(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106100
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法、熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置および薄板コイル
(51)【国際特許分類】
B21C 47/02 20060101AFI20240731BHJP
B21B 15/00 20060101ALI20240731BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240731BHJP
B21B 38/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B21C47/02 F
B21B15/00 C
B21C51/00 L
B21B38/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010211
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪原 健史
(72)【発明者】
【氏名】三村 佳正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純平
(72)【発明者】
【氏名】島上 渓
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026BA13
(57)【要約】
【課題】薄板コイルを構成する熱間圧延鋼帯の尾端を目標位置に停止させる距離トラッキングの精度を向上することができる熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を提供する。
【解決手段】粗熱間圧延鋼帯の尾端中央凹部の位置とクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する第一工程と、ピンチロールの出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯が有するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、ピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第二工程と、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する第三工程と、前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する第四工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルを有する巻き取り部により仕上げ熱間圧延鋼帯を巻き取って薄板コイルを形成する際に前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する方法であって、
粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の尾端の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端の中央凹部の位置と前記中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する第一工程と、
前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、仕上げ熱間圧延鋼帯が形成された後にピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第二工程と、
前記第1レーザー計による前記ピンチロール出側第1尾端部の第1検出位置と、当該第1検出位置と前記第2レーザー計による前記ピンチロール出側第2尾端部の第2検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する第三工程と、
前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する第四工程と、を含むことを特徴とする熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法。
【請求項2】
前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応する前記ピンチロール出側第1尾端部の位置及び前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を前記仕上げ熱間圧延鋼帯の幅方向を測定することができるエリアセンサーにより検出することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法。
【請求項3】
マンドレルを有する巻き取り部により仕上げ熱間圧延鋼帯を巻き取って薄板コイルを形成する際に前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する制御装置であって、
粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の尾端の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端の中央凹部の位置と前記中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する第一検出部と、
前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、仕上げ熱間圧延鋼帯が形成された後にピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第二検出部と、
前記第1レーザー計による前記ピンチロール出側第1尾端部の第1検出位置と、当該第1検出位置と前記第2レーザー計による前記ピンチロール出側第2尾端部の第2検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する第三検出部と、
前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する位置制御部と、を備えることを特徴とする熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置によって製造された薄板コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法、熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置および薄板コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板の熱間連続圧延より製造される仕上げ熱間圧延鋼帯は、コイル状に巻き取られる。コイル状に巻き取られた仕上げ熱間圧延鋼帯は、薄板コイルとなる。仕上げ熱間圧延鋼帯をコイル状に巻き取ることによって薄板コイルを製造する際には、当該仕上げ熱間圧延鋼帯の巻き取り終了時において、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端を定められた位置において停止するように制御する必要がある。
【0003】
図6は、従来の仕上げ熱間圧延鋼帯をコイル状に巻き取り薄板コイルを製造する概要を示した模式図である。
