(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106052
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】自動車のフロントエンド構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20240731BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240731BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B60R19/18 P
B62D25/08 D
B60K11/04 J
B60K11/04 K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010121
(22)【出願日】2023-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 匡彦
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
【Fターム(参考)】
3D038AA06
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC07
3D038AC11
3D038AC17
3D038AC19
3D203AA02
3D203BB33
3D203DA05
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】自動車のフロントエンド構造において、冷却ユニットの損傷を防ぎながら冷却ユニットへエアを効率よくガイドするようにする。
【解決手段】吸気口2aを有するフロントバンパ2と、フロントバンパ2の後方に配置されたバンパビーム10と、バンパビーム10の後方に配置された冷却ユニット11と、冷却ユニット11にフロントバンパ2の吸気口2aからのエアをガイドするエアガイド部15とを備えた自動車のフロントエンド構造1において、エアガイド部15は、上部を構成するエアガイドアッパ16と、下部を構成するエアガイドロア17とを備え、エアガイドアッパ16は、剛性樹脂材よりなり、車体に固定されて冷却ユニット11を車体に保持し、エアガイドロア17は、エアガイドアッパ16よりも剛性が低く、衝撃吸収可能な樹脂材よりなり、前方へ延びてフロントバンパ2の吸気口2aに接続するダクト部17aを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口(2a)を有するフロントバンパ(2)と、
前記フロントバンパ(2)の後方に配置されたバンパビーム(10)と、
前記バンパビーム(10)の後方に配置された冷却ユニット(11)と、
前記冷却ユニット(11)に前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)からのエアをガイドするエアガイド部(15)とを備えた自動車のフロントエンド構造(1)であって、
前記エアガイド部(15)は、
上部を構成するエアガイドアッパ(16)と、
下部を構成するエアガイドロア(17)とを備え、
前記エアガイドアッパ(16)は、剛性樹脂材よりなり、車体に固定されて前記冷却ユニット(11)を前記車体に保持し、
前記エアガイドロア(17)は、
前記エアガイドアッパ(16)よりも剛性が低く、衝撃吸収可能な樹脂材よりなり、
前方へ延びて前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)に接続するダクト部(17a)を有する
ことを特徴とする自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項2】
前記ダクト部(17a)は、前記バンパビーム(10)の後方から前記バンパビーム(10)の前方に突出するように延び、前端が前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)に接続している
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項3】
前記エアガイドロア(17)は、前記バンパビーム(10)と前記冷却ユニット(11)との間において、上方に延びて前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)から取り入れたエアを上方へガイドするガイド壁(17b)を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項4】
前記エアガイドロア(17)は、発泡樹脂製である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項5】
前記ダクト部(17a)の後方から前記ダクト部(17a)を開閉するシャッタグリルユニット(19)は、前記シャッタグリルユニット(19)の枠部が、後方から見て前記ダクト部(17a)を構成する壁部に重なるように嵌め込まれている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項6】
前記エアガイドアッパ(16)は、前方に延びる前方延出部(16b)と、前記前方延出部(16b)の前端から下方に延びて前記バンパビーム(10)の前壁を構成する下方延出部(16c)とを有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項7】
