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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106057
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】遠心バレル研磨機
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/02 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B24B31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010138
(22)【出願日】2023-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年11月8日から11月13日、第31回日本国際工作機械見本市にて、遠心バレル研磨機について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 達樹
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC03
3C158CB08
(57)【要約】
【課題】バレル本体に用いられる材質に関わらずバレル槽を確実に固定する。
【解決手段】遠心バレル研磨機Aは、複数のバレルケース50と、バレルケース50に収容され、上面に開口部34を有するバレル本体30と、開口部34を閉塞する蓋40と、を有するバレル槽20と、バレル本体30に一体的に設けられ、バレル本体30の外周面から突出した被保持部31と、バレルケース50に装着され、被保持部31をバレルケース50との間で挟みつけて固定する固定部材70と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のバレルケースと、
前記バレルケースに収容され、上面に開口部を有するバレル本体と、前記開口部を閉塞する蓋と、を有するバレル槽と、
前記バレル本体に一体的に設けられ、前記バレル本体の外周面から突出した被保持部と、
前記バレルケースに装着され、前記被保持部を前記バレルケースとの間で挟みつけて固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする遠心バレル研磨機。
【請求項2】
前記被保持部は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項3】
前記被保持部は、前記バレル本体の全周に亘って連続した環状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項4】
前記被保持部は、前記開口部に沿うように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項5】
前記バレルケースに装着された状態の前記バレル槽において、前記バレル本体及び前記蓋は、前記固定部材及び前記バレルケースに対して非接触状態とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項6】
前記被保持部には、前記固定部材を正規の押圧位置に案内する案内凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項7】
前記バレル本体は、ウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項8】
前記被保持部は、前記固定部材と前記バレルケースとによって挟み込まれる被挟持部を有し、
前記被挟持部は、前記被保持部と別体的に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心バレル研磨機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心バレル研磨機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有底筒状をなすバレル本体の上面の開口部を蓋で閉塞した形態のバレル槽を、有底筒状のバレルケース内に収容し、バレル槽とバレルケースを遊星回転させることによってバレル槽内で研磨を行う遠心バレル研磨機が開示されている。この遠心バレル研磨機は、蓋に下向きの押圧力を付与することでバレル槽をバレルケースに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7026381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、作業者の重筋作業軽減が求められており、バレル槽軽量化の需要が高まっている。また、バレル研磨装置の省スペース化も求められており、バレル槽の軽量化は、バレル槽(バレルケース)を遊星回転するための駆動機構の小型化にも有効である。軽量化を目的としたバレル槽としてウレタン樹脂製のものがある。しかし、特許文献1のようなバレル研磨機にウレタン樹脂製のバレル槽を用いると、弾性体であるウレタン樹脂が押圧部材による押圧力に耐えることができず、バレル槽の固定不良や変形、蓋とバレル本体の密閉性の低下による内容物の漏れ等を引き起こす懸念がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バレル本体に用いられる材質に関わらずバレル槽を確実に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る遠心バレル研磨機は、