図6(a)に示されるように、連続熱間圧延機の巻き取り部は、ピンチロールから送り出された熱間圧延鋼帯としての仕上げ熱間圧延鋼帯をマンドレルにより巻き取って薄板コイルとしている。仕上げ熱間圧延鋼帯の巻き取り終了時において、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端が定位置に停止するように位置制御を行う。
図6(b)に示されるように、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御の内容は、コンピュータが仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端がピンチロールの出側に設置されている機内レーザセンサを通過した時点を認識した後、その時点からマンドレルモータの回転数を制御する。そして、
図6(c)に示されるように、マンドレルからの薄板コイルの抜き出し時の定められた位置に仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端が位置するまでマンドレルと薄板コイルとをクレードロール上で一緒に回転させる。
【0004】
しかしながら、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置の制御を実行しない場合には、薄板コイルの外周上における仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置は、薄板コイルごとに揃わない。そのまま薄板コイルをコイラーのマンドレルから抜き出してコイルヤードまで搬送したい場合には、その搬送中に薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端が他の設備や他の薄板コイルに接触する。その結果、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置制御を実行しない場合には、他の設備の破損、他の薄板コイルへのダメージが発生する。このため、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置の制御を実行するために、薄板コイルの巻き終わり時からコイラーのマンドレルから抜き出し開始時にかけてコイラーのオペレータによる手作業での介入が必要となり、作業負荷の増大となっている。
【0005】
このような観点から、圧延設備の巻取り機に巻取られつつある圧延材の尾端形状が不整形状であっても正確な圧延材尾端を検出する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された圧延材尾端を検出する方法は、圧延設備の巻取り機に巻取られる圧延材の幅方向に並んで、搬送路中央およびその左右に熱塊検出器を配置し、圧延材の搬送中にすべての熱塊検出器がオンからオフになるタイミングにより圧延材の尾端位置を検出するようにしている。
【0006】
また、高精度に尾端の定位置停止制御を行うことができる熱間圧延鋼帯の巻取制御方法が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2に記載された熱間圧延鋼帯の巻取制御方法は、ホットストリップミルのクロップ形状計が出力する粗圧延鋼帯の尾端の2次元形状における幅方向での尾端位置とクロップカット位置とを比較して、幅方向中央での尾端位置がクロップカット位置よりも粗圧延鋼帯の先端寄りの場合に、ホットストリップミルのピンチロール出側の機内レーザセンサが検出した幅方向中央での尾端位置をその位置よりも後方に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-254034号公報
【特許文献2】特開2013-94798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。すなわち、特許文献1に記載された圧延材尾端を検出する方法は、圧延材が搬送路において、圧延設備の巻取り機が設置されている位置よりも手前に配置された熱塊検出器を用いて、圧延材の尾端位置を検知し、当該検知された圧延材の尾端位置を起点として圧延材の尾端位置を制御している。
【0009】
このため、特許文献1に記載された圧延材尾端を検出する方法は、仕上げ圧延機による仕上げ圧延が施された圧延材の形状変化、仕上げ圧延後の圧延材を冷却することによる当該仕上げ圧延材の形状変化、ホットランテーブル上に発生する鋼板たわみ量などに起因する誤差を考慮して圧延材の尾端を検出することができない。その結果、特許文献1に記載された圧延材尾端を検出する方法は、圧延材の尾端を目標位置に停止させる距離トラッキングの精度が悪化するという問題点を有する。
【0010】
また、特許文献2に記載された熱間圧延鋼帯の巻取制御方法は、粗圧延鋼帯の尾端の2次元形状における幅方向中央での尾端位置がクロップカット位置よりも粗圧延鋼帯の先端寄りの場合には、ホットストリップミルのピンチロールの出側の機内レーザセンサが検出した幅方向中央でも尾端位置をその位置よりも後方に補正している。
【0011】
すなわち、特許文献2に記載された熱間圧延鋼帯の巻取制御方法は、鋼板中央に配置されたセンサが測定した熱間圧延鋼帯の尾端位置を起点として、熱間圧延鋼帯の尾端位置を制御している。このため、熱間圧延鋼帯の尾端の形状が不整形状であり、当該熱間圧延鋼帯が幅方向にずれる場合には、正しい鋼板の中心を熱間圧延鋼帯の尾端位置を制御するための起点とすることができない。このため、かかる熱間圧延鋼帯の巻取制御方法は、鋼板中央に配置されたセンサが測定した熱間圧延鋼帯の尾端位置を起点として補正された熱間圧延鋼帯の尾端位置と、仕上げ熱間圧延鋼帯をマンドレルにより巻き取って薄板コイルとした後において、薄板コイルの外周上における仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端位置とが一致しないという問題点を有する。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄板コイルを構成する熱間圧延鋼帯の尾端を目標位置に停止させる距離トラッキングの精度を向上させることにより、マンドレルから薄板コイルを抜き出す際に熱間圧延鋼帯の尾端が他の設備に干渉するリスクを減少させることができる熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法、熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置および薄板コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく、種々実験を重ねた結果、粗熱間圧延鋼帯の巻取尾端の起点とし、熱間圧延鋼帯の巻取尾端部の形状変化とホットランテーブル上に発生する鋼板たわみ量により発生する誤差を考慮して、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出することにより、熱間圧延鋼帯の巻取尾端位置を制御することができる知見を見出した。本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0014】
すなわち、上記課題を有利に解決する本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、
