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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106108
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】苗床および無芯巻回体
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/22 20180101AFI20240731BHJP
   D04H 1/26 20120101ALI20240731BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20240731BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20240731BHJP
【FI】
A01G24/22
D04H1/26
D04H1/425
D04H1/732
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010223
(22)【出願日】2023-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年12月7日~12月9日 サステナブル マテリアル展
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】黒川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真希
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 美智子
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 栄二
(72)【発明者】
【氏名】有馬 祐三
(72)【発明者】
【氏名】影島 沙帆
【テーマコード(参考)】
2B022
4L047
【Fターム(参考)】
2B022BA12
2B022BA13
2B022BB02
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047CA19
4L047CB07
4L047CB10
4L047CC15
4L047EA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、吸水性や発芽性が改善された苗床を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、不織布シートを巻回してなる苗床であって、回転軸に直交する断面を床面とする、苗床に関する。また、本発明は、苗床を形成するための無芯巻回体に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シートを巻回してなる苗床であって、
回転軸に直交する断面を床面とする、苗床。
【請求項2】
前記苗床の密度が0.01~1.0g/cmである、請求項1に記載の苗床。
【請求項3】
前記不織布シートの坪量が5~500g/mである、請求項1に記載の苗床。
【請求項4】
前記苗床の吸水量が0.1~1.0g/cmである、請求項1に記載の苗床。
【請求項5】
前記不織布シートはパルプを主成分として有する、請求項1に記載の苗床。
【請求項6】
前記パルプは針葉樹由来のパルプである請求項5に記載の苗床。
【請求項7】
前記不織布シートが乾式不織布シートである、請求項1に記載の苗床。
【請求項8】
前記不織布シートは養分を含む、請求項1に記載の苗床。
【請求項9】
前記回転軸に直交する断面が傾斜を有する、請求項1に記載の苗床。
【請求項10】
水耕栽培用である、請求項1に記載の苗床。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の苗床を形成するための無芯巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗床および無芯巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種植物の水耕栽培等においては、ウレタンマットに培養液を含浸させ、このウレタンマットの表面に種を蒔くことにより、植物の根をウレタンマット内に保持させて栽培する方法が知られている(特許文献1)。ウレタンマットは、安価でかつ軽量であることから、水耕栽培等の苗床として広く用いられている。しかしながら、ウレタンマットは、地中に埋めても自然に分解することがないため、使用後は廃棄処分されることになる。この場合、ウレタンマットは産業廃棄物として処理されるため、廃棄費用として多額のコストが必要になる。また、ウレタンマットを焼却処分する場合、高温での焼却が必要となり、環境への負荷が大きく、また焼却炉を傷める恐れも指摘されている。
【0003】
このため、近年は、ウレタンマットに替えて、廃棄性に考慮した自然素材や生分解性を有する培地シートの開発が進められている。例えば、特許文献2及び3には、種子から苗を育てるのに使用される水耕栽培用の部材であって、柔軟性を有する多孔質の本体部を備えており、本体部が不織布で形成されている育苗部材が開示されている。また、特許文献4には、パルプ繊維、もしくはパルプ繊維と合成繊維から構成された不織布に、3~10mm間隔で開孔部が設けられている水耕栽培用培地シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-83481号公報