一つ以上のバレルケースと、
前記バレルケースに収容され、上面に開口部を有するバレル本体と、前記開口部を閉塞する蓋と、を有するバレル槽と、
前記バレル本体に一体的に設けられ、前記バレル本体の外周面から突出した被保持部と、
前記バレルケースに装着され、前記被保持部を前記バレルケースとの間で挟みつけて固定する固定部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被保持部がバレルケースと固定部材とによって挟持される構成なので、バレル本体に用い得る素材の選択の幅が拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の遠心バレル研磨機の側面図である。
図2図2は、バレルケースを示す側面図である。
図3図3は、バレル槽を示す側面図である。
図4図4は、バレル本体を示す平面図である。
図5図5は、蓋を示す平面図である。
図6図6は、バレル本体に蓋を載置した状態を示す平面図である。
図7図7は、バレル本体に蓋を載置してクランプハンドルを規制状態にした状態を示す側面図である。
図8図8は、固定部材を示す側面図である。
図9図9は、バレルケースにバレル槽を載置した状態を示す側面図である。
図10図10は、バレルケースに固定部材を装着した状態を示す側面図である。
図11図11は、被挟持部を支持部と固定部材の押圧部とによって上下方向から挟み込んだ様子を示す要部拡大側面図である。
図12図12は、上方バーの水平方向の両端部が受圧部の下向き凹部に嵌合した状態を示す側面図である。
図13図13は、ノブを締め込んだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1から図13を参照して説明する。なお、以下の説明において、上下の方向については、図1から3、及び図7から13にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。また、図1から3、及び図7から13における左右方向を水平方向と定義する。
【0010】
[遠心バレル研磨機の全体構成]
【0011】
図1に示すように、本実施例1の遠心バレル研磨機Aは、板面を上下方向に向けた円板状をなすターレット12と、ターレット12に取り付けた四つ(複数)のバレルケース50と、バレルケース50に収容されるバレル槽20と、バレルケース50に装着される固定部材70と、を備えている。なお、図1には、四つのうちの二つのバレルケース50を図示している。
【0012】
[ターレットの構成]
ターレット12は、自身の中心軸Caから径方向へ偏心した同一円周上の位置に、90度の等角度ピッチで4箇所の偏心位置が設定されている。各偏心位置には、バレルケース50の自転軸55が、ターレット12に対して自転可能に取り付けられている。
【0013】
[バレルケースの構成]
図2に示すように、各バレルケース50は、ケース本体54と、自転軸55と、一対の柱部51と、を有している。ケース本体54は、軸線を上下方向に向け、且つ上面が開放された有底円筒形をなす。自転軸55は、ケース本体54の底壁からケース本体54の軸線と同軸状に下向きに延びて設けられている。各バレルケース50は、ターレット12が中心軸Ca周りに回転することにともないケース本体54の軸線周りに回転する。つまり、各バレルケース50は、ターレット12に対して遊星回転可能である。
【0014】
一対の柱部51は、各ケース本体54に一対設けられている。各柱部51は、平板状をなして上下方向に長く延びている。各柱部51は、板面をケース本体54の外周面に沿わせた状態でケース本体54に取り付けられている。具体的には、各柱部51は、ケース本体54の軸線を挟み、ケース本体54の外周面に固定されている。柱部51は、ケース本体54の上端よりも上方に突出している。
【0015】
各柱部51には、受圧部52と、支持部53と、が設けられている。受圧部52及び支持部53は、ブロック状をなしている。受圧部52の下面には、上向きに直方体状をなして凹み、下方に臨む下向き凹部52Aが形成されている。支持部53の上面には、下向きに直方体状をなして凹み、上方に臨む上向き凹部53Aが形成されている。受圧部52は、一対の柱部51の対向する板面であって、柱部51の上端部に取り付けられている。支持部53は、一対の柱部51の対向する板面のうち、柱部51の上下方向中央部であって、ケース本体54の上端縁に沿う位置に取り付けられている。各受圧部52は各支持部53の直上に配置されている。下向き凹部52A及び上向き凹部53Aは、ケース本体54の軸線に向けて(内向き)に開放されている。
