(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106064
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】浴室除菌システム
(51)【国際特許分類】
A47K 4/00 20060101AFI20240731BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20240731BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20240731BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A47K4/00
A61L2/20
A61L2/24
A61L9/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010145
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浦田 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】音羽 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀祐
【テーマコード(参考)】
2D132
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
2D132GA00
2D132GA02
4C058AA23
4C058AA30
4C058BB07
4C058BB09
4C058DD13
4C058JJ12
4C058JJ16
4C058JJ22
4C180AA07
4C180AA19
4C180CA01
4C180EA17X
4C180EA30X
4C180EA39X
4C180EA40X
4C180EA56X
4C180LL06
4C180MM10
(57)【要約】
【課題】浴室全体に対して効果的に除菌作用を与えることができる浴室除菌システムを提供する。
【解決手段】
上記の目的を達成するために、除菌水を生成する除菌水生成部と、除菌水を吐水する除菌水吐水部を備えた除菌水装置と、上記除菌水吐水部から吐水された除菌水の有効成分を気化させる気化手段と、上記除菌水装置および上記気化手段を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記除菌水吐水部から除菌水を上記浴室の洗い場床に吐水させ、上記気化手段を上記除菌水吐水部から上記洗い場床に吐水された除菌水の有効成分を気化させるように動作させる制御を実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室を除菌する浴室除菌システムであって、
除菌水を生成する除菌水生成部と、除菌水を吐水する除菌水吐水部を備えた除菌水装置と、
上記除菌水吐水部から吐水された除菌水の有効成分を気化させる気化手段と、
上記除菌水装置および上記気化手段を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、上記除菌水吐水部から除菌水を上記浴室の洗い場床に吐水させ、上記気化手段を上記除菌水吐水部から上記洗い場床に吐水された除菌水の有効成分を気化させるように動作させる制御を実施する、浴室除菌システム。
【請求項2】
上記洗い場床で作用する除菌水の有効成分量は、上記気化手段により気化される除菌水の有効成分量より、多いように構成された、請求項1に記載の浴室除菌システム。
【請求項3】
上記制御部は、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効成分の浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で5000μg/L以下の範囲となるように上記除菌水装置及び上記気化手段を制御する、請求項1に記載の浴室除菌システム。
【請求項4】
上記浴室内の空間蓄積量は、1時間当たり8.5μg/L以上で5000μg/L以下ある、請求項3に記載の浴室除菌システム。
【請求項5】
上記浴室内の空間蓄積量は、1時間当たり2μg/L以上で2500μg/L以下である、請求項3に記載の浴室除菌システム。
【請求項6】
上記浴室内の空間蓄積量は、1時間当たり8.5μg/L以上で2500μg/L以下である、請求項3に記載の浴室除菌システム。
【請求項7】
更に、浴室内を換気する換気装置を備え、上記制御部が、上記換気装置により浴室内を換気した後に、上記除菌水装置の除菌水吐水部から除菌水が吐水されるように、上記換気装置及び上記除菌水装置を制御する、請求項1に記載の浴室除菌システム。
【請求項8】
上記除菌水装置の除菌水吐水部は、除菌水を間欠的に吐水する、請求項1に記載の浴室除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室を除菌する浴室除菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室内の菌カビ汚れに対する使用者の不満は大きい。これを抑制するため、例えば、特許文献1に記載されているように、浴室の天井に取り付けられた電解水散布装置から浴室内にミスト状の電解水(除菌水)を散水して浴室内を除菌し、その後、換気するようにした浴室換気扇が知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、浴室の天井に取り付けられた電解水噴霧ユニットから電解水を噴霧して浴室の床面で増殖する酵母菌等に起因するぬめり等の汚れの発生を抑制し、さらに、その後に乾燥運転と送風運転を行って、浴室内での酵母菌等の増殖を効果的に抑制するようにした浴室暖房換気扇が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-292183号公報
