(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106050
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20240731BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240731BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20240731BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240731BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240731BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20240731BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/106
B29C64/241
B29C64/209
B33Y30/00
B33Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010119
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL74
(57)【要約】
【課題】三次元造形装置においてクリーニング部材に付着した廃材が再度ヘッドに付着して造形精度に影響を与える可能性を低減する。
【解決手段】三次元造形装置は、ノズルを有し造形材料を吐出する吐出部と、造形材料が積層されるステージと、回転軸回りに回転する少なくとも1つのクリーニング部材を有するクリーニング部と、吐出部とステージとクリーニング部との相対的な位置を変更する移動部と、制御部とを備える。制御部は、移動部を制御して、ノズルがクリーニング部材を複数回に亘って横切るようにノズルをクリーニング部に対して相対的に往復移動させつつ、クリーニング部材とノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、クリーニング動作において、クリーニング部材が回転軸回りに回転することで、ノズルの往路と復路とでノズルがクリーニング部材の異なる位置で接触する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口を有するノズルを有し、造形材料を前記ノズル開口から吐出する吐出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
回転軸回りに回転する少なくとも1つのクリーニング部材を有するクリーニング部と、
前記吐出部と前記ステージと前記クリーニング部との相対的な位置を変更する移動部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記移動部を制御して、前記ノズルが前記クリーニング部材を複数回に亘って横切るように、前記ノズルを前記クリーニング部に対して相対的に往復移動させつつ、前記クリーニング部材と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行し、
前記クリーニング動作において、前記クリーニング部材が前記回転軸回りに回転することによって、前記ノズルの往路と復路とで、前記ノズルが前記クリーニング部材の異なる位置で接触する、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記クリーニング部は、前記クリーニング部材の前記回転軸回りの一方向における回転を規制し、かつ、他方向における回転を許容する規制部を有している、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記回転軸は、前記造形材料の積層方向に沿い、
前記回転軸は、前記積層方向に沿って見たときに、前記クリーニング動作における前記ノズル開口の軌跡と重ならない位置に配置され、
前記クリーニング部は、2つの前記クリーニング部材を有し、
一方の前記クリーニング部材の前記回転軸である第1回転軸と、他方の前記クリーニング部材の前記回転軸である第2回転軸とは、それぞれ、前記軌跡と交差する方向において、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間を前記軌跡が通るように配置され、
一方の前記クリーニング部材の回転が許容される方向と、他方の前記クリーニング部材の回転が許容される方向とは、同じ方向である、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記クリーニング部材の回転軸は、前記造形材料の積層方向に沿い、
前記回転軸は、前記積層方向に沿って見たときに、前記クリーニング動作における前記ノズル開口の軌跡と重ならない位置に配置され、
前記クリーニング部は、2つの前記クリーニング部材を有し、
前記積層方向に沿って見たときに、一方の前記クリーニング部材の前記回転軸と前記軌跡との間の最短距離と、一方の前記クリーニング部材の前記回転軸と前記軌跡との間の最短距離とは、それぞれ異なる、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージの造形領域を加熱するプレート状の加熱部を備え、
前記加熱部は、造形時において、前記ノズル開口の上方、かつ、前記クリーニング部の下方に位置し、
前記制御部は、前記移動部を制御することによって、前記吐出部とともに、前記加熱部、及び、前記クリーニング部を前記ステージに対して相対的に移動させる、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記移動部を制御することによって、前記ノズル開口を前記加熱部の上方に位置させるとともに、前記クリーニング部を前記ノズルに対して移動させることで、前記クリーニング部材と前記ノズルとを接触させる、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記クリーニング部は、前記ノズルから排出される廃材を受け入れるパージ部を有し、
前記パージ部は、開閉可能な底面を有する、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フリッカー板及びブラシを有する端部洗浄アセンブリーを備える三次元造形装置が開示されている。この三次元造形装置では、押出ヘッドをフリッカー板及びブラシに接触させることにより、押出ヘッドのクリーニングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フリッカー板やブラシなどのクリーニング機構に対して、ヘッドの先端を往復移動させてクリーニングを行う場合、クリーニング機構に付着した廃材が、再度ヘッドに付着して造形精度に影響を与える可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ノズル開口を有するノズルを有し、造形材料を前記ノズル開口から吐出する吐出部と、前記造形材料が積層されるステージと、回転軸回りに回転する少なくとも1つのクリーニング部材を有するクリーニング部と、前記吐出部と前記ステージと前記クリーニング部との相対的な位置を変更する移動部と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記移動部を制御して、前記ノズルが前記クリーニング部材を複数回に亘って横切るように、前記ノズルを前記クリーニング部に対して相対的に往復移動させつつ、前記クリーニング部材と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行する。前記クリーニング動作において、前記クリーニング部材が前記回転軸回りに回転することによって、前記ノズルの往路と復路とで、前記ノズルが前記クリーニング部材の異なる位置で接触する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】三次元造形装置の概略構成を示す第1の説明図。
【
図2】三次元造形装置の概略構成を示す第2の説明図。
【
図13】他の実施形態におけるクリーニング部材の配置の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1および
図2は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。
図1および
図2には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1および
図2と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0008】
本実施形態の三次元造形装置100は、材料押出方式によって造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、ノズル151を有するヘッド10と、ステージ20と、移動部25と、加熱部40と、ヘッド昇降機構50と、クリーニング部220を有するクリーニング機構60と、制御部70とを備える。なお、
図2では、クリーニング機構60は、省略されている。
【0009】
制御部70は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。
