(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106135
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】検知ケーブル、検知システム、及び検知装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
G01M3/16 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010267
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真直
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊田 尚馬
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 庸嵩
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮平
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB11
2G067BB22
2G067CC02
2G067CC03
2G067DD23
2G067DD24
2G067EE08
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】より容易に液体の漏洩位置を検知することができる技術を提供する。
【解決手段】 本開示である検知ケーブルは、被覆層を有する被覆電線を備える検知ケーブルであって、前記被覆電線は、ケーブル長手方向に沿って配置されるとともに、第1端部を有する第1電線部と、前記第1電線部に沿って配置されるとともに、前記第1端部側に位置する第2端部を有する第2電線部と、前記第1端部と前記第2端部とを繋ぐ折り返し部と、を有し、前記第1電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第1剥離部を有し、前記第2電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第2剥離部を有し、前記複数の第1剥離部は、前記ケーブル長手方向に沿って配置され、前記複数の第2剥離部は、前記複数の第1剥離部が設けられている前記ケーブル長手方向における複数の配置位置と同じ位置に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆層を有する被覆電線を備える検知ケーブルであって、
前記被覆電線は、
ケーブル長手方向に沿って配置されるとともに、第1端部を有する第1電線部と、
前記第1電線部に沿って配置されるとともに、前記第1端部側に位置する第2端部を有する第2電線部と、
前記第1端部と前記第2端部とを繋ぐ折り返し部と、を有し、
前記第1電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第1剥離部を有し、
前記第2電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第2剥離部を有し、
前記複数の第1剥離部は、前記ケーブル長手方向に沿って配置され、
前記複数の第2剥離部は、前記複数の第1剥離部が設けられている前記ケーブル長手方向における複数の配置位置と同じ位置に設けられている
検知ケーブル。
【請求項2】
前記複数の配置位置は、前記ケーブル長手方向に沿って等間隔に並ぶ
請求項1に記載の検知ケーブル。
【請求項3】
請求項1に記載の検知ケーブルと、
前記検知ケーブルに検知用信号を与えたときの反射信号に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理装置と、を備える
検知システム。
【請求項4】
前記複数の配置位置は、前記ケーブル長手方向に沿って等間隔に並び、
前記処理装置は、
前記反射信号に基づいて、下記の第1基本共振周波数から所定の値だけオフセットしたオフセット周波数における反射損失を取得する処理と、
前記オフセット周波数における反射損失に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備える
請求項3に記載の検知システム。
第1基本共振周波数:前記複数の第1剥離部のうち前記第1端部に最も近い位置の第1剥離部と、前記複数の第2剥離部のうち前記第2端部に最も近い位置の第2剥離部と、の間で生じる共振波の基本波の周波数
【請求項5】
前記所定の値は、下記の第2基本共振周波数の1/2よりも小さい
請求項4に記載の検知システム。
第2基本共振周波数:前記複数の第1剥離部のうち前記第1端部から最も遠い位置の第1剥離部と、前記複数の第2剥離部のうち前記第2端部から最も遠い位置の第2剥離部と、の間で生じる共振波の基本波の周波数
【請求項6】
前記処理装置は、
前記反射信号に基づいて前記複数の第1剥離部と前記複数の第2剥離部との間で生じる共振波の周波数を取得する処理と、
前記周波数に基づいて、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備える
請求項3に記載の検知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の検知ケーブルに検知用信号を与える信号源と、
前記検知用信号を与えたときの反射信号に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理装置と、を備える
検知装置。
【請求項8】
前記複数の配置位置は、前記ケーブル長手方向に沿って等間隔に並び、
前記処理装置は、
前記反射信号に基づいて、下記の第1基本共振周波数から所定の値だけオフセットしたオフセット周波数における反射損失を取得する処理と、
前記オフセット周波数における反射損失に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備える
請求項7に記載の検知装置。
第1基本共振周波数:前記複数の第1剥離部のうち前記第1端部に最も近い位置の第1剥離部と、前記複数の第2剥離部のうち前記第2端部に最も近い位置の第2剥離部と、の間で生じる共振波の基本周波数
【請求項9】
前記処理装置は、
前記反射信号に基づいて前記複数の第1剥離部と前記複数の第2剥離部との間で生じる共振波の周波数を求める処理と、
前記周波数に基づいて、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備える
請求項7に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検知ケーブル、検知システム、及び検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体輸送管路等からの液体漏洩を検知するための検知システムが開示されている。この検知システムは、検知ケーブルと、検知装置と、を備える。