マンドレルを有する巻き取り部により仕上げ熱間圧延鋼帯を巻き取って薄板コイルを形成する際に前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する方法であって、
粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の尾端の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端の中央凹部の位置と前記中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する第一工程と、
前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、仕上げ熱間圧延鋼帯が形成された後にピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第二工程と、
前記第1レーザー計による前記ピンチロール出側第1尾端部の第1検出位置と、当該第1検出位置と前記第2レーザー計による前記ピンチロール出側第2尾端部の第2検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する第三工程と、
前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する第四工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
なお、本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、(a)前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置及び前記第2切断尾端部に対応する前記ピンチロール出側第2尾端部の位置を前記仕上げ熱間圧延鋼帯の幅方向を測定することができるエリアセンサーにより検出することなどがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0016】
上記課題を有利に解決する本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、
マンドレルを有する巻き取り部により仕上げ熱間圧延鋼帯を巻き取って薄板コイルを形成する際に前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する制御装置であって、
粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の尾端の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端の中央凹部の位置と前記中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する第一検出部と、
前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、仕上げ熱間圧延鋼帯が形成された後にピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第二検出部と、
前記第1レーザー計による前記ピンチロール出側第1尾端部の第1検出位置と、当該第1検出位置と前記第2レーザー計による前記ピンチロール出側第2尾端部の第2検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する第三検出部と、
前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する位置制御部と、を備えることを特徴とする熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置。
【0017】
上記課題を有利に解決する本発明に係る薄板コイルは、上記熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱間圧延鋼帯の巻取尾端部の形状が不整形状であり、熱間圧延鋼帯の幅方向にずれた場合であっても、マンドレルから薄板コイルを抜き出す時に熱間圧延鋼帯の巻取尾端が他の設備に干渉するリスクを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を実施するための薄板コイル製造ラインを示した概要図である。
【
図2】本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法により巻取られる熱間圧延鋼帯の巻取尾端の二次元形状計により測定された尾端部座標を示した模式図である。
【
図3】本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法により巻取られる熱間圧延鋼帯の巻取尾端のレーザー計により測定された尾端部座標を示した模式図である。
【
図4】本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法により巻取られる熱間圧延鋼帯の巻取尾端のレーザー計により測定された尾端部座標と尾端部座標により算出される熱間圧延鋼帯の尾端部位置補正量との関係を示した説明図である。
【
図5】実施例1において得られた仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の制御をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図6】従来の仕上げ圧延鋼帯の尾端の定位置停止制御方法を示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法について説明する。
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の尾端の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端の中央凹部の位置と前記中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する第一工程と、前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、仕上げ熱間圧延鋼帯が形成された後にピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第二工程と、前記第1レーザー計による前記ピンチロール出側第1尾端部の第1検出位置と、当該第1検出位置と前記第2レーザー計による前記ピンチロール出側第2尾端部の第2検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する第三工程と、前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する第四工程と、を含むことを特徴とする。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法に含まれる各工程について説明する。
【0021】
<第一工程について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端中央凹部の位置と前記尾端中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する工程を含む。
すなわち、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法に含まれる第一工程は、粗熱間圧延鋼帯の尾端中央凹部の位置と前記尾端中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状計により検出する工程である。