図2に示すように、制御部70は、CPU71と、記憶装置72と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。制御部70は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をCPU71が実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する機能や、後述するクリーニング処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。なお、他の実施形態では、制御部70は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0010】
制御部70は、造形処理では、三次元造形物を造形するための造形データに従って、三次元造形物を造形する。造形データは、造形物の形状を複数にスライスした層毎に、ノズル151の移動経路を表す経路情報と、各移動経路における可塑化材料の吐出量を表す吐出量情報と含む。
【0011】
図1および
図2に示したヘッド10は、制御部70による制御下で、三次元造形物を造形するための造形材料を、三次元造形物の基台となるステージ20上に吐出する。本実施形態では、造形材料は、後述するように、固体状態の材料を可塑化させてペースト状にした可塑化材料である。ヘッド10は、材料供給部11と、可塑化部12と、吐出部13とを備える。
【0012】
三次元造形装置100は、ヘッド10として、第1ヘッド10aと、第2ヘッド10bとを備える。第1ヘッド10aは、材料供給部11として第1材料供給部11aを備え、可塑化部12として第1可塑化部12aを備え、吐出部13として第1吐出部13aを備える。第2ヘッド10bは、材料供給部11として第2材料供給部11bを備え、可塑化部12として第2可塑化部12bを備え、吐出部13として第2吐出部13bを備える。第1ヘッド10aと第2ヘッド10bは、Y方向における位置が一致するようにX方向に並んで配置されている。第2ヘッド10bは、第1ヘッド10aの+X方向側に配置されている。第1ヘッド10aの構成と第2ヘッド10bの構成とは同様であるため、以下では、両者を特に区別しない場合、両者を単にヘッド10と呼ぶこともある。また、両者の構成部材を区別する場合、第1ヘッド10aの構成部材には、符号「a」を付し、第2ヘッド10bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0013】
材料供給部11は、造形材料を生成するための材料を可塑化部12に供給する。材料供給部11は、例えば、ホッパーによって構成される。材料供給部11には、ペレット状や粉末状の材料が収容されている。材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)などの熱可塑性樹脂が用いられる。第1材料供給部11aに収容される材料と、第2材料供給部11bに収容される材料とは、それぞれ同じ種類の材料であってもよいし、それぞれ異なる種類の材料であってもよい。
【0014】
材料供給部11の下方には、材料供給部11と可塑化部12を接続する連通路15が設けられている。材料供給部11は、連通路15を介して、可塑化部12に材料を供給する。
【0015】
可塑化部12は、材料供給部11から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成し、吐出部13へと導く。「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0016】
可塑化部12は、スクリュー110と、スクリューケース120と、駆動モーター130と、バレル140とを備える。
【0017】
スクリュー110は、スクリューケース120内に収納されている。スクリュー110の上面側は、駆動モーター130に連結されている。スクリュー110は、駆動モーター130が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース120内で回転する。スクリュー110の回転軸であるスクリュー回転軸RXの軸線方向は、Z方向である。スクリュー110の回転速度は、制御部70が駆動モーター130の回転速度を制御することによって制御される。なお、スクリュー110は、減速機を介して駆動モーター130によって駆動されてもよい。スクリュー110は、ローター、あるいは、フラットスクリューとも呼ばれる。
【0018】
バレル140は、スクリュー110の-Z方向側に設置されている。バレル140の上面である対向面141は、スクリュー110の下面である溝形成面111に対向している。バレル140の中心には、吐出部13の流路153に連通する連通孔142が形成されている。バレル140の内部には、可塑化ヒーター144が設けられている。可塑化ヒーター144の温度は、制御部70によって制御される。
【0019】
図3は、スクリュー110の概略構成を示す斜視図である。スクリュー110は、スクリュー回転軸RXに沿った方向における長さがスクリュー回転軸RXに垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。溝形成面111には、中央部112を中心に、渦状の溝113が形成されている。溝113は、スクリュー110の側面に形成された材料投入口114に連通している。材料供給部11から供給される材料は、材料投入口114を通じて溝113に供給される。溝113は、凸条部115によって隔てられることにより形成されている。
図3には、溝113が3本形成されている例を示しているが、溝113の数は、1本でもよいし、2本以上であってもよい。なお、溝113は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部112から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0020】
図4は、バレル140の概略平面図である。対向面141における連通孔142の回りには、複数の案内溝143が形成されている。それぞれの案内溝143は、その一端が連通孔142に接続され、連通孔142から対向面141の外周に向かって渦状に延びている。なお、案内溝143の一端は連通孔142に接続されていなくてもよい。また、バレル140には案内溝143が形成されていなくてもよい。
【0021】
スクリュー110の溝113に供給された材料は、スクリュー110の回転と可塑化ヒーター144の熱とによって、溝113内において可塑化されながら、溝113に沿って流動し、造形材料としてスクリュー110の中央部112へ導かれる。中央部112に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、連通孔142を介して吐出部13に供給される。なお、可塑化部12では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0022】
吐出部13は、造形材料を吐出する。吐出部13は、ノズル151と、流路153と、吐出調整部154と、吸引部156とを備える。
【0023】
ノズル151は、流路153を通じて、バレル140の連通孔142に接続されている。ノズル151は、可塑化部12において生成された造形材料を、ノズル151の先端部tpに形成された開口であるノズル開口152からステージ20に向かって吐出する。より詳細には、第1ノズル151aは、第1先端部tp1に形成された第1ノズル開口152aから造形材料を吐出する。第2ノズル151bは、第2先端部tp2に形成された第2ノズル開口152bから造形材料を吐出する。
【0024】
吐出調整部154は、流路153内に設けられており、流路153の開度を調整する。本実施形態では、吐出調整部154は、バタフライバルブによって構成され、流路153内で回転することにより、流路153の開口面積を変化させる。吐出調整部154は、制御部70による制御下において、図示しない駆動部によって駆動される。吐出調整部154を駆動させる駆動部は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部70は、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部12からノズル151に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル151から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部154は、造形材料の吐出量を調整可能であると共に、造形材料の流出のオン/オフを制御可能である。なお、バタフライバルブの形状は、流路153内で回転することによって流路153の開度を調整するものであればよく、例えば、板形状、または、半球形状であってもよい。また、他の実施形態では、吐出調整部154は、例えば、ピストンの動作によって流路153の開度を調整するピストン機構や、シャッターの開閉によって流路153の開度を調整するシャッター機構として構成されてもよい。
【0025】