検知装置は、検知ケーブルの第1端部にパルス信号を与える。
検知ケーブルは、漏洩した液体が浸潤可能なケーブルである。検知ケーブルにおいて液体が浸潤した浸潤部分は、特性インピーダンスが変化する。また、検知ケーブルの第2端部は整合終端されている。よって、浸潤部分がない場合、検知ケーブルに与えられるパルス信号は、反射することはない。浸潤部分がある場合、パルス信号は、浸潤部分で反射する。
検知装置は、パルス信号が浸潤部分で反射することで生じる反射信号を観測する。検知装置は、反射信号の有無によって、浸潤部分の有無を判定する。浸潤部分がある場合、検知装置は、液体が漏洩していると判定することができる。
【0003】
さらに、検知装置は、パルス信号を入射してから第1端部に反射信号が到達するまでの時間を計測し、この時間に基づいて、第1端部から浸潤部分までの距離を求める機能を有する。
よって、液体が漏洩し検知ケーブルが浸潤した場合、検知装置は、第1端部から浸潤部分までの距離に基づいて、液体が漏洩した位置を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の検知システムでは、液体が漏洩した位置を検知するために、パルス信号を入射してから第1端部に反射信号が到達するまでの到達時間を測定する必要がある。
しかし、ほぼ光速で伝搬する反射信号の到達時間は、非常に微小であるため、測定が困難な上、高価な測定機器が必要となる場合がある等、コスト増加の原因となることがある。
このため、より容易に液体の漏洩位置を検知することができる方策が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示である検知ケーブルは、被覆層を有する被覆電線を備える検知ケーブルである。前記被覆電線は、ケーブル長手方向に沿って配置されるとともに、第1端部を有する第1電線部と、前記第1電線部に沿って配置されるとともに、前記第1端部側に位置する第2端部を有する第2電線部と、前記第1端部と前記第2端部とを繋ぐ折り返し部と、を有する。前記第1電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第1剥離部を有する。前記第2電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第2剥離部を有する。前記複数の第1剥離部は、前記ケーブル長手方向に沿って配置される。前記複数の第2剥離部は、前記複数の第1剥離部が設けられている前記ケーブル長手方向における複数の配置位置と同じ位置に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より容易に液体の漏洩位置を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、検知システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、被覆電線の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1導体線端部の反射損失の周波数特性の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、検知処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1基本共振周波数近傍の反射損失の周波数特性を示す図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係る検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
【0010】
(1)本開示である検知ケーブルは、被覆層を有する被覆電線を備える検知ケーブルである。
前記被覆電線は、ケーブル長手方向に沿って配置されるとともに、第1端部を有する第1電線部と、前記第1電線部に沿って配置されるとともに、前記第1端部側に位置する第2端部を有する第2電線部と、前記第1端部と前記第2端部とを繋ぐ折り返し部と、を有する。前記第1電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第1剥離部を有する。前記第2電線部は、前記被覆層が剥離された複数の第2剥離部を有する。前記複数の第1剥離部は、前記ケーブル長手方向に沿って配置される。前記複数の第2剥離部は、前記複数の第1剥離部が設けられている前記ケーブル長手方向における複数の配置位置と同じ位置に設けられている。
【0011】
上記構成によれば、複数の配置位置それぞれに、第1剥離部と第2剥離部とが1つずつ設けられる。
よって、複数の配置位置のうちのいずれかの近傍で液体漏洩が発生すると、その配置位置に設けられている第1剥離部及び第2剥離部の両方に液体が浸潤する。
第1剥離部及び第2剥離部においては被覆層が剥離している。よって、液体が浸潤した第1剥離部及び第2剥離部には部分的なインピーダンスの変化が生じる。
このとき、第1電線部の第1端部の反対側の端部から検知用信号を与えると、液体が浸潤した配置位置(浸潤位置)における第1剥離部及び第2剥離部のそれぞれで反射波が生じ、これにより、浸潤位置における第1剥離部と浸潤位置の第2剥離部との間で共振波が生じる。
この共振波の特性は、浸潤位置における第1剥離部と浸潤位置の第2剥離部との間の線路長によって定まる。
ここで、複数の配置位置における第1剥離部と第2剥離部との間の線路長は、複数の配置位置同士の間で互いに異なる。このため、液体で浸潤されたときに生じる共振波の特性は、複数の配置位置ごとに異なる。
よって、共振波の特性を得ることができれば、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち液体の浸潤によって共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知することができる。この結果、複数の配置位置のうち浸潤位置を検知することができる。
上記構成の検知ケーブルを、液体漏洩を検知すべき検知対象に配置し、検知用信号を与えたときに生じる共振波の特性が得られれば、液体の漏洩位置を検知することができる。すなわち、漏洩した液体が検知ケーブルの複数の配置位置のいずれかに浸潤すれば、液体が浸潤し共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知することができ、浸潤位置を液体の漏洩位置として検知することができる。よって、上記従来例と比較して、より容易に液体の漏洩位置を検知することができる。
【0012】
(2)上記(1)の検知ケーブルにおいて、前記複数の配置位置は、前記ケーブル長手方向に沿って等間隔に並んでいてもよい。
この場合、複数の配置位置のうち互いに隣り合う一対の配置位置同士の間隔はいずれも同じとなる。よって、複数の配置位置のうちの1つの配置位置における第1剥離部と第2剥離部との間の線路長と、前記1つの配置位置以外の他の配置位置における第1剥離部と第2剥離部との間の線路長と、の差が、一対の配置位置同士の間隔の倍数となる。
