(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106090
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】日射熱負荷算出装置、日射熱負荷算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240731BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240731BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240731BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010193
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相賀 洋
(72)【発明者】
【氏名】木本 慶介
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DJ01
5B146DJ11
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】内部空間に日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷算出を行う技術を提供する。
【解決手段】日射熱負荷算出装置1は、内部空間に、少なくとも天井、OA床、及び窓を含む建物の構造体よりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する。日射熱負荷算出装置1は、第1放熱量算出部10aと、第2放熱量算出部10bと、第3放熱量算出部10cと、合計放熱量算出部10dと、を備える。第1放熱量算出部は、日射遮蔽物に吸収される第1吸熱量に基づいて、日射遮蔽物から内部空間に放出される第1放熱量を算出する。第2放熱量算出部は、建物の構造体に吸収される第2吸熱量に基づいて、構造体から内部空間に放出される第2放熱量を算出する。第3放熱量算出部は、内部空間に放出される第3放熱量を算出する。合計放熱量算出部は、第1放熱量、第2放熱量、及び、第3放熱量を足し合わせることにより、建物の日射熱負荷を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に、少なくとも天井、OA床、及び窓を含む建物の構造体よりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出装置であって、
自然光の日射熱量のうち、前記日射遮蔽物に吸収される熱量である第1吸熱量に基づいて、前記日射遮蔽物から前記内部空間に放出される熱量である第1放熱量を算出する第1放熱量算出部と、
前記日射熱量のうち、前記構造体に吸収される熱量である第2吸熱量に基づいて、前記構造体から前記内部空間に放出される熱量である第2放熱量を算出する第2放熱量算出部と、
前記日射熱量のうち、前記窓を透過して前記内部空間に放出される熱量である第3放熱量を算出する第3放熱量算出部と、
前記第1放熱量、前記第2放熱量、及び、前記第3放熱量を足し合わせることにより、前記建物の日射熱負荷を算出する合計放熱量算出部と、を備える、
ことを特徴とする日射熱負荷算出装置。
【請求項2】
前記第1放熱量算出部は、
前記日射熱量のうち、前記天井と対向する前記日射遮蔽物の上面に吸収される熱量である上面吸熱量に基づいて、前記上面から前記内部空間に放出される熱量である第1上面放熱量、及び、前記OA床と対向する前記日射遮蔽物の下面から前記内部空間に放出される熱量である第1下面放熱量を算出し、
前記日射熱量のうち、前記下面に吸収される熱量である下面吸熱量に基づいて、前記下面から前記内部空間に放出される熱量である第2下面放熱量、及び、前記上面から前記内部空間に放出される熱量である第2上面放熱量を算出し、
前記第1上面放熱量及び前記第2上面放熱量の和からなる上面放熱量と、前記第1下面放熱量及び前記第2下面放熱量の和からなる下面放熱量と、を算出し、
前記上面放熱量及び前記下面放熱量を足し合わせることにより、前記第1放熱量を算出する、
請求項1に記載の日射熱負荷算出装置。
【請求項3】
前記日射遮蔽物の熱伝達率、前記日射熱量、前記日射熱量のうち前記上面吸熱量の割合を示す第1日射熱吸収率、及び、前記日射熱量のうち前記下面吸熱量の割合を示す第2日射熱吸収率を取得するデータ取得部と、
前記上面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第1上面放熱量を示す単位第1上面放熱量、及び、前記第1下面放熱量を示す単位第1下面放熱量、並びに、前記下面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第2上面放熱量を示す単位第2上面放熱量、及び、前記第2下面放熱量を示す単位第2下面放熱量、を記憶する記憶部と、
前記第1日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、前記日射熱量を乗ずることにより、前記上面の日射吸収量に相当する前記上面の表面温度の上昇量を示す第1表面温度上昇量を算出し、且つ、前記第2日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、前記日射熱量を乗ずることにより、前記下面の日射吸収量に相当する前記下面の表面温度の上昇量を示す第2表面温度上昇量を算出する温度算出部と、
を備え、
前記第1放熱量算出部は、
前記第1表面温度上昇量及び前記単位第1上面放熱量を掛け合わせることにより、前記第1上面放熱量を算出し、
前記第1表面温度上昇量及び前記単位第1下面放熱量を掛け合わせることにより、前記第1下面放熱量を算出し、
前記第2表面温度上昇量及び前記単位第2上面放熱量を掛け合わせることにより、前記第2上面放熱量を算出し、
前記第2表面温度上昇量及び前記単位第2下面放熱量を掛け合わせることにより、前記第2下面放熱量を算出する、
請求項2に記載の日射熱負荷算出装置。
【請求項4】
前記日射遮蔽物の熱伝達率、複数の時刻における前記日射熱量、前記日射熱量のうち前記上面吸熱量の割合を示す複数の時刻における第1日射熱吸収率、及び、前記日射熱量のうち前記下面吸熱量の割合を示す複数の時刻における第2日射熱吸収率を取得するデータ取得部と、
前記上面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第1上面放熱量を示す単位第1上面放熱量、及び、前記第1下面放熱量を示す単位第1下面放熱量、並びに、前記下面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第2上面放熱量を示す単位第2上面放熱量、及び、前記第2下面放熱量を示す単位第2下面放熱量、を記憶する記憶部と、
各時刻における前記第1日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、同時刻における前記日射熱量を乗ずることにより、各時刻における前記上面の日射吸収量に相当する前記上面の表面温度の上昇量を示す複数の第1表面温度上昇量を算出し、且つ、各時刻における前記第2日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、同時刻における前記日射熱量を乗ずることにより、各時刻における前記下面の日射吸収量に相当する前記下面の表面温度の上昇量を示す複数の第2表面温度上昇量を算出する温度算出部と、を備え、
前記第1放熱量算出部は、
各時刻における前記第1表面温度上昇量、及び、単位第1上面放熱量の積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第1中間値を足し合わせることにより、前記第1上面放熱量を算出し、
各時刻における前記第1表面温度上昇量、及び、単位第1下面放熱量の積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第2中間値を足し合わせることにより、前記第1下面放熱量を算出し、
各時刻における前記第2表面温度上昇量、及び、単位第2上面放熱量の積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第3中間値を足し合わせることにより、前記第2上面放熱量を算出し、
各時刻における前記第2表面温度上昇量、及び、単位第2下面放熱量の積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第4中間値を足し合わせることにより、前記第2下面放熱量を算出する、
請求項2に記載の日射熱負荷算出装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行され、内部空間に、少なくとも天井、OA床、及び窓を含む建物の構造体によりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出方法であって、
自然光の日射熱量のうち、前記日射遮蔽物に吸収される熱量である第1吸熱量に基づいて、前記日射遮蔽物から前記内部空間に放出される熱量である第1放熱量を算出する第1放熱量算出ステップと、
前記日射熱量のうち、前記構造体に吸収される熱量である第2吸熱量に基づいて、前記構造体から前記内部空間に放出される熱量である第2放熱量を算出する第2放熱量算出ステップと、
前記日射熱量のうち、前記窓を透過して前記内部空間に放出される熱量である第3放熱量を算出する第3放熱量算出ステップと、
前記第1放熱量、前記第2放熱量、及び、前記第3放熱量を足し合わせることにより、前記建物Bの日射熱負荷を算出する合計放熱量算出ステップと、を備える、
ことを特徴とする日射熱負荷算出方法。
