(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106113
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式温水暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/136 20220101AFI20240731BHJP
F24D 3/18 20060101ALI20240731BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/421 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/486 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/296 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/39 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/38 20220101ALI20240731BHJP
F24H 15/232 20220101ALI20240731BHJP
【FI】
F24H15/136
F24D3/18
F24H15/219
F24H15/421
F24H15/486
F24H15/296
F24H15/269
F24H15/39
F24H15/38
F24H15/232
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010232
(22)【出願日】2023-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 亮
【テーマコード(参考)】
3L070
【Fターム(参考)】
3L070BB14
3L070BC03
3L070DE09
3L070DF06
(57)【要約】
【課題】要求される出湯温度が低下したときに除霜運転及び出湯温度調節を効率的に行うことができるヒートポンプ式温水暖房装置を提供する。
【解決手段】水冷媒熱交換器7が凝縮器として機能するように流路切替手段6を制御し、高温暖房端末3及び低温暖房端末4の少なくとも一方で暖房運転を行うときに、出湯温度h1が暖房運転の負荷に応じて設定された目標出湯温度となるように圧縮機5を駆動する出湯温度制御手段と、室外熱交換器9が凝縮器として機能するように流路切替手段を制御し、圧縮機を駆動して室外熱交換器の除霜運転を行う除霜運転制御手段と、を備えている。そして、除霜運転制御手段は、目標出湯温度の単位時間当たりの低下量Δh1が閾値以上になったときに、出湯温度が目標出湯温度より高い状態で除霜運転を開始する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、流路切替手段、水と冷媒を熱交換する水冷媒熱交換器及び室外熱交換器が配管で接続された冷媒回路と、
前記水冷媒熱交換器、水ポンプ、低温暖房端末、高温暖房端末が配管で接続され、前記水ポンプの動作により前記水冷媒熱交換器から前記低温暖房端末と前記高温暖房端末とに並列に温水を供給し各暖房端末からの復水を前記水冷媒熱交換器に還流させる温水循環回路と、
前記水冷媒熱交換器を通過した温水の出湯温度を検出する出湯温度検出手段と、
前記水冷媒熱交換器が凝縮器として機能するように前記流路切替手段を制御し、前記高温暖房端末及び前記低温暖房端末の少なくとも一方で暖房運転を行うときに、前記出湯温度が前記暖房運転の負荷に応じて設定された目標出湯温度となるように前記圧縮機を駆動する出湯温度制御手段と、
前記室外熱交換器が凝縮器として機能するように前記流路切替手段を制御し、前記圧縮機を駆動して前記室外熱交換器の除霜運転を行う除霜運転制御手段と、を備え、
前記除霜運転制御手段は、前記目標出湯温度の単位時間当たりの低下量が低下量閾値以上になったときに、前記出湯温度が前記目標出湯温度より高い状態で前記除霜運転を開始することを特徴とするヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項2】
前記除霜運転制御手段は、前記高温暖房端末及び前記低温暖房端末の同時運転から前記低温暖房端末の単独運転に切り替わったときに、前記除霜運転を開始することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項3】
前記除霜運転制御手段は、前記高温暖房端末の連続運転が所定時間以上継続したときに、前記除霜運転を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項4】