このため、1つの配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波と、他の配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波と、は、同じ周波数の高調波を含む。
反射信号を反射損失の周波数特性として取得したとき、同じ周波数の高調波近傍においては、1つの配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波の反射損失の傾きと、他の配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波の反射損失の傾きと、が異なる。よって、同じ周波数の高調波近傍においては、両周波数特性における反射損失の間で数値差が生じる。
よって、上記構成の検知ケーブルを用い、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する際、反射信号に基づいて、共通の高調波周波数近傍の利得を取得すればよく、広帯域に亘って数値処理する必要がなくなる。この結果、処理負荷が軽減される。
【0013】
(3)他の観点からみた本開示は、検知システムである。この検知システムは、上記(1)の検知ケーブルと、前記検知ケーブルに検知用信号を与えたときの反射信号に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理装置と、を備える。
【0014】
上記構成によれば、反射信号に基づいて、検知ケーブルで生じた共振波の特性を取得すれば、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち液体の浸潤によって共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知することができる。よって、複数の配置位置のうち液体が浸潤した配置位置(浸潤位置)を検知することができる。
よって、上記構成の検知ケーブルを、液体漏洩を検知すべき検知対象に配置し、検知用信号を与えたときに生じる共振波の特性が得られれば、浸潤位置を液体の漏洩位置として検知することができる。
よって、上記従来例と比較して、より容易に液体の漏洩位置を検知することができる。
【0015】
(4)また、上記(3)の検知システムにおいて、前記複数の配置位置が、前記ケーブル長手方向に沿って等間隔に並ぶ場合、前記処理装置は、前記反射信号に基づいて、下記の第1基本共振周波数から所定の値だけオフセットしたオフセット周波数における反射損失を取得する処理と、前記オフセット周波数における反射損失に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備えることがある。
第1基本共振周波数:前記複数の第1剥離部のうち前記第1端部に最も近い位置の第1剥離部と、前記複数の第2剥離部のうち前記第2端部に最も近い位置の第2剥離部と、の間で生じる共振波の基本波の周波数
【0016】
複数の配置位置が、ケーブル長手方向に沿って等間隔に並ぶので、複数の配置位置のうち互いに隣り合う一対の配置位置同士の間隔はいずれも同じとなる。
よって、1つの配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波と、他の配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波と、は、同じ周波数の高調波を含む。
複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部が生じさせる共振波の全てに含まれる同じ周波数の高調波のうち、最も低い周波数の高調波の周波数が、第1基本共振周波数となる。
反射信号を反射損失の周波数特性として取得したとき、同じ周波数の高調波近傍においては、1つの配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波の反射損失の傾きと、他の配置位置における第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波の反射損失の傾きと、が異なる。よって、同じ周波数の高調波近傍においては、両周波数特性における反射損失の間で数値差が生じる。
よって、反射信号に基づいて、第1基本共振周波数近傍の周波数であるオフセット周波数における反射損失を取得すれば、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知することができ、広帯域に亘って数値処理する必要がなくなる。この結果、処理負荷が軽減される。
【0017】
(5)また、上記(4)において、前記所定の値は、下記の第2基本共振周波数の1/2よりも小さいことがある。
第2基本共振周波数:前記複数の第1剥離部のうち前記第1端部から最も遠い位置の第1剥離部と、前記複数の第2剥離部のうち前記第2端部から最も遠い位置の第2剥離部と、の間で生じる共振波の基本波の周波数
【0018】
この場合、第1端部から最も遠い位置の第1剥離部と、第2端部から最も遠い位置の第2剥離部と、が生じさせる共振波の周波数特性は、他の位置の第1剥離部と第2剥離部とが生じさせる共振波の周波数特性と比較して、0から第1基本共振周波数までの周波数帯域内において最も多くの極小点を持つ。
所定の値を第2基本共振周波数の1/2よりも小さい値とすることで、オフセット周波数を、第1端部から最も遠い位置の導体剥離部が生じさせる共振波の周波数特性が有する極小点の周波数と、第1基本共振周波数と、の間の数値範囲内に設定することができる。
これにより、第1端部から最も遠い位置の第1剥離部と第2剥離部との間で生じる共振波の周波数特性におけるオフセット周波数の反射損失が極小点を超えて傾きが反転する範囲となるのを抑制することができる。
この結果、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する際の精度をより高めることができる。
【0019】
(6)また、上記(3)の検知システムにおいて、前記処理装置は、前記反射信号に基づいて前記複数の第1剥離部と前記複数の第2剥離部との間で生じる共振波の周波数を取得する処理と、前記周波数に基づいて、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備えていてもよい。
【0020】
共振波の波長及び周波数は、液体が浸潤した配置位置における第1剥離部と第2剥離部との間の線路長によって定まる。
この点、複数の配置位置における第1剥離部と第2剥離部との間の線路長は、複数の配置位置同士の間で互いに異なる。このため、液体で浸潤されたときに生じる共振波の周波数は、複数の配置位置ごとに異なる。
よって、共振波の周波数を得ることができれば、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち液体の浸潤によって共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知することができる。この結果、複数の配置位置のうち液体が浸潤した配置位置を液体の漏洩位置として容易に検知することができる。