【請求項6】
前記第1放熱量算出ステップにおいて、
前記日射熱量のうち、前記天井と対向する前記日射遮蔽物の上面に吸収される熱量である上面吸熱量に基づいて、前記上面から前記内部空間に放出される熱量である第1上面放熱量、及び、前記OA床と対向する前記日射遮蔽物の下面から前記内部空間に放出される熱量である第1下面放熱量を算出し、
前記日射熱量のうち、前記下面に吸収される熱量である下面吸熱量に基づいて、前記下面から前記内部空間に放出される熱量である第2下面放熱量、及び、前記上面から前記内部空間に放出される熱量である第2上面放熱量を算出し、
前記第1上面放熱量及び前記第2上面放熱量の和からなる上面放熱量と、前記第1下面放熱量及び前記第2下面放熱量の和からなる下面放熱量と、を算出し、
前記上面放熱量及び前記下面放熱量を足し合わせることにより、前記第1放熱量を算出する、
請求項5に記載の日射熱負荷算出方法。
【請求項7】
前記日射遮蔽物の熱伝達率、前記日射熱量、前記日射熱量のうち前記上面吸熱量の割合を示す第1日射熱吸収率、及び、前記日射熱量のうち前記下面吸熱量の割合を示す第2日射熱吸収率を取得するデータ取得ステップと、
前記上面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第1上面放熱量を示す単位第1上面放熱量、及び、前記第1下面放熱量を示す単位第1下面放熱量、並びに、前記下面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第2上面放熱量を示す単位第2上面放熱量、及び、前記第2下面放熱量を示す単位第2下面放熱量、を記憶させる記憶ステップと、
前記第1日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、前記日射熱量を乗ずることにより、前記上面の日射吸収量に相当する前記上面の表面温度の上昇量を示す第1表面温度上昇量を算出し、且つ、前記第2日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、前記日射熱量を乗ずることにより、前記下面の日射吸収量に相当する前記下面の表面温度の上昇量を示す第2表面温度上昇量を算出する温度算出ステップと、を備え、
前記第1放熱量算出ステップにおいて、
前記第1表面温度上昇量及び前記単位第1上面放熱量を掛け合わせることにより、前記第1上面放熱量を算出し、
前記第1表面温度上昇量及び前記単位第1下面放熱量を掛け合わせることにより、前記第1下面放熱量を算出し、
前記第2表面温度上昇量及び前記単位第2上面放熱量を掛け合わせることにより、前記第2上面放熱量を算出し、
前記第2表面温度昇量及び前記単位第2下面放熱量を掛け合わせることにより、前記第2下面放熱量を算出する、
請求項6に記載の日射熱負荷算出方法。
【請求項8】
前記日射遮蔽物の熱伝達率、複数の時刻における前記日射熱量、前記日射熱量のうち前記上面吸熱量の割合を示す複数の時刻における第1日射熱吸収率、及び、前記日射熱量のうち前記下面吸熱量の割合を示す複数の時刻における第2日射熱吸収率を取得するデータ取得ステップと、
前記上面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第1上面放熱量を示す単位第1上面放熱量、及び、前記第1下面放熱量を示す単位第1下面放熱量、並びに、前記下面の表面温度の上昇量が1℃である場合の、前記第2上面放熱量を示す単位第2上面放熱量、及び、前記第2下面放熱量を示す単位第2下面放熱量、を記憶させる記憶ステップと、を備え、
各時刻における前記第1日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、同時刻における前記日射熱量を乗ずることにより、各時刻における前記上面の日射吸収量に相当する前記上面の表面温度の上昇量を示す複数の第1表面温度上昇量を算出し、且つ、各時刻における前記第2日射熱吸収率を前記熱伝達率で除した値に、同時刻における前記日射熱量を乗ずることにより、各時刻における前記下面の日射吸収量に相当する前記下面の表面温度の上昇量を示す複数の第2表面温度上昇量を算出する温度算出ステップと、
前記第1放熱量算出ステップにおいて、
各時刻における前記第1表面温度上昇量、及び、単位第1上面放熱量の積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第1中間値を足し合わせることにより、前記第1上面放熱量を算出し、
各時刻における前記第1表面温度上昇量、及び、単位第1下面放熱量の積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第2中間値を足し合わせることにより、前記第1下面放熱量を算出し、
各時刻における前記第2表面温度上昇量、及び、単位第2上面放熱量の積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第3中間値を足し合わせることにより、前記第2上面放熱量を算出し、
各時刻における前記第2表面温度上昇量、及び、単位第2下面放熱量の積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における前記第4中間値を足し合わせることにより、前記第2下面放熱量を算出する、
請求項6に記載の日射熱負荷算出方法。
【請求項9】
内部空間に日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、請求項5から8までのいずれか一項記載の日射熱負荷算出方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射熱負荷算出装置、日射熱負荷算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の熱負荷を算出することを目的とするプログラムとして「HASP/ACLD/8501」、「HASP/ACSS/8502」、「NewHASP/ACLD」が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】一般社団法人建築設備技術者協会,”動的日射熱負荷計算・空調システム計算方法”,[2022年12月21日検索],インターネット<URL: https://www.jabmee.or.jp/hasp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物内部には、庇等の日射遮蔽物が設けられることがある。この日射遮蔽物に、建物外部から自然光が到達し吸収されると、日射遮蔽物には熱が蓄積される。この熱は、日射遮蔽物の熱容量が大きい場合、時間の経過に伴って、日射遮蔽物から放出されるため、建物の日射熱負荷に、時間遅れを伴って影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部空間に熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷算出を行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る日射熱負荷算出装置は、内部空間に、少なくとも天井、OA床、及び窓を含む建物の構造体よりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出装置であって、自然光の日射熱量のうち、前記日射遮蔽物に吸収される熱量である第1吸熱量に基づいて、前記日射遮蔽物から前記内部空間に放出される熱量である第1放熱量を算出する第1放熱量算出部と、前記日射熱量のうち、前記構造体に吸収される熱量である第2吸熱量に基づいて、前記構造体から前記内部空間に放出される熱量である第2放熱量を算出する第2放熱量算出部と、前記日射熱量のうち、前記窓を透過して前記内部空間に放出される熱量である第3放熱量を算出する第3放熱量算出部と、前記第1放熱量、前記第2放熱量、及び、前記第3放熱量を足し合わせることにより、前記建物の日射熱負荷を算出する合計放熱量算出部と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る日射熱負荷算出方法は、コンピュータによって実行され、内部空間に、少なくとも天井、OA床、及び窓を含む建物の構造体よりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出方法であって、自然光の日射熱量のうち、前記日射遮蔽物に吸収される熱量である第1吸熱量に基づいて、前記日射遮蔽物から前記内部空間に放出される熱量である第1放熱量を算出する第1放熱量算出ステップと、前記日射熱量のうち、前記構造体に吸収される熱量である第2吸熱量に基づいて、前記構造体から前記内部空間に放出される熱量である第2放熱量を算出する第2放熱量算出ステップと、前記日射熱量のうち、前記窓を透過して前記内部空間に放出される熱量である第3放熱量を算出する第3放熱量算出ステップと、前記第1放熱量、前記第2放熱量、及び、前記第3放熱量を足し合わせることにより、前記建物の日射熱負荷を算出する合計放熱量算出ステップと、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、内部空間に、少なくとも天井、OA床、及び窓を含む建物の構造体よりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、上記日射熱負荷算出方法を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部空間に熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷算出を行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る日射熱負荷算出装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の日射熱負荷算出装置により日射熱負荷算出が行われる建物と、当該建物に対する吸熱、放熱の一例を示す図である。