【0022】
図1は、本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を実施するための薄板コイル製造ラインを示した概要図である。
図1に示されるように、熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を実施するための薄板コイル製造ライン100は、粗圧延機101、二次元形状測定計102、クロップシャー103、仕上げ圧延機104、ピンチロール(巻き取り機内PR)105、レーザー計106、尾端停止コントローラー107、ホットランテーブル108、マンドレル109、マンドレル駆動部Mを備えている。
【0023】
粗熱間圧延鋼帯の圧延素材として使用されるスラブは、粗圧延機101に搬送され、当該粗圧延機101により粗圧延されることにより粗熱間圧延鋼帯200に加工される。粗熱間圧延鋼帯200の形状が二次元形状測定計102により検出される。二次元形状測定計102は、粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状を検出し、当該粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201の位置を検出する。
【0024】
図2は、本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法により、巻取られる熱間圧延鋼帯の巻取尾端の二次元形状測定計により測定された尾端部座標を示した模式図である。具体的に、
図2(a)は、粗熱間圧延鋼帯の尾端中央凹部の位置を示した模式図である。
図2(a)に示されるように、粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201の位置は、2次元座標(x,y)を用いて特定することができる。そして、粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201の位置をP
0(0,0)とする。その後、粗熱間圧延鋼帯200は、クロップシャー103に搬送される。
【0025】
図2(b)は、粗熱間圧延鋼帯の尾端中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯の概要を示した模式図である。
図2(b)に示されるように、クロップシャー103により、粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201の左右に隣接して形成されている凸部である左側凸部202及び右側凸部203がクロップカットされる。左側凸部202及び右側凸部203がクロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204には、尾端中央凹部201の左右に隣接して尾端中央凹部201の左側に位置する第1切断尾端部205と、尾端中央凹部201の右側に位置する第2切断尾端部206がそれぞれ形成される。
【0026】
クロップシャー103による粗熱間圧延鋼帯200の切断は、粗熱間圧延鋼帯200の幅方向に平行となるように行われる。このため、尾端中央凹部201の左側に位置する第1切断尾端部205と、尾端中央凹部201の右側に位置する第2切断尾端部206は、互いに対向して位置する。
【0027】
二次元形状測定計102は、クロップカットされる前の粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状を検出し、当該クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205と第2切断尾端部206を検出する。このため、二次元形状測定計102は、クロップカットされる前の粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状と、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の二次元形状とを測定するためにクロップシャー103を挟んでその前後に設置されていることが好ましい。また、二次元形状測定計102は、クロップカットされる前の粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状及びクロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の二次元形状のうちいずれか一方の当該粗熱間圧延鋼帯の二次元形状を測定するためにクロップシャー103の前後のいずれか一方に設置されていてもよい。
ここで、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205の位置と第2切断尾端部206の位置は、2次元座標(x,y)を用いて特定することができる。そして、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205の位置をPcs1(x1,ycs1)とし、第1切断尾端部206の位置をPcs2(x2,ycs2)とすることができる。
【0028】
このように、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法が含む第一工程は、粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201位置と、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205の位置と第2切断尾端部206の位置を2次元座標によって特定する。
【0029】
<第二工程について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、仕上げ熱間圧延鋼帯が形成された後にピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する工程を含む。
すなわち、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法に含まれる第二工程は、クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延され、ピンチロールに搬送された後に当該ピンチロールの出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯が有するピンチロール出側第1尾端部の位置とピンチロール出側第2尾端部の位置をレーザー計により検出する工程である。
【0030】
クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204は、仕上げ圧延機104に搬送され、仕上げ圧延される。クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204は、仕上げ圧延されることによって、仕上げ熱間圧延鋼帯300が形成される。さらに、仕上げ熱間圧延鋼帯300は、ピンチロール105に搬送される。ピンチロール105に搬送された仕上げ熱間圧延鋼帯300は、仕上げ圧延されることによって、当該仕上げ熱間圧延鋼帯300の長手方向に圧延される。そして、ピンチロール105に搬送された仕上げ熱間圧延鋼帯300は、当該巻き取り機内ピンチロール105の出側から出力される。