吸引部156は、流路153において吐出調整部154とノズル開口152の間に接続されている。吸引部156は、ノズル151からの造形材料の吐出停止時に、流路153内の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料がノズル開口152から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。吸引部156は、プランジャーにより構成されている。吸引部156は、制御部70によって制御される。吸引部156は、制御部70による制御下において、図示しない駆動部によって駆動される。吸引部156を駆動させる駆動部は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0026】
ステージ20は、ノズル151のノズル開口152に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル151からステージ20の上面である造形面21に造形材料を吐出させて造形層を積層することによって三次元造形物を造形する。造形面21上の三次元造形物が造形される領域を造形領域とも呼ぶ。また、造形面21に造形材料が積層される方向のことを、積層方向とも呼ぶ。
【0027】
移動部25は、吐出部13と、ステージ20と、クリーニング部220との相対的な位置を変更する。
図1に示すように、本実施形態における移動部25は、位置変更部30と、ヘッド昇降機構50と、クリーニング移動部210とを有している。
【0028】
位置変更部30は、吐出部13とクリーニング機構60との相対的な位置関係を変更することなく、吐出部13とステージ20との相対的な位置を変更する。より詳細には、位置変更部30は、ステージ20をX方向に沿って移動させる第1電動アクチュエーター31と、ステージ20と第1電動アクチュエーター31とをY方向に沿って移動させる第2電動アクチュエーター32と、ヘッド10をZ方向に沿って移動させる第3電動アクチュエーター33とによって構成されている。第3電動アクチュエーター33は、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとクリーニング機構60とが固定された可動部41をZ方向に沿って移動させることによって、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとクリーニング機構60とをZ方向に沿って移動させる。第1電動アクチュエーター31と、第2電動アクチュエーター32と、第3電動アクチュエーター33とは、制御部70の制御下で駆動される。なお、
図2では、第3電動アクチュエーター33および可動部41は省略されている。
【0029】
他の実施形態では、位置変更部30は、例えば、ステージ20をZ方向に移動させ、第1ヘッド10aや第2ヘッド10bをX方向およびY方向に沿って移動させてもよいし、第1ヘッド10aや第2ヘッド10bを移動させずにステージ20をX方向、Y方向およびZ方向に移動させてもよいし、ステージ20を移動させずに第1ヘッド10aや第2ヘッド10bをX方向、Y方向およびZ方向に移動させてもよい。
【0030】
ヘッド昇降機構50は、ヘッド10を、クリーニング部220に対してZ方向に移動させる。なお、ヘッド昇降機構50によってヘッド10が移動することで、吐出部13とクリーニング部220とのZ方向における相対的な位置に加え、吐出部13とステージ20とのZ方向における相対的な位置も変更される。三次元造形装置100には、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとに対応して、2つのヘッド昇降機構50が設けられている。本実施形態では、一方のヘッド昇降機構50は、第1ヘッド10aをZ方向に移動させ、他方のヘッド昇降機構50は、第2ヘッド10bをZ方向に移動させる。各ヘッド昇降機構50は、可動部41に固定されており、ヘッド10やクリーニング機構60とともに第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。各ヘッド昇降機構50は、例えば電動アクチュエーターとして構成され、制御部70の制御下で個別に駆動される。なお、
図2では、ヘッド昇降機構50は、省略されている。
【0031】
クリーニング移動部210は、クリーニング部220をノズル151に対して移動させる。本実施形態では、三次元造形装置100には、第1ノズル151aと第2ノズル151bとに対応して、2つのクリーニング移動部210が設けられている。クリーニング移動部210の詳細については後述する。
【0032】
加熱部40は、ステージ20に積層された造形材料を加熱する。加熱部40は、プレート状であり、ヒーターを有する。加熱部40は、その面方向が造形面21の面方向に沿うように、可動部41に固定されている。加熱部40には、
図2に示すように、加熱部40をZ方向に貫通する開口42が設けられている。より詳細には、加熱部40には、第1ノズル151aと第2ノズル151bとに対応して、2つの開口42が設けられている。
【0033】
加熱部40は、第1ヘッド10aおよび第2ヘッド10bとともに、ステージ20との相対的な位置が変化するように構成されている。より詳細には、本実施形態では、加熱部40は、可動部41に固定されており、ヘッド10とともに第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。従って、本実施形態における移動部25は、制御部70による制御下で、吐出部13とともに、加熱部40およびクリーニング部220をステージ20に対して相対的に移動させるとも言える。
【0034】
本実施形態では、第1ノズル151aおよび第2ノズル151bは、それぞれ、ヘッド昇降機構50によって、造形状態と退避状態とを切り替え可能に構成されている。造形状態とは、ノズル開口152がZ方向において加熱部40とステージ20との間に配置された状態を指す。造形状態では、ノズル151の少なくとも一部が開口42内に配置される。ノズル151は、少なくとも造形時に造形状態をとる。造形時とは、造形層を造形するために造形領域に造形材料を吐出するタイミングのことを指す。
図1および
図2では、第1ノズル151aおよび第2ノズル151bは、造形状態にある。退避状態とは、ノズル開口152が加熱部40よりも上方に配置された状態を指す。退避状態では、ノズル151は、開口42の外に配置される。ヘッド昇降機構50は、ノズル151を造形状態から退避状態へと切り替える場合、ヘッド10を+Z方向へ移動させ、ノズル151を退避状態から造形状態へと切り替える場合、ヘッド10を-Z方向へ移動させる。
【0035】
図5は、クリーニング機構60の斜視図である。本実施形態では、クリーニング機構60は、加熱部40に固定されており、加熱部40とともに第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。
【0036】
クリーニング機構60は、クリーニング移動部210と、クリーニング部220と、廃材収容部230とを備える。本実施形態では、クリーニング機構60は、第1クリーニング機構60aと、第2クリーニング機構60bとを備える。第1クリーニング機構60aは、クリーニング移動部210として第1クリーニング移動部210aを備え、クリーニング部220として第1クリーニング部220aを備え、廃材収容部230として第1廃材収容部230aを備える。第2クリーニング機構60bは、クリーニング移動部210として第2クリーニング移動部210bを備え、クリーニング部220として第2クリーニング部220bを備え、廃材収容部230として第2廃材収容部230bを備える。第1クリーニング機構60aは、第1ノズル151aのクリーニングを行い、第2クリーニング機構60bは、第2ノズル151bのクリーニングを行う。第1クリーニング機構60aと第2クリーニング機構60bの構成は同様である。両者の構成部材を区別する場合、第1クリーニング機構60aの構成部材には、符号「a」を付し、第2クリーニング機構60bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0037】
クリーニング移動部210は、クリーニング部220をノズル151に対して相対的に移動させる。クリーニング移動部210は、加熱部40の上面に固定されている。クリーニング移動部210は、ガイドフレーム211と、駆動ベルト212と、第1リール213と、第2リール214と、ベルト駆動部215とを備える。ガイドフレーム211は、Y方向に沿って設けられている。第1リール213は、ガイドフレーム211の-Y方向側の端部に設けられている。第2リール214は、ガイドフレーム211の+Y方向側の端部に設けられている。駆動ベルト212は、第1リール213および第2リール214間に架けられており、その一端が第1リール213に巻き回され、その他端が第2リール214に巻き回されている。ベルト駆動部215は、第1リール213および第2リール214を回転駆動させることで、駆動ベルト212の巻き取りまたは巻き出しを行う。ベルト駆動部215は、例えば、モーターによって構成され、制御部70によって制御される。
【0038】
