IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海興業株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ベルトモール 図1
  • 特開-ベルトモール 図2
  • 特開-ベルトモール 図3
  • 特開-ベルトモール 図4
  • 特開-ベルトモール 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106131
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ベルトモール
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/75 20160101AFI20240731BHJP
   B60J 10/16 20160101ALI20240731BHJP
【FI】
B60J10/75
B60J10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010258
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】小川 篤志
(72)【発明者】
【氏名】河合 慎也
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA03
3D201CA20
3D201CA31
3D201DA08
3D201DA31
3D201EA02
3D201EA03
(57)【要約】
【課題】モール本体とパネルタッチリップ部との間に隙間が生じることを抑制可能なベルトモールを提供する。
【解決手段】モール本体10とパネルシール部材20とを備える。パネルシール部材20は、車外側側壁部11の内面に固定される縦壁部21と、車外側側壁部11の先端面に対向する底壁部22と、コーナー部23と、ドアパネル5に弾接するパネルタッチリップ部24とを有し、底壁部22の上面に遮蔽用凸部25と位置決め用凸部26が形成されている。パネルタッチリップ部24は、先端部がコーナー部23側に向くように反り返っている。パネルシール部材20は、縦壁部21から位置決め用凸部26が形成されている部位までが硬質材で形成されており、パネルタッチリップ部24から遮蔽用凸部25が形成されている部位までが軟質材で形成されている。
【選択図】図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、
モール本体と、前記ドアパネルの上縁に取り付けた際に前記ドアパネルと前記モール本体との隙間を遮蔽シールするシール部材とを備え、
前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部と、該両側壁部の上縁同士を連結する頂壁部とを一体に有し、
前記シール部材は、前記車外側側壁部の内面に固定される縦壁部と、前記車外側側壁部の先端面に対向する底壁部と、前記縦壁部と前記底壁部とを連結するコーナー部と、前記ドアパネルに弾接するリップ部とを有し、
前記底壁部における前記車外側側壁部の先端面との対向面には、位置決め用凸部と、前記車外側側壁部の先端面に当接する遮蔽用凸部とが突出形成されており、
前記遮蔽用凸部は前記底壁部の先端縁部に設けられ、前記位置決め用凸部は前記遮蔽用凸部よりも前記コーナー部寄りの位置に設けられており、
前記リップ部は、前記底壁部の先端縁部から下方に向けて設けられ、先端部が前記コーナー部側に向くように中間部で反り返っており、
前記シール部材は、少なくとも前記縦壁部及び前記コーナー部が剛性を有する硬質材で形成され、少なくとも前記リップ部が弾性変形可能な軟質材で形成されている、ベルトモール。
【請求項2】
前記底壁部のうち、前記コーナー部から前記位置決め用凸部が形成されている部位までが前記硬質材で形成されている、請求項1に記載のベルトモール。
【請求項3】
前記底壁部のうち、前記リップ部から前記遮蔽用凸部が形成されている部位までが前記軟質材で形成されている、請求項2に記載のベルトモール。
【請求項4】
前記硬質材で形成された部位と前記軟質材で形成された部位との境界線が、前記底壁部の上面から下面にかけて前記コーナー部側へ傾斜している、請求項3に記載のベルトモール。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、中でも、ドアパネルに弾接するリップ部を含むシール部材をモール本体に固定して成るベルトモールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用ドアでは、窓開口部下縁のドアベルトラインとなるドアパネルの上縁に、窓板(ウインドガラス)に弾接(弾性変形した状態で圧接)すると共にドアパネルとの隙間を遮蔽シールする長尺なベルトモールが取り付けられている。
