(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106110
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】故障検知装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20240731BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B60T17/22 B
B60T7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010225
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 仁希
(72)【発明者】
【氏名】巻幡 智明
(72)【発明者】
【氏名】石黒 督浩
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB06
3D049CC05
3D049HH03
3D049HH30
3D049HH51
3D049RR04
3D246BA06
3D246DA01
3D246GA01
3D246HA02A
3D246HA45A
3D246KA15
3D246MA03
(57)【要約】
【課題】故障を検知すること。
【解決手段】EDSS制御ECU10は、EDSS(Emergency Driving Stop System)によるブレーキの作動に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアの圧力に関する第1検知結果と、当該エアとブレーキペダル20の操作に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブ13から排出されたエアの圧力に関する第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する取得部101と、取得部101によって取得された第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する検知部102と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EDSS(Emergency Driving Stop System)によるブレーキの作動に基づいてダブルチェックバルブに流入するエアの圧力に関する第1検知結果と、当該エアとブレーキペダルの操作に基づいて前記ダブルチェックバルブに流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出する前記ダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力に関する第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記第1検知結果と前記第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する検知部と、
を備える故障検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記EDSSが作動している際に、前記第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、前記ダブルチェックバルブの故障を検知する、
請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記EDSSが作動している際に、前記第1検知結果の検知を行った装置に異常が無く、前記第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、前記ダブルチェックバルブの故障を検知する、
請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記第1検知結果が示すエアの圧力値と前記第2検知結果が示すエアの圧力値との差分に基づいて、前記第1検知結果の検知を行った装置又は前記第2検知結果の検知を行った装置の少なくとも一方の故障を検知する、
請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記EDSSが作動していない際に、前記第1検知結果が圧力の検知を示している場合、前記EDSSの故障を検知する、
請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記EDSSが作動しておらず、前記EDSSを搭載する車両が加速している際に、前記第2検知結果が圧力の検知を示している場合、前記EDSS又は前記ブレーキペダルの操作に基づくブレーキ制御を行うシステムの少なくとも一方の故障を検知する、