クリーニング部220は、加熱部40の上方に配置され、連結部225を介してクリーニング移動部210に連結されている。連結部225は、駆動ベルト212を挟んで固定することで、クリーニング部220を駆動ベルト212に固定する。また、連結部225は、クリーニング部220がY方向に移動可能となるように、ガイドフレーム211に取り付けられる。そのため、クリーニング部220は、駆動ベルト212が第1リール213および第2リール214に巻き取りまたは巻き出しされることによって、ガイドフレーム211に沿ってY方向に移動する。このように構成されることで、クリーニング部220は、位置変更部30によってノズル151とともにステージ20に対して相対的に移動するとともに、クリーニング移動部210によってノズル151に対して相対的に移動する。なお、本実施形態では、クリーニング部220と加熱部40とのZ方向における相対的な位置関係が固定されている。そのため、本実施形態では、加熱部40は、造形時において、ノズル開口152の上方、かつ、クリーニング部220の下方に位置する。
【0039】
図6は、クリーニング部220の斜視図である。より詳細には、
図6は、第1クリーニング部220aを示している。クリーニング部220は、クリーニング部材240と、クリーニングボックス222と、パージ部226と、第1カット部291と第2カット部292とを備える。
【0040】
クリーニング部材240は、ノズル151をクリーニングする部材である。クリーニング部材240は、ノズル151に付着した異物を、クリーニング部材240とノズル151との接触によって除去する。本実施形態では、各クリーニング部220は、2つのクリーニング部材240を有している。以下では、第1クリーニング部220aが有するクリーニング部材240のうち、一方を第1クリーニング部材241とも呼び、他方を第2クリーニング部材242とも呼ぶ。
【0041】
図7は、
図6のVII-VII断面を示す図である。
図7では、クリーニング部220の各部のうち一部が適宜省略されている。また、
図6および
図7では、クリーニング部材240の形状が模式的に示されている。なお、後述する
図8以降においても同様に、クリーニング部材240を模式的に示す。本実施形態では、クリーニング部材240は、全体として軸状のブラシとして構成されている。
図6および
図7に示すように、クリーニング部材240は、軸状の柄部243と、柄部243の軸方向における一端部に設けられた接触部材244とを有している。接触部材244は、ブラシの毛として構成され、ステンレス鋼によって形成されている。接触部材244は、柄部243の軸方向において、柄部243の一端部から外向きに延びている。接触部材244は、柄部243の軸方向に沿って見たときに、全体として円形状に配置されている。本実施形態では、クリーニング部材240は、柄部243がZ方向に沿うように、かつ、接触部材244の先端、つまり、毛先が上側を向くように配置されている。他の実施形態では、接触部材244は、ステンレス鋼によって形成されなくてもよく、例えば、鉄鋼や真鍮等の金属によって形成されてもよいし、ナイロンやポリエステル等の樹脂によって形成されてもよい。また、接触部材244は、柄部243の軸方向に沿って見たときに円形状に配置されていなくてもよく、例えば、多角形状や楕円状に配置されていてもよい。以下では、第1クリーニング部材241の接触部材244のことを第1接触部材245とも呼び、第2クリーニング部材242の接触部材244のことを第2接触部材246とも呼ぶ。
【0042】
後述するように、クリーニング部材240は、回転軸AX回りに回転可能に構成されている。本実施形態では、クリーニング部材240は、柄部243の中心軸を回転軸AXとして、回転軸AX回りに回転する。以下では、第1クリーニング部材241の回転軸AXのことを第1回転軸AX1とも呼び、第2クリーニング部材242の回転軸AXのことを第2回転軸AX2とも呼ぶ。
【0043】
図6に示すように、クリーニングボックス222は、上部に開口を有する箱形状である。本実施形態におけるクリーニング部材240は、クリーニングボックス222内に配置された台座223に、回転軸AX回りに回転可能に取り付けられている。台座223へのクリーニング部材240の取り付けの詳細については後述する。台座223は、クリーニングボックス222の側壁にZ方向に沿って形成された長穴LHを介して、図示しないねじによってクリーニングボックス222の側面に締結されている。そのため、長穴LHとねじとによって、クリーニングボックス222に対する台座223の高さを変更することが可能である。台座223の高さが変更されることで、各クリーニング部材240の接触部材244のZ方向における位置が変更される。
【0044】
図8は、クリーニング部材240の配置を説明する図である。
図9は、クリーニング部220の正面図である。
図8では、クリーニングボックス222の外縁が破線によって模式的に示されている。
図9では、クリーニング部220の各部のうち一部が適宜省略されている。
図8に示すように、第1回転軸AX1は、第2回転軸AX2の+X方向側かつ+Y方向側の位置に配置されている。
図9に示すように、第1クリーニング部材241と第2クリーニング部材242とは、それぞれ、各クリーニング部材240の接触部材244の先端のZ方向における位置が略同じとなるように配置されている。また、Y方向に沿って見たときに、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2との間において、第1接触部材245の少なくとも一部と、第2接触部材246の少なくとも一部とは重なっている。
図9では、各クリーニング部材240の接触部材244同士が重なっている部分にハッチングが付されている。
【0045】
図6および
図7に示すように、本実施形態では、台座223には、各クリーニング部材240に対応して、各クリーニング部材240を台座223に取り付けるための装着部270が設けられている。各クリーニング部材240は、各装着部270に脱着可能に構成されている。以下では、第1クリーニング部材241を取り付けるための装着部270を第1装着部271とも呼び、第2クリーニング部材242を取り付けるための装着部270を第2装着部272とも呼ぶ。
【0046】
図10は、装着部270の断面を示す図である。より詳細には、
図10では、装着部270として第2装着部272が示されている。
図7および
図10に示すように、装着部270は、規制部250を有している。規制部250は、クリーニング部材240の回転軸AX回りの一方向における回転を規制し、かつ、他方向における回転を許容する。本実施形態における規制部250は、-Z方向に見たときに、クリーニング部材240の右方向への回転を許容し、左方向への回転を規制する。以下では、特に断らない限り、クリーニング部材240の回転方向が左方向あるいは右方向と言う場合、-Z方向に見たときの回転方向を意味する。本実施形態では、第1クリーニング部材241の回転が許容される方向と、第2クリーニング部材242の回転が許容される方向とは、それぞれ同じ左方向である。
【0047】
図7および
図10に示すように、本実施形態における装着部270は、上述した規制部250に加え、パイプ部251と、第1ベアリング255と、第2ベアリング256とを有している。
【0048】
パイプ部251は、全体として、略円筒状を有している。パイプ部251の一端部は、鍔状の鍔部252として構成されている。パイプ部251は、その軸方向がZ方向に沿うように、台座223に形成された貫通孔TH内に配置されている。鍔部252は、貫通孔THの上方に配置されている。鍔部252には、パイプ部251内の中空部HLと外部とを連通させるねじ穴SHが、パイプ部251の半径方向に沿って形成されている。ねじ穴SHには、パイプ部251内に挿入されたクリーニング部材240を固定するためのセットビス253が配置される。なお、
図7では、セットビス253は、省略されている。
【0049】
本実施形態における規制部250は、カム式のワンウェイクラッチによって構成されている。第1ベアリング255や第2ベアリング256は、例えば、ボールベアリングやローラーベアリングによって構成される。規制部250と第1ベアリング255と第2ベアリング256とは、それぞれ、パイプ部251と貫通孔THの内壁面との間に配置され、パイプ部251を軸支する。より詳細には、第1ベアリング255は、鍔部252の下側に配置されており、パイプ部251の上端部を軸支する。第2ベアリング256は、パイプ部251の下端部を軸支する。規制部250は、第1ベアリング255と第2ベアリング256との間において、パイプ部251の中央部を軸支する。規制部250は、-Z方向に見たときに、その内輪が左方向に空転せず右方向に空転するように配置される。このように構成されることで、パイプ部251は、貫通孔TH内で、-Z方向に見たときに右方向への回転が許容され、左方向への回転が規制される。なお、本実施形態における規制部250を上下反対に配置すれば、パイプ部251の回転が許容される方向を容易に逆にすることが可能である。他の実施形態では、規制部250は、例えば、スプラグ式のワンウェイクラッチによって構成されてもよいし、ラチェット機構として構成されてもよい。
【0050】
クリーニング部材240は、柄部243がパイプ部251内に挿入された状態で、セットビス253によってパイプ部251に固定されることで、装着部270に装着される。装着部270に装着されたクリーニング部材240は、パイプ部251とともに右方向に回転することが許容される一方で、左方向に回転することが規制される。また、クリーニング部材240は、セットビス253が緩められた状態で、