【0031】
図2(c)は、ピンチロールに搬送された仕上げ熱間圧延鋼帯の概要を示した模式図である。
図2(c)に示されるように、ピンチロール105の出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300は、尾端中央凹部301として、粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201をそのまま保持している。すなわち、ピンチロール105の出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端中央凹部301の位置は、粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201の位置と一致している。
【0032】
ピンチロール105の出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300は、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205に対応するピンチロール出側第1尾端部302と、当該粗熱間圧延鋼帯204の第2切断尾端部206に対応するピンチロール出側第2尾端部303とを有する。ピンチロール出側第1尾端部302とピンチロール出側第2尾端部303とは、互いに対向して位置する。
【0033】
ここで、ピンチロール出側第1尾端部302の位置とピンチロール出側第2尾端部303の位置は、2次元座標(x,y)を用いて特定することができる。そして、ピンチロール出側第1尾端部302の位置をP1(x1,y1)とし、ピンチロール出側第2尾端部303の位置をP2(x1,y2)と特定することができる。
【0034】
ピンチロール出側第1尾端部302の位置P1における仕上げ熱間圧延鋼帯300の長手方向の座標y1と、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205の位置Pcsにおける当該粗熱間圧延鋼帯204の長手方向の座標ycs1との関係は、薄板コイルの長手方向の仕上げ圧延における圧下率を考慮して、以下の関係式(1)により算出することができる。
【0035】
【0036】
なお、関係式(1)において、
y1:ピンチロール出側第1尾端部302の位置P1における仕上げ熱間圧延鋼帯300の長手方向の座標、
ycs1:クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第1切断尾端部205の長手方向の座標、
Rin :巻き取り機内ピンチロール105に入る前の仕上げ熱間圧延鋼帯300の厚さ、
Rout:巻き取り機内ピンチロール105から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300の厚さをそれぞれ示す。
ここで、(Rout/Rin)は、仕上げ熱間圧延鋼帯300の圧下率である。
【0037】
同様に、ピンチロール出側第2尾端部303の位置P2における仕上げ熱間圧延鋼帯300の長手方向の座標y2と、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第2切断尾端部206の位置Pcsにおける当該粗熱間圧延鋼帯204の長手方向の座標ycs2との関係は薄板コイルの長手方向の仕上げ圧延における圧下率を考慮して、以下の関係式(2)により算出することができる。
【0038】
【0039】
なお、関係式(2)において、
y2:ピンチロール出側第2尾端部303の位置P2における仕上げ熱間圧延鋼帯300の長手方向の座標、
ycs2:クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の第2切断尾端部206の長手方向の座標、
Rin :巻き取り機内ピンチロール105に入る前の仕上げ熱間圧延鋼帯300の厚さ、
Rout:巻き取り機内ピンチロール105から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300の厚さをそれぞれ示す。
【0040】
このように、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法が含む第二工程は、ピンチロール105の出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300が有するピンチロール105のピンチロール出側第1尾端部302の位置を第1レーザー計161により検出し、ピンチロール105のピンチロール出側第2尾端部303の位置を第2レーザー計162により検出する。
【0041】
<第三工程について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、前記ピンチロール出側第1尾端部の位置と、前記ピンチロール出側第2尾端部の位置と、前記第1レーザー計による第1レーザー検出位置と、前記第2レーザー計による第2レーザー検出位置と、前記第1レーザー検出位置と前記第2レーザー検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する工程を含む。
すなわち、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法に含まれる第三工程は、前記第1レーザーによる第1レーザー検出位置と、前記第2レーザーによる第2レーザー検出位置と、前記第1レーザー検出位置と前記第2レーザー検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する
【0042】
図3は、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法により巻取られる熱熱間圧延鋼帯の巻取尾端のレーザー計により測定された尾端部座標を示した模式図である。具体的には、
図3は、レーザー計106が第1レーザー計161と第2レーザー計162から構成されている場合に第1レーザー計161による第1レーザー検出位置Q1と、第2レーザー計162による第2レーザー検出位置Q2と、第1レーザー計161と第2レーザー計162との間に形成されるレーザー間距離αと、第1レーザー検出位置Q1と第2レーザー検出位置Q2との間に形成されるレーザー検出差距離βとの関係を示す。
【0043】
図3に示されるように、ピンチロール105の出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300が有しているピンチロール出側第1尾端部302の位置とピンチロール出側第2尾端部303の位置は、ピンチロール105の出側とマンドレル109との間に設置されたレーザー計106によって検出される。レーザー計106は、2個以上設置されることが必要である。レーザー計106は、例えば、仕上げ熱間圧延鋼帯300の搬送方向に対して前後して設置されている第1レーザー計161と第2レーザー計162とから構成されていてもよい。
【0044】
第1レーザー計161と第2レーザー計162は、ホットランテーブル108の設備センターライン181を中心線とし、レーザー間距離αの間隔を隔て設置されている。第1レーザー計161とホットランテーブル108の設備センターライン181との距離は、レーザー間距離αの1/2の距離(α/2)となっている。第2レーザー計162とホットランテーブル108の設備センターライン181との距離は、レーザー間距離αの1/2の距離(α/2)となっている。
【0045】