【0021】
(7)また、他の観点からみた本開示は、検知装置である。この検知装置は、上記(1)の検知ケーブルに検知用信号を与える信号源と、前記検知用信号を与えたときの反射信号に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理装置と、を備える。
【0022】
(8)上記(7)の検知装置において、前記複数の配置位置が、前記ケーブル長手方向に沿って等間隔に並ぶ場合、前記処理装置は、前記反射信号に基づいて、下記の第1基本共振周波数から所定の値だけオフセットしたオフセット周波数における反射損失を取得する処理と、前記オフセット周波数における反射損失に基づいて、前記複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備えていてもよい。
第1基本共振周波数:前記複数の第1剥離部のうち前記第1端部に最も近い位置の第1剥離部と、前記複数の第2剥離部のうち前記第2端部に最も近い位置の第2剥離部と、の間で生じる共振波の基本周波数
【0023】
(9)上記(7)の検知装置において、前記処理装置は、前記反射信号に基づいて前記複数の第1剥離部と前記複数の第2剥離部との間で生じる共振波の周波数を求める処理と、前記周波数に基づいて、複数の第1剥離部及び複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部及び第2剥離部を検知する処理と、を実行する処理部を備えていてもよい。
【0024】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0025】
〔検知システムについて〕
図1は、検知システムの一例を示すブロック図である。
図1中、検知システム1は、液体の漏洩位置を検知するためのシステムである。
検知システム1は、検知ケーブル2と、検知ユニット4と、を含む。
検知ケーブル2は、検知対象100に沿って延設される。本実施形態において、検知対象100は、例えば、水や石油等の液体を輸送するための液体輸送パイプである。
【0026】
検知ケーブル2は、1本の被覆電線3を備える。被覆電線3は、長手方向中央で折り返されている。被覆電線3の第1電線端部3a及び第2電線端部3bは、検知ケーブル2の第1ケーブル端部2a側に位置する。被覆電線3の折り返されている部分は、検知ケーブル2の第2ケーブル端部2b側に位置する。
第1電線端部3aは、被覆電線3の一方の端部である。第2電線端部3bは、第1電線端部3aの反対側の端部である。第1ケーブル端部2aは、検知ケーブル2の一方の端部である。第2ケーブル端部2bは、第1ケーブル端部2aの反対側の端部である。
【0027】
被覆電線3は、内部導体線と、前記内部導体の外周側に設けられた絶縁層と、絶縁層の外周側に設けられた外部導体と、外部導体の外周側に設けられた被覆層と、を含む。つまり、被覆電線3は、同軸ケーブルを構成する。被覆電線3の構造については、後に説明する。
【0028】
検知ユニット4は、検知ケーブル2の第1ケーブル端部2aに接続されている。
検知ユニット4は、検知ケーブル2を用いて、検知対象100における液体の漏洩位置を検知する機能を有する。
検知ユニット4は、信号源6と、終端器7と、サーキュレータ8と、処理装置10と、を有する。
信号源6は、検知ケーブル2の第1ケーブル端部2a側に接続されている。信号源6は、検知ケーブル2へ与えられる検知用信号であるパルス信号を出力する。
サーキュレータ8は、信号源6から出力されるパルス信号を第1ケーブル端部2aに与える。また、サーキュレータ8は、検知ケーブル2の第1ケーブル端部2aからの出力を処理装置10へ与える。
【0029】
処理装置10は、処理部10aと、記憶部10bと、出力部10cと、を備えるコンピュータ等によって構成される。
処理部10aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、量子プロセッサ等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサである。
【0030】
記憶部10bは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。
記憶部10bには、処理部10aに実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部10aは、記憶部10bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、処理装置10が有する各種処理機能を実現する。
【0031】
出力部10cは、処理部10aによる処理に関する各種情報を、外部へ向けて出力する機能を有する。出力部10cは、無線通信装置を含んでいてもよい。この場合、出力部10cは、無線通信によって、各種情報を出力する。また、出力部10cは、モニタや、インジケータ、スピーカを含んでいてもよい。この場合、出力部10cは、これらデバイスによって、各種情報を出力する。
検知ユニット4に含まれる各部が行う動作や処理については、後に説明する。
【0032】
〔被覆電線3について〕
図2は、被覆電線3の一例を示す断面図である。
被覆電線3は、内部導体線12と、絶縁層14と、外部導体16と、被覆層18と、を備える。被覆電線3は、同軸ケーブルを構成する。
内部導体線12は、被覆電線3の径方向中心に位置する。内部導体線12、絶縁層14、外部導体16、及び、被覆層18は、被覆電線3の径方向中心から径方向外側へ向かって順番に積層されている。
【0033】
内部導体線12は、銅、アルミニウム等の導体によって形成された線状の部材である。内部導体線12は、単一の素線であってもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。
【0034】
絶縁層14は、内部導体線12の外周側に設けられている。絶縁層14は、内部導体線12と、外部導体16と、を絶縁する。
絶縁層14は、透液性を有する絶縁体によって形成される。絶縁層14は、例えば、発泡ポリエチレン等の絶縁体によって形成されている。発泡ポリエチレンは、互いに繋がる複数の気泡を有しており、この複数の気泡によって透液性を有する。
【0035】
外部導体16は、絶縁層14の外周側に設けられている。外部導体16は、接地される。外部導体16は、網組によって構成される。網組は、銅、アルミニウム等の導体の細線を網状に編むことで得られる構造体である。外部導体16は、網組によって構成されることにより、透液性を有する。
【0036】
被覆層18は、外部導体16の外周側に設けられている。被覆層18は、外部導体16の外周面に沿って設けられている。被覆層18は、上述の各部を覆っている。これにより、被覆電線3を構成する各部を外部環境から保護する。被覆層18は、例えば、ポリ塩化ビニル等によって形成される。
【0037】
〔検知ケーブル2について〕
【0038】