前記除霜運転制御手段は、前記室外熱交換器の霜が融け切ったことを示す条件を満たしたときに、前記除霜運転を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項5】
前記除霜運転制御手段は、前記出湯温度が前記目標出湯温度となったときに、前記除霜運転を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項6】
前記冷媒回路を循環する前記冷媒がR290であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と冷媒との間で熱交換を行うヒートポンプ式温水暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水と冷媒との間で熱交換を行うヒートポンプ式温水暖房装置として、特許文献1及び特許文献2の装置が知られている。
特許文献1の装置は、加熱手段を有する加熱用熱交換器と、室内温風暖房機等の高温暖房端末(特許文献1では高温負荷端末と称している)と、床暖房装置等の低温暖房装置(特許文献1では低温負荷端末と称している)と、循環ポンプにより加熱用熱交換器で熱源により加熱された温水を高温暖房端末及び低温暖房端末に並列に供給し、各端末から流出した復水を加熱用熱交換器に還流させる循環路と、加熱手段及び循環ポンプを制御する運転制御手段と、を備えている。そして、運転制御手段は、高温暖房端末又は低温暖房装置の単独運転時には各端末の要求温度に応じた出湯温度となるように圧縮機を制御し、高温暖房端末及び低温暖房装置の同時運転時には高温暖房端末に応じた出湯温度となるように圧縮機を制御することで、使用者に寒さなどの不快感を与えないようにしている。
【0003】
また、特許文献2の装置は、圧縮機と、流路切替手段と、水と冷媒との間で熱交換を行う水冷媒熱交換器と、膨張弁と、熱源側熱交換器と、これらを接続して冷媒を循環させる冷媒回路と、室内に設置した暖房装置及び給湯端末と水冷媒熱交換器との間で循環ポンプの動作により温水を循環させる給湯回路と、圧縮機及び流路切替手段を制御する制御手段と、を備えている。そして、制御手段は、熱源側熱交換器に霜が付着したことを示す除霜運転開始条件が成立したときに、流路切替手段を制御して冷媒回路を冷房サイクルに切り替え、圧縮機を制御することで熱源側熱交換器の除霜を行う除霜運転を行うようにしている。
【0004】
ところで、特許文献1の技術に特許文献2の技術を組み合わせ、特許文献1の装置において特許文献2の除霜運転を行えるようにした装置が考えられる。この装置は、高温暖房端末及び低温暖房端末の同時運転或いは単独運転を行うとともに、熱源側熱交換器に霜が付着したときに除霜運転を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-108249号公報
【特許文献2】特開2016-156602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術に特許文献2の技術を組み合わせた装置において、高温暖房端末及び低温暖房端末の同時運転から低温暖房端末の単独運転に切り替える場合、出湯温度が低温暖房端末の要求温度に応じた温度に制御されるため、高温暖房端末運転時に比べて出湯温度が低くなる。つまり、このような運転切替を行った後に、除霜運転を行う場合、水冷媒熱交換器により供給される熱量が小さくなるため、除霜時間が長くなる。また、除霜運転により温水の熱量が奪われて温水循環回路中の温水温度が下がるため、除霜終了後の暖房運転復帰時に出湯温度が目標温度に到達するまでの時間を要する。
【0007】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、要求される出湯温度が低下したときに、除霜運転及び出湯温度の調節を効率的に行えるヒートポンプ式温水暖房装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の一態様は、圧縮機、流路切替手段、水と冷媒を熱交換する水冷媒熱交換器及び室外熱交換器が配管接続された冷媒回路と、水冷媒熱交換器、水ポンプ、低温暖房端末、高温暖房端末が配管で接続され、水ポンプの動作により水冷媒熱交換器から低温暖房端末と高温暖房端末とに並列に温水を供給し各暖房端末からの復水を水冷媒熱交換器に還流させる温水循環回路と、水冷媒熱交換器を通過した温水の出湯温度を検出する出湯温度検出手段と、水冷媒熱交換器が凝縮器として機能するように流路切替手段を制御し、高温暖房端末及び低温暖房端末の少なくとも一方で暖房運転を行うときに、出湯温度が暖房運転の負荷に応じて設定された目標出湯温度となるように前記圧縮機を駆動する出湯温度制御手段と、室外熱交換器が凝縮器として機能するように流路切替手段を制御し、圧縮機を駆動して室外熱交換器の除霜運転を行う除霜運転制御手段と、を備え、除霜運転制御手段は、目標出湯温度の単位時間当たりの低下量が低下量閾値以上になったときに、出湯温度が目標出湯温度より高い状態で前記除霜運転を開始するヒートポンプ式温水暖房装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒートポンプ式温水暖房装置によれば、要求される出湯温度が低下したときに、除霜運転及び出湯温度調節を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るヒートポンプ式温水暖房装置を示す回路図である。
