天冠部13の斜面部13b1〔図9B(D)参照〕が当接し、板状体12gが変形して第2の突起部12eは外周面から没する。これにより、操作部12を回転させることができる。
この操作部12の一方向(R方向)への回転操作に伴い、操作部12の突起部12eは、天冠部13の内周面に形成された凸部13bを連続的に乗り越えるためクリック作用が生じ、使用者はこのクリック数を数えることで、計量設定装置1に対して作動シャフト16の繰り出し量を設定することができる〔図6(C)参照〕。
このとき、回転子14はスプリング15によって天冠部13に向かって付勢されているため、操作部12を回転させても、回転子14は回転しない。
【0037】
この操作部12の一方向(R方向)の回転により、第1の突起部12hが同方向に回転し、第1の突起部12hは回転子14の螺子部14aに沿って後退する。このため、操作部12は軸筒11の後端部から後方向に引き出される〔図4A(B)及び図6参照〕。
なお、前記した操作部12の回転、引き出し動作において、作動シャフト16は何ら影響を受けず(後方向に引き出されることはなく)、現位置に留まる。
【0038】
一方、前記操作部12を他の方向(前記R方向と反対の方向)に回転させようとすると、前記第2の突起部12eの垂直面12e2〔図8B(D)参照〕と天冠部13の垂直面13b2〔図9B(D)参照〕が当接し、板状体12gは変形しない。そのため、第2の突起部12eは外周面から没することなく、凸部13bに係止され、操作部12の他方向(前記R方向とは反対の方向)の回転は阻止される。
【0039】
そして、操作部12が引き出された状態から、操作部12を前方向に向かって押し込む〔図4A(C)参照〕。この操作部12の押し込み操作により、前記操作部12の第1の突起部12hが、前記螺子部14aを介して回転子14を前方に移動させ、スプリング15の付勢力に抗しながら、前記天冠部13の凹部13cに対する前記回転子14の凸部14bの係合が外される。これにより、回転子14は回転可能な状態になされる〔図5(A)参照〕。
その結果、操作部12の押し込み動作による第1の突起部12hの前方向への移動によって、前記回転子14は回転動作を受ける。
【0040】
また、作動シャフト16は回転子14と一体に回転可能に構成されているため、図5(B)に示すように、前記回転子14の回転と共に作動シャフト16も回転する。さらに、作動シャフト16は、固定された運動変換部17と螺合しているため、作動シャフト16の回転によって、作動シャフト16は前進〔図4B(A)及び図5(B)参照〕し、作動シャフト16は計量設定装置1の前端部から繰り出される。
そして、操作部12の把持部12aが天冠部13に当接するまで、操作部12を押し込む〔図4B(B)参照〕ことで、さらに回転子14の回転と共に作動シャフト16も回転し、前記運動変換部17の作用により、回転する作動シャフト16はさらに前進して、計量設定装置1の動作は終了する。
計量設定装置1の動作の終了に伴い、図5(C)に示すようにスプリング15の付勢力によって回転子14は後退し、回転子14の凸部14bは天冠部13のいずれかの凹部13cに係合した状態となる。
【0041】
前記した計量設定装置1の動作が終了した時点において、すでに説明した操作部12の一方向(R方向)への回転操作に伴って生ずるクリック作用によるクリック数に対応して、作動シャフト16の繰り出し量が正確に設定される。
したがって、図1図3に示した薬液供給ユニットにおける注射器2からは、前記クリック数に対応した正確な量の薬液が導出されることになる。
【0042】
以上説明した薬液供給ユニットの実施の形態においては、計量設定装置1から繰り出される作動シャフト16によって、注射器2の押し子2dに押し込み操作を与えるようにしているが、前記注射器2に代えて注射器2の押し子2dに相当する機能を果たす押し込み操作部を備えた薬液収容容器を用いることで、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 計量設定装置
2 注射器(薬液収容容器)
2a 外筒
2b 鍔部
2c 内筒
2d 押し子(押し込み操作部)
3 ホルダー
3a ベース板
3b 左右側板
3c 第1係止部
3d 第2係止部
11 軸筒
11f 環状溝
11h スプリング受け
12 操作部
12a 把持部
12d 軸孔
12e 第2の突起部
12e1 斜面部
12e2 垂直面
12f スリット
12g 板状体
12h 第1の突起部
13 天冠部
13b 凸部
13b1 斜面部
13b2 垂直面
13c 凹部
14 回転子
14a 螺子部
14b 凸部
14d 貫通孔
15 スプリング
16 作動シャフト
16a 螺子部
16b 作動子
17 運動変換部
17a 螺子部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12