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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106083
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】染毛料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240731BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240731BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q5/06
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010178
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219934
【氏名又は名称】エア・ウォーター・リアライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB132
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC812
4C083AC862
4C083AD092
4C083AD152
4C083BB21
4C083BB26
4C083BB49
4C083BB60
4C083CC36
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE24
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】頭頂部における頭髪にボリュームアップ感を付与するとともに、既染部分と白髪部分との色調を自然にぼかすように着色して、頭髪全体に自然な色調を実現できる手触りのよいエアゾール式の染毛料の提供。
【解決手段】原液と噴射剤とからなるエアゾール式の染毛料であって、前記原液100重量部中に、粉体5~25重量部と、着色剤と、分散媒とを含有し、前記粉体が、タルクと、平均粒子径が2~10μmの球状粉体とを、タルク/球状粉体として重量比2/10~10/1で含有している染毛料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤とからなるエアゾール式の染毛料であって、
前記原液100重量部中に、粉体5~25重量部と、着色剤と、分散媒とを含有し、
前記粉体が、タルクと、平均粒子径が2~10μmの球状粉体とを、タルク/球状粉体として重量比2/10~10/1で含有していることを特徴とする染毛料。
【請求項2】
前記球状粉体が多孔質球状シリカである、請求項1に記載の染毛料。
【請求項3】
前記粉体と前記着色剤との重量比が、粉体/着色剤として15~35である、請求項1に記載の染毛料。
【請求項4】
前記原液100重量部中における、
前記タルクの含有量が2~20重量部であり、
前記球状粉体の含有量が0.5~10重量部であり、
前記着色剤の含有量が0.40~1.0重量部である、請求項1に記載の染毛料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既染部分と白髪部分との間の色調を自然にぼかすように着色し、頭髪全体として自然な色調を実現することができるエアゾール式の染毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪染めは染料を白髪にしっかりとしみ込ませて発色させる必要があるため、白髪を目立たなくするために手間がかかるという問題がある。対して、エアゾール製品の染毛料は、使用が簡便であり頭髪への負担が軽いことから、頭髪を一時的に着色する染毛料として好適であり、種々の製剤が提案されている。
例えば、特許文献1には、ごわつきがなく、耐水性、着色性、着色剤の分散性に優れ、液だれのしにくいエアゾール式染毛料組成物を提供することを目的として、(A)アクリル酸系皮膜形成剤(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上(C)着色剤および(D)エタノールを含有するエアゾール原液と、(E)噴射剤とからなるエアゾール型一時染毛料組成物が記載されている。
また、特許文献2には、噴霧粒の乾燥を速くすることにより、粒子の流動による付着当初の厚みの減少を抑制することを目的として、100重量パーセント中、噴射剤を99~70重量パーセントとし、原液を1~30重量パーセントとする、原液が、固形分と、接着性樹脂と、着色成分液とを含むエアゾール増毛着色剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-231962号公報