【
図2】本発明に係るヒートポンプ式温水暖房装置が室内暖房及運転び床暖房運転の同時運転から床暖房単独運転に切り替わる場合のフローチャートである。
【
図3】
図2のフローチャートにおける除霜運転開始処理の具体的な動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図2のフローチャートにおける除霜運転終了処理の具体的な動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明に係るヒートポンプ式温水暖房装置のタイムチャートである。
【
図6】従来のヒートポンプ式温水暖房装置のタイムチャートである。
【
図7】本発明に係る除霜運転終了処理の他の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
[ヒートポンプ式温水暖房装置]
図1は、本発明に係る第1実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1を示す回路図である。
ヒートポンプ式温水暖房装置1は、室外機2と、室内暖房装置3と、床暖房装置4と、を備えている。なお、室内暖房装置3が本発明の高温暖房端末に相当し、床暖房装置4が本発明の低温暖房端末に相当している。
【0013】
室外機2は、圧縮機5と、四方弁6と、水と冷媒を熱交換する水冷媒熱交換器7と、膨張弁8と、室外熱交換器9とが順次配管で接続されて冷媒回路10が形成されている。なお、四方弁6が本発明の流路切替手段に相当している。
【0014】
室外機2には、室外熱交換器9へ外気を送風する室外ファン11が設けられている。圧縮機5の吐出側には、冷媒の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ12と、圧縮機5の吐出側の冷媒温度を検出する吐出温度センサ13が設けられている。また、室外熱交換器9が蒸発器として機能する場合において、室外熱交換器9で熱交換された冷媒の温度を測定する冷媒温度センサ14が設けられている。
【0015】
また、室外機2の冷媒回路10を循環する冷媒としては、例えばR290(プロパン)が使用されている。
室内暖房装置3は、室内暖房流量調整弁16と室内熱交換器17を含み、室外機2の水冷媒熱交換器7、水ポンプ15、室内暖房流量調整弁16、室内熱交換器17が順次配管で接続されて第1温水循環回路18が形成されている。なお、室内熱交換器17が本発明の高温暖房端末に相当している。そして、水ポンプ15の駆動により、水冷媒熱交換器7により冷媒と熱交換された温水が室内熱交換器17に供給され、室内空気との間で熱交換を行った後に水冷媒熱交換器7に戻るようになっている。また、室内暖房装置3には、室内熱交換器17で熱交換された空気を室内へ送風する室内ファン19と、室温センサ20が設けられている。水冷媒熱交換器7及び水ポンプ15の間には、温水の温度を検出する出湯温度センサ21が設けられている。なお、出湯温度センサ21が本発明の出湯温度検出手段に相当している。
【0016】
床暖房装置4は、水ポンプ15と室内熱交換器17との間の第1温水循環回路18に配管の一端が接続し、室内熱交換器17と水冷媒熱交換器7との間の第1温水循環回路18に配管の他端が接続し、配管の一端及び他端の間に床暖房流量調整弁25、床暖房パネル26が直列に接続されて第2温水循環回路27が形成されている。なお、床暖房パネル26が本発明の低温暖房端末に相当している。そして、水ポンプ15の駆動により、水冷媒熱交換器7により冷媒と熱交換された温水が床暖房パネル26に供給され、室内空気との間で熱交換を行った後に水冷媒熱交換器7に戻るようになっている。このように、水ポンプ15が駆動すると、水冷媒熱交換器7から室内熱交換器17及び床暖房パネル26に並列に温水が供給され、室内熱交換器17及び床暖房パネル26から水冷媒熱交換器7に温水が戻る。ここで、室内熱交換器17及び床暖房パネル26から水冷媒熱交換器7に温水が戻る動作を本発明では復水と称している。また、第1温水循環回路18及び第2温水循環回路27が本発明の温水循環回路に相当している。
【0017】