【特許文献2】特開2019-165831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術である特許文献1及び2に記載された装置においては、電解水(除菌水)を浴室の天井から散水しているので、電解水は見え掛かり部分に降り積もり、除菌の対象物の裏面や隙間に作用させることはできない。
そこで、従来技術による装置においては、電解水を散水後に、換気扇により浴室室内の空気を循環させて電解水を作用させることが考えられるが、散水された電解水のミストの粒径が細かいと循環中に電解水が気化して電解水中の有効成分の濃度が減衰し、除菌の対象物の裏面や隙間に到達するころには、除菌効果が無くなってしまう。さらに、電解水のミストが浴室内の様々の部位に付着し、それにより水垢が発生し、外観が損なわれるという問題が発生する。
【0006】
本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、浴室全体に対して効果的に除菌作用を与えることができる浴室除菌システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、浴室を除菌する浴室除菌システムであって、除菌水を生成する除菌水生成部と、除菌水を吐水する除菌水吐水部を備えた除菌水装置と、除菌水吐水部から吐水された除菌水の有効成分を気化させる気化手段と、除菌水装置および気化手段を制御する制御部と、を備え、制御部は、除菌水吐水部から除菌水を浴室の洗い場床に吐水させ、気化手段を除菌水吐水部から洗い場床に吐水された除菌水の有効成分を気化させるように動作させる制御を実施することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、浴室において一番汚れが溜まり菌や黴が繁殖しやすい洗い場床に直接除菌水を吐出させ、そして洗い場床に吐水された除菌水の有効成分を気化させるように気化手段を動作させることで、浴室の天井や壁、そして浴室に設置された浴室機器(洗面カウンターなど)に対しても除菌効果を与えることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、洗い場床で作用する除菌水の有効成分量は、気化手段により気化される除菌水の有効成分量より、多いように構成される。
このように構成された本発明においては、浴室において一番汚れが溜まり菌や黴が繁殖しやすい洗い場床にしっかりと除菌水を作用させつつ、浴室の天井や壁、そして浴室に設置された浴室機器(洗面カウンターなど)に対しても除菌効果を与えることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、制御部は、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効性分の浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で5000μg/L以下の範囲となるように除菌水装置及び上記気化手段を制御する。
このように構成された本発明においては、除菌水装置により除菌水を浴室内に吐水し、この吐水された除菌水の有効成分を気化手段により気化させているので、直接除菌水を付着させることができない部位(隅部、継ぎ目、カウンター裏面、天井、壁の上部、収納棚等)まで除菌効果を得ることができる。さらに、本発明においては、制御部により除菌水装置及び気化手段を制御して、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効性分の浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で5000μg/L以下の範囲となるようにしているので、浴室内を高い除菌効果を発揮することができ、さらに、浴室に使用されている部材の劣化を抑制することができるので、長期間に渡り、除菌効果を奏することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、浴室内の空間蓄積量は、1時間当たり8.5μg/L以上で5000μg/L以下ある。
このように構成された本発明においては、浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり8.5μg/L以上で5000μg/L以下であるので、より高い除菌効果を発揮すると共に浴室に使用されている部品の劣化を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、浴室内の空間蓄積量は、1時間当たり2μg/L以上で2500μg/L以下である。
このように構成された本発明においては、浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で5000μg/L以下であるので、高い除菌効果を発揮すると共に浴室に使用されている部品の劣化をより長期間にわたり抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、浴室内の空間蓄積量は、1時間当たり8.5μg/L以上で2500μg/L以下である。
このように構成された本発明においては、浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり8.5μg/L以上で2500μg/L以下であるので、より高い除菌効果を発揮すると共に浴室に使用されている部品の劣化をより長期間にわたり抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、更に、浴室内を換気する換気装置を備え、制御部が、換気装置により浴室内を換気した後に、除菌水装置の除菌水吐水部から除菌水が吐水されるように、換気装置及び除菌水装置を制御する。