図10に示すように、柄部243が貫通孔THから上方向に引き抜かれることで、装着部270から取り外される。なお、本実施形態では、セットビス253による柄部243のZ方向における固定位置を変更することで、各クリーニング部材240の取り付け高さを個別に調整することが可能である。
【0051】
図6に示したパージ部226は、ノズル151から排出される廃材を受け入れる。廃材とは、ノズル151から外部に吐出された、三次元造形物の造形に寄与しない造形材料である。本実施形態では、パージ部226は、クリーニングボックス222の-Y方向側に、クリーニングボックス222と隣り合って設けられている。パージ部226の形状は、上部に開口を有する箱形状である。パージ部226は、ノズル151から排出された造形材料を受け入れることが可能であれば箱形状でなくてもよく、他の実施形態では、例えば、平板状や台状であってもよい。
【0052】
パージ部226の底面227は開閉可能に構成されている。本実施形態では、底面227は、通常時には閉じられており、パージ部226が廃材収容部230の上方の位置まで移動された場合に、廃材収容部230によって開かれるように構成されている。より詳細には、底面227は、Y方向にスライドするスライド部材228の動作によって開閉する。スライド部材228は、通常、バネ229によって-Y方向に付勢されており、
図6に示すように、スライド部材228の板部PLをパージ部226の下側に位置させている。この状態では、板部PLがパージ部226の底面227を構成するので、底面227は閉状態にある。パージ部226は、例えば、ノズル151から排出される廃材を受け入れる際には、このように閉状態をとる。スライド部材228は、クリーニング移動部210によってパージ部226が廃材収容部230の上方の位置まで-Y方向に移動された際に、廃材収容部230の一部分によって+Y方向に押されるように構成されている。これにより、板部PLが+Y方向に移動するとともに、板部PLの-Y方向側に隣り合って設けられた開口部Opがパージ部226の下側に位置し、底面227が開状態をとる。また、パージ部226の+Y方向への移動によってスライド部材228と廃材収容部230との接触が解除されることで、底面227は、閉状態に戻る。
【0053】
第1カット部291および第2カット部292は、ステンレス鋼製のワイヤーによって構成されている。本実施形態における第1カット部291および第2カット部292は、それぞれ、一対の支持アーム293によってX方向に張られている。第1カット部291と第2カット部292とは、Y方向において、両者の間に第1クリーニング部材241および第2クリーニング部材242を挟むように配置されている。第1カット部291は、クリーニングボックス222内において、第1クリーニング部材241の+Y方向側に配置されている。第2カット部292は、第2クリーニング部材242の-Y方向側に、より詳細には、パージ部226の上方に配置されている。本実施形態では、第1カット部291と第2カット部292とは、Z方向において略同じ位置に配置されている。より詳細には、
図9に示すように、第1カット部291および第2カット部292は、クリーニング部材240の接触部材244の先端よりも低い位置に配置されている。他の実施形態では、第1カット部291や第2カット部292は、ステンレス鋼によって形成されなくてもよく、例えば、鉄鋼やチタンや真鍮等によって形成されてもよい。
【0054】
後述するように、第1カット部291および第2カット部292は、それぞれ、ノズル開口152から糸状に垂れ下がった造形材料をカットして除去するのに用いられる。第1カット部291や第2カット部292をワイヤーによって構成することで、例えば、第1カット部291や第2カット部292を板状の部材によって構成する場合と比較して、第1カット部291や第2カット部292と垂れ下がった造形材料との接触部分における圧力を高めることができ、造形材料をより効果的にカットできる。また、第1カット部291や第2カット部292への造形材料の付着量を低減できるので、第1カット部291や第2カット部292のメンテナンス性を向上できる。
【0055】
図5に示した廃材収容部230は、ノズル151からパージ部226に排出された造形材料を収容する。廃材収容部230は、加熱部40の-Y方向側の端部に着脱可能に取り付けられている。廃材収容部230は、上部が開口した箱形状である。パージ部226から廃材収容部230に造形材料が回収される場合には、クリーニング移動部210によってパージ部226が廃材収容部230の上方の位置まで移動される。このパージ部226の移動の際に、上述したスライド部材228の動作によって底面227が開かれることで、パージ部226内の造形材料が廃材収容部230に落下する。
【0056】
図11は、三次元造形装置100において実行されるクリーニング処理のフローチャートである。本実施形態では、クリーニング処理は、三次元造形物の造形の途中で、所定のタイミングで実行される。クリーニング処理が実行されるタイミングは、例えば、造形中の経過時間や、造形された造形層の数や、ノズル151から吐出された造形材料の量に基づいて定められてもよい。また、クリーニング処理が実行されるタイミングは、ノズル151ごとに判定されてもよい。
【0057】
ステップS10にて、制御部70は、クリーニング対象のノズル151の高さを調整する高さ調整処理を実行する。なお、クリーニング処理に関する以下の説明では、特に断らない限り、ノズル151とは、「クリーニング対象のノズル151」のことを指す。
【0058】
図12は、高さ調整処理を説明する図である。制御部70は、高さ調整処理において、ヘッド昇降機構50を制御することによって、ノズル151を退避状態とする。また、制御部70は、ノズル151を退避状態とするとともに、各クリーニング部220がノズル151の-Y方向に位置した状態で、
図12に示すように、ノズル開口152が各クリーニング部材240の接触部材244の毛先よりも下方に位置し、かつ、第1カット部291および第2カット部292よりも上方に位置するように、ノズル151の高さを調整する。
【0059】
ステップS20にて、制御部70は、第1カット処理を実行する。制御部70は、第1カット処理では、クリーニング移動部210を制御することによって、ノズル151に、第1カット部291の上方を+Y方向側から-Y方向側へと横切らせる。ステップS20が実行された時点では、例えば、造形処理においてノズル151から造形材料が吐出されていたことに起因して、ノズル開口152から造形材料が垂れ下がっていることがある。この垂れ下がった造形材料は、三次元造形物の造形に寄与しない廃材である。第1カット処理によって、このようにノズル開口152から垂れ下がった廃材をカットして除去できる。
【0060】
ステップS30にて、制御部70は、パージ処理を実行する。パージ処理とは、ノズル151から造形領域とは異なる領域に、廃材としての造形材料を排出させる処理のことを指す。制御部70は、ステップS30では、まず、クリーニング移動部210を制御することによって、ノズル151を-Y方向に移動させ、ノズル151をパージ部226の上方に位置させる。次に、制御部70は、可塑化部12や吐出部13を制御することによって、廃材としての造形材料をノズル151からパージ部226へと排出させる。
【0061】
ステップS40にて、制御部70は、第2カット処理を実行する。制御部70は、第2カット処理では、クリーニング移動部210を制御することによって、ノズル151に、第2カット部292の上方を+Z方向側から-Z方向側へと横切らせる。ステップS40が実行された時点では、パージ処理においてノズル151から廃材が排出されたことに起因して、ノズル開口152から廃材が垂れ下がっていることがある。第2カット処理によって、このようにノズル開口152から垂れ下がった廃材をカットして除去できる。
【0062】
ステップS50にて、制御部70は、移動部25を制御することによって、クリーニング動作を実行する。クリーニング動作とは、ノズル151がクリーニング部材240を複数回に亘って横切るように、ノズル151をクリーニング部220に対して相対的に往復移動させつつ、クリーニング部材240とノズル151とを接触させる動作である。
【0063】
上述した
図8には、クリーニング動作におけるノズル開口152の移動の軌跡Lcが示されている。なお、本実施形態では、軌跡Lcは、ノズル開口152がクリーニング部220に対して移動することによって描かれるのではなく、クリーニング部220がノズル開口152に対して移動することによって描かれる。制御部70は、クリーニング動作において、クリーニング移動部210を制御することによって、ノズル開口152を、第1クリーニング部材241よりも+Y方向側の位置P1と、第2クリーニング部材242よりも-Y方向側の位置P2との間でY方向に移動させる。本実施形態における第1位置P1および第2位置P2は、それぞれ、Z方向に沿って見たときに、クリーニングボックス222と重なる位置である。ノズル開口152は、クリーニング動作におけるノズル151の往路と復路とで、同じ軌跡Lcを描く。本実施形態における往路は、第1位置P1から第2位置P2に向かう経路である。復路は、第2位置P2から第1位置P1に向かう経路である。
図8には、往路におけるノズル151の移動方向D1と、復路におけるノズル151の移動方向D2とが、それぞれ矢印によって示されている。
【0064】