本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、使用者が室内暖房・床暖房の操作を行うとともに、室内暖房・床暖房時の設定温度を入力するコントローラ30と、このコントローラ30から入力する操作信号に応じてヒートポンプ式温水暖房装置1の各機器を制御する制御手段32とを備えている。
【0018】
制御手段32は、吐出温度センサ13、冷媒温度センサ14、室温センサ20及び出湯温度センサ21で検出した温度や、吐出圧力センサ12で検出した冷媒圧力が入力される。また、制御手段32は、各センサの検出値に基づいて四方弁6の切り替え制御、水ポンプ15の駆動制御、膨張弁8の開度制御、室内暖房流量調整弁16及び床暖房流量調整弁25の開度制御、圧縮機5の駆動制御など、ヒートポンプ式温水暖房装置1の運転に関わる様々な制御を行う。また、制御手段32は、時間を計測するタイマー部、圧縮機の回転数を決定するためのテーブル、ヒートポンプ式温水暖房装置1の制御プログラムを記憶する記憶部を備えている。
【0019】
そして、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1の制御手段32は、
図1に示すように、出湯温度制御手段33と、除霜運転制御手段34と、を有している。出湯温度制御手段33及び除霜運転制御手段は34は、制御手段32が有する機能としてソフトウェアで実現することができる。
【0020】
本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、使用者がコントローラ30の操作で床暖房単独運転を選択すると床暖房単独運転を開始し、使用者がコントローラ30の操作で室内暖房単独運転を選択すると室内暖房単独運転を開始し、使用者がコントローラ30の操作で室内暖房及び床暖房の同時運転を選択すると室内暖房及び床暖房の同時運転を開始する。ここで、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、室内暖房及び床暖房の同時運転から床暖房単独運転に切り替わったときに、室内暖房運転が後述する所定時間以上継続した場合には、室外熱交換器9の除霜を行う除霜運転が自動的に開始されるようになっている。
【0021】
[床暖房単独運転]
床暖房単独運転は、制御手段32が水ポンプ15を床暖房運転の負荷に応じて設定された所定の回転数で駆動制御し、室内暖房流量調整弁16を閉状態に制御し、床暖房流量調整弁25を開状態に制御する。これにより、第2温水循環回路27の水冷媒熱交換器7と床暖房パネル26との間で温水を循環させる。
【0022】
また、制御手段32は、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁6を切り替える。具体的には、制御手段32は、圧縮機5の吐出側と水冷媒熱交換器7とが接続され、圧縮機5の吸入側と室外熱交換器9とが接続されるように四方弁6を切り替え、
図1の実線で示す方向に冷媒が流れるようにする。これにより、水冷媒熱交換器7が凝縮器として機能し、室外熱交換器9が蒸発器として機能する。また、制御手段32は、使用者が設定した床暖房単独運転の設定温度と室温センサ20が検出した室内温度との差に基づいて目標床暖房温度が設定され、記憶部に予め記憶されているテーブルを参照して目標床暖房温度に対応する床暖房単独運転用の圧縮機5の回転数を決定し、この回転数で圧縮機5を駆動制御する。なお、床暖房単独運転の目標床暖房温度TLは、床暖房運転の負荷に応じて、例えば、30℃~50℃に設定されている。また、目標床暖房温度TLが本発明の目標出湯温度に相当している。
【0023】
[室内暖房単独運転]
室内暖房単独運転は、出湯温度制御手段33が、室内暖房流量調整弁16を開状態に制御し、床暖房流量調整弁25を閉状態に制御する。そして、水ポンプ15を室内暖房運転の負荷に応じて設定された所定の回転数で駆動制御することで、第1温水循環回路18の水冷媒熱交換器7と室内熱交換器17との間で温水を循環させる。
【0024】
また、出湯温度制御手段33は、前述した床暖房単独運転と同様に、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁6を切り替える。そして、使用者が設定した室内暖房単独運転の設定温度と室温センサ20が検出した室内温度との差に基づいて目標室内暖房温度が設定され、記憶部に予め記憶されているテーブルを参照して目標室内暖房温度に対応する室内暖房単独運転用の圧縮機5の回転数を決定し、この回転数で圧縮機5を駆動制御する。なお、室内暖房単独運転の目標室内暖房温度THは、室内暖房運転の負荷に応じて、例えば、60℃~80℃に設定されている。また、目標室内暖房温度THが本発明の目標出湯温度に相当している。
【0025】