このように構成された本発明においては、制御部により換気装置及び除菌水装置を制御して、換気装置により浴室内の余分な湿気を排出してから除菌水を吐水するようにしたので、所望の除菌水の空間蓄積量を形成し易くなる。
【0014】
本発明において、好ましくは、除菌水装置の除菌水吐水部は、除菌水を間欠的に吐水する。
除菌水を噴霧し続けていると除菌水噴霧領域付近の除菌水密度(定義:「除菌水濃度」または「空気中に溶け込める除菌水量」)が飽和してしまう。それによって、除菌水の気化効率が落ちてしまう。これを解決するために、本発明においては、除菌水を間欠的に吐水し、すなわち除菌水OFF時間(除菌水を噴霧しない時間)を定期的に設け、この除菌水OFF時間により除菌水噴霧領域付近の飽和した又は飽和状態に近い空気を入れ替えて、除菌水の気化効率が低下することを抑制できる。この結果、本発明によれば、不必要に多量の除菌水を噴霧することなく、除菌水を浴室内に行き渡らせることができる。これに加えて、除菌水を間欠的に吐水することにより、除菌水を噴霧し続けることと比べて除菌水の節約ができ、さらに、除菌水を生成する装置内にある電極摩耗の抑制や消費電力の抑制も可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の浴室除菌システムによれば、浴室全体に対して効果的に除菌作用を与えることができる浴室除菌システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による浴室除菌システムが使用される浴室を示す斜視図である。
【
図2】
図1のカウンター近傍を拡大した斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿って見た吐水装置の部分断面図である。
【
図4】
図4(a)は吐水装置のノズル部を示す正面図であり、
図4(b)はA-A線に沿って見た断面図である。
【
図5】吐水装置のノズル部の除菌水用ノズル開口から除菌水を散水している様子を示す斜視図である。
【
図6】吐水装置のノズル部の滞留水用ノズル開口から水道水を散水している様子を示す斜視図である。
【
図7】
図7は本発明の実施形態による浴室除菌システムの浴室乾燥装置を示す断面図であり、
図7(a)は「換気ダンパー開の状態」を示し、
図7(b)は「換気ダンパー閉の状態」を示している。
【
図8】本発明の実施形態による浴室除菌システムによる動作を示すタイムチャートである。
【
図9】本発明の実施形態による浴室除菌システムによる動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態による浴室除菌システムが実行する「除菌水吐水動作」を説明する構成図及び表である。
【
図11】本発明の実施形態による浴室除菌システムの原理の一部を説明するための線図である。
【
図12】浴室内の除菌水の有効成分の空間蓄積量の測定方法の一例を示す概念図である。
【
図13】空間蓄積量の下限値における菌・カビへの効果を示す説明図(表)である。
【
図14】空間蓄積量の下限値における菌・カビ汚れの試験結果を示す写真である。
【
図15】空間蓄積量の上限値における部材への影響を示す説明図(表)である。
【
図16】空間蓄積量の上限値における部材への影響を示す試験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、
図1及び
図2により、本発明の実施形態による浴室除菌システムが使用される浴室について説明する。
図1は本発明の実施形態による浴室除菌システムが使用される浴室を示す斜視図であり、
図2は
図1のカウンター近傍を拡大した斜視図である。
図1に示すように、浴室1は、ほぼ直方体の4つの側面を形成する第1壁2、第2壁4、第3壁6及び第4壁8を備えている。第2壁4の側には浴槽10が設けられ、第4壁8と浴槽10の間の下方には洗い場床12が設けられている。この洗い場床12の浴槽10の近傍には排水口14が設けられ、この排水口14から湯水が外部に排出されるようになっている。
【0018】
第3壁6の側の一部にはカウンター16が設けられている。第3壁6のカウンター16の上方には、鏡、給水栓、シャワーホースなどが設けられている。カウンター16の下面側には、本実施形態による浴室除菌システム20の一部を構成する除菌水及び水道水(水)を吐水するための吐水装置22が設けられている。
【0019】
上述した第1壁2乃至第4壁8の上端には天井24が取り付けられ、この天井24には、浴室除菌システム20の一部を構成する浴室1内の空気を換気して乾燥させるための浴室乾燥装置26が設けられている。この浴室乾燥装置26は、後述するように、散水された除菌水を気化させるための装置であり、「気化手段」に相当する。
なお、この「気化手段」として、他に、熱や風を除菌水に与えて気化させる手段や装置、減圧させて気化させる手段、除菌水に超音波を当てて気化させる手段も使用可能である。
【0020】
さらに、浴室1の外部には、浴室除菌システム20を操作するための操作パネル28と、上述した吐水装置22及び浴室乾燥装置26の動作を操作するための制御装置30が設けられている。
【0021】
本実施形態の変形例として、操作パネル28は、スマートフォンやリモコン等の電子機器の画面上に表示される操作画面として形成されてもよい。すなわち、操作パネル28は、このような操作画面上の操作ボタンにおいて使用者からの操作入力を受け付ける操作部を形成していてもよい。このとき、スマートフォンやリモコン等の電子機器の操作パネル28は、制御部30とインターネットや赤外線通信等の無線通信により電気的に接続される。また、他の変形例として、操作パネル28は、音声入力により使用者からの操作入力を受け付ける音声操作部や、使用者の手指等のジェスチャー操作入力により使用者からの操作入力を受け付ける(例えば使用者が手指等を所定の空間に一定時間かざすことにより使用者の手指等を検出して操作入力として検出し操作入力を受け付ける等)ジェスチャー操作部であってもよい。
