(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106088
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】耐候性に優れた遮熱シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20240731BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240731BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/18 Z
E04H15/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010187
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【テーマコード(参考)】
2E141
4F100
【Fターム(参考)】
2E141AA01
2E141AA02
2E141AA03
2E141AA07
2E141AA09
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4F100JN28
(57)【要約】
【課題】テント膜構造物の外観・色彩を維持するために、耐候性(紫外線劣化軽減)に優れた遮熱シートを提供すること。遮熱テント膜の耐用年数の延長によって、廃棄頻度(張替交換)を減らして廃棄物を削減し、地球環境保全に貢献すること。
【解決手段】テント膜構造物用の遮熱シートにおいて、この遮熱シートの断面を「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛/熱可塑性樹脂層」の構成として、熱可塑性樹脂層に近赤外線反射性金属酸化物を含有させ、かつ防汚層に、ケト/エノール型互変異性体(ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体、及びジフェニルケトン系系互変異性体、から選ばれた1種以上)、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含むものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テント膜構造物用の遮熱シートであって、この遮熱シートの断面が「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛/熱可塑性樹脂層」の構成からなり、前記熱可塑性樹脂層が近赤外線反射性金属酸化物を含有し、かつ前記防汚層が、ケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含むことを特徴とする耐候性に優れた遮熱シート。
【請求項2】
前記近赤外線反射性金属酸化物が、コバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた1~4種の金属で構成された1種以上である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項3】
前記近赤外線反射性金属酸化物が、1)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモンから選ばれた1種以上の白色系金属酸化物、2)亜鉛-鉄-クロム複合酸化物、亜鉛-鉄-クロム-アルミニウム複合酸化物から選ばれた1種以上の赤色系金属酸化物、3)コバルト-アルミニウム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-マグネシウム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-亜鉛複合酸化物、コバルト-錫複合酸化物、コバルト-ニッケル-亜鉛複合酸化物、コバルト-ニッケル-チタン-亜鉛複合酸化物、コバルト-亜鉛-マグネシウム複合酸化物、コバルト-亜鉛-クロム-チタン複合酸化物、コバルト-亜鉛-ニッケル-チタン複合酸化物から選ばれた1種以上の青色系金属酸化物、4)ビスマス-バナジウム-アルミニウム複合酸化物、ニッケル-バリウム-チタン複合酸化物、ニッケル-チタン複合酸化物、ニッケル-アンチモン-チタン複合酸化物、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物、鉛-アンチモン-チタン複合酸化物から選ばれた1種以上の黄色系金属酸化物、5)鉄-クロム複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、鉄-クロム-コバルト-マンガン複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、銅-クロム-マンガン複合酸化物、銅-ビスマス複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物から選ばれた1種以上の黒色系金属酸化物である請求項2に記載の遮熱シート。
【請求項4】
前記ケト/エノール型互変異性体が、ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体、及びジフェニルケトン系系互変異性体、から選ばれた1種以上のエネルギー変換物質である請求項1~3の何れか1項に記載の遮熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間の使用に耐えるテント膜構造物用の遮熱シート、すなわちテント膜構造物用として耐用年数の延長された遮熱シートに関し、具体的には、経年日射による変色・劣化の抑止によって耐用年数が延長された彩色自在な遮熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型のテント膜構造物は、インドアスポーツ(テニス、フットサル、ボルダリングなど)、イベントホール、パビリオン、巡業サーカステント、映像投影ドーム、グランピングなど娯楽(人間)を主体とするカラフルな仕様と、テント倉庫のように、工場資材の保管・備蓄、製品の物流(物品)を主体とする白、アイボリー、シルバー、ダークグリーンなどの落ち着いた定番色仕様とがある。いずれもポリエステル繊維織物などの合成繊維織物を基材として、その両面に軟質塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂層を設けて被覆したターポリン、または防水帆布などが使用されている。密閉型のテント膜構造物とは、出入口扉、開閉窓を有し、これらを閉じることで密閉空間を成すもので、一方、オープン型は、屋根構造を主体とする吹き抜け構造物で、具体的には、公園、テーマパークの日除けモニュメント、ビル間スペースに設けられるガーデンテラス屋根、パーゴラシェードなどである。密閉型のテント膜構造物は人や物品を風雨、日射から守る反面、採光性を得るための光半透過性仕様とするため、夏期の日射熱が内部にこもり温室状態となる欠点がある。一方、オープン型では風通しのよい反面、人や物品を風雨から守ることには不適切である。特に密閉型のテント膜構造物において、娯楽(人間)を主体とするものでは空調設備、冷暖房設備を完備するが、物流(物品)を主体とするテント倉庫にはこのような設備を装備するケースは少ない。しかしながらテント倉庫内は夏期の熱気がこもり過酷な環境となるため、工場資材の保管・備蓄を管理・入出庫する従事者にとって、扇風機、スポットクーラーなどの熱中症対策は不可欠となっている。
【0003】
このようなテント倉庫内の熱気を下げるためには、テント膜(ターポリン、防水帆布)の色を白、シルバーなどの反射色とすることが効果的で、特に酸化チタン顔料は屈折率が高いことで光散乱力が大きく、それによって高い日射反射率(遮熱率)が得られることが知られている。しかし、光散乱力が大きい程、隠蔽性が高くなり、テント膜の採光性が阻害されるためテント倉庫内は日中も照明が必要な環境となっていた。このジレンマに対して当出願人は、遮熱効果と採光性とを兼ね備えたテント(倉庫用)膜材として、膜材の熱可塑性樹脂被覆層に、屈折率1.8以上、粒子径分布0.3~3.0μm、アスペクト比1.0~3.0の不定形無機化合物粒子(酸化チタン)を0.3~30質量%の含有量で含ませてなる膜材(特許文献1)を提案した。この実施例の膜材では38~65%の遮熱率、及び光線透過率4~45%の採光性を得ることができ、夏期の空調電力、及び通年の照明電力節減効果が期待できるものとなっている。しかし、この発明では主に白系の彩色に限定され、しかも光線透過率4~45%の採光性の代償として、光線線透過による紫外線ダメージを受けることで、テント膜(熱可塑性樹脂被覆層)が変色したり、表面に亀裂を生じて膜材の耐用年数を短くする欠点を有していた。昨今の省エネルギーの取り組みの1つとして長期的使用が可能な遮熱テント膜材が望まれている。これは遮熱テント膜材の耐用年数を数年延ばすことにより十分な遮熱効果を享受すると同時に、テント膜材の張替サイクルを長くすることで、テント膜材を製造するための合成繊維織物、及び熱可塑性樹脂などの原料となる石化資源の消費が減って、さらには二酸化炭素排出の削減にも繋がるからである。
【0004】
具体的に、軟質塩化ビニル系樹脂製のテント(倉庫用)膜材の耐用年数を向上させる手段として、本出願人は、軟質塩化ビニル系樹脂層に紫外線吸収剤を配合する方法(特許文献2)、遮熱性複合体シートの表面に高分子量紫外線吸収剤を配合した塗膜層を設ける方法(特許文献3)、遮熱効果を低下させる煤塵汚れを長期間にわたり防止し、採光性、遮熱性・汚れ除去性に優れた屋外用膜材として、光触媒性最外層を有する採光性遮熱膜材(特許文献4)を提案している。これらは何れも有用な作用効果をもたらすものであるが、昨今のSDGsの取り組みの1つとしてより長期的に使用可能な遮熱シートを装備する多種多様な建築構造物が望まれていて、特に彩色が自在な遮熱シートの耐用年数延長の技術解決が急務となっている。また本出願人は、近赤外線反射性金属複合酸化物(赤色系、青色系、黄色系、及び黒色系)を用いた遮熱性を有する天然繊維調の日除け膜材(特許文献5)を提案したが、このような日除け膜材における耐候性の向上のニーズ、及び可使時間延長のニーズは当時存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-055177号公報