[室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転]
室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転は、出湯温度制御手段33が、第1温水循環回路18及び第2温水循環回路27を流れる温水の流量比が、室内暖房運転及び床暖房運転の負荷の比率に近づくように室内暖房流量調整弁16及び床暖房流量調整弁25の開度を制御する。そして、水ポンプ15を室内暖房運転及び床暖房運転の負荷に応じて設定された所定の回転数で駆動制御することで、第1温水循環回路18の水冷媒熱交換器7と室内熱交換器17との間と、第2温水循環回路27の水冷媒熱交換器7と床暖房パネル26との間で温水を循環させる。
【0026】
また、出湯温度制御手段33は、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁6を切り替える。そして、目標室内暖房温度TH及び目標床暖房温度TLのうち目標温度が高い目標室内暖房温度THと、室温センサ20が検出した室内温度との差を求め、記憶部に予め記憶されているテーブルを参照して室内暖房及び床暖房の同時運転用の圧縮機5の回転数を決定し、この回転数で圧縮機5を駆動制御する。
【0027】
[除霜運転]
除霜運転は、除霜運転制御手段34が、圧縮機5や室外ファン11を停止し、冷媒回路10が冷房サイクルとなるように四方弁6を切り替える。具体的には、除霜運転制御手段34は、圧縮機5の吐出側と室外熱交換器9とが接続され、圧縮機5の吸入側と水冷媒熱交換器7とが接続されるように四方弁6を切り替え、
図1の破線で示す方向に冷媒が流れ、室外熱交換器9が凝縮器として機能し、水冷媒熱交換器7が蒸発器として機能するように制御する。また、除霜運転制御手段34は、室内ファン19を停止し、床暖房流量調整弁25を閉状態に制御し、第1温水循環回路18の水冷媒熱交換器7と室内熱交換器17との間で温水が循環するように水ポンプ15を除霜運転開始前の暖房運転時と同様の回転数で駆動制御する。そして、除霜運転制御手段34は、記憶部に予め記憶されているテーブルを参照して除霜運転用の圧縮機5の回転数を決定し、この回転数で圧縮機5を駆動制御することで、除霜運転を行う。
【0028】
ここで、除霜運転制御手段34は、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1が予め設定した低下量閾値以上となったときに、除霜運転を開始するようにしている。低下量閾値は、短時間で出湯温度を目標出湯温度に調節できることを示す目標出湯温度の低下量であり、制御手段32は、出湯温度を目標出湯温度に調整するのに時間がかかるときに除霜運転を開始している。つまり、低下量閾値以上の場合には、出湯温度を目標出湯温度まで下げるために放出される余剰熱を除霜運転に利用するようにしている。また、除霜運転制御手段34は、冷媒温度センサ14で検出した冷媒温度t2の単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2が予め設定した上昇量閾値以上となったときに、除霜運転を終了するようにしている。上昇量閾値は、室外熱交換器9に発生した霜が融け切ったことを示す冷媒温度の上昇変化量であり、制御手段32は、霜が融け切ったことを示す条件を満たしたときに除霜運転を終了するようにしている。
【0029】
[ヒートポンプ式温水暖房装置の運転方法]
次に、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1において、室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を行っているときの運転方法について、
図2から
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
なお、これ以降の説明では、使用者が室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転から床暖房単独運転を選択した場合を例示して詳述するが、出湯温度制御手段33は、使用者の設定変更により生じるあらゆる出湯温度調節について同様の制御を行うものとする。
【0031】
先ず、
図2のステップST1において、室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を行っている。
次いでステップST2では、室内暖房運転を停止せずに連続して行う連続運転が時間H(例えば0.5時間)以上であるか否かを判定している。この判定で、室内暖房運転の連続運転が時間Hを下回る場合には、ステップST1に移行し、室内暖房運転の連続運転が時間H以上である場合には、ステップST3に移行する。
【0032】
ステップST3では、