【0022】
図2に示すように、カウンター16は、天板16aと下カバー16bとを有しており、洗い場床12から上方に離間して設けられている。
【0023】
次に、
図3乃至
図6により、吐水装置22について説明する。
図3は
図1のIII-III線に沿って見た吐水装置の部分断面図であり、
図4(a)は吐水装置のノズル部を示す正面図であり、
図4(b)はA-A線に沿って見た断面図であり、
図5は吐水装置のノズル部の除菌水用ノズル開口から除菌水を散水している様子を示す斜視図であり、
図6は吐水装置のノズル部の滞留水用ノズル開口から水道水を散水している様子を示す斜視図である。
【0024】
図3に示すように、カウンター16の内部(天板16aと下カバー16bとの間)には、吐水装置22が設けられ、この吐水装置22は、カウンター16の下カバー16bから下方に突出するノズル部32を備えている。
図2にも示すように、ノズル部32は、カウンター16の下部に、洗い場床12から離間した位置に配置され、さらに、ノズル部32は、カウンター16の横方向における中央付近、すなわち、洗い場床12の横方向における中央付近に設けられている。
【0025】
図3に戻り、吐水装置22は、第1ストレーナ36と、第1電磁弁38と、第2電磁弁40と、調圧弁42と、バキュームブレーカ44と、逆止弁46と、除菌水生成部48と、第2ストレーナ50と、が設けられている。第1ストレーナ36は、外部の給水管(図示せず)と接続されており、第1ストレーナ36の下流において、水道水の流路は2つに分岐している。なお、バキュームブレーカ44は設けなくても良い。
【0026】
第1ストレーナ36の下流側の一方の流路51は、第1電磁弁38を介して、水道水を直接的にノズル部32に供給するようになっている。第1電磁弁38を開くことにより水道水がノズル部32に供給されるようになっている。この一方の流路51に設けられた第1電磁弁38及びノズル部32が、洗い場床12に水道水を散水して、洗い場床12に残留水を形成するので「残留水形成手段」に相当する。
【0027】
第1ストレーナ36の下流側の他方の流路52には、上流側から順に、第2電磁弁40、調圧弁42、バキュームブレーカ44、逆止弁46、除菌水生成部48、第2ストレーナ50が接続されており、除菌水をノズル部32に供給するようになっている。
【0028】
第1電磁弁38及び第2電磁弁40は、それぞれ、水道水の上述した流路51、52を開く動作、及び、水道水の流路51、52を閉じる動作、を行うようになっている。
【0029】
調圧弁42は、供給される水道水の圧力を制御するようになっている。これにより、詳細は後述する除菌水生成部48に供給される水道水の流量を所望の値に調整することができる。除菌水生成部48に供給される水道水の流量を調整することにより、ノズル部32に供給される除菌水の流量が調整される。なお、調圧弁42の代わりに、あるいは、調圧弁42に加えて、第2電磁弁40により水道水の流量を調整してもよい。
【0030】
除菌水生成部48は、陽極と陰極とを有する電解室(電解槽)である。除菌水生成部48は、陽極と陰極との間に電圧を印加して、それら電極の間を流れる水道水を電気分解することにより、次亜塩素酸を含む除菌水を生成するようになっている。水道水は、塩化物イオンを含んでいるため、その塩化物イオンを電気分解することによって、次亜塩素酸が生成される。ここで、除菌水生成部48は「除菌水生成部」に相当し、ノズル部32が「除菌水吐水部」に相当する。
【0031】
第1電磁弁38、第2電磁弁40、調圧弁42及び除菌水生成部48は、制御装置30により適宜に制御されるようになっている。これにより、ノズル部32からの水道水の散水と、ノズル部32からの殺菌水の散水と、を互いに独立に制御できるようになっている。
【0032】
具体的には、第1電磁弁38及び第2電磁弁40は、制御装置30からの信号に基づいて、水道水の流路51、52の開閉を行う。これにより、下流側に供給される水道水の流量が制御される。また、除菌水生成部48は、制御装置30からの信号に基づいて、電解室のON/OFF等を切り替える。このようにして制御装置30は、除菌水における各種構成成分の濃度、吐水される水道水及び除菌水の瞬間流量(単位時間当たりの流量)、吐水される除菌水の総水量、を制御することができる。
【0033】
上述した除菌水は、菌やカビ、酵母を減少させる機能を有する機能水であり、例えば、次亜塩素酸を含む水である。水道水は、塩化物イオンを含んでいるため、その塩化物イオンを電気分解することによって、次亜塩素酸が生成される。その結果、電気分解された水は、次亜塩素酸(HOCl)を含む液に変化する。この次亜塩素酸が気化して除菌水ガス(Cl2O)となる。この一酸化二塩素が、除菌水ガスの有効成分である。
除菌水は、金属イオン水(例えば、銀イオン、銅イオンまたは亜鉛イオンなどの金属イオンを含む水)またはオゾンを含む水であってもよい。例えば、水道水が電気分解される際、陰極においては酸(H+)が消費され、陰極の近傍ではpHが上昇する。すなわち、陰極の近傍では、アルカリ水が生成される。一方、陽極においてはアルカリ(OH-)が消費され、陽極の近傍ではpHが下降する。すなわち、陽極の近傍では、酸性水が生成される。除菌水生成部48における流量を変化させることにより、除菌水に含まれる成分の濃度を制御することができる。この場合、銀イオンや銅イオンまたは亜鉛イオンなどの金属イオン、もしくは、オゾン(O3)が、気化された有効成分である。
なお、上述した除菌水生成部48では、電気分解して除菌水を生成しているが、これに限定されことなく、例えば、除菌剤を水道水に溶解させて除菌水を生成するようにしてもよい。
【0034】
本実施形態において、気化した除菌水の有効成分における「有効」とは、例えば対象物に付着している菌やカビ、酵母の減菌率が10%以上であることを指す。詳述すると、対象物に付着していた菌やカビ、酵母の量に対して、気化した除菌水によって、該対象物に付着している菌やカビ、酵母の量の割合が、90%以下になった場合、気化した除菌水が有効であったと定義する。