図3は、検知ケーブル2を示す図である。なお、
図3では、理解容易とするために、検知ケーブル2を模式的に示している。
上述したように、検知ケーブル2は、長手方向中央で折り返された被覆電線3を備える。
被覆電線3は、第1電線部20と、第2電線部22と、折り返し部23と、を有する。
第1電線部20は、検知ケーブル2の長手方向に沿って配置されている。第1電線部20は、第1端部20aを有する。第1端部20aは、第1電線部20における第2ケーブル端部2b側の端部である。
第2電線部22は、第1電線部20に沿って配置されている。よって、第2電線部22も検知ケーブル2の長手方向に沿って配置されている。第2電線部22は、第2端部22aを有する。第2端部22aは、第2電線部22における第2ケーブル端部2b側の端部である。
折り返し部23は、第1端部20aと第2端部22aとを繋いでいる。折り返し部23は、検知ケーブル2の第2ケーブル端部2b側に位置する。
【0039】
また、第1電線部20は、第3端部20bを有する。第3端部20bは、第1電線部20における第1ケーブル端部2a側の端部である。第3端部20bは、第1電線端部3aでもある。
同様に、第2電線部22は、第4端部22bを有する。第4端部22bは、第2電線部22における第1ケーブル端部2a側の端部である。第4端部22bは、第2電線端部3bでもある。
【0040】
被覆電線3は、長手方向中央で折り返されている。よって、第1電線部20と、第2電線部22とは、ほぼ同じ長さである。
また、第2電線部22は、第1電線部20に沿うように配置されている。よって、第3端部20bと、第4端部22bとは、検知ケーブル2の長手方向において同じ位置となる。
【0041】
内部導体線12の第1導体線端部12aは、第3端部20bに位置する。第1導体線端部12aは、サーキュレータ8に接続される。
内部導体線12の第2導体線端部12bは、第4端部22bに位置する。第2導体線端部12bは、終端器7に接続される。
【0042】
第1電線部20は、複数の第1被覆部24と、複数の第1剥離部25と、を有する。複数の第1被覆部24と、複数の第1剥離部25とは、長手方向に交互に配置されている。よって、複数の第1剥離部25は、長手方向に沿って、離散的に配置されている。
なお
図3では、第1電線部20が9箇所の第1剥離部25を有する場合を示している。
【0043】
複数の第1被覆部24は、第1電線部20において被覆層18を有する部分である。よって、複数の第1被覆部24の最外面は被覆層18である。
複数の第1剥離部25は、長手方向に沿って所定の寸法だけ被覆層18が剥離された部分である。複数の第1剥離部25のそれぞれにおいて、被覆層18が周方向の全域に亘って剥離されている。よって、複数の第1剥離部25においては外部導体16が露出している。
複数の第1剥離部25の長手寸法は、例えば、数センチである。
また、複数の第1被覆部24の長手寸法は、例えば、数メートルである。
よって、複数の第1剥離部25の長手寸法は、複数の第1被覆部24の長手寸法と比較して十分に小さい。
【0044】
複数の第1剥離部25は、検知ケーブル2の長手方向に沿って等間隔に配置されている。言い換えると、複数の第1剥離部25の配置位置は、検知ケーブル2の長手方向に沿って等間隔に並んでいる。
【0045】
第2電線部22は、複数の第2被覆部26と、複数の第2剥離部27と、を有する。複数の第2被覆部26と、複数の第2剥離部27とは、長手方向に交互に配置されている。よって、複数の第2剥離部27は、長手方向に沿って、離散的に配置されている。
なお
図3では、第2電線部22が9箇所の第2剥離部27を有する場合を示している。
【0046】
複数の第2被覆部26は、第2電線部22において被覆層18を有する部分である。よって、複数の第2被覆部26の最外面は被覆層18である。
複数の第2剥離部27は、長手方向に沿って所定の寸法だけ被覆層18が剥離された部分である。複数の第2剥離部27のそれぞれにおいて、被覆層18が周方向の全域に亘って剥離されている。よって、第1剥離部25と同様、第2剥離部27においても外部導体16が露出している。
【0047】
複数の第2剥離部27の長手寸法は、第1剥離部25の長手寸法と同じである。
また、複数の第2被覆部26の長手寸法は、第1被覆部24の長手寸法と同じである。
複数の第2剥離部27は、複数の第1剥離部25が設けられているケーブル長手方向における複数の配置位置と同じ位置に設けられている。
つまり、検知ケーブル2の長手方向における複数の配置位置のそれぞれには、第1剥離部25と第2剥離部27とが1つずつ配置されている。
よって、複数の配置位置のうちのいずれかの近傍で液体漏洩が発生すると、その配置位置に設けられている第1剥離部及び第2剥離部の両方に液体が浸潤する。
【0048】
ここで、第1剥離部25及び第2剥離部27においては被覆層18が剥離している。よって、液体が第1剥離部25及び第2剥離部27に浸潤すると、液体は外部導体16を通過し、絶縁層14に至る。一般に液体の誘電率は、絶縁層14を構成するポリエチレンと比較して大きい。よって、液体に浸潤された部分の誘電率は顕著に上昇し、インピーダンスを大きく変化させる。
つまり、液体が浸潤した第1剥離部25及び第2剥離部27には部分的なインピーダンスの変化が生じる。
【0049】
本実施形態の検知システム1は、液体が浸潤した配置位置における第1剥離部25及び第2剥離部27のインピーダンスの変化を利用して、検知対象100における液体の漏洩位置を検知する。
【0050】
〔検知ユニット4について〕
上述したように、検知ユニット4は、検知対象100における液体の漏洩位置を検知する機能を有する。
図1に示すように、検知ユニット4の信号源6及び処理装置10は、サーキュレータ8を介して第1導体線端部12aに接続される。
処理装置10は、第1導体線端部12aにおける反射損失を測定する機能を有する。処理装置10は、反射信号を反射損失の周波数特性として取得する。
終端器7は、第2導体線端部12bに接続される。終端器7のインピーダンスは、液体等の浸潤がない被覆電線3(検知ケーブル2)の特性インピーダンスと等価である。よって、被覆電線3は整合終端される。
【0051】
信号源6は、所定の間隔で継続的にパルス信号を出力する。
信号源6が出力したパルス信号は、サーキュレータ8を介して検知ケーブル2の第1導体線端部12aへ与えられる。
処理装置10の処理部10aは、信号源6を制御する機能も有する。
処理部10aは、信号源6にパルス信号を出力させつつ、第1導体線端部12aの反射損失を測定し、検知対象100における液体の漏洩位置を検知する。
【0052】
第1導体線端部12aへ与えられたパルス信号は、第1導体線端部12aから第2導体線端部12bへ亘って被覆電線3を伝搬する。
第2導体線端部12bは終端器7によって整合終端されている。よって、パルス信号が第2導体線端部12b側に伝搬したとしても、パルス信号に応じた反射信号は生じない。
【0053】
