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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106055
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】プレキャスト部材の継手構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E21D11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010128
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】大関 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】煙山 史
(72)【発明者】
【氏名】浦澤 康治
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155GC04
(57)【要約】
【課題】薄型のRCセグメント等のプレキャスト部材にも適用可能な薄型のプレキャスト部材の継手構造の提供。
【解決手段】このプレキャスト部材の継手部構造は、雄継手部材5が先端部に頭部8を有する板棒状に形成され、雌継手部材6が一対の挟み板16,16を有する外殻部12と、外殻部12の接合端面側端板13,13の背面側に回動可能に配置された一対の係合駒10,10と、係合駒10,10を接合端面側端板側に付勢する付勢手段14と、先端部が係合駒10,10に当接される一対の回動制御部材15,15とを備え、回動制御部材15,15で係合駒10,10の回動動作が制御されるようにしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結される一方のプレキャスト部材の接合部端面より突出した雄継手部材と、他方のプレキャスト部材の接合部に固定された雌継手部材とを備え、前記両接合部端面を突き合わせて前記雄継手部材を前記雌継手部材内に挿入し、前記雌継手部材に前記雄継手部材を抜け出し不能に保持させることにより前記両プレキャスト部材が連結されるようにしてなるプレキャスト部材の継手部構造において、
前記雄継手部材は、先端部に両側部が外向きに張り出した頭部を有する板棒状に形成され、
前記雌継手部材は、接合端面側の雄継手挿入口より挿入された前記雄継手部材の表面と対向する一対の挟み板を有する中空箱状に形成された外殻部と、該外殻部の接合端面側端板の背面側に雄継手挿入口を挟んで回動可能に配置された一対の係合駒と、該係合駒を前記接合端面側端板側に付勢する付勢手段と、基端部で前記外殻部の内側面に反力をとって先端部が前記係合駒に当接される一対の回動制御部材とを備え、該回動制御部材で前記係合駒の回動動作が制御されるようにしたことを特徴とするプレキャスト部材の継手構造。
【請求項2】
前記係合駒は、前記回動制御部材の先端部が挿入されるガイド凹部を備え、前記回動制御部材に案内されつつ回動動作するようにした請求項1に記載のプレキャスト部材の継手構造。
【請求項3】
一対の前記回動制御部材の端部が連結棒により連結され、該連結棒が前記外殻部の奥側端板に当接するようにした請求項1又は2に記載のプレキャスト部材の継手構造。
【請求項4】
前記回動制御部材の基端部が前記外殻部の奥側端板又は側板に固定されている請求項1又は2に記載のプレキャスト部材の継手構造。
【請求項5】
前記プレキャスト部材は、互いに部材厚み方向に間隔をおいて部材軸方向に並列配置される上下の鉄筋群を備え、前記雄継手部材及び前記雌継手部材が前記上下の鉄筋群間に配置されている請求項1又は2に記載のプレキャスト部材の継手構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にトンネルの内部覆工に用いられるセグメントや床版用のプレキャストコンクリート版等の薄型のプレキャスト部材間を接合するプレキャスト部材の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法よるトンネル構築においては、シールド掘削機の後方側で掘削孔の内周面に沿って円弧版状のセグメントを周方向に連結してセグメントリングを組み立て、このセグメントリングをシールド掘削機の進行に合わせて順次トンネル軸方向に連設することによりトンネル内に覆工がなされている。
【0003】
従来、このセグメントリング相互の連結は、セグメントリングを構成するセグメントをトンネル軸方向で相互に連結することによりなされ、このセグメント相互間を連結する継手部構造には、互いに連結される一方のセグメントの接合端面より突出したピン状の雄継手部材と、他方のセグメントの接合部に固定された雌継手部材部材とを備え、両接合部端面同士を突き合わせるとともに雄継手部材を挿入口より雌継手部材に挿入し、雌継手部材に雄継手部材を抜け出し不能に保持させることによりセグメント相互を連結する構造のものが知られている。