【特許文献2】特開昭59-41249号公報
【特許文献3】特開2001-225423号公報
【特許文献4】特開2003-251728号公報
【特許文献5】特開2015-083725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明における解決課題は、テント膜構造物用の遮熱シートの耐用年数の延長であり、すなわちテント膜構造物の外観・色彩を維持するために、耐候性(紫外線劣化軽減)に優れた遮熱シートを提供することであり、また、本発明における目的は、テント膜構造物全般の遮熱シートの耐用年数の延長によって、廃棄頻度(すなわち張替)を減らし、新たなテント膜材を製造するための原料となる石化資源の削減に繋げ、地球環境保全に貢献することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる点を考慮し検討を重ねた結果、本発明の耐候性に優れた遮熱シートは、テント膜構造物用の遮熱シートであって、この遮熱シートの断面が「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛/熱可塑性樹脂層」の構成からなり、前記熱可塑性樹脂層が近赤外線反射性金属酸化物を含有し、かつ前記防汚層が、ケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含むことが好ましい。近赤外線反射性金属酸化物によって遮熱効果を得て、防汚層は遮熱シートの表面を綺麗な状態に保つことで遮熱効果を安定持続させ、ケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物は、防汚層と熱可塑性樹脂層を紫外線によるダメージから保護することで、テント構造物用として耐候性(紫外線劣化軽減)に優れた遮熱シートが得られる。特にN-OR型ヒンダードアミン化合物は、紫外線ダメージで生じる過酸化物ラジカル(ROO・)をN-OR部で捕獲してアルコール、ケトンに無害化して放出し、自身はニトロキシラジカル(N-O・)に転じ、紫外線ダメージで生じるアルキルラジカル(R・)を捕捉してN-OR型ヒンダードアミン化合物も戻るというナノ秒単位のサイクルを繰り返すことで、有害なラジカルの攻撃による薄膜層内の結合開裂の連鎖進行を抑止して、遮熱テント膜構造物(遮熱シート)自体の耐用年数を向上させる。その結果、遮熱テント膜構造物(遮熱シート)の廃棄頻度(すなわち張替)が減り、同時に膜材の生産量も減ることで二酸化炭素排出の要因となる石化資源の消費を抑え、持続性のある地球環境保全に貢献できるものとなることを確信して本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の耐候性に優れた遮熱シートは、前記近赤外線反射性金属酸化物が、コバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた1~4種の金属で構成された1種以上であることが好ましく、前記近赤外線反射性金属酸化物としては、1)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモンから選ばれた1種以上の白色系金属酸化物、2)亜鉛-鉄-クロム複合酸化物、亜鉛-鉄-クロム-アルミニウム複合酸化物から選ばれた1種以上の赤色系金属酸化物、3)コバルト-アルミニウム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-マグネシウム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-亜鉛複合酸化物、コバルト-錫複合酸化物、コバルト-ニッケル-亜鉛複合酸化物、コバルト-ニッケル-チタン-亜鉛複合酸化物、コバルト-亜鉛-マグネシウム複合酸化物、コバルト-亜鉛-クロム-チタン複合酸化物、コバルト-亜鉛-ニッケル-チタン複合酸化物から選ばれた1種以上の青色系金属酸化物、4)ビスマス-バナジウム-アルミニウム複合酸化物、ニッケル-バリウム-チタン複合酸化物、ニッケル-チタン複合酸化物、ニッケル-アンチモン-チタン複合酸化物、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物、鉛-アンチモン-チタン複合酸化物から選ばれた1種以上の黄色系金属酸化物、5)鉄-クロム複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、鉄-クロム-コバルト-マンガン複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、銅-クロム-マンガン複合酸化物、銅-ビスマス複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物から選ばれた1種以上の黒色系金属酸化物である。これらの近赤外線反射性金属酸化物を任意に用いることで、自由な色彩の遮熱シートを得ると同時に、近赤外線反射性金属酸化物による遮熱効果を得ることを可能とする。
【0009】
本発明の耐候性に優れた遮熱シートは、前記ケト/エノール型互変異性体が、ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体、及びジフェニルケトン系系互変異性体、から選ばれた1種以上のエネルギー変換物質であることが好ましい。このケト/エノール型互変異性体は、太陽光(紫外線)エネルギーの刺激で、エノール型異性体と、ケト型異性体とのナノ秒単位の相互変換を繰り返すことで、防汚層内にエノール型とケト型の異性体が平衡状態で共存し、受けた紫外線エネルギーを相互変換の分子振動の熱エネルギーに替えて系外放出する、エネルギー減衰作用の発現で紫外線によるダメージを軽減させることができ、それによって遮熱テント膜構造物(遮熱シート)の耐久性を向上させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、テント膜構造物用として耐用年数が延長された彩色自在な遮熱シートを得ることができる。すなわち耐候性(紫外線劣化軽減)に優れることで、綺麗なままの外観・色彩を長期間維持できるテント膜構造物用の遮熱シートの提供が可能となる。具体的に、屋内スポーツ施設、イベントパビリオン、移動サーカス、プラネタリウム、テント倉庫などの長期使用(10~15年)のテント構造物などに自在な色彩での適用が可能となり、さらに、建築養生(防音)シート、パーゴラシェード(膜天井)、ファサードシート、昇降式シートシャッター、間仕切りシート、トラック幌、野積防水シート、屋形テントなどの10年未満の用途にも自在な色彩での展開を可能となる。特に、テント膜構造物の耐用年数が延長されることによって、廃棄頻度(すなわち張替)が減り、同時に遮熱シート自体の生産量も減ることで二酸化炭素排出の要因となる石化資源の消費を抑え、持続性のある地球環境保全に貢献することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の耐候性に優れた遮熱シート(以下「遮熱シート」と記載する)は、遮熱シートの断面が「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛/熱可塑性樹脂層」の構成からなり、熱可塑性樹脂層が近赤外線反射性金属酸化物を含有し、かつ防汚層が、ケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含む態様、さらに近赤外線反射性金属酸化物が、コバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた1~4種の金属で構成された1種以上である態様、さらにケト/エノール型互変異性体が、ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体、及びジフェニルケトン系系互変異性体、から選ばれた1種以上のエネルギー変換物質である態様を含むものである。
【0012】
本発明の遮熱シートの断面は「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛/熱可塑性樹脂層」の構成からなる。熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤配合)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂など、ショアA硬度35~85程度の熱可塑性樹脂、またはエラストマーであり、これらは相溶、または半相溶の状態で2種以上をブレンドしてもよく、また2種以上の多層フィルム、または多層塗膜としてもよい。エラストマーとは2種以上のモノマーからなるブロック共重合体樹脂で、個々のブロック成分がハードセグメント、及びソフトセグメントを構成する可撓性樹脂である。テント膜構造物用のターポリンは、布帛の両面に熱可塑性樹脂組成物フィルムを熱可塑性樹脂層として積層した厚さ0.5~1.5mmの可撓積層体で、熱可塑性樹脂組成物フィルムは軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤配合)によるものが、加工性、柔軟性、耐摩耗性、耐候性、防炎性などに優れ最も好ましい。また遮熱シートは、布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜固化させて、熱可塑性樹脂層を形成してなる厚さ0.3~0.8mmの可撓積層体で、熱可塑性樹脂組成物は軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤配合ペーストゾル)によるものが、加工性、柔軟性、耐摩耗性、耐候性、防炎性などに優れ最も好ましい。
【0013】