請求項1に記載の故障検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、故障を検知する故障検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、走行中、ドライバーが急病などで安全に運転できない状態に陥ったことがカメラで監視され、又は、乗客や乗務員によって非常ブレーキスイッチが操作された場合に、自動ブレーキが作動し、車両が減速して停止するEDSS(Emergency Driving Stop System)について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EDSSを導入した回路において、故障を検知する方法は知られていない。そこで、故障を検知することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る故障検知装置は、EDSSによるブレーキの作動に基づいてダブルチェックバルブに流入するエアの圧力に関する第1検知結果と、当該エアとブレーキペダルの操作に基づいてダブルチェックバルブに流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力に関する第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する取得部と、取得部によって取得された第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する検知部と、を備える。このような側面においては、取得された第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障が検知される。すなわち、故障を検知することができる。
【0006】
また、本開示の一側面に係る故障検知装置の検知部は、EDSSが作動している際に、第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、ダブルチェックバルブの故障を検知してもよい。このような側面においては、第2検知結果に基づいてダブルチェックバルブの故障を検知することができる。
【0007】
また、本開示の一側面に係る故障検知装置の検知部は、EDSSが作動している際に、第1検知結果の検知を行った装置に異常が無く、第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、ダブルチェックバルブの故障を検知してもよい。このような側面においては、第2検知結果に基づいてダブルチェックバルブの故障を検知することができる。
【0008】
また、本開示の一側面に係る故障検知装置の検知部は、第1検知結果が示すエアの圧力値と第2検知結果が示すエアの圧力値との差分に基づいて、第1検知結果の検知を行った装置又は第2検知結果の検知を行った装置の少なくとも一方の故障を検知してもよい。このような側面においては、第1検知結果及び第2検知結果に基づいて、第1検知結果の検知を行った装置又は第2検知結果の検知を行った装置の少なくとも一方の故障を検知することができる。
【0009】
また、本開示の一側面に係る故障検知装置の検知部は、EDSSが作動していない際に、第1検知結果が圧力の検知を示している場合、EDSSの故障を検知してもよい。このような側面においては、第1検知結果に基づいてEDSSの故障を検知することができる。
【0010】
また、本開示の一側面に係る故障検知装置の検知部は、EDSSが作動しておらず、EDSSを搭載する車両が加速している際に、第2検知結果が圧力の検知を示している場合、EDSS又はブレーキペダルの操作に基づくブレーキ制御を行うシステムの少なくとも一方の故障を検知してもよい。このような側面においては、第2検知結果に基づいてEDSS又はブレーキペダルの操作に基づくブレーキ制御を行うシステムの少なくとも一方の故障を検知することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、故障を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来のEDSS回路の回路例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るブレーキシステムの回路例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る故障検知装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る故障検知装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明における本開示での実施形態は、本発明の具体例であり、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0014】
図1は、車両に備えられた従来のEDSS回路の回路例を示す図である。
図1に示すEDSS回路は、EDSS制御ECU(Electronic Control Unit)10a、ブレーキペダル20、ブレーキECU21、ブレーキアクチュエーター22及びブレーキ23を含んで構成される。なお、実施形態において「回路」は「配管回路」に置き換えてもよい。
【0015】
図1に示す通り、EDSS制御ECU10a及びブレーキECU21、ブレーキペダル20及びブレーキECU21、並びに、ブレーキECU21及びブレーキアクチュエーター22は、それぞれ電気回路によって接続されており、互いに情報の送受信が可能である。
【0016】
図1に示す通り、ブレーキペダル20及びブレーキアクチュエーター22、並びに、ブレーキアクチュエーター22及びブレーキ23は、それぞれエア圧回路によって接続されている。エア圧回路におけるエアの供給源であるエアタンク(不図示)から供給されるエアはエア圧回路に沿って、エアタンク(上流)側から順に、ブレーキペダル20及びブレーキアクチュエーター22を介してブレーキ23に流通する。
【0017】
EDSS制御ECU10aは、EDSSの制御を行う。
【0018】
ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20は、車両のドライバーにより操作されると、バルブを開いて、エアタンクからのエアをブレーキアクチュエーター22及びブレーキ23に供給する。