【0004】
このような継手部構造には、雌継手部材内に雄継手部材の軸径方向で移動可能な係合駒を備え、雄継手部材を雌継手部材内に挿入した際に、この係合駒が雄継手部材の外周部に形成された係合溝にバネやゴム等の弾性材の付勢力により係合してピンの軸方向の移動を規制するようにしたもの(例えば特許文献1)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-328693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、RCセグメント等のプレキャスト部材では、薄型化されたものも多く開発されている。
【0007】
これに対し、上述の如き従来の技術では、係合駒が雄継手部材の軸径方向に移動する構造であるため、その分、雌継手部材が大型化せざるを得ず、薄型のRCセグメント等のプレキャスト部材に適用する場合、雌継手部材を避けるために内部鉄筋の端部を切欠かなければならない場合があった。
【0008】
また、上述の如き従来の技術では、雄継手部材の軸径方向に作用するバネ部材の付勢力に抗して雄継手部材を雌継手部材内に挿入するため、高い挿入力を必要とし、一方、係合駒は、その移動方向と略直角を成す方向から雄継手部材が挿入される構造であるため、雄継手部材に押圧されて変形してしまうおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、薄型のRCセグメント等のプレキャスト部材にも適用可能な薄型のプレキャスト部材の継手構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、互いに連結される一方のプレキャスト部材の接合部端面より突出した雄継手部材と、他方のプレキャスト部材の接合部に固定された雌継手部材とを備え、前記両接合部端面を突き合わせて前記雄継手部材を前記雌継手部材内に挿入し、前記雌継手部材に前記雄継手部材を抜け出し不能に保持させることにより前記両プレキャスト部材が連結されるようにしてなるプレキャスト部材の継手部構造において、前記雄継手部材は、先端部に両側部が外向きに張り出した頭部を有する板棒状に形成され、前記雌継手部材は、接合端面側の雄継手挿入口より挿入された前記雄継手部材の表面と対向する一対の挟み板を有する中空箱状に形成された外殻部と、該外殻部の接合端面側端板の背面側に雄継手挿入口を挟んで回動可能に配置された一対の係合駒と、該係合駒を前記接合端面側端板側に付勢する付勢手段と、基端部で前記外殻部の内側面に反力をとって先端部が前記係合駒に当接される一対の回動制御部材とを備え、該回動制御部材で前記係合駒の回動動作が制御されるようにしたことにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記係合駒は、前記回動制御部材の先端部が挿入されるガイド凹部を備え、前記回動制御部材に案内されつつ回動動作するようにしたことにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、一対の前記回動制御部材の端部が連結棒により連結され、該連結棒が前記外殻部の奥側端板に当接するようにしたことにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記回動制御部材の基端部が前記外殻部の奥側端板又は側板に固定されていることにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記プレキャスト部材は、互いに部材厚み方向に間隔をおいて部材軸方向に並列配置される上下の鉄筋群を備え、前記雄継手部材及び前記雌継手部材が前記上下の鉄筋群間に配置されていることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプレキャスト部材の継手構造は、請求項1に記載の構成を具備することによって、軸支させなくとも係合駒を好適に回動動作させることができ、薄型化ができるようになっている。
【0016】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、係合駒を回動制御部材に安定してガイドさせることができる。
【0017】
さらに、本発明において、請求項3乃至4に記載の構成を具備することによって、回動制御部材が外殻部に対し好適に反力を得ることができる。
【0018】
また、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、内部鉄筋と干渉せずに雌継継手部材を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は本発明に係るプレキャスト部材の継手構造の実施態様の一例を示す平面図、(b)は同プレキャスト部材の正面図である。
