(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106127
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】通気性電鋳殻の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/10 20060101AFI20240731BHJP
B26F 1/16 20060101ALI20240731BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20240731BHJP
C25D 1/08 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B29C33/10
B26F1/16
B29C33/38
C25D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010254
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克也
【テーマコード(参考)】
3C060
4F202
【Fターム(参考)】
3C060AA03
3C060AA04
3C060AA09
3C060AA15
3C060AA16
3C060BA05
3C060BB20
3C060BE08
3C060BF02
4F202AJ02
4F202AJ10
4F202AR12
4F202CA09
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD02
4F202CD12
4F202CP01
4F202CP10
(57)【要約】
【課題】通気性電鋳殻の製造過程において起点孔又は通気孔真直部をドリル加工する場合に、ドリルを加工面に面直から多少傾けて当てても作業を続行できるようにして、作業効率を高める。
【解決手段】母型1の導電性表面に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリル4を使用して複数の起点孔3をドリル加工するステップと、前記母型1の導電性表面に電鋳を行うことにより電鋳殻を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記起点孔3の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより通気孔を形成するステップとを含む通気性電鋳殻の製造方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母型(1)の導電性表面に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリル(4)を使用して複数の起点孔(3)をドリル加工するステップと、
前記母型(1)の導電性表面に電鋳を行うことにより電鋳殻(6)を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記起点孔(3)の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより通気孔(7)を形成するステップと
を含む通気性電鋳殻の製造方法。
【請求項2】
母型(1)の導電性表面に電鋳を行うことにより孔の無い電鋳殻表面層(11)を形成するステップと、
前記母型(1)の電鋳殻表面層(11)に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリル(4)を使用して複数の通気孔真直部(13)をドリル加工するステップと、
前記母型(1)の電鋳殻表面層(11)に電鋳を行うことにより電鋳殻裏面層(12)を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記通気孔真直部(13)の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより通気孔拡径部(14)を形成するステップと
を含む通気性電鋳殻の製造方法。
【請求項3】
前記ルーマドリル(4)が高速度工具鋼製である請求項1又は2記載の通気性電鋳殻の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性の成形用金型に使用できる通気性電鋳殻の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、特許文献1において、母型の導電性表面に直径30~1000μmの起点孔をドリル加工、針による突刺し加工等により形成するステップと、この母型の導電性表面に電鋳を行うことにより電鋳殻を形成すると同時に、該電鋳の初期に起点孔の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに非電着部を成長させることにより通気孔を形成する電鋳ステップとを含む、通気性電鋳殻の製造方法を開示した。
【0003】
同製造方法によれば、通気抵抗が小さく目詰りもしにくい通気孔を、電鋳と同時に容易かつ安価に形成することができるとともに、電鋳殻の孔要求箇所に要求数及び要求径の通気孔を、それらの要求通りに形成することができるようになった。この通気性電鋳殻を用いて製作された本願出願人の成形用金型(商標「ポーラス電鋳」)は、国内外で広く採用されている。