【0003】
従来のベルトモールは、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部と、該両側壁部の上縁同士を連結する頂壁部とが一体形成されたモール本体部を有し、車外側側壁部の先端縁にはリップ部が形成されている。ベルトモールは、モール本体部内へドアパネルの上縁を挿篏するように取り付けられる。このとき、リップ部がドアパネルに弾接することで、モール本体部とドアパネルとの隙間が遮蔽シールされる。そのため、モール本体部は一定の剛性を有する硬質材で形成される一方、リップ部は弾性変形可能な軟質材で形成される。
【0004】
なお、従来からの一般的な車両用ドアでは、ドアベルトラインは基本的に直線状である。そのため、従来からの一般的なベルトモールも直線状で、押出成形により製造されて長手方向両端部に亘って一様な形状であり、モール本体部とリップ部とは共押出により同時成形されることが多い。
【0005】
また、リップ部は、車外側側壁部の先端縁から下方に向けて突出し、先端部が車内側に向くように中間部で反り返ったような形状となっていることが多い。この場合、ベルトモールをドアパネルの上縁に取り付けてリップ部がドアパネルに弾接すると、リップ部の根本部分がモール本体部の車外側側壁部から離間する方向へ引っ張り力が作用することで、リップ部と車外側側壁部との間にヒビが入るなどしてリップ部と車外側側壁部との間に隙間が生じてしまうおそれがあった。
【0006】
このような問題を解決する技術として、下記特許文献1が開示されている。特許文献1では、従来の一般的なベルトモールと同様に、モール本体部を硬質材とし、リップ部を軟質材として押出成形している。そのうえで、リップ部を車外側側壁と接続する基端から第1屈曲部と第2屈曲部の二箇所の屈曲部を有する断面略Z字状ないし断面略階段状としている。これによれば、ベルトモールをドアパネルの上縁に取り付けると、リップ部は第2屈曲部が車外側側壁へ押し付けられるように撓むため、上記従来のベルトモールにおける問題は生じないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-322957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1におけるリップ部は形状が特殊で複雑なので、製造誤差許容性が低下したり歩留まりが悪化するおそれがある。
【0009】
ところで、近年の車両用ドアには、意匠性向上等を目的としてドアベルトラインが直線状でない、すなわちドアベルトラインの一部が上方に迫り上がった形状のものがある。この場合、ベルトモールもドアベルトラインに対応させて長手方向の一部を変形させる必要があるため、従来のように押出成形できず、射出成形されることがある。この種のベルトモールでは、素材の異なるモール本体部とリップ部とを別々に製造し、硬質材からなるモール本体に、軟質材からなるリップ部を含むシール部材を固定してベルトモールとされる。
【0010】
シール部材としては、モール本体の車外側側壁部の内面に固定される縦壁部と、車外側側壁部の先端面に対向する底壁部と、縦壁部と底壁部とを連結するコーナー部と、ドアパネルに弾接するリップ部とを有し、底壁部における車外側側壁部の先端面との対向面に、車外側側壁部の先端面に当接する遮蔽用凸部が形成されたものがある。
【0011】
このようなシール部材において、リップ部の形状が従来と同様に底壁部の先端縁部から下方に向けて設けられ、先端部が車内側(コーナー部側)に向くように中間部で反り返った形状となっていると、シール部材全体を軟質材で製造すると次のような問題が生じる。すなわち、ベルトモールをドアパネルの上縁に取り付けてリップ部がドアパネルに弾接すると、シール部材のコーナー部を屈曲点として底壁部が車外側側壁部から離間する方向へ引っ張り力が作用する。これに伴い、底壁部に設けられた遮蔽用凸部も車外側側壁部から離間する方向へ力が作用し、モール本体とリップ部との間に僅かな隙間が生じてしまうおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、ドアパネルに弾接するリップ部を含むシール部材をモール本体に固定して成るベルトモールにおいて、リップ部がシンプルな形状のままで、モール本体とリップ部との間に隙間が生じることを避けることができるベルトモールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのための手段として、本発明は次の手段を採る。
(1)車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、