【0016】
[バレル槽の構成]
図3に示すように、バレル槽20は、軸線を上下方向に向け、且つ上面が開放された開口部34として形成された有底円筒形のバレル本体30と、開口部34を閉塞する蓋40と、を備えている。バレル本体30の全体は、例えば、ショアA硬度が95度程度のウレタン樹脂で形成されている。バレル本体30の内壁面は、平面視において、多角形状(本実施例では八角形状)に形成されている(図4参照)。バレル本体30の上端部30Aの外径は、上端部30Aよりも下方の部分の外径に比べて小さく形成されている。バレル本体30の上端部30Aは、上端部30Aよりも下方の部分に対して内向きの段付き状に形成されている。
【0017】
バレル本体30の外周面の上端部には、バレル本体30とは別体の部品からなる、円環状の被保持部31が取り付けられている。被保持部31は、バレル本体30の外周面から外向きに僅かに突出している。被保持部31には、例えば、炭素鋼等が用いられる。つまり、被保持部31は、ウレタン樹脂製のバレル本体30よりも硬い。被保持部31は、開口部34に沿うように開口部34を囲んで、バレル本体30の外周面の全周に亘って連続して設けられている(図4参照)。被保持部31は、インサート成形によってバレル本体30に一体的に設けられている。
【0018】
被保持部31には、一対の被挟持部32が設けられている(図4参照)。各被挟持部32は、ブロック状をなしている。被挟持部32には、例えば、ステンレス合金が用いられる。各被挟持部32は、被保持部31の外周面から外向きに突出している(図4参照)。言い換えると、各被挟持部32は、バレル本体30の外周面から外向きに突出している。各被挟持部32は、被保持部31に対しボルトによって固定されており、被保持部31と別体的に構成されている。一対の被挟持部32は、バレル本体30の軸線を挟んで、反対の位置に配置されている(図4参照)。各被挟持部32の上端部には、案内凹部33が形成されている。各案内凹部33は、各被挟持部32において、バレル本体30の周方向における中央部に向けて下向きに傾斜する二つの傾斜面によってV字状に凹むように形成されている(図11参照)。これら二つの傾斜面がなす角度は、90度よりも大きく180度よりも小さい鈍角である。案内凹部33の下端部には、下向きに凹んだ落ち込み凹部33Aが形成されている(図11参照)。
【0019】
被保持部31には、クランプハンドル35が設けられている。クランプハンドル35は、金属製である。クランプハンドル35は、帯状の金属が弧状をなして形成されており、その両端部が、支柱36を介して被保持部31の外周面に連結されている。支柱36は、被保持部31に対してボルトによって固定されている。クランプハンドル35は、支柱36に対して回転可能に連結されている。クランプハンドル35の両端部の各々には、偏心カム37が1つずつ設けられている(図4参照)。これら偏心カム37は、円柱状をなしている。これら偏心カム37は、自身の軸線Eを、クランプハンドル35が回転する回転軸Raに対して平行に、且つ所定の寸法離間し配置されている。これら偏心カム37は、クランプハンドル35に対して一体化(相対変位不能)されており、クランプハンドル35とともに、クランプハンドル35が回転する回転軸Ra周りに回転する。
【0020】
図4に示すように、クランプハンドル35には、一対の規制部38が設けられている。これら規制部38は、クランプハンドル35と一体化されている。これら規制部38は、弧状をなしたクランプハンドル35の内周側から内向きに突出して設けられている。詳しくは、これら規制部38は、クランプハンドル35の中央を挟み、回転軸Raが延びる方向に並び、互いに所定の寸法離間し設けられている。
【0021】
図3、5に示すように、蓋40は、全体として円板状をなす蓋本体41と、蓋本体41の上面に形成された取手47と、一対の被押圧部材46と、を備えて構成されている。図3に示すように、蓋本体41は、円板状をなした板部44と、閉塞板部45と、を有している。板部44の外周縁部には、円環状をなして垂下する円環部44Aが設けられている。閉塞板部45は、円板状をなして円環部44Aの内側に配置されて板部44の下面に固定されている。
【0022】
板部44は、例えば、アルミニウム合金製である。閉塞板部45は、例えば、ウレタン樹脂製である。板部44の外径は、バレル本体30の外径と概ね同じである。閉塞板部45の外径は、板部44の外径よりも僅かに小さい。取手47は、例えば、合成樹脂製である。取手47は、水平方向に延びる取手本体48と、取手本体48の両端部から垂下する脚部49と、を有している。取手47は、板部44の上面に脚部49の下端が接触するように配置され、板部44の上面に対してボルトによって固定されている。
【0023】
一対の被押圧部材46は、平板状をなした長方形状の金属製である。被押圧部材46には、例えば、ステンレス合金が用いられる。被押圧部材46は、板部44、及び閉塞板部45よりも硬い。これら被押圧部材46は、板部44の上面の外周縁部に対して、水平方向に延びる取手本体48を挟んで対称に配置されて、ボルトによって固定されている(図5参照)。これら被押圧部材46は、長手方向を板部44の外周に沿う向きで配置されている。