【0004】
また、本願出願人は、特許文献2において、母型の導電性表面に電鋳を行うことにより孔の無い電鋳殻表面層を形成する第一電鋳ステップと、電鋳殻表面層に内径が孔長方向で略一定である微小真直孔(通気孔真直部)をレーザー加工、ドリル加工等により形成するステップと、電鋳殻表面層の裏面に電鋳を行うことにより電鋳殻裏面層を形成すると同時に、該電鋳の初期に通気孔真直部の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより通気孔拡径部を形成する第二電鋳ステップとを含む、通気性電鋳殻の製造方法を開示した。
【0005】
同製造方法によれば、特許文献1と同様の効果に加え、通気孔が真直部と拡径部とからなり、多孔質電鋳殻の表面が型磨きや長時間使用によって摩耗しても、通気孔のうちの真直部の範囲内での摩耗なので、通気孔の開口径が大きくならないよう維持できるようになった。この通気性電鋳殻を用いて製作された本願出願人の成形用金型(商標「スーパーポーラス電鋳」)も、国内外で広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-156486号公報
【特許文献2】特開平9-249987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で起点孔をドリル加工する場合や、特許文献2で通気孔真直部をドリル加工する場合には、刃径とシャンク径とが等しい又はほぼ等しい一般的なドリルを用いて行っているが、ドリルを加工面に面直に当てないと折れて作業が中断し、ドリルを加工面に面直に当てるには母型がなす三次元形状に応じてドリル姿勢を注意深く調整しながらドリル加工しければならないため、いずれにしても作業効率が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、通気性電鋳殻の製造過程において起点孔又は通気孔真直部をドリル加工する場合に、ドリルを加工面に面直から多少傾けて当てても作業を続行できるようにして、作業効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]母型の導電性表面に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリルを使用して複数の起点孔(通気孔の起点となる微小孔)をドリル加工(ドリルによる孔あけ加工)するステップと、
前記母型の導電性表面に電鋳を行うことにより電鋳殻を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記起点孔の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより通気孔を形成するステップと
を含む通気性電鋳殻の製造方法。
【0010】
[2]母型の導電性表面に電鋳を行うことにより孔の無い電鋳殻表面層を形成するステップと、
前記母型の電鋳殻表面層に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリルを使用して複数の通気孔真直部をドリル加工するステップと、
前記母型の電鋳殻表面層に電鋳を行うことにより電鋳殻裏面層を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記通気孔真直部の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより通気孔拡径部を形成するステップと
を含む通気性電鋳殻の製造方法。
【0011】
[3]前記ルーマドリルが高速度工具鋼製である[1]又は[2]記載の通気性電鋳殻の製造方法。
【0012】
<作用>
ルーマドリルを加工面に面直に当てて起点孔又は通気孔真直部をドリル加工するのを基本とするが、ルーマドリルを加工面に面直から多少傾けて当てても、次の作用から作業を続行することができる。
(ア)使用するルーマドリルは、刃径が0.08~0.30mmと細くても、シャンク径が1mm以上であるため、チャックに正しく取り付けやすく、刃先がぶれない。
(イ)使用するルーマドリルは、刃径が0.08~0.30mmと細くても、刃長が刃径の5~10倍と(一般的なドリルに対し)比較的短いため、面直から多少傾けても折れにくい。
(ウ)使用するルーマドリルが高速度工具鋼製である場合は、(超硬合金製に対し)靭性が高いためさらに折れにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の通気性電鋳殻の製造方法によれば、通気性電鋳殻の製造過程において起点孔又は通気孔真直部をドリル加工する場合に、ドリルを加工面に面直から多少傾けて当てても作業を続行できるようにして、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は実施例1における母型の断面図である。
【
図2】
図2は実施例1における起点孔のドリル加工を示す断面図である。
【
図3】
図3は実施例1における電鋳を示す断面図である。
【
図4】
図4は実施例1で製造した通気性電鋳殻の断面図である。
【
図5】
図5は実施例2における電鋳を示す断面図である。
【
図6】
図6は実施例2における通気孔真直部のドリル加工を示す断面図である。
【
図7】
図7は実施例2における次の電鋳を示す断面図である。
【