前記前方延出部(16b)と前記下方延出部(16c)との接続部には、周囲よりも破断しやすい脆弱部(16f)が設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項8】
前記エアガイドアッパ(16)の前記脆弱部(16f)よりも上方には、ボンネットフード(6)を保持するラッチ(7)の締結部が一体に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントエンド構造に関し、特にその冷却ユニットにエアをガイドするエアガイドの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1のように、車両の動力源室に配置されたラジエータと、前記ラジエータの前側で前側バンパカバーよりも後側に配置されたダクトであって、ラジエータの前側面に対向する立壁を有し、この立壁の後側に、フロントグリル開口から導入された走行風を前記ラジエータに導く経路を形成するダクトと、ラジエータの後側に配置された冷却ファンとを備えた自動車のフロントエンド構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動車のフロントエンド構造では、樹脂製の一体型のダクトを用いることで、金属部品で構成する場合に比べて軽量化が図られるものの、衝突時の衝撃を受けたときの対策が十分ではなく、ラジエータが損傷を受けやすい、という問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却ユニットの損傷を防ぎながら冷却ユニットへエアを効率よくガイドすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、エアガイドを剛性の高いエアガイドアッパと、それよりも剛性が低く衝撃吸収可能なエアガイドロアとで構成するようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、
吸気口を有するフロントバンパと、
前記フロントバンパの後方に配置されたバンパビームと、
前記バンパビームの後方に配置された冷却ユニットと、
前記冷却ユニットに前記フロントバンパの吸気口からのエアをガイドするエアガイド部とを備えた自動車のフロントエンド構造を対象とし、
前記エアガイド部は、
上部を構成するエアガイドアッパと、
下部を構成するエアガイドロアとを備え、
前記エアガイドアッパは、剛性樹脂材よりなり、車体に固定されて前記冷却ユニットを前記車体に保持し、
前記エアガイドロアは、
前記エアガイドアッパよりも剛性が低く、衝撃吸収可能な樹脂材よりなり、
前方へ延びて前記フロントバンパの吸気口に接続するダクト部を有する。
【0008】
上記の構成によると、冷却ユニットを剛性の高いエアガイドアッパで強固に保持できる。また、衝撃吸収可能な比較的柔らかいエアガイドロアで包むように冷却ユニットの下側を支持するので、エアガイドロア自体が潰れることで冷却ユニットの損傷を防ぐことができ、さらに、冷却ユニットに密着して遮音効果を高めながら、エアの漏れを防いで冷却ユニットにエアをガイドすることができる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
前記ダクト部は、前記バンパビームの後方から前記バンパビームの前方に突出するように延び、前端が前記フロントバンパの吸気口に接続している。
【0010】
上記の構成によると、バンパビームよりも前方に突出しているエアガイドロアのダクト部が、バンパビームよりも先に積極的に潰れて衝突エネルギーが吸収される。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記エアガイドロアは、前記バンパビームと前記冷却ユニットとの間において、上方に延びて前記フロントバンパの吸気口から取り入れたエアを上方へガイドするガイド壁を有する。
【0012】
上記の構成によると、バンパビームが後退するような衝突において、冷却ユニットの手前に衝撃吸収可能なガイド壁が介在することにより、衝突時にバンパビームが直接冷却ユニットに当接することを防止でき、冷却ユニットに作用する衝撃がガイド壁によって効果的に低減される。また、バンパビームは、通常、凹凸のある形状であるが、そのバンパビームが平坦なガイド壁で覆われるようにすることで、乱流の発生を防ぎながらエアがガイド壁に沿うように上方に向かってガイドされる。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
前記エアガイドロアは、発泡樹脂製である。
【0014】
上記の構成によると、エアガイドロアの衝撃吸収機能、軽量化機能、遮音機能、冷間始動時の保温及び断熱機能等を効果的に発揮できる。
【0015】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
前記ダクト部の後方から前記ダクト部を開閉するシャッタグリルユニットは、前記シャッタグリルユニットの枠部が、後方から見て前記ダクト部を構成する壁部に重なるように嵌め込まれている。
【0016】
上記の構成によると、シャッタグリルユニットが衝撃吸収可能なダクト部を構成する壁部に支持されるので、軽衝突でダクト部が積極的に潰れ、それによって弱められた衝撃が、シャッタグリルユニットの剛性部材である枠部に伝達されることにより、シャッタグリルユニット自体の破損が効果的に避けられる。