熱可塑性樹脂層に必須成分として含む近赤外線反射性金属酸化物は、近赤外線を反射して赤外線吸収による遮熱シートの表面温度上昇を効果的に抑制する成分であり、コバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた1~4種の金属で構成された金属複合酸化物であり、これらは1)白色系金属酸化物、2)赤色系金属酸化物、3)青色系金属酸化物、4)黄色系金属酸化物、及び5)黒色系金属酸化物の何れかの化合物に属し、近赤外線反射性金属酸化物は、1)~5)の何れか単独の化合物、または複数の化合物ブレンドで、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、1~30質量部、特に5~15質量部で用いられる。これらは具体的に、1)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモンから選ばれた1種以上の白色系金属酸化物(による白系彩色)、2)亜鉛-鉄-クロム複合酸化物、亜鉛-鉄-クロム-アルミニウム複合酸化物から選ばれた1種以上の赤色系金属酸化物(による赤系彩色)、3)コバルト-アルミニウム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-マグネシウム複合酸化物、コバルト-アルミニウム-亜鉛複合酸化物、コバルト-錫複合酸化物、コバルト-ニッケル-亜鉛複合酸化物、コバルト-ニッケル-チタン-亜鉛複合酸化物、コバルト-亜鉛-マグネシウム複合酸化物、コバルト-亜鉛-クロム-チタン複合酸化物、コバルト-亜鉛-ニッケル-チタン複合酸化物から選ばれた1種以上の青色系金属酸化物(による青系彩色)、4)ビスマス-バナジウム-アルミニウム複合酸化物、ニッケル-バリウム-チタン複合酸化物、ニッケル-チタン複合酸化物、ニッケル-アンチモン-チタン複合酸化物、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物、鉛-アンチモン-チタン複合酸化物から選ばれた1種以上の黄色系金属酸化物(による黄系彩色)、5)鉄-クロム複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、鉄-クロム-コバルト-マンガン複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、銅-クロム-マンガン複合酸化物、銅-ビスマス複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物から選ばれた1種以上の黒色系金属酸化物(による黒系彩色)である。黒色系金属酸化物は400~750nmの波長域(可視光)における平均反射率10%以下で、750~2500nmの波長域(近赤外線)における平均反射率が20%以上のものが好ましい。
【0014】
本発明において、特に1)の酸化チタンとして、酸化チタン粒子に表面処理が施された一次平均粒子径が0.4~1.2μmのグレードが好ましい。白色顔料としての酸化チタンは、粒子径を光の波長の約1/2の0.2~0.4μmサイズとすることで可視光線領域(400~700nm)の散乱を最大として高い隠蔽性を得る。一方、粒子径を0.4~1.2μmにサイズアップすることによって隠蔽性は下がるが、日射エネルギーの約50%を占める近赤外線領域(780~2500nm)の反射効果が高くなることで顔料酸化チタンよりも優れた遮熱効果を得る。特に好ましい一次平均粒子径は0.9~1.1μmの粒子で、これらの表面処理酸化チタン粒子の形状はアスペクト比1:1~1:2の、略球形、卵型、俵型、じゃが芋型、などである。また、短軸粒子径0.4~0.8μm、長軸粒子径2.0~4.0μm、アスペクト比1:5~1:10の棒型、角材型などの表面処理酸化チタン粒子が例示できる。表面処理が施されていないと光触媒活性により熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂をラジカル攻撃して劣化させる。酸化チタン粒子に施す表面処理は、凝集防止、分散性向上、及び酸化チタン粒子の光触媒活性を封止するためのもので、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、及び水酸化アルムニウム、から選ばれた1種以上(選択肢は7種)の金属酸化物による表面処理である。またこれらの金属酸化物による表面処理の上に、さらなる表面処理として、シランカップリング剤、飽和アルキルチタネート、飽和アルキルシラン、ポリシロキサン、アクリルシリコン、及び金属石鹸(ステアリン酸、ラウリン酸などの長鎖脂肪酸と、バリウム、亜鉛などの金属との金属塩)などが1種1層または2種2層が施された多層表面処理であってもよい。このような表面処理によって凝集防止、分散性がさらに向上する。熱可塑性樹脂層に含む、表面処理酸化チタン粒子の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して3~20質量部、好ましくは5~12質量部である。1)の白色系金属酸化物を主体に、2)~4)の有色金属酸化物を任意併用することで幅広いパステル(明清色)調の遮熱シートを得ることができる。
【0015】
また1)の酸化亜鉛として、粒子表面にコーティング層を有する一次平均粒子径0.3μm以下のグレードが好ましい。特に一次平均粒子径0.4~1.2μmの表面処理酸化チタンとの併用において、表面処理酸化チタン粒子間に生じる隙間に、一次平均粒子径0.3μm以下(0.1μm~0.3μm)の酸化亜鉛粒子が入り込むことを可能とし、このような粒子径の酸化亜鉛粒子の表面積が増大することで、熱可塑性樹脂層内に透過する紫外線を散乱させて紫外線の透過を効果的に遮蔽する。この紫外線遮蔽効果によって、熱可塑性樹脂層の耐光性をケト/エノール型互変異性体との相乗効果をさらに向上させる。特に酸化亜鉛はUVA(紫外線A波)の遮蔽効果に優れ、酸化チタンはUVB(紫外線B波)の遮蔽効果に優れるので、酸化チタンと酸化亜鉛の質量比率2:1~1:1の混合物を用いることが好ましい。本発明に用いる酸化亜鉛粒子は表面処理により光触媒活性が封止されたものが好ましい。表面処理が施されていないと光触媒活性により熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂をラジカル攻撃して劣化させる。酸化亜鉛粒子に施す表面処理は、段落〔0014〕に記載の酸化チタン粒子に施す処方と同一であってよい。熱可塑性樹脂層に含む、一次平均粒子径0.3μm以下(0.1μm~0.3μm)の表面処理酸化亜鉛の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して3~20質量部、好ましくは5~12質量部である。また、酸化アンチモンは、三酸化アンチモン粒子に表面処理が施された一次平均粒子径が0.4~1.2μmのグレードが好ましい。
【0016】
また、近赤外線反射性金属酸化物による彩色は、2)赤色系金属酸化物と3)青色系金属酸化物の併用による赤紫~紫~青紫の彩色、2)赤色系金属酸化物と4)黄色系金属酸化物の併用による赤橙~橙~赤味の黄の彩色、3)青色系金属酸化物と4)黄色系金属酸化物の併用による青緑~緑~青味の黄の彩色、さらに2)赤色系金属酸化物、3)青色系金属酸化物、及び4)黄色系金属酸化物を減色混合してなる上記併用彩色のダークトーン化が可能である。これら減色混合してなるダークトーンは具体的に、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、黄銅色、灰青色、灰緑色、灰赤色などの彩色が例示できる。また、2)赤色系金属酸化物、3)青色系金属酸化物、及び4)黄色系金属酸化物の個々に5)黒色系金属酸化物を混合してなる暗清色(黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、黄銅色、灰青色、灰緑色、灰赤色など)、これら暗清色に1)白色系金属酸化物をさらに混合した濁色(黒灰色、黒茶灰色、黒緑灰色、黒青灰色、黒紫灰色、濃紺灰色、濃緑灰色、臙脂灰色、黄銅灰色、灰青色、灰緑色、灰赤色など)の彩色が例示できる。また、これら近赤外線反射性金属酸化物の使用において、目的とする遮熱シートの彩度、明度の調整用に公知の無機顔料(金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、カーボンブラックなど)及び有機顔料、有機色素などを併用することができる。有機顔料として、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジコ系、ベンチジン系、チオインジコ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、などの有機化合物が挙げられる。特に有機色素として、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル-チオール系錯体化合物などの近赤外線吸収性色素などを併用することでさらに遮熱効果が向上する。
【0017】
本発明の遮熱シートに用いる布帛は織物が好ましく、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、及びカバリング糸条、から選ばれた1種以上の糸条を含んで、1)経糸条及び緯糸条からなる織物、または2)経糸条及び左上/右上バイアス糸条からなる三軸織物、または3)経糸条、緯糸条及び左上/右上バイアス糸条からなる四軸織物、の何れかである。特に経糸条及び緯糸条からなる平織物、斜子織物(2×2、3×3、4×4などの正則斜子織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則斜子織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)、その他、模紗織物、もじり織物(紗織物、絽織物)などが使用できる。特に三軸織物、四軸織物などを使用すれば、糸条同士の交差が複雑、かつ緻密となり、多軸方向に拡がるネットワークによって遮熱テント膜構造物に加えられる屈曲、はためきなどの外力ストレスの伝播性が増し、ストレスを広域に分散して受け流すことでダメージを緩和し、同時に引裂などの外力に対する抵抗力を増強する。織物の目付量は100~500g/m2で、空隙率(糸条の交絡によって生じる空間の総和の占有率)はターポリンでは6~25%程度、帆布では0~10%程度が好ましい。これらの織物には精練、漂白、染色、柔軟化、撥水、防黴、防炎、カレンダー、などの公知の染色整理加工を施したものを使用することもできる。ターポリンは布帛の両面に熱可塑性樹脂フィルムをラミネート積層した形態で、帆布は布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜化した形態である。
【0018】