一方、上述したように、複数の配置位置のうちのいずれか近傍で液体が漏洩すると、その配置位置に設けられている第1剥離部25及び第2剥離部27の両方に液体が浸潤する。液体が浸潤した第1剥離部25及び第2剥離部27には部分的なインピーダンスの変化が生じる。
このとき、第1導体線端部12aからパルス信号を与えると、液体が浸潤した配置位置(浸潤位置)における第1剥離部25及び第2剥離部27のそれぞれで反射信号(反射波)が生じる。
【0054】
処理部10aは、第1導体線端部12aの反射損失の測定結果に基づいて、パルス信号に応じた反射信号の有無を判定する。
【0055】
図4は、第1導体線端部12aの反射損失の周波数特性の一例を示す図である。
図4では、3種類の反射損失の周波数特性を重ねて示している。
反射信号が無い場合、第1導体線端部12aの反射損失はマイナス側に極めて大きな値となる。よって、処理部10aは、反射損失の測定結果を参照し、反射損失が所定の閾値よりも小さい場合、反射信号が無いと判定する。逆に、反射損失が所定の閾値以上である場合、反射信号が有ると判定する。
この反射信号の有無の判定には、所定の周波数の反射損失が用いられる。反射信号の有無の判定には、後述するオフセット周波数fofの反射損失を用いてもよい。
【0056】
図4に示す第1導体線端部12aの反射損失の周波数特性には、反射信号によって生じた共振波の特性(周波数特性)が表れている。共振波は、基本波と、1又は複数の高調波と、を含む。
本実施形態では、上述のように、液体が浸潤した第1剥離部25及び第2剥離部27には部分的なインピーダンスの変化が生じる。
これによって、浸潤位置における第1剥離部25及び第2剥離部27のそれぞれで反射波が生じ、さらに、浸潤位置における第1剥離部25と第2剥離部27との間で共振波が生じる。
この共振波の特性は、浸潤位置における第1剥離部25と浸潤位置の第2剥離部27との間の線路長によって定まる。
ここで、複数の配置位置における第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は、複数の配置位置同士の間で互いに異なる。
【0057】
例えば、
図3中、検知ケーブル2の長さLを10メートル、互いに隣り合う一対の第1剥離部25(第2剥離部27)同士の間隔Rを1メートルとする。
このとき、上述したように、複数の第1剥離部25の長手寸法は、複数の第1被覆部24の長手寸法と比較して十分に小さい。
よって、ここでは、複数の第1剥離部25の長手寸法及び複数の第1被覆部24の長手寸法を考慮せず、第1被覆部24及び第2被覆部26の長手寸法を間隔Rとして考える。
また、折り返し部23を含む、配置位置P9における第1剥離部25と第2剥離部27との間の長さも間隔Rとする。
【0058】
図3中、配置位置P1は、第1ケーブル端部2a側に最も近い第1剥離部25及び第2剥離部27が配置されているケーブル長手方向の位置である。
配置位置P2は、配置位置P1の隣に並ぶ位置である。配置位置P2は、第2ケーブル端部2b側に位置する。
配置位置P2から配置位置P9は、それぞれ、第1剥離部25及び第2剥離部27が配置されているケーブル長手方向の位置である。配置位置P2から配置位置P9は、第1ケーブル端部2aから第2ケーブル端部2bへ向かって順番に並んでいる。
【0059】
ここで、検知ケーブル2の長さLが10メートルであるので、被覆電線3の線路長は20メートルである。また、第1被覆部24及び第2被覆部26の長手寸法は間隔Rと同じ1メートルである。
よって、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は18メートルとなる。
【0060】
同様に、配置位置P2の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は16メートル、配置位置P3の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は14メートル、配置位置P4の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は12メートル、配置位置P5の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は10メートル、配置位置P6の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は8メートル、配置位置P7の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は6メートル、配置位置P8の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は4メートル、配置位置P9の第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は2メートル、となる。
【0061】
図4では、
図3で示した検知ケーブル2の反射損失の周波数特性を示している。
図4中、線図g1は、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27とが液体に浸潤したときの反射損失の周波数特性を示している。
被覆電線3の誘電率を1とすると、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27との間で生じる共振波の基本波の周波数fP1は8.3MHzである。
線図g1は、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27との間で生じる共振波に含まれる基本波及び高調波を示している。
【0062】
以下、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27との間で生じる共振波を、単に配置位置P1における共振波ということがある。他の配置位置P2から配置位置P9においても同様である。
【0063】
図4中、線図g2は、配置位置P3の第1剥離部25と第2剥離部27とが液体に浸潤したときの反射損失の周波数特性を示している。
配置位置P3における共振波の基本波の周波数fP3は10.7MHzである。
線図g3は、配置位置P3における共振波に含まれる基本波及び高調波を示している。
【0064】
図4中、線図g3は、配置位置P5の第1剥離部25と第2剥離部27とが液体に浸潤したときの反射損失の周波数特性を示している。
配置位置P5における共振波の基本波の周波数fP5は15MHzである。
線図g3は、配置位置P5における共振波に含まれる基本波及び高調波を示している。
【0065】
このように、複数の配置位置における第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は、複数の配置位置同士の間で互いに異なる。
このため、液体で浸潤されたときに生じる共振波の特性は、複数の配置位置ごとに異なる。
処理部10aは、複数の配置位置ごとに異なる共振波の特性を利用し、複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知する。