図2】同上のプレキャスト部材の継手構造の要部を示す部分拡大横断面図である。
図3】同上の雄継手部材を示す横断面図である。
図4】同上の側面図である。
図5】同上の雌継手部材を示す正面図である。
図6】同上のA-A線矢視断面図である。
図7】同上のB-B線矢視断面図である。
図8】同上のC-C線矢視断面図である。
図9】同上の雌継手部材の他の実施態様を示すA-A線矢視断面図である。
図10】同上のセグメント部材の継手構造の接合手順を示す横断面図であって、両継手部材を連結する前の状態を示す図である。
図11】同上の雄継手部材の先端部を雌継手部材に挿入した状態の初期段階を示す図である。
図12】同上の雄継手部材をさらに挿入した状態を示す図である。
図13】同上の雌雄両継手部材が連結された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係るプレキャスト部材の継手構造の実施態様を図1図13に示した実施例に基づいて説明する。
【0021】
本実施例では、プレキャスト部材として薄型のRCセグメントをセグメントリング軸方向で接合する場合を例に説明する。なお、図中符号1,1はプレキャスト部材であるRCセグメントである。
【0022】
RCセグメント1,1は、図1に示すように、コンクリートにより円弧版状に形成されたセグメントであって、複数のセグメントをリング周方向で連結して円環状のセグメントリングを成し、このセグメントリングをトンネル軸方向に連設することによりトンネル内に覆工をなしている。
【0023】
このRCセグメント1,1は、セグメント厚み方向の両表面より一定の距離(かぶり)を隔てた位置にそれぞれセグメント軸方向で並列配置されたセグメント周方向に向けた複数の鉄筋(主筋)3,3…と、鉄筋(主筋)3,3…と直交する方向に向けた複数の鉄筋(配力筋)4,4…とが埋設された鉄筋コンクリート構造を成している。
【0024】
また、セグメントリング相互の連結は、各セグメントリングを構成するセグメントを継手構造によりトンネル軸方向で相互に連結することによりなされている。
【0025】
セグメント相互のリング軸方向(トンネル軸方向)を連結する継手構造は、互いに連結される一方のセグメント1の接合部端面1aに突設された雄継手部材5と、他方のセグメント1の接合部に固定された雌継手部材6とをもって構成され、両セグメント1,1の接合部端面1a,1bを突き合わせ、雄継手部材5を雌継手部材6内に挿入し、雌継手部材6に雄継手部材5を抜け出し不能に保持させることにより、両セグメント1,1をリング軸方向で移動不能に連結するようになっている。
【0026】
雄継手部材5は、セグメント1の接合部端面1aよりリング軸方向に突出した状態でリング周方向に間隔を置いて配置されている。
【0027】
雄継手部材5は、図3図4に示すように、鋼板等によって一定の厚みを有する細長の板棒状に形成され、厚み方向の表面をセグメント厚み方向に向けてRCセグメント1に固定されている。
【0028】
この雄継手部材5は、基端側がコンクリート内に埋設されるとともに、埋設部がコンクリート内に埋設された鉄筋7に溶接により固定され、それにより接合部端面1aより先端側が突出した状態にセグメント1に固定されている。
【0029】
この雄継手部材5の先端部には、両側部が外向きに張り出した頭部8が形成され、頭部8の挿抜方向手前側に向けた係合面9,9が後述する雌継手部材6の係合駒10,10と係合することにより雄継手部材5の抜け出し方向の移動が規制されるようになっている。
【0030】
また、頭部8は、先端側両側部に先端側に向けて傾斜した案内傾斜部8a,8aが形成され、先端側が狭い平面視台形状を成している。
【0031】
頭部8は、雄継手部材5の両側部に三角形状の切り欠きを設けることにより形成され、切り欠きの所定の角度で傾斜した挿抜方向手前側に向けた面が係合面9,9を成している。
【0032】
尚、頭部8の態様は、本実施例に限定されず、細長板棒状の本体部の先端部に本体部より幅広な頭部8が一体に支持されたものであってもよい。
【0033】
雌継手部材6は、図5図8に示すように、接合端面側に配置された雄継手挿入口11を有する中空箱状の外殻部12と、外殻部12内に雄継手挿入口11を挟んで回動可能に配置された一対の係合駒10,10と、係合駒10,10を接合端面側端板13,13側に付勢する付勢手段14とを備え、外殻部12の前端面を接合部端面1bに露出させた状態でセグメント1に埋設され、雄継手挿入口11より挿入された雄継手部材5の頭部8の係合面9,9が係合駒10,10と係合するようになっている。
【0034】