織物(布帛)を構成する糸条は、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維、及びこれらの2種以上から成る混合繊維など、何れの繊維も使用できるが、汎用的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリナフタレンテレフタレート:PNTなど)繊維、ナイロン繊維、及び、これらの混用繊維(混撚・合撚)などの合成繊維による、1)マルチフィラメント糸条、2)短繊維紡績糸条、3)及びカバリング糸条、から選ばれた1種以上の糸条が使用できる。マルチフィラメント糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡原糸を3~5倍に延伸した長繊維紡糸束(50~500本のフィラメント束)を無撚のまま、または10~200回/m撚りを掛けた、繊度125~2000デニール(139~2222dtex)の糸条が使用できる。これらのマルチフィラメント糸条には、タスラン糸条、ウーリー糸条などの嵩高加工糸条を包含する。短繊維紡績糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡糸束(延伸していてもよい)を3.8~5.8mm長程度に切断したステープルを開繊練条したスライバを引き伸ばしたロービング(粗糸)とし、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績したものである。撚糸は単糸または単糸2本を引き揃えてS(右)撚りもしくはZ(左)撚りしたもの、また単糸または単糸2本を引き揃えて下撚りした加撚糸を2本引き揃えて上撚りを掛けてなる双糸が挙げられる。これらの撚糸の撚り回数は200~2000回/m程度である。またカバリング糸条は、上記マルチフィラメント糸束の外周に上記短繊維を巻き付けたカバリング糸条が挙げられ、本願においては芯鞘複合糸条もカバリング糸条に包含する。
【0019】
特に本発明の遮熱シートの引張破壊強度、引裂(切裂)強度、防爆耐圧、耐熱性、及び耐火性などを向上させるために特別な布帛(織物)を用いることができる。この布帛には、フッ素樹脂繊維、全芳香族ポリエステル繊維、全芳香族ポリアミド繊維などのマルチフィラメント糸条を主体とする織物設計、あるいは上記汎用合成繊維による糸条との併用設計(リップストップ構造の挿入)が適している。また国土交通大臣認定の不燃材料(テント構造物用不燃膜材)の用途向けには、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維、及び、これらの混用繊維(混撚・合撚)などの無機マルチフィラメント糸条を主体とする織物が適している。そして特に引張破壊強度、引裂(切裂)強度、防爆耐圧、耐熱性、及び耐火性などを飛躍的に向上させるために、織物が、ポリベンゾイミダゾール(PBI)系、ポリベンゾオキサゾール(PBO)系、ポリベンゾチアゾール(PBT)系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上の芳香族複素環高分子繊維からなる糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、カバリング糸条)を主体に含む織物設計、あるいは上記汎用繊維による糸条との併用(リップストップ構造の挿入)が適している。リップストップ構造とは例えば、ポリエステル繊維糸条を経糸条及び緯糸条とする平織物において、経糸条、及び緯糸条の任意の位置に芳香族複素環高分子繊維からなる糸条を規則的、またはランダムに配列したもので、外観上、格子柄(または変則格子柄)を形成する織物、三軸織物、四軸織物が適している。具体的に経糸群及び緯糸群の糸条配列1,2,3,4,5・・・n(nは整数)において、10の倍数(10,20,30・・・)本目毎に、芳香族複素環高分子繊維糸条が挿入され、格子模様を形成するような態様である。また四軸織物において、経糸、緯糸、左上バイアス糸、右上バイアス糸の何れか、または全部を全て香族複素環高分子繊維糸条とすることもでき、具体的に経糸と緯糸を香族複素環高分子繊維糸条、左上バイアス糸と右上バイアス糸を他の繊維糸条とする構成、または左上バイアス糸と右上バイアス糸を他の香族複素環高分子繊維糸条、経糸と緯糸を他の繊維糸条とする構成である。
【0020】
本発明の遮熱シートに用いるターポリンは、熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂/可塑剤など)を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延した厚さが0.1mm~1.0mm、特に0.15mm~0.3mmフィルム(シート)が使用できる。また織物に対する樹脂加工は、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用い、ラミネーターの1回通しまたは2回通しの工程により熱溶融圧着した樹脂加工物織物である。ターポリンは、カレンダー成型して得たフィルムをラミネーターにより目開き織物の両面に熱圧着して製造され、厚さ0.5~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲の「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛(マルチフィラメント糸条)/熱可塑性樹脂層」の態様が、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどの膜構造物に使用できる。この態様において詳細な断面構造は、布帛(マルチフィラメント糸条)の空隙率が6~25%の場合、空隙部には表面の熱可塑性樹脂層と裏面の熱可塑性樹脂層とが侵入し、互いに融合した樹脂充填部を部分的に形成したものを含む態様となる。帆布の態様は、溶液状の熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂/可塑剤などによるペースト)を織物の表面、及び内部にナイフコート、クリアランスコートなどのコーティング法により含浸塗工し、これを熱乾燥、または加熱ゲル化させるか、または溶液状の熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂ペースト)を充填した液浴中に織物を浸漬し、これを引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、直後に熱乾燥、または加熱ゲル化させるディッピング法によって製造された樹脂加工物織物である。帆布の製造は、塩化ビニル樹脂/可塑剤などによるペーストによるディッピング法が適し、厚さ0.3~0.8mm、質量400~1000g/mの範囲の「防汚層/熱可塑性樹脂層/布帛(短繊維紡績糸条)/熱可塑性樹脂層」態様が、トラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなどの用途に適している。この態様において詳細な断面構造は、布帛(短繊維紡績糸条)の空隙率が0~10%の場合、空隙部には表面の熱可塑性樹脂層と裏面の熱可塑性樹脂層とが侵入し、互いに融合した樹脂充填部を部分的に形成したものを含み、さらに布帛(短繊維紡績糸条)の糸条内部に熱可塑性樹脂が含浸した態様となる。上記これらの熱可塑性樹脂層には、必要に応じて任意の添加剤を含むことができる。耐候性向上に寄与する添加剤として、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、イオウ系、ビタミンE系など)、艶消剤として、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムなど、帯電防止剤として、界面活性剤、イオン性液体、導電性カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなど、耐炎剤として、セピオライト、モンモリロナイト、スメクタイトなど、耐摩耗強化剤として、イソシアネート、アクリレート、エポキシ、シランカップリング剤、シリコーンオイルなど、その他、抗菌剤、抗ウイルス剤、などが挙げられる。
【0021】
ターポリン基材、及び帆布基材上に設ける防汚層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂/ウレタン系樹脂併用、アクリル系樹脂/フッ素系共重合体樹脂併用などのバインダー成分を主体とする塗料(溶剤系、またはエマルジョン系)を、グラビアコート、ワイヤーバーコート、キスコート、クリアランスコートなど公知の塗工方法によりターポリン基材、及び帆布基材の表面全面に塗工し、乾燥膜厚1~25μm、特に3~15μmに形成したものである。防汚層には、ケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含み、防汚層に含むケト/エノール型互変異性体の量は、防汚層の熱可塑性樹脂バインダー100質量部に対して1~25質量部、特に3~10質量部である。また、防汚層に含むN-OR型ヒンダードアミンの量は、防汚層の熱可塑性樹脂バインダー100質量部に対して0.5~12質量部、特に1~6質量部である。防汚層のバインダーとなるアクリル系樹脂は、アルキル基の炭素数1~18のアクリル酸アルキルエステル類、及びアルキル基の炭素数1~18のメタアクリル酸アルキルエステル類から選ばれた1種以上のモノマーによる重合体、及び共重合体樹脂、また、エチレン性不飽和カルボン酸類、アミド化合物類、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、α-オレフィン類、ビニルエーテル類、アルケニル類、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物類などを上記アクリル系モノマーと共重合させたもの、さらにオルガノシロキサン類と共重合したアクリル/シリコン系共重合体樹脂も使用できる。ウレタン系樹脂は、芳香族ポリウレタン(エステル系、エーテル系、ポリカーボネート系)、脂肪族ポリウレタン(エステル系、エーテル系、ポリカーボネート系)、脂環式ポリウレタン(エステル系、エーテル系、ポリカーボネート系)などが挙げられ、耐光堅牢性において脂肪族ポリウレタン、脂環式ポリウレタンが好ましく、耐候堅牢性(耐加水分解性)においてエーテル系、ポリカーボネート系のウレタン系樹脂が特に好ましい。また、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、ウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂なども使用できる。フッ素系共重合体樹脂は、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素原子含有モノマーから選ばれた2種以上を共重合して得られる共重合体、上記フッ素原子含有モノマーとビニルモノマー(β-メチル-β-アルキル置換-α-オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、アルキルアリルエーテル類、ビニル基含有エステルなど)との共重合によって得られるフルオロオレフィン共重合体などを単独種、または複数種で使用することができる。これらはイソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの反応性化合物との併用で架橋部位を生成する水酸基、カルボキシ基を分子構造内に含有する共重合体が好ましい。特にイソシアネート化合物は脂肪族化合物、または脂環式化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらの三量体(イソシアヌレート型、トリメチルプロパン型、ビウレット型)など、及びこれらのブロックイソシアネート体などが使用できる。またオキサゾリン化合物は、アクリル系樹脂(アクリル共重合体樹脂、アクリル/スチレン共重合体樹脂)の側鎖にオキサゾリン基を有するポリマー型架橋剤(エマルジョン型)を使用することもできる。