【0019】
ブレーキECU21は、ブレーキ及びABS(Anti-lock Brake System)の制御を行う。
【0020】
ブレーキアクチュエーター22は、ABSの制御を行う。
【0021】
ブレーキ23は、車輪に取り付けられて、車輪の回転を制動する。
【0022】
図1に示すEDSS回路において、ドライバーによりブレーキペダル20が踏まれると、バルブが開くことによりエアタンクから供給されるエアが、ブレーキアクチュエーター22を介してブレーキ23へ流入することで、ブレーキが作動する(ブレーキがかかる)。
【0023】
図1に示すような従来のEDSS回路では、EDSS制御ECU10aがブレーキECU21に対して(電気回路を介して)ブレーキ制御を指示していた。そのため、ブレーキECU21がブレーキシステムの保証(故障検知)を行っていた。
図1に示す通り、ブレーキECU21の保証範囲には、ブレーキペダル20、ブレーキECU21、ブレーキアクチュエーター22及びブレーキ23が含まれる。すなわち、従来のEDSS回路では、ブレーキ回路故障時はブレーキECU21側で故障を検知していた。
【0024】
しかしながら、
図2(詳細は後述)に示すように、EDSS制御ECU10がEDSS専用ブレーキバルブ11を制御する回路構成、つまり独立したEDSS専用ブレーキ回路を採用した場合、EDSS制御ECU10が出力するブレーキ指示をブレーキECU21が受信できないため、ブレーキECU21でEDSS専用ブレーキ回路の故障を検知できないという課題がある。独立したEDSS専用ブレーキ回路を採用するケースとしては、例えば、ブレーキECU21が、「(EDSS制御ECU10aから)減速要求を受けてブレーキをかける」という制御ができない種類のECUであることが挙げられる。ブレーキECUの種類によらず、EDSSの制御が実現でき、かつ故障の検知もできることが望まれている。
【0025】
図2は、実施形態に係るブレーキシステム1の回路例を示す図である。
図2に示すブレーキシステム1は、
図1に示す従来のEDSS回路に対して、EDSS制御ECU10aをEDSS制御ECU10(故障検知装置)に置き換え、EDSS専用ブレーキバルブ11、エア圧センサ12、ダブルチェックバルブ13(ダブルチェックバルブ)、エア圧センサ14及びブレーキブースター24をさらに含ませるなど、回路を変更したものである。EDSS制御ECU10、EDSS専用ブレーキバルブ11、エア圧センサ12、ダブルチェックバルブ13及びエア圧センサ14は、EDSS専用ブレーキ回路を構成する。
【0026】
図2に示す通り、EDSS制御ECU10及びEDSS専用ブレーキバルブ11、エア圧センサ12及びEDSS制御ECU10、エア圧センサ14及びEDSS制御ECU10、並びに、ブレーキECU21及びブレーキアクチュエーター22は、それぞれ電気回路によって接続されており、互いに情報の送受信が可能である。
【0027】
図2に示す通り、EDSS専用ブレーキバルブ11及びエア圧センサ12、エア圧センサ12及びダブルチェックバルブ13、ダブルチェックバルブ13及びエア圧センサ14、エア圧センサ14及びブレーキブースター24、並びに、ブレーキペダル20及びダブルチェックバルブ13は、それぞれエア圧回路によって接続されている。エア圧回路におけるエアの供給源であるエアタンク(不図示)から供給されるエアはエア圧回路に沿って、エアタンク(上流)側から順に、EDSS専用ブレーキバルブ11、エア圧センサ12、ダブルチェックバルブ13及びエア圧センサ14を介してブレーキブースター24に流通する。また、エアタンクから供給されるエアはエア圧回路に沿って、エアタンク(上流)側から順に、ブレーキペダル20、ダブルチェックバルブ13及びエア圧センサ14を介してブレーキブースター24に流通する。すなわち、エアタンクにエア圧回路を並列につないでいる。
【0028】
図2に示す通り、ブレーキブースター24及びブレーキアクチュエーター22、並びに、ブレーキアクチュエーター22及びブレーキ23は、それぞれ油圧回路によって接続されている。ブレーキブースター24からの油(オイル)は油圧回路に沿って、ブレーキアクチュエーター22を介して、ブレーキ23に流通する。
【0029】
EDSS制御ECU10は、ブレーキシステム1におけるEDSSを制御する。EDSS制御ECU10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びCAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニットである。EDSS制御ECU10では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。EDSS制御ECU10の各種の機能の詳細については後述する。
【0030】
EDSS専用ブレーキバルブ11は、EDSSが作動したときに、EDSS制御ECU10の制御に基づいてバルブを開き、エアタンクから流入するエアをダブルチェックバルブ13に流す。EDSS専用ブレーキバルブ11により、狙ったタイミングでエアを流すことができる。
【0031】
エア圧センサ12は、エア圧回路に沿って(EDSSによるブレーキの作動に基づいて)EDSS専用ブレーキバルブ11からダブルチェックバルブ13へ流入するエアの圧力(エア圧、空気圧)の検知を行う。エア圧センサ12は、検知を行った結果である、圧力に関する検知結果(以降では「第1検知結果」と記す)を、電気回路を介してEDSS制御ECU10に送信する。