【0066】
図5は、検知処理の一例を示すフローチャートである。
処理部10aは、まず、信号源6にパルス信号の出力を開始させるとともに(ステップS1)、反射損失の測定を開始する(ステップS2)。これにより、信号源6は、所定の間隔で継続的にパルス信号を出力する。パルス信号は、検知ケーブル2に与えられる。
また、処理部10aは、第1導体線端部12aにおける反射損失の測定を継続的に行う。
次いで、処理部10aは、反射損失の測定結果に基づいて、パルス信号に応じた反射信号の有無を判定する(ステップS3)。
処理部10aは、反射損失の測定結果を参照し、所定の周波数の反射損失が所定の閾値(例えば、-100dB)よりも小さい場合、反射信号が無いと判定する。逆に、反射損失が所定の閾値以上である場合、反射信号が有ると判定する。
【0067】
第2導体線端部12bの反射損失の測定結果から反射信号が無いと判定する場合、処理部10aは、ステップS3へ戻る。よって、処理部10aは、反射信号が有ると判定するまで、ステップS3を繰り返す。
反射損失を測定結果から反射信号が有ると判定する場合、処理部10aは、ステップS4へ進み、オフセット周波数fofの反射損失を取得する(ステップS4)。
【0068】
オフセット周波数fofとは、第1基本共振周波数fb1から所定の値Δfだけマイナス側にオフセットした周波数である。
第1基本共振周波数fb1とは、複数の第1剥離部25のうち第1端部20aに最も近い位置の第1剥離部と、複数の第2剥離部のうち第2端部22aに最も近い位置の第2剥離部27と、の間で生じる共振波の基本波の周波数である。
図3に示す検知ケーブル2の場合、第1基本共振周波数fb1は、配置位置P9における共振波の基本波の周波数となる。この場合、第1基本共振周波数fb1は、75MHzとなる。
【0069】
検知ケーブル2において、配置位置P1から配置位置P9は、ケーブル長手方向に沿って等間隔に並んでいる。
この場合、複数の配置位置(配置位置P1から配置位置P9)のうち互いに隣り合う一対の配置位置同士の間隔はいずれも同じとなる。よって、複数の配置位置のうちの1つの配置位置における第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長と、1つの配置位置以外の他の配置位置における第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長と、の差が、一対の配置位置同士の間隔Rの倍数となる。
このため、1つの配置位置における共振波と、他の配置位置における共振波と、は、同じ周波数の高調波を含む。
よって、配置位置P1から配置位置P8における共振波それぞれは、75MHzの高調波を有する。
【0070】
複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27が生じさせる共振波の全てに含まれる同じ周波数の高調波のうち、最も低い周波数の高調波の周波数が、第1基本共振周波数fb1(75MHz)となる。
【0071】
また、本実施形態では、所定の値Δfは-4(MHz)とする。よって、オフセット周波数fofは、71MHzとなる。
【0072】
図6は、第1基本共振周波数fb1近傍の反射損失の周波数特性を示す図である。
図6では、複数の配置位置(配置位置P1から配置位置P9)全ての反射損失の周波数特性を重ねて示している。
図6中、線図g11は、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27とが液体に浸潤したときの反射損失の周波数特性を示している。線図g12から線図g19は、配置位置P2から配置位置P9における第1剥離部25と第2剥離部27とが液体に浸潤したときの反射損失の周波数特性を示している。
【0073】
図6に示すように、線図g11から線図g19は、第1基本共振周波数fb1(=75MHz)のときに極大値を有している。つまり、配置位置P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8それぞれにおける共振波は、周波数が75MHzの高調波を含む。
図6では、線図g11、g12、g13、g14、g15、g16、g17、g18は、配置位置P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8における共振波に含まれる高調波を示す。また、線図g19は、配置位置P9における共振波に含まれる基本波を示す。
【0074】
処理部10aは、
図6中、オフセット周波数fofにおける反射損失を取得する(ステップS4)。
オフセット周波数fofにおける反射損失を取得すると、処理部10aは、この反射損失に基づいて、複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知する(
図5中、ステップS5)。
【0075】
図6のように、反射信号を反射損失の周波数特性で表したとき、第1基本共振周波数fb1近傍においては、1つの配置位置における共振波の反射損失の傾きと、他の配置位置における共振波の反射損失の傾きと、が異なる。よって、第1基本共振周波数fb1近傍において、両周波数特性における反射損失の間で数値差が生じる。
【0076】
よって、反射信号に基づいて、第1基本共振周波数fb1近傍の周波数であるオフセット周波数fofにおける反射損失を取得すれば、複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知することができる。
【0077】
より具体的には、処理部10aは、ステップS4において、オフセット周波数fofにおける反射損失とともに、第1基本共振周波数fb1における反射損失を取得し、オフセット周波数fofにおける反射損失と、第1基本共振周波数fb1における反射損失と、の差ΔRLを求める。
【0078】
処理部10aは、配置位置P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8における共振波の周波数特性それぞれの差ΔRLrefが登録された反射損失データを記憶部10bに記憶させている。
ステップS4において差ΔRLを求めると、処理部10aは、記憶部10bの反射損失データを参照し、求めた差ΔRLに対応する差ΔRLrefの値が反射損失データに登録されているか否かを判定する。反射損失データに求めた差ΔRLに対応する差ΔRLrefが登録されている場合、処理部10aは、その差ΔRLrefに対応する配置位置(に配置されている第1剥離部25及び第2剥離部27)を検知する。
【0079】
図6中、例えば、線図g11におけるオフセット周波数fofの点Sが示す反射損失の値が、処理部10aによって取得された場合、処理部10aは、反射損失データを参照し、
図6中の差ΔRLに基づいて、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27との間で生じた共振波を示す周波数特性であることを検知することができる。