【特許文献2】特開2005- 82499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白髪染めには、頭髪が伸びてくると根元部分の白髪が目立つという問題があるため、既染部の染色した頭髪と頭頂部の白髪との色味を合わせて、頭頂部の白髪を目立たなくする製剤が望まれている。このような製剤では、頭頂部の頭髪に適度なボリュームアップ感を付与するとともに、自然な仕上がりを実現することが重要である。しかし、特許文献1のエアゾール式一時染毛料組成物は頭髪にボリュームアップ感を付与する機能が弱く、特許文献2のエアゾール増毛着色剤では固形分が多すぎる。このため、頭頂部の白髪と既染部との色味を合わせようとすると、いずれも不自然な仕上がりになるという問題がある。
本発明の課題は、頭頂部における頭髪にボリュームアップ感を付与するとともに、既染部分と白髪部分との色調を自然にぼかすように着色して、頭髪全体に自然な色調を実現できる手触りのよいエアゾール式の染毛料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]原液と噴射剤とからなるエアゾール式の染毛料であって、前記原液100重量部中に、粉体5~25重量部と、着色剤と、分散媒とを含有し、前記粉体が、タルクと、平均粒子径が2~10μmの球状粉体とを、タルク/球状粉体として重量比2/10~10/1で含有していることを特徴とする染毛料。
【0006】
[2]前記球状粉体が多孔質球状シリカである、[1]に記載の染毛料。
[3]前記粉体と前記着色剤との重量比が、粉体/着色剤として15~35である、[1]に記載の染毛料。
[4]前記原液100重量部中における、前記タルクの含有量が2~20重量部であり、前記球状粉体の含有量が0.5~10重量部であり、前記着色剤の含有量が0.40~1.0重量部である、[1]に記載の染毛料。
【発明の効果】
【0007】
タルクおよび所定の平均粒子径を備えた球状粉体を含有する粉体を原液中に配合することで、頭頂部における頭髪にボリュームアップ感を付与するとともに、染毛料による着色後の頭髪の手触りがよくなる。また、着色剤および所定量の粉体を含有する原液を用いることで、既染部分と白髪部分の色調を自然にぼかすように着色し、頭髪全体として自然な色調を付与できる染毛料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、原液と、噴射剤とが、アクチュエータを備えたエアゾール容器に封入されたエアゾール式の染毛料として実施できる。エアゾール容器のアクチュエータを押し下げて、容器内の噴射剤と原液とを霧状に噴射して、原液中に含まれる粉体と着色剤とを頭髪に付着させることで、頭髪にボリュームアップ感を付与しつつ、白髪部と既染部とをぼかして自然な色調にすることができる。以下、エアゾール式の染毛料を構成する要素について説明する。
【0009】
(原液)
原液は、(A)粉体と、(B)着色剤と、(C)分散媒とを含有している。
(A)粉体
粉体は、タルクとタルク以外の球状粉体とを、タルク/球状粉体として重量比2/10~10/1で含有している。薄い板状結晶であるタルクと球状粉体とを併用することにより、頭髪にボリュームアップ感を付与するとともに、着色後の頭髪の手触りがよくなる。頭髪のボリュームアップと良好な手触りとを実現する観点から、タルク/球状粉体として重量比は、10/10~8/1がより好ましく、3/1~7/1がさらに好ましい。なお、本実施形態における数値範囲A~Bは、A以上B以下を意義している。
【0010】
粉体の含有量は、原液100重量部において5~25重量部であり、10~20重量部が好ましく、12~16重量部がより好ましい。粉体の配合量を上記の下限値以上とすることにより、タルクと球状粉体との比率を調整して、ボリュームアップ感と手触りのよさとを両立させることが容易になる。また、粉体の配合量を上記の上限値以下とすることにより、原液中における粉体によってエアゾールの吐出不良が生じる危険を抑えることができる。
【0011】
タルクのメジアン径(D50)は、頭髪にボリュームアップ感を付与する観点から、5~20μmが好ましく、8~15μmがより好ましい。
原液100重量部中におけるタルクの含有量は、頭髪に適度なボリュームアップ感を付与する観点から、2重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらに好ましい。エアゾールの吐出不良の危険を抑える観点から、20重量部以下が好ましく、18重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。
【0012】
球状粉体は、頭髪の手触りをよくするとともにエアゾールの吐出不良の危険を低減するために、タルクとともに原液に配合される。平均粒子径が2~10μmの球状粉体を用いることにより、染毛料を噴射し乾燥した後における頭髪の手触りが良好になる。手触りをよくする観点から、球状粉体の平均粒子径は、2~8μmがより好ましく、2~5μmがさらに好ましい。