【
図3】
図2のライトシェルフにおける吸熱及び放熱を説明する図である。
【
図4】本実施形態に係る日射熱負荷算出方法の一例を示すステップチャートである。
【
図5】本実施形態に係る日射熱負荷算出装置の変形例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る日射熱負荷算出方法の変形例を示すステップチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る日射熱負荷算出装置1の一例を示すブロック図である。
図2は、
図1の日射熱負荷算出装置1により日射熱負荷算出が行われる建物Bと、当該建物Bに対する吸熱、放熱の一例を示す図である。
図3は、
図2のライトシェルフ300における吸熱及び放熱を説明する図である。
【0013】
以下の説明においては、
図2に示すように、重力方向に従って上下方向を定義する。また、上下方向に対して垂直な方向であって、
図2に示す紙面左右方向を前後方向と定義する。
【0014】
本明細書で使用する用語の定義をする。
【0015】
「自然光」とは、太陽を光源として地球上に到達する光のことである。自然光は、直射光及び散乱光を含む。直射光は、自然光のうち、水蒸気や塵などによって拡散、吸収されることなく、直接地表面に到達する光をいう。散乱光は、自然光のうち、大気中の塵や雲などの微粒子により拡散された後、地表面に到達する光をいう。
【0016】
「日射熱量」とは、単位面積が単位時間に太陽から受ける放射エネルギーの量である。日射熱量は、W/m2の単位により表される。日射熱量は、熱環境シミュレーションプログラム(例えばNewHASP)を用いて算出される。熱環境シミュレーションプログラムは、所定時間毎(例えば毎時)の日射熱量を算出する。
【0017】
「熱伝達率」とは、2種類の物質間での熱エネルギーの伝え易さを表す値である。熱伝達率は、単位面積、単位時間、単位温度差あたりの伝熱量であり、W/m2・Kの単位により表される。熱伝達率は、対象となる物質の材質、形状等に基づいて予め算出される。
【0018】
「建物の構成要素」とは、ビル等の建物を構成する各要素である。建物の構成要素は、例えば、基礎、柱、壁、天井、OA床、ライトシェルフ、窓、配管等をいう。本実施形態では、建物の構成要素とは、天井100、OA床200、ライトシェルフ300、窓Wをいう(
図2)。
【0019】
「日射熱吸収率」とは、日射熱量のうち、建物の構成要素に吸収される熱量の割合を表す。日射熱吸収率は、光環境シミュレーションプログラム(例えばRadiance)を用いて算出される。光環境シミュレーションプログラムは、所定時間毎(例えば毎時)の日射熱吸収率を算出する。
【0020】
「窓の日射熱吸収率」とは、日射熱量のうち、窓に吸収される熱量の割合であり、従来通り、所定時間毎(毎時)に、入射角によりEXCEL等を用いて算出される。
【0021】
「日射透過率」とは、日射熱量のうち、窓を透過して建物の内部空間へ入る熱量の割合を表す。日射透過率は、光環境シミュレーションプログラム(例えばRadiance)を用いて算出される。光環境シミュレーションプログラムは、所定時間毎(例えば毎時)の日射透過率を算出する。
【0022】
「上昇温度」とは、建物の構成要素の、現在の温度に対する上昇後の温度の変化量である。上昇温度は、Kの単位により表される。
【0023】
「日射吸収量に相当する表面温度の上昇量」とは、建物の構成要素が日射受熱し、この構成要素の表面温度が日射吸収により温度上昇した場合の当該表面温度の上昇量である。「日射吸収量に相当する表面温度の上昇量」は、「(日射吸収率/熱伝達率)×日射熱量」の式により算出される。
【0024】
[建物B]
図2を参照して、建物Bの構成を説明する。建物Bは、その内部空間Rに、ライトシェルフ300、及び、構造体500を有する。
【0025】
構造体500は、少なくとも天井100、OA床200、及び窓Wの構成要素を含む。構造体500は、図示しない柱や壁等の構成要素を含んでもよい。各構成要素は、自然光Lの日射熱を吸収するとともに、吸収した日射熱を放出する。
【0026】
天井100は、梁などの躯体B1に取り付けられる平板状の天井板120と、天井板120と当該躯体B1との間に形成される天井空間110とを有する。天井板120は、躯体B1に取り付けられた状態で、下方を向く天井面130を有する。
【0027】
OA床200は、梁などの躯体B2に取り付けられる平板状の床板220と、床板220と当該躯体B2との間に形成される床空間210とを有する。床板220は、躯体B2に取り付けられた状態で、上方を向くOA床面230を有する。
【0028】
窓Wは、天井100とOA床200との間に配置されるフルハイトの窓である。窓Wは、天井100及びライトシェルフ300の間に位置する上側窓部WUと、OA床200及びライトシェルフ300の間に位置する下側窓部WLとに分けられる。上側窓部WU及び下側窓部WLは、外部空間Oから内部空間Rへ自然光Lを透過するよう構成される。
【0029】
ライトシェルフ300は、本発明に係る日射遮蔽物の一例である。ライトシェルフ300は、天井100とOA床200の間において、窓Wから内部空間Rの側に延在するよう構成される。ライトシェルフ300は、天井面130と対向する上面310と、OA床面230と対向する下面320とを有する。ライトシェルフ300は、外部空間Oから内部空間Rに入る自然光Lを上面310で遮蔽しつつ、上面310で反射させた自然光Lを、天井面130に間接照明光として照射する。ライトシェルフ300は、例えばコンクリート製であり、自然光Lの日射熱を吸収するとともに、時間の経過に伴って、吸収した熱を放出する。本実施形態では、ライトシェルフ300は、吸収した日射熱を、時間遅れを伴って、内部空間Rに放出するものとする。
【0030】
[日射熱負荷算出装置1]
日射熱負荷算出装置1は、内部空間Rにライトシェルフ300を有する建物Bの日射熱負荷を算出するコンピュータである。
図1に示すように、日射熱負荷算出装置1は、制御部10と、表示部20と、入力部30と、記憶部40と、通信I/F50と、バス80と、を備える。バス80は、制御部10と、表示部20と、入力部30と、記憶部40と、通信I/F50とを、通信可能に接続する。
【0031】
<制御部10の概要>
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサにより構成されている。制御部10は、日射熱負荷算出装置1の各種処理を統括的に制御する。制御部10は、記憶部40に予め記憶された熱負荷算出プログラム42を読み出し、当該熱負荷算出プログラム42を実行することで、日射熱負荷算出方法を実現する。制御部10の詳細な説明は、後述する。
【0032】
<表示部20>
表示部20は、例えば液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置、又はプロジェクタ等である。表示部20は、制御部10における演算処理によって生成された映像信号を、バス80を介して受信する。表示部20は、受信した映像信号に基づいて、所定の映像を表示する。表示部20は、制御部10と一体に構成されてもよいし、制御部10と別体に構成されてもよい。
【0033】
<入力部30>
入力部30は、例えばマウス、キーボード、又はマイクロフォン等を含んで構成される。入力部30は、表示部20の表面に設けられたタッチパネルであってもよい。入力部30は、ユーザによる操作内容に応じた信号を、バス80を介して制御部10に送信する。
【0034】
<記憶部40>
記憶部40は、制御部10により読み取り可能な非一過性の記録媒体であり、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等である。記憶部40は、制御部10に内蔵されたものでもよいし、制御部10とは別に設けられたものでもよい。記憶部40には、制御部10における各種処理に用いられる種々の情報が格納される。本実施形態において、記憶部40には、熱負荷算出プログラム42、設計データ44、及び放熱量データ46が格納される。また、記憶部40には、日射熱量I、熱伝達率α、日射熱吸収率a、日射透過率τ等が格納されてもよい。
【0035】
熱負荷算出プログラム42は、制御部10によって読み取られ、本実施形態に係る日射熱負荷算出方法を、制御部10に実行させるためのソフトウェアである。熱負荷算出プログラム42の内の日射熱負荷算出方法の詳細な説明は、後述する。
【0036】
設計データ44は、BIM(Building Information Modeling)及びCAD(Computer-Aided Design)を実現するソフトウェアによって作成された建物Bのデータである。本実施形態において、設計データ44は、建物Bの構成要素の形状、材質、位置等のデータを含む。
【0037】
形状のデータは、建物Bの構成要素の形状を、ローカル座標で表現するデータである。材質のデータは、建物Bの構成要素の材質を定義するデータである。位置のデータは、建物Bの構成要素の設置位置及び設置向きを、ワールド座標系で表現するデータである。
【0038】
放熱量データ46は、制御部10が熱負荷算出プログラム42を読み取り、日射熱負荷算出方法を実行する際に用いられるライトシェルフ300のデータである。放熱量データ46は、単位第1上面放熱量46a、単位第1下面放熱量46b、単位第2上面放熱量46c、及び、単位第2下面放熱量46dを含む。放熱量データ46は、予め実験等により算出される。放熱量データ46は、例えば、ユーザが入力部30を操作することによって、記憶部40に格納される。