モール本体と、前記ドアパネルの上縁に取り付けた際に前記ドアパネルとモール本体との隙間を遮蔽シールするシール部材とを備え、
前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部と、該両側壁部の上縁同士を連結する頂壁部とを一体に有し、
前記シール部材は、前記車外側側壁部の内面に固定される縦壁部と、前記車外側側壁部の先端面に対向する底壁部と、前記縦壁部と前記底壁部とを連結するコーナー部と、前記ドアパネルに弾接するリップ部とを有し、
前記底壁部における前記車外側側壁部の先端面との対向面には、位置決め用凸部と、前記車外側側壁部の先端面に当接する遮蔽用凸部とが突出形成されており、
前記遮蔽用凸部は前記底壁部の先端縁部に設けられ、前記位置決め用凸部は前記遮蔽用凸部よりも前記コーナー部寄りの位置に設けられており、
前記リップ部は、前記底壁部の先端縁部から下方に向けて設けられ、先端部が前記コーナー部側に向くように中間部で反り返っており、
前記シール部材は、少なくとも前記縦壁部及び前記コーナー部が剛性を有する硬質材で形成され、少なくとも前記リップ部が弾性変形可能な軟質材で形成されている、ベルトモール。
(2)前記底壁部のうち、前記コーナー部から前記位置決め用凸部が形成されている部位までが前記硬質材で形成されている、(1)に記載のベルトモール。
(3)前記底壁部のうち、前記リップ部から前記遮蔽用凸部が形成されている部位までが前記軟質材で形成されている、(2)に記載のベルトモール。
(4)前記硬質材で形成された部位と前記軟質材で形成された部位との境界線が、前記底壁部の上面から下面にかけて前記コーナー部側へ傾斜している、(3)に記載のベルトモール。
【発明の効果】
【0014】
(1)の手段によれば、先端部がコーナー部側に向くように反り返った形状のリップ部を有するシール部材のうち、少なくとも縦壁部及びコーナー部が硬質材で形成されているので、ベルトモールをドアパネルの上縁に取り付けた際にシール部材のコーナー部を屈曲点として底壁部が車外側側壁部から離間する方向へ変形することを抑制することができ、延いては遮蔽用凸部が車外側側壁部から離間してモール本体とリップ部との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0015】
底壁部に位置決め用凸部も形成してあれば、縦壁部をモール本体の車外側側壁部へ固定する際に、位置決め用凸部を車外側側壁部の先端面に当接させた状態で固定することで、シール部材を所定の位置へ的確に固定することができる。このとき、シール部材の縦壁部及びコーナー部が硬質材で形成されていることで、シール部材が不用意に変形することもなく、固定作業を安定して行うこともできる。
【0016】
(2)の手段によれば、底壁部のうち、コーナー部から位置決め用凸部が形成されている部位までも硬質材によって形成されていることで、モール本体とリップ部との間に隙間が生じること、及び固定時の不用意な変形をより確実に避けることができる。また、位置決め用凸部も硬質材で形成されていれば、位置決め用凸部を車外側側壁部へ当接させても位置決め用凸部が変形することがないので、シール部材の取り付け位置にバラつきが生じることを避けることもできる。
【0017】
(3)の手段によれば、遮蔽用凸部も軟質材で形成されているので、遮蔽用凸部を車外側側壁部へ弾接させることができる。これにより、遮蔽用凸部を密着させて遮蔽性及びシール性を向上させることができる。
【0018】
(4)の手段によれば、軟質材で形成されている部位が、車外側側壁部に臨む底壁部の上面側よりも、ドアパネルに臨む底壁部の下面側の方が広いので、リップ部の変形性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両用ドアの正面図である。
図2】ベルトモールの分解斜視図である。
図3】ベルトモールの断面図である。
図4】リップ部周辺の要部拡大断面図である。
図5】変形例のリップ部周辺の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の代表的な実施形態を例に挙げて具体的に説明する。図1に示すように、ベルトモール1は、自動車等の車両用ドア2の窓開口部3の下縁に沿ったドアベルトラインに配設され、窓開口部3内を昇降する窓板4に弾接し、ドアパネル5と窓板4との隙間をシールする等のために配される。詳しくは、ベルトモール1は長尺な部材であって、車両用ドア2のアウタ側(車外側)においてドアベルトラインとなるドアパネル5(ドアアウタパネル)の上縁に沿って取り付けられ、窓板4とドアパネル5との隙間を遮蔽・シールすると共に、窓板4が昇降する際に窓板4と摺接して、窓板4に付着した塵埃や水分等をかき落とし清浄する。