【0035】
本実施形態において、詳細は後述するが、ノズル部32は、電動モータ53によって回転駆動されるようになっている。電動モータ53は、例えばステッピングモータからなる。
電動モータ53は、制御装置30によって制御されるようになっている。これにより、ノズル部32は、制御装置30からの信号に基づいて電動モータ53が制御されることにより、回転角度や回転速度が変化するようになっている(
図10参照)。また、制御装置30には、除菌作業を開始するためのスイッチを備えた操作パネル28が接続されていて、浴室利用者が除菌作業以外についても適宜の操作を行うことができるようになっている。
【0036】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ノズル部32は、第1通水部(滞留水通水部)54と、第2通水部(除菌水通水部)56と、滞留水通水部54に形成された滞留水用ノズル開口58と、除菌水通水部56に形成された除菌水用ノズル開口60と、を有している。
【0037】
第1電磁弁38を通過した水道水は、第1貯水部54内に供給され、第1ノズル開口58から吐水されるようになっている。除菌水生成部48によって生成された除菌水は、第2貯水部56内に供給され、第2ノズル開口60から吐水されるようになっている。
【0038】
図5及び
図6に示すように、滞留水用ノズル開口58から水道水が垂直方向に広がるように吐水され、除菌水用ノズル開口60から除菌水が垂直方向に広がるように吐水される。さらに、ノズル部32が電動モータ53により軸線を中心に回転することにより、水平方向の広い範囲に水道水及び除菌水を吐水することができるようになっている。
【0039】
次に、
図7により、浴室1の天井24に設けられた浴室乾燥装置26について説明する。
図7は本発明の実施形態による浴室除菌システムの浴室乾燥装置を示す断面図であり、
図7(a)は「換気ダンパー開の状態」を示し、
図7(b)は「換気ダンパー閉の状態」を示している。
【0040】
図7に示すように、浴室乾燥装置26は、ハウジング70を備え、このハウジング70の下部は開口72を介して浴室1の内部に連通している。ハウジング70内には、ファン74が設けられ、電動モータにより回転し、このファン74の回転により、浴室1内の空気を吸引するようになっている。さらに、ハウジング70内のファン74の下流側には、排気ダンパー76とヒーター78が設けられている。さらに、排気ダンパ76の下流側には、排出口80が設けられている。
【0041】
図7(a)に示すように、浴室乾燥装置26により浴室1内を換気する場合には、排気ダンパー76が開操作され、ファン74により吸引された浴室1内の空気が排出口80から外部に排出されるようになっている。
【0042】
次に、
図7(b)に示すように、先ず、入浴前及び入浴中に浴室1内を暖房する場合には、排気ダンパー76が閉操作され、ファン74により吸引された浴室1内の空気はヒーターヒーター78により温められ、この温められた空気が開口72から浴室1内に戻るようになっている。このようにして、浴室1内の空気が浴室乾燥装置26との間で循環され、浴室1内の空気が所望の温度(例えば20℃)に維持されるようになっている。
【0043】
本実施形態による浴室除菌システム20により「除菌水吐水」を行う場合も、
図7(b)に示すように、排気ダンパー76が閉操作され、ファン74により吸引された浴室1内の空気はヒーター78により温められ、この温められた空気が開口72から浴室1内に戻り、浴室1内の空気が浴室乾燥装置26との間で循環されるようになっている。このとき、浴室1内は換気されていないので、浴室1内の空気は浴室1内に閉じ込められている。
【0044】
次に、
図8及び
図9により、本実施形態による浴室除菌システム20による実行される「予洗い」及び「除菌水吐水」について説明する。
図8は本発明の実施形態による浴室除菌システムによる動作を示すタイムチャートであり、
図9は本発明の実施形態による浴室除菌システムによる動作を示すフローチャートである。
【0045】
先ず、
図8に示すように、運転開始から12分間の間、浴室乾燥装置26は浴室1内の空気の換気を行い(
図7(a)参照)、この状態で、吐水装置22は、浴室1の洗い場床12に向けて水を散水して「予洗い」を実行する。
【0046】
次に、開始から12分経過したら、34分の間、浴室乾燥装置26は、排気ダンパー76を閉じて換気を停止し(
図7(b)参照)、その状態でヒーター78をONとして浴室1内の空気を温め、温まった空気を循環させる。
吐水装置22は、開始から12分経過したら、4分の間、吐水装置22による水の吐水を停止して、待機する。その後、30分の間、吐水装置22は、後述する
図10に示すように、間欠的に「除菌水吐水」を行い、その後、「除菌水吐水」を終了する。
【0047】
吐水装置22が「除菌水吐水」を行っているとき、浴室乾燥装置26は、排気ダンパー76を閉じて換気を停止し、ヒーター78により浴室1内の空気を温め、温まった空気を循環させるようにしているので、この循環空気により、吐水された除菌水は揮発して気化する。暖まった空気の循環は、除菌水の気化に有効であるが、ヒーター78をOFFにして、単に送風させるだけでも、除菌水を気化させることができる。
【0048】
浴室乾燥装置26は、その後、26分の間、排気ダンパー76を閉じて換気を停止した状態を継続し、ヒーター78をOFFにして浴室1内の空気を循環させる。その後、24時間の間、浴槽乾燥装置26は、排気ダンパー76を開いて浴室1内の空気の換気を行い(
図7(a)参照)、その後、換気を終了する。
【0049】
次に、
図9により、本実施形態による浴室除菌システムにより実行される制御フローを説明する。
図9に示される制御フローと、上述した