また、雌継手部材6には、基端部で外殻部12の内側面に反力をとって先端部が係合駒10,10に当接される一対の回動制御部材15,15を備え、回動制御部材15,15で雄継手部材5が挿入された際の係合駒10,10の回動動作を制御できるようにしている。
【0035】
外殻部12は、互いに間隔をおいて対向する一対の挟み板16,16と、両挟み板16,16の接合端面1b側に配置された接合端面側端板13,13と、両挟み板16,16の奥側に配置された奥側端板17と、両挟み板16,16の側部に配置された側板18,18とを備え、挟み板16,16、接合端面側端板13,13、奥側端板17及び両側板18,18によって、中空箱状に形成されている。
【0036】
両挟み板16,16は、鋼板等によって矩形板状に形成され、雄継手部材5の厚みと略同じ間隔をおいて対向し、両挟み板16,16間に厚み方向表面を挟み板16,16の対向面と対向させた状態で雄継手部材5が挿し込まれるようになっている。
【0037】
側板18,18は、鋼板等によって厚み方向を側方に向けた細板状に形成され、上下面がそれぞれ挟み板16,16の対向面に溶接などによって固定され、両挟み板16,16間の側部を閉鎖するようになっている。
【0038】
尚、側板18,18は、挟み板16,16の側端より内側に配置され、外殻部12の側部に挟み板16,16及び側板18,18に囲まれた凹溝が形成され、この凹溝内にコンクリート内に埋設された鉄筋19の先端が挿入され、鉄筋19と外殻部12とが溶接などによって固定される。
【0039】
接合端面側端板13,13は、鋼板等によって矩形状に形成され、背面側が溶接などによって挟み板16,16の前端に固定されている。
【0040】
両接合端面側端板13,13は、幅方向に間隔をおいて配置され、両接合端面側端板13,13間に雄継手部材5が挿入される雄継手挿入口11が形成されている。
【0041】
尚、接合端面側端板は、中央に雄継手挿入口11が開口した一枚の鋼板によって構成するようにしてもよい。
【0042】
奥側端板17は、表面を前後に向けた細板状に形成され、上下面がそれぞれ挟み板16,16の対向面に溶接などによって固定され、両挟み板16,16間の側部を閉鎖するようになっている。
【0043】
係合駒10,10は、鋼材等によって両端部に互いに平行な傾斜部を有する平面視平行四辺形状に形成され、外殻部12の接合端面側端板13,13の背面側に一方の底辺部が接合端面側端板13,13に当接した状態でそれぞれ雄継手挿入口11を挟んで配置されている。
【0044】
この係合駒10,10は、セグメント周方向の一方の端部の鋭角部が回動支点部10aとなり、回動支点部10aが外殻部12の内側面、即ち、側板18内面又は接合端面側端板13の背面に支持され、外殻部12内で回動できるようになっている。
【0045】
また、この係合駒10,10は、セグメント周方向の他方の端部に形成された傾斜部が雄継手部材5を案内する誘導部10bとして機能するとともに、鋭角部が雌継手部材6に挿入された雄継手部材5の頭部8の挿抜方向手前側に向けた係合面9,9と係合する係合爪部10cを成している。
【0046】
また、係合駒10,10の接合端面側端板13,13と当接す底辺部と反対側の辺部には、図7図8に示すように、係合駒10,10の長手方向に向けた長孔溝状のガイド凹部10dを備え、このガイド凹部10dに回動制御部材15,15の先端部が挿入され、係合駒10,10が回動制御部材15,15に案内されつつ回動動作するようになっている。
【0047】
回動制御部材15,15は、図6に示すように、鋼棒等からなる棒状に形成され、端部で外殻部12の内側面に反力をとって先端部が係合駒10,10に当接され、係合駒10,10が当接された先端部に支持されることにより、係合駒10,10の挿入方向前方への浮き上がりを防止するとともに、先端部が回動支点となって係合駒10,10の回動動作を制御するようになっている。
【0048】
回動制御部材15,15は、互いに基端側の端部が連結棒20によって連結され、両回動制御部材15,15と連結棒20とによってU字状を成し、外殻部12内に移動可能な状態で収容されている。
【0049】
各回動制御部材15,15は、係合駒10,10が接合端面側端板13,13に当接した状態、かつ、連結棒20(基端)が奥側端板17に当接した状態で先端がガイド凹部10d内に挿入されるとともに、先端とガイド凹部10dの底面との間に所定の隙間が生じる長さに形成され、係合駒10,10の一定の回動動作を許容しつつ、係合駒10,10が奥側へ過度に押し込まれることを防止するようになっている。
【0050】
尚、回動制御部材15,15の態様は、上述の実施例に限定されず、図9に示すように、棒状の回動制御部材15,15の基端部が奥側端板17に固定されたものであってもよい。
【0051】
回動制御部材15,15の固定は、基端部に形成された雄ネジ部15aをナット21で定着させてもよく、溶接等によって固定してもよい。