【0039】
単位第1上面放熱量46aは、日射熱量Iのうち上面310に吸収された熱量により上面310の表面温度が1℃上昇した場合に、上面310から内部空間Rに放出される熱量を示す。単位第1下面放熱量46bは、日射熱量Iのうち上面310に吸収された熱量により上面310の表面温度が1℃上昇した場合に、下面320から内部空間Rに放出される熱量を示す。単位第2上面放熱量46cは、日射熱量Iのうち下面320に吸収された熱量により下面320の表面温度が1℃上昇した場合に、上面310から内部空間Rに放出される熱量を示す。単位第2下面放熱量46dは、日射熱量Iのうち下面320に吸収された熱量により下面320の表面温度が1℃上昇した場合に、下面320から内部空間Rに放出される熱量を示す。単位第1上面放熱量46a、単位第1下面放熱量46b、単位第2上面放熱量46c、及び、単位第2下面放熱量46dは、ライトシェルフ300に日射熱が吸収された後、一定の時間遅れを伴って、内部空間Rに放出される熱量である。
【0040】
<通信I/F50>
通信I/F50は、日射熱負荷算出装置1を、サーバ等の外部装置60に、有線(例えばLAN)又は無線(例えばインターネット)を介して通信可能に接続する。外部装置60には、例えば、日射熱量I、熱伝達率α、日射熱吸収率a、及び日射透過率τ等が格納されてもよい。
【0041】
<制御部10の詳細>
制御部10は、日射熱量Iのうち、ライトシェルフ300及び構造体500に吸収され、内部空間Rに放出される熱量と、窓Wを透過して内部空間Rに放出される熱量とを算出する。
図1に示すように、制御部10は、第1放熱量算出部10aと、第2放熱量算出部10bと、第3放熱量算出部10cと、合計放熱量算出部10dと、データ取得部10eと、温度算出部10fと、を有する。
【0042】
制御部10は、記憶部40に格納された設計データ44を読み込む。これにより、制御部10は、建物Bの構成要素の形状、材質、位置のデータに従って、当該構成要素のモデルを、表示部20に表示させる。具体的には、制御部10は、表示部20に、天井100、OA床200、ライトシェルフ300、及び、窓Wを有する建物Bを表示させる。
【0043】
<<データ取得部10e>>
データ取得部10eは、通信I/F50及びバス80を介して、外部装置60から所定のデータを取得する。データ取得部10eは、バス80を介して、記憶部40から所定のデータを取得してもよい。本実施形態では、データ取得部10eは、所定のデータとして、ライトシェルフ300及び構造体500の熱伝達率α及び日射熱吸収率a、日射熱量I、窓Wの日射透過率τを取得する。
【0044】
ライトシェルフ300の熱伝達率αは、上面310と内部空間Rとの間での熱伝達率と、下面320と内部空間Rとの間での熱伝達率と、を含む。
【0045】
また、ライトシェルフ300の日射熱吸収率aは、第1日射熱吸収率aa及び第2日射熱吸収率abを含む。第1日射熱吸収率aaは、日射熱量Iのうち、上面310に吸収される熱量である上面吸熱量H11_inの割合を示す(
図2)。第2日射熱吸収率abは、日射熱量Iのうち、下面320に吸収される熱量である下面吸熱量H15_inの割合を示す(
図2)。
【0046】
<<温度算出部10f>>
温度算出部10fは、データ取得部10eにより取得されたデータに基づいて、ライトシェルフ300の日射吸収量に相当するライトシェルフ300の表面温度の上昇量を算出する。具体的には、温度算出部10fは、第1日射熱吸収率aaを熱伝達率αで除した値に、日射熱量Iを乗ずることにより、第1表面温度上昇量Giを算出する。第1表面温度上昇量Giは、上面310の日射吸収量に相当する上面310の表面温度の上昇量を示す。つまり、温度算出部10fは、下記の式(1)により、第1表面温度上昇量Giを算出する。
【0047】
[数1]
「(第1日射熱吸収率aa/熱伝達率α)×日射熱量I」・・・式(1)
【0048】
また、温度算出部10fは、第2日射熱吸収率abを熱伝達率αで除した値に、日射熱量Iを乗ずることにより、第2表面温度上昇量Gdを算出する。第2表面温度上昇量Gdは、下面320の日射吸収量に相当する下面320の表面温度の上昇量を示す。つまり、温度算出部10fは、下記の式(2)により、第2表面温度上昇量Gdを算出する。
【0049】
[数2]
「(第2日射熱吸収率ab/熱伝達率α)×日射熱量I」・・・式(2)
【0050】
<<第1放熱量算出部10a>>
第1放熱量算出部10aは、自然光Lの日射熱量Iのうち、ライトシェルフ300に吸収される熱量である第1吸熱量H1_inに基づいて、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される熱量である第1放熱量H1_outを算出する(
図2)。
【0051】
具体的には、第1放熱量算出部10aは、上面吸熱量H11_inに基づいて、上面310から内部空間Rに放出される熱量である第1上面放熱量H11_out、及び、下面320から内部空間Rに放出される熱量である第1下面放熱量H12_outを算出する(
図2及び
図3)。
【0052】
より具体的には、第1放熱量算出部10aは、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1上面放熱量46aを掛け合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(3)により、第1上面放熱量H11_outを算出する。
【0053】
[数3]
「式(1)×(単位第1上面放熱量46a」・・・式(3)
【0054】
第1放熱量算出部10aは、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1下面放熱量46bを掛け合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(4)により、第1下面放熱量H12_outを算出する。
【0055】
[数4]
「式(1)×(単位第1下面放熱量46b」・・・式(4)
【0056】
また、第1放熱量算出部10aは、下面吸熱量H15_inに基づいて、下面320から内部空間Rに放出される熱量である第2下面放熱量H15_out、及び、上面310から内部空間Rに放出される熱量である第2上面放熱量H16_outを算出する(
図2及び
図3)。
【0057】
より具体的には、第1放熱量算出部10aは、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2上面放熱量46cを掛け合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(5)により、第2上面放熱量H16_outを算出する。
【0058】
[数5]
「式(2)×(単位第2上面放熱量46c」・・・式(5)
【0059】
第1放熱量算出部10aは、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2下面放熱量46dを掛け合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(6)により、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0060】
[数6]
「式(2)×(単位第2下面放熱量46d」・・・式(6)
【0061】
そして、第1放熱量算出部10aは、第1上面放熱量H11_out及び第2上面放熱量H16_outの和からなる上面放熱量H20を算出する(
図3)。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(7)により、上面放熱量H20を算出する。
【0062】
[数7]
「式(3)+式(4)」・・・式(7)
【0063】
また、第1放熱量算出部10aは、第1下面放熱量H12_out及び第2下面放熱量H15_outの和からなる下面放熱量H30を算出する(
図3)。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(8)により、下面放熱量H30を算出する。
【0064】
[数8]
「式(5)+式(6)」・・・式(8)
【0065】
第1放熱量算出部10aは、上面放熱量H20及び下面放熱量H30を足し合わせることにより、第1放熱量H1_outを算出する(
図2及び
図3)。つまり、第1放熱量算出部10aは、下記の式(9)により、第1放熱量H1_outを算出する。
【0066】
[数9]
「式(7)+式(8)」・・・式(9)
【0067】
<<第2放熱量算出部10b>>
第2放熱量算出部10bは、日射熱量Iのうち、建物Bの構造体500に吸収される熱量である第2吸熱量H2_inに基づいて、構造体500から内部空間Rに放出される熱量である第2放熱量H2_outを算出する(
図2)。
【0068】
本実施形態において、第2吸熱量H2_inは、天井板120に吸収される熱量である天井吸熱量H100_inと、床板220に吸収される熱量である床吸熱量H200_inと、窓Wに吸収される熱量である窓吸熱量と、を含む。窓吸熱量は、上側窓部WUに吸収される熱量である上窓吸熱量Hwu_inと、下側窓部WLに吸収される熱量である下窓吸熱量HwL_inと、を含む。
【0069】
また、本実施形態において、第2放熱量H2_outは、天井板120から放出される熱量である天井放熱量H100_outと、床板220から放出される熱量である床放熱量H200_outと、窓Wから放出される熱量である窓放熱量と、を含む。窓放熱量は、上側窓部WUから放出される熱量である上窓放熱量Hwu_outと、下側窓部WLから放出される熱量である下窓放熱量HwL_outと、を含む。
【0070】
具体的には、第2放熱量算出部10bは、天井吸熱量H100_inに基づいて天井放熱量H100_outを算出する(