【0024】
[バレル本体への蓋の取り付けの一例]
蓋40をバレル本体30に取り付ける場合、先ず、バレル本体30のクランプハンドル35をバレル本体30の開口部34に沿わせた姿勢にする(図3参照)。このとき、一対の偏心カム37は、回転軸Raに対して上向きに偏心した位置にする(図3参照)。このとき、一対の偏心カム37の軸線Eは、回転軸Raよりも上方に配置される(図3参照)。これにより、バレル本体30の開口部34から偏心カム37が上向きに離れ、バレル本体30への蓋40の取り付けが可能となる。このときのクランプハンドル35の姿勢は、バレル本体30に対して蓋40の着脱を許容する許容状態となっている。このとき、クランプハンドル35の一対の規制部38が、平面視における開口部34の内周縁部に沿った位置に配置された状態となる(図4参照)。
【0025】
そして、バレル本体30内にワークと研磨石、必要に応じて水とコンパウンドを投入する。その後、蓋40をバレル本体30の上端縁に載置し、閉塞板部45で開口部34を閉塞する。このとき、バレル本体30の上端部30Aは、円環部44Aの内側に下方から進入して閉塞板部45の下面に接触する(図7参照)。また、取手47の取手本体48の一方の端部が一対の規制部38の間に嵌合される(図6参照)。これによって、蓋40におけるバレル本体30の開口部34に対する向きが決まる。
【0026】
次に、許容状態にされたクランプハンドル35を回転軸Ra周りに回転させ、一対の偏心カム37を下向きに移動させる。このとき、一対の偏心カム37は、クランプハンドル35とともに回転軸Ra周りに回転する。すると、図7に示すように、偏心カム37は、バレル本体30の開口部34に対して上方から近づき、蓋40の被押圧部材46に接触する。さらにクランプハンドル35を回転軸Ra周りに回転させ、クランプハンドル35をバレル本体30の開口部34に沿わせた姿勢にすると、偏心カム37によって被押圧部材46が押圧される。このとき、偏心カム37の軸線Eは、回転軸Raの下方に配置される。こうして、バレル本体30の開口部34に対して蓋40が上から押し付けられ、開口部34は、蓋40によって閉塞される。このときのクランプハンドル35は、バレル本体30に対して蓋40の着脱を規制して、バレル本体30に対して蓋40を押し付ける規制状態となっている。
【0027】
[固定部材の構成]
図8に示すように、固定部材70は、水平方向に延びる上方バー71と、上方バー71の下方に配置され上方バー71と平行に延びる下方バー72と、下方バー72の水平方向の両端部から垂下する一対の押圧部73と、を有している。上方バー71、下方バー72、及び一対の押圧部73には、例えば、アルミニウム合金やステンレス合金等が用いられる。上方バー71の水平方向の両端部には、上下方向に貫通して貫通孔Hが形成されている。
【0028】
上方バー71の水平方向の中央部には、上下方向に貫通してネジ孔Sが形成されている。ネジ孔Sには、上端部にノブ74Aが設けられたボルト74が上方からねじ込まれている。下方バー72の水平方向の両端部には、円柱状をなして上向きに突出するガイド柱75が設けられている。ガイド柱75は、上方バー71の貫通孔Hに下方から挿通されている。ガイド柱75における上方バー71と下方バー72との間には、圧縮コイルバネ76が圧縮された状態で挿通されている。下方バー72の水平方向の中央部には、上向きに突出するように、ブロック状の突当部72Aが設けられている。一対の押圧部73の下端部の各々は、合成樹脂製の接触部材77によって覆われている。接触部材77の下端部は、下方バー72の長手方向から視ると、水平方向の中央に向けて下向きに傾斜した二つの傾斜面が形成されている(図11参照)。言い換えると、接触部材77の下端部は、案内凹部33に対応してV字状に形成されている。
【0029】
[バレルケースへのバレル槽の取り付けの一例]
バレル槽20は、バレルケース50内に上方から落とし込まれるようにして収容される。具体的には、図9に示すように、蓋40に対してバレル本体30が下方になるようにしつつ、バレル本体30の被挟持部32をバレルケース50の支持部53の上向き凹部53Aに嵌合させる。
【0030】
次に、バレルケース50に固定部材70を装着する。具体的には、図10に示すように、ノブ74Aを反時計方向に回転させて、ボルト74をネジ孔Sに対して上向きに移動させて、ボルト74の下端を上方バー71の下面とほぼ面一にさせる。そして、各押圧部73の接触部材77を各被挟持部32の案内凹部33に配置する(図11参照)。このとき、案内凹部33に形成された鈍角のV字状をなす二つの傾斜面によって、押圧部73の下端部は、正規の押圧位置に案内される(図11参照)。ここで、正規の押圧位置とは、押圧部73の下端部が被挟持部32の直上に配置された状態である。
【0031】