図8に示すように、本実施形態では、軌跡Lcは、Z方向に沿って見たときに、各回転軸AXと重ならない位置を通る。より詳細には、軌跡Lcは、軌跡Lcと交差する方向であるX方向において、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2との間を通る。つまり、本実施形態では、各クリーニング部材240の回転軸AXは、Z方向に沿って見たときに、軌跡Lcと重ならない位置に配置されているとも言える。また、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2とは、それぞれ、X方向において、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2との間を軌跡Lcが通るように配置されているとも言える。
【0065】
上記のように第1回転軸AX1と第2回転軸AX2との間を軌跡Lcが通ることで、ノズル151の往路では、各クリーニング部材240とノズル151との接触によって、-Z方向に見たときに、第1クリーニング部材241には左方向への回転力が付与され、第2クリーニング部材242には右方向への回転力が付与される。上述したように、本実施形態では、各クリーニング部材240の右方向への回転が許容され、左方向への回転が規制される。そのため、第2クリーニング部材242は、往路において、ノズル151との接触によって右方向へ回転する。一方で、第1クリーニング部材241は、往路において、ノズル151と接触しても第1回転軸AX1回りに回転しない。反対に、ノズル151の復路では、各クリーニング部材240とノズル151との接触によって、-Z方向に見たときに、第1クリーニング部材241には右方向への回転力が付与され、第2クリーニング部材242には左方向への回転力が付与される。従って、復路では、第1クリーニング部材241は、ノズル151との接触によって右方向へ回転する。一方で、第2クリーニング部材242は、復路において、ノズル151と接触しても第2回転軸AX2回りに回転しない。
【0066】
図8に示すように、本実施形態では、軌跡Lcと第1回転軸AX1との間のX方向における距離d1と、軌跡Lcと第2回転軸AX2との間のX方向における距離d2とは、それぞれ異なる。なお、距離d1と距離d2とは、それぞれ、各回転軸AXと軌跡Lcとの最短距離を表す。本実施形態では、距離d2は、距離d1よりも短い。つまり、本実施形態では、距離d2が距離d1よりも短くなるように、各装着部270とノズル151とのX方向における位置関係が設定されているとも言える。このように構成されることで、本実施形態におけるクリーニング動作では、第2クリーニング部材242は、Z方向に沿って見たときに、第2接触部材246のうち、第2回転軸AX2からの距離が距離d2以上の領域でノズル151と接触する。また、第1クリーニング部材241は、Z方向に沿って見たときに、第1接触部材245のうち、第1回転軸AX1からの距離が距離d1以上の領域でノズル151と接触する。従って、第2接触部材246は、第1接触部材245と比較して、より広範囲でノズル151に接触可能である。なお、第1接触部材245および第2接触部材246は、ともに、各回転軸AXからの距離が距離d1以上の領域でノズル151と接触するが、その領域における各接触部材244に対するノズル151の接触角度は、それぞれ異なる。
【0067】
他の実施形態では、クリーニング処理は、例えば、三次元造形物の造形の途中に実行されるのに加え、あるいは、三次元造形物の造形の途中に実行されるのに代えて、三次元造形物を造形するための最初の造形材料の吐出が開始される前に実行されてもよいし、三次元造形物の造形完了後に実行されてもよい。また、クリーニング処理は、制御部70に対してユーザーによる所定の開始操作が行われた場合に実行されてもよい。また、例えば、三次元造形物の造形の途中に実行されるクリーニング処理と、造形の途中以外に実行されるクリーニング処理とで、それぞれ異なる内容のクリーニングを実行してもよい。
【0068】
以上で説明した本実施形態における三次元造形装置100によれば、クリーニング部220に備えられたクリーニング部材240は、回転軸AX回りに回転可能に構成されている。制御部70は、移動部25を制御することによって、ノズル151がクリーニング部材240を複数回に亘って横切るように、ノズル151をクリーニング部220に対して相対的に往復移動させつつ、クリーニング部材240とノズル151とを接触させるクリーニング動作を実行する。クリーニング動作において、クリーニング部材240が回転軸AX回りに回転することによって、ノズル151の往路と復路とで、ノズル151がクリーニング部材240の異なる位置で接触する。このような構成によれば、クリーニング部材240の回転によって、ノズル151が往路と復路とでクリーニング部材240の異なる位置で接触するので、クリーニング部材240に付着した廃材がノズル151に再度付着することを抑制できる。そのため、廃材がノズル151に付着することによって造形精度に影響が及ぶことを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、クリーニング部材240の回転軸AX回りの一方向における回転を規制し、かつ、他方向における回転を許容する規制部250を備える。そのため、ノズル151の往路と復路との一方において、クリーニング部材240の回転が規制部250によって規制された状態で、ノズル151をより高強度にクリーニングできる。かつ、往路と復路との他方において、ノズル151とクリーニング部材240との接触によってクリーニング部材240を回転させることができ、往路と復路とでノズル151をクリーニング部材240の異なる位置で接触させることができる。また、次の往路において、ノズル151を、前の往路における接触位置とは異なる位置でクリーニング部材240に接触させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、クリーニング部材240の回転軸AXは、Z方向に沿い、回転軸AXは、Z方向に沿って見たときに、クリーニング動作におけるノズル開口152の軌跡Lcと重ならない位置に配置される。第1クリーニング部材241の第1回転軸AX1と、第2クリーニング部材242の第2回転軸AX2とは、それぞれ、X方向において、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2との間を軌跡Lcが通るように配置される。第1クリーニング部材241の回転が許容される方向と、第2クリーニング部材242の回転が許容される方向とは、同じ方向である。そのため、往路と復路とのいずれにおいても、いずれかのクリーニング部材240によってノズル151をより高強度にクリーニングできる。また、クリーニング動作では、ノズル151のうち、ノズル151の進行方向における前方側がより高強度にクリーニングされやすい。従って、上記のように第1回転軸AX1と第2回転軸AX2とを配置することで、ノズル151の進行方向に沿った両側を効果的にクリーニングできる。
【0071】
また、本実施形態では、軌跡Lcと第1回転軸AX1との間の距離d1と、軌跡Lcと第2回転軸AX2との間の距離d2とは、それぞれ異なる。このような構成によれば、例えば、各クリーニング部材240を同じ部材によって構成する場合でも、クリーニング動作において、一方のクリーニング部材240におけるノズル151と接触可能な領域と、他方のクリーニング部材240におけるノズル151と接触可能な領域とを異ならせることができる。そのため、クリーニング動作において一方のクリーニング部材240が消耗しやすい部分と、他方のクリーニング部材240が消耗しやすい部分とを容易に異ならせることができる。従って、例えば、クリーニング動作を所定の回数実行した後に、一方のクリーニング部材240と他方のクリーニング部材240との配置位置を入れ替えれば、各クリーニング部材240の寿命を延ばすことができる。この場合、このような配置位置の入れ替えは、例えば、クリーニング動作が所定の回数実行されるごとに実行されてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、造形領域を加熱するプレート状の加熱部40は、造形時において、ノズル開口152の上方、かつ、クリーニング部220の下方に位置し、制御部70は、移動部25を制御することによって、吐出部13とともに、加熱部40およびクリーニング部220をステージ20に対して相対的に移動させる。このような形態によれば、加熱部40が造形時にクリーニング部220の下方に位置し、加熱部40とともにクリーニング機構60がステージ20に対して相対的に移動するので、造形中に、加熱部40による熱の影響がクリーニング部220に及ぶことを抑制しつつ、加熱部40によって造形領域を加熱できる。また、吐出部13とともにクリーニング部220がステージ20に対して相対的に移動するので、クリーニング動作を実行するのに要する、クリーニング部220のノズル151に対する相対的な移動の距離をより短くできる可能性が高まる。また、上記の形態によれば、例えば、造形状態にある一のノズル151が造形層を造形している間に、退避状態にある他のノズル151を、加熱部40の上方に位置するクリーニング部220によってクリーニングできる。このようにすれば、造形中に、ノズル151のクリーニングに起因して三次元造形物を実際には造形していない待ち時間が生じることを抑制でき、三次元造形物をより効率的に造形できる。
【0073】