第1レーザー検出位置Q1と第2レーザー検出位置Q2との間に形成されるレーザー検出差距離βは、仕上げ熱間圧延鋼帯300がマンドレル109に巻き取られる速度Vcoilと、仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端が第1レーザー検出位置Q1を通過した時刻と仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端が第2レーザー検出位置Q2を通過した時刻との時間差であるΔTとの関係に着目して、以下の関係式(3)により示される。
【0046】
【0047】
図4は、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法により巻取られる熱間圧延鋼帯の巻取尾端のレーザー計により測定された尾端部座標と尾端部座標により算出される熱間圧延鋼帯の尾端部位置補正量との関係を示した説明図である。具体的に、
図4(a)は、第1レーザー検出位置Q1、第2レーザー検出位置Q2、レーザー間距離α、及びレーザー検出差距離βとの関係を示した説明図である。
図4(b)は、第1レーザー検出位置Q1、第2レーザー検出位置Q2、レーザー間距離α、及びレーザー検出差距離βとの関係を前提とし、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量Yを説明するための説明図である。
【0048】
図4(a)~(b)に示されるように、第1レーザー検出位置Q1は、尾端中央凹部301とピンチロール出側第1尾端部302とを結ぶ直線上に位置している。第2レーザー検出位置Q2は、尾端中央凹部301とピンチロール出側第2尾端部303とを結ぶ直線上に位置している。
【0049】
ここで、第1レーザー検出位置Q1の位置を2次元座標(s,t)により特定した場合において、
図4(a)に示されたレーザー間距離αとレーザー検出差距離βとの関係を考慮すると、第2レーザー検出位置Q2の位置を2次元座標(s+α,t+β)として特定することができる。そして、ピンチロール出側第1尾端部302の位置P1(x1,y1)、ピンチロール出側第2尾端部303の位置P2(x1,y2)、レーザー間距離α、及びレーザー検出差距離βとの間には、以下の関係式(4)及び(5)によって表される関係が成り立つ。
【0050】
【0051】
【0052】
上記関係式(4)及び(5)によって、第1レーザー検出位置Q1の位置を特定した2次元座標(s,t)における仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の長手方向の座標tは、以下の関係式(6)により算出される。
【0053】
【0054】
このように算出された第1レーザー検出位置Q1の位置を特定した2次元座標(s,t)における仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の長手方向の座標tと、ピンチロール出側第1尾端部302の位置を特定したP1(x1,y1)における仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の長手方向の座標y1と、ピンチロール出側第2尾端部303の位置を特定したP2(x2,y2)における仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の長手方向の座標y2と、レーザー検出差距離βとの関係に基づき、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量Yを以下のように算出することができる。
同様に、第2レーザー検出位置Q2の位置である2次元座標(s+α,t+β)を第1レーザー検出位置Q1の位置を特定した2次元座標(s,t)に基づいて特定することができる。すなわち、第三工程において、尾端補正量Yは、ピンチロール出側第1尾端部302の位置とピンチロール出側第2尾端部303との位置関係に対応して、尾端中央凹部201の位置と尾端中央凹部201とレーザー検出差距離βとの合計との大小関係に基づいて定められる。具体的に尾端補正量Yは、条件A~Dに応じて以下のように算出される。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
このように、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法が含む第三工程は、仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の長手方向の座標t、仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の長手方向の座標y1、y2、レーザー検出差距離βとの関係に基づき、条件A~Dに応じて仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量Yを算出する。すなわち、尾端補正量Yは、ピンチロール出側第1尾端部302の位置とピンチロール出側第2尾端部303との位置関係に対応して、尾端中央凹部301の位置と当該尾端中央凹部301とレーザー検出差距離βとの合計との大小関係に基づいて定められる。
【0060】
<第四工程について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する工程を含む。
すなわち、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法に含まれる第四工程は、第三工程で取得した尾端補正量Yの値をパルス波として尾端停止コントローラー107に送信してマンドレル駆動部Mに伝達して、マンドレル109を回転駆動することにより仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の停止位置を制御する。
【0061】
仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の停止位置の制御は、尾端補正量Yの値に応じて適宜実行される。仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の停止位置の制御は、尾端補正量Yの値に応じてマンドレル109の回転方向及び回転量を決定することにより実行される。
尾端補正量Yの値は、尾端停止コントローラー107に出力される。尾端が抜けた位置から薄板コイルの外周距離と設備的な残距離と尾端補正量Yの値から尾端停止角度までマレンドルを回転させる。そして、仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の停止位置を制御することにより、尾端の停止位置が揃った薄板コイルを得ることができる。
【0062】
このように、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、第一工程から第四工程を含み、尾端補正量を算出し、当該尾端補正量に基づいて仕上げ熱間圧延鋼帯の停止位置を精度良く制御することができる。つまり、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、巻き取り機内に2つ以上のレーザー計を設置し、これらのレーザー計による測定結果と二次元形状測定計により測定された尾端形状とを比較することにより熱間圧延鋼帯の形状変化とホットランテーブルのたわみ量から発生する誤差の問題を解決することができる。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態に係る発明によれば、熱間圧延鋼帯の巻取尾端部の形状が不整形状であり、熱間圧延鋼帯の幅方向にずれた場合であっても、熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御することができる。