【0021】
本実施形態の車両用ドア2では、ドアベルトラインすなわちドアパネル5の上縁の車両前後方向後方部が上方に迫り上がっている。これに伴い、本実施形態のベルトモール1も、長手方向後方部がドアパネル5の上縁に沿って上方に迫り上がっているが、ベルトモール1の断面形状は、長手方向両端部に亘ってほぼ一様である。
【0022】
図2及び図3に示すように、ベルトモール1は、モール本体10と、ドアパネル5と弾接するパネルタッチリップ部24を備え、ドアパネル5とモール本体10との隙間を遮蔽シールするパネルシール部材20と、窓板4と弾接するガラスタッチリップ部32を備え、窓板4とモール本体10との隙間を遮蔽シールするガラスシール部材30とを組み立てて成る。なお、パネルシール部材20が本発明の「シール部材」に相当し、パネルタッチリップ部24が本発明の「リップ部」に相当する。
【0023】
モール本体10は、互いに対向する車外側側壁部11及び車内側側壁部12と、両側壁部11・12の上縁同士を連結する頂壁部13とを一体に有し、側面視で略逆U字状を呈する。頂壁部13は、その裏面側内部に空洞部13aが設けられたパイプ状構造になって剛性が高められている。また、頂壁部13の車内側縁には、車内側に向けて突出する突出部14が形成されている。車内側側壁部12の内面側下縁には、ドアパネル5を係止するための係止部15が、車外側に向けて突出形成されている。また、車内側側壁部12の外面には、ガラスシール部材30を固定するためのボス16が、長手方向に等間隔で複数個並設されている。
【0024】
モール本体10は、一定の剛性を有する硬質材(例えばロックウェル硬さが100以上の熱可塑性樹脂)によって射出成形されている。本実施形態では、ロックウェル硬さが115のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)からなる。
【0025】
パネルシール部材20は、縦壁部21と、底壁部22と、縦壁部21と底壁部22とを連結するコーナー部23と、パネルタッチリップ部24とを有する。縦壁部21は平板状であって、両面テープ40を介してモール本体10の車外側側壁部11の内面へ接着固定される部位である。
【0026】
底壁部22は、縦壁部21の下縁からコーナー部23を介して車外側へ向けて延在しており、パネルシール部材20は側面視で略L字状を呈する。パネルシール部材20をモール本体10へ固定した状態では、底壁部22が車外側側壁部11の下方に位置しており、底壁部22の上面と車外側側壁部11の先端面(下面)とが対向している。また、パネルシール部材20をモール本体10へ固定した状態では、底壁部21の外面と車外側側壁部11の外面とはほぼ面一となる。
【0027】
パネルタッチリップ部24は、底壁部22の先端縁部から下方に向けて設けられ、その先端部がコーナー部23側(車内側)に向くように中間部で反り返っている。ベルトモール1をドアパネル5の上縁へ取り付けると、パネルタッチリップ部24が押圧されるようにドアパネル5と弾接する。
【0028】
車外側側壁部11の先端面と対向する底壁部22の上面には、遮蔽用凸部25と位置決め用凸部26が上方へ向けて突出形成されている。遮蔽用凸部25は底壁部22の先端縁部に設けられ、パネルシール部材20をモール本体10へ固定した状態において、少なくとも遮蔽用凸部25が車外側側壁部11の先端面と当接することで、遮蔽用凸部25が車外側側壁部11とパネルタッチリップ部24との間を遮蔽シールする部位として機能する。位置決め用凸部26は遮蔽用凸部25よりもコーナー部23寄りの位置(車内側の位置)に設けられており、パネルシール部材20をモール本体10へ固定する際に車外側側壁部11の先端面と当接させることで、パネルシール部材20の高さ位置を位置決めするために使用される。
【0029】
そのため、遮蔽用凸部25の高さ(底壁部22の上面からの突出量)は、位置決め用凸部26の高さ以上とする。すなわち、遮蔽用凸部25の高さは位置決め用凸部26の高さと同じでもよいが、遮蔽用凸部25の方が位置決め用凸部26よりも若干高いことが好ましい。遮蔽用凸部25の方が位置決め用凸部26よりも若干高いと、後述のように遮蔽用凸部25を軟質材とすることで車外側側壁部11との密着性が増して遮蔽性及びシール性が向上するからである。一方、パネルシール部材20をモール本体10へ固定した状態において、位置決め用凸部26は必ずしも車外側側壁部11と当接していなくてもよい。すなわち、パネルシール部材20をモール本体10へ固定する際に位置決め用凸部26を車外側側壁部11と当接させて位置決め固定できれば、その後、遮蔽用凸部25の弾発力により位置決め用凸部26が車外側側壁部11と離間したとしても、遮蔽用凸部25が車外側側壁部11と当接していれば問題ない。