【0032】
ダブルチェックバルブ13は、EDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとブレーキペダル20の操作に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出する。より具体的には、ダブルチェックバルブ13は、EDSS専用ブレーキバルブ11から流入するエアとブレーキペダル20から流入するエアとのうち圧力の高いエアをブレーキブースター24に流す。ブレーキシステム1ではEDSS専用ブレーキバルブ11及びブレーキペダル20(のバルブ)が含まれるためエア圧回路が二つの経路になり、強い方のエア圧を優先しなければいけないので強いエア圧を選別するためにダブルチェックバルブ13を含めている。
【0033】
エア圧センサ14は、エア圧回路に沿ってダブルチェックバルブ13からブレーキブースター24へ流入するエアの圧力の検知を行う。エア圧センサ14は、検知を行った結果である、圧力に関する検知結果(以降では「第2検知結果」と記す)を、電気回路を介してEDSS制御ECU10に送信する。
【0034】
ブレーキブースター24は、エアタンクから供給されるエアにより油を油圧回路に沿ってブレーキ23に送ることで、ブレーキ23を作動させる。ブレーキブースター24は、エアタンクからのエア圧をもとに、油の圧力(油圧、オイル圧)をどのくらいさらにかけるかを計算し、計算結果に基づく油圧を排出する。すなわち、ブレーキブースター24は、エア圧を油圧に変換して、油圧でブレーキ23を作動させる。
【0035】
ブレーキペダル20、ブレーキECU21、ブレーキアクチュエーター22及びブレーキ23は、
図1と同様のため説明を省略する。なお、
図1からの差分として、間の回路がエア圧回路から油圧回路に変更されているが、機能的には同様である。ブレーキペダル20は、サービスブレーキ回路を構成していてもよい。
【0036】
ブレーキシステム1において、ブレーキECU21、ブレーキアクチュエーター22、ブレーキ23及びブレーキブースター24の集合を「ブレーキ」として扱ってもよい。
【0037】
ブレーキシステム1では、EDSS制御ECU10から直接バルブ(EDSS専用ブレーキバルブ11)制御する回路構成となっている。ブレーキシステム1では、ダブルチェックバルブ13の上流と下流にエア圧センサ(上流にエア圧センサ12、下流にエア圧センサ14)を盛り込むことによってブレーキ(ブレーキECU21、ブレーキアクチュエーター22、ブレーキ23及びブレーキブースター24の集合)のエア圧の変化を検知してEDSS専用ブレーキ回路などの故障を検知する。
【0038】
図2に示す通り、EDSSの保証範囲には、EDSS制御ECU10、EDSS専用ブレーキバルブ11、エア圧センサ12、ダブルチェックバルブ13及びエア圧センサ14が含まれる。また、ブレーキECU21の保証範囲には、ブレーキペダル20、ブレーキECU21、ブレーキアクチュエーター22、ブレーキ23及びブレーキブースター24が含まれる。
【0039】
図3は、EDSS制御ECU10(実施形態に係る故障検知装置)の機能構成の一例を示す図である。
図3に示す通り、EDSS制御ECU10は、格納部100、取得部101(取得部)、及び、検知部102(検知部)を含んで構成される。
【0040】
格納部100は、EDSS制御ECU10の処理などで利用又は出力される任意の情報を格納する。格納部100は、EDSS制御ECU10の各機能にて算出される情報を格納してもよい。格納部100によって格納された情報は、EDSS制御ECU10の各機能によって適宜参照されてもよい。
【0041】
取得部101は、EDSSによるブレーキの作動に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアの圧力に関する検知結果である第1検知結果と、当該エアとブレーキペダル20の操作に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブ13から排出されたエアの圧力に関する検知結果である第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する。より具体的には、取得部101は、エア圧センサ12から送信される第1検知結果と、エア圧センサ14から送信される第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する。例えば、取得部101は、第1検知結果のみを取得してもよいし、第2検知結果のみを取得してもよいし、又は、第1検知結果及び第2検知結果の両方を取得してもよい。取得部101は、取得した情報を検知部102に出力してもよいし、格納部100によって格納させてもよい。
【0042】
検知部102は、取得部101によって(入力)取得された(又は格納部100によって格納された)第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する。例えば、検知部102は、取得部101によって取得された第1検知結果のみに基づいて故障を検知してもよいし、取得部101によって取得された第2検知結果のみに基づいて故障を検知してもよいし、又は、取得部101によって取得された第1検知結果及び第2検知結果の両方に基づいて故障を検知してもよい。検知部102は、検知した故障に関する故障情報を他の装置又はディスプレイなどに出力してもよい。
【0043】