図8による説明とは、基本動作は同じである。なお、
図9において、「S」は各ステップを示す。
【0050】
図9に示すように、S1において、操作パネル26に設けられた浴室除菌システムの運転を開始するためのスイッチをONとする。S2に進み、浴槽乾燥装置(乾燥装置)26による換気運転を開始し、同時に、吐水装置22による「予洗い」運転も開始する。
次に、S3に進み、12分経過したか否かを判定する。12分経過までは、S2の運転を継続する。
【0051】
この吐水装置22による「予洗い」運転により、洗い場床12に、必要な量の残留水を形成することができ、この残留水に後述する気化した除菌水の有効成分が溶解して、さらなる除菌効果を得ることができる。
【0052】
S3において、12分経過したと判定した場合には、S4に進み、乾燥装置26による換気運転は停止し(排気ダンパーが閉じられる)、且つ、吐水装置22による「予洗い」運転も停止する。
【0053】
次に、S5に進み、吐水装置22が「予洗い」運転を停止して4分待機したか否かを判定する。4分待機するまでは、S6に進み、浴室内温度が20℃以上か否かを判定し、20℃以上でない場合には、S7に進み、乾燥装置26のヒーター78をONとし、浴室内の空気を暖めて循環させる循環運転を行う。このS7における動作は、浴室室内の温度が20℃以上でない場合には、S4において乾燥装置の排気停止が行われた後直ぐに実行される。さらに、S6において、浴室内温度が20℃以上であると判定された場合には、S8に進み、乾燥装置は、排気ダンパーを閉じた状態で、空気を循環させる循環運転を行う。
【0054】
S5において、吐水装置22が4分待機したと判定された場合には、S9に進み、吐水装置22により「除菌水吐水」を開始する。この「除菌水吐水」については、この後、
図11により詳細に説明する。
【0055】
次に、S10に進み、吐水装置22が「除菌水吐水」が開始されてから30分経過したか否かを判定する。30分経過するまでは、S11に進み、浴室内温度が20℃以上か否かを判定し、20℃以上でない場合には、S12に進み、乾燥装置26は、排気ダンパー76を閉じた状態で、ヒーター78をONとし、浴室内の空気を暖めて循環させる循環運転を行う。このS12における動作は、浴室室内の温度が20℃以上でない場合には、S9において吐水装置22による除菌水吐水が行われた後直ぐに実行される。さらに、S11において、浴室内温度が20℃以上であると判定された場合には、S13に進み、乾燥装置26は、排気ダンパー76を閉じた状態で、空気を循環させる循環運転を行う。
【0056】
このようにして、吐水装置22から「除菌水吐水」された除菌水には、乾燥装置26により暖まった循環空気が作用し、これにより、除菌水が気化し、この気化した除菌水の有効成分が上述した洗い場床12上に残留した残留水に溶解して、除菌効果を向上させている。なお、浴室内の温度が20℃以上の場合には、ヒーター78をOFFしても、除菌水を容易に気化させることができる。
【0057】
S10において、吐水装置22による除菌水吐水が開始された後に30分経過したと判定された場合には、S14に進み、乾燥装置26のヒーター78をOFFして、排気ダンパー76が閉じた状態で循環運転を行う。このとき、吐水装置22による「除菌水吐水」を停止する。
【0058】
次に、S15に進み、S14にて乾燥装置26のヒーター78をOFFした後に26分経過したか否かを判定する。26分経過していれば、S16に進み、乾燥装置26の排気ダンパー76を閉じた状態での循環運転を停止する。次に、S17に進み、乾燥装置26において、排気ダンパー76を開いた状態で、換気運転を24時間継続する。これにより、本実施形態による浴室除菌システムによる浴室の除菌動作は終了する。
【0059】
次に、
図10により吐水装置22により実行される「除菌水吐水動作」について説明する。
図10は本発明の実施形態による浴室除菌システムが実行する「除菌水吐水動作」を説明する構成図及び表である。
図10に示すように、吐水装置22のノズル部32の除菌水用ノズル開口60から、浴室1の洗い場床12に向けて、除菌水が吐水(散水)される。このとき、ノズル部32は回転することができるので、順番に、動作1→動作2→動作3→動作4→動作5→動作6→動作7を実行する。動作7では、ノズル部32は停止し、除菌水の吐水は行わない。また、除菌水の吐水範囲は、25度から335度の範囲である。また、ノズル部32が回転する角速度は、洗い場床12の中央領域(動作2、5)は遅く、両側領域(動作1、3、4、6)では早くしており、洗い場床12の中央領域になるべく多くの量の除菌水が散水されるようになっている。さらに、動作1~7までの動作は約2.5分間行われ、この吐水装置22の間欠的な吐水動作が12周に亘って行われるので、合計約30分間、除菌水吐水が行われる。なお、洗い場床12には、例えば最低濃度が0.5ppmで、0.5L以上の除菌水が散布される。
【0060】
次に、
図11を参酌して、本実施形態による浴室除菌システムの基本原理について説明する。
図11は本発明の実施形態による浴室除菌システムの原理の一部を説明するための線図である。
図11に示すように、従来は、塩素濃度Aの除菌水がノズルから散水され、除菌水が除菌対象の到達点に達したときに、「効果を発揮する濃度B」であることが必要であり、さらに、除菌水の到達点における「着水量」と「作用時間」も重要であった。
【0061】
この従来技術においては、ノズルから散水された除菌水が到達点に到達するまでの間に、揮発(気化)し、それにより、除菌水の濃度が低下するという問題があった。そのため、到着点における「濃度×着水量×作用時間」を考慮して除菌水を散水する必要があり、広い範囲で浴室を除菌することが難しかった。
【0062】