図8】
図8は実施例2で製造した通気性電鋳殻の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1>ルーマドリル
ルーマドリルは刃径よりもシャンク径が大きいドリル(段付きドリル)である。本発明ではこれをさらに特定し、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリルを使用する。刃径が0.08mm未満であると通気孔の通気抵抗が大きくなり、刃径が0.30mmを超えると通気孔の跡が成形品に付きやすくなる。刃長が刃径の5倍未満であると刃を視認しにくくなり、刃長が刃径の10倍を超えると刃が折れやすくなる。シャンク径が1mm未満であるとチャックで正しくつかみにくくなる。
【0016】
ルーマドリルの材料は、特に限定されず、高速度工具鋼、超硬合金、工具鋼、サーメット、セラミック、CBN、ダイヤモンド等を例示できる。高速度工具鋼と超硬合金との比較では、靭性が高く折れにくい点で高速度工具鋼の方が好ましい。
【0017】
<2>母型
母型は、どのような方法で製作したものでもよい。母型の材料は、特に限定されず、合成樹脂、固形ワックス、石膏、木材、セラミックス、布地、糸等の非導電材料や、金属、黒鉛等の導電材料を例示できる。母型が非導電材料よりなる場合、導電性表面は母型の表面に形成した導電被膜により実現され、該導電被膜としては、銀、銅、アルミニウム等の導電粉ペーストの塗布、銀鏡反応、無電解めっき等の方法で形成されたものを例示できる。母型が導電材料よりなる場合、導電性表面は母型の製作によりそのまま実現される。
【0018】
<3>起点孔
母型にドリル加工する起点孔の深さは、特に限定されず、特許文献1で挙げた0.5mm、1mm程度でもよいが、より浅い0.02~0.2mm、さらには0.02~0.05mmでも起点孔として十分に機能し、加工効率の点でむしろ好ましい。
【0019】
<4>通気性電鋳殻
通気性電鋳殻の厚さは、特に限定されず、2~6mmを例示でき、2.5~5mmが好ましい。
通気性電鋳殻の材料は、特に限定されず、ニッケル、ニッケル-コバルト合金等を例示できる。
【0020】
通気性電鋳殻が電鋳殻表面層と電鋳殻裏面層からなる場合、電鋳殻表面層の厚さは、特に限定されないが、0.1~1.0mmが好ましく(通気孔真直部のドリル加工が容易になる点で、より好ましくは0.1~0.5mm)、電鋳殻裏面層の厚さは、特に限定されないが、2.0~5.0mmが好ましい。
【0021】
母型の表面に凹凸模様を形成しておくことにより、該表面に真空吸引された表皮の表面に該凹凸模様を転写した凹凸模様を賦形することができる。凹凸模様としては、特に限定されないが、革シボ模様、縫目模様、幾何学的単位模様の複数繰り返し配列等を例示できる。
【0022】
<5>通気孔真直部
電鋳殻表面層にドリル加工する通気孔真直部の深さは、電鋳殻表面層を貫通すればよい。
【0023】
<6>用途
本発明の通気性電鋳殻は、通気性の成形用金型に好適に使用でき、その他にも通気性が求められる各種用途に使用することもできる。
成形用金型としては、特に限定されないが、真空成形、圧空成形、インサート射出成形、ブロー成形、スタンピング成形、プレス成形等の金型を例示できる。
成形用金型として使用する場合は、通気性電鋳殻の背面側をバックアップ型で補強して使用することができる。
【実施例0024】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値等は例示であって、適宜変更できる。
【0025】
[実施例1]
図1~
図4に示す実施例1は、特許文献1における起点孔のドリル加工ステップを改良したものであり、次のようにして通気性電鋳殻を製造する。
【0026】
(1)
図1に示すように、所望の樹脂成形品と同一形状の母型1を作成し、その表面に導電膜2を形成する。
母型1は、例えば特許文献1,2に記載の方法により作成することができる。母型1の材料は、例えばエポキシ樹脂である。
導電膜2は、例えば特許文献1,2に記載の方法により形成することができる。導電膜2は、例えば銀鏡膜である。導電膜2の膜厚は、例えば5~30μmである。
【0027】
(2)
図2に示すように、母型1の導電膜2に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリル4を使用して複数の起点孔3をドリル加工する。ルーマドリル4には、例えば株式会社精工ドリル製の商品名「ルーマドリル ハイス」を使用することができる。起点孔3の深さは、例えば0.02~0.2mmであり、導電膜2をすぎて母型1のエポキシ樹脂まで掘る起点孔とする。
【0028】
図2(a)に示すように、ルーマドリル4はそのシャンクを電動穿孔工具のチャック5に取り付ける。電動穿孔工具は、ハンディ式(ハンマドリル、ガンドリル等)でもよいし、産業用ロボット等に取り付けた自動式又は半自動式でもよい。
【0029】
ルーマドリル4は基本的には加工面に面直に当てる。しかし、本実施例によれば、
図2(b)に示すように、ルーマドリル4を加工面に面直から多少傾けて当てても、次の作用から作業を続行することができ、作業効率が高い。
(ア)使用するルーマドリル4は、刃径が0.08~0.30mmと細くても、シャンク径が1mm以上であるため、チャック5に正しく取り付けやすく、刃先がぶれない。