【0064】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法について説明する。本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、上記実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法において、前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有する前記第1切断尾端部に対応するピンチロール出側第1尾端部の位置及び前記第2切断尾端部に対応するピンチロール出側第2尾端部の位置を前記仕上げ熱間圧延鋼帯の幅方向を測定することができるエリアセンサーにより検出することを特徴とする。
以下、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法が含んでいる特徴的な工程について説明する。
【0065】
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、エリアセンサーを用いることによって、ピンチロール出側第1尾端部302の位置及びピンチロール出側第2尾端部303の位置を検出する。エリアセンサーは、ホットランテーブル108上において設定された範囲で熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御するために必要な情報を取得する。すなわち、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法において、第1レーザー検出位置と第2レーザー検出位置との間を検出エリアとして設定して、当該検出エリアを通過したピンチロール出側第1尾端部302の位置及びピンチロール出側第2尾端部303の位置を検出すればよい。
【0066】
エリアセンサーとしては、ピンチロール出側第1尾端部302の位置及びピンチロール出側第2尾端部303の位置を検出することができればよく、例えば、赤外線エリアセンサー、超音波エリアセンサー、可視光エリアセンサー等を用いることができる。
【0067】
以上説明したように、第2実施形態に係る発明によれば、複数のレーザー計を設置することなく、ピンチロール出側尾端部の位置をエリアセンサーにより検出し、尾端補正量を算出して熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御することができる。
【0068】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置について説明する。本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、上記実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を実現するための装置である。
【0069】
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、粗圧延された粗熱間圧延鋼帯の二次元形状を検出し当該粗熱間圧延鋼帯の尾端中央凹部の位置と前記尾端中央凹部の左右に隣接して形成されている凸部がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が有する第1切断尾端部の位置と第2切断尾端部の位置とを二次元形状測定計により検出する第1検出部と、前記クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯が仕上げ圧延されることによって仕上げ熱間圧延鋼帯が形成され、当該仕上げ熱間圧延鋼帯がピンチロールに送り出された後に当該ピンチロールの出側から出力された前記仕上げ熱間圧延鋼帯が有するピンチロール出側第1尾端部の位置を第1レーザー計により検出し、ピンチロール出側第2尾端部の位置を第2レーザー計により検出する第2検出部と、前記ピンチロール出側第1尾端部の位置と、前記ピンチロール出側第2尾端部の位置と、前記第1レーザーによる第1レーザー検出位置と、前記第2レーザーによる第2レーザー検出位置と、前記第1レーザー検出位置と前記第2レーザー検出位置との間に形成されるレーザー検出差距離とに基づいて、前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の位置を補正するための尾端補正量を算出する算出部と、前記尾端補正量に基づいて前記仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
以下、本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置を構成する各部材について説明する。
【0070】
<第1検出部について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、第1検出部を備える。第1検出部は、粗圧延された粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状と当該粗熱間圧延鋼帯200の尾端中央凹部201の位置を検出することができればよい。さらに、第1検出部は、尾端中央凹部201の左右に隣接して形成されている左側凸部202と右側凸部203がクロップカットされて形成されたクロップカット後の粗熱間圧延鋼帯204が有する第1切断尾端部205の位置と第2切断尾端部206の位置を検出することができればよい。このため、第1検出部は、クロップカットされる前の粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状と、クロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の二次元形状とを測定するためにクロップシャー103を挟んでその前後に設置されていることが好ましい。また、第1検出部は、クロップカットされる前の粗熱間圧延鋼帯200の二次元形状及びクロップカットされた後の粗熱間圧延鋼帯204の二次元形状のうちいずれか一方の当該粗熱間圧延鋼帯の二次元形状を測定するためにクロップシャー103の前後のいずれか一方に設置されていてもよい。第1検出部は、二次元形状測定計102に相当する。例えば、第1検出部としては、反射型2次元レーザー変位計であってもよく、当該反射型2次元レーザー変位計のセンサヘッド又はワークのどちらかを動かすことによって測定することができるものであればよい。
【0071】
<第2検出部について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、第2検出部を備える。第2検出部は、クロップカット後の粗熱間圧延鋼帯204が仕上げ圧延されることによって仕上げ熱間圧延鋼帯300が形成され、当該仕上げ熱間圧延鋼帯300が巻き取り機内PRであるピンチロール105に送り出された後に当該ピンチロール105の出側から出力された仕上げ熱間圧延鋼帯300が有するピンチロール出側第1尾端部302の位置を検出し、ピンチロール出側第2尾端部303の位置を検出することができればよい。したがって、第2検出部は、ピンチロール105の出側よりも後に設置されていることが必要である。例えば、第2検出部としては、第1レーザー計161と第2レーザー計162とを備えるレーザー計106であってもよいし、さらに第3レーザー計を備えているレーザー計106であってもよい。また、第2検出部は、エリアセンサーであってもよい。
