IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋電機製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シングルアームパンタグラフ 図1
  • 特開-シングルアームパンタグラフ 図2
  • 特開-シングルアームパンタグラフ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106061
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】シングルアームパンタグラフ
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/26 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B60L5/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010142
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
【テーマコード(参考)】
5H105
【Fターム(参考)】
5H105AA09
5H105BA02
5H105BB01
5H105CC02
5H105CC12
5H105DD04
5H105DD07
5H105EE03
5H105EE13
(57)【要約】
【課題】下枠41及び上枠42を有する一組の枠組の車幅方向wの剛性アップが効率的に行われ、ヒンジ部5がより堅牢な構造で構築されるシングルアームパンタグラフ1を提供する。
【解決手段】下枠41の他端部41bのヒンジ板11に第2開孔111が開設され、第2開孔111に車幅方向wに内挿される単数又は複数の皿ばね181から構成される皿ばねユニット18がヒンジ部5に設けられ、皿ばねユニット18は、上枠42の筒状部42eに内嵌するベアリング押え15と、ヒンジ板11に固定される蓋13とに接触し、蓋13の第1開孔131から車幅方向wの外方に突出するピン12の末端側の部分を構成する雄ねじ122への雌ねじ部材16の螺合によって、皿ばねユニット18は車幅方向wの内方に圧縮され、上枠42の筒状部42eに内嵌するベアリング14に車幅方向wの内方に向かうアキシャル荷重が作用する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の屋根上に搭載される台枠と、一端部が、台枠に設けられる主軸に揺動自在に連結される下枠及び一端部が、下枠の他端部にヒンジ部を介して揺動自在に連結され、他端部で集電舟を支持する上枠を有する一組の枠組と、この枠組を集電舟が上昇するように付勢する主ばねとを備えるシングルアームパンタグラフであって、
ヒンジ部は、下枠の他端部を構成する、車幅方向に離間配置された一対のヒンジ板と、一方のヒンジ板の車幅方向外側面に固定されるピン頭を有し、両ヒンジ板間に挿入される上枠の一端部に設けられる筒状部を車幅方向に貫通するピンと、ピン頭と反対側に位置する、ピンの末端側の部分が貫通する第1開孔が開設され、他方のヒンジ板の車幅方向外側面に固定される蓋と、上枠の筒状部で各ヒンジ板側に位置する部分に内嵌してピンを軸支する一対のベアリングと、他方のヒンジ板側のベアリングの車幅方向外側に隣接して上枠の筒状部に内嵌するベアリング押えとを備え、蓋の第1開孔から車幅方向外方に突出するピンの末端側の部分が雄ねじで構成され、この雄ねじに雌ねじ部材が車幅方向外方から螺合されるものにおいて、
他方のヒンジ板に第2開孔が開設され、この第2開孔に車幅方向に内挿される単数又は複数の皿ばねから構成される皿ばねユニットが設けられ、この皿ばねユニットは、ベアリング押えの車幅方向外側面と蓋の車幅方向内側面とに接触し、雄ねじへの雌ねじ部材の螺合によって、皿ばねユニットは車幅方向内方に圧縮され、他方のヒンジ板側のベアリングに車幅方向内方に向かうアキシャル荷重が作用することを特徴とするシングルアームパンタグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリ線から集電する、鉄道車両用のシングルアームパンタグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシングルアームパンタグラフとして、鉄道車両の屋根上に搭載される台枠と、一端部が、台枠に設けられる主軸に揺動自在に連結される下枠及び一端部が、下枠の他端部にヒンジ部を介して揺動自在に連結され、他端部で集電舟を支持する上枠を有する一組の枠組と、この枠組を集電舟が上昇するように付勢する主ばねとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなシングルアームパンタグラフでは、一般に、ヒンジ部は、下枠の他端部を構成する、車幅方向に離間配置された一対のヒンジ板と、一方のヒンジ板の車幅方向外側面に固定されるピン頭を有し、両ヒンジ板間に挿入される上枠の一端部に設けられる筒状部を車幅方向に貫通するピンとを備えている。また、ヒンジ部は、ピン頭と反対側に位置する、ピンの末端側の部分が貫通する第1開孔が開設され、他方のヒンジ板の車幅方向外側面に固定される蓋と、上枠の筒状部で各ヒンジ板側に位置する部分に内嵌してピンを軸支する一対のベアリングと、他方のヒンジ板側のベアリングの車幅方向外側に隣接して上枠の筒状部に内嵌するベアリング押えとを備えている。そして、ヒンジ部では、蓋の第1開孔から車幅方向外方に突出するピンの末端側の部分が雄ねじで構成され、この雄ねじに雌ねじ部材が車幅方向外方から螺合される。