【0052】
回動制御部材15,15の奥側端板17からの突出長さは、先端がガイド凹部10d内に挿入されるとともに、先端とガイド凹部10dの底面との間に所定の隙間が生じる長さとし、係合駒10,10の一定の回動動作を許容しつつ、係合駒10,10が奥側へ過度に押し込まれることを防止するようになっている。
【0053】
また、回動制御部材15,15基端部の固定位置は、奥側端板17に限定されるものではなく、側板18,18に固定するようにしてもよい。
【0054】
付勢手段14は、弾性を有する線材からなるバネ体であって、奥側端板17に反力をとって係合駒10,10を接合端面側端板13,13側に付勢し、図6図8に示すように、雄継手部材5未挿入時において、係合駒10,10の一方の底辺部が接合端面側端板13,13に押し当てられた状態で保持されるようになっている。
【0055】
付勢手段14の態様は、上述の実施例に限定されず、雄継手部材5の挿入を阻害しなければ如何なる態様であってもよく、線材からなるバネ体の他、板バネ、コイルスプリング等であってもよい。また、付勢手段14は、奥側端板17以外、例えば、側板18,18等に反力をとるようにしてもよい。
【0056】
このように構成されたプレキャスト部材の継手構造を用いてRCセグメント1,1間を接合するには、図1(a)、図10に示すように、雄継手部材5を雌継手部材6の雄継手挿入口11の位置に合わせ、両セグメント1,1を接合端面1a,1bが互いに付き合わされる方向に移動させる。
【0057】
雄継手部材5は、図11に示すように、頭部8が雄継手挿入口11から雌継手部材6内に挿入され、頭部8が雄継手挿入口11を挟んで配置された両係合駒10,10と接触し、係合駒10,10が付勢手段14に抗して雌継手部材6内の奥側に押し込まれる。
【0058】
また、係合駒10,10が押し込まれることによって、回動制御部材15,15の先端が係合駒10,10のガイド凹部10d底面に当接し、基端部(連結棒20)が奥側端板17側に当接する。
【0059】
そして、さらに雄継手部材5が挿し込まれると、図12に示すように、雄継手部材5の頭部8両側部が係合駒10,10の誘導部10cに接触して、雄継手部材5の挿し込み力が誘導部10bに作用し、係合駒10,10に外向き(側板18,18側へ)の押圧力が作用する。
【0060】
また、係合駒10,10が付勢手段14によって接合端面側端板13,13側に付勢されていることで、係合駒10,10の端部が接合端面側端板13,13に押され、一方の回動支点10aとなり、且つ、回動制御部材15,15の先端部が回動の支点となり、両係合駒10,10が制御された状態で回動動作する。
【0061】
そして、図13に示すように、雄継手部材5が両セグメントの接合端面1a,1bが付き合わされる位置まで挿入され、頭部8が両係合駒10,10間を通過すると、両係合駒10,10が付勢手段14によって付勢されて押し戻され、係合部先端の係合爪部10dが雄継手部材5の頭部8の挿抜方向手前側に挿し込まれ、係合面9,9と係合し、雌継手部材6に雄継手部材5が抜け出し不能に保持される。
【0062】
このように構成されたプレキャスト部材の継手構造では、回動制御部材15,15によって回動動作が制御されることによって、軸支されていなくとも円滑に回動できることから、小さい挿入力で円滑に両プレキャスト部材を接合することができる。
【0063】
また、この継手構造では、雄継手部材5が板棒状に形成されるとともに、雌継手部材6内に収容された係合駒10,10が軸支されていなくとも円滑に回動できることから、継手構造全体の薄型化が可能となり、セグメント等のプレキャスト部材の厚み方向両表面部に埋設された鉄筋の間等の狭隘な部分にも設置することができる。
【0064】
尚、上述の実施例では、プレキャスト部材としてRCセグメント1,1を例に説明したが、プレキャスト部材は本実施例に限定されず、例えば、プレキャスト床版等にも適用することができる。
【0065】
また、上述の実施例では、回動制御部材の先端を係合駒10に形成されたガイド凹部に挿入され、ガイド凹部の底部に当接するようにした場合について説明したが、ガイド凹部を設けず、先端部を係合駒10の表面に当接させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 RCセグメント
2 RCセグメント
3 鉄筋
4 鉄筋
5 雄継手部材
6 雌継手部材
7 鉄筋
8 頭部
9 係合面
10 係合駒
11 雄継手挿入口
12 外殻部
13 接合端面側端板
14 付勢手段
15 回動制御部材
16 挟み板
17 奥側端板
18 側板
19 鉄筋
20 連結棒
21 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13