図2)。
【0071】
より具体的には、第2放熱量算出部10bは、天井板120と内部空間Rとの間の熱伝達率α1を、当該熱伝達率α1と天井板120と天井空間110との間の熱伝達率α1’との和により除した値に、天井板120の日射熱吸収率a1、及び日射熱量Iを乗ずることにより、天井放熱量H100_outを算出する。つまり、第2放熱量算出部10bは、下記の式(10)により、天井放熱量H100_outを算出する。
【0072】
[数10]
「(α1/(α1+α1’))×a1×I」・・・式(10)
【0073】
また、第2放熱量算出部10bは、床吸熱量H200_inに基づいて床放熱量H200_outを算出する(
図2)。
【0074】
具体的には、第2放熱量算出部10bは、床板220と内部空間Rとの間の熱伝達率α2を、当該熱伝達率α2と床板220と床空間210との間の熱伝達率α2’との和により除した値に、床板220の日射熱吸収率a2、及び日射熱量Iを乗ずることにより、床放熱量H200_outを算出する。つまり、第2放熱量算出部10bは、下記の式(11)により、床放熱量H200_outを算出する。
【0075】
[数11]
「(α2/(α2+α2’))×a2×I」・・・式(11)
【0076】
また、第2放熱量算出部10bは、窓吸熱量に基づいて窓放熱量を算出する、本実施形態では、第2放熱量算出部10bは、上窓吸熱量Hwu_inに基づいて上窓放熱量Hwu_outを算出し、下窓吸熱量HwL_inに基づいて下窓放熱量HwL_outを算出する。
【0077】
具体的には、第2放熱量算出部10bは、窓Wと内部空間Rとの間の熱伝達率αWを、当該熱伝達率αWと窓Wと外部空間Oの間の熱伝達率αW’との和により除した値に、窓Wの日射熱吸収率aW、及び日射熱量Iを乗ずることにより、窓放熱量を算出する。つまり、第2放熱量算出部10bは、下記の式(12)により、窓放熱量を算出する。
【0078】
[数12]
「(αW/(αW+αW’))×aW×I」・・・式(12)
【0079】
本実施形態では、第2放熱量算出部10bは、上側窓部WUと内部空間Rとの間の熱伝達率αWUを、当該熱伝達率αWUと上側窓部WUと外部空間Oの間の熱伝達率αWU’との和により除した値に、上側窓部WUの日射熱吸収率aWU及び日射熱量Iを乗ずることにより、上窓放熱量Hwu_outを算出する。つまり、第2放熱量算出部10bは、下記の式(13)により、上窓放熱量Hwu_outを算出する。
【0080】
[数13]
「(αWU/(αWU+αWU’))×aWU×I」・・・式(13)
【0081】
また、第2放熱量算出部10bは、下側窓部WLと内部空間Rとの間の熱伝達率αWLを、当該熱伝達率αWLと下側窓部WLと外部空間Oの間の熱伝達率αWL’との和により除した値に、下側窓部WLの日射熱吸収率aWU及び日射熱量Iを乗ずることにより、下窓放熱量HwL_outを算出する。つまり、第2放熱量算出部10bは、下記の式(14)により、下窓放熱量HwL_outを算出する。
【0082】
[数14]
「(αWL/(αWL+αWL’))×aWL×I」・・・式(14)
【0083】
第2放熱量算出部10bは、天井放熱量H100_outと、床放熱量H200_outと、上窓放熱量Hwu_outと、下窓放熱量HwL_outとを足し合わせることにより、第2放熱量H2_outを算出する。つまり、第2放熱量算出部10bは、下記の式(15)により、第2放熱量H2_outを算出する。本実施形態では、第2放熱量算出部10bが、下記の式(15)により、第2放熱量H2_outを算出する場合を説明するが、第2放熱量算出部10bは、下記の式(16)により、第2放熱量H2_outを算出してもよい。
【0084】
[数15]
「式(10)+式(11)+式(13)+式(14)」・・・式(15)
【0085】
[数16]
「式(10)+式(11)+式(12)」・・・式(16)
【0086】
<<第3放熱量算出部10c>>
第3放熱量算出部10cは、窓Wの日射透過率τと日射熱量Iを掛け合わせることにより、第3放熱量H3_outを算出する。つまり、第3放熱量算出部10cは、下記の式(17)により、第3放熱量H3_outを算出する。
【0087】
[数17]
「τ×I」・・・式(17)
【0088】
本実施形態では、第3放熱量算出部10cは、上側窓部WUの日射透過率τ1と日射熱量Iとの積と、下側窓部WLの日射透過率τ2と日射熱量Iとの積と、を足し合わせることにより第3放熱量H3_outを算出する。つまり、第3放熱量算出部10cは、下記の式(18)により、第3放熱量H3_outを算出する。
【0089】
[数18]
「(τ1×I)+(τ2×I)」・・・式(18)
【0090】
<<合計放熱量算出部>>
合計放熱量算出部10dは、第1放熱量H1_out、第2放熱量H2_out、及び、第3放熱量H3_outを足し合わせることにより、建物Bの日射熱負荷を算出する。つまり、合計放熱量算出部10dは、下記の式(19)により、建物Bの日射熱負荷を算出する。本実施形態では、合計放熱量算出部10dが、下記の式(19)により、建物Bの日射熱負荷を算出する場合を説明するが、合計放熱量算出部10dは、下記の式(20)により、建物Bの日射熱負荷を算出してもよい。
【0091】
[数19]
「式(9)+式(15)+式(18)」・・・式(19)
【0092】
[数20]
「式(9)+式(16)+式(17)」・・・式(20)
【0093】
[日射熱負荷算出方法]
次いで、本実施形態に係る日射熱負荷算出方法の説明をする。
図4は、本実施形態に係る日射熱負荷算出方法のステップチャート一例である。
【0094】
本実施形態に係る日射熱負荷算出方法は、コンピュータとしての制御部10によって実行され、内部にライトシェルフ300を有する建物Bの日射熱負荷を算出する。
【0095】
<記憶ステップS10>
記憶ステップS10において、制御部10は、入力部30及びバス80を介して、単位第1上面放熱量46a、単位第1下面放熱量46b、単位第2上面放熱量46c、及び、単位第2下面放熱量46dの放熱量データ46を、記憶部40に記憶させる。また、記憶ステップS10において、制御部10は、通信I/F50及びバス80を介して、日射熱量I、熱伝達率α、日射熱吸収率a、日射透過率τ等を記憶部40に記憶させる。
【0096】
<データ取得ステップS20>
データ取得ステップS20において、データ取得部10eは、記憶ステップS10で記憶されたデータを読み出し、当該データに基づいて、ライトシェルフ300及び構造体500の熱伝達率α及び日射熱吸収率a、日射熱量Iを取得する。
【0097】
<温度算出ステップS30>
温度算出ステップS30において、温度算出部10fは、データ取得ステップS20で取得したデータにより、第1表面温度上昇量Gi及び第2表面温度上昇量Gdを算出する。
【0098】
<第1放熱量算出ステップS40>
第1放熱量算出ステップS40において、第1放熱量算出部10aは、記憶ステップS10で記憶されたデータ、及び、温度算出ステップS30で算出されたデータにより、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される第1放熱量H1_outを算出する。
【0099】
<第2放熱量算出ステップS50>
第2放熱量算出ステップS50において、第2放熱量算出部10bは、記憶ステップS10で記憶されたデータにより、構造体500から内部空間Rに放出される第2放熱量H2_outを算出する。
【0100】
<第3放熱量算出ステップS60>
第3放熱量算出ステップS60において、第3放熱量算出部10cは、記憶ステップS10で記憶されたデータにより、窓Wを透過して内部空間Rに放出される第3放熱量H3_outを算出する。
【0101】
<合計放熱量算出ステップS70>
合計放熱量算出ステップS70において、合計放熱量算出部10dは、第1放熱量H1_out、第2放熱量H2_out、及び、第3放熱量H3_outを足し合わせることにより、建物Bの日射熱負荷を算出する。
【0102】
次いで、変形例に係る日射熱負荷算出装置1vの説明をする。
図5は、本実施形態に係る日射熱負荷算出装置の変形例を示すブロック図である。
【0103】
[日射熱負荷算出装置1v]
本変形例に係る日射熱負荷算出装置1vは、上述の日射熱負荷算出装置1に対して、制御部10vにおける第1放熱量算出部10av、データ取得部10ev、温度算出部10fvの構成が異なる。以下、上述の日射熱負荷算出装置1と異なる部分について説明する。
【0104】
<制御部10v>
<<データ取得部10ev>>
データ取得部10evは、通信I/F50及びバス80を介して、外部装置60から所定のデータを取得する。データ取得部10evは、バス80を介して、記憶部40から所定のデータを取得してもよい。
【0105】
本実施形態では、データ取得部10evは、所定のデータとして、ライトシェルフ300及び構造体500の熱伝達率α、ライトシェルフ300及び構造体500の複数の時刻における日射熱吸収率a、複数の時刻における日射熱量Iを取得する。複数の時刻における日射熱吸収率a、複数の時刻における日射熱量Iは、熱環境シミュレーションプログラムを用いて、例えば毎時に算出され、外部装置60又は記憶部40に格納されている。複数の時刻における日射熱吸収率aは、複数の時刻における第1日射熱吸収率aa及び複数の時刻における第2日射熱吸収率abを含む。
【0106】
<<温度算出部10fv>>