ここで、除菌水がノズルから到達点に到達するまでの間に、揮発(気化)した除菌水の有効成分は何ら除菌作業に活用されていないので、本発明者らは、この揮発(気化)した除菌水の有効成分を除菌作業に活用することを見出した。即ち、揮発(気化)した除菌水を、上述した「予洗い」動作等により洗い場床や浴槽エプロン、カウンター裏、壁等に残った残水に、溶解させ、これにより、気化した除菌水の有効成分を活用し、広範囲な除菌を可能としたのである。
【0063】
次に、本発明者らは、浴室に除菌水を吐出する場合、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効成分の浴室1内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で5000μg/L以下の範囲となるように、制御装置30が、吐水装置22の除菌水生成部48により除菌水を吐水し且つ浴室乾燥装置26により除菌水を気化させれば、優れた除菌効果を得ることができ、さらに、浴室に使用されている部材の劣化を抑制することができることを見出した。
さらに、後述するように、本発明者らは、空間蓄積量の範囲は、1時間当たり8.5μg/L以上で5000μg/L以下の範囲でもよく、1時間当たり2μg/L以上で2500μg/L以下の範囲でもよく、さらに、1時間当たり8.5μg/L以上で2500μg/L以下の範囲でもよいことも見出した。
【0064】
次に、
図12により、上述した浴室内の除菌水の有効成分の空間蓄積量の測定方法の一例を説明する。
先ず、浴室内の除菌水の有効成分の空間蓄積量は、以下の測定方法を用いることにより、「気化された除菌水の有効成分」及び/又は「ミスト化された除菌水の有効成分」が水に溶解した溶解量として得ることができる。
気化した及び/又はミスト化した除菌水の有効成分の溶解量は、活性酸素検出用蛍光試薬(Aminophenyl Fluorescein)(通称APF液)を用いた蛍光強度測定法により測定できる。
測定方法としては、直径22mm、底面からの高さ7mmのシャーレ90に、「五稜化薬製APF試薬」を「富士フイルム和光純薬製0.1mol/Lりん酸緩衝液(pH7.4)」で5000倍に希釈した液(以下「APF液」という。)を1.5ml滴下する。
【0065】
次に、
図12に示すように、浴室除菌システム20を動作させる前に、浴室内に9個のシャーレ取付用治具92が4つの壁(第1壁2、第2壁4、第3壁6、第4壁8)に取り付け、これらのシャーレ取付用治具92に上述した9個のシャーレ90(90-1~90-9)を載置する。ここでは、第2壁4を基準面としている。
4個のシャーレ90-1~90-4は、天井24の四隅の天井24からの高さH1(=10~15cm)に位置する第2壁2、第2壁4、第3壁6、第4壁8に載置し、4個のシャーレ90-5~90-8は、各壁2、4、6、8における水平方向の及び垂直方向の中央に載置し、シャーレ90-9は、第4壁8における水平方向の中央及び洗い場床12からの高さH2(=5~10cm)に載置する。なお、該当箇所に、シャーレが載置できない場合は、そのシャーレは測定の対象外としても良い。
【0066】
次に、吐水装置22の除菌水生成部48及び浴室乾燥装置28を動作させ、1時間後に9個のシャーレ90を回収する。なお、除菌水がシャーレ90に直接混入した場合において、シャーレ90中のAPF液と除菌水の混合液がシャーレ90から溢れ出たら、このシャーレは測定の対象から外す。
【0067】
次に、回収したシャーレ90内の蛍光発光強度を分光蛍光光度計を用いて計測し、この計測結果から次亜塩素酸水の気化及び/又はミスト化した有効成分の溶解量を算出する。この測定方法では、浴室1内における上記9つの測定箇所の溶解量(μg)の平均値を、空間蓄積量(μg/L)として算出している。
ここで分光蛍光光度計として島津製作所製RF-5300PCを用い、励起波長490nm、蛍光波長515nmにて測定する。また、検量線は、既知の濃度の次亜塩素酸水を直接APF液に投入し、その発光強度から求める。
本実施形態においては、上述した測定方法を用いることにより、浴室内の気化またはミスト化した除菌水の有効成分の溶解量(即ち、空間蓄積量)を測定することができる。
【0068】
次に、
図13乃至
図16により、本発明者らが行った実験結果について、説明する。
図13は空間蓄積量の下限値における菌・カビへの効果を示す説明図(表)であり、
図14は空間蓄積量の下限値における菌・カビ汚れの試験結果を示す写真であり、
図15は空間蓄積量の上限値における部材への影響を示す説明図(表)であり、
図16は空間蓄積量の上限値における菌・カビ汚れの試験結果を示す写真である。
【0069】
先ず、
図13には、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効成分の浴室内の空間蓄積量(μg/L)と菌・カビへの効果との関係が示されている。
図13に示された実験結果から明らかなように、空間蓄積量が1μg/Lのときは、吐水された除菌水の量が少ないので、菌・カビへの効果はほとんど生じない。次に、空間蓄積量が2μg/Lから8.4μg/Lの範囲では、(△)で示すように、効果は大きくはないが、空間蓄積量が0及び1μg/Lの場合と比べ、差が生じている。
【0070】
さらに、空間蓄積量が8.5μg/L以上の範囲では、掃除が必要な汚れレベル以下となっている。このように、空間蓄積量が2μg/L以上の場合には、菌・カビ汚れに対して効果が生じており、さらに、空間蓄積量が8.5μg/L以上となった場合には、菌・カビ汚れに対してより大きな効果が生じていることが判明した。
【0071】
図14には、洗い場床(床)、カウンター裏、壁面における菌・カビ汚れの様子が写真により示されている。空間蓄積量が0μg/Lと1μg/Lの場合には、菌・カビ汚れに対して効果がなく、菌・カビ汚れが目立っている。空間蓄積量が2μg/Lから8.4μg/Lの範囲では、菌・カビ汚れに対して効果が生じている。さらに、空間蓄積量が8.5μg/L以上となった場合には、菌・カビ汚れに対してより大きな効果が生じていることが理解できる。
【0072】
次に、