【0004】
ここで、シングルアームパンタグラフに要求される重要な性能の一つとして、枠組の車幅方向の剛性が挙げられる。この枠組の車幅方向の剛性を高める方法の一つとして、ヒンジ部を堅牢な構造で構成することが有効である。一方、ヒンジ部では、各部品の製造公差に伴い、蓋と蓋が固定されるヒンジ板とに作製誤差が蓄積するため、遊びが設けられるのが一般であった。そこで、従来では、シム等の隙間調整部材を使用し、遊びをなくすことによって枠組の車幅方向の剛性を確保していた。
【0005】
しかし、当然ながら、各部品の製造公差は一定ではなく、したがって、遊びの大きさは、製造するシングルアームパンタグラフによってまちまちであった。このため、隙間調整部材の種類や枚数等を遊びの大きさに応じて適宜調整する必要があり、シングルアームパンタグラフのヒンジ部の車幅方向の剛性アップのための作業は手間のかかるものとなっていた。また、そもそもの問題であるが、隙間調整部材による遊びの消失は、必ずしもヒンジ部を堅牢な構造で構築するのに十分であるとは言い切れない面があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-063160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、枠組の車幅方向の剛性アップを効率的に行うことができると共に、ヒンジ部をより堅牢な構造で構築することができるシングルアームパンタグラフを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、鉄道車両の屋根上に搭載される台枠と、一端部が、台枠に設けられる主軸に揺動自在に連結される下枠及び一端部が、下枠の他端部にヒンジ部を介して揺動自在に連結され、他端部で集電舟を支持する上枠を有する一組の枠組と、この枠組を集電舟が上昇するように付勢する主ばねとを備えるシングルアームパンタグラフであって、ヒンジ部は、下枠の他端部を構成する、車幅方向に離間配置された一対のヒンジ板と、一方のヒンジ板の車幅方向外側面に固定されるピン頭を有し、両ヒンジ板間に挿入される上枠の一端部に設けられる筒状部を車幅方向に貫通するピンと、ピン頭と反対側に位置する、ピンの末端側の部分が貫通する第1開孔が開設され、他方のヒンジ板の車幅方向外側面に固定される蓋と、上枠の筒状部で各ヒンジ板側に位置する部分に内嵌してピンを軸支する一対のベアリングと、他方のヒンジ板側のベアリングの車幅方向外側に隣接して上枠の筒状部に内嵌するベアリング押えとを備え、蓋の第1開孔から車幅方向外方に突出するピンの末端側の部分が雄ねじで構成され、この雄ねじに雌ねじ部材が車幅方向外方から螺合されるものにおいて、他方のヒンジ板に第2開孔が開設され、この第2開孔に車幅方向に内挿される単数又は複数の皿ばねから構成される皿ばねユニットが設けられ、この皿ばねユニットは、ベアリング押えの車幅方向外側面と蓋の車幅方向内側面とに接触し、雄ねじへの雌ねじ部材の螺合によって、皿ばねユニットは車幅方向内方に圧縮され、他方のヒンジ板側のベアリングに車幅方向内方に向かうアキシャル荷重が作用することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、雄ねじへの雌ねじ部材の螺合によって、皿ばねユニットが、車幅方向内方に圧縮されるため、他方のヒンジ板側のベアリングに車幅方向内方に向かうアキシャル荷重が作用し、このアキシャル荷重が上枠の一端部に伝達する。アキシャル荷重の大きさは、皿ばねユニットを構成する皿ばねの種類及び枚数を適切に選択することによって、他方のヒンジ板側のベアリングの性能等に応じたものに調整することができる。このため、従来のシングルアームパンタグラフのように、蓋と蓋が固定される他方のヒンジ板との間に遊びを設けたり、遊びを隙間調整部材で消失させたりする必要がない。したがって、枠組の車幅方向の剛性アップを効率的に行うことができると共に、ヒンジ部をより堅牢な構造で構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のシングルアームパンタグラフの一実施形態を示す斜視図。
図2図1に示すシングルアームパンタグラフのヒンジ部を一部省略して示す拡大斜視図。
図3図1に示すヒンジ部のA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2を参照して、本実施形態のシングルアームパンタグラフ1について説明する。シングルアームパンタグラフ1は、図外の鉄道車両の屋根上に搭載される台枠2と、一端部41aが、台枠2に設けられる主軸3に揺動自在に連結される下枠41及び一端部42aが、下枠41の他端部41bにヒンジ部5を介して揺動自在に連結され、他端部42bで集電舟6を支持する上枠42を有する一組の枠組4と、枠組4を集電舟6が上昇するように付勢する、図外の主ばねとを備えている。
【0012】