【0013】
原液100重量部中における球状粉体の含有量は、タルク配合によるボリュームアップ感の向上と、良好な手触りとを両立する観点から、0.5~10重量部が好ましく、0.8~5重量部がより好ましく、1~3重量部がさらに好ましい。
【0014】
球状粉体としては、シリカ、樹脂粉体、セルロース粒子、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、シリカが好ましく、多孔質球状シリカが特に好ましい。
【0015】
粉体は、シリカおよび球状粉体以外の粉体をさらに含んでいてもよい。タルクおよび球状粉体に加えて原液が含有してもよい粉体としては、ケイ酸マグネシウム、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、胡粉、羊毛粉、綿繊維粉、スターチ、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂微粉末などが挙げられる。
【0016】
(B)着色剤
本実施形態において着色剤は、頭髪の白髪部を着色する成分をいい、染料および着色顔料を含む。着色顔料は(A)粉体として用いられるタルクやシリカを含まない。着色顔料としては、カーボンブラック、グンジョウ、合成金雲母、合成金雲母鉄、コンジョウ、酸化スズ、酸化鉄、黄、青、赤、橙などの法定色素などが挙げられる。
【0017】
原液100重量部中における着色剤の含有量は、0.40~1.0重量部が好ましく、0.45~0.70重量部がより好ましい。また、粉体と着色顔料との重量比は、粉体/着色顔料として15~35が好ましく、20~29がより好ましい。含有量および重量比を上記の範囲とすることで、既染部分と白髪部分の色調を自然にぼかすように着色し、頭髪全体として自然な仕上がりとなり、かつ白髪やパウダー成分が白く浮き出てしまうこともなくなる。したがって、エアゾール式の染毛料により、頭頂部の白髪を自然な色合い・仕上がりで着色することができる。
【0018】
(C)分散媒
原液は、粉体および着色剤を分散又は溶解する分散媒を含有している。当該分散媒として、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2~3個の一価アルコール類やメチラール(ジメトキシメタン)などのエーテル類などを用いることができる。一種又は二種以上の一価アルコール類のみからなる分散媒、一種または二種以上のエーテル類のみからなる分散媒、あるいは、一価アルコール類とエーテル類とを混合した分散媒を用いてもよい。
【0019】
原液100重量部中の分散媒の含有量は、粉体および着色剤を十分に分散する観点から、70~90重量部が好ましく、75~85重量部がより好ましい。
【0020】
(他の成分)
原液は、上述した成分以外に、医薬品や化粧品の分野において一般に用いられている成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば、樹脂、界面活性剤、保湿剤、粉体表面改質剤、質感調整用の油剤、香料などが挙げられる。
【0021】
樹脂の配合により、粉体および着色剤を頭髪へ安定的に保持することができる。樹脂としては、整髪用のエアゾール製剤用のセット樹脂として、一般に用いられている樹脂を用いることができる。このような樹脂として、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP、アクリル酸アルキルコポリマーAMPなどのアクリル樹脂アルカノールアミンや、アクリレーツコポリマーAMPなどが挙げられる。
【0022】
原液100重量部中における樹脂の含有量は、原液中に含まれる粉体および着色剤の頭髪への適度な付着性を実現する観点から、1~10重量部が好ましく、2~7重量部がより好ましく、3~5重量部がさらに好ましい。同様の観点から、樹脂の含有量は、粉体および着色剤の総重量を100重量部とした場合に20~30重量部であることが好ましい。
【0023】
界面活性剤の配合により、原液中における粉体および着色剤の分散性が向上する。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0024】
染毛料の使用感を低下させることなく原液中に含まれる粉体および着色剤の分散性をよくする観点から、原液100重量部中における界面活性剤の含有量は、0.05~1.0重量部が好ましく、0.1~0.5重量部がさらに好ましい。同様の観点から、樹脂の含有量は、粉体および着色剤の総重量を100重量部とした場合に1~5重量部であることが好ましい。
【0025】
保湿剤としては、グリセリン、1,3-ブチレグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヒアルロン酸Na、デキストリンなどが挙げられる。
油剤としては、シリコーン油、変性シリコーン油、流動パラフィン、動物および植物由来の油、高級アルコールなどが挙げられる。