【特許文献2】特開2022-84460号公報
【特許文献3】特開2022-84461号公報
【特許文献4】特開2007-312624公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ウレタンマットに替わる水耕栽培用培地シートの開発が進められているが、従来の不織布シートにおいては、吸水性や発芽性が十分ではない場合があり、さらなる改善が求められていた。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、吸水性や発芽性が改善された苗床を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
【0008】
[1] 不織布シートを巻回してなる苗床であって、
回転軸に直交する断面を床面とする、苗床。
[2] 苗床の密度が0.01~1.0g/cmである、[1]に記載の苗床。
[3] 不織布シートの坪量が5~500g/mである、[1]又は[2]に記載の苗床。
[4] 苗床の吸水量が0.1~1.0g/cmである、[1]~[3]のいずれかに記載の苗床。
[5] 不織布シートはパルプを主成分として有する、[1]~[4]のいずれかに記載の苗床。
[6] パルプは針葉樹由来のパルプである[5]に記載の苗床。
[7] 不織布シートが乾式不織布シートである、[1]~[6]のいずれかに記載の苗床。
[8] 不織布シートは養分を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の苗床。
[9] 回転軸に直交する断面が傾斜を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の苗床。
[10] 水耕栽培用である、[1]~[9]のいずれかに記載の苗床。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の苗床を形成するための無芯巻回体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸水性や発芽性が改善された苗床を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態における苗床の構成を説明する斜視図である。
図2図2は、本実施形態における苗床の構成を説明する斜視図である。
図3図3は、本実施形態における無芯巻回体及び苗床の一例を示す写真である。
図4図4は、本実施形態における苗床の一例を示す写真である。
図5図5は、本実施形態における苗床がセルに収容された様子を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(苗床)
本実施形態は、不織布シートを巻回してなる苗床であって、回転軸に直交する断面を床面とする、苗床に関する。図1に示されるように、本実施形態の苗床100は、不織布シート10を巻回したものであり、回転軸に直交する断面が床面Fを構成している。本明細書において、床面とは、苗床の上面であり種子を播種する面である。
【0013】
本実施形態の苗床は上記構成を有するため、吸水性や発芽性が改善されている。従来使用されていたウレタンマット等の合成樹脂は、それ自体が保水性を有していないため、吸水性に劣るという課題があった。また、従来のウレタンマットやパルプを含む不織布シートにおいては、発芽した主根を真っ直ぐに成長させることが困難であり、その結果、植物が倒れたり、また生育に支障をきたしたりする場合があった。この点、本実施形態の苗床においては、不織布シートを巻回してなるため、吸水性に優れている。また、本実施形態の苗床においては、不織布シートを巻回する際の回転軸に直交する断面を床面としているため、床面に適度な隙間が生じており、その隙間が発芽した主根を真っ直ぐに成長させることを促すことができるため、種子の発芽性を効果的に高めることができる。
【0014】
また、本実施形態の苗床は使用後の廃棄が容易である。例えば、苗床を形成する不織布シートにパルプや生分解性樹脂といった生分解性材料を用いることで、地中で分解をさせることができる。また、不織布シートにパルプを用いた場合には、苗床を容易に焼却処分することもできる。
【0015】
本実施形態において苗床の重量は、0.1g以上であることが好ましく、0.2g以上であることがより好ましく、0.3g以上であることがさらに好ましい。苗床の重量は、100g以下であることが好ましく、80g以下であることがより好ましく、50g以下であることがさらに好ましく、20g以下であることが一層好ましく、10g以下であることが特に好ましい。苗床の重量を上記範囲内とすることにより、軽量化が可能となり、苗床のハンドリング性や廃棄容易性をより効果的に高めることができる。
【0016】
苗床の体積は、2cm以上であることが好ましく、4cm以上であることがより好ましく、6cm以上であることがさらに好ましい。苗床の体積は、100cm以下であることが好ましく、80cm以下であることがより好ましく、60cm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
苗床の床面の直径は、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましい。床面の直径は、150mm以下であることが好ましく、120mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