(イ)使用するルーマドリル4は、刃径が0.08~0.30mmと細くても、刃長が刃径の5~10倍と(一般的なドリルに対し)比較的短いため、面直から多少傾けても折れにくい。実験では、
図2(b)に示すように面直から30°までの範囲で傾けても折れることなくドリル加工可能であった。
(ウ)使用したルーマドリル4は、高速度工具鋼製で靭性が高いため折れにくい。
【0030】
このようにルーマドリル4を面直から0°超~30°傾けることにより、起点孔3も同様に傾いて加工されるが、この起点孔3の傾きは次に述べる非電着部の発生に影響しない。
【0031】
(3)
図3に示すように、母型1の導電膜2に電鋳を行うことにより電鋳殻6を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記起点孔3の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより拡径した通気孔7を形成する。こうして、電鋳殻6に複数の通気孔7が貫通してなる通気性電鋳殻8が製造される。通気性電鋳殻8の厚さは、例えば2.5~5mmである。
この電鋳は、例えば特許文献1に記載の(界面活性剤を実質的に加えない)電鋳液、ニッケル電極及び電源装置を使用し、同記載の電鋳条件で行うことができる。
【0032】
(4)
図4(a)に示すように、母型1から剥離した通気性電鋳殻8に、所定のバックアップ型9を取り付け、バックアップ型9に型外部の真空吸引装置(図示略)を接続するなどすれば、成形用金型が完成する。バックアップ型9の構造、特に限定されず、例えば特許文献1又は特許文献2に記載のものを採用できる。
図4(b)に示すように、通気孔7の直径は、通気性電鋳殻8の表面で0.08~0.30mmであり、裏面で2~6mmに拡径している。また、図示例の通気性電鋳殻8の表面には、母型1に予め設けられたシボ模様等の凹凸模様(
図1等で図示略)が転写されてなる凹凸模様が賦形されている。
【0033】
[実施例2]
次に、
図5~
図8(
図1を援用)に示す実施例2は、特許文献2における通気孔真直部のドリル加工ステップを改良したものであり、次のようにして通気性電鋳殻を製造する。
【0034】
(1)実施例1と同様に、
図1に示すように、所望の樹脂成形品と同一形状の母型1を作成し、その表面に導電膜2を形成する。
【0035】
(2)
図5に示すように、母型1上の導電膜2に電鋳を行うことにより孔の無い電鋳殻表面層11を形成する。電鋳殻表面層11の厚さは、例えば0.2mmである。
この電鋳は、例えば特許文献2(第一電鋳工程)に記載の(界面活性剤を実質的に加えた)電鋳液、ニッケル電極及び電源装置を使用し、同記載の電鋳条件で行うことができる。
【0036】
(3)
図6に示すように、母型1上の電鋳殻表面層11に、刃径が0.08~0.30mm、刃長が刃径の5~10倍、シャンク径が1mm以上であるルーマドリル4を使用して複数の通気孔真直部13をドリル加工する。ルーマドリル4には、例えば株式会社精工ドリル製の商品名「ルーマドリル ハイス」を使用することができる。通気孔真直部13は、電鋳殻表面層11及び導電膜2を貫通して母型1のエポキシ樹脂にまで至るように加工する。
【0037】
図6(a)に示すように、そのシャンクを電動穿孔工具のチャック5に取り付ける。電動穿孔工具は、ハンディ式でもよいし、産業用ロボット等に取り付けた自動式又は半自動式でもよい。
【0038】
ルーマドリル4は基本的には加工面に面直に当てる。しかし、本実施例によれば、
図6(b)に示すように、ルーマドリル4を加工面に面直から0°超~30°傾けて当てても、実施例1で述べた(ア)~(ウ)と同様の作用から作業を続行することができ、作業効率が高い。
【0039】
このようにルーマドリル4を面直から0°超~30°傾けることにより、通気孔真直部13も同様に傾いて加工されるが、この通気孔真直部13の傾きは次に述べる非電着部の発生に影響しない。
【0040】
(4)
図7に示すように、母型1の電鋳殻表面層11に電鋳を行うことにより電鋳殻裏面層12を形成すると同時に、該電鋳の初期に前記通気孔真直部13の開口に非電着部を発生させ、該電鋳の進行とともに該非電着部を成長させることにより拡径した通気孔拡径部14を形成する。こうして、電鋳殻表面層11及び電鋳殻裏面層12に通気孔真直部13及び通気孔拡径部14からなる複数の通気孔が貫通してなる通気性電鋳殻15が製造される。通気性電鋳殻15の厚さは、例えば2.5~5mmである。
この電鋳は、例えば特許文献2(第二電鋳工程)に記載の(界面活性剤を実質的に加えない)電鋳液、ニッケル電極及び電源装置を使用し、同記載の電鋳条件で行うことができる。
【0041】
(5)
図8(a)に示すように、母型1から剥離した通気性電鋳殻15に、所定のバックアップ型9を取り付け、バックアップ型9に型外部の真空吸引装置(図示略)を接続するなどすれば、成形用金型が完成する。バックアップ型9の構造、特に限定されず、例えば特許文献1又は特許文献2に記載のものを採用できる。
図8(b)に示すように、通気孔真直部13の直径は0.08~0.30mmであり、通気孔拡径部14の直径は裏面で2~6mmに拡径している。また、図示例の通気性電鋳殻15の表面には、母型1に予め設けられたシボ模様等の凹凸模様が転写されてなる凹凸模様が賦形されている。
【0042】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。