次に、上方バー71の両端部を各受圧部52の下向き凹部52Aに嵌合させる。具体的には、上方バー71を下方バー72に近づける向きに押圧して圧縮コイルバネ76を僅かに押し縮めた状態にして、各受圧部52の下方に上方バー71の両端部を配置する。そして、上方バー71を下方バー72に近づける向きに押圧することを止める。すると、図12に示すように、上方バー71は、圧縮コイルバネ76の弾性力によって押し上げられ、受圧部52の下向き凹部52Aに下方から嵌合する。
【0032】
次に、ノブ74Aを時計方向に回転させる。すると、図13に示すように、ボルト74は、下向きに移動する。そして、ボルト74の下端が下方バー72の突当部72Aの上端に接触することによって、上方バー71が下方バー72に接近することが規制される。これとともに、被挟持部32は、固定部材70の押圧部73の接触部材77と、バレルケース50の支持部53と、によって上下方向から押圧されて挟み込まれる。こうして、バレルケース50に対して、バレル槽20を固定する。バレルケース50に装着された状態のバレル槽20において、バレル本体30及び蓋40は、固定部材70及びバレルケース50に対して非接触状態とされている。バレルケース50に装着された状態のバレル槽20は、被挟持部32を介してバレルケース50に保持されている。
【0033】
<実施例の作用及び効果>
本実施例1の遠心バレル研磨機Aは、複数のバレルケース50と、バレルケース50に収容され、上面に開口部34を有するバレル本体30と、開口部34を閉塞する蓋40と、を有するバレル槽20と、バレル本体30に一体的に設けられ、バレル本体30の外周面から突出した被保持部31と、バレルケース50に装着され、被保持部31をバレルケース50との間で挟みつけて固定する固定部材70と、を備える。この構成によれば、被保持部31がバレルケース50と固定部材70とによって挟持される構成なので、バレル本体30に用い得る素材の選択の幅が拡がる。
【0034】
被保持部31は、金属製である。この構成によれば、被保持部31が撓み難くできるので、固定部材70とバレルケース50とによって被保持部31を良好に挟持しやすい。
【0035】
被保持部31は、バレル本体30の全周に亘って連続した環状をなしている。この構成によれば、バレル本体30を変形させにくくすることができる。
【0036】
被保持部31は、開口部34に沿うように配置されている。この構成によれば、開口部34が変形しにくくできるので、開口部34に対して蓋40を良好に密着させやすい。
【0037】
バレルケース50に装着された状態のバレル槽20において、バレル本体30及び蓋40は、固定部材70及びバレルケース50に対して非接触状態とされている。この構成によれば、バレル本体30の大きさの制約が排除できるので、異なる高さのバレル本体30をバレルケース50に収容する構成が可能となる。
【0038】
被保持部31の被挟持部32には、固定部材70を正規の押圧位置に案内する案内凹部33が形成されている。この構成によれば、被保持部31の被挟持部32に対して固定部材70が誤った位置に配置されることを防止できる。
【0039】
バレル本体30は、ウレタン樹脂製である。この構成によれば、バレル本体30に金属を用いる場合に比べ、軽量化し易い。
【0040】
被保持部31は、固定部材70とバレルケース50とによって挟み込まれる被挟持部32を有し、被挟持部32は、被保持部31と別体的に構成されている。この構成によれば、被挟持部32を被保持部31と別体的に構成することによって、被挟持部32が摩耗したような場合であっても交換し易い。
【0041】
蓋40は、取手47を有し、バレル本体30は、取手47が嵌合することによって開口部34に対する蓋40の向きを規制する規制部38を有している。この構成によれば、規制部38は、蓋40の取手47を利用して開口部34に対する蓋40の向きを規制することができ、これによって、蓋40と開口部34との当たりがばらつくことを抑制できる。
【0042】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1とは異なり、1つのターレットに設けるバレルケースの数が3つ以下、又は5つ以上である遠心バレル研磨機にも適用することができる。
(2)実施例1とは異なり、水平方向の回転軸を中心として回転する遠心バレル研磨機に、本発明を適用してもよい。
(3)実施例1とは異なり、被保持部と被挟持部とを一体的に形成してもよい。
(4)実施例1とは異なり、被保持部をバレル本体の上端部、上下中央部、及び下端部に設けてもよい。
(5)実施例1とは異なり、バレル本体を、ウレタン樹脂以外の合成樹脂製としてもよい。
(6)実施例1とは異なり、被保持部を、弧状をなした形態とし、この被保持部をバレル本体の外周に沿って複数設ける構成としてもよい。
(7)実施例1とは異なり、被保持部に硬質のエンジニアリングプラスチックを用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
20…バレル槽
30…バレル本体
31…被保持部
32…被挟持部
33…案内凹部
34…開口部
38…規制部
40…蓋
47…取手
50…バレルケース
70…固定部材
A…遠心バレル研磨機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13