温度算出部10fvは、データ取得部10evにより取得されたデータに基づいて、複数の時刻におけるライトシェルフ300の日射吸収量に相当するライトシェルフ300の複数の表面温度の上昇量を算出する。具体的には、温度算出部10fvは、各時刻における第1日射熱吸収率aaを熱伝達率αで除した値に、同時刻における日射熱量Iを乗ずることにより、複数の第1表面温度上昇量Giを算出する。同時刻とは、取得した日射熱量Iの時刻と、取得した第1日射熱吸収率aaの時刻が、同じであることを示す。複数の時刻とは、一例として、毎時を示す。複数の第1表面温度上昇量Giは、各時刻における上面310の日射吸収量に相当する上面310の表面温度の上昇量を示す。つまり、温度算出部10fvは、下記の式(21)により、複数の第1表面温度上昇量Giを算出する。
【0107】
[数21]
「(各時刻における第1日射熱吸収率aa/熱伝達率α)×同時刻における日射熱量I」・・・式(21)
【0108】
また、温度算出部10fvは、各時刻における第2日射熱吸収率abを熱伝達率αで除した値に、同時刻における日射熱量Iを乗ずることにより、複数の第2表面温度上昇量Gdを算出する。同時刻とは、取得した日射熱量Iの時刻と、取得した第2日射熱吸収率abの時刻が、同じであることを示す。複数の時刻とは、一例として、毎時を示す。複数の第2表面温度上昇量Gdは、各時刻における下面320の日射吸収量に相当する下面320の表面温度の上昇量を示す。つまり、温度算出部10fvは、下記の式(22)により、複数の第2表面温度上昇量Gdを算出する。
【0109】
[数22]
「(各時刻における第2日射熱吸収率ab/熱伝達率α)×同時刻における日射熱量I」・・・式(22)
【0110】
<<第1放熱量算出部10av>>
第1放熱量算出部10avは、各時刻における第1表面温度上昇量Gi、及び、単位第1上面放熱量46aの積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における第1中間値を足し合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10avは、複数の時刻Xn(n=1~m(mは任意の数でよい))における第1中間値を算出し、これらの第1中間値(n=1~m)を足し合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出する。
【0111】
第1放熱量算出部10avは、各時刻における第1表面温度上昇量Gi、及び、単位第1下面放熱量46bの積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における第2中間値を足し合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10avは、複数の時刻Xn(n=1~m(mは任意の数でよい))における第2中間値を算出し、これらの第2中間値(n=1~m)を足し合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出する。
【0112】
第1放熱量算出部10avは、各時刻における第2表面温度上昇量Gd、及び、単位第2上面放熱量46cの積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における第3中間値を足し合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10avは、複数の時刻Xn(n=1~m(mは任意の数でよい))における第3中間値を算出し、これらの第3中間値(n=1~m)を足し合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出する。
【0113】
第1放熱量算出部10avは、各時刻における第2表面温度上昇量Gd、及び、単位第2下面放熱量46dの積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における第4中間値を足し合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。つまり、第1放熱量算出部10avは、複数の時刻Xn(n=1~m(mは任意の数でよい))における第4中間値を算出し、これらの第4中間値(n=1~m)を足し合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0114】
上述の説明において、時刻Xn(n=1~m(mは任意の数でよい))の添え字が同じである場合、第1表面温度上昇量Gi及び第2表面温度上昇量Gdが、同時刻の日射熱量I、第1日射熱吸収率aa、第1日射熱吸収率abに基づいて算出されていることを意味する。
【0115】
次いで、変形例に係る日射熱負荷算出方法の説明をする。
図6は、本実施形態に係る日射熱負荷算出方法の変形例を示すステップチャートである。
【0116】
[変形例に係る日射熱負荷算出方法]
本変形例に係る日射熱負荷算出方法は、上述の日射熱負荷算出方法に対して、データ取得ステップS20a、温度算出ステップS30a、第1放熱量算出ステップS40aの構成が異なる。以下、上述の日射熱負荷算出方法と異なる部分について説明する。
【0117】
<データ取得ステップS20a>
データ取得ステップS20aにおいて、データ取得部10evは、記憶ステップS10で記憶されたデータを読み出し、当該データに基づいて、ライトシェルフ300及び構造体500の熱伝達率α、ライトシェルフ300及び構造体500の複数の時刻における日射熱吸収率a、複数の時刻における日射熱量Iを取得する。
【0118】
<温度算出ステップS30a>
温度算出ステップS30aにおいて、温度算出部10fvは、データ取得部10evで取得したデータにより、複数の第1表面温度上昇量Gi及び複数の第2表面温度上昇量Gdを算出する。
【0119】
<第1放熱量算出ステップS40a>
第1放熱量算出ステップS40aにおいて、第1放熱量算出部10avは、記憶ステップS10で記憶されたデータ、及び、温度算出ステップS30で算出されたデータにより、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される第1上面放熱量H11_out、第1下面放熱量H12_out、第2上面放熱量H16_out、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0120】
上記各実施形態においては、以下のような態様が開示される。
【0121】
(態様1)
日射熱負荷算出装置1は、内部空間Rに、少なくとも天井100、OA床200、及び窓Wを含む建物Bの構造体500よりも熱容量が大きいライトシェルフ300を有する建物Bの日射熱負荷を算出する。日射熱負荷算出装置1は、自然光Lの日射熱量Iのうち、ライトシェルフ300に吸収される熱量である第1吸熱量H1_inに基づいて、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される熱量である第1放熱量H1_outを算出する第1放熱量算出部10aと、日射熱量Iのうち、構造体500に吸収される熱量である第2吸熱量H2_inに基づいて、構造体500から内部空間Rに放出される熱量である第2放熱量H2_outを算出する第2放熱量算出部10bと、日射熱量Iのうち、窓Wを透過して内部空間Rに放出される熱量である第3放熱量H3_outを算出する第3放熱量算出部10cと、第1放熱量H1_out、第2放熱量H2_out、及び、第3放熱量H3_outを足し合わせることにより、建物Bの日射熱負荷を算出する合計放熱量算出部10dと、を備える。
【0122】
態様1の日射熱負荷算出装置1によれば、ライトシェルフ300に吸収される熱量である第1吸熱量H1_inに基づいて、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される熱量である第1放熱量H1_outを算出する第1放熱量算出部10aを有するので、ライトシェルフ300における吸熱及び放熱を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0123】
(態様2)
態様1において、第1放熱量算出部10aは、日射熱量Iのうち、天井100と対向するライトシェルフ300の上面310に吸収される熱量である上面吸熱量H11_inに基づいて、上面310から内部空間Rに放出される熱量である第1上面放熱量H11_out、及び、OA床200と対向するライトシェルフ300の下面320から内部空間Rに放出される熱量である第1下面放熱量H12_outを算出し、日射熱量Iのうち、下面320に吸収される熱量である下面吸熱量H15_inに基づいて、下面320から内部空間Rに放出される熱量である第2下面放熱量H15_out、及び、上面310から内部空間Rに放出される熱量である第2上面放熱量H16_outを算出し、第1上面放熱量H11_out及び第2上面放熱量H16_outの和からなる上面放熱量H20と、第1下面放熱量H12_out及び第2下面放熱量H15_outの和からなる下面放熱量H30と、を算出し、上面放熱量H20及び下面放熱量H30を足し合わせることにより、第1放熱量H1_outを算出する。
【0124】
態様2の日射熱負荷算出装置1によれば、上面吸熱量H11_inに基づいて、第1上面放熱量H1_out、及び、第1下面放熱量H12_outを算出し、且つ、下面吸熱量H15_inに基づいて、第2下面放熱量H15_out、及び、第2上面放熱量H16_outを算出する。このため、ライトシェルフ300の上面310及び下面320における吸熱及び放熱を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0125】
(態様3)