検知部102は、EDSSが作動している際に、第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、ダブルチェックバルブ13の故障を検知してもよい。検知部102は、EDSSが作動している際に、第1検知結果の検知を行ったエア圧センサ12に異常が無く、第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、ダブルチェックバルブ13の故障を検知してもよい。つまり、検知部102は、(ダブルチェックバルブ13の)上流のエア圧センサ12に異常が無く、EDSSが作動している時に(ダブルチェックバルブ13の)下流のエア圧センサ14に圧力が検知されない場合、ダブルチェックバルブ13の故障を検知する。なお、検知部102は、EDSSが作動しているか否か、及び、エア圧センサ12又はエア圧センサ14に異常があるか否かを、既存技術を用いて判定する。
【0044】
検知部102は、第1検知結果が示すエアの圧力値と第2検知結果が示すエアの圧力値との差分に基づいて、第1検知結果の検知を行ったエア圧センサ12又は第2検知結果の検知を行ったエア圧センサ14の少なくとも一方の故障を検知してもよい。より具体的には、検知部102は、(ダブルチェックバルブ13の)上流のエア圧センサ12の出力値と(ダブルチェックバルブ13の)下流のエア圧センサ14の出力値とに一定(所定の値)以上の差がある場合、エア圧センサ12又はエア圧センサ14の少なくとも一方の故障(特性異常)を検知する。例えば、検知部102は、エア圧センサ12の出力値が4バールで、エア圧センサ14の出力値が3バールであった場合、エア圧センサ12又はエア圧センサ14の少なくとも一方の故障を検知してもよい。
【0045】
検知部102は、EDSSが作動していない際に、第1検知結果が圧力の検知を示している場合、EDSSの故障を検知してもよい。より具体的には、検知部102は、EDSS制御が非作動状態で(ダブルチェックバルブ13の)上流のエア圧センサ12に圧力がかかっている場合、EDSS専用ブレーキバルブ11が故障しブレーキが引き摺っている(EDSS専用ブレーキ回路のエア残圧に関する故障など)と判定する。
【0046】
検知部102は、EDSSが作動しておらず、EDSSを搭載する車両が加速している際に、第2検知結果が圧力の検知を示している場合、EDSS又はブレーキペダル20の操作に基づくブレーキ制御を行うシステムの少なくとも一方の故障を検知してもよい。より具体的には、検知部102は、EDSS制御が非作動状態でドライバーがアクセルを踏んで車両が加速している状態で(ダブルチェックバルブ13の)下流のエア圧センサ14に圧力がかかっている場合、EDSS専用ブレーキバルブ11又はサービスブレーキ回路に故障が発生しブレーキが引き摺っている(サービスブレーキ回路のエア残圧に関する故障など)と判定する。なお、検知部102は、EDSSを搭載する車両が加速しているか否かを、既存技術を用いて判定する。
【0047】
図4は、EDSS制御ECU10(実施形態に係る故障検知装置)が実行する処理(故障検知方法)の一例を示すフローチャートである。まず、取得部101が、第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する(ステップS1)。なお、第1検知結果及び第2検知結果の両方を取得する場合、第1検知結果及び第2検知結果を同時に取得してもよいし、それぞれ別のタイミングで取得してもよい。次に、検知部102が、S1にて取得された第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する(ステップS2)。
【0048】
続いて、EDSS制御ECU10の作用効果について説明する。
【0049】
EDSS制御ECU10は、EDSSによるブレーキの作動に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアの圧力に関する第1検知結果と、当該エアとブレーキペダル20の操作に基づいてダブルチェックバルブ13に流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブ13から排出されたエアの圧力に関する第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する取得部101と、取得部101によって取得された第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する検知部102と、を備える。このような側面においては、取得された第1検知結果と第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障が検知される。すなわち、故障を検知することができる。
【0050】
検知部102は、EDSSが作動している際に、第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、ダブルチェックバルブ13の故障を検知してもよい。このような側面においては、第2検知結果に基づいてダブルチェックバルブ13の故障を検知することができる。
【0051】
検知部102は、EDSSが作動している際に、第1検知結果の検知を行った装置(エア圧センサ12)に異常が無く、第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、ダブルチェックバルブ13の故障を検知してもよい。このような側面においては、第2検知結果に基づいてダブルチェックバルブ13の故障を検知することができる。
【0052】