また、本実施形態では、制御部70は、クリーニング動作において、ノズル開口152が加熱部40の上方に位置した状態で、移動部25を制御することによってクリーニング部220をノズル151に対して移動させることで、クリーニング部材240とノズル151とを接触させる。このような形態によれば、クリーニング動作において、クリーニング部220をノズル151に対して移動させるので、ノズル151をクリーニング部220に対して移動させる場合と比較して、ノズル開口152から廃材が意図せず落下することを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態では、クリーニング部220は、ノズル151から排出される廃材を受け入れるパージ部226を有し、パージ部226は、開閉可能な底面227を有する。そのため、底面227を閉じた状態でパージ部226によって廃材を受け入れることができる。また、底面227を開くことによって、パージ部226に受け入れた廃材をパージ部226外へと容易に搬出できるので、パージ部226内に廃材が残存することを抑制できる。
【0075】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、クリーニング部材240は、ブラシとして構成されている。これに対して、クリーニング部材240は、ブラシとして構成されていなくてもよく、ノズル151との接触によってノズル151をクリーニングする他の部材として構成されていてもよい。この場合、クリーニング部材240は、例えば、毛を有しない平板状部材や、スポンジによって構成されたワイピング部材等であってもよい。上記の平板状部材は、フリッカー板やブレードとも呼ばれる。平板状部材のうちノズル151と接触する部分には、例えば、凹凸が設けられてもよい。
【0076】
(B-2)上記実施形態では、一方のクリーニング部材240の回転が許容される方向と、他方のクリーニング部材240の回転が許容される方向とは、それぞれ同じである。これに対して、各クリーニング部材240の回転が許容される方向が、それぞれ異なっていてもよい。
【0077】
図13は、他の実施形態におけるクリーニング部材240の配置の例を説明する図である。
図13は、
図8と略同様に各クリーニング部材240の配置を模式的に示している。
図13では、
図8とは異なり、2つのクリーニング部材240は、各回転軸AXの間を軌跡Lcが通るように配置されていない。より詳細には、
図13では、軌跡Lcは、各回転軸AXの+X方向側を通っている。また、
図13の例では、第1クリーニング部材241は、
図8と同様に、右方向への回転が許容されているのに対し、第2クリーニング部材242は、
図8とは異なり、左方向への回転が許容されている。このようにすれば、第1実施形態と同様に、往路と復路とのいずれにおいても、いずれかのクリーニング部材240によってノズル151をより高強度にクリーニングできる。また、
図13においても、
図8と同様に、距離d2と距離d1とが異なるので、クリーニング動作において一方のクリーニング部材240が消耗しやすい部分と、他方のクリーニング部材240が消耗しやすい部分とを容易に異ならせることができる。
図13に示した配置では、
図8と比較して、各クリーニング部材240をX方向において省スペースに配置しやすい。一方で、
図8に示した配置では、
図13と比較して、各クリーニング部材240をY方向において省スペースに配置しやすい。
【0078】
なお、例えば、
図8のように各クリーニング部材240を配置する場合であっても、各クリーニング部材240の回転が許容される方向がそれぞれ異なるように規制部250を構成してもよい。また、
図13のように各クリーニング部材240を配置する場合であっても、各クリーニング部材240の回転が許容される方向がそれぞれ同じとなるように規制部250を構成してもよい。
【0079】
(B-3)上記実施形態では、クリーニング部220は、規制部250を有している。これに対して、クリーニング部220は、規制部250を有していなくてもよい。この場合、例えば、クリーニング部材240が制御部70による制御下で回転軸AX回りに回転するように構成し、制御部70がクリーニング部材240を回転させることで、クリーニング動作における往路と復路とでノズル151がクリーニング部材240の異なる位置で接触することが実現されてもよい。また、クリーニング部材240は、往路と復路とでノズル151がクリーニング部材240の異なる位置で接触するように構成されていれば、回転軸AX回りに一方向にも他方向にも回転可能であってもよい。この場合、例えば、クリーニング部材240の往路における回転軸AX回りの一方向への回転量と、復路における回転軸AX回りの他方向への回転量とを異ならせればよい。
【0080】
(B-4)上記実施形態では、距離d1と距離d2とがそれぞれ異なる。これに対して、距離d1と距離d2とがそれぞれ同じであってもよい。
【0081】
(B-5)上記実施形態では、回転軸AXは、積層方向であるZ方向に沿って配置されている。これに対して、回転軸AXは、積層方向に沿って配置されなくてもよい。この場合、例えば、クリーニング部材240をローラー状の部材によって構成し、クリーニング部材240を、その回転軸AXが積層方向および軌跡Lcと交差するように配置してもよい。より詳細には、例えば、ローラー状のクリーニング部材240を、回転軸AXがX方向に沿うように配置してもよい。この場合、クリーニング部材240は、例えば、ローラーの周囲に毛が設けられたロールブラシとして構成されてもよいし、外周面に凹凸を有するローラー状の部材として構成されてもよい。
【0082】
(B-6)上記実施形態では、クリーニング部220は、2つのクリーニング部材240を有している。これに対して、クリーニング部220は、1つのクリーニング部材240のみを有していてもよいし、3以上のクリーニング部材240を有していてもよい。また、2以上のクリーニング部材240が設けられる場合に、各クリーニング部材240を同様に構成しなくてもよい。例えば、一のクリーニング部材240の接触部材244の毛の長さを、ノズル151の先端部tpに下から接触可能な程度の長さに設定し、他のクリーニング部材240の接触部材244の毛の長さを、一のクリーニング部材240の接触部材244の毛の長さよりも長くしてもよい。このようにすれば、一のクリーニング部材240によってノズル151の先端部tpをより効果的にクリーニングでき、他のクリーニング部材240によってノズル151の先端部tpよりも上方の部分をより効果的にクリーニングできる。また、例えば、クリーニング部材240同士で接触部材244の材質を異ならせてもよい。
【0083】
(B-7)上記実施形態において、加熱部40が設けられていなくてもよい。
【0084】
(B-8)上記実施形態では、移動部25は、位置変更部30とヘッド昇降機構50とクリーニング移動部210とを有している。これに対して、移動部25は、吐出部13とステージ20とクリーニング部220との相対的な位置を変更してクリーニング動作を実行できるように構成されていれば、上記の一部や全部を有していなくてもよい。例えば、移動部25は、クリーニング移動部210に代えて、ノズル151をクリーニング部220に対して水平方向に移動させる移動機構を有していてもよい。この場合、制御部70は、この移動機構を制御することによって、ノズル151をクリーニング部220に対して移動させることで、ノズル151とクリーニング部材240とを接触させればよい。また、例えば、クリーニング部220を加熱部40の下方に配置する構成や、加熱部40を設けない構成において、ヘッド昇降機構50に代えて、クリーニング部220をノズル151に対してZ方向に移動させる移動機構を設けてもよい。また、例えば、クリーニング機構60を、吐出部13とともにステージ20に対して相対的に移動するように構成しなくてもよく、この場合、制御部70は、位置変更部30のみを制御することによって、クリーニング動作を実行してもよい。
【0085】
(B-9)上記実施形態では、パージ部226の底面227は、スライド部材228と廃材収容部230との接触によって開かれるように構成されている。これに対して、底面227の開閉動作が、例えば、制御部70によって制御されてもよい。この場合、例えば、スライド部材228を電動アクチュエーターに連結し、制御部70による制御下で電動アクチュエーターによってスライド部材228を動作させることで、底面227を開閉させてもよい。このように構成する場合、制御部70は、パージ部226から廃材収容部230に廃材を排出させる際に、例えば、クリーニング移動部210によってパージ部226を廃材収容部230の上方の位置まで移動させた後、電動アクチュエーターを制御することで底面227を開けばよい。また、底面227は、スライド部材228の動作によって開閉されなくてもよく、例えば、水平方向に対する底面227の傾斜角度を変化させることで開閉するように構成されていてもよい。この場合においても、底面227は、例えば、底面227の傾斜角度を変化させる機構と廃材収容部230との接触によって開かれるように構成されてもよいし、底面227の開閉動作が制御部70によって制御されるように構成されてもよい。
【0086】
(B-10)上記実施形態では、パージ部226の底面227は、開閉可能に構成されているが、開閉可能に構成されていなくてもよい。また、クリーニング部220は、パージ部226を有していなくてもよい。