【0072】
<算出部について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、算出部を備える。算出部は、仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の位置を補正するための尾端補正量Yを算出する。算出部は、第1検出部が検出して送信した粗熱間圧延鋼帯200に関するデータと、第2検出部が検出して送信した仕上げ熱間圧延鋼帯300に関するデータとに基づいて仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の位置を補正するための尾端補正量Yを算出する。算出部は、たとえば、汎用プロセッサや特定の処理に特化した専用プロセッサ等、1つ以上のプロセッサを含む。
【0073】
<位置制御部について>
本実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置は、位置制御部を備える。位置制御部は、尾端停止コントローラー107に相当する。位置制御部は、パルス波を受信して、当該パルス波をマンドレル駆動部Mに送信することができるものであれば、特に制限されない。位置制御部は、上記算出部が算出した尾端補正量Yの値をパルス波として受信する。その後、位置制御部は、尾端補正量Yの値として受信したパルス波をマンドレル駆動部Mに送信する。マンドレル駆動部Mは、マンドレル109に位置制御部から送信された尾端補正量Yの値として受信したパルス波を伝達する。マンドレル109は、受信したパルス波に基づいて回転駆動することにより仕上げ熱間圧延鋼帯300の尾端の停止位置を制御する。
【0074】
以上説明したように、第3実施形態に係る発明によれば、熱間圧延鋼帯の巻取尾端部の形状が不整形状であり、熱間圧延鋼帯の幅方向にずれた場合であっても、尾端補正量を算出することにより熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を制御することができる。
【0075】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る薄板コイルについて説明する。本実施形態に係る薄板コイルは、上記実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置を用いて得られた仕上げ熱間圧延鋼帯を巻き取ることによって製造されることを特徴とする。以下、本実施形態に係る薄板コイルについて説明する。
【0076】
上記実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置を用いて得られた仕上げ熱間圧延鋼帯を巻き取ることによって製造された薄板コイルは、当該薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯300のすべての巻取尾端が定位置に位置するように制御されている。すなわち、上記実施形態に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御装置を用いて複数の薄板コイルを製造した場合であっても、複数の薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯300のすべての巻取尾端は、同一の定位置に存在することとなる。このため、マンドレル109から薄板コイルを抜き出す時に当該薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯300の巻取尾端が当該薄板コイルから剥がれ落ちることによって、他の設備に干渉することがない。
【0077】
さらに、本実施形態に係る薄板コイルは、当該薄板コイル構成する仕上げ熱間圧延鋼帯300のすべての巻取尾端は、同一の定位置に存在している。このため、薄板コイルをコイルヤードに搬送する際にも薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯300の巻取尾端が当該薄板コイルから剥がれ落ちることなく、安全性を確保しつつ効率よく、薄板コイルを運搬することができる。
【0078】
以上説明したように、第4実施形態に係る発明によれば、薄板コイルを構成する熱間圧延鋼帯のすべての巻取尾端が定位置に位置するように制御されているので、マンドレルから薄板コイルを抜き出す際の安全性を確保し、薄板コイルをコイルヤードに効率よく運搬することができる。
【0079】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステム、または装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0080】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
(発明例1)
本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を適用して、薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の制御をシミュレーションにより行った。実施例1において得られた仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の制御をシミュレーションした結果を表1及び
図5(a)に示す。
【0082】
(比較例1)
従来技術として提案されている熱間圧延鋼帯の巻取制御方法(特開2013-94798号公報)を適用して、実施例1と同一の条件にて薄板コイルを構成する仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の制御をシミュレーションにより行った。比較例1において得られた仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の制御をシミュレーションした結果を表1及び
図5(b)に示す。
【0083】
【0084】
図5(a)~(b)から明らかなように、発明例1において得られた仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の制御をシミュレーションの結果は、最終的な仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止角度の標準偏差が25度から15度と大きく改善されていることを示している。このように、本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法は、仕上げ熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置を緻密に制御することができる。すなわち、本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法を採用することにより、仕上げ熱間圧延鋼帯から構成される薄板コイルの尾端が他設備に干渉するリスクを減少させることができる。
本発明に係る熱間圧延鋼帯の尾端の停止位置制御方法によれば、薄板コイルを構成する熱間圧延鋼帯のすべての巻取尾端を定位置に制御することができるので、製鉄業の発達に寄与し、産業上きわめて有用である。