【0022】
また防汚層は、オルガノシリケート化合物、またはシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合体をバインダーとして主構成され、ケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含む態様であってもよい。オルガノシリケート化合物は、化学式:SinOn-1(OR)2(n+1)で表される4官能加水分解性シラン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)、nは4官能加水分解性シラン化合物の縮合分子数を表す多量化度(n量体)で、1以上の整数、nが1の化合物として、テトラメトキシシラン「Si(OCH3)4」、テトラエトキシシラン「Si(OC2H5)4」、テトラプロポキシシラン「Si(OC3H7)4」、テトラブトキシシラン「Si(OC4H9)4」、テトラフェノキシシラン「Si(OC6H6)4」、ジメトキシジエトキシシラン「Si(OCH3)2(OC2H5)2」などである。nが2以上の化合物は4官能加水分解性シラン化合物が加水分解して生成するシラノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するSi原子数を意味する。本発明においては多量化度2~10、好ましくは4~6のテトラメトキシシラン、またはテトラエトキシシランを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物を用いることがゾルゲル縮合体の構造が細密化され好ましい。防汚層を形成する塗工液(水/アルコール)に含有するオルガノシリケートの加水分解生成物の濃度は0.01~30質量%、特に0.1~5質量%の範囲が好ましい。またこの塗工液中には防汚層の柔軟性、屈曲性を付与するためにセルロースナノファイバーを、オルガノシリケートの加水分解生成物の濃度に対して1~10質量%含むことができる。セルロースナノファイバーは、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)10以上50以下、平均繊維径3nm~100nm、平均繊維長100μm以下、特に300nm~500nmの短繊維を用い、これらはシランカップリング剤、ホウ酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物などで化学変性されたものであってもよい。
【0023】
ケト/エノール型互変異性体は、ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体、及びジフェニルケトン系変異性体から選ばれた1種以上である。ここで複数のケト/エノール型互変異性体の使用とは、異なる系の組み合わせ、及び同一系での組み合わせのバリエーションを包含する。ケト/エノール型互変異性体とは、R
2-CH-(C=O)-R
1(ケト型異性体)と、R
2-C=CH(OH)-R
1(エノール型異性体)とが可逆変換しうる有機化合物である。ベンゾトリアゾール系互変異性体は、エノール型とケト型が存在し、エノール型異性体(Ia)は、水酸基(1~2個)/ケトン基(0個)のベンゼン環(C1~C10アルキル基、C4~C10分岐アルキル基、アルキル置換ベンジル基から選ばれた1種または2種を有していてもよい)1個と、ベンゾトリアゾール環(塩素基を有していてもよい)とのC-N結合体を骨格とする有機化合物〔化1〕で、具体的にベンゼン環の2位に水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位と、3~5位の何れかに水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位に水酸基、3位及び/または5位にアルキル基、分岐アルキル基、アルキル置換ベンジル基から選ばれた1種または2種を有する構造である。ケト型異性体(IIa)は、水酸基(0~1個)/ケトン基(1個)のベンゼン環(C1~C10アルキル基、C4~C10分岐アルキル基、アルキル置換ベンジル基の何れかを有していてもよい)1個と、ベンゾトリアゾール環(塩素基を有していてもよい)とのC-N結合体を主骨格とする有機化合物〔化2〕で、具体的にベンゼン環の2位にケトン基を有する構造、ベンゼン環の2位にケトン基、3~5位の何れかに水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位にケトン基、3位及び/または5位にアルキル基、分岐アルキル基、アルキル置換ベンジル基の何れかを有する構造である。ケト型とエノール型、双方の異性体が相互変換を繰り返して、双方の異性体が平衡状態で共存するもので、分子量が250~700の範囲のベンゾトリアゾール系化合物、特にエノール型として、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体が好ましい。この熱可塑性樹脂層内部では、太陽光(紫外線)エネルギー励起により、ベンゾトリアゾール系互変異性体が、エノール型異性体(Ia)〔化1〕と、ケト型異性体(IIa)〔化2〕に相互変換を繰り返すことによって、紫外線エネルギーを相互変換の分子振動エネルギーに変換して系外放出する作用により、紫外線による劣化ダメージを減衰させる。この熱可塑性樹脂層の紫外線減衰効果が、本発明の遮熱シートの耐用年数延長に大きく作用する。ここでアルキル置換ベンジル基は、ベンジル基「C
6H
6-CH
2-」を、「C
6H
6-CR
1R
2-」(R
1,R
2はC1~C10アルキル基)にアルキル置換したものを意味する。また、ベンゾトリアゾール系互変異性体は、アクリル系ポリマーの側鎖にグラフトしたものを使用することができる。
【化1】
Rは、水酸基、アルキル基、分岐アルキル基、アルキル置換ベンジル基
から選ばれた1種以上
【化2】
Rは、水酸基、アルキル基、分岐アルキル基、アルキル置換ベンジル基
から選ばれた1種以上
【0024】
また、トリアジン系互変異性体は、エノール型とケト型が存在し、エノール型異性体(Ib)は、水酸基(1~2個)/ケトン基(0個)のベンゼン環(C1~C10アルキルオキシ基を有していてもよい)1~3個と、1,3,5-トリアジン環(アルキル(1~2個)置換フェニル基、及び/または水酸基(1~2個)置換フェニル基を有していてもよい)とのC-C結合体を主骨格とする有機化合物〔化3〕で、具体的にベンゼン環の2位に水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位と4位に水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位に水酸基、4位にアルキルオキシ基を有する構造、また、アルキル(1~2個)置換フェニル基は2位または4位、2位と4位であり、水酸基(1~2個)置換フェニル基は2位または4位、2位と4位である。ケト型異性体(IIb)は、水酸基(0~1個)/ケトン基(1個)のベンゼン環(C1~C10アルキルオキシ基を有していてもよい)1~3個と、1,3,5-トリアジン環(アルキル(1~2個)置換フェニル基、及び/または水酸基(1~2個)置換フェニル基を有していてもよい)とのC-C結合体を骨格とする有機化合物〔化4〕で、具体的にベンゼン環の2位にケトン基を有する構造、ベンゼン環の2位にケトン基と4位に水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位にケトン基、4位にアルキルオキシ基を有する構造、また、アルキル(1~2個)置換フェニル基は2位または4位、2位と4位であり、水酸基(1~2個)置換フェニル基は2位または4位、2位と4位である。ケト型とエノール型、双方の異性体が相互変換を繰り返して、双方の異性体が平衡状態で共存するもので、特に分子量が250~700の範囲のトリアジン系化合物、特にエノール型として、ヒドロキシフェニル-1,3,5-トリアジン誘導体が好ましい。この遮熱層内部では、太陽光(紫外線)エネルギー励起により、トリアジン系互変異性体が、エノール型異性体(Ib)〔化3〕と、ケト型異性体(IIb)〔化4〕に相互変換を繰り返すことによって、紫外線エネルギーを相互変換の分子振動エネルギーに変換して系外放出する作用により、紫外線による劣化ダメージを減衰させる。この熱可塑性樹脂層の紫外線減衰効果が、本発明の遮熱シートの耐用年数延長に大きく作用する。具体的にアルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブチル基、ペンチルオキシ基などである。また、トリアジン系互変異性体は、アクリル系ポリマーの側鎖にグラフトしたものを使用することができる。
【化3】
R
1は、水酸基、及び/またはアルキルオキシ基
R
2,R
3は、アルキル置換フェニル基、及び/または水酸基置換フェニル基
【化4】
R
1は、水酸基、及び/またはアルキルオキシ基