図3で示す目標出湯温度の変化量算出処理を行う。この目標出湯温度の変化量算出処理は、
図3のステップST4において、コントローラ30に入力された目標出湯温度h1を読み込む。次いで、ステップST5では目標出湯温度h1を読み込んでから目標出湯温度の変化が十分に反映される所定の計測時間n1(例えば、10秒)が経過したか否かを判定する。そして、計測時間n1が経過している場合にはステップST6に移行し、目標出湯温度h1を読み込む。次いで、ステップST7では、計測開始時の目標出湯温度h1
0から現在の時間の目標出湯温度h1
nまでの目標出湯温度低下量を算出し、この目標出湯温度低下量を計測時間n1で除算することで、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1を算出する。例えば、使用者が室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転から床暖房単独運転を選択した場合、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1は室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を継続する場合と比べて大きくなる。
【0033】
図3のステップST7の後に移行する
図2のステップST8では、先ず、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1が低下量閾値以上となっているか否かを判定し、単位時間当たりの出湯温度低下量Δh1が低下量閾値を下回る場合には短時間で出湯温度の調節が行えると判断してステップST1に移行し、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1が低下量閾値以上である場合には、出湯温度の調節に時間がかかると判断して
図2のステップST9に移行する。
【0034】
ステップST9では、室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を停止する。次いでステップST10では、冷媒回路10が冷房サイクルとなるように四方弁6の切り替え制御を行う。
【0035】
次いでステップST11では、記憶部に予め記憶されているテーブルを参照して冷房サイクル時の圧縮機5の回転数を決定し、この回転数で圧縮機5を駆動制御する。
次いでステップST12では、
図4で示す除霜運転終了処理を行う。
図4の除霜運転終了処理では、先ずステップST13において冷媒温度センサ14から冷媒温度h2が入力される。次いでステップST14では、冷媒温度h2が入力されてから冷媒温度の変化が十分に反映される所定の計測時間n2(例えば、10秒)が経過したか否かを判定する。そして、計測時間n2が経過している場合にはステップST15に移行する。
【0036】
ステップST15では、計測開始時の冷媒温度h2
0から現在の時間n2の冷媒温度h2
nまでの冷媒温度上昇量を算出し、この冷媒温度上昇量を計測時間n2で除算することで、単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2を算出する。次いでステップST16では、単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2が上昇量閾値以上となっているか否かを判定し、単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2が上昇量閾値を下回る場合には室外熱交換器9に発生した霜が融け残っていると判断してステップST13に移行し、単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2が上昇量閾値以上である場合には、室外熱交換器9に発生した霜が融け切ったと判断して
図2のステップST17に移行する。
【0037】
そして、
図2のステップST17では、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁6の切り替え制御を行う。次いで、ステップST18では制御手段32が床暖房単独運転を開始する。
【0038】
[ヒートポンプ式温水暖房装置の除霜運転及び出湯温度の調節について]
次に、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1の除霜運転及び出湯温度を目標出湯温度に調節する出湯温度の調節について、
図5で示す本実施形態のタイムチャートと、
図6で示す従来装置の動作のタイムチャートを比較して説明する。
【0039】
なお、