苗床の床面の面積は、1.5cm以上であることが好ましく、2.0cm以上であることがより好ましく、2.5cm以上であることがさらに好ましい。苗床の床面の面積は、50cm以下であることが好ましく、45cm以下であることがより好ましく、40cm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
苗床の高さは、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましく、15mm以上であることが特に好ましい。苗床の高さは、200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
なお、苗床の形状や重量等は、使用目的や使用するセル(ケース)の大きさによって適宜変更することができる。ただし、上述したように苗床の形状や重量を上記範囲内とすることにより、例えば、一般的に用いられている水耕栽培用のセル(ケース)に収容しやすくなる。また、苗床の形状や重量を上記範囲内とすることにより、吸水性に加えて、保水性や水吸い上げ特性をより効果的に高めやすくなる。
【0021】
本実施形態においては、不織布シートを巻回してなる苗床の密度は0.01g/cm以上であることが好ましく、0.05g/cm以上であることがより好ましく、0.10g/cm以上であることがさらに好ましい。また、苗床の密度は1.0g/cm以下であることが好ましく、0.80g/cm以下であることがより好ましく、0.60g/cm以下であることがさらに好ましい。苗床の密度を上記範囲内とすることにより、苗床の吸水性と保水性を高めることができ、発芽性をより効果的に高めることができる。また、苗床の密度を上記範囲内とすることにより、苗床の軽量化も可能となる。さらに、苗床の密度を上記範囲内とすることにより、苗床を形成する不織布シートの間に適度な隙間が生じ、種子から主根を真っ直ぐに成長させることが容易となる。
【0022】
本実施形態において、苗床の吸水量は苗床1つ当たり、2g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、7g以上であることがさらに好ましく、10g以上であることが特に好ましい。苗床の吸水量の上限値は特に限定されるものではないが、苗床1つ当たり、例えば100g以下であることが好ましい。
また、苗床の吸水量は0.1g/cm以上であることが好ましく、0.2g/cm以上であることがより好ましく、0.3g/cm以上であることがさらに好ましく、0.5g/cm以上であることが特に好ましい。苗床の吸水量の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、1.0g/cm以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態の苗床は、不織布シートを巻回する際の回転軸に直交する断面を床面とする。そして、図2に示されるように、苗床の回転軸に直交する断面は傾斜を有していることが好ましい。図2においては、傾斜の様子を点線で表している。例えば、図2に示されるように、傾斜は床面Fの中心に向かって下降するように形成されることが好ましい。
【0024】
苗床の床面の形状は円形であることが好ましいが、不織布シートを巻回した後に、床面の形状が多角形(例えば、三角形、四角形、六角形、八角形等)となるように加工してもよい。
【0025】
本実施形態の苗床は水耕栽培及び土耕栽培(露地栽培)のいずれにも使用することができる。水耕栽培では、水や養分を添加したセル(ケース)に苗床を載置し、床面に種子を播種することで種子から苗を育てることができる。また、土耕栽培(露地栽培)では、セル(ケース)に苗床を入れ、苗床の隙間に土を入れることで種子から苗を育てることができる。土耕栽培(露地栽培)において、本実施形態の苗床を用いることで、全体重量の軽量化が可能となる。中でも、本実施形態の苗床は吸水性に優れているため、水耕栽培用に特に好適である。
【0026】
本実施形態の苗床は1枚の不織布シートを巻回してなるものであってもよいが、複数枚の不織布シートを積層して巻回してなるものであってもよい。複数枚の不織布シートを積層して巻回することで、各不織布シートの間にランダムな隙間を形成することも可能となり、このような隙間が発芽した主根の成長を促すこともできる。
【0027】
本実施形態の苗床は1種類の不織布シートを巻回してなるものであってもよいが、2種以上の不織布シートを積層した状態で巻回してなるものであってもよい。例えば、苗床は、強度の異なる2種の不織布シートを積層した状態で巻回してなるものであってもよく、素材の異なる2種の不織布シートを積層した状態で巻回してなるものであってもよい。強度の異なる2種の不織布シートを積層した状態で巻回することで、主根の生育具合に応じて不織布シートの間に空隙を形成しつつ、生育を促進することができる。また、苗床が素材の異なる2種の不織布シートを積層した状態で巻回してなるものである場合、例えば、一方の不織布シートを水解性不織布シートとし、他方の不織布シートを非水解性不織布シートとすることにより、経時的に水解性不織布シートを水解させることも可能となる。これにより、経時により、不織布シート間に隙間が生じることになるため、主根の生育を妨げず、かつ主根の生育を安定したものとすることもできる。
【0028】
本実施形態の苗床は、不織布シートと、機能性シートを積層した状態で巻回してなるものであってもよい。機能性シートとしては、例えば、養分や防藻剤等の添加剤を含むシートや、遮光シート、着色シート、樹脂シート等を挙げることができる。不織布シートと、機能性シートを組み合わせて巻回することで、必要に応じて様々な機能を苗床に付与することができる。
【0029】