具体的には、台枠2は、図外の碍子を介して鉄道車両の屋根上に搭載される。台枠2には、車幅方向wに離間配置された一対のブラケット7,7が立設され、両ブラケット7,7によって車幅方向wに延びる主軸3が軸支されている。また、上枠42の一端部42aには、下枠41の他端部41bに連結される部分から鉄道車両の屋根側に傾斜して延び、車幅方向wに離間配置された一対の連結板42c,42cが設けられている。両連結板42c,42cの最も鉄道車両の屋根側に近い部分には、車幅方向wに延びるシャフト42dが設けられている。そして、シャフト42dと台枠2の両方に釣合いリンク8が軸支されている。釣合いリンク8は、下枠41の揺動に連動させて上枠42を揺動させる部材である。
【0013】
さらに、集電舟6は、車幅方向wに延び、車長方向lに離間配置された、図外のトロリ線に摺接して集電可能な一対の舟体61,61と、両舟体61,61を連結して支持する舟支え62とを備えている。舟支え62は、シャフト42dとは異なる、図外のシャフトを介して上枠42の他端部42bに軸支されている。舟支え62と下枠41の他端部41bとの間には、平衡リンク9がボールジョイント等を介して連結されている。平衡リンク9は、集電舟6が、一定の姿勢を保つようにする部材である。そして、台枠2には、集電舟6が下降するように枠組4を動作させるアクチュエータ10が設けられている。
【0014】
図3も参照して、ヒンジ部5は、下枠41の他端部41bを構成する、車幅方向wに離間配置された一対のヒンジ板11,11と、一方のヒンジ板11の車幅方向wの外側面にねじ止め等によって固定されるピン頭121を有し、両ヒンジ板11,11間に挿入される上枠42の一端部42aに設けられる筒状部42eを車幅方向wに貫通するピン12とを備えている。また、ヒンジ部5は、ピン頭121と反対側に位置する、ピン12の末端側の部分が貫通する第1開孔131が開設され、他方のヒンジ板11の車幅方向wの外側面にねじ止め等によって固定される蓋13と、上枠42の筒状部42eで各ヒンジ板11,11側に位置する部分に内嵌してピン12を軸支する一対のベアリング14,14と、他方のヒンジ板11側のベアリング14の車幅方向wの外側に隣接して上枠42の筒状部42eに内嵌するベアリング押え15とを備えている。そして、ヒンジ部5では、蓋13の第1開孔131から車幅方向wの外方に突出するピン12の末端側の部分が雄ねじ122で構成され、雄ねじ122にナット、ワッシャ等を有する雌ねじ部材16が車幅方向wの外方から螺合される。雄ねじ122への雌ねじ部材16の螺合によって、上枠42の一端部42aが、下枠41の他端部41bにヒンジ部5を介して揺動自在に連結される。
【0015】
なお、ヒンジ部5には、ベアリング押え15と同様に機能するベアリング押え17が一方のヒンジ板11側にも設けられている。ベアリング押え17は、ピン12のピン頭121の車幅方向wの内側面に一体に設けられ、車幅方向wの内方の端部が上枠42の筒状部42eに内嵌している。
【0016】
さらに、ヒンジ部5には、他方のヒンジ板11に第2開孔111が開設され、第2開孔111に車幅方向wに並んで内挿される3枚の皿ばね181から構成される皿ばねユニット18が設けられている。皿ばねユニット18は、ベアリング押え15の車幅方向wの外側面と蓋13の車幅方向wの内側面とに接触している。このため、ヒンジ部5では、雄ねじ122への雌ねじ部材16の螺合によって、皿ばねユニット18は車幅方向wの内方に圧縮され、他方のヒンジ板11側のベアリング14に車幅方向wの内方に向かうアキシャル荷重が作用する。他方のヒンジ板11側のベアリング14に作用するアキシャル荷重は、ベアリング14を介して上枠42の筒状部42eに伝達され、筒状部42eが、車幅方向wの内方に押圧される。
【0017】
このようなヒンジ部5によって、従来のシングルアームパンタグラフのように、蓋13と蓋13が固定される他方のヒンジ板11との間に遊びを設けたり、遊びをシム等の隙間調整部材で消失させたりする必要がない。したがって、枠組4の車幅方向wの剛性アップを効率的に行うことができると共に、ヒンジ部5をより堅牢な構造で構築することができる。アキシャル荷重の大きさは、皿ばねユニット18に使用する皿ばね181の種類及び枚数を適切に選択することによって、他方のヒンジ板11側のベアリング14の性能等に応じて調整することができる。したがって、枠組4の車幅方向wの剛性アップを効率的に行うことができると共に、ヒンジ部5をより堅牢な構造で構築することができる。
【0018】
また、シングルアームパンタグラフ1の皿ばねユニット18を構成する皿ばね181は、1枚以上あればよく、特に3枚に限定されない。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベアリング14,14の種類、ベアリング押え15,17の構成、構造、上枠42の筒状部42eへの取付け形態等の細部については様々な態様が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1…シングルアームパンタグラフ、2…台枠、3…主軸、4…枠組、41…下枠、41a…一端部、41b…他端部、42…上枠、42a…一端部、42b…他端部、42e…筒状部、5…ヒンジ部、6…集電舟、11,11…ヒンジ板、111…第2開孔、12…ピン、121…ピン頭、122…雄ねじ、13…蓋、131…第1開孔、14,14…ベアリング、15…ベアリング押え、16…雌ねじ部材、18…皿ばねユニット、181…皿ばね、w…車幅方向。
図1
図2
図3