図5の本実施形態のタイムチャートにおいて「均圧」は冷媒回路10の均圧処理である。均圧処理とは、冷媒回路10が暖房サイクルから冷房サイクル、或いは冷房サイクルから暖房サイクルに切り替わる際に、冷媒回路10の高圧側(圧縮機5の冷媒吐出側)の冷媒圧力と低圧側(圧縮機5の冷媒吸入側)の冷媒圧力とが等しくなるようにする処理である、そのため、制御手段32は、高圧側の冷媒圧力と低圧側の冷媒圧力が等しくなる所定の均圧時間だけ、圧縮機5を停止し続ける。また、
図6の従来装置のタイムチャートの「均圧」も同様の処理とする。また、
図5及び
図6において、室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を「同時運転」、除霜運転を「除霜」、床暖房単独運転を「床暖房」と表示する。
【0040】
図5で示す本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、室内暖房運転の連続運転時間は時間H(例えば0.5時間)を越えているものとする。また、使用者が室内暖房及運転び床暖房運転の同時運転から床暖房単独運転を選択したものとする。
【0041】
出湯温度制御手段33は、時刻T1において単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1と低下量閾値との比較を実行する。このとき、使用者が室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転から床暖房単独運転を選択したことで、目標出湯温度低下量Δh1は低下量閾値以上となる。除霜運転制御手段34は、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1が低下量閾値以上となったことを判断すると(ステップST8)、室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を停止し(ステップST9)、時刻T1から時刻T2まで均圧処理を行った後に除霜運転を開始する(ステップST10,11)。除霜運転を開始すると、時刻T2から時刻T3のように水冷媒熱交換器7の温水が冷媒と熱交換を行うことで出湯温度が低下していく。
【0042】
そして、除霜運転制御手段34は、時刻T3において単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2が上昇量閾値以上となり(ステップST16)、室外熱交換器9に発生した霜が融け切ったと判断することで除霜運転を終了する。
【0043】
また、出湯温度制御手段33は、時刻T3から時刻T4まで均圧処理を行った後に冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁6を切り替え(ステップST17)、床暖房単独運転用の回転数で圧縮機5の駆動制御を行っていき、時刻T5で出湯温度が目標床暖房温度TLとなったときに、床暖房単独運転を開始する(ステップST18)。
【0044】
一方、
図6の従来装置は、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1と略同一の装置構成であり、本実施形態の室外熱交換器9及び従来装置の室外熱交換器には、
図5で示す本実施形態と同程度の着霜量が発生しているものとする。そして、従来装置は、室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転から床暖房単独運転に切り替える際には、出湯温度を目標床暖房温度TLまで下げてから除霜運転を行う。
【0045】
すなわち、従来装置は、
図6の時刻t1で室内暖房運転及び床暖房運転の同時運転を停止した後、出湯温度を目標床暖房温度TLまで下げる第1の温度調整を時刻t2まで行っている。そして、時刻t2から時刻t4まで床暖房単独運転、均圧処理を行った後、時刻t4から時刻t5まで除霜運転を行う。この除霜運転では、目標床暖房温度TLを大幅に下回る値まで出湯温度が下がっていく。そして、時刻t5から時刻t6まで均圧処理を行った後、時刻t6から時刻t7まで第2の温度調整で出湯温度を目標床暖房温度TLまで上昇させていき、出湯温度が目標床暖房温度TLとなった時点で床暖房単独運転を開始する。
【0046】
図6で示した従来装置は、時刻t4から時刻t5までの除霜運転において出湯温度が目標床暖房温度TLに設定されており、水冷媒熱交換器の温水から冷媒に熱交換される熱量が小さいので、除霜時間(時刻t5から時刻t4までの時間)が長くなる。
【0047】
これに対して、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、時刻T2から時刻T3までの除霜運転では水冷媒熱交換器7の温水の出湯温度が目標床暖房温度TLより高い温度に設定されており、出湯温度を下げるために放出される水冷媒熱交換器7の温水の余剰熱を冷媒に供給することができるので、除霜時間(時刻T3から時刻T2までの時間)を短くすることができる。