R
2,R
3は、アルキル置換フェニル基、及び/または水酸基置換フェニル基
【0025】
また、ジフェニルケトン系互変異性体は、エノール型とケト型が存在し、エノール型異性体(Ic)は、水酸基(1~2個)/ケトン基(0個)/アルキルオキシ基(0~1個)のベンゼン環2個がC=O結合で連結された主骨格の有機化合物〔化5〕で、具体例にベンゼン環の2位に水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位と4位に水酸基を有する構造、ベンゼン環の2位に水酸基、4位にアルキルオキシ基を有する構造である。また、ケト型異性体(IIc)は水酸基(0~1個)/ケトン基(1個)/アルキルオキシ基(0~1個)のベンゼン環(A)1個と、水酸基(1~2個)/ケトン基(0個)/アルキルオキシ基(0~1個)のベンゼン環(B)1個がC=O結合で連結された主骨格の有機化合物〔化6〕で、具体例にベンゼン環(A)の2位にケトン基を有する構造、ベンゼン環(A)の2位にケトン基、4位に水酸基を有する構造、ベンゼン環(A)の2位にケトン基、4位にアルキルオキシ基を有する構造、ベンゼン環(B)の2位に水酸基を有する構造、ベンゼン環(B)の2位と4位に水酸基を有する構造、ベンゼン環(B)の2位に水酸基、4位にアルキルオキシ基を有する構造である。このケト型とエノール型、双方の異性体が相互変換を繰り返して、双方の異性体が平衡状態で共存する分子量200~400の範囲のジフェニルケトン系化合物、特にエノール型として、ヒドロキシジフェニルケトン誘導体が好ましい。この熱可塑性樹脂層内部では、太陽光(紫外線)エネルギーにより、ジフェニルケトン系互変異性体が、エノール型異性体(Ic)〔化5〕と、ケト型異性体(IIc)〔化6〕に相互変換を繰り返すことによって、紫外線エネルギーを相互変換の分子振動エネルギーに変換して系外放出する作用により、紫外線による劣化ダメージを減衰させる。この熱可塑性樹脂層の紫外線減衰効果が、本発明の遮熱シートの耐用年数延長に大きく作用する。具体的にアルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブチル基、ペンチルオキシ基などである。また、ジフェニルケトン系互変異性体は、アクリル系ポリマーの側鎖にグラフトしたものを使用することができる。
【化5】
R
1,R
2は、水酸基、及び/またはアルキルオキシ基
【化6】
R
1,R
2は、水酸基、及び/またはアルキルオキシ基
【0026】
N-OR型ヒンダードアミン系化合物としては、その分子構造中に少なくとも1個以上、好ましくは2個、または好ましくは4個、または好ましくは6個のヒンダードアミン構造を有するものが用いられ、特に塩化ビニル樹脂の耐光安定性の向上に効果的である。これらの下記式〔化7〕に示すヒンダードアミン構造のN位には、炭素数2~18のアルコキシ基、または、炭素数5~12のシクロアルコキシ基から選ばれた1種以上の置換基を有し、かつ、これらの分子量は200~400(ヒンダードアミン構造1個)、400~700(ヒンダードアミン構造2~3個)、700~1000(ヒンダードアミン構造4~5個)、1000~2500(ヒンダードアミン構造6個以上)であるものが防汚層への残留保持性に優れ好ましい。
【化7】
上記〔化7〕中、R
1,R
2,R
3及びR
4は各々独立して、a)水素原子、b)炭素数1~20の直鎖アルキル基、または分枝アルキル基、c)1個以上の-O-,-S-,-SO-,-SO
2-,-CO-,-COO-,-OCO-,-CONR-,-NRCO-または-NR-を含む上記b)のアルキル基、d)炭素数3~20のアルケニル基、e)炭素数6~10のアリール基、f)炭素数1~20のアルキル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、及び炭素数7~15のフェニルアルキル基から選択された1~3個の置換基を有するアリール基などであるが、本発明の耐候性に優れた遮熱テント膜構造物に用いるN-OR型ヒンダードアミン系化合物としては、R
1,R
2,R
3及びR
4は全て水素の態様、もしくは全てメチル基の態様が特に好ましい。またR
5は、i)炭素数2~18のアルキル基、すなわち、ヒンダードアミン構造のN位が炭素数2~18のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数6~12のアルコキシ基で置換されたもの、ii)炭素数5~12のシクロアルキル基、すなわちヒンダードアミン構造のN位が炭素数5~12のシクロアルコキシ基、好ましくは炭素数5または6または8のシクロアルコキシ基、特に好ましくはシクロヘキシルオキシ基で置換されたものである。
【0027】
これらのN-OR型ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ヒンダードアミン構造〔化7〕のN位に、R5=炭素数2~18のアルキル基、または、R5=炭素数5~12のシクロアルキル基から選ばれた1種以上の置換基R5を有する化合物で、これらは、ビス(1-ウンデカオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、4,4’-ヘキサメチレン-ビス(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)及び2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジンの重縮合物;1-(2-ヒドロキシエチル)-N-OR5-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン及びコハク酸の重縮合物:N,N’,N’’,N’’’-テトラキス[4,6-ビス(ブチル-(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-s-トリアジン-2-イル]-1,10-ジアミノ-4,7-ジアザデカン;4,4’-ヘキサメチレン-ビス(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)及び2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジンの重縮合物;ポリ[メチル3-(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルオキシ)プロピル]シロキサン;ビス(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)シクロヘシレンジオキシジメチルマロネート;ビス(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)[[3,5ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート;ビス(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート;1,3,5-トリス{N-シクロヘキシル-N-[2-(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペラジン-3-オン-4-イル)エチル]アミノ-s-トリアジン;4,4’-ヘキサメチレン-ビス(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)及び2,4-ジクロロ-6-シクロヘキシルアミノ-s-トリアジンの重縮合物;及びポリ{N-[4,6-ビス(ブチル-(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-s-トリアジン-2-イル]-1,4,7-トリアザノナン}-ω-N’’-[4,6-ビス(ブチル-(N-OR5-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-s-トリアジン-2-イル]アミン、などの化合物が例示できる。
【0028】
N-OR型ヒンダードアミンによる光安定化は、N-OR型ヒンダードアミンが酸素、紫外線及びパーオキサイドなどにより酸化され、ニトロキシラジカル(NO・)に転化することにより光安定化サイクルが始まり、ニトロキシラジカル(NO・)は熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂の光劣化により発生したアルキルラジカル(R・)を捕獲してアミノエーテル(NOR)に転じ、次いでアルキルラジカル(R・)と空気中の酸素との反応により生成した過酸化物ラジカル(ROO・)をN-OR部で捕獲して、アルコール、ケトンに無害化して放出し、自身は元のニトロキシラジカル(N-O・)に戻るというナノ秒単位のサイクルを繰り返すことで有害なラジカルの攻撃による熱可塑性樹脂の結合開裂の連鎖進行を抑止することができる。このラジカル無害化のサイクルはNH型ヒンダードアミン、N-アルキル型ヒンダードアミンにおいても同様であるが、塩化ビニル系樹脂の耐光性安定化においてはN-OR型ヒンダードアミンが最も好ましい。本発明においてN-OR型ヒンダードアミンとNH型ヒンダードアミンとの併用、またはN-OR型ヒンダードアミンとN-アルキル型ヒンダードアミンとの併用も可能であり、その併用比率は10:1~10:10、特に10:2~10:5が好ましい。塩化ビニル系樹脂を主体とする配合系でのN-OR型ヒンダードアミンの使用比率が低いと著しい耐光性向上効果が得られなくなることがある。またケト/エノール型互変異性体とN-OR型ヒンダードアミンとの併用比率は10:1~10:5、特に10:3~10:4が好ましい。ケト/エノール型互変異性体の使用比率が低いと著しい耐光性向上効果が得られなくなることがある。
【0029】