図15には、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効成分の浴室内の空間蓄積量(μg/L)と浴室内で使用される部材への影響との関係が示されている。
図15に示された実験結果から明らかなように、空間蓄積量が2500μg/Lより少ない範囲では、部材への影響はない(即ち、劣化しない)。次に、空間蓄積量が2500μg/Lから5000μg/Lの範囲では、(△)で示すように、部材が徐々に劣化し始めているが、部材の機能に影響を及ぼすほどではない。さらに、空間蓄積量が5000μg/Lを超えた範囲では、部材は著しく劣化する。
【0073】
図15には、浴室内で使用される部品(部材)の例として、水栓カバー、皿木ねじ、ヒーター端子と、これらの各部材の劣化の状態が写真により示されている。空間蓄積量が、2500μg/Lから5000μg/Lになるにつれて部品の劣化が進行していることが理解できる。なお、上述したように、空間蓄積量が5000μg/Lを超えない限り、部品の機能に影響を及ぼすことはない。
【0074】
洗い場床12で作用する除菌水の有効成分量は、気化手段により気化される除菌水の有効成分量より、多いように構成される。このように構成された本発明においては、浴室1において一番汚れが溜まり菌や黴が繁殖しやすい洗い場床12にしっかりと除菌水を作用させつつ、浴室1の天井や壁、そして浴室に設置された浴室機器(洗面カウンターなど)に対しても除菌効果を与えることができる。
なお、例えば、「洗い場床12で作用する除菌水の有効成分量」とは、一連の動作で噴霧された除菌水の、一連の動作で最後に除菌水が噴霧されてから5分以内に測定した除菌成分の濃度(g/L)に除菌水の噴霧量(L)を乗算した値である。また、例えば、「気化手段により気化される除菌水の有効成分量」とは、ノズルから吐水される直前の除菌成分の濃度(g/L)に除菌水の噴霧量(L)を乗算した値から、上述した「洗い場床12で作用する除菌水の有効成分量」を除いた値である。すなわち、「洗い場床12で作用する除菌水の有効成分量は、気化手段により気化される除菌水の有効成分量より、多いように構成される」とは、一連の動作で最後に除菌水が噴霧されてから5分以内に測定した除菌成分の濃度(g/L)が、ノズルから吐水される直前の除菌成分の濃度(g/L)から一連の動作で最後に除菌水が噴霧されてから5分以内に測定した除菌成分の濃度(g/L)を除いた値より、大きくなるように構成されたことである。
【0075】
本実施形態による浴室除菌システム20においては、吐水装置22により除菌水を浴室内に吐水し、この吐水された除菌水の有効成分を浴室乾燥装置26により気化させているので、直接除菌水を付着させることができない部位(隅部、継ぎ目、カウンター裏面、天井、壁の上部、収納棚等)まで除菌効果を得ることができる。さらに、本実施形態においては、制御装置30により吐水装置22及び浴室乾燥装置26を制御して、気化された除菌水の有効成分及び/又はミスト化された除菌水の有効性分の浴室内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で5000μg/L以下の範囲となるようにしているので、浴室内を高い除菌効果を発揮することができ、さらに、浴室に使用されている部材の劣化を抑制することができるので、長期間に渡り、除菌効果を奏することができる。
【0076】
本実施形態による浴室除菌システム20においては、浴室1内の空間蓄積量が、1時間当たり8.5μg/L以上で5000μg/L以下であるので、より高い除菌効果を発揮すると共に浴室に使用されている部品の劣化を抑制することができる。
【0077】
本実施形態による浴室除菌システム20においては、浴室1内の空間蓄積量が、1時間当たり2μg/L以上で2500μg/L以下であるので、高い除菌効果を発揮すると共に浴室に使用されている部品の劣化をより長期間にわたり抑制することができる。
【0078】
本実施形態による浴室除菌システム20においては、浴室1内の空間蓄積量が、1時間当たり8.5μg/L以上で2500μg/L以下であるので、より高い除菌効果を発揮すると共に浴室に使用されている部品の劣化をより長期間にわたり抑制することができる。
【0079】
本実施形態による浴室除菌システム20においては、制御装置30により浴室乾燥装置26及び吐水装置22を制御して、浴室乾燥装置22により浴室1内の余分な湿気を排出してから除菌水を吐水するようにしたので、所望の除菌水の空間蓄積量を形成し易くなる。
【0080】
除菌水を噴霧し続けていると除菌水噴霧領域付近の除菌水密度(定義:「除菌水濃度」または「空気中に溶け込める除菌水量」)が飽和してしまう。それによって、除菌水の気化効率が落ちてしまう。これを解決するために、本実施形態による浴室除菌システム20においては、吐水装置22により、除菌水を間欠的に吐水し、すなわち除菌水OFF時間(除菌水を噴霧しない時間)を定期的に設け、この除菌水OFF時間により除菌水噴霧領域付近の飽和した又は飽和状態に近い空気を入れ替えて、除菌水の気化効率が低下することを抑制できる。この結果、本実施形態によれば、不必要に多量の除菌水を噴霧することなく、除菌水を浴室内に行き渡らせることができる。これに加えて、除菌水を間欠的に吐水することにより、除菌水を噴霧し続けることと比べて除菌水の節約ができ、さらに、除菌水を生成する装置内にある電極摩耗の抑制や消費電力の抑制も可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 浴室
10 浴槽
12 洗い場床
14 排水口
16 カウンター
20 浴室除菌システム
22 吐水装置
26 浴室乾燥装置
30 制御装置
32 ノズル部(除菌水吐水部)
48 除菌水生成部
51、52 流路
53 電動モータ
58 滞留水用ノズル開口
60 除菌水用ノズル開口
74 ファン
76 排気ダンパー
78 ヒーター
80 排出口
90 シャーレ