【0048】
また、
図6で示した従来のヒートポンプ式温水暖房装置は、除霜運転で出湯温度が目標床暖房温度TLを下回る値まで下がってしまい、除霜運転終了後に床暖房単独運転を行う場合には、出湯温度を目標床暖房温度TLまで上昇させる時間が長くなる。これに対して、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、除霜運転で出湯温度が目標床暖房温度TL以下には下がらないため、出湯温度を目標床暖房温度TLまで立ち上げる時間が不要となる。
【0049】
[本実施形態の効果]
したがって、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、除霜運転では出湯温度が目標床暖房温度TLより高い温度に設定されており、水冷媒熱交換器7の温水から冷媒に熱交換される熱量を大きくして除霜時間を短くすることができるので、効率良く除霜運転を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、除霜運転で出湯温度が目標床暖房温度TL以下には下がらず、従来装置のような出湯温度を目標床暖房温度TLまで上昇させる時間が不要となるので、除霜運転終了後の床暖房単独運転を行う際に出湯温度が目標床暖房温度TLに達するまでの時間を短くし、効率良く出湯温度の調節を行うことができる。
【0051】
また、単位時間当たりの目標出湯温度低下量Δh1が低下量閾値以上のときに除霜運転を実施することで、出湯温度が目標床暖房温度TLに近い状態を維持することができるため、室内の快適性を維持することができる。
【0052】
また、室外熱交換器9に発生した霜が融け切った状態を、単位時間当たりの冷媒温度上昇量Δh2と上昇量閾値との比較により正確に判断することができるので、除霜運転時間の終了を的確に行うことができる。
【0053】
また、室内暖房運転の連続運転が時間Hを越えていない場合には、除霜運転を行わないようにしているので、省エネ性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置1は、冷媒としてR290(プロパン)を使用した場合、R290(プロパン)は、R410AやR32などの冷媒と比較して臨界温度が高いので、より高い凝縮温度での暖房運転が可能となる。したがって室内暖房単独運転の目標室内暖房温度THを高く設定することができる。一方で、目標床暖房温度TLは火傷防止など安全性を確保するために高く設定できないので、目標室内暖房温度THと目標床暖房温度TLの温度差が大きくなる。目標室内暖房温度THと目標床暖房温度TLの温度差が大きいほど、出湯温度を下げるために放出される余剰熱が大きくなる。そして、目標室内暖房温度THが高く、出湯温度の調節により発生する余剰熱が大きいほど、水冷媒熱交換器7の温水から冷媒に熱交換される熱量が大きくなるので、除霜時間が短くなる。したがって、使用する冷媒の臨界温度が高いほど、除霜運転及び出湯温度調節を効率良く行うことができる。
【0055】
[除霜運転終了処理の他の本実施形態]
次に、
図7は、
図2のステップST12で示した除霜運転制御手段34が行う除霜運転終了処理の他の実施形態を示すものである。
図7の除霜運転終了処理は、先ずステップST19において出湯温度センサ21から出湯温度h3が入力される。次いでステップST20では、出湯温度h3が目標床暖房温度TL以下であるか否かを判定する。そして、出湯温度h3が目標床暖房温度TLを上回っている場合にはステップST19に移行し、出湯温度h3が目標床暖房温度TL以下である場合には、
図2のステップST17に移行する。そして、
図2のステップST17では、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁6の切り替え制御を行う。
【0056】
図7の除霜運転終了処理によると、出湯温度調節の終了を的確に行うことができ、除霜運転及び出湯温度調節を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ヒートポンプ式温水暖房装置
2 室外機
3 室内暖房装置
4 床暖房装置
5 圧縮機
6 四方弁
7 水冷媒熱交換器
8 膨張弁
9 室外熱交換器
10 冷媒回路
11 室外ファン
12 吐出圧力センサ
13 吐出温度センサ
14 冷媒温度センサ
15 水ポンプ
16 室内暖房流量調整弁
17 室内熱交換器
18 第1温水循環回路
19 室内ファン
20 室温センサ
21 出湯温度センサ
25 床暖房流量調整弁
26 床暖房パネル
27 第2温水循環回路
30 コントローラ
32 制御手段
33 出湯温度制御手段
34 除霜運転制御手段
TL 目標床暖房温度
TH 目標室内暖房温度