テント膜構造物には、インドアスポーツ、イベントホール、パビリオン、巡業サーカステント、テント倉庫などがあるが、テント倉庫を例に説明する。テント倉庫は、空間を構成するフレーム構造体の側壁外周、及び天蓋に防水シート(ターポリン縫製物、または防水帆布縫製物)を装着してなるもので、屋根部がアーチ屋根の蒲鉾型、三角屋根の切褄型が主流である。その規模は、平屋建てで軒高が5m以下、1棟当たりの床面積が1000m2以下との建設省の規定がある。テント倉庫の構築方法は、主架構材を構成するトラス構造などの柱をあらかじめ地組みし、各柱の建方作業を行い、各柱間を水平梁及び横継材で連結し、その後立設された柱の柱頭部にアーチトラスを吊り込んで架設してフレーム構造体を完成させ、最後にターポリン縫製物、または防水帆布縫製物で外構を覆う工法が一般的である。これら縫製物は、ターポリンまたは防水帆布の長尺反(1~3m幅、20~50m巻)をテント倉庫のパーツサイズに合わせて裁断したパーツを複数連結して拡張したものである。連結はターポリン(または防水帆布)端部同士を2~10cm重ね合わせ、互いの熱可塑性樹脂層同士(上側のターポリンの裏面の熱可塑性樹脂層と、下側のターポリンの表面の熱可塑性樹脂層)を、高周波溶着、熱風溶着、熱コテ溶着などの公知の方法で熱溶着させることで達成できる。縫製物の施工配置は、ターポリン(または防水帆布)の長手方向(巻き方向)が、テント倉庫正面に対して「左側壁-天蓋-右側壁」に連続する配置が一般的である。縫製物の内側には、縫製物をフレーム構造体に固定するための、ハトメ、フック、ロープなどの使用が可能な加工が施されている。
【0030】
本発明の遮熱シートの具体例、及び性能について、下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明する。遮熱テント膜構造物の耐候性、遮熱性、防黴(藻)性は、遮熱テント膜構造物を構成するシート片により評価し、その性能を遮熱テント膜構造物の性能に適用した。
〈耐候促進試験〉
JIS K5600-7-7「塗料一般試験方法(第7部)塗膜の長期耐久性」に準拠して、耐候促進機1000時間、1500時間、2000時間の照射ごとにシート片(熱可塑性樹脂層の表面)の変色を色差ΔE(JIS Z8729)で評価した。(促進前のシート片を基準とする)
ΔE=0~2.9 : 1=着色を認めない(適合)
ΔE=3~5.9 : 2=僅かな着色を認める(適合)
ΔE=6~11.9 : 3=薄い褐色に変色(外観に影響する)
ΔE=12~19.9 : 4=茶褐色に変色(外観異常)
ΔE=20~ : 5=黒褐色に変色(外観異常)
〈耐候促進試験後の屈曲耐久性〉
耐候促進機1000時間、1500時間、2000時間の照射時間ごとのシート片を用い、JIS L1096の 8.19項「摩耗強さB法(スコット法)」により、1kgf荷重500回の屈曲揉みの負荷を与えた時の(表面)熱可塑性樹脂層の摩耗状態、及び亀裂の有無を、デジタルマイクロスコープ(VHX-1000:(株)キーエンス)を使用して熱可塑性樹脂層の100倍の拡大画像観察を行い評価した。
1:熱可塑性樹脂層に異常を認めない(適合)
2:熱可塑性樹脂層に軽微な亀裂を認めるが、剥離、脱落は認めない(適合)
3:熱可塑性樹脂層に多数の亀裂を生じ外観に影響している
4:熱可塑性樹脂層に多数の亀裂を生じ、亀裂片の剥離、脱落を伴う
5:熱可塑性樹脂層が劣化、脱落して布帛が露出している
〈遮熱率(%)〉
太陽光線を想定した赤外線ランプを使用し、シート片が輻射熱を遮蔽する割合をシートの遮熱率として、以下の試験方法に従って測定した。
〈試験環境〉
内径が、高さ60cm×幅70cm×長さ70cmの外気温遮断性と気密性とを有する箱型構造体の天井部中央に赤外線ランプ(100V,125W,アイR型:岩崎電気(株))を取り付け、またこの試験箱内部の底面部の中央には熱流量計(Shothrm HFM熱流量計:昭和電工(株)製)のセンサーを取り付けた台座(高さ8cm)を構成した。このとき天井部から赤外線ランプ先端までの距離は22cm、赤外線ランプ先端からセンサーまでの距離は30cmである。(22cm+30cm+8cm=60cm)この環境でランプを点灯し、熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の熱流量qn(kcal/m2h)を測定した。箱型構造体内の温度を20℃まで戻した後、このセンサーを取り付けた台座上に試験シート片(タテ10cm×ヨコ10cmサイズ)を乗せ、その上に厚さ3.5mmの透明ガラス板を載せた状態でランプを点灯し、熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の熱流量qc(kcal/m2h)を測定し、式(2)に従って遮熱率pf(%)を算出した。
遮熱率pf(%)=〔(qn-qc)/qn〕×100・・・(1)
遮熱率pf(%)は数値が大きいほど遮熱効果が高いと判断する
<光線透過率(%)>
JIS Z8722(条件g)に準拠し、コニカミノルタ(株)製の分光測色計CM-36dGVにより測定した。
【0031】
[実施例1]
〈布帛(1)〉
1000デニール(1111dtex)のポリエチレンテレタレート(PET)繊維(フィラメント数192本)からなり、S撚50T/mを施したPETマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間16本の織組織とし、また緯糸群は1インチ間16本の織組織とする平織物を布帛に用いた。この布帛(1)の質量は150g/m2、空隙率(目抜け部総和)は14%であった。
<ターポリン基材>
この布帛(1)を基材として、その両面に下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の熱可塑性樹脂層〔配合1〕として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施して、厚さ0.7mm、質量830g/m2のターポリン基材(1)を得た。
〔配合1〕:軟質塩化ビニル樹脂組成物(コンパウンド)
塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジイソノニル(可塑剤:Mw419) 55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm) 10質量部
※酸化アルミニウムによる表面処理(最外層ステアリン酸処理)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤 0.5質量部
10,10′-オキシビスフェノキシアルシン(防黴剤) 0.8質量部
<防汚層の形成>
ターポリン基材(1)の片表面に、ベンゾトリアゾール系互変異性体と、N-OR型ヒンダードアミンを、3:1質量比で含むフッ素系共重合体樹脂による厚さ8μmの防汚層(1)を形成し、厚さ0.7mm、質量835g/m2の白彩色ターポリン(1)を得た。防汚層の形成は〔配合2〕の溶液を100メッシュのグラビアロールコーターにて塗工した。
〔配合2〕:防汚層形成用塗工液
フルオロアルキルビニルエーテル(水酸基含有) 100質量部
※フッ素系共重合体樹脂40質量%の塗料:溶媒トルエン/MEK(1:1)
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 5質量部
ベンゾトリアゾール系互変異性体 6質量部
※エノール型として〔化1〕において、2位-水酸基(1個)/ケトン基(0個)のベ
ンゼン環(5位tert-ブチル基)1個の1位Cと、ベンゾトリアゾール環(置換基なし)
とのC-N結合体によるMW267の有機化合物
※ケト型として〔化2〕において、水酸基(0個)/2位-ケトン基(1個)のベンゼン環
(5位tert-ブチル基)1個の1位Cと、ベンゾトリアゾール環(置換基なし)とのC-N
結合体(MW267)
※1位、2位、5位、はベンゼン環の炭素の位置を表す
N-OR型ヒンダードアミン 2質量部
※ビス(1-ウンデカオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)
カーボネート(MW681)
※〔化7〕において、R1~R4が全てメチル基、R5がウンデシル基(-C11H23)
【0032】
[実施例2]
実施例1の〔配合2〕のベンゾトリアゾール系互変異性体6質量部を、トリアジン系互変異性体6質量部に置き換えた〔配合3〕を用いた防汚層(2)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2の白彩色ターポリン(2)を得た。
※トリアジン系互変異性体は、エノール型として〔化3〕において、2位-水酸基(1個)/ケトン基(0個)のベンゼン環(4位ブトキシ基)3個の各々1位Cと、1,3,5-トリアジン環の2,4,6位CによるC-C結合体によるMW367の有機化合物
※ケト型として〔化4〕において、水酸基(0個)/2位-ケトン基(1個)のベンゼン環(4位ブトキシ基)3個の各々1位Cと、1,3,5-トリアジン環の2,4,6位CによるC-C結合体(MW367)
※1位、2位、4位はベンゼン環の炭素の位置を表し、トリアジン環の2,4,6位Cは炭素の位置、1,3,5位は窒素Nの位置を表す
【0033】
[実施例3]
実施例1の〔配合1〕のベンゾトリアゾール系互変異性体6質量部を、ジフェニルケトン系互変異性体6質量部に置き換えた〔配合4〕を用いた防汚層(3)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2の白彩色ターポリン(3)を得た。
※ジフェニルケトン系互変異性体は、エノール型として〔化5〕において、2位-水酸基(1個)/ケトン基(0個)/4位-オクトキシ基(1個)のベンゼン環(他の置換基なし)1個の1位Cと、ベンゼン環(他の置換基なし)とがC=Oを介在して結合したMW296の有機化合物
※ケト型として〔化6〕において、水酸基(0個)/2位-ケトン基(1個)/4位-オクトキシ基(1個)のベンゼン環(他の置換基なし)1個の1位Cと、ベンゼン環(他の置換基なし)とがC=Oを介在して結合(MW296)
※1位、2位、4位はベンゼン環の炭素の位置を表す
【0034】
[実施例4]
実施例1の〔配合1〕に用いた、表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm:酸化アルミニウムによる表面処理/最外層ステアリン酸処理)10質量部を、亜鉛-鉄-クロム複合酸化物(赤色系近赤外線反射性金属酸化物)10質量部に置き換えた〔配合5〕とした以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2の赤系彩色ターポリン(4)を得た。
【0035】
[実施例5]