本実施形態の苗床は生分解性不織布シートを巻回してなるものであることが好ましい。例えば、苗床は1枚の生分解性不織布シートを巻回してなるものであってもよく、複数枚の生分解性不織布シートを巻回してなるものであってもよい。苗床を生分解性不織布シートから形成することで、土耕栽培に用いた場合に苗床を回収する手間を省くことができる。また、苗床を生分解性不織布シートから形成することで、水耕栽培後に苗を苗床から脱離させることなく土耕栽培に移行することも可能となる。
【0030】
(不織布シート)
本実施形態の苗床を形成する不織布シートを構成する主成分としては、例えば、パルプ、コットン、麻、ジュート等の天然繊維、生分解性樹脂、合成樹脂等を挙げることができる。中でも、不織布シートはパルプを主成分として有することが好ましい。パルプを主成分とすることにより廃棄容易性を格段に高めることができる。また、パルプは生分解性が良好であるため、環境への負荷を低減することもできる。
【0031】
パルプとしては、例えば木材パルプ、非木材パルプ、及び脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)及び酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)及びケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)及びサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、例えばコットンリンター及びコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら及びバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、例えば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0032】
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、木材パルプ及び脱墨パルプから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。本実施形態においては、木材パルプの中でも、針葉樹パルプを用いることが好ましい。針葉樹パルプは、広葉樹パルプに比べて、繊維が細く長い為、不織布としたときに、毛細管力が働きやすく、保水性、水の拡散性(吸上げ力)に優れている。
【0033】
本実施形態で使用するパルプはいわゆる短繊維であり、その繊維長は、繊維長測定機FS-200(カヤーニ社製)による測定で、長さ加重平均繊維長が10mm以下であることが好ましく、6mm以下であることがより好ましい。
【0034】
通常、パルプ繊維の繊維幅は1μm以上であるが、本実施形態では、パルプ繊維として、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを用いることもできる。不織布シートに微細繊維状セルロースを配合することにより、吸水性に加えて、保水性や水吸い上げ特性をより効果的に高めることができる。
【0035】
不織布シートは、生分解性樹脂を含むものであってもよい。生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリブチレンサクシエート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等を挙げることができる。不織布シートは、生分解樹脂繊維から形成される不織布シートであってもよい。
【0036】
不織布シートは、合成樹脂繊維を含んでいてもよい。合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル(PET)繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維等が挙げられる。また、融点の異なる合成樹脂を組み合わせてなる複合繊維を使用することもできる。複合繊維の樹脂の組合せとしては、PE/PP、PE/PET、PP/PET、低融点PET/PET、低融点PP/PP、ナイロン-6/ナイロン66等が挙げられる。なお、各種合成繊維の繊維長、及び繊維径は任意に選択可能であるが、繊維長2~6mmの範囲、繊維径1~72dtの範囲のものが、最も好適に用いられる。
【0037】
不織布シートは再生セルロース繊維を含んでいてもよい。再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられる。
【0038】
本実施形態においては、不織布シートに、必要に応じて、肥料等の養分、着色剤、アオコ防止剤、保水剤、抗菌剤、防臭剤等、各種機能性物質を添加することも可能である。中でも、不織布シートは、肥料等の養分や着色剤を含むことが好ましく、肥料等の養分を含むことがより好ましい。不織布シートに肥料等の養分を含有させることにより、苗の生育を促進することができる。また、不織布シートに着色剤を添加することで、光の吸収をコントロールしたり、成長度合いをコントロールすることも容易となる。これら添加剤の添加方法は特に限定されるものではないが、例えば、水性バインダーに混ぜて散布する、水性バインダーと別に散布する、各種繊維原料に予め混合しておく等の方法が挙げられる。
【0039】
本実施形態において、不織布シートは乾式不織布シートであることが好ましい。不織布シートを製造する際には、例えばパルプ繊維を乾燥状態で機械的に解して単繊維化し、走行するワイヤ上に連続的にパルプ繊維によるウエブを形成(エアレイド法)し、さらに水性バインダーをスプレーして乾燥することによって、ウエブのパルプ繊維間を接着する方式(ラテックスボンド法)を採用することが好適である。