【0030】
パネルシール部材20は、少なくとも縦壁部21及びコーナー部23が剛性を有する硬質材で形成され、少なくともパネルタッチリップ部24が弾性変形可能な軟質材で形成されている。本実施形態では、図4に示されるように、縦壁部21及びコーナー部23に加え、底壁部22のうち、コーナー部23から位置決め用凸部26が形成されている部位までが、位置決め用凸部26も含めて硬質材で形成されている。
【0031】
硬質材としては、一定の剛性を有するものであればよく、JIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプD)がHDD50~80のものが好適である。例えば塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレンープロピレンージエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。本実施形態では、JIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプD)がHDD70のポリプロピレンからなる。
【0032】
一方、パネルタッチリップ部24に加え、底壁部22のうち、パネルタッチリップ部24から遮蔽用凸部25が形成されている部位までが、遮蔽用凸部25も含めて軟質材で形成されている。軟質材としては弾性変形可能なものであればよく、例えばJIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプA)がHDA50~90のものが好適である。例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)やスチレン系エラストマー(TPS)等が挙げられる。本実施形態では、JIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプA)がHDA70のオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる。
【0033】
硬質材で形成された部位と軟質材で形成された部位との境界線は、底壁部22の上面から下面にかけてコーナー部23側へ直線状に傾斜している。これにより、パネルタッチリップ部24及び遮蔽用凸部25による良好なシール性を保ちながら、できるだけ硬質材で形成された部位を広くすることで、底壁部22が変形してパネルタッチリップ部24と車外側側壁部11との間に隙間が生じることを効果的に抑制することができる。また、境界線が直線状なので、硬質材で形成された部位と軟質材で形成された部位とを共押出により同時成形し易く、パネルシール部材20の生産性が良好となる。
【0034】
ガラスシール部材30は、図2及び図3に示すように、基部31と、ガラスタッチリップ部32と、遮蔽リップ33とを有する。基部31は平板状であって、車内側側壁部12の外面へ固定される部位である。基部31には、車内側側壁部12のボス16に臨む部位にボス孔34が穿設されており、ボス孔34にボス16を挿通したうえでボス16を熱カシメすることで、ガラスシール部材30をモール本体10に固定する。
【0035】
ガラスタッチリップ部32は、基部31の外面から車内側に向けて突出しており、ベルトモール1をドアパネル5の上縁に取り付けた状態において、窓板4と弾接する。ガラスタッチリップ部32は1つでもよいが、上下に複数個設けることが好ましい。複数個設けることにより、ガラスタッチリップ部32によるシール性及び清浄性が向上するからである。本実施形態では、ガラスタッチリップ部32を上下に2つ形成している。遮蔽リップ33は基部31の上面から上方に向けて突出しており、ガラスシール部材30をモール本体10に固定した状態において、モール本体10の突出部14の下面に弾接する。
【0036】
ガラスシール部材30では、基部31が剛性を有する硬質材で形成され、ガラスタッチリップ部32及び遮蔽リップ33が弾性変形可能な軟質材で形成されており、共押出により同時成形されている。硬質材としては、一定の剛性を有するものであればよく、JIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプD)がHDD50~80のものが好適である。例えば塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレンープロピレンージエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。本実施形態では、JIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプD)がHDD70のポリプロピレンからなる。軟質材としては弾性変形可能なものであればよく、例えばJIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプA)がHDA50~90のものが好適である。例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)やスチレン系エラストマー(TPS)等が挙げられる。本実施形態では、JIS K 7215によるデュロメーター硬さ(タイプA)がHDA70のオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる。