態様1又は2において、日射熱負荷算出装置1は、ライトシェルフ300の熱伝達率α、日射熱量I、日射熱量Iのうち上面吸熱量H1_inの割合を示す第1日射熱吸収率aa、及び、日射熱量Iのうち下面吸熱量H15_inの割合を示す第2日射熱吸収率abを取得するデータ取得部10eと、上面310の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第1上面放熱量H11_outを示す単位第1上面放熱量46a、及び、第1下面放熱量H12_outを示す単位第1下面放熱量46b、並びに、下面320の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第2上面放熱量H16_outを示す単位第2上面放熱量46c、及び、第2下面放熱量H15_outを示す単位第2下面放熱量46d、を記憶する記憶部40と、第1日射熱吸収率aaを熱伝達率αで除した値に、日射熱量Iを乗ずることにより、上面310の日射吸収量に相当する上面310の表面温度の上昇量を示す第1表面温度上昇量Giを算出し、且つ、第2日射熱吸収率abを熱伝達率αで除した値に、日射熱量Iを乗ずることにより、下面320の日射吸収量に相当する下面320表面温度の上昇量を示す第2表面温度上昇量Gdを算出する温度算出部10fと、を備え、第1放熱量算出部10aは、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1上面放熱量46aを掛け合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1下面放熱量46bを掛け合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2上面放熱量46cを掛け合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2下面放熱量46dを掛け合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0126】
態様3の日射熱負荷算出装置1によれば、第1放熱量算出部10aは、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1上面放熱量46aを掛け合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1下面放熱量46bを掛け合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2上面放熱量46cを掛け合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2下面放熱量46dを掛け合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。ここで、単位第1上面放熱量46a、単位第1下面放熱量46b、単位第2上面放熱量46c、及び、単位第2下面放熱量46dは、ライトシェルフ300に日射熱が吸収された後、一定の時間遅れを伴って、内部空間Rに放出される熱量である。このため、態様3の日射熱負荷算出装置1は、ライトシェルフ300における吸熱及び放熱の特性(時間遅れを伴う放熱)を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0127】
(態様4)
態様1から3において、日射熱負荷算出装置1vは、日射遮蔽物300の熱伝達率α、複数の時刻における日射熱量I、日射熱量Iのうち上面吸熱量H11_inの割合を示す複数の時刻における第1日射熱吸収率aa、及び、日射熱量Iのうち下面吸熱量H15_inの割合を示す複数の時刻における第2日射熱吸収率abを取得するデータ取得部10evと、上面310の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第1上面放熱量H11_outを示す単位第1上面放熱量46a、及び、第1下面放熱量H12_outを示す単位第1下面放熱量46b、並びに、下面320の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第2上面放熱量H16_outを示す単位第2上面放熱量46c、及び、第2下面放熱量H15_outを示す単位第2下面放熱量46d、を記憶する記憶部40と、各時刻における第1日射熱吸収率aaを熱伝達率αで除した値に、同時刻における日射熱量Iを乗ずることにより、各時刻における上面310の日射吸収量に相当する上面310の表面温度の上昇量を示す複数の第1表面温度上昇量Giを算出し、且つ、各時刻における第2日射熱吸収率abを熱伝達率αで除した値に、同時刻における日射熱量Iを乗ずることにより、各時刻における下面320の日射吸収量に相当する下面320の表面温度の上昇量を示す複数の第2表面温度上昇量Gdを算出する温度算出部10fvと、を備え、第1放熱量算出部10avは、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1上面放熱量46aの積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における第1中間値を足し合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1下面放熱量46bの積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における第2中間値を足し合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2上面放熱量46cの積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における第3中間値を足し合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2下面放熱量46dの積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における第4中間値を足し合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0128】
態様4の日射熱負荷算出装置1vによれば、第1放熱量算出部10avは、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1上面放熱量46aの積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における第1中間値を足し合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1下面放熱量46bの積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における第2中間値を足し合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2上面放熱量46cの積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における第3中間値を足し合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2下面放熱量46dの積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における第4中間値を足し合わせることにより、第2下面放熱量H15_outとして算出する。このため、ライトシェルフ300の上面310及び下面320における過去の吸熱及び放熱を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0129】
(態様5)
態様5によれば、日射熱負荷算出方法は、制御部10によって実行され、内部空間Rに、少なくとも天井100、OA床200、及び窓Wを含む建物Bの構造体500よりも熱容量が大きい日射遮蔽物を有する建物の日射熱負荷を算出する。日射熱負荷算出方法は、自然光Lの日射熱量Iのうち、ライトシェルフ300に吸収される熱量である第1吸熱量H1_inに基づいて、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される熱量である第1放熱量H1_outを算出する第1放熱量算出ステップS40と、日射熱量Iのうち、構造体500吸収される熱量である第2吸熱量H2_inに基づいて、構造体500から内部空間Rに放出される熱量である第2放熱量H2_outを算出する第2放熱量算出ステップS50と、日射熱量Iのうち、窓Wを透過して内部空間Rに放出される熱量である第3放熱量H3_outを算出する第3放熱量算出ステップS60と、第1放熱量H1_out、第2放熱量H2_out、及び、第3放熱量H3_outを足し合わせることにより、建物Bの日射熱負荷を算出する合計放熱量算出ステップS70と、を備える。
【0130】
態様5の日射熱負荷算出方法によれば、ライトシェルフ300に吸収される熱量である第1吸熱量H1_inに基づいて、ライトシェルフ300から内部空間Rに放出される熱量である第1放熱量H1_outを算出する第1放熱量算出ステップS40を有するので、ライトシェルフ300における吸熱及び放熱を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0131】
(態様6)
態様5において、日射熱負荷算出方法は、第1放熱量算出ステップS40において、日射熱量Iのうち、天井100と対向するライトシェルフ300の上面310に吸収される熱量である上面吸熱量H11_inに基づいて、上面310から内部空間Rに放出される熱量である第1上面放熱量H11_out、及び、OA床200と対向するライトシェルフ300の下面320から内部空間Rに放出される熱量である第1下面放熱量H12_outを算出し、日射熱量Iのうち、下面320に吸収される熱量である下面吸熱量H15_inに基づいて、下面320から内部空間Rに放出される熱量である第2下面放熱量H15_out、及び、上面310から内部空間Rに放出される熱量である第2上面放熱量H16_outを算出し、第1上面放熱量H11_out及び第2上面放熱量H16_outの和からなる上面放熱量H20と、第1下面放熱量H12_out及び第2下面放熱量H15_outの和からなる下面放熱量H30と、を算出し、上面放熱量H20及び下面放熱量H30を足し合わせることにより、第1放熱量H1_outを算出する。