原液中におけるこれら成分の含有量は、本実施形態の染毛料の特性に悪影響を与えない範囲とすればよい。
【0026】
(噴射剤)
原液と共に容器に充填される噴射剤としては、一般に用いられている、液化ガス、圧縮ガスおよびこれらの混合物等を用いることができる。液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどが挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、圧縮空気などが挙げられる。また、HFC-152a、HFO-1234ze(E)などを用いることもできる。上述した成分を含有する原液とのなじみが良好であることから、ジメチルエーテルが好ましい。
【0027】
噴射剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。頭髪の着色に適した状態として原液を噴射する観点から、原液と噴射剤との合計100重量部中における噴射剤の含有量は、60~90重量部が好ましく、65~85重量部がより好ましく、70~80重量部がさらに好ましい。
【0028】
(容器)
本実施形態の整髪用スプレーの原液および噴射剤を充填する容器としては、一般に用いられている耐圧容器を用いることができる。耐圧容器を構成する金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼等が挙げられる。また、耐圧容器のノズルに装着して押し込むことにより、耐圧容器内の原液および噴射剤を噴射するアクチュエータは、一般に用いられているものを使用することができる。
【実施例0029】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。原液の原料および噴射剤として用いた各成分を以下に示す。
(A)粉体
(A1)タルク
・タルク(D50:10μm):ハイフィラー#13(製品名、松村産業(株)製)
(A2)球形粉体
・シリカ( 3μm):サンスフェアH-31(製品名、AGCエスアイテック(株)製)
・シリカ( 5μm):サンスフェアH-51(製品名、AGCエスアイテック(株)製)
上記シリカはいずれも真球状多孔質シリカであり、( )内の数字は平均粒子径を示している。
(他の粉体)
・シリカ(12μm):サンスフェアH-121(製品名、AGCエスアイテック(株)製)
・シリカ(20μm):サンスフェアH-20(製品名、AGCエスアイテック(株)製)
・シリカ(30μm):ゴッドボールE-90C(製品名、鈴木油脂工業(株)製)
上記シリカはいずれも真球状多孔質シリカであり、( )内の数字は平均粒子径を示している。
・オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl(平均粒子径15μm)
【0030】
(B)着色剤
・カーボンブラック:プラスサイズL-53 ブラックF(製品名、互応化学工業(株)製)
(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP:22重量%、カーボンブラック:8重量%、エタノール:70重量%の混合物
・赤226:プラスサイズL-53 レッドEUK(製品名、互応化学工業(株)製)
(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP:21重量%、赤226:10重量%、エタノール:69重量%の混合物
・黄205:プラスサイズL-53 イエローA(製品名、互応化学工業(株)製)
(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP:21重量%、黄205:10重量%、エタノール:69重量%の混合物
各表には上記製品中に含まれる着色顔料(カーボンブラック、赤226、黄205)としての含有量を記載した。
【0031】
(C)分散媒
・エタノール
【0032】
(原液中の他の成分)
(樹脂)
・(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP:プラスサイズL-53カラー用U(製品名、互応化学工業(株))
各表ではAMPと表記し、着色剤製品の成分として含まれるAMPを含めた含有量を記載した。
(界面活性剤)
・オレス-10(ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル):NIKKOL BO-10V(製品名、日光ケミカルズ(株)製)
(保湿剤)
・濃グリセリン
(油剤)
・ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:KF-56A(製品名、信越化学工業(株)製)
各表ではKF-56Aと表記した。
・ゴマ油
【0033】
(D)噴射剤
・ジメチルエーテル
【0034】
[評価方法]
毛束1gに対し、約10cmの距離から染毛料を約3秒間噴霧した後、十分に乾燥させた状態を目視により評価した。実施例および比較例のエアゾール式の染毛料の評価基準を以下に示す。