検知部102は、第1検知結果が示すエアの圧力値と第2検知結果が示すエアの圧力値との差分に基づいて、第1検知結果の検知を行った装置(エア圧センサ12)又は第2検知結果の検知を行った装置(エア圧センサ14)の少なくとも一方の故障を検知してもよい。このような側面においては、第1検知結果及び第2検知結果に基づいて、第1検知結果の検知を行った装置(エア圧センサ12)又は第2検知結果の検知を行った装置(エア圧センサ14)の少なくとも一方の故障を検知することができる。
【0053】
検知部102は、EDSSが作動していない際に、第1検知結果が圧力の検知を示している場合、EDSS(例えば、EDSS専用ブレーキバルブ11)の故障を検知してもよい。このような側面においては、第1検知結果に基づいてEDSS(例えば、EDSS専用ブレーキバルブ11)の故障を検知することができる。
【0054】
検知部102は、EDSSが作動しておらず、EDSSを搭載する車両が加速している際に、第2検知結果が圧力の検知を示している場合、EDSS(例えば、EDSS専用ブレーキバルブ11)又はブレーキペダル20の操作に基づくブレーキ制御を行うシステム(例えば、サービスブレーキ回路)の少なくとも一方の故障を検知してもよい。このような側面においては、第2検知結果に基づいてEDSS(例えば、EDSS専用ブレーキバルブ11)又はブレーキペダル20の操作に基づくブレーキ制御を行うシステム(例えば、サービスブレーキ回路)の少なくとも一方の故障を検知することができる。
【0055】
EDSS制御ECU10によれば、EDSSのブレーキ故障時に故障を検知できる。EDSS制御ECU10によれば、EDSS専用ブレーキ回路の故障を検知できる。EDSS制御ECU10によれば、ブレーキの引き摺りの故障事象を検知できる。EDSS制御ECU10によれば、ブレーキECUの種類によらず、EDSSの制御が実現でき、かつ故障の検知もできる。
【0056】
ブレーキシステム1においては、例えば、EDSS制御ECU10から直接EDSS専用ブレーキバルブ11を制御するEDSS専用ブレーキ回路と、サービスブレーキ回路とがダブルチェックバルブ13を介して接続され、ダブルチェックバルブ13の上流と下流にエア圧センサが設けられ(上流にエア圧センサ12が設けられ、下流にエア圧センサ14が設けられ)、エア圧センサ12又はエア圧センサ14の少なくとも一方で検知したブレーキのエア圧の変化に基づいてEDSS専用ブレーキ回路の故障を検知してもよい。このように、EDSS専用ブレーキ回路のダブルチェックバルブ13の上流と下流にエア圧センサを設けることで、EDSS専用ブレーキ回路の故障を検知できる。
【0057】
ブレーキシステム1は、ドライバー異常時対応システム(EDSS)における故障診断回路である。ブレーキシステム1によれば、安全性が向上する。
【0058】
本開示のEDSS制御ECU10(故障検知装置)は、以下の構成を有してもよい。
【0059】
[1]
EDSS(Emergency Driving Stop System)によるブレーキの作動に基づいてダブルチェックバルブに流入するエアの圧力に関する第1検知結果と、当該エアとブレーキペダルの操作に基づいて前記ダブルチェックバルブに流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出する前記ダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力に関する第2検知結果とのうち少なくとも一方を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記第1検知結果と前記第2検知結果とのうち少なくとも一方に基づいて故障を検知する検知部と、
を備える故障検知装置。
【0060】
[2]
前記検知部は、前記EDSSが作動している際に、前記第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、前記ダブルチェックバルブの故障を検知する、
[1]に記載の故障検知装置。
【0061】
[3]
前記検知部は、前記EDSSが作動している際に、前記第1検知結果の検知を行った装置に異常が無く、前記第2検知結果が圧力の検知を示していない場合、前記ダブルチェックバルブの故障を検知する、
[1]又は[2]に記載の故障検知装置。
【0062】
[4]
前記検知部は、前記第1検知結果が示すエアの圧力値と前記第2検知結果が示すエアの圧力値との差分に基づいて、前記第1検知結果の検知を行った装置又は前記第2検知結果の検知を行った装置の少なくとも一方の故障を検知する、
[1]~[3]の何れか一項に記載の故障検知装置。
【0063】
[5]
前記検知部は、前記EDSSが作動していない際に、前記第1検知結果が圧力の検知を示している場合、前記EDSSの故障を検知する、
[1]~[4]の何れか一項に記載の故障検知装置。
【0064】
[6]
前記検知部は、前記EDSSが作動しておらず、前記EDSSを搭載する車両が加速している際に、前記第2検知結果が圧力の検知を示している場合、前記EDSS又は前記ブレーキペダルの操作に基づくブレーキ制御を行うシステムの少なくとも一方の故障を検知する、
[1]~[5]の何れか一項に記載の故障検知装置。
【符号の説明】
【0065】
1…ブレーキシステム、10・10a…EDSS制御ECU、11…EDSS専用ブレーキバルブ、12・14…エア圧センサ、13…ダブルチェックバルブ、20…ブレーキペダル、21…ブレーキECU、22…ブレーキアクチュエーター、23…ブレーキ、24…ブレーキブースター、100…格納部、101…取得部、102…検知部。