【0040】
不織布シートを乾式不織布法(エアレイド法)で製造する際には、繊維同士を固着させるために水性バインダーを用いることが好ましい。使用するバインダーは、必要に応じて適宜選択可能であり、たとえば、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の水溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリル・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体等の各エマルジョン、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス等のエマルジョンタイプのバインダー等が挙げられる。なお、バインダーとして生分解性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等)を用いることも可能である。
【0041】
なお、不織布シートの製造の際に、合成樹脂繊維とパルプ繊維を併用する場合、サーマルボンド法、もしくはラテックスボンド法とサーマルボンド法を組み合わせたマルチボンド法により乾式不織布を得ることも可能である。
【0042】
本実施形態において不織布シートの坪量は、5g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることがより好ましく、20g/m以上であることがさらに好ましく、35g/m以上であることが特に好ましい。また、不織布シートの坪量は、500g/m以下であることが好ましく、300g/m以下であることがより好ましく、200g/m以下であることがさらに好ましく、100g/m以下であることが特に好ましい。
【0043】
本実施形態において不織布シートの密度は、0.01g/cm以上であることが好ましく、0.02g/cm以上であることがより好ましく、0.03g/cm以上であることがさらに好ましく、0.04g/cm以上であることが特に好ましい。また、不織布シートの引張強度は、1N/100mm以上であることが好ましく、3N/100mm以上であることがより好ましく、5N/100mm以上であることがさらに好ましく、8N/100mm以上であることが特に好ましい。
【0044】
(苗床の製造方法)
本実施形態の苗床を製造方法は、不織布シートを巻回して無芯巻回体を得る工程と、無芯巻回体を所定の幅に切断する工程とを含むことが好ましい。なお、切断幅は苗床の高さに相当するため、播種する種子の種類や苗床を収容するセル(ケース)の大きさ等を考慮して適宜設定することができる。
【0045】
本実施形態は、所定幅に切断する前の無芯巻回体に関するものであってもよい。無芯巻回体とは、巻回する際に、芯を用いずに巻回された巻回体である。
【0046】
無芯巻回体を形成する不織布シートの幅は、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。また、無芯巻回体を形成する不織布シートの幅は、100mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましい。
【0047】
無芯巻回体を形成する不織布シートの巻取り長さは、3cm以上であることが好ましく、5cm以上であることがより好ましい。また、無芯巻回体を形成する不織布シートの巻取り長さは、300cm以下であることが好ましく、200cm以下であることがより好ましい。
【実施例0048】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0049】
(試験例)
エアレイド法で製造したパルプ繊維を主成分とする不織布(王子キノクロス社製、キノクロスKS-40、坪量40g/m、幅275mm)を芯なしのロール状に巻取り、巻取長が720mm、巻取直径が24mmの無芯巻回体を作製した。次いで、無芯巻回体の回転軸に直交し、かつ切断幅が30mmとなるように無芯巻回体を切断した(図3)。このようにして、図4に示される苗床を得た。
【0050】
得られた苗床の床面直径は24mmであり、苗床の高さは30mmであり、床面面積は4.52cmであり、苗床の体積は13.56cmであり、苗床の重量は0.864gであり、密度は0.06g/cmであった。
【0051】
(評価)
<吸水性評価>
縦30mm×横30mm×高さ40mmのセルに、得られた苗床の床面が水平面と平行になるように載置し(図5)、セル内に苗床の底面から10mmが浸漬する様に水を注ぎ、10分経過後の苗床の重量を測定した。そして、以下の式で吸水量を算出した。
吸水量(g/cm)=(吸水後の苗床の重量-吸水前の苗床の重量)/苗床の体積
吸水量は0.95g/cmであった。
【0052】
<発芽性評価>
縦30mm×横30mm×高さ40mmのセルに、得られた苗床の床面が水平面と平行になるように載置し、苗床が10mm浸漬する様に水を入れた。苗床の天面の窪みに、サニーレタスの種を4粒播種した。播種した後発芽するまでは暗所にセルを置き、発芽後は日の当たる場所に移動させた。栽培中、苗床の水位が10mm浸漬する様に水を補充した。
【0053】
上記で得られた苗床は吸水性が良好であり、種子の発芽性も良好であった。播種から約3日で発芽し、10日後には葉の高さが約20mmまで成長した。
【符号の説明】
【0054】
10 不織布シート
100 苗床
F 床面
図1
図2
図3
図4
図5