【0087】
(B-11)上記実施形態では、第1ノズル151aと第2ノズル151bとに対応して2つのクリーニング部220が設けられているが、クリーニング部220の個数と、ノズル151やヘッド10の個数とを対応させなくてもよい。例えば、1つのクリーニング部220のみを設け、そのクリーニング部220によって第1ノズル151aと第2ノズル151bとをクリーニングするように構成してもよい。
【0088】
(B-12)上記実施形態の三次元造形装置100は、2つのヘッド10を備えているが、三次元造形装置100は、1つのヘッド10のみを備えていてもよいし、3つ以上のヘッド10を備えていてもよい。
【0089】
(B-13)上記実施形態において、ヘッド10に備えられた可塑化部12は、フラットスクリューによって材料を可塑化している。これに対して可塑化部12は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、可塑化部12は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。また、上記実施形態では、可塑化した材料を積層する材料押出方式を例として説明したが、本開示は、インクジェット方式や、DMD方式(Direct Metal Deposition)、バインダージェット方式等、種々の方式に適用できる。
【0090】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0091】
(1)本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ノズル開口を有するノズルを有し、造形材料を前記ノズル開口から吐出する吐出部と、前記造形材料が積層されるステージと、回転軸回りに回転する少なくとも1つのクリーニング部材を有するクリーニング部と、前記吐出部と前記ステージと前記クリーニング部との相対的な位置を変更する移動部と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記移動部を制御して、前記ノズルが前記クリーニング部材を複数回に亘って横切るように、前記ノズルを前記クリーニング部に対して相対的に往復移動させつつ、前記クリーニング部材と前記ノズルとを接触させるクリーニング動作を実行する。前記クリーニング動作において、前記クリーニング部材が回転することによって、前記ノズルの往路と復路とで、前記ノズルが前記クリーニング部材の異なる位置で接触する。
このような形態によれば、クリーニング部材の回転によって、クリーニング動作において、ノズルが往路と復路とでクリーニング部材の異なる位置で接触するので、クリーニング部材に付着した廃材がノズルに再度付着することを抑制できる。そのため、廃材がノズルに付着することによって造形精度に影響が及ぶことを抑制できる。
【0092】
(2)上記形態では、前記クリーニング部は、前記クリーニング部材の前記回転軸回りの一方向における回転を規制し、かつ、他方向における回転を許容する規制部を有していてもよい。このような形態によれば、ノズルの往路と復路との一方において、クリーニング部材の回転が規制部によって規制された状態で、ノズルをより高強度にクリーニングできる。かつ、往路と復路との他方において、ノズルとクリーニング部材との接触によってクリーニング部材を回転させることができ、往路と復路とでノズルをクリーニング部材の異なる位置で接触させることができる。
【0093】
(3)上記形態では、前記回転軸は、前記造形材料の積層方向に沿い、前記回転軸は、前記積層方向に沿って見たときに、前記クリーニング動作における前記ノズル開口の軌跡と重ならない位置に配置され、前記クリーニング部は、2つの前記クリーニング部材を有し、一方の前記クリーニング部材の前記回転軸である第1回転軸と、他方の前記クリーニング部材の前記回転軸である第2回転軸とは、それぞれ、前記軌跡と交差する方向において、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間を前記軌跡が通るように配置され、一方の前記クリーニング部材の回転が許容される方向と、他方の前記クリーニング部材の回転が許容される方向とは、同じ方向であってもよい。このような形態によれば、往路と復路とのいずれにおいても、いずれかのクリーニング部材によってノズルをより高強度にクリーニングできる。
【0094】
(4)上記形態では、前記クリーニング部材の回転軸は、前記造形材料の積層方向に沿い、前記回転軸は、前記積層方向に沿って見たときに、前記クリーニング動作における前記ノズル開口の軌跡と重ならない位置に配置され、前記クリーニング部は、2つの前記クリーニング部材を有し、前記積層方向に沿って見たときに、一方の前記クリーニング部材の前記回転軸と前記軌跡との間の最短距離と、一方の前記クリーニング部材の前記回転軸と前記軌跡との間の最短距離とは、それぞれ異なっていてもよい。このような形態によれば、例えば、各クリーニング部材を同じ部材によって構成する場合でも、クリーニング動作において一方のクリーニング部材におけるノズルと接触可能な領域と、他方のクリーニング部材におけるノズルと接触可能な領域とを異ならせることができる。そのため、クリーニング動作において一方のクリーニング部材が消耗しやすい部分と、他方のクリーニング部材が消耗しやすい部分とを容易に異ならせることができる。
【0095】
(5)上記形態では、前記ステージの造形領域を加熱するプレート状の加熱部を備え、前記加熱部は、造形時において、前記ノズル開口の上方、かつ、前記クリーニング部の下方に位置し、前記制御部は、前記移動部を制御することによって、前記吐出部とともに、前記加熱部、及び、前記クリーニング部を前記ステージに対して相対的に移動させてもよい。このような形態によれば、加熱部が造形時にクリーニング部の下方に位置し、加熱部とともにクリーニング部がステージに対して相対的に移動するので、造形中に、加熱部による熱の影響がクリーニング部に及ぶことを抑制しつつ、加熱部によって造形領域を加熱できる。また、吐出部とともにクリーニング部がステージに対して相対的に移動するので、クリーニング動作を実行するのに要する、クリーニング部のノズルに対する相対的な移動の距離をより短くできる可能性が高まる。
【0096】
(6)上記形態では、前記制御部は、前記クリーニング動作において、前記移動部を制御することによって、前記ノズル開口を前記加熱部の上方に位置させるとともに、前記クリーニング部を前記ノズルに対して移動させることで、前記クリーニング部材と前記ノズルとを接触させてもよい。このような形態によれば、クリーニング動作においてクリーニング部をノズルに対して移動させるので、ノズルをクリーニング部に対して移動させる場合と比較して、ノズル開口から廃材が意図せず落下することを抑制できる。
【0097】
(7)上記形態では、前記クリーニング部は、前記ノズルから排出される廃材を受け入れるパージ部を有し、前記パージ部は、開閉可能な底面を有していてもよい。このような形態によれば、底面を閉じた状態でパージ部によって廃材を受け入れることができる。また、底面を開くことによって、パージ部に受け入れた廃材をパージ部外へと容易に搬出できるので、パージ部に廃材が残存することを抑制できる。
【符号の説明】
【0098】
10…ヘッド、10a…第1ヘッド、10b…第2ヘッド、11…材料供給部、11a…第1材料供給部、11b…第2材料供給部、12…可塑化部、12a…第1可塑化部、12b…第2可塑化部、13…吐出部、13a…第1吐出部、13b…第2吐出部、15…連通路、20…ステージ、21…造形面、25…移動部、30…位置変更部、31…第1電動アクチュエーター、32…第2電動アクチュエーター、33…第3電動アクチュエーター、40…加熱部、41…可動部、42…開口、50…ヘッド昇降機構、60…クリーニング機構、60a…第1クリーニング機構、60b…第2クリーニング機構、70…制御部、71…CPU、72…記憶装置、100…三次元造形装置、110…スクリュー、111…溝形成面、112…中央部、113…溝、114…材料投入口、115…凸条部、120…スクリューケース、130…駆動モーター、140…バレル、141…対向面、142…連通孔、143…案内溝、144…可塑化ヒーター、151…ノズル、151a…第1ノズル、151b…第2ノズル、152…ノズル開口、152a…第1ノズル開口、152b…第2ノズル開口、153…流路、154…吐出調整部、156…吸引部、210…クリーニング移動部、210a…第1クリーニング移動部、210b…第2クリーニング移動部、211…ガイドフレーム、212…駆動ベルト、213…第1リール、214…第2リール、215…ベルト駆動部、220…クリーニング部、220a…第1クリーニング部、220b…第2クリーニング部、222…クリーニングボックス、223…台座、225…連結部、226…パージ部、227…底面、228…スライド部材、229…バネ、230…廃材収容部、230a…第1廃材収容部、230b…第2廃材収容部、240…クリーニング部材、241…第1クリーニング部材、242…第2クリーニング部材、243…柄部、244…接触部材、245…第1接触部材、246…第2接触部材、250…規制部、251…パイプ部、252…鍔部、253…セットビス、255…第1ベアリング、256…第2ベアリング、270…装着部、271…第1装着部、272…第2装着部、291…第1カット部、292…第2カット部、293…支持アーム