<パウダリー感(マット感)>
◎:非常に良好である。
○:良好である。
×:良好でない。
<ボリュームアップ感>
◎:顕著な効果あり。
○:効果あり。
×:十分な効果は認められない。
<手触りのよさ>
◎:非常に良好である。
○:良好である。
△:やや良好である。
×:良好でない。
<自然な色なじみ>
◎:非常に良好である。
○:良好である。
×:良好でない。
<白髪を隠す効果>
◎:下地となる白髪の色が完全に隠蔽された。
○:下地となる白髪の色の影響を僅かに受けるが隠蔽された。
×:下地となる白髪の影響を受け、隠蔽力に欠ける。
<増毛効果>
◎:顕著な効果あり。
○:効果あり。
×:十分な効果は認められない。
<総合評価>
○:評価項目のすべてが◎、〇又は△である。
×:評価項目の一部に×が含まれる。
【0035】
[原液の調製・染毛料の製造]
以下の各表は、エアゾール式の染毛料に用いた各原液100重量部中の各成分の含有量(重量部)を示したものである。各表に示した各成分および含有量により、各実施例および各比較例の原液を調製した。原液26重量部と噴射剤であるジメチルエーテル76重量部とを容器に充填して、各実施例および各比較例のエアゾール式の染毛料を製造した。上述した評価方法を用いて評価した結果を各表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す結果から以下のことが分かった。
比較例1~3の結果に示されるように、原液100重量部中に粉体としてタルクを3重量部以上、好ましくは5重量部以上配合することで、頭髪のボリュームアップ効果が得られた。本発明の染毛料における粉体の配合目的は、擬似増毛効果ではなく白髪部分のボリュームアップ効果を得ることであるため、3重量部以上という比較的少量により所望の効果が得られた。タルクの配合量を10重量部以上とすることにより、さらに、パウダリー感が向上した。なお、パウダリー感とは、染毛料を噴射した頭髪のツヤ感が過剰でなく、適度に曇った(マットな)外観となり、染毛料が付着していない部分とのなじみがよいことをいう。
しかし、粉体としてタルクのみを配合した場合、手触りにおいて問題があった。また、比較例4~6に示すように、タルク以外の粉体のうちシリカ(3μm)の添加により手触り向上が認められたものの、表1に示す比較例では上記評価項目の全てが△、〇または◎となるものはなかった。
【0038】
そこで、パウダリー感およびボリュームアップ感に優れたタルクと、手触りに優れたシリカ(3μm)とを併用した表2に示す原液を用いてエアゾール式の染毛料を製造し、表1と同様の評価を行った。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示す結果から以下のことが分かった。
実施例3、5および比較例7、8の結果から、タルク/シリカ(3μm)を重量比で1/5~10/1の範囲で併用することにより、頭髪にボリュームアップ感を付与し手触りのよいエアゾール式の染毛料となるといえる。
実施例1、4、5の結果から、原液100質量部中のタルクの含有量を11重量部以上とすることで、ボリュームアップ感がさらに向上するといえる。
実施例4と比較例10の結果から、シリカの粒径が手触りに影響し、手触りのよいエアゾール式染毛料とするには、平均粒子径が小さいシリカが好ましいといえる。
【0041】
そこで、シリカの平均粒子径と手触りのよさとの関係を調べるために、平均粒子径の異なるシリカを含有する表3に示す原液を用いてエアゾール式の染毛料を製造し、表1と同様の評価を行った。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示す結果から以下のことが分かった。
手触りのよいエアゾール式の染毛料とする観点から、タルクと併用するシリカの平均粒子径は2~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましく、2~4μmがさらに好ましい。
【0044】
頭髪全体として自然な色調を実現することができる着色剤量を検討するため、表4に示す原液を用いてエアゾール式の染毛料を製造し、自然な色なじみ、および白髪を隠す効果の評価を行った。
【0045】
【表4】
【0046】
表4に示す結果から以下のことが分かった。
実施例9、10の結果によれば、白髪を隠す効果・増毛効果の観点から、粉体/着色剤[(A1+A2)/B]は30以下が好ましいといえる。
実施例7、8、10、11の結果によれば、自然な色なじみの観点から、粉体/着色剤[(A+B/C)]は、20~29が好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、頭頂部における白髪にボリュームアップ感を付与し、既染部分と白髪部分の色調を自然にぼかすように着色して頭髪全体に自然な色調を実現するエアゾール式の染毛料として好適である。