これにより、処理部10aは、複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知することができる(ステップS5)。
【0080】
次いで、処理部10aは、検知した第1剥離部25及び第2剥離部27が配置されている配置位置を、検知対象100における液体の漏洩位置として、出力部10cから出力し(ステップS6)、ステップS3へ戻る。
【0081】
上記構成によれば、反射信号に基づいて、検知ケーブル2で生じた共振波の周波数特性としてオフセット周波数fofの反射損失を取得し、複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27のうち液体の浸潤によって共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知することができる。よって、複数の配置位置のうち液体が浸潤した配置位置(浸潤位置)を検知することができる。
よって、上記構成の検知ケーブル2を、検知対象100に配置し、パルス信号を与えたときに生じる共振波の特性が得られれば、浸潤位置を液体の漏洩位置として検知することができる。
よって、上記従来例と比較して、より容易に液体の漏洩位置を検知することができる。
【0082】
また、本実施形態では、反射信号に基づいて、第1基本共振周波数fb1近傍の周波数であるオフセット周波数fofにおける反射損失を取得すれば、複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知することができる。よって、広帯域に亘って数値処理する必要がなく、処理負荷が軽減される。
【0083】
また、本実施形態において、所定の値Δfは、第2基本共振周波数fb2の1/2よりも小さい値に設定される。
第2基本共振周波数fb2とは、複数の第1剥離部25のうち第1端部20aから最も遠い位置の第1剥離部25と、複数の第2剥離部27のうち第2端部22aから最も遠い位置の第2剥離部27と、の間で生じる共振波の基本波の周波数である。
図3に示す検知ケーブル2の場合、第2基本共振周波数fb2は、配置位置P1の第1剥離部25と第2剥離部27との間で生じる共振波の基本周波数となる。この場合、第2基本共振周波数fb2は、8.3MHzとなる。所定の値Δfは、4.16MHzとなる。
【0084】
第1端部20aから最も遠い位置の第1剥離部25と、第2端部22aから最も遠い位置の第2剥離部27と、が生じさせる共振波の周波数特性は、他の位置の第1剥離部25と第2剥離部27とが生じさせる共振波の周波数特性と比較して、0から第1基本共振周波数fb1までの周波数帯域内において最も多くの極小点を持つ。
【0085】
所定の値Δfを第2基本共振周波数fb2の1/2よりも小さい値とすることで、
図6に示すように、オフセット周波数fofを、配置位置P1における共振波の周波数特性が有する極小点Sminの周波数と、第1基本共振周波数fb1と、の間の数値範囲内に設定することができる。
これにより、配置位置P1における共振波の周波数特性におけるオフセット周波数の反射損失が極小点を超えて傾きが反転する範囲となるのを抑制することができる。
【0086】
図6中、オフセット周波数fofが極小点Sminの周波数よりも小さい範囲に設定されると、配置位置P1における共振波の周波数特性の傾きが、他の配置位置における共振波の周波数特性傾きに対して反転する。このため、オフセット周波数fofにおける反射損失が、配置位置の位置に従った順で並ぶ状態ではなくなる。このため、共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知する際の精度を低下させるおそれがある。
【0087】
本実施形態では、配置位置P1における共振波の周波数特性におけるオフセット周波数の反射損失が極小点を超えて傾きが反転する範囲となるのを抑制することができる。よって、複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知する際の精度をより高めることができる。
【0088】
〔他の実施形態について〕
図7は、他の実施形態に係る検知処理の一例を示すフローチャートである。
図7では、検知処理のうち、上記実施形態と異なる部分のみを示している。
本実施形態は、ステップS3の後のステップS41において、共振波に含まれる基本波の周波数を取得する点、及び、ステップS41の後のステップS5において、共振波の基本波の周波数に基づいて、複数の第1剥離部及び前記複数の第2剥離部のうち共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知する点(ステップS5)において、上記実施形態と相違する。
【0089】
本実施形態では、反射信号が有ると判定する場合、処理部10aは、反射信号の反射損失の周波数特性から、共振波の基本波の周波数を取得する(ステップS41)。
上述したように、複数の配置位置における第1剥離部25と第2剥離部27との間の線路長は、複数の配置位置同士の間で互いに異なる。このため、液体で浸潤されたときに生じる共振波の周波数は、複数の配置位置ごとに異なる。
よって、共振波の基本波の周波数を得ることで、複数の第1剥離部25及び複数の第2剥離部27のうち液体の浸潤によって共振波を生じさせた第1剥離部25及び第2剥離部27を検知することができる。この結果、複数の配置位置のうち液体が浸潤した配置位置を液体の漏洩位置として容易に検知することができる。
【0090】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、上記各実施形態では、検知ケーブル2の第1電線部20が9箇所の第1剥離部25を有し、第2電線部22が9箇所の第2剥離部27を有する場合を例示したが、検知ケーブル2は、より少ない個数の第1剥離部25及び第2剥離部27を有していてもよいし、より多くの第1剥離部25及び第2剥離部27を有していてもよい。
【0091】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 検知システム
2 検知ケーブル
2a 第1ケーブル端部
2b 第2ケーブル端部
3 被覆電線
3a 第1電線端部
3b 第2電線端部
4 検知ユニット
6 信号源
7 終端器
8 サーキュレータ
10 処理装置
10a 処理部
10b 記憶部
10c 出力部
12 内部導体線
12a 第1導体線端部
12b 第2導体線端部
14 絶縁層
16 外部導体
18 被覆層
20 第1電線部
20a 第1端部
20b 第3端部
22 第2電線部
22a 第2端部
22b 第4端部
23 折り返し部
24 第1被覆部
25 第1剥離部
26 第2被覆部
27 第2剥離部
100 検知対象
P1 配置位置
P2 配置位置
P3 配置位置
P4 配置位置
P5 配置位置
P6 配置位置
P7 配置位置
P8 配置位置
P9 配置位置
R 間隔
g1 線図
g2 線図
g3 線図
g11 線図
g12 線図
g13 線図
g14 線図
g15 線図
g16 線図
g17 線図
g18 線図
g19 線図