【0017】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、
前記エアガイドアッパは、前方に延びる前方延出部と、前記前方延出部の前端から下方に延びて前記バンパビームの前壁を構成する下方延出部とを有する。
【0018】
上記の構成によると、通常金属で構成されるバンパビームの前壁を樹脂製のエアガイドアッパで構成するので、バンパビームの前壁が金属で構成される場合に比べて軽量化が図られる。
【0019】
第7の発明では、第6の発明において、
前記前方延出部と前記下方延出部との接続部には、周囲よりも破断しやすい脆弱部が設けられている。
【0020】
上記の構成によると、バンパビームが後退する程度の軽衝突よりも強い重衝突時に、脆弱部が積極的に破断することにより、前方延出部よりも後方のエアガイドアッパの冷却ユニット支持部の破損が軽減される。
【0021】
第8の発明では、第7の発明において、
前記エアガイドアッパの前記脆弱部よりも上方には、ボンネットフードを保持するラッチの締結部が一体に設けられている。
【0022】
上記の構成によると、従来のようにラッチを締結するためのラッチブラケットが不要となって部品点数が減ると共に、軽量化が図られる。また、衝突時にバンパビームから脆弱部で破断されて離れるので、ラッチ及びそれが支持するボンネットフードに衝突荷重が伝達されにくくなる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の自動車のフロントエンド構造によれば、冷却ユニットの損傷を防ぎながら冷却ユニットへエアを効率よくガイドできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車のフロントエンド構造の要部を示す斜視図である。
【
図2】自動車のフロントエンド構造に係る
図1のII-II線に対応する断面図である。
【
図3】自動車のフロントエンド構造に係る
図1のIII-III線に対応する断面図である。
【
図4】自動車のフロントエンド構造に係る
図1のIV-IV線に対応する断面図である。
【
図5】自動車のフロントエンド構造に係る
図1のV-V線に対応する断面図である。
【
図6】自動車のフロントエンド構造を前側から見た分解斜視図である。
【
図7】エアガイドアッパを拡大して示す斜視図である。
【
図8】軽衝突時のクラッシャブル領域を示す
図2相当図である。
【
図9】バンパが後退する衝突時のクラッシャブル領域を示す
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1~
図6は、本発明の実施形態の自動車のフロントエンド構造1を示し、このフロントエンド構造1は、例えば、樹脂成形品で構成されて車幅方向中央下側に吸気口2aを有する、フロントバンパ2を備えている。このフロントバンパ2の後方には、例えば、剛性部材としての金属製のバンパビーム10が車幅方向に延びるように配置されている。
【0027】
フロントバンパ2は、例えば、車体下側のサブロアメンバ4と、車体上側のアッパメンバ5とに固定されている。アッパメンバ5には、ボンネットフード6のストライカ6aが挿通する開口が設けられ、エアガイドアッパ16に取り付けられたラッチ7を介してボンネットフード6のストライカ6aが着脱可能に取り付けられている。
【0028】
フロントエンド構造1の下側は、例えば、サブロアメンバ4とロアメンバ8とに固定されたアンダカバー9で覆われている。
【0029】
そして、剛性部材であるバンパビーム10の後方には、冷却ユニット11が配置されている。この冷却ユニット11は、例えば樹脂製の冷却ユニットフレーム12と、この冷却ユニットフレーム12に内蔵される矩形板状のラジエータコンデンサ13と、このラジエータコンデンサ13からエアを排気するする排気ファン14とを備えている。
【0030】
自動車のフロントエンド構造1は、冷却ユニット11にフロントバンパ2の吸気口2aからのエアをガイドするエアガイド部15を備えている。このエアガイド部15は、その上部を構成するエアガイドアッパ16と、下部を構成するエアガイドロア17とを備える。
【0031】
エアガイドアッパ16は、剛性樹脂材よりなり、車体(アッパメンバ5など)に固定されて冷却ユニット11を車体に保持する役割を有する。エアガイドアッパ16は、例えば、ポリプロピレンがベースのガラス繊維強化プラスチックの射出成形品よりなり、金属に比べて軽量な上、耐衝撃性にも優れている。エアガイドアッパ16の材料はこれに限定されず、他の繊維強化樹脂など比較的剛性の高い樹脂材料で構成されてもよい。
【0032】
エアガイドロア17は、エアガイドアッパ16よりも剛性が低く、衝撃吸収可能な樹脂材よりなる。例えば、エアガイドロア17は、ポリプロピレンの発泡樹脂製の成形品である。エアガイドロア17は、ポリプロピレン以外の発泡樹脂製成形品で構成されてもよく、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等の無発泡の軟質樹脂成形品で構成されていてもよい。エアガイドロア17は、前方へ延びてフロントバンパ2の吸気口2aに接続するダクト部17aを有する。
【0033】