実施例1の〔配合1〕に用いた、表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm:酸化アルミニウムによる表面処理/最外層ステアリン酸処理)10質量部を、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物(黄色系近赤外線反射性金属酸化物)10質量部に置き換えた〔配合6〕とし、さらに防汚層(1)を防汚層(2)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2の黄系彩色ターポリン(5)を得た。
【0036】
[実施例6]
実施例1の〔配合1〕に用いた、表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm:酸化アルミニウムによる表面処理/最外層ステアリン酸処理)10質量部を、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物(青色系近赤外線反射性金属酸化物)10質量部に置き換えた〔配合7〕とし、さらに防汚層(1)を防汚層(3)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2の青系彩色ターポリン(6)を得た。
【0037】
[実施例7]
実施例1の〔配合1〕に用いた、表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm:酸化アルミニウムによる表面処理/最外層ステアリン酸処理)10質量部のうち5質量部を、亜鉛-鉄-クロム複合酸化物(赤色系近赤外線反射性金属酸化物)5質量部に置き換えた〔配合8〕とした以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のパステル調赤系彩色ターポリン(7)を得た。
【0038】
[実施例8]
実施例1の〔配合1〕に用いた、表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm:酸化アルミニウムによる表面処理/最外層ステアリン酸処理)10質量部のうち5質量部を、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物(黄色系近赤外線反射性金属酸化物)5質量部に置き換えた〔配合9〕とし、さらに防汚層(1)を防汚層(2)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のパステル調黄系彩色ターポリン(8)を得た。
【0039】
[実施例9]
実施例1の〔配合1〕に用いた、表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm:酸化アルミニウムによる表面処理/最外層ステアリン酸処理)10質量部のうち5質量部を、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物(青色系近赤外線反射性金属酸化物)5質量部に置き換えた〔配合10〕とし、さらに防汚層(1)を防汚層(3)に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のパステル調青系彩色ターポリン(9)を得た。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
本発明の遮熱シートにおいて、熱可塑性樹脂層に表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm)を含有し、防汚層にケト/エノール型互変異性体、及びN-OR型ヒンダードアミン化合物を含む実施例1~3の白色系彩色のターポリン(1)~(3)は、遮熱性、耐候性に優れ、特に耐候性の向上(紫外線劣化軽減)により耐用年数の延長が可能となることが、比較例1~3で得られたシートとの対比で明らかとなった。特に熱可塑性樹脂層に顔料用の酸化チタン粒子(一次粒子径0.2μm)を用いた比較例1のシートでは耐候性には優れるものの十分な遮熱効果が得られなくなり、また防汚層からケト/エノール型互変異性体を省略した比較例2のシートでは遮熱効果には優れるものの十分な耐候性が得られなくなり、また防汚層からN-OR型ヒンダードアミンを省略した比較例3のシートにおいても遮熱効果には優れるものの十分な耐候性が得られなくなる。また実施例1~3の熱可塑性樹脂層の表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm)を各々、亜鉛-鉄-クロム複合酸化物(赤色系)、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物(黄色系)、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物(青色系)に変更した実施例4~6の着色ターポリン(4:赤色系)、(5:黄色系)、(6:青色系)、同様に表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm)白色系と、亜鉛-鉄-クロム複合酸化物(赤色系)との1:1併用の赤色系パステル(実施例7)、表面処理酸化チタン粒子(同上)と、クロム-アンチモン-チタン複合酸化物(黄色系)との1:1併用の黄色系パステル(実施例8)、表面処理酸化チタン粒子(同上)と、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物(青色系)との1:1併用の青色系パステル(実施例9)についても、白色系ターポリン(1)~(3)同様、遮熱性、耐候性に優れ、耐候性の向上(紫外線劣化軽減)により耐用年数の延長が可能となることが、比較例1~3で得られたシートとの対比で明らかとなった。これら実施例の結果、廃棄頻度(膜構造物の張替交換)を減らして廃棄する膜材(ターポリン)量を削減し、同時に膜材(ターポリン)の生産量を削減することで、二酸化炭素排出の要因となる石化資源の消費を抑え、地球環境保全に貢献するものとなることの確信を得た。
【0044】
[比較例1]
実施例1の熱可塑性樹脂層[配合1]の表面処理酸化チタン粒子(一次平均粒子径1μm)10質量部を、顔料用酸化チタン粒子(一次粒子径0.2μm)10質量部に置き換えた[配合11]を用いた以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のターポリン(10)を得た。近赤外線領域(780~2500nm)の反射効果が高い一次平均粒子径1μmの表面処理酸化チタン粒子の使用を省略したことで、ターポリン(10)の遮熱性はターポリン(1)よりも劣るものとなった。但し耐候性はターポリン(1)と同等であった。
【0045】
[比較例2]
実施例1の防汚層[配合2]からベンゾトリアゾール系互変異性体6質量部を省略し、N-OR型ヒンダードアミン2質量部のみとした[配合12]を用いた以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のターポリン(11)を得た。紫外線エネルギーを分子振動エネルギーに変換放出する効果の高い互変異性体の使用を省略したことで、ターポリン(11)の耐候性はターポリン(1)よりも劣るものとなり長期間使用に耐えないものであった。但し遮熱性はターポリン(1)と同等であった。
【0046】
[比較例3]
実施例1の防汚層[配合2]からN-OR型ヒンダードアミン2質量部を省略し、ベンゾトリアゾール系互変異性体6質量部のみとした[配合13]を用いた以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のターポリン(12)を得た。N-OR型ヒンダードアミンの使用を省略したことで、ターポリン(12)の耐候性はターポリン(1)よりも劣るものとなり長期間使用に耐えないものであった。但し遮熱性はターポリン(1)と同等であった。
【0047】
【0048】
[比較例4]
実施例4の熱可塑性樹脂層[配合5]の亜鉛-鉄-クロム複合酸化物(赤色系近赤外線反射性金属酸化物)10質量部を省略した[配合14]を用いた以外は実施例4と同様として、厚さ0.7mm、質量828g/m2の無彩色ターポリン(13)を得た。亜鉛-鉄-クロム複合酸化物(赤色系近赤外線反射性金属酸化物)の使用を省略したことで、ターポリン(13)の遮熱性はターポリン(1)よりも大きく劣るものとなった。また耐候性もターポリン(1)よりも劣るものとなった。
【0049】
[比較例5]
実施例5の防汚層[配合3]からベンゾトリアゾール系互変異性体6質量部を省略し、N-OR型ヒンダードアミン2質量部のみとした[配合15]を用いた以外は実施例5と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のターポリン(14)を得た。紫外線エネルギーを分子振動エネルギーに変換放出する効果の高い互変異性体の使用を省略したことで、ターポリン(14)の耐候性はターポリン(1)よりも劣るものとなり長期間使用に耐えないものであった。但し遮熱性はターポリン(1)と同等であった。
【0050】
[比較例6]
実施例6の防汚層[配合4]からN-OR型ヒンダードアミン2質量部を省略し、ベンゾトリアゾール系互変異性体6質量部のみとした[配合16]を用いた以外は実施例6と同様として、厚さ0.7mm、質量835g/m2のターポリン(15)を得た。N-OR型ヒンダードアミンの使用を省略したことで、ターポリン(15)の耐候性はターポリン(1)よりも劣るものとなり長期間使用に耐えないものであった。但し遮熱性はターポリン(1)と同等であった。
【0051】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、テント膜構造物用として耐用年数が延長された彩色自在な遮熱シートを得ることができる。すなわち耐候性(紫外線劣化軽減)に優れることで、綺麗なままの外観・色彩を長期間維持できるテント膜構造物用の遮熱シートの提供が可能となる。具体的に、屋内スポーツ施設、イベントパビリオン、移動サーカス、プラネタリウム、テント倉庫などの長期使用(10~15年)のテント構造物などに自在な色彩での適用が可能となり、さらに、建築養生(防音)シート、パーゴラシェード(膜天井)、ファサードシート、昇降式シートシャッター、間仕切りシート、トラック幌、野積防水シート、屋形テントなどの10年未満の用途にも自在な色彩での展開を可能となる。特に、テント膜構造物の耐用年数が延長されることによって、廃棄頻度(すなわち張替)が減り、同時に遮熱シート自体の生産量も減ることで二酸化炭素排出の要因となる石化資源の消費を抑え、持続性のある地球環境保全に貢献することができるようになる。