【0132】
態様6の日射熱負荷算出方法によれば、上面吸熱量H11_inに基づいて、第1上面放熱量H1_out、及び、第1下面放熱量H12_outを算出し、且つ、下面吸熱量H15_inに基づいて、第2下面放熱量H15_out、及び、第2上面放熱量H16_outを算出する。このため、ライトシェルフ300の上面310及び下面320における吸熱及び放熱を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0133】
(態様7)
態様5又は6において、日射熱負荷算出方法は、ライトシェルフ300の熱伝達率α、日射熱量I、日射熱量Iのうち上面吸熱量H1_inの割合を示す第1日射熱吸収率aa、及び、日射熱量Iのうち下面吸熱量H15_inの割合を示す第2日射熱吸収率abを取得するデータ取得ステップS20と、上面310の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第1上面放熱量H11_outを示す単位第1上面放熱量46a、及び、第1下面放熱量H12_outを示す単位第1下面放熱量46b、並びに、下面320の表面温度の上昇量が1℃である場合の第2上面放熱量H16_outを示す単位第2上面放熱量46c、及び、第2下面放熱量H15_outを示す単位第2下面放熱量46d、を記憶させる記憶ステップS10と、第1日射熱吸収率aaを熱伝達率αで除した値に、日射熱量Iを乗ずることにより、上面310の日射吸収量に相当する上面310の表面温度の上昇量を示す第1外気温上昇量Giを算出し、且つ、第2日射熱吸収率abを熱伝達率αで除した値に、日射熱量Iを乗ずることにより、下面320の日射吸収量に相当する下面320の表面温度の上昇量を示す第2表面温度上昇量Gdを算出する温度算出ステップS30と、を備え、第1放熱量算出ステップS40は、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1上面放熱量46aを掛け合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1下面放熱量46bを掛け合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2上面放熱量46cを掛け合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2下面放熱量46dを掛け合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0134】
態様7の日射熱負荷算出方法によれば、第1放熱量算出ステップS40において、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1上面放熱量46aを掛け合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、第1表面温度上昇量Gi及び単位第1下面放熱量46bを掛け合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2上面放熱量46cを掛け合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、第2表面温度上昇量Gd及び単位第2下面放熱量46dを掛け合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。このため、ライトシェルフ300における吸熱及び放熱の特性(時間遅れを伴う放熱)を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0135】
(態様8)
態様5から7において、日射熱負荷算出方法は、日射遮蔽物300の熱伝達率α、複数の時刻における日射熱量I、日射熱量Iのうち上面吸熱量H11_inの割合を示す複数の時刻における第1日射熱吸収率aa、及び、日射熱量Iのうち下面吸熱量H15_inの割合を示す複数の時刻における第2日射熱吸収率abを取得するデータ取得ステップS20aと、上面310の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第1上面放熱量H11_outを示す単位第1上面放熱量46a、及び、第1下面放熱量H12_outを示す単位第1下面放熱量46b、並びに、上面310の表面温度の上昇量が1℃である場合の、第2上面放熱量H16_outを示す単位第2上面放熱量46c、及び、第2下面放熱量H15_outを示す単位第2下面放熱量46d、を記憶させる記憶ステップS10と、各時刻における第1日射熱吸収率aaを熱伝達率αで除した値に、同時刻における日射熱量Iを乗ずることにより、各時刻における上面310の日射吸収量に相当する上面310の表面温度の上昇量を示す複数の第1表面温度上昇量Giを算出し、且つ、各時刻における第2日射熱吸収率abを熱伝達率αで除した値に、同時刻における日射熱量Iを乗ずることにより、各時刻における下面320の日射吸収量に相当する下面320の表面温度の上昇量を示す複数の第2表面温度上昇量Gdを算出する温度算出ステップS30aと、を備え、第1放熱量算出ステップS40aは、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1上面放熱量46aの積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における第1中間値を足し合わせることにより、第1上面放熱量H11_outを算出し、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1下面放熱量46bの積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における第2中間値を足し合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2上面放熱量46cの積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における第3中間値を足し合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2下面放熱量46dの積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における第4中間値を足し合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。
【0136】
態様8の日射熱負荷算出方法によれば、第1放熱量算出ステップS40aは、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1上面放熱量46aの積を第1中間値として算出し、且つ、各時刻における第1中間値を足し合わせることにより、第1上面放熱量H11_outとして算出し、各時刻における第1表面温度上昇量Gd、及び、単位第1下面放熱量46bの積を第2中間値として算出し、且つ、各時刻における第2中間値を足し合わせることにより、第1下面放熱量H12_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2上面放熱量46cの積を第3中間値として算出し、且つ、各時刻における第3中間値を足し合わせることにより、第2上面放熱量H16_outを算出し、各時刻における第2表面温度上昇量Gi、及び、単位第2下面放熱量46dの積を第4中間値として算出し、且つ、各時刻における第4中間値を足し合わせることにより、第2下面放熱量H15_outを算出する。このため、ライトシェルフ300の上面310及び下面320における過去の吸熱及び放熱を考慮して、より正確に、建物Bの日射熱負荷算出を行うことができる。
【0137】
(態様9)
熱負荷算出プログラム42は、内部空間Rにライトシェルフ300を有する建物Bの日射熱負荷を算出する日射熱負荷算出方法を制御部10に実行させる。この熱負荷算出プログラム42は、制御部10に、態様5から8までのいずれかの日射熱負荷算出方法を実行させる。
【0138】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る日射熱負荷算出装置1、1v、日射熱負荷算出方法に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0139】
1 日射熱負荷算出装置、10 制御部(コンピュータ)、10a 第1放熱量算出部、10b 第2放熱量算出部、10c 第3放熱量算出部、10d 合計放熱量算出部、10e データ取得部、10f 温度算出部、40 記憶部、46a 単位第1上面放熱量、46b 単位第1下面放熱量、46c 単位第2上面放熱量、46d 単位第2下面放熱量、100 天井、200 OA床、300 ライトシェルフ(日射遮蔽物)、310 上面、320 下面、500 構造体、α 熱伝達率、aa 第1日射熱吸収率、ab 第2日射熱吸収率、B 建物、H1_in 第1吸熱量、H1_out 第1放熱量、H2_in 第2吸熱量、H2_out 第2放熱量、H3_out 第3放熱量、H11_in 上面吸熱量、H11_out 第1上面放熱量、H12_out 第1下面放熱量、H15_in 下面吸熱量、H15_out 第2下面放熱量、H16_out 第2上面放熱量、H20 上面放熱量、H30 下面放熱量、I 日射熱量、Gi 第1表面温度上昇量、Gd 第2表面温度上昇量、L 自然光、R 内部空間、W 窓