図2に拡大して示すように、ダクト部17aの前側は、断面矩形枠状の筒状であり、バンパビーム10の後方からバンパビーム10の前方に突出するように延び、その前端がフロントバンパ2の吸気口2aに接続している。例えば、フロントバンパ2とダクト部17aとは、密閉状に嵌め込み結合されており、吸気口2aから取り入れられたエアは、ダクト部17aに対し、外部に漏れ出すことなく送り込まれるようになっている。
【0034】
そして、エアガイドロア17は、バンパビーム10と冷却ユニット11との間において、上方に延びてフロントバンパ2の吸気口2aから取り入れたエアを上方へガイドするガイド壁17bを有する。ガイド壁17bは、上方に向かってほぼ垂直に延びる平板状である。特にガイド壁17bの背面側(冷却ユニット11側)は、平坦であるため、取り込まれたエアが乱流を発生させることなく流れやすくなっている。
【0035】
さらに、断面矩形枠状(角筒状)の水平に延びるダクト部17aの後方から、このダクト部17aを開閉するシャッタグリルユニット19が嵌め込まれている。
図2に一部断面を示すように、シャッタグリルユニット19は、例えば樹脂製の枠部19aに複数のフィン19bが揺動可能に取り付けられており、電動アクチュエータ等によって、これらのフィン19bが揺動することにより、ダクト部17aを開閉可能に構成されている。この枠部19aが、後方から見てダクト部17aを構成する矩形枠状の壁部に重なるように嵌め込まれている。そのことで
図2に示すように、吸気口2aから取り入れられたエアの通り道の断面が最大限に確保され、枠部19aに流れを阻害されることなく、冷却ユニット11側に流れるようになっている。
【0036】
図3、
図6及び
図7に示すように、冷却ユニット11におけるラジエータコンデンサ13を覆う冷却ユニットフレーム12の側方上側は、比較的剛性の高いエアガイドアッパ16の冷却ユニット取付部16hにおいて、図示しないボルト等により密閉状に堅固に固定されている。
【0037】
図4に示すように、冷却ユニットフレーム12の側方上下中央は、エアガイドアッパ16に対してエアガイドロア17を介して密閉状に当接している。
【0038】
図5に示すように、冷却ユニットフレーム12の側方下側は、エアガイドロア17に対して密閉状に当接している。
【0039】
このように構成することで、冷却ユニット11がエアガイドアッパ16及びエアガイドロア17に対して密閉状に当接して堅固に固定されており、吸気口2aから取り入れられたエアが漏れることなくラジエータコンデンサ13にガイドされるようになっている。
【0040】
一方、
図2及び
図7に拡大して示すように、強化繊維樹脂で一体形成されたエアガイドアッパ16は、車幅方向に延びる上側のエアガイドアッパ本体16aと、このエアガイドアッパ本体16aから前方に水平に延びる前方延出部16bと、前方延出部16bの前端からほぼ垂直に下方に延びてバンパビーム10の前壁を構成する下方延出部16cとを有する。
【0041】
前方延出部16bと下方延出部16cとの接続部には段差部16dが形成されており、その段差部16dに間隔を開けて複数の(ここでは3つの)スリット開口16eが設けられ、そのことで、周囲よりも破断しやすい脆弱部16fが形成されている。
【0042】
図2及び
図7に示すように、このエアガイドアッパ16の脆弱部16fよりも上方には、ボンネットフード6を保持するラッチ7を締結する締結部としてのラッチ締結ボス16gが前方に膨出するように一体に設けられている。
【0043】
このように、本実施形態では、冷却ユニット11を剛性の高いエアガイドアッパ16で強固に保持できると共に、衝撃吸収可能な比較的柔らかいエアガイドロア17で包むように冷却ユニット11の下側を支持するので、エアガイドロア17自体が潰れることで冷却ユニット11の損傷を防ぎながら、冷却ユニット11に密着して遮音効果と冷間始動時の保温性を高めることができ、また、吸気口2aから取り入れられたエアの漏れを防いで冷却ユニット11にエアをガイドすることができる。
【0044】
さらに、通常、金属で構成されるバンパビーム10の前壁を樹脂製のエアガイドアッパ16の下方延出部16cで構成するので、軽量化が図られている。
【0045】
そして、エアガイドアッパ16にラッチ7を締結するラッチ締結ボス16gを一体に設けたので、従来のようにラッチ7を締結するためのラッチ7ブラケットが不要となって部品点数が減ると共に軽量化が図られる。
【0046】
また、エアガイドロア17を発泡樹脂製成形品で構成したことにより、その衝撃吸収機能、軽量化機能、遮音機能、冷間始動時の保温機能等を効果的に発揮できる。
【0047】
次いで、
図8及び
図9を用いて軽衝突時及びそれよりも衝撃の大きい重衝突時のフロントエンド構造1の変形の様子について説明する。
【0048】
図8に示す軽衝突時には、クラッシャブル領域Aで囲む部分が主に損傷を受ける。本実施形態では、バンパビーム10よりも先に、それよりも突出しているエアガイドロア17のダクト部17aが積極的に潰れて衝突エネルギーが吸収される。
【0049】
このように、エアガイドロア17自体が潰れることで、冷却ユニット11の損傷を防ぐことができると共に、歩行者と衝突した際の歩行者保護の観点では、歩行者の下肢部の損傷が緩和される。
【0050】
そして、シャッタグリルユニット19が、衝撃吸収可能なダクト部17aを構成する矩形枠状の壁部に支持されているので、軽衝突でダクト部17aが積極的に潰れることにより、シャッタグリルユニット19自体の破損が避けられる。
【0051】
一方、
図9に示すバンパビームが後退するような衝突時には、バンパビーム10が後退し、クラッシャブル領域Bで囲む部分が主に損傷を受ける。