【0037】
図3の仮想線で示すように、ドアパネル5の上縁部は補強パネル6を挟んで折り畳まれたフランジ部5aとされており、このフランジ部5aにパネルシール部材20とガラスシール部材30が固定されたモール本体10を上方から被せるように取り付ける。具体的には、車外側側壁部11と車内側側壁部12の間にフランジ部5aを挿入し、ドアパネル5の先端縁は車内側側壁部12の係止部15に係止される。これにより、ベルトモール1がドアパネル5の上縁に沿って配設される。
【0038】
ベルトモール1をドアパネル5の上縁に取り付けた状態では、ガラスタッチリップ部32が窓板4と弾接し、図4に示されるように、パネルタッチリップ部24がドアパネル5に弾接する。このとき、パネルタッチリップ部24が押圧されることで、底壁部22の先端部が下方へ引っ張られる。しかし、パネルシール部材20のコーナー部23から底壁部22の位置決め用凸部26が形成されている部位に至る大半が硬質材で形成されており、この硬質材部分が変形することはない。一方、軟質材で形成されている部位は遮蔽用凸部25とパネルタッチリップ部24であり、必要最低限の範囲に限られているので、この軟質材部分が下方に変形することも殆ど無い。これにより、パネルタッチリップ部24と車外側側壁部11との間に隙間ができることが抑制される。
【0039】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、これに限られることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。例えば、図5に示す変形例のように、硬質材で形成される部位と軟質材で形成される部位の境界線を階段状にして、位置決め用凸部26も軟質材で形成してもよい。これによれば、底壁部22の変形を有効に抑制しながら、位置決め用凸部26も車外側側壁部11に弾接できるので、シール性が向上する。また、少なくとも縦壁部21及びコーナー部23が硬質材で形成され、少なくともパネルタッチリップ部24が軟質材で形成されている限り、遮蔽用凸部25も硬質材で形成することもできる。硬質材部位と軟質材部位の境界線は湾曲させることもできるし、垂直又は車外側へ傾斜させることもできる。
【0040】
本発明は、主としてドアベルトライン(ドアパネルの上縁)が直線状でなく長手方向の一部が変形したベルトモールに対して適用するものであるが、ドアベルトラインが直線状で長手方向全体が直線状のベルトモールであっても、底壁部の先端縁部から下方に向けて設けられ、先端部がコーナー部側に向くように中間部で反り返ったパネルタッチリップ部を有するパネルシール部材をモール本体に固定してなるベルトモールであれば、適用可能である。
【0041】
車内側側壁部12の外面に形成されたボス16は、図2に示すように長手方向に等間隔で複数個並設されているものを例示したが、ガラスシール部材30を車内側側壁部12に固定することができれば、ボス16同士の間隔や、ボス16の本数や形状は適宜変更可能である。
【0042】
図1には車両用ドアの一例としてフロントドアを例示しているが、ベルトモールが取り付けられる車両用ドアとしては、リアドアも挙げられる。ベルトラインが直線状でないパターン(ベルトモールの長手方向の一部が変形しているパターン)としては、車両前後方向後方部が下方へ変形しているもの、中間部や前方部が上方又は下方へ変形しているものも挙げられる。また、窓開口部下縁のベルトラインから、窓開口部後縁まで延在する立設部を連続して有し、全体として略L字状のベルトモールに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ベルトモール
2 車両用ドア
3 窓開口部
4 窓板
5 ドアパネル
10 モール本体
11 車外側側壁部
12 車内側側壁部
13 頂壁部
16 ボス
20 パネルシール部材
21 縦壁部
22 底壁部
23 コーナー部
24 パネルタッチリップ部
25 遮蔽用凸部
26 位置決め用凸部
30 ガラスシール部材
31 基部
32 ガラスタッチリップ部
33 遮蔽リップ部
40 両面テープ




図1
図2
図3
図4
図5