【0052】
この場合、脆弱部16fが積極的に破断することにより、エアガイドアッパ16の冷却ユニット11の支持部の破損が軽減される。
【0053】
また、衝突時に脆弱部16fで優先的にバンパビーム10の前壁を構成する下方延出部16cが切断されるので、ラッチ7及びそれが支持するボンネットフード6に衝突荷重が伝達されにくくなる。
【0054】
さらに、この衝突において、発泡樹脂製成形品で構成された比較的柔らかいガイド壁17bがあることにより、後退するバンパビーム10が直接冷却ユニット11に当接することを防止でき、冷却ユニット11に作用する衝撃がガイド壁17bによって効果的に低減される。
【0055】
以上説明したように、本発明の自動車のフロントエンド構造1によれば、冷却ユニット11の損傷を防ぎながら冷却ユニット11へエアを効率よくガイドできる。
【0056】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 フロントエンド構造
2 フロントバンパ
2a 吸気口
4 サブロアメンバ
5 アッパメンバ
6 ボンネットフード
6a ストライカ
7 ラッチ
8 ロアメンバ
9 アンダカバー
10 バンパビーム
11 冷却ユニット
12 冷却ユニットフレーム
13 ラジエータコンデンサ
14 排気ファン
15 エアガイド部
16 エアガイドアッパ
16a エアガイドアッパ本体
16b 前方延出部
16c 下方延出部
16d 段差部
16e スリット開口
16f 脆弱部
16g ラッチ締結ボス(締結部)
16h 冷却ユニット取付部
17 エアガイドロア
17a ダクト部
17b ガイド壁
19 シャッタグリルユニット
19a 枠部
19b フィン
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口(2a)を有するフロントバンパ(2)と、
前記フロントバンパ(2)の後方に配置されたバンパビーム(10)と、
前記バンパビーム(10)の後方に配置された冷却ユニット(11)と、
前記冷却ユニット(11)に前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)からのエアをガイドするエアガイド部(15)とを備えた自動車のフロントエンド構造(1)であって、
前記エアガイド部(15)は、
上部を構成するエアガイドアッパ(16)と、
下部を構成するエアガイドロア(17)とを備え、
前記エアガイドアッパ(16)は、剛性樹脂材よりなり、車体に固定されて前記冷却ユニット(11)を前記車体に保持し、
前記エアガイドロア(17)は、
前記エアガイドアッパ(16)よりも剛性が低く、衝撃吸収可能な樹脂材よりなり、
前方へ延びて前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)に接続するダクト部(17a)を有し、
前記冷却ユニット(11)が前記エアガイドアッパ(16)及び前記エアガイドロア(17)に対して密閉状に当接して固定されている
ことを特徴とする自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項2】
前記ダクト部(17a)は、前記バンパビーム(10)の後方から前記バンパビーム(10)の前方に突出するように延び、前端が前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)に接続している
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項3】
前記エアガイドロア(17)は、前記バンパビーム(10)と前記冷却ユニット(11)との間において、上方に延びて前記フロントバンパ(2)の吸気口(2a)から取り入れたエアを上方へガイドするガイド壁(17b)を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項4】
前記エアガイドロア(17)は、発泡樹脂製である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項5】
前記ダクト部(17a)の後方から前記ダクト部(17a)を開閉するシャッタグリルユニット(19)は、前記シャッタグリルユニット(19)の枠部が、後方から見て前記ダクト部(17a)を構成する壁部に重なるように嵌め込まれている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項6】
前記エアガイドアッパ(16)は、前方に延びる前方延出部(16b)と、前記前方延出部(16b)の前端から下方に延びて前記バンパビーム(10)の前壁を構成する下方延出部(16c)とを有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項7】
前記前方延出部(16b)と前記下方延出部(16c)との接続部には、周囲よりも破断しやすい脆弱部(16f)が設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。
【請求項8】
前記エアガイドアッパ(16)の前記脆弱部(16f)よりも上方には、ボンネットフード(6)を保持するラッチ(7)の締結部が一体に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の自動車のフロントエンド構造(1)。